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JP5742412B2 - 静電画像形成用トナー及びトナー用樹脂 - Google Patents

静電画像形成用トナー及びトナー用樹脂 Download PDF

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Description

本発明は、複写機、プリンター、FAXなどの電子写真方式の画像形成装置に適用する静電荷像現像用トナー及びこのトナーに用いるトナー用樹脂に関するものである。
昨今の環境配慮型商品の隆盛等により、低エネルギーでトナーを定着する技術が望まれている。
その手段形は種々挙げ得るが、中でもより低温で定着し得る静電荷現像用トナーへの要求が強くなっている。
トナーの定着温度を低くする手段として、トナーバインダーのガラス転移点を低くする技術が一般的に行われている。しかし、単純にガラス転移点を低くすると、粉体の凝集(ブロッキング)が起り易く、画像形成装置内で凝集すると、現像装置の動作に影響し、動作できなくなることがある。そこまでいかなくとも、トナー収納容器内で凝集することで、トナーの補給ができなくなり、トナー濃度が低下し、異常画像が形成されることがある。これら、ブロッキングの発生を抑えることがトナーの耐ブロッキング性をよくすることである。また、定着画像表面のトナーの保存性も、同時に悪くなる。この定着画像が、溶融し転位し易いために、重ねてある他の記録媒体に付着したりして、長期に保存できないことがある。
このガラス転移点はトナーバインダーの設計ポイントであり、単純にガラス転移点を下げる方法では、今以上に定着装置を低温に設定しても定着可能なトナーを得ることはできなかった。
しかし、耐ブロッキング性を満足させ、且つ、低温定着性の両立の手段として、結晶性樹脂をトナーバインダーとして用いる方法が古くから知られている。しかしながら、溶融時の弾性不足によりホットオフセットが起こる問題があった。
また、ブロッキング性を満足させ、且つ、低温定着性の両立の手段として、溶融懸濁法や乳化凝集法を用い、シェルをもつコア−シェルタイプのトナーが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながら、低温定着を維持しながら、良好な耐ブロッキング性を得るためには、以上の技術ではまだ不十分である。
さらに、この課題解決のために結晶性樹脂に着目した手法(特許文献3参照)も提唱されているが、外部条件(製造、保管、及び定着時の熱履歴や部分相混合等)を受け易く、結晶構造が安定しないため、トナー諸特性、耐ブロッキング性、画像安定性等に悪影響を及ぼすという問題点があった。
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、低温定着性、耐ブロッキング性及び発色性に優れた静電画像形成用トナー及びこのトナーに用いるトナー用樹脂を提供することである。
上記課題を解決する手段である本発明の特徴を以下に挙げる。
本発明の静電画像形成用トナーは、少なくとも着色剤、結着樹脂及び離型剤を含有する静電画像形成用トナーにおいて、該結着樹脂は少なくとも2種類のポリエステル樹脂A、Bを含有し、前記トナーの軟化点(T1/2)とガラス転移点(Tg)の差が65℃以上、90℃未満であり、且つ、50℃におけるTMA圧縮変形量(TMA%)が5%以下であって、前記ポリエステル樹脂Aが非線状の反応性前駆体aと硬化剤より構成され、反応性前駆体aの活性末端封鎖物のガラス転移点(aTg)と、前記ポリエステル樹脂Bが線状で、そのガラス転移点(bTg)との差(bTg−aTg)が40℃以上、95℃未満の関係を満たすことを特徴とする。
た、本発明の静電画像形成用トナーは、さらに、前記ポリエステル樹脂A中に、5−スルホイソフタル酸骨格を全酸成分中の0.1mol%以上、10mol%以下の割合で含有することを特徴とする。
また、本発明の静電画像形成用トナーは、さらに、前記結着樹脂における前記ポリエステル樹脂Aの含有率が1質量%以上で、30質量%以下であることを特徴とする。
本発明のトナー用樹脂は、少なくとも2種類のポリエステル樹脂A、Bを含有し、前記ポリエステル樹脂Aが非線状の反応性前駆体aと硬化剤より構成され、反応性前駆体aの活性末端封鎖物のガラス転移点(aTg)と、前記ポリエステル樹脂Bが線状で、そのガラス転移点(bTg)との差(bTg−aTg)が40℃以上、95℃未満の関係を満たすことを特徴とする。
また、本発明のトナー用樹脂は、さらに、前記結着樹脂における前記ポリエステル樹脂Aの含有率が1質量%以上で、30質量%以下であることを特徴とする。
上記課題を解決する手段である本発明によって、以下のような特有の効果を奏する。
本発明の静電画像形成用トナーでは、定着時に熱をかける直前までは耐ブロッキング性を有し、熱をかけたときに急峻な軟化特性を示すことで低温定着が可能となり、低温定着性と耐ブロッキング性のように二律背反の性質を両立することできる。
また、本発明のトナー用樹脂では、定着時に熱をかける直前までは耐ブロッキング性を有し、熱をかけたときに急峻な軟化特性を示すことで低温定着が可能となり、低温定着性と耐ブロッキング性のように二律背反の性質を両立することできるトナーを製造することができるトナー用樹脂を提供することができる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明における最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
本発明の静電画像形成用トナー(以下、単に「トナー」と記す。)としては、結着樹脂として少なくとも2種類のポリエステル樹脂A、Bを含有する。とくに、少なくとも2種類のポリエステル樹脂としては、非線状の非結晶性ポリエステル樹脂Aと線状の非結晶性ポリエステル樹脂Bを含んでいる。非線状の非結晶性ポリエステル樹脂Aと線状の非結晶性ポリエステル樹脂Bとが完全に相溶することが好ましい。
非線状の反応性ポリエステル樹脂Aを含有することで、分子量の設計、樹脂の熱特性の設計が広がるため好ましい。また、超低温域にガラス転移点を有し、且つ溶融粘性の高いポリエステル樹脂Aを含有することで、樹脂全体としての軟化点は低温側にシフトさせるが、容易には変形しない耐ブロッキング性(「保存性」と言うことがある。)及び低温定着性を両立させることが可能となる。つまり、超低温域にガラス転移温度を有するが、溶融粘性の高い非線状非結晶性ポリエステル樹脂Aを相溶の状態でその他の非結晶性ポリエステル樹脂Bと複合化することで、低温定着性と耐ブロッキング性のように二律背反の性質を両立することが可能となる
まず、非線状の非結晶性ポリエステル樹脂Aについて説明する。
非結晶性ポリエステル樹脂Aは、非線状の反応性前駆体aと硬化剤より構成される。
反応性前駆体aは、末端にイソシアネート、エポキシ、カルボジイミド等の反応活性点を有するポリエステルであり、とくにポリエステル系ポリウレタンの末端NCO化物であることが好ましい。
ポリエステルにおける多価アルコール成分としては、従来公知の何れも単独、及び/又は混合して使用し得るが、耐ブロッキング性、画像の保存性、及び、低温定着性の観点から3−メチル−1,5−ペンタンジオールやネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオールが好ましい。酸成分としては、従来公知の何れも単独及び/又は混合して使用し得るが、コスト面等の観点からテレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が好ましい。
非線状、即ち分岐構造を取らせるための成分は、従来公知の3価以上の多官能成分を使用することができるが、コスト等の観点からアルコール系ではトリメチロールプロパン、酸では無水トリメリット酸が好ましい。
イソシアネート成分としては、ジイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネート及びこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
また、必要により、3価以上のポリイソシアネートを併用してもよい。
上記芳香族ジイソシアネートの具体例(3価以上のポリイソシアネートを含む)としては、1,3−及び/又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−及び/又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)又はその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(例えば、5〜20質量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−及びp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートなどが挙げられる。
上記脂肪族ジイソシアネートの具体例(3価以上のポリイソシアネートを含む)としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートなどが挙げられる。
上記脂環式ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−及び/又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
上記芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、m−及び/又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などが挙げられる。
また、上記ジイソシアネートの変性物には、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物などが挙げられる。
具体的には、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDIなど)、ウレタン変性TDIなどのジイソシアネートの変性物及びこれらの2種以上の混合物[例えば、変性MDIとウレタン変性TDI(イソシアネート含有プレポリマー)との併用]が含まれる。
これらのうちで好ましいものは6〜15の芳香族ジイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ジイソシアネート、及び炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネートであり、とくに好ましいものはTDI、MDI、HDI、水添MDI、及びIPDIである。
硬化剤としては、従来公知のアミン系化合物を好適に使用し得る。
ジアミン(必要により用いられる3価以上のポリアミンを含む)の例として、脂肪族ジアミン類(C2〜C18)としては、〔1〕脂肪族ジアミン(C2〜C6アルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)、ポリアルキレン(C2〜C6)ジアミン〔ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン,トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど〕);〔2〕これらのアルキル(C1〜C4)又はヒドロキシアルキル(C2〜C4)置換体〔ジアルキル(C1〜C3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミンなど〕;〔3〕脂環又は複素環含有脂肪族ジアミン(脂環式ジアミン(C4〜C15)〔1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4´−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)など〕、複素環式ジアミン(C4〜C15)〔ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、1,4ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど〕;〔4〕芳香環含有脂肪族アミン類(C8〜C15)(キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミンなど)、等が挙げられる。
芳香族ジアミン類(C6〜C20)としては、
〔1〕:非置換芳香族ジアミン〔1,2−、1,3−及び1,4−フェニレンジアミン、2,4´−及び4,4´−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4´,4”−トリアミン、ナフチレンジアミンなど;
〔2〕:核置換アルキル基〔メチル,エチル,n−及びi−プロピル、ブチルなどのC1〜C4アルキル基〕を有する芳香族ジアミン、例えば2,4−及び2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジフェニルメタン、4,4´−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3´,5,5´−テトラメチルベンジジン、3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3´−メチル−2´,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3´−ジエチル−2,2´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジフェニルメタン、3,3´,5,5´−テトラエチル−4,4´−ジアミノベンゾフェノン、3,3´,5,5´−テトラエチル−4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,3´,5,5´−テトライソプロピル−4,4´−ジアミノジフェニルスルホンなど〕、及びこれらの異性体の種々の割合の混合物;
〔3〕:核置換電子吸引基(Cl,Br,I,Fなどのハロゲン;メトキシ、エトキシなどのアルコキシ基;ニトロ基など)を有する芳香族ジアミン〔メチレンビス−o−クロロアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、2−クロル−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロル−1,4−フェニレンジアミン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン、3−ジメトキシ−4−アミノアニリン;4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチル−5,5´−ジブロモ−ジフェニルメタン、3,3´−ジクロロベンジジン、3,3´−ジメトキシベンジジン、ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)オキシド、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)デカン、ビス(4−アミノフェニル)スルフイド、ビス(4−アミノフェニル)テルリド、ビス(4−アミノフェニル)セレニド、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)ジスルフイド、4,4´−メチレンビス(2−ヨードアニリン)、4,4´−メチレンビス(2−ブロモアニリン)、4,4´−メチレンビス(2−フルオロアニリン)、4−アミノフェニル−2−クロロアニリンなど〕;
〔4〕:2級アミノ基を有する芳香族ジアミン〔上記〔1〕〜〔3〕の芳香族ジアミンの−NHの一部又は全部が−NH−R´(R´はアルキル基、例えばメチル,エチルなどの低級アルキル基)で置き換ったもの〕〔4,4´−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン、1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼンなど〕が挙げられる。
ジアミン成分としては、これらの他、ポリアミドポリアミン〔ジカルボン酸(ダイマー酸など)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン類(上記アルキレンジアミン,ポリアルキレンポリアミンなど)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミンなど〕、ポリエーテルポリアミン〔ポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコールなど)のシアノエチル化物の水素化物など〕等が挙げられる。
線状の非結晶性ポリエステル樹脂Bについて説明する。
本発明で、非結晶性ポリエステル樹脂Bとしては、非結晶の未変性ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
非結晶性ポリエステル樹脂Bに用いられるアルコール成分としては、2価のアルコール(ジオール)、具体的には、炭素数2〜36のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール及び1,6−ヘキサンジオールなど);炭素数4〜36のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリブチレングリコールなど);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールAなど);上記脂環式ジオールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド〔エチレンオキシド(以下EOと略記する)、プロピレンオキシド(以下POと略記する)及びブチレンオキシド(以下BOと略記する)など〕付加物(付加モル数1〜30);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールSなど)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、PO及びBOなど)付加物(付加モル数2〜30)などが挙げられる。
また、前記の2価のジオールに加えて3価以上(3〜8価又はそれ以上)のアルコール成分を含有してもよく、具体的には、炭素数3〜36の3〜8価又はそれ以上の脂肪族多価アルコール(アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物、例えば、グリセリン、トリエチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセリン、及びジペンタエリスリトール;糖類及びその誘導体、例えば庶糖及びメチルグルコシド;など);上記脂肪族多価アルコールの炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、PO及びBOなど)付加物(付加モル数1〜30);トリスフェノール類(トリスフェノールPAなど)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、PO及びBOなど)付加物(付加モル数2〜30);ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラックなど:平均重合度3〜60)の炭素数2〜4のアルキレンオキシド(EO、PO、BOなど)付加物(付加モル数2〜30)などが挙げられる。
非結晶性ポリエステル樹脂Bに用いられるカルボン酸成分としては、2価のカルボン酸(ジカルボン酸)、具体的には、炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(コハク酸、アピジン酸、及びセバシン酸など)及びアルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸など);炭素数4〜36の脂環式ジカルボン酸〔ダイマー酸(2量化リノール酸)など〕;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、及びメサコン酸など);炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの誘導体、及びナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケンジカルボン酸、及び炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。なお、ポリカルボン酸としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
また、前記の2価のカルボン酸に加えて3価以上(3〜6価又はそれ以上)のカルボン酸成分を含有してもよく、具体的には、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など);不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(以下「Mn」と記載する。測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による):450〜10000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、α−オレフィン/マレイン酸共重合体、スチレン/フマル酸共重合体など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸であり、とくに、好ましいものはトリメリット酸、及びピロメリット酸である。なお、3価以上のポリカルボン酸としては、上述のものの酸無水物又は低級アルキル(炭素数1〜4)エステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
したがって、上記非反応性末端を有する非線状の非結晶性ポリエステル樹脂Aと線状の非結晶性ポリエステル樹脂Bとを主要な結着樹脂として用いてトナーを製造する。
トナーの製造方法は、結着樹脂を着色剤などと共に溶融混練した後、微粉砕し、さらに分級する混練粉砕法が用いられている。また、水相等の溶媒中で造粒することによりトナーの製造方法は、懸濁重合法や乳化重合凝集法などにより得られるトナーがある。例えば、懸濁重合法は、モノマー、重合開始剤、着色剤、離型剤等を、分散安定剤を含む水相中に攪拌しながら加えて油滴を形成させ、その後、昇温して重合反応を行わせることにより、トナー粒子を得る方法である。また、乳化重合凝集法は、例えば、ポリエステル樹脂を結着樹脂として使用し、水相中で乳化分散した後、脱溶媒して得られた微粒子と、着色剤、離型剤(ワックス)等を水相中で分散させて形成した分散体とを凝集させ、加熱融着させることによりトナー粒子を製造する。本発明のトナーは、このトナー用樹脂を用いることで、その製造方法はいずれであっても良い。
トナーの熱特性について説明する。
本発明におけるトナーの熱特性としては、軟化点(T1/2)とガラス転移点(Tg)の差が65℃以上、90℃未満であり、且つ50℃におけるTMA圧縮変形量(TMA%)が5%以下であることが必要である。
軟化点とガラス転移点の差は65℃以上、90℃未満である必要がある。
軟化点とガラス転移点の差が90℃以上では、トナーの熱可塑性が悪化して低温定着性が得られない。
また、軟化点とガラス転移点の差が65℃未満では、トナーの溶融粘性が著しく低下し、トナーとしての耐ブロッキング性の低下は勿論、多数枚を一度に複写した際の予熱によるスタックや書類としての耐ブロッキング性などが悪化するという弊害が生ずる。
また、この条件に加え、50℃におけるTMA圧縮変形量(TMA%)が5%以下であることも同時具備する必要がある。この値が5%を超えるということは、50℃であっても外力がかかれば容易に変形し得ることを意味しており、侵入度試験等によって得られた静的保存性が優れていたとしても、動的条件下では保存性が悪いということを意味する。つまりは、耐ブロッキング性が悪いことを意味している。即ち、トナーの夏場の運送や倉庫保管、複写機内温度等を考慮したとき、容易にトナー同士が膠着し、搬送性や転写性が悪化し、画質不良等に直結するため好ましくない。なお、50℃でのTMA%のより好ましい範囲としては3%以下である。
本発明では、非結晶性ポリエステル樹脂Aにおける非線状の反応性前駆体aの末端封鎖物のガラス転移点(aTg)と線状の非結晶性ポリエステル樹脂Bのガラス転移点との差(bTg−aTg)が40℃以上、95℃未満の関係を満たすことが必要である。
ガラス転移点の差(bTg−aTg)が40℃未満では、非結晶性ポリエステル樹脂Aによる可塑化効果を得ることができず、低温定着性が発現しないため、本発明の課題解決に繋がらないため、好ましくない。一方、ガラス転移点の差(bTg−aTg)が95℃を越える場合、低温定着性は発現し得るが、可塑化が過剰に進行してしまいトナーの耐ブロッキング性を悪化させるため、画質低下に繋がり、好ましくない。
本発明のトナーは、ポリエステル樹脂A中に、5−スルホイソフタル酸骨格を全酸成分中の0.1mol%以上、10mol%以下の割合で含有する。好ましくは7mol%以下、より好ましくは5mol%以下である。
これによって、顔料分散性の向上及び着色度の向上を図ることができる。全酸成分中のスルホイソフタル酸含有量が0.1mol%未満ではその効果を発揮できないことがある。また、10mol%を超えるとポリエステルの溶融粘度やプレポリマー化時の溶液粘性が過度に上昇してゲル化など、品質安定性や生産性を著しく低下させること、及び親水性の向上による保存性の悪化に繋がるおそれがある。
本発明のトナーは、結着樹脂における非結晶性ポリエステル樹脂Aの含有率が1質量%以上で、30質量%以下である。
これによって、トナーは、トナーが保管される環境、現像装置内での攪拌ではトナーは溶融せず、所定の温度範囲急激に粘弾性が低下することにより、低温定着性とブロッキング性の両立を可能としている。
したがって、トナー中における非結晶性ポリエステル樹脂Aの含有率が1質量%未満ではブロッキング性は良好で凝集はしないが、低温定着性が発現せず定着性がよくない。逆に、トナー中における非結晶性ポリエステル樹脂Aの含有率が30質量%を超えると、低温定着性がよいが、ブロッキング性が低く、画像形成装置内で、トナーの凝集体が生成される。
このほかに、本発明のトナーは以下の材料を含むことがある。本発明のトナーは、結着樹脂と着色剤と共に混合又は重合され、本発明のトナーとすることができる。必要により、さらに荷電制御剤、離型剤及び流動化剤等を含有させることもできる。
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ソルベントイエロー(21,77,114など)、ピグメントイエロー(12,14,17,83など)、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトアニリンレッド、トルイジンレッド、ソルベントレッド(17,49,128,5,13,22,48・2など)、ディスパースレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ソルベントブルー(25,94,60,15・3など)、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末もしくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100部に対して、好ましくは0.1〜40部、さらに好ましくは0.5〜10部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150部、さらに好ましくは40〜120部である。上記、さらに以下において、部は質量部を意味する。
離型剤としては、軟化点が50〜170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、天然ワックス(例えばカルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス及びライスワックスなど)、炭素数30〜50の脂肪族アルコール(例えばトリアコンタノールなど)、炭素数30〜50の脂肪酸(例えばトリアコンタンカルボン酸など)及びこれらの混合物等が挙げられる。ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるもの及び熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体、及びポリメチレン(例えばサゾールワックス等のフィシャートロプシュワックスなど)、脂肪酸金属塩(ステアリン酸カルシウムなど)、脂肪酸エステル(ベヘニン酸ベヘニルなど)が挙げられる。
荷電制御剤としては、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム等が挙げられる。
トナー化するときの組成比は、トナー質量に基づき(以下の本項の%は質量%である。)、本発明のトナーバインダーが、好ましくは30〜97%、さらに好ましくは40〜95%、とくに好ましくは45〜92%;着色剤が、好ましくは0.05〜60%、さらに好ましくは0.1〜55%、とくに好ましくは0.5〜50%;添加剤のうち、離型剤が、好ましくは0〜30%、さらに好ましくは0.5〜20%、とくに好ましくは1〜10%;荷電制御剤が、好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0.1〜10%、とくに好ましくは0.5〜7.5%;流動化剤が、好ましくは0〜10%、さらに好ましくは0〜5%、とくに好ましくは0.1〜4%である。また、添加剤の合計含有量は、好ましくは3〜70%、さらに好ましくは4〜58%、とくに好ましくは5〜50%である。
トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電性が良好なものを容易に得ることができる。
本発明のトナーは、上述したように混練粉砕法、乳化転相法、重合法等の従来公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を乾式ブレンドした後、溶融混練し、その後粗粉砕し、最終的にジェットミル粉砕機等を用いて微粒化して、さらに分級することにより、体積平均粒径(D50)が好ましくは5〜20μmの微粒子とした後、流動化剤を混合して製造することができる。なお、粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(コールター社製)]を用いて測定される。
乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶媒に溶解又は分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。また、特開2002−284881号公報に記載の有機微粒子を用いる方法により製造してもよい。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
トナーは、必要に応じて、キャリア粒子(鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト及び樹脂(アクリル樹脂及びシリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等)と混合して、電気的潜像の現像剤として用いることができる。また、キャリア粒子のかわりに、帯電ブレード等と摩擦させて、電気的潜像を形成させることもできる。
そして、電気的潜像は、公知の熱ロール定着方法等によって、支持体(紙及びポリエステルフィルム等)に定着される。
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において、「%」は質量%を示す。
<評価>
得られたトナーについて以下の方法により現像剤を作製し、以下の評価を行った。
<トナーの調製>
−ケチミンの合成−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部、及びメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物]のアミン価は418であった。
−マスターバッチ(MB)の調製−
水1,200部、カーボンブラック(Printex35、デクサ製社製)〔DBP吸油量=42mL/100mg、pH=9.5〕540部、及び非晶質ポリエステル樹脂A−1 1,200部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて150℃で30分混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
−顔料・WAX分散液の作製−
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、[樹脂B−1]378部、離型剤1としてパラフィンワックス50部(日本精鑞社製、HNP−9、炭化水素系ワックス、融点75℃、SP値8.8)、CCA(サリチル酸金属錯体E−84:オリエント化学工業社製)22部、及び酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチ]500部、及び酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液]を得た。
[原料溶解液]1,324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、分散を行った。次いで、[非晶質ポリエステルA]の65%酢酸エチル溶液1,042.3部加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・WAX分散液]を得た。[顔料・WAX分散液]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。
−油相の調製−
[顔料・WAX分散液]664部、[プレポリマー]80部、150部、及び[ケチミン化合物]4.6部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化社製)で5,000rpmで1分間混合し、[油相]を得た。
−有機微粒子エマルション(微粒子分散液)の合成−
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30:三洋化成工業社製)11部、スチレン138部、メタクリル酸138部、及び過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液]を得た。[微粒子分散液]をLA−920(HORIBA社製)で測定した体積平均粒径は、0.14μmであった。[微粒子分散液]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。
−水相の調製−
水990部、[微粒子分散液]83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7:三洋化成工業社製)37部、及び酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相]とした。
−乳化・脱溶媒−
前記[油相]が入った容器に、[水相]1,200部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで20分間混合し[乳化スラリー]を得た。
撹拌機及び温度計をセットした容器に、[乳化スラリー]を投入し、30℃で8時間脱溶媒した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー]を得た。
−洗浄・乾燥−
[分散スラリー]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する、という前記(1)〜(5)の操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
[濾過ケーキ]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い[トナー]を得た。
(合成例1)
−非線状ポリエステル樹脂A−1の合成−
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、テレフタル酸、アジピン酸、無水トリメリット酸をOH/COOH=1.5、酸成分の構成がテレフタル酸90mol%、アジピン酸17.5mol%、無水トリメリット酸2.5mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(1000ppm対樹脂成分)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて230℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後さらに、1334〜2000Pa(10〜15mmHg)の減圧で5時間反応させ、中間体ポリエステルを得た。次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、中間体ポリエステルとイソホロンジイソシアネートをモル比2.0で投入し、酢酸エチルで48%となるように希釈後、100℃で5時間反応させた。得られた非線状プレポリマーの特性値は表1に記載した。
(合成例2)
−非線状ポリエステル樹脂A−2の合成−
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、テレフタル酸、アジピン酸、無水トリメリット酸をOH/COOH=1.15、酸成分の構成が5−スルホイソフタル酸2.5mol%、イソフタル酸45mol%、アジピン酸50mol%、無水トリメリット酸2.5mol%となるように、チタンテトライソプロポキシド(1000ppm対樹脂成分)とともに投入した。その後、4時間程度で200℃まで昇温し、次いで、2時間かけて240℃に昇温し、流出水がなくなるまで反応を行った。その後さらに、1334〜2000Pa(10〜15mmHg)の減圧で5時間反応させ、中間体ポリエステルを得た。次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、中間体ポリエステルとイソホロンジイソシアネートをモル比2.0で投入し、酢酸エチルで48%となるように希釈後、100℃で5時間反応させた。得られた非線状プレポリマーの特性値は表1に記載した。
(合成例3)
−線状ポリエステル樹脂B−1の合成−
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5Lの四つ口フラスコに、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物をモル比で85/15、イソフタル酸とアジピン酸をモル比で80/20とし、OH/COOH=1.3で仕込み、500ppmのチタンテトライソプロポキシドと共に常圧で230℃で10時間反応させ、さらに1334〜2000Pa(10〜15mmHg)の減圧で5時間反応後、反応容器に無水トリメリット酸30部を入れ、180℃、常圧で3時間反応し、線状ポリエステル樹脂B−1を得た。特性値は表1に中に記載した。
(合成例4)
−線状ポリエステル樹脂B−2の合成−
合成例3におけるアジピン酸含有量をゼロ、ビスフェノールAエチレンオキサイドサイド2モル付加物とビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物を等モルとした以外は合成例3と同様に合成を行い、線状ポリエステル樹脂B−2を得た。特性値は表1に中に記載した。
(合成例5)
−線状ポリエステル樹脂B−3の合成−
合成例3におけるイソフタル酸とアジピン酸をモル比で20/80とし、アルコール成分中のビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物をプロピレングリコールに変えた以外、合成例3と同様に合成を行い、線状ポリエステル樹脂B−2を得た。特性値は表1に中に記載した。
(実施例1)
合成例1によって得た樹脂A−1、合成例3によって得た樹脂B−1を使用し、上述の方法に従ってトナーを調製、獲得した。各特性値は表1に記載した。結果、低温定着性と耐ブロッキング性を両立した高品位のトナーを得ることができた。
(実施例2)
実施例1における樹脂A−1を、合成例1における酸の構成をテレフタル酸/アジピン酸/トリメリット酸=17.5/80/2.5として合成した樹脂に変えた以外、実施例1と同様にトナー調製を行った。各特性値は表1に記載した。結果、低温定着性と耐ブロッキング性を両立した高品位のトナーを得ることができた。
(実施例3)
実施例1における樹脂A−1を、合成例1においてアジピン酸をドデカン二酸に変えて合成した樹脂に変えた以外、実施例1と同様にトナー調製を行った。各特性値は表1に記載した。結果、低温定着性と耐ブロッキング性を両立した高品位のトナーを得ることができた。
(実施例4)
実施例1における樹脂A−1を、合成例1における酸の構成をイソフタル酸/トリメリット酸=97.5/2.5として合成した樹脂に変えた以外、実施例1と同様にトナー調製を行った。各特性値は表1に記載した。結果、低温定着性と耐ブロッキング性を両立した高品位のトナーを得ることができた。
(実施例5)
実施例1における樹脂B−1を合成例4で得た樹脂B−2に変えた以外、実施例1と同様にトナー調製を行った。各特性値は表1に記載した。結果、低温定着性と耐ブロッキング性を両立した高品位のトナーを得ることができた。
(実施例6)
実施例2における樹脂B−1を合成例4で得た樹脂B−2に変えた以外、実施例2と同様にトナー調製を行った。各特性値は表1に記載した。結果、低温定着性と耐ブロッキング性を両立した高品位のトナーを得ることができた。
(実施例7)
実施例1における樹脂A−1を合成例2で得た樹脂A−2に変えた以外、実施例1と同様にトナー調製を行った。各特性値は表1に記載した。結果、低温定着性と耐ブロッキング性及び高い着色度とが両立した高品位のトナーを得ることができた。
(実施例8)
実施例1における樹脂A−1を、合成例2における酸の構成を5−スルホイソフタル酸5mol%、イソフタル酸42.5mol%、アジピン酸50mol%、無水トリメリット酸2.5mol%として合成した樹脂に変えた以外、実施例1と同様にトナー調製を行った。各特性値は表1に記載した。
(比較例1)
実施例1における樹脂A−1を、合成例1における酸の構成をテレフタル酸/アジピン酸/トリメリット酸=18.5/80/5として合成した樹脂に変えた以外、実施例1と同様にトナー調製を行った。各特性値は表1に記載した。結果、本発明の要件を満足することができず、保存安定性に劣るトナーとなってしまった。
(比較例2)
実施例1における樹脂A−1を、合成例1におけるアルコール成分をプロピレングリコールに変更して合成した樹脂に変えた以外、実施例1と同様にトナー調製を行った。各特性値は表1に記載した。結果、本発明の要件を満足することができず、低温定着性に劣るトナーとなってしまった。
(比較例3)
樹脂A−1を使用せず、樹脂B−3のみを使用した以外、実施例1と同様にトナー調製を行った。各特性値は表1に記載した。結果、本発明の要件を満足することができず、低温定着性に劣るトナーとなってしまった。
(比較例4)
実施例1における樹脂A−1を、合成例1におけるアルコール成分をエチレングリコールに、酸成分の構成をアジピン酸/トリメリット酸=97/3として合成した樹脂に変えた以外、実施例1と同様にトナー調製を行った。各特性値は表1に記載した。結果、本発明の要件を満足することができず、保存安定性に劣る耐ブロッキング性の低いトナーとなった。
(比較例5)
合成例2において、酸の構成を5−スルホイソフタル酸10mol%、イソフタル酸37.5mol%、アジピン酸50mol%、無水トリメリット酸2.5mol%として樹脂合成を行ったが、反応釜内でゲル化が発生し、以降の工程に供することができなかった。
−分子量−
装置:GPC(東ソー(株)製)、検出器:RI、測定温度:40℃、
移動相:テトラヒドロフラン、流量:0.45mL/min.
分子量Mn、Mw、分子量分布Mw/Mnは、夫々、分子量既知のポリスチレン試料によって作成した検量線を標準としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて測定される数平均分子量、重量平均分子量である。なお、カラムは排除限界六万のもの、2万のもの、1万のものを直列に繋いだものを使用した。
−軟化点−
高化式フローテスター(例えば、島津製作所社製、CFT−500D)を用いて、1gの測定試料を50℃で予熱した後、昇温速度5℃/分で加熱しながら、プランジャーに30Kgの荷重を与え、直径0.5mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)を軟化点とした。
−ガラス転移点−
粒子状トナー5mgをTAインスツルメンツ社製のT−Zero簡易密閉パンに封入し、示差走査熱量計(DSC)(TAインスツルメンツ社製、Q2000)を用いて、測定をおこなった。測定は、窒素気流下、1stヒーティングとして40℃から150℃まで10℃/min.で昇温し、5min.キープした後、−70℃まで急冷し、5min.キープした後、次いで2nd.ヒーティングとして昇温速度5℃/分で昇温して熱変化を測定して、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを描き、このとき観測される特徴的な変曲をTgとした。なお、Tgは、2nd.ヒーティングのDSC曲線からミッドポイント法によって得た値を使用した。
−TMA%−
粒子状トナー0.5gを3mmφの錠剤成型器(島津製作社所)にてタブレット化したものを、熱機械測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジーズ社製のEXSTAR7000)に供した。測定は、窒素気流下で0℃〜180℃まで2℃/minで昇温し、圧縮モードで行った。このときの圧縮力は100mNとした。得られる試料温度と圧縮変位(変形率)とのグラフから、50℃に対応する圧縮変位(変形率)をグラフから読み取り、この値をTMA%とした。
−耐ブロッキング性(耐熱保存性)の評価−
ガラス容器にトナーを充填し、50℃の恒温槽にて24時間放置する。このトナーを24℃に冷却し、ブロッキング(凝集)の程度により下記の基準で評価した。
○:ブロッキングが発生しない。
△:ブロッキングが発生するが、力を加えると容易に分散する。実用上問題がない。
×:ブロッキングが発生し、力を加えても分散しない。
−キャリアの作製−
トルエン100部に、シリコーン樹脂オルガノストレートシリコーン100部、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン5部、及びカーボンブラック10部を添加し、ホモミキサーで20分間分散させて、樹脂層塗布液を調製した。流動床型コーティング装置を用いて、平均粒径50μmの球状マグネタイト1,000部の表面に樹脂層塗布液を塗布して、キャリアを作製した。
−現像剤の作製−
ボールミルを用いて、前記トナー1 5部と前記キャリア95部とを混合し、現像剤を作製した。
−定着温度−
定着ローラとして、テフロン(登録商標)ローラを使用した複写機MF2200(株式会社リコー製)の定着部を改造した装置を用いて、タイプ6200紙(リコー社製)に複写テストを行った。
具体的には、定着温度を変化させてコールドオフセット温度(定着下限温度)及び高温オフセット温度(定着上限温度)を求めた。
定着下限温度の評価条件は、紙送りの線速度を120mm〜150mm/秒、面圧を118kPa(1.2kgf/cm)、ニップ幅を3mmとした。
また、定着上限温度の評価条件は、紙送りの線速度を50mm/秒、面圧を196kPa(2.0kgf/cm)、ニップ幅を4.5mmとした。
また、コールドオフセット温度(定着下限温度)及び高温オフセット温度(定着上限温度)の範囲を定着温度幅とした。
ここで、定着性としては定着下限温度が115℃以下で、定着温度幅は、70℃以上あれば実用上好ましい。
−発色性−
定着温度の評価と同様して0.3mg/cmの画像を作成し、X−RITE938(X−RITE社製)を使用してID値を求め、下記の基準で評価し、△以上を合格とした。
○:ID値が1.5を超える。
△:ID値が1.4〜1.5である。
×:ID値が1.4未満である。
Figure 0005742412
Figure 0005742412
表1から明らかなように、実施例1ないし8では、構成する樹脂のガラス転位点の差、トナーの軟化点(T1/2)とガラス転移点(Tg)の差、50℃におけるTMA圧縮変形量がいずれも所望の範囲にあることで、定着下限温度、定着温度幅、耐ブロッキング性のいずれも満足している。
それに対して、比較例1ないし4では、構成する樹脂のガラス転位点の差、トナーの軟化点(T1/2)とガラス転移点(Tg)の差、50℃におけるTMA圧縮変形量のいずれかが所望の範囲にないことで、定着下限温度、定着温度幅、耐ブロッキング性のいずれも満足していることがない。このいずれか一つでも満足しないことは、画像形成装置で用いた場合に実用上問題が生ずる。
特開2007−70621号公報 特開2004−191927号公報 特開2010−217849号公報

Claims (5)

  1. 少なくとも着色剤、結着樹脂及び離型剤を含有する静電画像形成用トナーにおいて、
    該結着樹脂は少なくとも2種類のポリエステル樹脂A、Bを含有し、
    前記トナーの軟化点(T1/2)とガラス転移点(Tg)との差が65℃以上、90℃未満であり、且つ、50℃におけるTMA圧縮変形量(TMA%)が5%以下であって、
    前記ポリエステル樹脂Aが非線状の反応性前駆体aと硬化剤より構成され、反応性前駆体aの活性末端封鎖物のガラス転移点(aTg)と、前記ポリエステル樹脂Bが線状で、そのガラス転移点(bTg)との差(bTg−aTg)が40℃以上、95℃未満の関係を満たす
    ことを特徴とする静電画像形成用トナー。
  2. 前記ポリエステル樹脂A中に、5−スルホイソフタル酸骨格を全酸成分中の0.1mol%以上、10mol%以下の割合で含有する
    ことを特徴とする請求項1に記載の静電画像形成用トナー。
  3. 前記結着樹脂における前記ポリエステル樹脂Aの含有率が1質量%以上で、30質量%以下である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の静電画像形成用トナー。
  4. 少なくとも2種類のポリエステル樹脂A、Bを含有し、
    前記ポリエステル樹脂Aが非線状の反応性前駆体aと硬化剤より構成され、反応性前駆体aの活性末端封鎖物のガラス転移点(aTg)と、前記ポリエステル樹脂Bが線状で、そのガラス転移点(bTg)との差(bTg−aTg)が40℃以上、95℃未満の関係を満たす
    ことを特徴とするトナー用樹脂。
  5. 前記結着樹脂における前記ポリエステル樹脂Aの含有率が1質量%以上で、30質量%以下である
    ことを特徴とする請求項4に記載のトナー用樹脂。
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