以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1の内部構造を示す断面図である。ここでは、画像形成装置1として複写機を例示するが、画像形成装置は、プリンター、ファクシミリ装置、或いは、これらの機能を備える複合機であってもよい。
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を有する装置本体10と、装置本体10上に配置される自動原稿給送装置20とを備える。装置本体10の内部には、複写する原稿画像を光学的に読み取る読取ユニット25と、シートにトナー像を形成する画像形成部30と、前記トナー像をシートに定着させる定着部60と、画像形成部30へ搬送されるシートを貯留する給紙部40と、シートを給紙部40から画像形成部30及び定着部60を経由してシート排出口10Eまで搬送する搬送経路50と、この搬送経路50の一部を構成するシート搬送路を内部に有する搬送ユニット55とが収容されている。
装置本体10の右側面10Rには、ジャム処理の際、或いはメンテナンス時に画像形成部30や定着部60等のユニットを装置本体10から取り外す際に開閉される本体カバー101が備えられている。本体カバー101は、その基端部(下端部)において、装置本体10に対して回動可能に取り付けられている。
自動原稿給送装置20は、装置本体10の上面に回動自在に取り付けられている。自動原稿給送装置20は、装置本体10における所定の原稿読取位置(第1コンタクトガラス241が組み付けられた位置)に向けて、複写される原稿シートを自動給送する。一方、ユーザーが手置きで原稿シートを所定の原稿読取位置(第2コンタクトガラス242の配置位置)に載置する場合は、自動原稿給送装置20は上方に開かれる。自動原稿給送装置20は、原稿シートが載置される原稿トレイ21と、自動原稿読取位置を経由して原稿シートを搬送する原稿搬送部22と、読取後の原稿シートが排出される原稿排出トレイ23とを含む。
読取ユニット25は、装置本体10の上面の自動原稿給送装置20から自動給送される原稿シートの読取用の第1コンタクトガラス241、又は手置きされる原稿シートの読取用の第2コンタクトガラス242を通して、原稿シートの画像を光学的に読み取る。読取ユニット25内には、光源、移動キャリッジ、反射ミラー等を含む走査機構と、撮像素子とが収容されている(図略)。走査機構は、原稿シートに光を照射し、その反射光を撮像素子に導く。撮像素子は、前記反射光をアナログ電気信号に光電変換する。前記アナログ電気信号は、A/D変換回路でデジタル電気信号に変換された後、画像形成部30に入力される。
画像形成部30は、フルカラーのトナー画像を生成しこれをシート上に転写する処理を行うもので、タンデムに配置されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各トナー像を形成する4つのユニット32Y、32M、32C、32Bkを含む画像形成ユニット32と、該画像形成ユニット32の上に隣接して配置された中間転写ユニット33と、中間転写ユニット33上に配置されたトナー補給部34とを含む。
各画像形成ユニット32Y、32M、32C、32Bkは、感光体ドラム321と、この感光体ドラム321の周囲に配置された、帯電器322、露光器323、現像装置324、一次転写ローラー325及びクリーニング装置326とを含む。
感光体ドラム321は、その軸回りに回転し、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。感光体ドラム321としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。帯電器322は、感光体ドラム321の表面を均一に帯電する。露光器323は、レーザー光源とミラーやレンズ等の光学系機器とを有し、感光体ドラム321の周面に、原稿画像の画像データに基づく光を照射して、静電潜像を形成する。
現像装置324は、感光体ドラム321上に形成された静電潜像を現像するために、感光体ドラム321の周面にトナーを供給する。現像装置324は、タッチダウン現像方式の現像装置であって、スクリューフィーダー、磁気ローラー、及び現像ローラーを含む。この現像装置324の詳細については、後記で詳細に説明する。
一次転写ローラー325は、中間転写ユニット33に備えられている中間転写ベルト331を挟んで感光体ドラム321とニップ部を形成し、感光体ドラム321上のトナー像を中間転写ベルト331上に一次転写する。クリーニング装置326は、クリーニングローラー等を有し、トナー像転写後の感光体ドラム321の周面を清掃する。
中間転写ユニット33は、中間転写ベルト331、駆動ローラー332、従動ローラー333及びテンションローラー334を備える。中間転写ベルト331は、これらローラー332、333、334及び上述の一次転写ローラー325に架け渡された無端ベルトであって、該中間転写ベルト331の外周面には、複数の感光体ドラム321からトナー像が、同一箇所に重ねて転写される(一次転写)。
駆動ローラー332の周面に対向して、二次転写ローラー35が配置されている。駆動ローラー332と二次転写ローラー35とのニップ部は、中間転写ベルト331に重ね塗りされたフルカラーのトナー像をシートに転写する二次転写部35Aとなる。駆動ローラー332又は二次転写ローラー35のいずれか一方のローラーに、トナー像と逆極性の二次転写バイアス電位が印加され、他方のローラーは接地される。なお、従動ローラー333は、中間転写ベルト331の周回に応じて従動するローラー、テンションローラー334は中間転写ベルト331に所定の張力を付与するローラーである。
二次転写部35Aの近傍には、中間転写ベルト331の周面に形成されるパッチトナー像の濃度を検知するパッチ濃度センサー336(濃度検出手段)が配置されている。パッチ濃度センサー336は、パッチトナー像に向けて検査光を発する発光部と、前記検査光の反射光を受光する受光部とを含む。パッチ濃度センサー336によるパッチトナー像の濃度検出結果に基づいて、現像バイアスが調整される(キャリブレーション動作)。
トナー補給部34は、イエロー用トナーコンテナ34Y、マゼンタ用トナーコンテナ34M、シアン用トナーコンテナ34C、及びブラック用トナーコンテナ34Bkを含む。これらトナーコンテナ34Y、34C、34M、34Bkは、それぞれ各色のトナーを貯留するものであり、YMCBk各色に対応する画像形成ユニット32Y、32M、32C、32Bkの現像装置324に、図略の供給経路を通して各色のトナーを供給する。
給紙部40は、画像形成処理が施されるシートを収容する2段の給紙カセット40A、40Bを備える。これら給紙カセット40A、40Bは、装置本体10の前方から手前方向に引出可能である。給紙カセット40A、40Bは、自動給紙用に設けられたカセットであるが、装置本体10の右側面10Rには、手差し給紙用の給紙トレイ46も設けられている。給紙トレイ46は、その下端部において本体カバー101に対して開閉自在に取り付けられている。ユーザーは、手差し給紙を行う場合、図示の通り給紙トレイ46を開き、その上にシートを載置する。
給紙カセット40A(40B)は、複数のシートが積層されてなるシート束を収納するシート収容部41と、前記シート束を給紙のためにリフトアップするリフト板42とを備える。給紙カセット40A(40B)の右端側の上部には、ピックアップローラー43と、給紙ローラー44とリタードローラー45とのローラー対とが配置されている。ピックアップローラー43及び給紙ローラー44の駆動により、給紙カセット40A内のシート束の最上層のシートが1枚ずつ繰り出され、搬送経路50の上流端へ搬入される。一方、給紙トレイ46に載置されたシートは、同様にピックアップローラー461及び給紙ローラー462の駆動によって、搬送経路50へ搬入される。
搬送経路50は、給紙部40から画像形成部30を経由して定着部60の出口までシートを搬送する主搬送路50Aと、シートに対して両面印刷を行う場合に片面印刷されたシートを画像形成部30に戻すための反転搬送路50Bと、主搬送路50Aの下流端から反転搬送路50Bの上流端へシートを向かわせるためのスイッチバック搬送路50Cと、主搬送路50Aの下流端から装置本体10の左側面10Lに設けられたシート排出口10Eまでシートを水平方向に搬送する水平搬送路50Dとを含む。この水平搬送路50Dの大半は、搬送ユニット55の内部に備えられているシート搬送路で構成されている。
主搬送路50Aの、二次転写部35Aよりも上流側には、レジストローラー対51が配置されている。シートは、停止状態のレジストローラー対51にて一旦停止され、スキュー矯正が行われる。その後、画像転写のための所定のタイミングで、レジストローラー対51が駆動モーター(図略)で回転駆動されることで、シートは二次転写部35Aに送り出される。この他、主搬送路50Aには、シートを搬送するための搬送ローラー52が複数配置されている。他の搬送路50B、50C、50Dも同様である。
搬送経路50の最下流端には、排紙ローラー53を備えた排紙ユニット530が、搬送ユニット55に隣接して配置されている。排紙ローラー53は、装置本体10の左側面10Lに配置される図略の後処理装置に、シート排出口10Eを通してシートを送り込む。なお、後処理装置が取り付けられない画像形成装置では、シート排出口10Eの下方にシート排出トレイが設けられる。
搬送ユニット55は、定着部60から搬出されるシートを、シート排出口10Eまで搬送するユニットである。本実施形態の画像形成装置1は、定着部60が装置本体10の右側面10R側に配置され、シート排出口10Eは、右側面10Rと対向する装置本体10の左側面10L側に配置されている。従って、搬送ユニット55は、装置本体10の右側面10Rから左側面10Lに向けて、シートを水平方向に搬送する。
定着部60は、シートにトナー像を定着させる定着処理を施す誘導加熱方式の定着装置であって、加熱ローラー61、定着ローラー62、加圧ローラー63、定着ベルト64、誘導加熱ユニット65及び搬送ローラー対66を含む。定着ローラー62に対して加圧ローラー63が圧接され、定着ニップ部が形成されている。加熱ローラー61及び定着ベルト64は誘導加熱ユニット65によって誘導加熱され、その熱を前記定着ニップ部に与える。シートが定着ニップ部を通過することで、シートに転写されたトナー像が当該シートに定着される。
続いて、現像装置324について詳細に説明する。図2は、現像装置324の内部構造を概略的に示す垂直方向の断面図、図3は、現像装置324の水平方向の断面図である。現像装置324は、該現像装置324の内部空間を画定する現像ハウジング80を含む。この現像ハウジング80には、非磁性体のトナーおよび磁性体のキャリアを含む現像剤を貯留するキャビティであって、現像剤を攪拌しつつ搬送することが可能とされた現像剤貯留部81が備えられている。また、現像ハウジング80の内部には、現像剤貯留部81の上方に配置された磁気ローラー82(現像剤担持体)と、磁気ローラー82の斜め上方位置で磁気ローラー82に対向配置された現像ローラー83(トナー担持体)と、磁気ローラー82に対向配置された現像剤規制ブレード84とを含む。
現像剤貯留部81は、現像装置324の長手方向に延びる2つの隣り合う現像剤貯留室81a,81bを含む。現像剤貯留室81a,81bは、現像ハウジング80に一体に形成され長手方向に延びる仕切り板801によって互いに仕切られているが、図3に示すように、長手方向における両端部において連通路803、804によって互いに連通されている。各現像剤貯留室81a,81bには、軸回りに回転することにより現像剤を攪拌及び搬送するスクリューフィーダー85,86が収容されている。スクリューフィーダー85,86は、図略の駆動機構により回転駆動されるが、その回転方向が互いに逆方向に設定されている。これにより現像剤は、図3に矢印で示すように、現像剤貯留室81aおよび現像剤貯留室81b間を攪拌されつつ循環搬送される。この攪拌により、トナーとキャリアとが混合され、トナーが例えばマイナスに帯電される。
磁気ローラー82は、現像装置324の長手方向に沿って配設されており、図2では時計方向に回転可能である。磁気ローラー82の内部には、固定式の所謂磁石ロール(図示せず)が配置されている。磁石ロールは複数の磁極を有しており、本実施形態では汲上極821、規制極822及び主極823を有する。汲上極821は現像剤貯留部81に対向し、規制極822は現像剤規制ブレード84に対向し、主極823は現像ローラー83に対向している。
磁気ローラー82は、汲上極821の磁力によって現像剤貯留部81から現像剤をその周面82A上に磁気的に汲み上げる(受け取る)。汲み上げられた現像剤は、磁気ローラー82の周面82A上に磁気的に現像剤層(磁気ブラシ層)として保持され、磁気ローラー82の回転に伴って現像剤規制ブレード84に向けて搬送される。
現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の回転方向から見て現像ローラー83よりも上流側に配置され、磁気ローラー82の周面82Aに磁気的に付着した現像剤層の層厚を規制する。現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の長手方向に沿って延びる磁性材料からなる板部材であり、現像ハウジング80の適所に固定された所定の支持部材841によって支持されている。また、現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の周面82Aとの間で所定の寸法の規制ギャップGを形成する規制面842(つまり現像剤規制ブレード84の先端面)を有する。
磁性材料から形成された現像剤規制ブレード84は、磁気ローラー82の規制極822によって磁化される。これにより、現像剤規制ブレード84の規制面842と規制極822との間に、つまり規制ギャップGにおいて磁路が形成される。汲上極821によって磁気ローラー82の周面82A上に付着した現像剤層が、磁気ローラー82の回転に伴って規制ギャップG内に搬送されると、現像剤層の層厚は規制ギャップGにおいて規制される。これにより、周面82A上には所定厚さの均一な現像剤層が形成される。
現像ローラー83は、現像装置324の長手方向に沿って、且つ、磁気ローラー82に対して平行に延びるように配設されており、図2では時計方向に回転可能である。現像ローラー83は、磁気ローラー82の周面82A上に保持された現像剤層に接触した状態で回転しつつ、前記現像剤層からトナーを受け取ってトナー層を担持する周面83Aを有する。現像動作が行なわれる現像時には、前記トナー層のトナーが感光体ドラム321の周面に供給される。
現像ローラー83および磁気ローラー82は、駆動源Mによって回転駆動される。現像ローラー83の周面83Aと磁気ローラー82の周面82Aとの間には、所定の寸法の隙間Sが形成されている。隙間Sは例えば約130μmに設定されている。現像ローラー83は、現像ハウジング80に形成された開口を通して感光体ドラム321に臨むように配置され、周面83Aと感光体ドラム321の周面との間にも所定の寸法の隙間(例えば約110μm)が形成されている。
図3に示すように、現像ハウジング80には、当該現像ハウジング80内におけるトナーの濃度を計測するトナー濃度センサー87が配置されている。トナー濃度センサー87は、例えば、透磁率を計測する透磁率センサーを備えて構成され、トナー濃度に応じて変化する透磁率に応じた電圧を出力する。
次に、図4を参照して、現像装置324のバイアス印加のための構成及び現像動作について説明する。現像装置324は、現像動作を制御するために、第1印加部88及び第2印加部89(回収手段/バイアス印加手段)と、第1印加部88及び第2印加部89を制御する制御部90(制御手段)とをさらに含む。同図に示すように、第1印加部88は、直列に接続された直流電圧源881と交流電圧源882とを有し、磁気ローラー82に接続されている。直流電圧源881から出力された直流バイアスに交流電圧源882から出力された交流バイアスが重畳された電圧が磁気ローラー82に印加される。第2印加部89は、直列に接続された直流電圧源891と交流電圧源892とを有し、現像ローラー83に接続されている。直流電圧源891から出力された直流バイアスに交流電圧源892から出力された交流バイアスが重畳された電圧が、現像ローラー83に印加される。
現像装置324が感光体ドラム321の周面上にトナーを供給する(静電潜像を現像する)現像時において、磁気ローラー82および現像ローラー83に印加される直流バイアスおよび交流バイアスは、一例を挙げれば次の通りに設定される。磁気ローラー82に印加される直流バイアスは+300Vであり、現像ローラー83に印加される直流バイアスは+70Vである。磁気ローラー82に印加される交流バイアスは、電圧値が+2.5kV、周波数が4.7kHz、duty比が70%である。現像ローラー83に印加される交流バイアスは、電圧値が+1.4kV、周波数が4.7kHz、duty比が30%である。
感光体ドラム321上の静電潜像の現像メカニズムを説明する。磁気ローラー82の周面82A上の磁気ブラシ層は、現像剤規制ブレード84によって層厚が均一に規制された後、磁気ローラー82の回転に伴って現像ローラー83に向けて搬送される。その後、隙間S(図2)の領域において、磁気ブラシ層中の多数の磁気ブラシDBが、回転中の現像ローラー83の周面83Aに接触する。
このとき、制御部90は、第1印加部88および第2印加部89を制御して所定の直流バイアスおよび交流バイアスを磁気ローラー82および現像ローラー83のそれぞれに印加する。これにより、磁気ローラー82の周面82Aと現像ローラー83の周面83Aとの間に所定の電位差が生じる。この電位差により、周面82Aと周面83Aとの対向位置において(主極823(図2)と周面83Aとの対向位置において)、磁気ブラシDBからトナーTのみが周面83Aに移動し、磁気ブラシDBのキャリアCは周面82A上に残る。これにより、現像ローラー83の周面83A上に所定厚さのトナー層TLが担持される。
周面83A上のトナー層TLは、現像ローラー83の回転に伴って感光体ドラム321の周面に向けて搬送される。感光体ドラム321にも、直流電圧と交流電圧との重畳電圧が印加されているので、感光体ドラム321の周面と現像ローラー83の周面83Aとの間には所定の電位差が生じている。この電位差により、トナー層TLのトナーTが感光体ドラム321の周面に移動する(トナーの供給)。これにより、感光体ドラム321の周面上の静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
図5は、現像ローラー83から磁気ローラー82側へのトナーの回収動作を説明するための模式図である。この回収動作は、1枚のシートにトナー像の転写処理を終え次のシートに転写処理を行うまでのシート間、又は1つの印字ジョブを終了した後、等に実行される。本実施形態では、上記回収動作の実行タイミングが、現像剤の劣化状態に応じて制御される。大略的には、現像剤の劣化が進行すると、回収動作の実行頻度を上げる。この点については、後記で詳述する。
実際の現像動作では、トナー層TL中のトナーTのうち、感光体ドラム321に移動せず周面83A上に残留する残留トナーRTが発生する。残留トナーRTは、現像ローラー83の回転に伴って周面83Aと磁気ローラー82の周面82Aとの対向位置に搬送されたとき、磁気ブラシDBによる掻き取り力と両ローラー82、83間の電気的な力とによって回収される。回収した残留トナーRTを有する磁気ブラシDBは、磁気ローラー82の回転に伴って主極823よりも下流側に搬送されると、前記磁石ロールの剥離極(図示せず)の磁力によって周面82Aから剥離し、現像剤貯留部81(図2)に戻される。
なお、上記の回収動作は、磁気ローラー82と現像ローラー83との間の電位差を反転させることにより達成される。上述のシート間及びジョブ終了後において前記電位差を現像時に対して一時的に反転させることで、現像ローラー83から残留トナーRTを強制的に引き剥がし、周面83Aをクリーンにすることができる。結果として、次回のシートに対する現像時には、現像ローラー83のトナー層TLは、現像剤貯留部81から新たに供給されたトナーTにて形成されることになる。つまり、トナー層TLを形成するトナーTの入れ替えが達成されるものである。
回収動作時において、磁気ローラー82および現像ローラー83に印加される直流バイアスおよび交流バイアスは、一例を挙げれば次の通りに設定される。磁気ローラー82に印加される直流バイアスは−300Vであり、現像ローラー83に印加される直流バイアスは+70Vである。磁気ローラー82に印加される交流バイアスは、電圧値が+2.5kV、周波数が4.7kHz、duty比が70%である。一方、現像ローラー83には交流バイアスは印加されない(0V)。
続いて、画像形成装置1の電気的構成について説明する。画像形成装置1は、当該画像形成装置1の各部の動作を統括的に制御する制御部90を備える。図6は、制御部90の機能ブロック図である。制御部90は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。また、画像形成装置1は、図1〜図5で説明した構成に加えて、操作部961、画像メモリー962及びI/F(インターフェイス)963を備える。
操作部961は、液晶タッチパネル、テンキー、スタートキー及び設定キーなどを備え、画像形成装置1に対するユーザーの操作や各種の設定を受け付ける。
画像メモリー962は、当該画像形成装置1がプリンターとして機能する場合に、例えばパーソナルコンピューターなどの外部機器から与えられる印刷用画像データを一時的に記憶する。また、画像形成装置1が複写機として機能する場合には、ADF20により光学的に読み取られた画像データを一時的に記憶する。
I/F963は、外部機器とのデータ通信を実現させるためのインターフェイス回路であり、例えば画像形成装置1と外部機器とを接続するネットワークの通信プロトコルに従った通信信号を作成すると共に、ネットワーク側からの通信信号を画像形成装置1が処理可能な形式のデータに変換する。パーソナルコンピューター等から送信される印刷指示信号はI/F963を介して制御部90に与えられ、また画像データは、I/F963を介して画像メモリー962に記憶される。
制御部90は、前記CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、リフレッシュ制御部91、キャリブレーション制御部92(パッチ形成手段)、判定部93(判定手段)、バイアス制御部94(制御手段及び回収手段の一部)、印字率算出部95及び耐久データ管理部96(データ取得手段)を備えるように機能する。
リフレッシュ制御部91は、現像ローラー83に担持されているトナー層TLを強制的に感光体ドラム321へ吐き出させるリフレッシュ動作を制御する。リフレッシュ制御部91は、印字率算出部95からシートに対する平均印字率に関するデータを取得し、前記平均印字率が所定値以下である場合、前記リフレッシュ動作を実行させる。例えばリフレッシュ制御部91は、50枚のシートに印字処理を施す毎に平均印字率データを取得し、例えば平均印字率=2%未満である場合に前記リフレッシュ動作を実行させる。リフレッシュ動作は、シート間若しくはジョブ間等において、ベタの静電潜像を感光体ドラム321に形成させ、該静電潜像に現像ローラー83からトナーを供給させる動作である。
キャリブレーション制御部92は、シートに転写されるトナーの濃度を一定に保つため、これを達成するために現像ローラー83に担持されているトナー層TLを一定に保つことを目的として、所定枚数(例えば100枚)の印字処理がシートに対して行われる度に、キャリブレーション動作を実行し適正な現像バイアスを求める。キャリブレーション動作が実行されるに際しては、図7に示すように、中間転写ベルト331の端部位置へパッチトナー像Pが転写される。つまり、キャリブレーション制御部92は、感光体ドラム321の端部にパッチ用の静電潜像を形成させ、現状で設定されている現像バイアスにて前記静電潜像にトナーを供給させ、パッチトナー像Pを形成させる。
パッチ濃度センサー336は、上記のパッチトナー像Pの濃度を検出する。パッチトナー像Pが十分な濃度を有している場合、現状の現像バイアス条件で十分なトナー層TLが現像ローラー83の周面83Aに担持されていることになる。この場合、現像バイアスは現状のままに維持される。一方、パッチトナー像Pの濃度が所定値以下である場合、現状の現像バイアス条件ではトナー層TLの厚さが不足していることになる。この場合、現像バイアスは、磁気ローラー82から現像ローラー83側へトナーTが移行し易くなるように変更される。この変更は、例えば磁気ローラー82に印加される直流バイアスの変更によって達成される。
判定部93は、磁気ローラー82に担持される現像剤(トナー)の特性が、どの程度劣化しているかを判定する。少なくとも判定部93は、現像剤の特性が所定の基準範囲である第1状態であるか、又は前記基準範囲から変化した第2状態であるかを判定する。本実施形態では、現像剤の現在状態の判定を、キャリブレーション動作の実行結果に依拠して行う。一般に、画像濃度の低下に起因する画像劣化は、現像剤中のトナーが帯電過多になることによって発生する。キャリブレーション動作は、専ら上記の画像濃度の低下を補完できる現像バイアスを設定することを目的とすることから、その設定された現像バイアスとトナーの帯電状態とは関連性がある。従って、例えば磁気ローラー82に印加される直流バイアスが、キャリブレーション動作によって如何なる電圧値に設定されたかによって、現像剤の劣化度合いを判定することができる。
例えば、磁気ローラー82に印加される直流バイアスのデフォルト値が+300Vであるとした場合、キャリブレーション動作の実行によって設定された前記直流バイアスが250V〜350Vの範囲であれば、現像剤の特性が通常状態(第1状態)であると判定させることができる。一方、前記直流バイアスが250V以下に設定された場合は、トナーが帯電過多であって現像剤の特性が前記通常状態よりも劣化した劣化状態(第2状態)であると判定させることができる。さらに、前記直流バイアスが350V以上に設定された場合は、トナーが帯電不足気味の状態であると判定させることができる。このように、キャリブレーション動作の実行によって設定される前記直流バイアスに閾値を設定することで、現像剤の現在状態を判定させることができる。
バイアス制御部94は、第1印加部88及び第2印加部89が磁気ローラー82及び現像ローラー83に与えるバイアスを制御することで、前記静電潜像の現像動作や上述のトナーの回収動作を実行させる。言うまでもなく、現像動作は、各シートに対する画像形成時に実行される。一方、バイアス制御部94は、トナーの回収動作の実行タイミングを、判定部93による現像剤の現在状態の判定結果に基づいて変更する。
バイアス制御部94は、大略的に、現像剤の特性が上記の「通常状態」であると判定した場合、回収動作の実行間隔を所定の第1間隔に設定し、現像剤の特性が上記の「劣化状態」であると判定した場合、回収動作の実行間隔を、前記第1間隔よりも短い第2間隔に設定する。なお、トナーが帯電不足気味の状態であると判定された場合は、回収動作の実行間隔を、前記第1間隔よりも長い第3間隔に設定させても良い。
既述の通り、回収動作は、シート間(ページ間)及びジョブ終了後に実行される。バイアス制御部94は、判定部93の判定結果が上記「通常状態」であって、複数ページに亘る印字ジョブが与えられたとき、例えば4ページ分(4枚のシート)の印字処理を行う度、及びその印字ジョブの終了時に回収動作を実行させる。すなわち、例えば印字枚数が15ページに亘る1つの印字ジョブが与えられた場合、4ページと5ページとのシート間、8ページと9ページとのシート間、12ページと13ページとのシート間、及び15ページの印字終了後に回収動作が実行される。
これに対し、判定部93の判定結果が上記「劣化状態」である場合、バイアス制御部94は、回収動作の実行頻度を上げる。例えば、「通常状態」では上掲の例の通り4ページ毎に回収動作を実行させていたものを、バイアス制御部94は、「劣化状態」においては3ページ毎若しくは2ページ毎に回収動作を実行させる。また、現像剤の劣化の度合いが大きい場合は、1ページ毎に回収動作を実行させる。このように、現像剤の特性が「劣化状態」である場合に回収動作を頻繁に実行させることで、つまり現像ローラー83上のトナー層TLの入れ替えを頻繁に行わせることで、現像剤の劣化の進行を抑制することができる。また、回収動作の高頻繁での実行によって、帯電過多状態のトナーが現像ローラー83上に多く滞留しなくなることから上述のリフレッシュ動作によるトナーの吐き出しをスムースに行わせることができると共に、結果的にリフレッシュ動作によるトナーの吐き出し量(トナー消費量)を抑制できるようになる。なお、「トナーが帯電不足気味の状態」であるときは、回収動作の実行頻度を下げる(例えば6ページ毎)ようにしても良い。
バイアス制御部94による回収動作の実行タイミングの設定態様は、上記以外に種々例示できる。例えば、レギュラータイミングで回収動作は一切行わず(第1間隔=0)、判定部93が「劣化状態」と判定したときのみ、回収動作を実行させるようにしても良い。あるいは、比較的長いレギュラータイミングで回収動作が実行されるよう設定しておき(例えば10ページの印字毎+ジョブ終了時)、判定部93が「劣化状態」と判定した場合には、追加的な回収動作を前記レギュラータイミングに割り入れて実行させるようにしても良い。
さらに、現像装置324の駆動時間、平均印字率、印字シート枚数などの耐久要素を加味して、バイアス制御部94が回収動作の実行タイミングの設定する態様としても良い。これらの耐久要素は、現像剤の特性劣化に影響を与える。一般に、駆動時間、印字シート枚数が増加する程、現像剤の特性は劣化する。また、平均印字率が低い程、トナーが帯電過多となりがちで、現像剤の特性は劣化する。従って、上記耐久要素に応じた回収動作の実行タイミングのテーブルを予め準備しておき、当該テーブルに沿って、回収動作の実行頻度を変更させるようにすることが望ましい。前記テーブルの例としては、200Kページの印字を行われた後は、上記「通常状態」におけるシート間の回収動作の実行タイミングを、「4ページ毎」から「3ページ毎」に変更する、というようなテーブルを挙げることができる。
印字率算出部95は、シートに転写されるトナー像の印字率を求める。例えば印字率算出部95は、画像メモリー962に格納された画像データを参照し、その印字ドット数等に基づき印字率をシート単位で算出する。さらに、印字率算出部95は、前記印字率の平均値(平均印字率)も算出する。
耐久データ管理部96は、現像装置324(画像形成装置1)の駆動時間、印字率算出部95が求める平均印字率、及び印字シート枚数などの耐久要素に関するデータを管理(記憶)する。耐久要素を加味して回収動作の実行タイミングを設定させる場合、バイアス制御部94は、この耐久データ管理部96に格納されている耐久要素に関するデータを参照する。
続いて、制御部90に制御動作を図8及び図9に基づいて説明する。図9は、制御部90による画像形成部30の制御動作の一例を示すフローチャート、図9はトナー回収動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、外部機器から印刷指示がI/F963を通して画像データが与えられた場合、若しくは、読取ユニット25で原稿画像が読み取られ画像データが取得された場合であって、制御部90が画像形成部30に画像形成処置(現像処理)を実行させる場合の処理を示す。
制御部90は、1枚のシートに対する現像動作を実行させる(ステップS1)。この場合、バイアス制御部94は、第1及び第2印加部88、89を制御し、磁気ローラー82と現像ローラー83との間に所定の電位差が形成されるように現像バイアスを印加させる。1枚のシートに対する現像動作を終えると、現像ローラー83からトナーを回収する回収タイミングであるか否かが確認される(ステップS2)。ここで、回収タイミングは、上述したように、1つの印字ジョブの終了時、又は予め定められたシート間(例えば4ページ毎)である。
回収タイミングである場合(ステップS2でYES)、トナー回収制御が実行される(ステップS20)。このトナー回収制御については、図9に基づき後述する。トナー回収制御の実行後、若しくは、回収タイミングでない場合(ステップS2でNO)、続いて、現像ローラー83上のトナーを感光体ドラム321側へ強制的に吐き出させるリフレッシュ動作を実行させるタイミングであるか否かが判定される(ステップS3)。この判定基準は、前回のリフレッシュ動作の実行要否判定が行われて以降、例えば50枚のシートに対する印字処理が実行されたか否かである。
リフレッシュ動作の実行要否判定タイミングである場合(ステップS3でYES)、リフレッシュ制御部91は、印字率算出部95から平均印字率に関するデータを取得する(ステップS4)。ここで取得されるデータは、例えば直近に印字した50枚のシートについての平均印字率データである。そして、この平均印字率データに基づいて、リフレッシュ動作の実行要否判定が行われる(ステップS5)。ここでの判定基準は、例えば、平均印字率が2%以下であるか否かである。
リフレッシュ動作が必要と判定された場合(ステップS5でYES)、リフレッシュ制御部91は、画像形成部30にリフレッシュ動作を実行させ、トナーを強制的に消費させる(ステップS6)。これに対し、リフレッシュ動作の実行要否の判定タイミングでは無い場合(ステップS3でNO)、ステップS4〜S6はスキップされる。また、リフレッシュ動作が必要と判定された場合(ステップS3でNO)は、ステップS6はスキップされる。
次に、キャリブレーション動作の実行タイミングであるか否かが確認される(ステップS7)。この判定基準は、前回のキャリブレーション動作が実行されて以降、例えば100枚のシートに対する印字処理が実行されたか否かである。キャリブレーション動作の実行タイミングである場合(ステップS7でYES)、キャリブレーション制御部92は、パッチトナー像P(図7参照)を中間転写ベルト331に形成させると共にその画像濃度をパッチ濃度センサー336に検出させる(ステップS8)。さらに、キャリブレーション制御部92は、パッチトナー像Pの濃度に基づいて現像バイアスを調整する(ステップS9)。キャリブレーション動作の実行タイミングでは無い場合(ステップS7でNO)、これらステップS8及びS9はスキップされる。
その後、耐久データ管理部96において管理されている、現像装置324(画像形成装置1)の駆動時間、印字率算出部95が求める平均印字率、及び印字シート枚数などの耐久要素に関する耐久データが更新される(ステップS10)。しかる後、画像形成処理を終了するか否かが確認され(ステップS11)、画像形成処理が継続される場合(ステップS11でNO)は、ステップS1に戻って処理が繰り返される。一方、継続する画像形成処理が存在しない場合は(ステップS11でYES)、そのまま処理を終える。
次に、図9に基づいて、上記ステップS20のトナー回収制御について説明する。図8のステップS2で回収タイミングであると判定されると、バイアス制御部94は、第1及び第2印加部88、89を制御し、磁気ローラー82と現像ローラー83との間にトナー回収用の所定の電位差が形成されるようにバイアスを印加させる(ステップS21)。これにより、トナー回収動作が実行される。
続いて、判定部93により、前回のキャリブレーション動作の実行後、新たにキャリブレーション動作が実行されたか否かが確認される(ステップS22)。新たにキャリブレーション動作が実行された場合(ステップS22でYES)、判定部93は、キャリブレーション制御部92により調整(図8のステップS9)された現像バイアスの値を取得する(ステップS23)。新たにキャリブレーション動作が実行されていない場合は(ステップS22でNO)、ステップS23はスキップされる。さらに、判定部93は、耐久データ管理部96において管理されている最新の耐久データを取得する(ステップS24)。
取得した現像バイアス値及び耐久データに基づいて、判定部93は、現像剤の現在状態を識別し、トナー回収動作の実行タイミングの変更が必要であるか否かを判定する(ステップS25)。上記で例示したように、キャリブレーション制御部92が、キャリブレーション動作においてパッチトナー像Pの濃度に応じて磁気ローラー82に印加される直流バイアスを変更する調整を行う場合、判定部93は、前記直流バイアスの値が如何なる値に調整されたかという点と、耐久データによる補正が必要かと言う点を判定要素として、現像剤の現在状態を識別する。
そして、現状のトナー回収動作の実行タイミングが、現像剤の現在状態にマッチしていない場合、典型的には現像剤の特性が劣化してより頻繁なトナー回収動作が必要な場合、判定部93は「回収タイミング変更要」と判定する(ステップS25でYES)。そして、予め準備されたテーブル等に従って、判定部93は、回収タイミングを更新する(ステップS26)。一方、現状のトナー回収動作の実行タイミングと、現像剤の現在状態とがマッチしている場合、判定部93は「回収タイミング変更不要」と判定する(ステップS25でNO)。
<検証例>
画像形成部30の仕様を次の通りとした。
[感光体ドラム321]
アモルファスシリコン系材料を用いたドラムであって、直径=φ30mm、周速=300mm/sec。
[現像ローラー83]
直径=φ20mm、周速=450mm/sec、回転方向は対向部において感光体ドラムと順方向。
[磁気ローラー82]
直径=φ20mm、周速=450mm/sec、回転方向は対向部で現像ローラーとカウンター方向。
[現像バイアス]
現像ローラー83;交流バイアス=+1.4kV、duty比=30%、直流バイアス=+70V。
磁気ローラー82;交流バイアス=+2.5kV、duty比=70%、直流バイアス=+300V。
[トナー回収動作時のバイアス]
現像ローラー83;交流バイアス=0V、直流バイアス=+70V。
磁気ローラー82;交流バイアス=+2.5kV、duty比=70%、直流バイアス=−300V。
[現像剤]
トナー:粒径6.8μm、キャリア:粒径35μm
トナー/キャリア重量比率:10%
また、画像形成部30の動作を次の通りに設定した。
[リフレッシュ動作]
平均印字率を、50枚のシートを印字する度に判定。平均印字率=2%未満のとき、現像ローラー83のトナーを強制的に感光体ドラム321へ吐き出させる。
[キャリブレーション動作]
100枚のシートを印字する度に、パッチトナー像を印字させ、そのトナー濃度をパッチ濃度センサー336で計測。画像濃度が一定に維持できるように、磁気ローラー82の直流バイアスを調整。
[トナー回収動作]
磁気ローラー82の直流バイアスの調整値(デフォルト値=+300V)に応じて、シート間において実行させるトナー回収動作のタイミングを次の通りに変更する。磁気ローラー82の直流バイアスの調整値が0〜+200Vのとき、1枚のシートに印字する度にトナー回収動作を実行、直流バイアス=+200V〜+250Vのとき、2枚のシートに印字する度にトナー回収動作を実行、直流バイアス=+250V〜+350Vのとき、4枚のシートに印字する度にトナー回収動作を実行(デフォルトタイミングである)、直流バイアス=+350V以上のとき、6枚のシートに印字する度にトナー回収動作を実行。
[耐久データに基づく補正]
印字枚数が200k枚を超過する度に、各直流バイアスの調整値条件におけるトナー回収動作の実行タイミングを、1枚ずつ短縮する。例えば、直流バイアス=+250V〜+350Vのときであって、印字枚数が200k枚を超過すれば、3枚のシートに印字する度にトナー回収動作を実行させ、400k枚を超過すれば、2枚のシートに印字する度にトナー回収動作を実行させる。
供試用の現像剤として、未使用の初期現像剤、平均印字率=5%で100k枚のシートに印字処理を施した後の現像剤、平均印字率=5%で300k枚のシートに印字処理を施した後の現像剤、及び、平均印字率=5%で500k枚のシートに印字処理を施した後の現像剤を準備した。それぞれの供試現像剤を用い、印字枚数=0枚、1000枚、2000枚、5000枚及び10000枚のシートに、印字率=0.5%の原稿、印字率=20%に基づいて画像形成処理を行わせ、各印字枚数段階におけるベタ画像の濃度を計測した。実施例では、上掲の「トナー回収動作」及び「耐久データに基づく補正」の設定に従って、トナー回収動作の実行タイミングを変更した。一方、比較例では、そのようなトナー回収動作の実行タイミングの変更は行わず、デフォルトタイミングを維持した。前記実施例及び比較例のベタ画像の濃度計測結果を表1に示す。
上掲の表1から明らかな通り、供試現像剤の種別に拘わらず、印字率が20%の原稿の場合についてはベタ画像濃度に顕著な差異は表れていない。しかしながら、印字率が0.5%の原稿の場合には、両者間に顕著な差異が観察された。回収動作の実行タイミングの変更を適宜行う実施例では、いずれの供試現像剤においても、印字枚数0枚〜10000枚の範囲でコンスタントな画像濃度を得ることができた。これに対し、比較例では、5000枚以降に印字されるシートについて顕著に濃度低下が発生した。また、比較例では、概ね2000枚を印字した時点で、画像濃度を一定に保つために予め準備されている現像バイアス調整範囲の最大値に達し、以降は画像濃度低下を現像バイアスの調整で補償できない状態に至った。
続いて、リフレッシュ動作により吐出されるトナーの量を比較した。供試現像剤として、平均印字率=5%で100k枚のシートに印字処理を施した後の現像剤を用い、各直流バイアスの調整値条件におけるトナー回収動作の実行タイミングを、表1に示した「100k現像剤」についての実施例よりも1枚ずつ短縮(例えば、デフォルトタイミングは、3枚のシートに印字する度)して、上記と同様なベタ画像の濃度計測を行った。ベタ画像の濃度計測結果を表2に示す。
表2に示す通り、印字枚数0枚〜10000枚の範囲で、ベタ画像濃度の有意な低下は認められなかった。さらに、リフレッシュ動作により吐出されるトナーの量を、表1の「100k現像剤」についての実施例と、表2に示した実施例とで比較したところ、トナー吐き出し量を0.5%削減することができた。つまり、トナー回収動作の実行タイミングを短縮することで、リフレッシュ動作によるトナー消費量を抑制できることが確認された。
次に、現像剤の特性を知見する手法についての他の実施形態を例示する。上記実施形態では、定常のキャリブレーション動作を利用して現像剤の現在状態を判定させる態様を示した。他の実施形態では、キャリブレーション制御部92が特別なパッチトナー像の形成動作を行い、判定部93が前記特別なパッチトナー像の濃度検出結果に基づいて現像剤の現在状態を判定する例を示す。
前記特別なパッチトナー像の形成とは、現像ローラー83の周面83Aの同一箇所を用いて、ハーフトーンの第1パッチトナー像、ベタのパッチトナー像及びハーフトーンの第2パッチトナー像を順次形成させることである。そして、第1パッチトナー像と第2パッチトナー像との濃度差に基づいて、現像剤の特性が判定される。以下、この実施形態について詳述する。
図10は、パッチトナー像の形成状態を示す模式的な斜視図である。現像ローラー83の周面83Aの所定の担持位置83Pが、パッチトナー像の形成領域として選定される。つまり、担持位置83Pからパッチトナー像用のトナーが供給されるよう、キャリブレーション制御部92は、感光体ドラム321の周面にパッチトナー像用の静電潜像321Aを形成させる。静電潜像321Aは担持位置83Pから与えられるトナーにより現像され、中間転写ベルトにパッチトナー像Pとして転写される。そして、パッチ濃度センサー336により、パッチトナー像Pの濃度が計測される。
本実施形態では、キャリブレーション制御部92は、現像ローラー83の周回毎に連続的に、上記の担持位置83Pを使用して図11に示す3つのパッチトナー像を形成させる。すなわち、先ず現像ローラー83の第1回転目において、担持位置83Pのトナーを用いてハーフトーンの第1パッチトナー像P11が感光体ドラム321上に形成される。第1パッチトナー像P11は、面積率(担持位置83Pの領域をドットが占める面積割合)が25%〜75%の範囲から選ばれる任意の濃度のパッチトナー像である。
次に、現像ローラー83の第2回転目において、担持位置83Pのトナーを用いて面積率=100%又はその近傍のベタパッチトナー像PFが形成される。引き続き、現像ローラー83の第3回転目において、担持位置83Pのトナーを用いて、第1パッチトナー像P11と同一面積率の第2パッチトナー像P12が形成される。つまり、第2パッチトナー像P12は、面積率が25%〜75%の範囲から選ばれ、且つ第1パッチトナー像P11と同一面積率の設定で形成されるパッチトナー像である。
これらパッチトナー像P11、PF及びP12の濃度が、パッチ濃度センサー336により順次計測される。判定部93は、これらのうち、第1パッチトナー像P11と第2パッチトナー像P12との濃度差を求め、当該濃度差に基づいて現像剤の現在状態の判定(第1状態又は第2状態の別の判定)を行う。
面積率が100%のベタのトナー像が形成された場合、現像ローラー83の周面83Aに担持されているトナーの殆どは、感光体ドラム321の周面に供給されることになる。その後のトナー像形成において、もし現像剤が劣化している場合、例えばトナーが帯電過多の状態である場合、十分な厚さのトナー層TL(図4参照)が現像ローラー83の周面83Aに担持され難くなる。その結果、ベタのトナー像が形成された後に形成されるトナー像は、その濃度が不足気味となる。本実施形態では、この現象を利用して、現像剤の特性を推定する。
環境変化による現像剤の特性変化又は現像剤の劣化が生じていない場合、ベタパッチトナー像PFが中間で形成されたとしても、第1パッチトナー像P11と第2パッチトナー像P12とに濃度差は殆ど生じない。これは、トナーが帯電過多の状態で無い場合、ベタパッチトナー像PFの形成のため担持位置83Pに担持されているトナーが概ね全て感光体ドラム321に供給されても、再び担持位置83Pに十分なトナーが担持されるからである。これに対し、トナーが帯電過多の状態に至っていると、第2パッチトナー像P12の濃度は第1パッチトナー像P11よりも薄くなる。これは、ベタパッチトナー像PFの形成によってトナーが吐き出されてしまうと、直ちに担持位置83Pに十分なトナーが担持されないからである。従って、第1パッチトナー像P11と第2パッチトナー像P12との濃度差の程度に基づいて、現像剤の特性変化の度合いを評価することができる。
例えば、パッチ濃度センサー336が、パッチトナー像の光透過率Qに基づき、濃度=Log(1/Q)の関係式で濃度を求めるものであって、白地の濃度≒0、最高濃度=1.5の数値レンジで濃度を評価する場合を例に挙げる(なお、表1及び表2に示した濃度データも、この尺度に基づいている)。この場合、例えば第1パッチトナー像P11と第2パッチトナー像P12との濃度差が0.1以上であるか否かに基づき、現像剤の特性が「通常状態」(第1状態)であるか、或いは「劣化状態(変化状態)」(第2状態)であるかを判定させることができる。すなわち、濃度差が0.1未満のとき、判定部93は、現像剤の特性が「通常状態」であると判定する。一方、濃度差が0.1以上のとき、判定部93は、現像剤の特性が「劣化状態」であると判定し、この場合、トナー回収動作の実行間隔が短くなるよう、実行タイミングを変更する。なお、濃度差が0.1未満のとき、トナー回収動作の実行間隔が長くなるよう、実行タイミングを変更させても良い。
トナー回収動作の実行タイミングの変更態様については、種々例示することができる。例えば、
(1)やや長目の間隔で、一定周期(第1間隔)でトナー回収動作が実行されるよう設定しておき、一定頻度で行われる上述のパッチトナー像の濃度差検出動作によって現像剤の特性が「劣化状態」であると判定された場合に、前記一定周期の間(第2間隔)に追加的にトナー回収動作を割り入れて実行させる(実施例1)、
(2)一定頻度で行われる前記濃度差検出動作によって現像剤の特性を逐次判定し、直前のトナー回収動作の実行間隔(第1間隔)を、その判定結果に応じた実行間隔(第2間隔)に変更させる(実施例2)、又は、
(3)トナー回収動作を定期的には行なわず(この場合、第1間隔=0である)、比較的短い目の一定頻度で行われる前記濃度差検出動作によって現像剤の特性が「劣化状態」であると判定された場合に、トナー回収動作を実行させる(実施例3)、
という態様を例示することができる。
上記実施例1の態様は、環境変化等による急激な現像剤特性の変化に対応でき、また前記濃度差検出動作の頻度が低く済むので高速印刷機に向いている。上記実施例2の態様は、現像剤の経時劣化等の比較的緩やかな現像剤特性の変化に対応でき、同様に前記濃度差検出動作の頻度が低く済むので高速印刷機に向いている。上記実施例3の態様は、前記濃度差検出動作の頻度を高くする必要があるため、専ら低速印刷機向けとなるが、トナー回収動作の実行回数を最も少なくすることができる態様である。
図12は、制御部90が、上記実施例1及び実施例3の制御を行う場合のフローチャートである。パッチトナー像の濃度検出タイミングが到来すると、キャリブレーション制御部92は、感光体ドラム321の周面にハーフトーンのパッチトナー像用の静電潜像321Aを形成させ、この静電潜像321Aを現像ローラー83の担持位置83Pから与えられるトナーによって現像させる。この現像動作により、感光体ドラム321上に第1パッチトナー像P11が形成され、これが中間転写ベルト331に転写される(ステップS31)。そして、第1パッチトナー像P11の濃度D1が、パッチ濃度センサー336により計測される(ステップS32)。
次に、キャリブレーション制御部92は、現像ローラー83の第2回転目において、同一の担持位置83Pから供給されるトナーによって、感光体ドラム321上にベタパッチトナー像PFを形成させる(ステップS33)。該ベタパッチトナー像PFは、中間転写ベルト331に転写させても良いし、一次転写バイアスを印加せずにクリーニング装置326(図1)で除去させても良い。
続いて、キャリブレーション制御部92は、現像ローラー83の第3回転目において、同一の担持位置83Pから供給されるトナーによって、感光体ドラム321上に第1パッチトナー像P11と同一面積率の第2パッチトナー像P12を形成させる(ステップS34)。そして、第2パッチトナー像P12の濃度D2が、パッチ濃度センサー336により計測される(ステップS35)。
その後、判定部93により、第1パッチトナー像P11の濃度D1と第2パッチトナー像P12の濃度D2との濃度差が求められ、現像剤の特性が判定される(ステップS36)。濃度差D1−D2≦0.1の条件式を満たさない場合(ステップS36でNO)、判定部93は、現像剤の特性が「劣化状態」であると判定する。そして、バイアス制御部94は、レギュラータイミングで実行されているトナー回収動作に加えて、別途のトナー回収動作を割り入れて実行させる(実施例1)、若しくは、トナー回収動作を実行させる(実施例3)(ステップS37)。
一方、濃度差D1−D2≦0.1の条件式を満たす場合(ステップS36でYES)、判定部は、現像剤の特性が「通常状態」であると判定する。この場合、バイアス制御部94は、レギュラータイミングで実行されているトナー回収動作のみを実行させる(実施例1)、若しくは、トナー回収動作を実行しない(実施例3)。
図13は、制御部90が、上記実施例2の制御を行う場合のフローチャートである。図13において、ステップS41〜ステップS45までの処理は、図12に示したステップS31〜ステップS35までの処理と同一であるので、ここでは説明を省略する。
判定部93により、第1パッチトナー像P11の濃度D1と第2パッチトナー像P12の濃度D2との濃度差が求められ、現像剤の特性が判定される(ステップS46)。濃度差D1−D2≦0.1の条件式を満たす場合(ステップS46でYES)、判定部93は、現像剤の特性が「通常状態」であると判定する。この場合、バイアス制御部94は、トナー回収動作の実行間隔を直前より長く設定する。例えば、今回のパッチトナー像の濃度差検出が行われる直前のトナー回収動作の実行頻度が、4枚のシートに印字処理を行う毎であったならば、5枚毎に変更される。
これに対し、濃度差D1−D2≦0.1の条件式を満たさない場合(ステップS46でNO)、判定部93は、現像剤の特性が「劣化状態」であると判定する。この場合、バイアス制御部94は、トナー回収動作の実行間隔を直前より短く設定する。例えば、今回のパッチトナー像の濃度差検出が行われる直前のトナー回収動作の実行頻度が、4枚のシートに印字処理を行う毎であったならば、3枚毎に変更されるものである。
上記実施例1〜3に対応付けた確認実験について記す。上掲の検証例と同一の仕様の画像形成部30によって、連続的に印字率=2%の原稿について画像形成動作を行わせつつ、次に示す実施例1〜3及び比較例の態様でトナー回収動作を実行させた。
<実施例1>
レギュラータイミングのトナー回収動作として、10枚のシートに印字処理を行う毎に、シート間においてトナー回収動作を実行させる。パッチトナー像の濃度差検出は、100枚のシートに印字処理を行う毎とし、現像剤の特性の状態判定結果が「劣化状態」であった場合、次のパッチトナー像の濃度差検出タイミングまで、レギュラータイミングとは別個に追加のトナー回収動作を行わせる。これにより、例えば5枚のシートに印字処理を行う毎に、シート間においてトナー回収動作を実行されるようになる。
<実施例2>
初期設定として、10枚のシートに印字処理を行う毎に、シート間においてトナー回収動作を実行させる。パッチトナー像の濃度差検出を、100枚のシートへの印字処理毎に行う。現像剤の特性の状態判定結果が「劣化状態」である場合、トナー回収動作の実行間隔を1枚分短縮し(9枚毎)、「通常状態」である場合は、トナー回収動作の実行間隔を1枚分長くする(11枚毎)という制御を行う。
<実施例3>
パッチトナー像の濃度差検出を、50枚のシートへの印字処理毎、及び1つの印字ジョブの終了時に行う。現像剤の特性の状態判定結果が「劣化状態」である場合、トナー回収動作をその直後に1回行う。現像剤の特性の状態判定結果が「通常状態」である場合、トナー回収動作は行わない。
<比較例>
4枚のシートに印字処理を行う毎に、シート間においてトナー回収動作を実行させる。このトナー回収動作の実行間隔は不変とした。
図14は、1〜5000枚のシートに連続的に画像形成処理を行わせつつ、実施例1、実施例3、及び比較例の態様で各々トナー回収動作を実行させた場合における、所定枚数毎の画像濃度の計測結果を示すグラフである。図15は、1〜250000枚のシートに連続的に画像形成処理を行わせつつ、実施例2及び比較例の態様で各々トナー回収動作を実行させた場合における、所定枚数毎の画像濃度の計測結果を示すグラフである。図14及び図15から明らかな通り、実施例1〜3の態様で各々トナー回収動作を実行させると、顕著な画像濃度低下が発生しないことが確認された。
以上説明した通り、本実施形態の画像形成装置1は、現像剤層の特性が判定部93により判定され、その判定結果に応じてトナー回収動作の実行タイミングが決定される。従って、現像剤の現在状態に応じてトナー回収動作を実行させることができ、タッチダウン現像方式が採用された現像装置324を備えた画像形成装置1に徒に回収動作を実行させない一方で、画像品質を担保させることができる。