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JP5614291B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

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JP5614291B2 JP2011002245A JP2011002245A JP5614291B2 JP 5614291 B2 JP5614291 B2 JP 5614291B2 JP 2011002245 A JP2011002245 A JP 2011002245A JP 2011002245 A JP2011002245 A JP 2011002245A JP 5614291 B2 JP5614291 B2 JP 5614291B2
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Description

本発明は、エラストマーおよび無機フィラーを含み、高剛性、高衝撃性且つ低比重のポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
バンパ、インストゥルメントパネル、ドアトリム材等の自動車部品において、コスト、成形性、物性の面から、プロピレン系ブロック共重合体(以下、b−PP)が使用されることが多い。これらのb−PPについては、各部品の剛性や耐衝撃性などの要求性能に合わせて、剛性向上のためのタルク(無機充填剤)や耐衝撃性向上のためのエラストマーが最適に配合されている(例えば、特許文献1)。特に剛性の向上のためには多量のタルクの添加が必要であり、射出成形において、樹脂の合流部でのタルクの配向によるウェルドラインが目立ちやすい、樹脂の透明性が低下し、着色時の質感が低下する、という問題が発生しがちである。
また近年、燃費向上のため、車体の軽量化が求められる中、これらの自動車部品等においても、軽量化が求められている。軽量化の手段として、材料の低比重化や材料の高剛性化による部品の薄肉化がある。しかし、比重の低減と剛性の向上はトレードオフの関係にあることから、従来のb−PP/タルク/エラストマー系の材料設計では、限界がある。
例えば、インストゥルメントパネルにおいては、製品肉厚は3.0〜3.5mm程度が一般的で、材料の曲げ弾性率が2000MPa以上あれば剛性を確保できる。しかし、従来の材料設計では、耐衝撃性を確保するためのエラストマーの添加を考慮して、2000MPa以上の曲げ弾性率を確保するためには、タルクを20重量部以上添加する必要があり、比重は1以上となる。また、薄肉化を図るためには、特許文献1にあるように、2600MPa以上の曲げ弾性率が求められるが、該特許文献1にあるように、タルクを30重量部程度添加する必要があり、比重は更に高くなる。これらの背景から、より高い軽量化を実現させるために、高剛性で、かつ低比重な樹脂材料が求められている。
特開2009−62526号公報
本発明は、従来の材料設計であるb−PP/エラストマー/タルク系材料では達成できない剛性(曲げ弾性率2000MPa以上)、耐衝撃性(シャルピー衝撃強さ(23℃)20kJ/m以上)および低比重(1未満)を確保できるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上述の目的を達成するために開発されたものであり、ホモポリプロピレン、スチレン含有量が10〜30重量%のスチレン―エチレン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマーおよびウイスカを含み、タルクを含まず前記エラストマーを20〜38重量%含み、残部がホモポリプロピレンからなる樹脂分100重量部に対し、ウイスカを5〜18重量部配合してなり、曲げ弾性率(ISO178:1993に準拠、以下同様)が2000MPa以上、シャルピー衝撃強度(23℃、ISO179:1993に準拠,タイプAノッチISO179/1eA使用、以下同様)が20kJ/m以上且つ比重(ISO1183−87に準拠、以下同様)が1未満であることを特徴とする。
本発明者等が、上述の目的で研究して、本発明に到達した経緯について、若干付言する。従来の材料設計は、耐衝撃性を付与させたb−PPにタルクをベースとして、剛性や耐熱性を確保するためのタルクと耐衝撃性を確保するためのエラストマーを部品用途に合わせて最適に配合するという考え方に基づく。しかし、このような従来の配合系では、剛性(曲げ弾性率2000MPa以上)と耐衝撃性(シャルピー衝撃強さ(23℃)20kJ/m以上)を両立させるためには、上述したようにタルクを多量に添加する必要があり、比重が1以上となる。本発明者等は、ベースとなるPPを、高剛性のホモポリプロピレン(以下、「h−PP」と略記することがある)とし、耐衝撃性確保のためのエラストマーの添加で低下した剛性を少量のフィラー(ウイスカ)を配合して確保することにより、低比重化を図り、上述した高剛性、高衝撃性および低比重の実現が可能であることを見出した。ここにおいて、従来のタルクで代表される無機系フィラーに比べて、ウイスカが、比較的少量の添加で、ポリプロピレン系樹脂組成物(の成形物)の曲げ剛性を効果的に増大させ、その添加に伴うシャルピー衝撃強さの低下および比重の増加の程度が小さいことが重要な寄与を示している。
ホモポリプロピレン−エラストマー系における各種エラストマーの添加量の変化に伴う曲げ弾性率の変化を示すグラフ。 ホモポリプロピレン−エラストマー系における各種エラストマーの添加量の変化に伴うシャルピー衝撃強さの変化を示すグラフ。 ホモポリプロピレン−エラストマー(SEBS)系樹脂に配合する各種フィラーの添加量の変化に伴う曲げ弾性率の変化を示すグラフ。 ホモポリプロピレン−エラストマー(SEBS)系樹脂に配合する各種フィラーの添加量の変化に伴うシャルピー衝撃強さの変化を示すグラフ。 ホモポリプロピレン−エラストマー(SEBS)系樹脂に配合する各種フィラーの添加量の変化に伴う比重の変化を示すグラフ。
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を、その好ましい形態について順次説明する。
(ホモポリプロピレン)
本発明の組成物の主成分(70重量%超過)を占めるホモポリプロピレン(h−PP)としては、ISO1133に準拠して測定した230℃、21.2Nにおけるメルトフローレート(MFR)が10〜45g/10分、曲げ弾性率が2000〜2300MPa、特に2200〜2300MPa、シャルピー衝撃強さ(23℃)が、1.5〜3.0kJ/m,特に2.0〜2.5kJ/mのものが好ましく用いられる。曲げ弾性率が、2000MPa未満、シャルピー衝撃強さが1.5kJ/m未満のものでは、b−PPに代えて用いる意味が乏しい。
(エラストマー)
エラストマーとしては、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強さを向上するための主成分として加えられるものであり、ホモポリプロピレンに対する耐衝撃性改善効果を有するものが用いられるが、良好なゴム弾性を有するスチレン系エラストマーがより好ましい。さらに、耐衝撃性に加えて、耐候性や耐熱性の観点からスチレン−ブタジエン共重合体の持つ不飽和結合を水素添加により減少させた、いわゆるスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)が特に好ましく、なかでもスチレン含量が10〜30重量%、特に12〜18重量%のものが、得られるポリプロピレン系樹脂組成物の曲げ剛性と、耐衝撃性の調和を採る上で好ましい。
エラストマーは、ポリプロピレン系樹脂組成物中の樹脂分(主としてホモポリプロピレンとの合計量)の20〜38重量%を占める割合で用いることが好ましい。本発明の目的とする高剛性、高衝撃性且つ低比重の組成物が形成しやすいからである。
(ウイスカ)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の、比重の増大および耐衝撃性の低下をそれほど招かずに、曲げ剛性の本質的な改善を与えるために添加されるウイスカは、一般に「断面積が8×10−5in(=5.2×10−2mm)以下で、長さと断面積相当平均直径の比(アスペクト比)が10以上の(無機質)単結晶」と定義されるものであり、構成無機材料の例としては、グラファイト、チタン酸カリウム、アルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、マグネシア、ホウ酸マグネシウム、硫酸マグネシウムまたは炭酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、酸化亜鉛、硼化チタン等がある。いずれも軽量で曲げ剛性改良効果が良好であることが特徴であり、特にその効果が大であるマグネシウム(化合物)ウイスカが特に好ましく用いられる。
本発明の組成物の目的とする高剛性、高衝撃性且つ低比重の要件を充足するという観点で、ウイスカの配合量は、組成物中の樹脂分100重量部に対して、5〜18重量部、特に10〜15重量部とすることが好ましい。
(その他成分)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上述したホモポリプロピレン、エラストマーおよびウイスカを主たる成分とするものであるが、本発明の高剛性、高衝撃性且つ低比重という特性を損なわない範囲で、他の樹脂、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、分散剤、顔料、帯電防止剤、滑剤、金属不活性剤等のその他の成分を、添加することが可能である。
(組成物)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記各成分を、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ニーダー等の混練機を用いて、混練し、造粒することにより形成できる。生産性を考慮すると、二軸混練押出機を用いることが好ましい。
以下、本発明の組成物に到達するまでに本発明者らが行った予備試験ならびに実施例および比較例を参照して、本発明をより具体的に説明する。以下の記載において、組成の規定に関する「比」、「%」および「部」は、いずれも重量基準とする。また、以下の記載を含めて本明細書に記載する物性値は、以下の方法による測定値に基づく。
1)曲げ弾性率 ISO178:1993。
2)シャルピー衝撃強さ(23℃)は、ISO 179:1993、タイプAノッチISO 179/1eA。
3)比重:ISO1183−87。
<<予備試験>>
(予備試験1)
まず、フィラーを添加せずに、主原料であるホモポリプロピレン(h−PP)に各種エラストマーを配合し、曲げ弾性率とシャルピー衝撃強さのバランスを評価した。
[主原料]・成分A:h−PP(曲げ弾性率2200MPa、シャルピー衝撃強さ(23℃)2.0kJ/m2)(日本ポリプロ(株)製 MA04A)
[エラストマー]
・成分B:スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(SEBS1)(スチレン含有量18wt%)(旭化成ケミカルズ(株)製 H1062)
・成分C:スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(SEBS2)(スチレン含有量12wt%)(旭化成ケミカルズ(株)製 H1221)
・成分D:スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEEPS)(スチレン含有量30wt%) (クラレ(株)製 4055)
・成分E:エチレン・プロピレン非共役ジエン共重合体(EPDM)(三井化学(株)製 3092PM)
これらの成分を、二軸押出機(神戸製鋼(株)製 KTX-30、スクリュー径32mm、L/D=44)を用いて溶融混練して、ペレット状の複合材料(ポリプロピレン系樹脂組成物)を得て、曲げ弾性率及びシャルピー衝撃強さを評価した。
曲げ弾性率の評価結果を図1に、シャルピー衝撃強さの評価結果を図2に示す。図1に示すように、曲げ弾性率は、エラストマー添加量の増加に伴い、ほぼ線形的に低下する。他方、図2に示すように、シャルピー衝撃強さは、エラストマー添加量の増大に伴い向上するが、特に、SEBSにおいては、ある添加量を境に、急激に向上する。これらの結果から、曲げ弾性率とシャルピー衝撃強さのバランスは、SEBSが良好であり、特にSEBS1が良好である。
(予備試験2)
次に、上記予備試験1で、曲げ弾性率とシャルピー衝撃強さのバランスが良かったh−PP/SEBS1=78/22の樹脂配合をベースとして、更に下記に示すフィラーF,GおよびHの3種を異なる量で添加して得た複合材料について、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強さおよび比重を測定・評価した。
・フィラーF:硫酸マグネシウムウィスカ(ミリケン社製 HPR803、直径:約0.5μm、長さ:約25μm、平均アスペクト比50)
・フィラーG:タルク(林化成(株)製 ミクロンホワイト5000S、平均粒子径2.8μm)
・フィラーH:タルク/炭酸カルシウム混合物(三共精粉(株)製、AHT7525C、平均粒子径3.58μm)。
曲げ弾性率、シャルピー衝撃強さおよび比重の評価結果を、図3〜図5に、それぞれ示す。図3に示すように曲げ弾性率は、いずれのフィラーにおいても添加量の増加に伴い、線形的に増加するが、特にウィスカは比較的少量の添加で曲げ弾性率の増大効果が大きいことが分かった。また、図4に示すように、ウィスカは、樹脂100重量部に対し、約17重量部の添加量までは、シャルピー衝撃強さの低下が最も小さい。更に、図5に示すように真比重の小さいウィスカは添加量の割に比重増大のおそれが小さい。
以上の結果から、h−PP/SEBS/ウィスカの組み合わせにより、所望の曲げ強さ、シャルピー衝撃強さおよび低比重(1未満)を、満たすポリプロピレン系樹脂組成物が得られることが確認された。
<<実施例・比較例>>
上記、予備試験の結果をもとに、h−PP、SEBS1および各種フィラーの配合比を以下の表1に示すように変化して得られた複合材料について同様に曲げ弾性率、シャルピー衝撃強さおよび比重を測定・評価した。結果をまとめて下記表1に示す。
Figure 0005614291
上記表1の結果を見れば、h−PP、SEBS1およびウイスカの配合比を適当に調整することにより、本発明の目的とする曲げ弾性率が2000MPa以上、シャルピー衝撃強さ(23℃)が20kJ/m以上且つ比重が1未満であるポリプロピレン系樹脂組成物が得られることが分る。
更に、上記実測値(下表2及び3において、*を付して示す)をもとに、SEBS含量およびウイスカ配合量の変化に伴う曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強さの、それぞれの変化を示す最小二乗法による二次近似式(R≧0.998)を求め、得られた近似式に基づいて計算した曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強さを、それぞれ下表2および3に示す。近似式の具体例として、曲げ弾性率およびシャルピー衝撃強さのそれぞれ(Y)について、SEBS含量(X:wt%)の変化に伴う近似式をA列について、ウイスカ配合量(X:wt%)の変化に伴う近似式をC’行について、それぞれ下記に示す。A列およびC’行以外の計算値については、C’行のデータからウイスカ添加量の増加に伴う曲げ弾性率(表2)およびシャルピー衝撃強さ(表3)のそれぞれについて変化率を算出し、表2および表3中のA列のデータに変化率を乗じてB〜G列の計算値を求めた。
近似式:
[曲げ弾性率(表2)]
A列:Y=−0.0464X−30.017X+2165
C’行:Y=−0.646 X+104.71X+1498.9
[シャルピー衝撃強さ(表3)]
A列:Y=−0.2375 X+14.1X−154.25
C’行:Y=0.0315 X−2.3678X+47.471
Figure 0005614291
Figure 0005614291
表2および3に太線枠で囲った部分が、曲げ弾性率が2000MPa以上およびシャルピー衝撃強さ(23℃)が20kJ/m以上の領域であり、この組成領域(ウイスカ添加量18部以下)においては、図5に示されるように且つ比重が0.97以下であり、充分に比重1未満の条件が満たされる。また、上記表3に示されるシャルピー衝撃強さを考慮しつつ、表2のデータを見れば、必要なシャルピー強さ20kJ/m以上を満たし、且つ薄肉化のために望ましい曲げ弾性率が2000MPa以上も達成可能であることが分る。
上述したように、本発明によれば、エラストマーを配合したポリプロピレン形樹脂組成物において、比較的良好な剛性を有するホモポリプロピレンを用い、曲げ剛性の向上のために従来添加されていたタルク系のフィラーの代わりに少量のウイスカを添加することにより、曲げ剛性、シャルピー衝撃強さおよび低比重を兼ね備えたポリプロピレン形樹脂組成物が提供される。また、フィラーの添加量を低減できるため、射出成形により樹脂の合流部等で発生するウエルドラインを低減することができ、ウエルドライン部の強度アップを図ることができる。また、フィラー低減により、樹脂の透明性の低下を抑制することができる。そのため、顔料等で着色したときの質感も向上でき、無塗装化も可能となる。これにより、塗装工程の廃止によるコストダウンおよび人体への影響が懸念視されている揮発性有機化合物(VOC)の低減を図ることができる。

Claims (3)

  1. ホモポリプロピレン、スチレン含有量が10〜30重量%のスチレン―エチレン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマーおよびウイスカを含み、タルクを含まず前記エラストマーを20〜38重量%含み、残部がホモポリプロピレンからなる樹脂分100重量部に対し、ウイスカを5〜18重量部配合してなる、曲げ弾性率が2000MPa以上、シャルピー衝撃強さ(23℃)が20kJ/m以上且つ比重が1未満であるポリプロピレン系樹脂組成物。
  2. 前記エラストマーがスチレン含有量12〜18重量%のスチレン―エチレン・ブチレン−スチレン共重合体エラストマーからなる請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. ウイスカが硫酸マグネシウムウイスカからなる請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
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