JP5687577B2 - 溶接構造、及び溶接方法 - Google Patents
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Description
特許文献1は、溶接時に、リングギヤ703のギヤ小径部715の側面719を、デフケース701のデフケース大径部709の側面717に向けて押圧しても、この押圧力の抗力が突起727及び突起729に作用することにより、デフケース大径部709側に傾くリングギヤ703の変形を抑えることができるとされている。
従来の実施例では、図17に示すように、リングギヤ810のギヤ側フランジ部815の内周面812aと、デフケース830のケース側フランジ部831の当接面821とが、圧入代をもって嵌合している。
図18に、従来の実施例に係るリングギヤとデフケースとの溶接構造において、溶接時に、リングギヤが熱膨張で変形する様子を説明する模式図を示し、図19に、リングギヤが凝固収縮で変形する様子を説明する模式図を示す。
従来の実施例では、圧入部820と同様、溶接前の第1,第2溶接部851,852において、内周面812aと当接面821との間に隙間がない。そのため、第1溶接部851等が、図18及び図19に示すように、溶接直後にQ方向に熱膨張し、その後の冷却でP方向に凝固収縮することにより、主にリングギヤ810が、圧入部820を支点に熱変形する。この変形により、図18及び図19中、太字矢印で示す向きの応力がリングギヤ810の内周面812aとデフケース830の当接面821との間にかかり、内周面812aと当接面821との間が突っ張った状態となる。その結果、第1,第2溶接部851,852の溶接ビードで残留応力が増加し、繰り返し荷重による疲労強度の低下、割れ等の不具合が第1,第2溶接部851,852に発生する虞がある。
従来の実施例の場合でも、特許文献1と同様、リングギヤ810とデフケース830との溶接で用いる溶接ワイヤが、リングギヤ810のギヤ側フランジ部815の内周面812aと、デフケース830のケース側フランジ部831の当接面821との間に入り難い。
(1)機能部材接合部を有し、所定機能を発揮させる機能部材と、機能部材接合部と接合するケース接合部を有するケースとを備え、機能部材接合部とケース接合部とを圧入で嵌合させる圧入部と共に、機能部材接合部の溶接面である機能部材側溶接面と、ケース接合部の溶接面であるケース側溶接面との間で溶接される溶接部により、機能部材とケースとが接合する溶接構造において、機能部材接合部とケース接合部とが配列された方向を第1方向とし、第1方向と直交する方向を第2方向とすると、溶接部が、第2方向に対し、圧入部を挟んだ両側に少なくとも設けられていること、溶接前の状態では、所定距離で離間する隙間が、機能部材側溶接面とケース側溶接面との間に形成されていることを特徴とする。
(2)(1)に記載する溶接構造において、隙間の所定距離は、0.4mm以上、かつ溶接時に溶接部の溶接ビードを形成するのに用いる溶接ワイヤの太さに相当する大きさ以下であることを特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する溶接構造において、機能部材接合部とケース接合部とが、いずれも第1方向を径方向とする環状に形成され、隙間は、第2方向に沿う軸を中心とする周方向全周にわたって形成されていることを特徴とする。
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載する溶接構造において、機能部材接合部とケース接合部とは、圧入部を挟む第2方向両側にそれぞれ隙間を有して接続され、溶接部は、圧入部との間に空洞部を設けた状態で、隙間を溶接することにより形成されていることを特徴とする。
(6)(3)乃至(5)のいずれか1つに記載する溶接構造において、溶接部のうち、第2方向一方側の第1溶接部と、第2方向他方側の第2溶接部とは、径方向に径差を有して形成されていることを特徴とする。
(8)(3)乃至(7)のいずれか1つに記載する溶接構造において、溶接部のうち、少なくとも片側の溶接部では、機能部材側溶接面とケース側溶接面とが、第2方向に対し、角度θ(θ<90°)に傾斜して形成されていることを特徴とする。
(9)(3)乃至(8)のいずれか1つに記載する溶接構造において、圧入部は、径方向に径差を有して形成されていることを特徴とする。
(10)(1)乃至(9)のいずれか1つに記載する溶接構造において、機能部材は、リングギヤであり、ケースは、リングギヤと接合させるデフケースであることを特徴とする。
(12)(11)に記載する溶接方法において、隙間の所定距離は、0.4mm以上、かつ溶接時に溶接部の溶接ビードを形成するのに用いる溶接ワイヤの太さに相当する大きさ以下とし、溶接時に、溶接ワイヤを、隙間に挿入し、機能部材側溶接面とケース側溶接面とに倣わせながら、所望範囲の溶接ビードを形成可能な位置まで供給して、溶接を行うことを特徴とする。
本発明の溶接構造では、
(1)機能部材接合部を有し、所定機能を発揮させる機能部材と、機能部材接合部と接合するケース接合部を有するケースとを備え、機能部材接合部とケース接合部とを圧入で嵌合させる圧入部と共に、機能部材接合部の溶接面である機能部材側溶接面と、ケース接合部の溶接面であるケース側溶接面との間で溶接される溶接部により、機能部材とケースとが接合する溶接構造において、機能部材接合部とケース接合部とが配列された方向を第1方向とし、第1方向と直交する方向を第2方向とすると、溶接部が、第2方向に対し、圧入部を挟んだ両側に少なくとも設けられていること、溶接前の状態では、所定距離で離間する隙間が、機能部材側溶接面とケース側溶接面との間に形成されているので、例えば、機能部材がリングギヤであり、ケースがデフケースである場合等では、溶接部の溶接ビードで残留応力を低減することができ、実動時にリングギヤに荷重が繰り返し作用することによる疲労強度の低下、割れ等の不具合の発生が抑制できるようになる。
その一方で、機能部材側溶接面とケース側溶接面との間に隙間が形成されていることで、溶接時に、溶接ビードに対する流動の自由度が大きくなり、溶融状態の溶接ビードがこの隙間を流動して凝固収縮したときに、リングギヤ及びデフケースから溶接ビードに受ける応力が小さく抑えられ、溶接ビードの残留応力を低減することができる。従って、この残留応力に起因して、溶接部で、繰り返し荷重による疲労強度の低下、割れ等の不具合の発生を抑制し、溶接部の溶接強度を向上させることができる。
このように、溶接時にリングギヤが倒れることにより、機能部材側溶接面とケース側溶接面との隙間の距離が小さくなったときに、隙間の距離を0.4mm以上とすることで、リングギヤがデフケースに拘束されず、リングギヤとデフケースとが突っ張った状態になることを阻止することができる。
そのため、隙間の距離が溶接ワイヤの太さに相当する大きさ以下とすることで、上記の溝が存在する場合でも、隙間に挿入された溶接ワイヤの先端部が、溝に入ることなく、機能部材側溶接面とケース側溶接面に倣って、溶接ビードを形成する所望範囲の位置まで供給できるようになる。
よって、溶接ビードを形成する所望位置まで供給された溶接ワイヤにより、リングギヤとデフケースとの間で溶接ビードがより確実に形成され、リングギヤとデフケースとが適切な状態で溶接されて接合できる。
また、特にレーザ溶接により溶接部を形成する場合、溶接直後では、溶接部の溶接ビード内にガスが含有するため、このガスを、空洞部に放出することができる。これにより、溶接部では、ヒケ、ブローホール、割れ等の溶接欠陥の発生を抑制することができる。
(11)機能部材接合部を有し、所定機能を発揮させる機能部材と、機能部材接合部と接合するケース接合部を有するケースとを備え、機能部材接合部とケース接合部とを圧入で嵌合させる圧入部と共に、機能部材接合部の溶接面である機能部材側溶接面と、ケース接合部の溶接面であるケース側溶接面との間で溶接される溶接部により、機能部材とケースとが接合する溶接方法において、機能部材接合部とケース接合部とが配列された方向を第1方向とし、第1方向と直交する方向を第2方向とすると、溶接前の状態では、第2方向に対し、圧入部を挟んだ少なくとも両側に、所定距離で離間する隙間を、機能部材側溶接面とケース側溶接面との間に形成しておき、隙間に溶接を行って溶接部を形成するので、先に例示したリングギヤ(機能部材)とデフケース(ケース)とを溶接で接合する場合等では、溶接時に、リングギヤが主に熱変形し、溶接部の溶接ビードが、溶接直後に溶融状態で熱膨張した後、その後の冷却で凝固収縮する。このとき、リングギヤの溶接面(機能部材側溶接面)とデフケースの溶接面(ケース側溶接面)との間には隙間が形成されているため、リングギヤがたとえ熱変形しても、熱変形の大きさが隙間より小さければ、隙間がリングギヤの熱変形を吸収することができる。
その一方、隙間の距離を溶接ワイヤの太さに相当する大きさ以下にすることで、溝が機能部材側溶接面またはケース側溶接面に凹設されている場合でも、隙間に挿入された溶接ワイヤの先端部が、溝に入ることなく、機能部材側溶接面とケース側溶接面とに倣い、溶接ビードを形成する所望位置まで供給できるようになる。
よって、溶接ワイヤが、溶接ビードを形成する所望位置まで供給できるようになったことにより、リングギヤとデフケースとの間で溶接ビードがより確実に形成され、リングギヤとデフケースとが、適切な状態で溶接されて接合できる。
なお、本実施形態では、添付図面に図示したCLは、リングギヤの軸心を示すものであり、AXは、この軸心CLに沿う軸方向(第2方向)を、RDは、軸心CLを通るリングギヤの径方向(第1方向)を、CRは軸心CLを中心とするリングギヤの周方向を、それぞれ示す。
〔第1実施例〕
図1は、実施形態に係る溶接構造で構成されたデファレンシャルギヤを示す図であり、リングギヤの軸方向から見た平面図である。図2は、図1中、A−A矢視断面図である。図3は、図2中、B部の拡大図であり、本実施例に係るリングギヤとデフケースとの溶接構造についての説明図である。
リングギヤ10とデフケース30とは、図3に示すように、ギヤ接合部11とケース接合部31とを圧入で嵌合させる圧入部20と共に、ギヤ接合部11の溶接面であるギヤ側嵌合面13と、ケース接合部31の溶接面であるケース側溶接面32との間で溶接された溶接部50(第1溶接部51、第2溶接部52)により、接合されている。本実施例では、溶接部50は、軸方向AXに対し、一方側(図3中、右側)に位置する第1溶接部51と、他方側(図3中、左側)に位置する第2溶接部52との双方である。
デファレンシャルギヤ1では、リングギヤ10が、その軸心CLと図示しないデファレンシャルシャフトの軸心とを同芯にして、デフケース30に組み込まれており、リングギヤ10とデファレンシャルシャフトとの間で上記ピニオンギヤとが噛合うことにより、リングギヤ10とデファレンシャルシャフトとの間で動力が伝達するようになっている。
リングギヤ10は、素材を切削加工した鋼材や、素材を鍛造加工した鋼材等の金属材料からなり、例えば、浸炭焼入れ等の熱処理がリングギヤ10に施されている。リングギヤ10は、軸心CLを中心とする環状に形成され、図1及び図3に示すように、径方向RDに対し、径内側にギヤ接合部11と、径外側にギヤ部10Tと、ギヤ接合部11とギヤ部10Tとを繋ぐ連結部10Cとを有している。ギヤ部10Tには、前述したように、上記ピニオンギヤと噛合う歯が複数形成されている。
デフケース30は、例えば、鋳鉄等の金属材料からなり、リングギヤ10のギヤ接合部11と接合するケース接合部31を有している。ケース接合部31は、リングギヤ10のギヤ接合部11と同様、軸心CLを中心に、第1方向を径方向RDとする環状に形成されている。
本実施例では、第1空洞部28a(空洞部28)がケース側第1溶接面32aの一部分に凹設された第1溝27a(溝27)により、第2空洞部28b(空洞部28)が、ケース側第2溶接面32bの一部分に凹設された第2溝27b(溝27)により、それぞれ形成されている。
リングギヤ10とデフケース30との溶接構造では、後述する溶接部50(第1溶接部51、第2溶接部52)が、軸方向AXに対し、ギヤ接合部11とケース接合部31との圧入部20を挟んだ両側に設けられている。溶接部50が形成される溶接前の状態では、所定距離xで離間する隙間25,25が、ギヤ側第1溶接面12aとケース側第1溶接面32aとの間と、ギヤ側第2溶接面12bとケース側第2溶接面32bとの間とに、それぞれ形成されている。
リングギヤ10とデフケース30との溶接構造では、上記隙間25,25の所定距離xは、0.4mm以上、かつ溶接時に溶接部50の溶接ビード56を形成するのに用いる溶接ワイヤ60のワイヤ径ΦDに相当する大きさ以下であり、本実施形態では、ワイヤ径ΦD=0.9(mm)の溶接ワイヤ60が挿通可能な0.9(mm)程度となっている。また、隙間25,25は、軸心CLを中心とする周方向CR全周にわたって形成されている。
図4は、本発明の実施形態に係る溶接方法を説明する図であり、リングギヤとデフケースとの溶接前の状態を示す第1工程図である。図5は、第1工程図に続き、第1溶接部を形成するときの第2工程図を示す図である。図6は、第2工程図に続き、第2溶接部を形成するときの第3工程図を示す図である。図7は、第3工程図に続き、リングギヤとデフケースとが溶接接合された状態を示す第4工程図である。
また、溶接前の状態では、軸方向AX(第2方向AX)に対し、圧入部20を挟んだ両側に、所定距離xで離間する隙間25,25を、ギヤ側第1溶接面12aとケース側第1溶接面32aとの間と、ギヤ側第2溶接面12bとケース側第2溶接面32bとの間とに形成しておき、隙間25,25に溶接を行って溶接部50(第1溶接部51,第2溶接部52)を形成する。本実施例では、ギヤ接合部11とケース接合部31との軸方向AX一方側を先に溶接して第1溶接部51を形成した後、その他方側を溶接して第2溶接部52を形成する。
このとき、本実施例に係る溶接構造では、リングギヤ10のギヤ側溶接面12とデフケース30のケース側溶接面32との間には隙間25が形成されているため、リングギヤ10がたとえ熱変形しても、熱変形の大きさy(0≦y)が隙間25の離間距離xより小さければ、隙間25がリングギヤ10の熱変形を吸収することができる。
従って、この残留応力に起因して、溶接部50で、繰り返し荷重による疲労強度の低下、割れ等の不具合の発生を抑制し、溶接部50の溶接強度を向上させることができる。
このように、溶接時にリングギヤ10が圧入部20を中心に第1変形方向Pまたは第2変形方向Qに倒れることにより、ギヤ側溶接面12とケース側溶接面32との隙間25の距離xが小さくなったときに、隙間25の距離を0.4mm以上とすることで、リングギヤ10がデフケースのケース接合部31に拘束されず、リングギヤ10とデフケース30とが突っ張った状態になることを阻止することができる。
よって、溶接ビード56を形成する所望位置tまで供給された溶接ワイヤ60により、
リングギヤ10のギヤ接合部11とデフケース30のケース接合部31との間で溶接ビード56がより確実に形成され、リングギヤ10とデフケース30とが適切な状態で溶接されて接合できる。
このような場合、リングギヤ10において、ギヤ側溶接面12とギヤ側嵌合面13との間に段差を設けて隙間25を形成すれば、ギヤ側溶接面12及びギヤ側嵌合面13を形成するために行う浸炭層の除去と、隙間25の形成とが、同じ機械加工の工程で一緒に行えて、製造コストを低減することができる。
また、本実施例のように、特にレーザ溶接により溶接部50を形成する場合、溶接直後では、溶接部50の溶接ビード56内にガスが含有するため、このガスを、空洞部28に放出することができる。これにより、溶接部50では、ヒケ、ブローホール、割れ等の溶接欠陥の発生を抑制することができる。
その一方で、ギヤ側溶接面12とケース側溶接面32との間に隙間25が形成されていることで、溶接時に、溶接ビード56に対する流動の自由度が大きくなり、溶融状態の溶接ビード56がこの隙間25を流動して凝固収縮したときに、リングギヤ10のギヤ接合部11及びデフケース30のケース接合部31から溶接ビード56に受ける応力が小さく抑えられ、溶接ビード56の残留応力を低減することができる。
従って、この残留応力に起因して、溶接部50で、繰り返し荷重による疲労強度の低下、割れ等の不具合の発生を抑制し、溶接部50の溶接強度を向上させることができる。
よって、圧入部20両側の第1溶接部51,第2溶接部52を形成した後のリングギヤ10の歪みが、より小さく低減できる。
これにより、溶融状態の溶接ビード56が、所望とする溶接部50の形成範囲tに相当する位置まで、より確実に到達して硬化するようになり、溶接部50における溶接品質を向上させることができる。
よって、溶接ワイヤ60が、溶接ビード56を形成する所望位置tまで供給できるようになったことにより、リングギヤ10のギヤ接合部11とデフケース30のケース接合部31との間で溶接ビード56がより確実に形成され、リングギヤ10とデフケース30とが、適切な状態で溶接されて接合できる。
〔第1変形例〕
本変形例に係るリングギヤ110のギヤ接合部111とデフケース130のケース接合部131との溶接構造では、軸方向AX一方側(図9中、右側)のギヤ側第1溶接面112a、その他方側(図9中、左側)のギヤ側第2溶接面112b、及びギヤ側嵌合面113は、軸方向AXに沿って水平で、段差のない同じ平面状に形成されている。
また、ケース接合部131では、ケース側嵌合面133を挟む軸方向AX両側に位置するケース側第1溶接面132a、及びケース側第2溶接面132bは、ケース側嵌合面133に対し、段差x(0<x)を設けて形成されている。
リングギヤ110とデフケース130とは、ギヤ接合部111のギヤ側嵌合面113とケース接合部131のケース側嵌合面133との間の圧入部120で圧入されている。また、リングギヤ110とデフケース130とは、ギヤ側第1溶接面112aとケース側第1溶接面132aとの隙間125を溶接した第1溶接部151と、ギヤ側第2溶接面112bとケース側第2溶接面132bとの隙間125を溶接した第2溶接部152とにより接合されて固定されている。
〔第2変形例〕
本変形例に係るリングギヤ210のギヤ接合部211とデフケース230のケース接合部231との溶接構造では、第1実施例と同様、ギヤ側第1溶接面212a及びギヤ側第2溶接面212bは、ギヤ側嵌合面213に対し、径方向RDに距離x(0<x)の段差を設け、軸心CLを中心とする周方向CR(図1参照)に形成されている。
リングギヤ210とデフケース230とは、ギヤ接合部211のギヤ側嵌合面213とケース接合部231のケース側嵌合面233との間の圧入部220で圧入されている。また、リングギヤ210とデフケース230とは、ギヤ側第1溶接面212aとケース側第1溶接面232aとの隙間225を溶接した第1溶接部251と、ギヤ側第2溶接面212bとケース側第2溶接面232bとの隙間225を溶接した第2溶接部252とにより接合されて固定されている。
そこで、以下、第2実施例とその変形例である第3,第4変形例、及び第3実施例に係る溶接構造について説明する。第2実施例、第3,第4変形例、及び第3実施例は、第1実施例と同様、何れもリングギヤとデフケースとを溶接で接合する場合である。
〔第2実施例〕
第2実施例は、リングギヤのギヤ接合部及びデフケースのケース接合部の形状、溶接ビードと隣接する空洞の有無等の点で、前述した第1実施例等と異なるが、それ以外の部分は、第1実施例と同様である。
従って、第2実施例は、第1実施例とは異なる部分を中心に説明し、第1実施例と共通する部分やその他についての説明を簡略または省略する。
リングギヤ310とデフケース330とは、ギヤ接合部311のギヤ側嵌合面313とケース接合部331のケース側嵌合面333との間の圧入部320で圧入されていると共に、第1溶接部351と第2溶接部352とにより接合されて固定されている。
本実施例に係る溶接構造では、ギヤ接合部311を有し、ギヤ部310Tで図示しないピニオンギヤと噛合って動力を伝達する機能を発揮させるリングギヤ310と、ギヤ接合部311と接合するケース接合部331を有するデフケース330とを備え、ギヤ接合部311とケース接合部331とを圧入で嵌合させる圧入部320と共に、ギヤ接合部311の溶接面であるギヤ側第1溶接面312a,ギヤ側第2溶接面312bと、ケース接合部331の溶接面であるケース側第1溶接面332a,ケース側第2溶接面332bとの間で溶接される第1溶接部351,第2溶接部352により、リングギヤ310とデフケース330とが接合する溶接構造において、ギヤ接合部311とケース接合部331とが配列された方向を第1方向RD(径方向RD)とし、第1方向RDと直交する方向を第2方向AX(軸方向AX)とすると、第1,第2溶接部351,352が、軸方向AXに対し、圧入部320を挟んだ両側に少なくとも設けられていること、溶接前の状態では、所定距離xで離間する隙間325,325が、ギヤ側第1溶接面312aとケース側第1溶接面332aとの間、及びギヤ側第2溶接面312bとケース側第2溶接面332bとの間に形成されているので、前述した第1実施例と同様、リングギヤ310のギヤ接合部311とデフケース330のケース接合部331との第1,第2溶接部351,352に対し、溶接強度および溶接品質の向上を図ることができる、という優れた効果を奏する。
〔第3変形例〕
本変形例に係るリングギヤ410のギヤ接合部411とデフケース430のケース接合部431との溶接構造では、軸方向AX一方側(図12中、右側)のギヤ側第1溶接面412a、その他方側(図12中、左側)のギヤ側第2溶接面412b、及び軸方向AX中央に位置するギヤ側嵌合面413は、軸方向AXに沿って水平に形成されている。ギヤ側第2溶接面412bは、ギヤ側嵌合面413に対し、径方向RD径外側に距離x(0<x)の段差を設け、軸心CLを中心とする周方向CR(図1参照)に形成されている。ギヤ側第1溶接面412aは、ギヤ側嵌合面413より径方向RD径内側の位置に配置され、軸心CLを中心とする周方向CR(図1参照)に形成されている。
リングギヤ410とデフケース430とは、ギヤ接合部411のギヤ側嵌合面413とケース接合部431のケース側嵌合面433との間の圧入部420で圧入されていると共に、第1溶接部451と第2溶接部452とにより接合されて固定されている。
〔第4変形例〕
本変形例に係るリングギヤ510のギヤ接合部511とデフケース530のケース接合部531との溶接構造では、軸方向AX一方側(図13中、右側)のギヤ側第1溶接面512a、その他方側(図13中、左側)のギヤ側第2溶接面512b、及びギヤ側嵌合面513は、軸方向AXに沿って水平に形成されている。ギヤ側第1溶接面512aとギヤ側嵌合面513とは、段差のない同じ平面状に形成されている。ギヤ側第1溶接面512aは、ギヤ側嵌合面513に対し、径方向RD径外側に距離x(0<x)の段差を設け、軸心CLを中心とする周方向CR(図1参照)に形成されている。ギヤ側第2溶接面512bは、ギヤ側第1溶接面512a、ギヤ側嵌合面513よりさらに径方向RD径外側の位置に配置されている。
リングギヤ510とデフケース530とは、ギヤ接合部511のギヤ側嵌合面513とケース接合部531のケース側嵌合面533との間の圧入部520で圧入されていると共に、第1溶接部551と第2溶接部552とにより接合されて固定されている。
〔第3実施例〕
第3実施例は、第2溶接部の向きや、圧入部を2箇所に設けている等の点で、前述した第1,第2実施例等と異なるが、それ以外の部分は、第1実施例等と同様である。
従って、第3実施例は、第1実施例等とは異なる部分を中心に説明し、第1実施例等と共通する部分やその他についての説明を簡略または省略する。
溶接前には、リングギヤ610とデフケース630とは、ギヤ側第1嵌合面613aとケース側第1嵌合面633との間の第1圧入部620a(圧入部620)、及びギヤ側第2嵌合面613bとケース側第2嵌合面633bとの間の第2圧入部620b(圧入部620)で圧入されている。溶接後、ギヤ側第1溶接面612aとケース側第1溶接面632aとの隙間625を溶接した第1溶接部651と、ギヤ側第2溶接面612bとケース側第2溶接面632bとの隙間625を溶接した第2溶接部652とは、径方向RDに径差を有して形成されている。
リングギヤ610とデフケース630とは、ギヤ接合部611とケース接合部331とを圧入で嵌合させた圧入部620で接続すると共に、第1溶接部651と第2溶接部652とにより接合されて固定されている。
本実施例に係る溶接構造では、ギヤ接合部611を有し、ギヤ部610Tで図示しないピニオンギヤと噛合って動力を伝達する機能を発揮させるリングギヤ610と、ギヤ接合部611と接合するケース接合部631を有するデフケース630とを備え、ギヤ接合部611とケース接合部631とを圧入で嵌合させる圧入部620と共に、ギヤ接合部611の溶接面であるギヤ側第1溶接面612a,ギヤ側第2溶接面612bと、ケース接合部631の溶接面であるケース側第1溶接面632a,ケース側第2溶接面632bとの間で溶接される第1溶接部651,第2溶接部652により、リングギヤ610とデフケース630とが接合する溶接構造において、ギヤ接合部611とケース接合部631とが配列された方向を第1方向RD(径方向RD)とし、第1方向RDと直交する方向を第2方向AX(軸方向AX)とすると、第1,第2溶接部651,652が、軸方向AXに対し、圧入部620を挟んだ両側に少なくとも設けられていること、溶接前の状態では、所定距離xで離間する隙間625,625が、ギヤ側第1溶接面612aとケース側第1溶接面632aとの間、及びギヤ側第2溶接面612bとケース側第2溶接面632bとの間に形成されているので、前述した第1,第2実施例と同様、リングギヤ610のギヤ接合部611とデフケース630のケース接合部631との第1,第2溶接部651,652に対し、溶接強度および溶接品質の向上を図ることができる、という優れた効果を奏する。
例えば、本実施形態の第1実施例では、第1溶接部51と第2溶接部52との溶接順序として、軸方向AX一方側を先に溶接して第1溶接部51を形成した後、その他方側を後に溶接して第2溶接部52を形成した。
しかしながら、圧入部を挟む第2方向両側の溶接部を形成する順序は、本実施形態に限定されるものでなく、例えば、本実施形態の第1溶接部51と第2溶接部52とについて、先に第2溶接部52を形成した後、第1溶接部51を形成する場合のほか、第1溶接部51と第2溶接部52とを同時に形成する場合等、適宜変更可能である。
11,111,211,311,411,531,631 ギヤ接合部(機能部材接合部)
12 ギヤ側溶接面(機能部材側溶接面)
13 ギヤ側嵌合面(機能部材側嵌合面)
20,120,220,320,420,520,620 圧入部
25,125,225,325,425,525,625 隙間
28 空洞部
30,130,230,330,430,530,630 デフケース(ケース)
31,131,231,331,431,531,631 ケース接合部
32,132,232,332,432,532,632 ケース側溶接面
50 溶接部
51,151,251,351,451,551,651 第1溶接部
52,152,252,352,452,552,652 第2溶接部
56 溶接ビード
60 溶接ワイヤ
RD 第1方向(径方向)
AX 第2方向(軸方向)
CR 周方向
CL 軸心(第2方向に沿う軸)
P 溶接ビードの所望範囲
x (隙間の)所定距離
ΦD ワイヤ径
Claims (12)
- 機能部材接合部を有し、所定機能を発揮させる機能部材と、前記機能部材接合部と接合するケース接合部を有するケースとを備え、前記機能部材接合部と前記ケース接合部とを圧入で嵌合させる圧入部と共に、前記機能部材接合部の溶接面である機能部材側溶接面と、前記ケース接合部の溶接面であるケース側溶接面との間で溶接される溶接部により、前記機能部材と前記ケースとが接合する溶接構造において、
前記機能部材接合部と前記ケース接合部とが配列された方向を第1方向とし、前記第1方向と直交する方向を第2方向とすると、
前記溶接部が、前記第2方向に対し、前記圧入部を挟んだ両側に少なくとも設けられていること、
溶接前の状態では、所定距離で離間する隙間が、前記機能部材側溶接面と前記ケース側溶接面との間に形成されていることを特徴とする溶接構造。 - 請求項1に記載する溶接構造において、
前記隙間の前記所定距離は、0.4mm以上、かつ溶接時に前記溶接部の溶接ビードを形成するのに用いる溶接ワイヤの太さに相当する大きさ以下であることを特徴とする溶接構造。 - 請求項1または請求項2に記載する溶接構造において、
前記機能部材接合部と前記ケース接合部とが、いずれも前記第1方向を径方向とする環状に形成され、
前記隙間は、前記第2方向に沿う軸を中心とする周方向全周にわたって形成されていることを特徴とする溶接構造。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する溶接構造において、
前記隙間は、前記機能部材に対し、前記圧入部で前記ケース接合部と嵌合する機能部材側嵌合面と、前記機能部材側溶接面との間に段差を設けて形成されていることを特徴とする溶接構造。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載する溶接構造において、
前記機能部材接合部と前記ケース接合部とは、前記圧入部を挟む前記第2方向両側にそれぞれ前記隙間を有して接続され、
前記溶接部は、前記圧入部との間に空洞部を設けた状態で、前記隙間を溶接することにより形成されていることを特徴とする溶接構造。 - 請求項3乃至請求項5のいずれか1つに記載する溶接構造において、
前記溶接部のうち、前記第2方向一方側の第1溶接部と、前記第2方向他方側の第2溶接部とは、前記径方向に径差を有して形成されていることを特徴とする溶接構造。 - 請求項3乃至請求項6のいずれか1つに記載する溶接構造において、
前記溶接部のうち、少なくとも片側の溶接部では、前記機能部材側溶接面と前記ケース側溶接面とが、前記第2方向に沿って水平に形成されていることを特徴とする溶接構造。 - 請求項3乃至請求項7のいずれか1つに記載する溶接構造において、
前記溶接部のうち、少なくとも片側の溶接部では、前記機能部材側溶接面と前記ケース側溶接面とが、前記第2方向に対し、角度θ(θ<90°)に傾斜して形成されていることを特徴とする溶接構造。 - 請求項3乃至請求項8のいずれか1つに記載する溶接構造において、
前記圧入部は、前記径方向に径差を有して形成されていることを特徴とする溶接構造。 - 請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載する溶接構造において、
前記機能部材は、リングギヤであり、前記ケースは、前記リングギヤと接合させるデフケースであることを特徴とする溶接構造。 - 機能部材接合部を有し、所定機能を発揮させる機能部材と、前記機能部材接合部と接合する前記ケース接合部を有するケースとを備え、前記機能部材接合部と前記ケース接合部とを圧入で嵌合させる圧入部と共に、前記機能部材接合部の溶接面である機能部材側溶接面と、前記ケース接合部の溶接面であるケース側溶接面との間で溶接される溶接部により、前記機能部材と前記ケースとが接合する溶接方法において、
前記機能部材接合部と前記ケース接合部とが配列された方向を第1方向とし、前記第1方向と直交する方向を第2方向とすると、
溶接前の状態では、前記第2方向に対し、前記圧入部を挟んだ少なくとも両側に、所定距離で離間する隙間を、前記機能部材側溶接面と前記ケース側溶接面との間に形成しておき、前記隙間に溶接を行って前記溶接部を形成することを特徴とする溶接方法。 - 請求項11に記載する溶接方法において、
前記隙間の前記所定距離は、0.4mm以上、かつ溶接時に前記溶接部の溶接ビードを形成するのに用いる溶接ワイヤの太さに相当する大きさ以下とし、
溶接時に、前記溶接ワイヤを、前記隙間に挿入し、前記機能部材側溶接面と前記ケース側溶接面とに倣わせながら、所望範囲の前記溶接ビードを形成可能な位置まで供給して、溶接を行うことを特徴とする溶接方法。
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