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JP5654804B2 - 太陽電池封止材及びそれを用いて作製された太陽電池モジュール - Google Patents

太陽電池封止材及びそれを用いて作製された太陽電池モジュール Download PDF

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Description

本発明は、太陽電池モジュールにおける太陽電池素子の封止材及びそれを用いて作製された太陽電池モジュールに関し、詳細には、太陽電池モジュールの形成が容易で、接着性、接着力の長期安定性、透明性、耐熱性等に優れた太陽電池封止材及びそれを用いて作製された太陽電池モジュールに関する。
太陽電池は太陽の光エネルギーを直接電気に換える発電装置である。太陽光発電は、発電時に石油などの燃料を燃やす必要がなく、燃焼による温室効果ガス(例えばCO2など)や有害な廃棄物(例えば原油灰や重油灰)を発生しない特徴を有することから、クリーンエネルギーの1つとして近年注目されている。太陽電池は多数の太陽電池素子(セル)が直並列に配線されたものであり、また、屋外に設置されることから、水分やほこりの影響を避け、雹や小石などの衝突、あるいは風圧に耐えるように、太陽電池素子を樹脂中に封じ込み、その外部をガラスやシートで保護する構造となっており、このような構造を太陽電池モジュールと呼ぶ。太陽電池モジュールの具体的な構成としては、保護部材として、太陽光が当たる面を上部保護材として透明基材(ガラス/透光性太陽電池シート;フロントシート)、また、裏面を下部保護材として裏面封止用シート(バックシート、例えばポリフッ化ビニル樹脂フィルム)で覆い、間隙を熱可塑性プラスチック(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体)からなる封止材(封止樹脂層)で埋めたものが挙げられる。
前述したように、太陽電池モジュールは主に屋外で長期間使用されるため、その構成や材質構造等に種々の特性が必要とされる。前述した各保護部材の中でも封止材(封止樹脂層)に注目すると、水蒸気バリア性、太陽電池素子を保護する為の柔軟性、太陽電池モジュール製造におけるプロセス適性のための流動特性、耐衝撃性、太陽電池モジュールが発熱した際の耐熱性、太陽電池素子へ太陽光が効率的に届く為の透明性(全光線透過率など)、ガラスやバックシート及びセルとの接着性、耐久性、寸法安定性、絶縁性等が主に要求される。
現在、太陽電池モジュールにおける太陽電池素子の封止材としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと省略することがある)が広く用いられている(たとえば、特許文献1参照)。また、EVAに耐熱性を付与することを主な目的として、架橋剤として有機過酸化物を用いた架橋が行われる。そのため架橋剤(有機過酸化物)や架橋助剤を添加したEVAシートをあらかじめ作製し、得られたシートを用いて太陽電池素子を封止するという工程が採用されている。
しかしながら、EVAシートを用いて太陽電池モジュールを製造する場合、その加熱圧着などの諸条件により、EVAの熱分解による酢酸ガスが発生し、作業環境および製造装置に悪影響を及ぼしたり、太陽電池の回路腐食や、太陽電池素子、フロントシート、バックシートなど各部材との界面で剥離が発生したりする等の問題があった。
これらの問題に対し、EVAシートを用いない、架橋工程が省略可能な太陽電池封止材として、例えば、特許文献2には、非晶性α−オレフィン重合体と結晶性α−オレフィン重合体を含有する樹脂組成物からなる太陽電池封止材が開示されており、具体的には、プロピレンを主成分とする重合体からなる樹脂組成物が用いられている。
また、特許文献3には、少なくとも一種のポリオレフィン系共重合体と、少なくとも一種の結晶性ポリオレフィンからなるポリマーブレンドまたはポリマーアロイであることを特徴とする太陽電池封止材が開示されており、具体的には、エチレン−メタクリル酸共重合体と汎用の結晶性ポリエチレンとのポリマーブレンド(実施例2参照)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体と汎用の結晶性ポリプロピレンとのポリマーブレンド(実施例3参照)が用いられている。
また、特許文献4には、エチレン性不飽和シラン化合物と重合用ポリエチレンとを重合させてなるシラン変成樹脂(シラン架橋性樹脂)を有する太陽電池封止材が開示されている。
特開昭58−60579号公報 特開2006−210905号公報 特開2001−332750号公報 特開2005−19975号公報
しかし、特許文献2で用いられているプロピレンを主成分とする重合体からなる樹脂組成物では、透明性(全光線透過率:83.2%(実施例参照))が未だ不十分であった。さらに、プロピレンを主成分とする重合体は脆化温度が高く、低温特性も不十分であるという問題点もある。また、特許文献3、4で用いられているポリマーブレンドの例では、必ずしも透明性が良いものではなく、特に、柔軟性と耐熱性および透明性とのバランス化においては未だ問題点があった。
また、通常封止材に接着性を付与するため、シランカップリング剤を添加する方法が知られているが、時間の経過と共にシランカップリング剤がブリードアウトし、水分と反応することにより接着力が低下するなどの懸念があり、さらなる改善の余地が残されていた。
以上の通り、従来の技術においては、太陽電池モジュールの形成が容易で、接着性、接着力の長期安定性、透明性及び耐熱性のいずれにも優れた太陽電池封止材およびそれを用いて作製された太陽電池モジュールは提供されていなかった。
本発明の課題は、太陽電池モジュールの形成が容易で、接着性、接着力の長期安定性、透明性及び耐熱性のいずれにも優れた太陽電池封止材およびそれを用いて作製された太陽電池モジュールを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、接着層と、特定の熱特性を有するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体と特定の熱特性を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体を含有する樹脂組成物からなる層とを有する太陽電池封止材により、接着性、接着力の長期安定性、透明性及び耐熱性を同時に満足できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも、接着層((I)層)と、下記(a)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)と下記(b)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物(C)からなる層((II)層)とを有する太陽電池封止材。
(a)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(b)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
本発明によれば、太陽電池モジュールの形成が容易で、接着性、接着力の長期安定性、透明性及び耐熱性のいずれにも優れた太陽電池封止材、及びそれを用いて作製された太陽電池モジュールが提供できる。
また、酢酸による配線腐食や、水蒸気浸透による太陽電池素子の劣化の懸念がなく、作業環境および製造装置への悪影響や、太陽電池モジュールの劣化や発電効率の低下も防ぐことが出来る。さらに、製造設備についてもバッチ式の製造設備に加えて、ロール・ツー・ロール式の製造設備にも適用可能である。
本発明の太陽電池モジュールの一例を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施形態としての太陽電池封止材、及びこれを用いて作製された太陽電池モジュールについて説明する。
なお、本明細書において、「主成分」とは、本発明の太陽電池封止材の各層を構成する樹脂の作用・効果を妨げない範囲で、他の成分を含むことを許容する趣旨である。さらに、この用語は、具体的な含有率を制限するものではないが、一般に樹脂組成物の構成成分全体を100質量部とした場合、50質量部以上であり、好ましくは65質量部以上、さらに好ましくは80質量部以上であって100質量部以下の範囲を占める成分である。
<(I)層>
本発明の太陽電池封止材を構成する層のうち、(I)層は接着層である。(I)層に用いられる樹脂組成物は、特に限定されるものではないが、接着性、接着力の長期安定性、透明性及び耐熱性の他、太陽電池封止材の製膜時の生産性の観点から、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするものが好適に用いられる。
(ポリオレフィン系樹脂)
(I)層に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、接着性、透明性、生産性及び工業的に入手し易い点から、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(E−MMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(E−EAA)、エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体(E−GMA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、アイオノマー樹脂(イオン架橋性エチレン−メタクリル酸共重合体、イオン架橋性エチレン−アクリル酸共重合体)、シラン変性ポリオレフィン(シラン架橋性ポリオレフィン)、及び無水マレイン酸グラフト共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の変性ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
本発明における(I)層には、前記変性ポリオレフィン系樹脂の中でも、接着性、耐熱性の観点から、シラン架橋性ポリオレフィン、またはアイオノマー樹脂を好適に用いることができ、前記シラン架橋性ポリオレフィンの中では、シラン架橋性ポリエチレンをより好適に用いることができる。中でもシラン架橋性直鎖状低密度ポリエチレン(密度;0.850〜0.920g/cm3)は、さらに透明性が良好となることから特に好適に用いることができる。
前記変性ポリオレフィン系樹脂を変性する各種単量体の含有量としては特に限定されるものではないが、通常、変性ポリオレフィン系樹脂を構成する単量体全量に対して0.5モル%以上、好ましくは1モル%以上、さらに好ましくは2モル%以上であり、かつ、通常40モル%以下、好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは25モル%以下である。該範囲内であれば、共重合成分により結晶性が低減されることにより透明性が向上し、また、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。なお、変性ポリオレフィン系重合体を変性する各種単量体の種類と含有量は、周知の方法、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定装置、その他の機器分析装置で定性定量分析することができる。
前記変性ポリオレフィン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、下記に示すアイオノマー樹脂、シラン架橋性ポリオレフィン、無水マレイン酸グラフト共重合体以外は、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法など、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法などにより得ることができる。
アイオノマー樹脂は、エチレンと、不飽和カルボン酸と、任意成分として他の不飽和化合物からなる共重合体の不飽和カルボン酸成分の少なくとも一部を金属イオンもしくは有機アミンのうち少なくともいずれか一方で中和することにより得ることができる。また、アイオノマー樹脂は、エチレンと、不飽和カルボン酸エステルと、任意成分として他の不飽和化合物からなる共重合体の不飽和カルボン酸エステル成分の少なくとも一部を鹸化することによっても得ることができる。
シラン架橋性ポリオレフィンは、ポリオレフィン系樹脂、後述するシランカップリング剤、及び後述するラジカル発生剤を高温で溶融混合し、グラフト重合することにより得ることができる。
無水マレイン酸グラフト共重合体は、ポリオレフィン系樹脂、無水マレイン酸、及び後述するラジカル発生剤を高温で溶融混合し、グラフト重合することにより得ることができる。
変性ポリオレフィン系樹脂の具体例として、E−MMA(エチレン−メチルメタアクリレート共重合体)としては住友化学(株)製の商品名「アクリフト」、E−EAA(エチレン−エチルアクリレート共重合体)としては日本ポリエチレン(株)製の商品名「レクスパール(REXPEARL EEA)」やE−GMA(エチレン−グリシジルメタアクリレート共重合体)としては住友化学(株)製の商品名「ボンドファスト(BONDFAST)」、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)としては日本合成化学(株)製の商品名「ソアノール」、(株)クラレ製の商品名「エバール」、アイオノマー樹脂としては、三井デュポンポリケミカル(株)製の商品名「ハイミラン」、シラン架橋性ポリオレフィンとしては三菱化学(株)製の商品名「リンクロン」、無水マレイン酸グラフト共重合体としては三井化学(株)製「アドマー」などを例示することができる。
(I)層を構成する樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とするものであるが、諸物性(柔軟性、耐熱性、透明性、接着性など)や成形加工性あるいは経済性などを考慮して、前記変性ポリオレフィン系樹脂を主成分とするものを使用することもできるが、変性ポリオレフィン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂(以下、「未変性ポリオレフィン系樹脂」という)を併用することが好ましく、この併用したものを主成分とすることがより好ましい。
該未変性ポリオレフィン系樹脂は特に限定されないが、前記変性ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィン単量体を主成分として構成されているものであることが、透明性の観点から好ましい。また、未変性ポリオレフィン系樹脂が、後述する(II)層で用いるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)や、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)であれば、(I)層と(II)層との層間接着性や柔軟性、耐熱性などの観点から好ましい。
(I)層を構成する樹脂組成物に、変性ポリオレフィン系樹脂と未変性ポリオレフィン系樹脂を併用する場合、その含有質量比率は特に限定されないが、良好な接着性を発現させるという観点から、変性ポリオレフィン系樹脂/未変性ポリオレフィン系樹脂で3/97〜100/0の範囲であることが好ましく、5/95〜100/0の範囲であることがさらに好ましい。
また、(I)層を構成する樹脂組成物に、変性ポリオレフィン系樹脂と未変性ポリオレフィン系樹脂を併用する場合、用いる変性ポリオレフィン系樹脂と未変性ポリオレフィン系樹脂は、同一系統の樹脂、例えば、変性ポリエチレン系樹脂と未変性ポリエチレン系樹脂であることが好ましい。
(I)層に用いられるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.5〜100g/10min程度、好ましくは2〜50g/10min、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものが用いられる。ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性や太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性、回り込み具合などを考慮して選択すればよい。例えば、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い方、具体的には0.5〜5g/10min程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量をUPさせる観点からMFRは、2〜50g/10minが好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものを用いればよい。さらに、太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性や回り込み易さの観点からは、MFRは、2〜50g/10minが好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものを用いればよい。
(その他の成分)
(I)層にはさらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、諸物性(柔軟性、耐熱性、透明性、接着性など)や成形加工性あるいは経済性などをさらに向上させる目的で前記ポリオレフィン系樹脂以外のその他の樹脂を混合することができる。
該その他の樹脂としては、例えば、スチレン系などのエラストマー各種、カルボキシル基、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基などの極性基で変性された樹脂及び粘着付与樹脂などが挙げられる。
該粘着付与樹脂としては、石油樹脂、テルペン樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、又はそれらの水素添加誘導体などが挙げられる。具体的には、石油樹脂としては、シクロペンタジエン又はその二量体からの脂環式石油樹脂やC9成分からの芳香族石油樹脂があり、テルペン樹脂としてはβ−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂が、また、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジンなどのロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトールなどで変性したエステル化ロジン樹脂などを例示することができる。また、該粘着付与樹脂は主に分子量により種々の軟化温度を有するものが得られるが、既述のポリオレフィン系樹脂や変性ポリオレフィン系樹脂成分と混合した場合の相溶性、経時的なブリード性、色調や熱安定性などの点から軟化温度が好ましくは100以上、より好ましくは120℃以上で、かつ、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下の脂環式石油樹脂の水素添加誘導体が特に好ましい。
(I)層に前記その他の樹脂を混合する場合は、通常、(I)層を構成する樹脂組成物を100質量部とした場合、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
また、(I)層には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、光拡散剤、造核剤、顔料(例えば白色顔料)、難燃剤、変色防止剤などが挙げられる。本発明においては、紫外線吸収剤、または耐候安定剤が添加されていることが後述する理由から好ましい。
紫外線吸収剤としては、種々の市販品が適用でき、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチル酸エステル系など各種タイプのものを挙げることができる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5− クロロベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、ヒドロキシフェニル置換ベンゾトリアゾール化合物であって、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−メチル−5−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2− ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。またトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノールなどを挙げることができる。サリチル酸エステル系としては、フェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどを挙げることができる。
該紫外線吸収剤の添加量は、(I)層を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上であり、かつ、2.0質量部以下、好ましくは0.5質量部以下の範囲で添加することが好ましい。
上記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定化剤が好適に用いられる。ヒンダードアミン系光安定化剤は、紫外線吸収剤のようには紫外線を吸収しないが、紫外線吸収剤と併用することによって著しい相乗効果を示す。ヒンダードアミン系以外にも光安定化剤として機能するものはあるが、着色している場合が多く本発明における(I)層には好ましくない。
ヒンダードアミン系光安定化剤としては、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパレート、2−(3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などを挙げることができる。該ヒンダードアミン系光安定化剤の添加量は、(I)層を構成する樹脂組成物100質量部に対し、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上であり、かつ、0.5質量部以下、好ましくは0.3質量部以下の範囲で添加することが好適である。
上記の紫外線吸収剤及び耐侯安定剤は、それぞれ単独でも二種以上組み合わせて使用することができ、また、紫外線吸収剤及び耐侯安定剤を組み合わせて使用することもできる。これらは、一般に添加量が多くなるほど黄変を引き起こしやすいため、必要最少量の添加にとどめることが好ましい。
本発明の太陽電池封止材を構成する(I)層の厚さは、特に制限はないが、セルの凹凸面に対する封止性、透明性等の観点から、通常0.005mm以上、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.02mm以上であり、かつ、0.9mm程度以下、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下であればよい。
<(II)層>
本発明の太陽電池封止材を構成する層のうち、(II)層は下記(a)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)と下記(b)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物(C)からなる層である。
(a)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/g
(b)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
[エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)]
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)は、上記の条件(a)を満足すれば特に限定されるものではないが、通常、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体が好適に用いられる。ここでエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1等が例示される。本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンが好適に用いられる。エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
また、エチレンと共重合するα−オレフィンの含有量としては、既述の条件(a)を満足すれば特に限定されるものではないが、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)中の全単量体単位に対して、通常、2モル%以上、好ましくは40モル%以下、より好ましくは3〜30モル%、さらに好ましくは5〜25モル%である。該範囲内であれば、共重合成分により結晶性が低減されることにより透明性が向上し、また、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。なお、エチレンと共重合するα−オレフィンの種類と含有量は、周知の方法、例えば、核磁気共鳴(NMR)測定装置、その他の機器分析装置で定性定量分析することができる。
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)は、既述の条件(a)を満足すれば、α−オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を含有していてもよい。該単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物(スチレンなど)、ポリエン化合物等が挙げられる。該単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)中の全単量体単位を100モル%とした場合、20モル%以下であり、15モル%以下であることが好ましい。また、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の立体構造、分岐、分岐度分布や分子量分布は、既述の条件(a)を満足すれば特に限定されるものではないが、例えば、長鎖分岐を有する共重合体は、一般に機械物性が良好であり、また、シートを成形する際の溶融張力(メルトテンション)が高くなりカレンダー成形性が向上するなどの利点がある。シングルサイト触媒を用いて重合された分子量分布の狭い共重合体は、低分子量成分が少なく原料ペレットのブロッキングが比較的起こり難いなどの利点がある。
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.5〜100g/10min程度、より好ましくは2〜50g/10min、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものが用いられる。ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性や太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性、回り込み具合などを考慮して選択すればよい。例えば、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い方、具体的には0.5〜5g/10min程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量をUPさせる観点からMFRは、2〜50g/10minが好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものを用いればよい。さらに、太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性や回り込み易さの観点からは、MFRは、2〜50g/10minが好ましく、さらに好ましくは3〜30g/10minであるものを用いればよい。
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が採用できる。例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒やポストメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等、また、ラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。本発明においては、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)が比較的軟質の樹脂である為、重合後の造粒(ペレタイズ)のし易さや原料ペレットのブロッキング防止などの観点から低分子量成分が少なく分子量分布の狭い原料が重合できるシングルサイト触媒を用いた重合方法が好適である。
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)は、条件(a)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜70J/gを満足することが必要であり、好ましくは、5〜70J/g、さらに好ましくは、10〜65J/gである。該範囲内であれば、本発明の太陽電池封止材の柔軟性や透明性(全光線透過率)などが確保される為好ましい。また、結晶融解熱量が5J/g以上であれば、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。ここで、該結晶融解熱量の参考値としては、汎用の高密度ポリエチレン(HDPE)が170〜220J/g程度、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が100〜160J/g程度である。
当該結晶融解熱量は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7122に準じて加熱速度10℃/分で測定することができる。
また、本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の結晶融解ピーク温度は、特に限定されるものではないが、通常、100℃未満であり、30〜90℃である場合が多い。ここで、該結晶融解ピーク温度の参考値としては、汎用の高密度ポリエチレン(HDPE)が130〜145℃程度、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が100〜125℃程度である。すなわち、本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)単独では、示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/gを達成することは困難である。
当該結晶融解ピーク温度は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて加熱速度10℃/分で測定することができる。
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「エンゲージ(Engage)」、「アフィニティー(AffInIty)」、三井化学(株)製の商品名「タフマーA(TAFMER A)」、「タフマーP(TAFMER P)」、日本ポリエチレン(株)製の商品名「カーネル(Karnel)」等を例示することができる。
[エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)]
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)は、既述の条件(b)を満足すれば特に限定されるものではないが、通常、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとのブロック共重合体が好適に用いられる。ここでエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−ブテン−1、4−メチル−ペンテン−1等が例示される。本発明においては、工業的な入手し易さや諸特性、経済性などの観点からエチレンと共重合するα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテンが好適に用いられる。エチレンと共重合するα−オレフィンは1種のみを単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもかまわない。
また、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)は、既述の条件(b)を満足すれば、α−オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を含有していてもよい。該単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物(スチレンなど)、ポリエン化合物等が挙げられる。該単量体単位の含有量は、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)中の全単量体単位を100モル%とした場合、20モル%以下であり、15モル%以下であることが好ましい。
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)のブロック構造は、既述の条件(b)を満足すれば特に限定されるものではないが、柔軟性、耐熱性、透明性等のバランス化の観点から、コモノマー含有率、結晶性、密度、結晶融解ピーク温度(融点Tm)、又はガラス転移温度(Tg)の異なる2つ以上、好ましくは3つ以上のセグメント又はブロックを含有するマルチブロック構造であることが好ましい。具体的には、完全対称ブロック、非対称ブロック、テ−パ−ドブロック構造(ブロック構造の比率が主鎖内で漸増する構造)などが挙げられる。該マルチブロック構造を有する共重合体の構造や製造方法については、国際公開第2005/090425号パンフレット(WO2005/090425)、国際公開第2005/090426号パンフレット(WO2005/090426)、および国際公開第2005/090427号パンフレット(WO2005/090427)などで詳細に開示されているものを採用することができる。
本発明においては、前記マルチブロック構造を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体について、以下、詳細に説明する。
該マルチブロック構造を有するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体は、本発明において好適に使用でき、α−オレフィンとして1−オクテンを共重合成分とするエチレン−オクテンマルチブロック共重合体が好ましい。該ブロック共重合体としては、エチレンに対してオクテン成分が多く(約15〜20モル%)共重合されたほぼ非晶性のソフトセグメントと、エチレンに対してオクテン成分が少なく(約2モル%未満)共重合された結晶融解ピーク温度が110〜145℃である高結晶性のハードセグメントが、各々2つ以上存在するマルチブロック共重合体が好ましい。これらのソフトセグメントとハードセグメントの連鎖長や比率を制御することにより、柔軟性と耐熱性の両立を達成することができる。
該マルチブロック構造を有する共重合体の具体例としては、ダウ・ケミカル(株)製の商品名「インフューズ(Infuse)」が挙げられる。
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFR(JIS K7210、温度:190℃、荷重:21.18N)が、0.5〜100g/10min程度、より好ましくは1〜50g/10min、さらに好ましくは1〜30g/10min、特に好ましくは1〜10g/10minであるものが用いられる。
ここで、MFRは、シートを成形する際の成形加工性や太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性、回り込み具合などを考慮して選択すればよい。具体的には、シートをカレンダー成形する場合には、シートを成形ロールから引き剥がす際のハンドリング性からMFRは、比較的低い方、具体的には0.5〜5g/10min程度が好ましく、また、Tダイを用いて押出成形する場合には、押出負荷を低減させ押出量をUPさせる観点からMFRは、1〜30g/10minであるものが好適に用いられる。さらに、太陽電池素子(セル)を封止する時の密着性や回り込み易さの観点からは、MFRは、3〜50g/10minであるものが好適に用いられる。
本発明に用いられるエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)は、条件(b)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/gを満足することが必要である。好ましくは、結晶融解ピーク温度が105℃以上、さらに好ましくは、110℃以上であり、上限は通常145℃である。また、好ましくは、結晶融解熱量が10〜60J/g、さらに好ましくは、15〜55J/gである。結晶融解ピーク温度及び結晶融解熱量の測定方法については前述の通りである。
一般に、太陽電池モジュールは発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで85〜90℃程度まで昇温するが、結晶融解ピーク温度が100℃以上であれば、本発明の太陽電池封止材の耐熱性を確保することが出来るため好ましく、一方、上限温度が145℃であれば、太陽電池素子の封止工程であまり高温にすることなく封止することができる為好ましい。また結晶融解熱量が該範囲内であれば、本発明の太陽電池封止材の柔軟性や透明性(全光線透過率)などが確保され、また、原料ペレットのブロッキングなどの不具合も起こり難い為好ましい。
[樹脂組成物(C)]
本発明における(II)層は、上述したエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を含有する樹脂組成物(C)からなる。ここで、これらの共重合体(A)及び共重合体(B)の各々に用いられるα−オレフィンの種類は、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、本発明においては、同一である方が、混合した際の相溶性や太陽電池封止材の透明性が向上する、すなわち、太陽電池の光電変換効率が向上するため好ましい。
次に、樹脂組成物(C)中におけるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の含有量は、柔軟性、耐熱性、透明性等の優れたバランスを有する観点から、樹脂組成物(C)を100質量部とした場合、それぞれ、好ましくは、50〜99質量部、1〜50質量部であり、より好ましくは、60〜98質量部、2〜40質量部であり、更に好ましくは、70〜97質量部、3〜30質量部である。また、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の混合(含有)質量比は、特に制限されるものではないが、好ましくは(A)/(B)=99〜50/1〜50、より好ましくは、98〜60/2〜40、より好ましくは、97〜70/3〜30、より好ましくは、97〜80/3〜20、更に好ましくは、97〜90/3〜10である。但し、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)とエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の合計を100質量部とする。ここで、混合(含有)質量比が該範囲内であれば、柔軟性、耐熱性、透明性等のバランスに優れた太陽電池封止材が得られやすい為好ましい。
(II)層を構成する樹脂組成物(C)には、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、諸物性(柔軟性、耐熱性、透明性、接着性など)や成形加工性あるいは経済性などをさらに向上させる目的で上述したエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)やエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)以外の樹脂を混合することができる。該(A)や(B)以外の樹脂としては、(I)層で用いているポリオレフィン系樹脂やその他の樹脂と同様の樹脂が挙げられる。エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)やエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)以外の樹脂を混合する場合は、通常、樹脂組成物(C)を100質量部とした場合、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
また、(II)層を構成する樹脂組成物(C)には、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。該添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、光拡散剤、造核剤、顔料(例えば白色顔料)、難燃剤、変色防止剤などが挙げられる。本発明においては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤から選ばれる少なくとも一種の添加剤が添加されていることが後述する理由等から好ましい。また、本発明においては、樹脂組成物(C)に架橋剤や架橋助剤を添加することができ、例えば、高度の耐熱性を要求される場合は架橋剤および/または架橋助剤を配合することができる。
酸化防止剤としては、種々の市販品が適用でき、モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系、硫黄系、ホスファイト系など各種タイプのものを挙げることができる。モノフェノール系としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどを挙げることができる。ビスフェノール系としては、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2′−メチレン−ビス−(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔{1,1−ジメチル−2−{β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル}2,4,9,10−テトラオキサスピロ〕5,5−ウンデカンなどを挙げることができる。
高分子フェノール系としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ビドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−{メチレン−3−(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキスフェニル)プロピオネート}メタン、ビス{(3,3′−ビス−4′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グルコールエステル、1,3,5−トリス(3′,5′−ジ−tert−ブチル−4′−ヒドロキシベンジル)−s−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トリフェノール(ビタミンE)などを挙げることができる。
硫黄系としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオプロピオネートなどを挙げることができる。
ホスファイト系としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(モノおよび/またはジ)フェニルホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナスレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどを挙げることができる。
本発明においては、酸化防止剤の効果、熱安定性、経済性等からフェノール系およびホスファイト系の酸化防止剤が好ましく用いられ、両者を組み合わせて用いることがさらに好ましい。該酸化防止剤の添加量は、樹脂組成物(C)100質量部に対し、通常、0.1〜1質量部程度であり、0.2〜0.5質量部添加することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、(I)層に用いたものと同様のものを用いることができる。該紫外線吸収剤の添加量は、樹脂組成物(C)100質量部に対し、通常、0.01〜2.0質量部程度であり、0.05〜0.5質量部添加することが好ましい。
上記の紫外線吸収剤以外に耐候性を付与する耐候安定剤としては、(I)層に用いるものと同様のものを用いることができる。該耐候安定剤の添加量は、樹脂組成物(C)100質量部に対し、通常、0.01〜0.5質量部程度であり、0.05〜0.3質量部添加することが好ましい。
本発明の太陽電池封止材を構成する(II)層の厚さは、特に制限はないが、太陽電池モジュールへの衝撃などに対するクッション性や、セルの凹凸面に対する封止性、絶縁性、透明性等の観点から、通常0.02mm以上、好ましくは0.04mm以上、より好ましくは0.1mm以上であり、かつ、1mm程度以下、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下であればよい。
<太陽電池封止材>
本発明の太陽電池封止材は、少なくとも前記(I)層と前記(II)層とを有することが必要である。層構成としては、(I)層と(II)層とを各々少なくとも1層有していれば特に限定されるものではなく、例えば(I)層/(II)層という2種2層構成や、(I)層/(II)層/(I)層という2種3層構成、(I)層/(II)層/(I)層/(II)層という2種4層構成などが挙げられる。
このうち、本発明においては、フロントシートやバックシート、太陽電池素子との接着性の向上を図る観点から、(I)層を、最外層の少なくとも一方に有する構成であることが好ましく、その両方に有することがより好ましい。
本発明における太陽電池封止材の製膜方法は、公知の方法、例えば単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーなどの溶融混合設備を有し、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性等の面から複数の押出機を用いる共押出法が好適に用いられる。
Tダイを用いる共押出法での成形温度は、用いる樹脂組成物の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上であり、かつ、300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下であり、ラジカル発生剤やシランカップリング剤などを添加する場合は架橋反応に伴う樹脂圧の増加やフィッシュアイの増加を抑制するために成形温度を低下させることが好ましい。ラジカル発生剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤等の各種添加剤は、予め樹脂とともにドライブレンドしてからホッパーに供給しても良いし、予め全ての材料を溶融混合してペレットを作製してから供給しても良いし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製し供給しても構わない。
また、シート状で得られた本発明の太陽電池封止材の表面には、必要に応じて、シートを巻物とした場合のシート同士のブロッキング防止や太陽電池素子の封止工程でのハンドリング性やエア抜きのし易さ向上などの目的のためエンボス加工や種々の凹凸(円錐や角錐形状や半球形状など)加工を行っても構わない。さらに、シートを製膜する際に、シート製膜時のハンドリング性を向上するなどの目的のため、別の基材フィルム(延伸ポリエステルフィルム(OPET)や延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)など)と押出ラミやサンドラミなどの方法で積層しても構わない。
本発明の太陽電池封止材の柔軟性は、適用される太陽電池の形状や厚み、設置場所などを考慮して適宜調整すれば良いが、例えば、動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)が1〜2000MPaであることが好ましい。太陽電池素子の保護の観点からは貯蔵弾性率(E´)は、より低い方が好ましいが、シート形状などの場合のハンドリング性やシート表面同士のブロッキング防止などを考慮すると、3〜1000MPaであることがより好ましく、5〜500MPaであることがさらに好ましく、10〜100MPaであることが特に好ましい。貯蔵弾性率(E’)の下限が前記値であれば、太陽電池モジュール支持体としての剛性が好適であり、また貯蔵弾性率(E’)の上限が前記値であれば、太陽電池モジュールへの衝撃などに対するクッション性が良好であることからセル保護性が好適である。
本発明の太陽電池封止材の全光線透過率は、適用する太陽電池の種類、例えばアモルファスの薄膜系シリコン型などや太陽電子素子に届く太陽光を遮らない部位に適用する場合には、あまり重視されないこともあるが、太陽電池の光電変換効率や各種部材を重ね合わせる時のハンドリング性などを考慮し、通常、85%以上であることが好ましく、87%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
本発明の太陽電池封止材の耐熱性は、(I)層を構成する樹脂組成物の諸特性(MFR、分子量など)、(II)層を構成するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)およびエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の諸特性(結晶融解ピーク温度、結晶融解熱量、MFR、分子量など)により影響されるが、とくに、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)の結晶融解ピーク温度が強く影響する。一般に、太陽電池モジュールは発電時の発熱や太陽光の輻射熱などで85〜90℃程度まで昇温するが、結晶融解ピーク温度が100℃以上であれば、本発明の太陽電池封止材の耐熱性を確保することが出来るため好ましい。
本発明においては、厚み3mmの白板ガラス(サイズ;縦75mm、横25mm)と厚み5mmのアルミ板(サイズ;縦120mm、横60mm)の間に厚みが0.45mmのシート状の封止材を重ね、真空プレス機を用いて150℃、7分の条件で積層プレスした試料を作製し、該試料を100℃の恒温槽内で60度に傾斜して設置し1000時間経過後の状態を観察し、ガラスが初期の基準位置からずれなかったものを○、ガラスが初期の基準位置からずれたり、シートが溶融したものを×として耐熱性を評価した。
本発明の太陽電池封止材の柔軟性、耐熱性および透明性については背反特性になり易い。具体的には、(II)層において柔軟性を向上させるために用いる樹脂組成物(C)の結晶性を低下させ過ぎると、耐熱性が低下し不十分となる。一方、(II)層において耐熱性を向上させるために用いる樹脂組成物(C)の結晶性を向上させ過ぎると、透明性が低下し不十分となる。
本発明においては、これらのバランスを柔軟性の指標として動的粘弾性測定における振動周波数10Hz、温度20℃の貯蔵弾性率(E´)、耐熱性の指標としてエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)について示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度を、および透明性の指標として全光線透過率を用いた場合、3つの指標が、貯蔵弾性率(E´)が1〜2000MPa、結晶融解ピーク温度が100℃以上、全光線透過率85%以上であることが好ましく、貯蔵弾性率(E´)が5〜500MPa、結晶融解ピーク温度が105〜145℃、全光線透過率85%以上であることがさらに好ましく、貯蔵弾性率(E´)が10〜100MPa、結晶融解ピーク温度が110〜145℃、全光線透過率90%以上であることが特に好ましい。
本発明の太陽電池封止材は接着性と、接着力の長期安定性に優れる。前述したとおり、従来の技術において用いられるシランカップリング剤を添加して接着力を付与する方法は、時間の経過と共にシランカップリング剤がブリードアウトし、水分と反応することにより接着力が低下するなどの懸念がある。これに対し、本発明の封止材はシランカップリング剤を用いることなく優れた接着力を発現し、添加剤のブリードアウトの懸念も無い(I)層を少なくとも有することから、接着性と接着力の長期安定性の両方に優れた封止材である。
これらの特性は、適用される太陽電池の形状や厚み、設置場所などを考慮して適宜調整すれば良いが、例えば、ガラスとの接着性については、厚み2mm、縦150mm、横25mmの白板ガラスと厚み0.16mmのフッ素系バックシート(KREMPEL社製、商品名:AKASOL)の間に厚みが0.45mmのシート状の封止材と厚み0.012mm、縦50mm、横30mmのPETフィルム(三菱樹脂(株)製、商品名:ダイアホイル)を重ね、ガラスと封止材の間にきっかけをつくり、真空プレス機を用いて150℃、15分の条件で積層プレスした試料を、角度180度、引張速度50mm/secの条件で剥離試験を実施した際の剥離強度を、好ましくは10N/15mm巾以上、より好ましくは15N/15mm巾以上、さらに好ましくは20N/15mm巾以上とすることができる。
また、接着力の長期安定性については、本発明の封止材を製膜後、25℃、50%RHの状態で4ヶ月放置した後に前述の剥離試験を実施した際の引張強度を、好ましくは10N/15mm巾以上、より好ましくは15N/15mm巾以上、さらに好ましくは20N/15mm巾以上とすることができる。
本発明の太陽電池封止材における(I)層と(II)層の厚み比率は特に限定されるものではないが、接着性、透明性の観点から、(I)/(II)が50/50〜10/90の範囲であることが好ましく、40/60〜10/90の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の太陽電池封止材の総厚みは特に限定されるものではないが、太陽電池モジュールへの衝撃などに対するクッション性や、セルの凹凸面に対する封止性、絶縁性等の観点から、通常0.02mm以上、好ましくは0.04mm以上、より好ましくは0.1mm以上であり、かつ、1mm程度以下、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下であればよい。
<太陽電池モジュール>
本発明の太陽電池封止材を用い、太陽電池素子を上下の保護材であるガラス又はフロントシートおよびバックシートで固定することにより、太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができ、好ましくは、本発明の太陽電池封止材と、上部保護材と、太陽電池素子と、下部保護材とを用いて作製された太陽電池モジュールが挙げられ、具体的には、上部保護材/封止材(封止樹脂層)/太陽電池素子/封止材(封止樹脂層)/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材ではさむ様な構成のもの(図1参照)、下部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子の上に封止材と上部保護材を形成させるような構成のもの、上部保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系透明保護材上にアモルファス系太陽電池素子をスパッタリング等で作製したものの上に封止材として下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。なお、本発明の太陽電池封止材を用いた太陽電池モジュールにおいて、封止材が2箇所以上の部位に使用される場合、すべての部位に本発明の太陽電池封止材を用いてもかまわないし、1箇所のみの部位に本発明の太陽電池封止材を用いてもかまわない。また、封止材が2箇所以上の部位に使用される場合、各々の部位に使用される本発明の太陽電池封止材を構成する樹脂組成は同一であっても良いし、異なっていてもよい。
太陽電池素子は、封止樹脂層間に配置され配線される。例えば、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、ガリウム−ヒ素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体型、色素増感型、有機薄膜型などが挙げられる。
本発明の太陽電池封止材を用いて作製された太陽電池モジュールを構成する各部材については、特に限定されるものではないが、上部保護材としては、例えば、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂などの板材やフィルムの単層または多層の保護材を挙げることができる。下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フィルムなどの単層もしくは多層のシートであり、例えば、スズ、アルミ、ステンレスなどの金属、ガラスなどの無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの単層もしくは多層の保護材を挙げることができる。
これらの上部および下部の保護材の表面には、本発明の太陽電池封止材やその他の部材との接着性を向上させるためにプライマー処理やコロナ処理など公知の表面処理を施すことができる。
本発明の太陽電池封止材を用いて作製された太陽電池モジュールを記述した上部保護材/封止材/太陽電池素子/封止材/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟むような構成の物を例として説明する。図に示すように、太陽光受光側から順に、透明基板10、本発明の太陽電池封止材を用いた封止樹脂層12A、太陽電池素子14A、14B,本発明の太陽電池封止材を用いた封止樹脂層12B,バックシート16が積層されてなり、さらに、バックシート16の下面にジャンクションボックス18(太陽電池素子から発電した電気を外部に取り出すための配線を接続する端子ボックス)が接着されてなる。太陽電池素子14Aおよび14Bは、発電電流を外部に電導するため配線20により連結されている。配線20は、バックシート16に設けられた貫通孔(不図示)を通じて外部に取り出され、ジャンクションボックス18に接続されている。
太陽電池モジュールの製造方法としては、公知の方法が適用でき、特に限定されるものではないが、一般的には、上部保護材、封止樹脂層、太陽電池素子、封止樹脂層、下部保護材の順に積層する工程と、それらを真空吸引し加熱圧着する工程を有する。また、バッチ式の製造設備やロール・ツー・ロール式の製造設備なども適用することができる。
本発明の太陽電池封止材を用いて作製された太陽電池モジュールは、適用される太陽電池のタイプとモジュールの形状により、モバイル機器に代表される小型太陽電池、屋根や屋上に設置される大型太陽電池など屋内・屋外に関わらずに各種用途に適用することができる。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによりなんら制限を受けるものではない。
<評価>
本実施例における封止材シートについての種々の測定および評価は次のようにして行った。
(結晶融解ピーク温度(Tm))
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「PyrIs1 DSC」を用いて、JIS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)を求めた。
(結晶融解熱量(ΔHm))
(株)パーキンエルマー製の示差走査熱量計、商品名「PyrIs1 DSC」を用いて、JIS K7122に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で−40℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で−40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから結晶融解熱量(ΔHm)(J/g)を求めた。
(接着性)
ガラスとの接着性については、厚み2mm、縦150mm、横25mmの白板ガラスと厚み0.16mmのフッ素系バックシート(KREMPEL社製、商品名:AKASOL)の間に厚みが0.45mmのシート状の封止材と厚み0.012mm、縦50mm、横30mmのPETフィルム(三菱樹脂(株)製、商品名:ダイアホイル)を重ね、ガラスと封止材の間にきっかけをつくり、真空プレス機を用い、温度150℃、10分の条件で積層プレスした試料を作製した後、引張試験機(INTESCO社製、商品名:200X型試験機)のチャックにガラスを挟み、もう一方のチャックにバックシートと封止材を取り付けることにより、角度180度、引張速度50mm/secの条件で剥離試験を実施し、以下の基準で評価した。
(○)剥離強度が10N/15mm巾以上であったもの
(×)剥離強度が10N/15mm巾未満であったもの
(接着力の長期安定性)
各種封止材を製膜後、温度25℃、湿度50%の条件下で4ヶ月曝露した後、前記接着性の評価と同様にサンプルを作製して、剥離試験を実施し、以下の基準で評価した。
(○)剥離強度が10N/15mm巾以上であったもの
(×)剥離強度が10N/15mm巾未満であったもの
(透明性;全光線透過率)
厚み2mmの白板ガラス(SCHOTT社製、商品名:B270、サイズ;縦50mm、横50mm)2枚の間に厚みが0.45mmのシート状の封止材を重ね、熱プレス機を用いて、150℃、1分の条件でプレスした試料を作製し、JIS K7105に準じて全光線透過率を測定し、その値を記載するとともに、下記の基準で評価した結果も併記した。
(◎)全光線透過率が90%以上
(○)全光線透過率が85%以上、90%未満
(×)全光線透過率が85%未満、あるいは、明らかに白濁している場合(未測定)
(耐熱性)
厚み2mmの白板ガラス(サイズ;縦75mm、横25mm)と厚み5mmのアルミ板(サイズ;縦120mm、横60mm)の間に厚みが0.5mmのシート状の封止材を重ね、真空プレス機を用いて、150℃、15分の条件で積層プレスした試料を作製し、白板ガラス上にSUS製の重石(サイズ:縦75mm、横25mm、重量:約32g)を固定し、該試料を100℃の恒温槽内で60度に傾斜して設置し、500時間経過後の状態を観察し、下記の基準で評価した。
(○)ガラスが初期の基準位置からずれなかったもの
(×)ガラスが初期の基準位置からずれたり、シートが溶融したもの
<構成材料>
以下に、実施例・比較例に用いた構成材料を示す。
(I)層を構成する材料としては以下のものを用いた。
(X−1)変性ポリオレフィン系樹脂として、シラン変性ポリエチレン(三菱化学(株)製、商品名:リンクロンXLE815N、MFR:0.5、Tm:121℃)を5質量部と、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体として、エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:エンゲージ8200、オクテン含有量:7.3モル%(24質量%)、MFR:5、Tm:65℃、ΔHm:53J/g)とを95質量部の割合でドライブレンドしたものを用いた。
(X−2)シラン変性ポリエチレンを10質量部と、エチレンーオクテンランダム共重合体を90質量部の割合で混合した以外は(X−1)と同様にしてドライブレンドしたものを用いた。
(II)層を構成する材料としては以下のものを用いた。
(Y−1)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)として、エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:エンゲージ8200、オクテン含有量:7.3モル%(24質量%)、MFR:5、Tm:65℃、ΔHm:53J/g)を95質量部と、エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)として、エチレン−オクテンブロック共重合体(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:インフューズD9100.05、オクテン含有量:12.8モル%(37質量%)、MFR:1、Tm:119℃、ΔHm:38J/g)とを5質量部の割合でドライブレンドしたものを用いた。
(Y−2)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)としてY−1の製造に用いたエチレン−オクテンランダム共重合体を80質量部と、エチレン−オクテンブロック共重合体(B)(ダウ・ケミカル(株)製、商品名:インフューズD9507.15、オクテン含有量:16.4モル%(44質量%)、MFR:5、Tm:123℃、ΔHm:21J/g)を20質量部の割合に変更した以外は、(Y−1)と同様にしてドライブレンドしたものを用いた。
(Y−3)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)をエチレン−プロピレン−ヘキセン3元ランダム共重合体(日本ポリエチレン(株)製、商品名:カーネルKJ640T、プロピレン含有量:7.4モル%(10質量%)、ヘキセン含有量:4.4モル%(10質量%)、MFR:30、Tm:53℃、ΔHm:58J/g)に変更した以外は、(Y−1)と同様にしてドライブレンドしたものを用いた。
(Y−4)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)として(Y−1)に用いたエチレン−オクテンランダム共重合体を100質量部用いた。
(実施例1)
(I)層に(X−1)、(II)層に(Y−1)の樹脂組成物をそれぞれ用いて、(I)層/(II)層/(I)層の積層構成となるように、同方向二軸押出機を用いたTダイ法にて樹脂温180〜220℃にて共押出成形した後、20℃のキャストロールで急速製膜し、各層厚みが(I)/(II)/(I)=0.09mm/0.27mm/0.09mmであるシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(実施例2)
実施例1において、積層構成を(I)層/(II)層にし、各層厚みが(I)/(II)=0.09mm/0.36mmになるように変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1において、(II)層に(Y−2)の樹脂組成物を用いて、各層厚みが(I)/(II)/(I)=0.045mm/0.36mm/0.045mmとなるように変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例3において、(I)層を(X−2)、(II)層を(Y−3)の樹脂組成物にそれぞれ変更した以外は、実施例3と同様にしてシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例1)
(X−1)の樹脂組成物を用いて、Tダイ法にて樹脂温180〜220℃にて押出成形した後、20℃のキャストロールで急速製膜し、厚みが0.45mmである単層のシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、(II)層を(Y−4)の樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
(比較例3)
比較例1において、(X−1)を、(Y−4)にシランカップリング剤(モメンティブ社製、商品名:SILQUEST)を0.5質量部加えてドライブレンドした樹脂組成物に変更した以外は、比較例1と同様にして単層のシートを得た。得られたシートを用いて各特性を評価した結果を表1に示す。
Figure 0005654804
表1より、本発明で規定した太陽電池封止材は、接着性、接着力の長期安定性、透明性(全光線透過率)、耐熱性のすべてに優れていることが確認できる(実施例1〜4)。これに対して、本発明で規定する構成や材料を有していないものは、接着力の長期安定性、透明性(全光線透過率)、耐熱性のいずれか1つ以上の特性が不十分であることが確認できる(比較例1〜3)。具体的には、透明性(全光線透過率)が不十分であったり(比較例1)、耐熱性が不十分であったり(比較例2)、接着力の長期安定性及び耐熱性が不十分になることが確認できる(比較例3)。
(実施例5)
真空ラミネーター((株)エヌ・ピー・シー製、商品名:LM30×30)を用いて、熱板温度:150℃、加工時間:10分(内訳、真空引き:3分、プレス:7分)、圧着速度:急速の条件で、熱板側から順に、上部保護材として厚みが3mmの白板ガラス(旭硝子(株)製、商品名:ソライト)、実施例1で採取した厚みが0.45mmのシート(封止材)、厚みが0.4mmの太陽電池セル(フォトワット社製、型式:101×101MM)、実施例1で採取した厚みが0.45mmのシート(封止材)、下部保護材として厚みが0.125mmの耐候性PETフィルム(東レ(株)製、商品名:ルミラーX10S)の5層を真空プレスして太陽電池モジュール(サイズ:150mm×150mm)を作製した。得られた太陽電池モジュールは透明性や外観などに優れるものであった。
10・・・透明基板
12A,12B・・・封止樹脂層
14A,14B・・・太陽電池素子
16・・・バックシート
18・・・ジャンクションボックス
20・・・配線

Claims (6)

  1. 少なくとも、接着層((I)層)と、下記(a)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)を50〜99質量%と下記(b)の条件を満足するエチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を1〜50質量%含有する樹脂組成物(C)からなる層((II)層)とを有する太陽電池封止材。
    (a)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解熱量が0〜65J/g
    (b)示差走査熱量測定における加熱速度10℃/分で測定される結晶融解ピーク温度が100℃以上であり、かつ、結晶融解熱量が5〜70J/g
  2. 前記(I)層が、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池封止材。
  3. 前記(I)層が、紫外線吸収剤及び/または耐候安定剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池封止材。
  4. 前記エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)がエチレン−オクテンマルチブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
  5. 前記エチレン−α−オレフィンランダム共重合体(A)と前記エチレン−α−オレフィンブロック共重合体(B)を構成するα−オレフィンの種類が同一であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池封止材。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池封止材を用いて作製された太陽電池モジュール。
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