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JP5525779B2 - 接着剤組成物、及び接着フィルム - Google Patents

接着剤組成物、及び接着フィルム Download PDF

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JP5525779B2 JP2009181872A JP2009181872A JP5525779B2 JP 5525779 B2 JP5525779 B2 JP 5525779B2 JP 2009181872 A JP2009181872 A JP 2009181872A JP 2009181872 A JP2009181872 A JP 2009181872A JP 5525779 B2 JP5525779 B2 JP 5525779B2
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Description

本発明は、接着剤組成物、及び接着フィルムに関するものである。さらに詳しくは、半導体ウェハー等の半導体製品や光学系製品等を研削等の加工をする工程において、当該半導体製品にシートや保護基板を一時的に固定するための、接着剤組成物、及び接着フィルムに関するものである。
近年、携帯電話、デジタルAV機器及びICカード等の高機能化にともない、搭載される半導体シリコンチップ(以下、チップ)の小型化、薄型化及び高集積化への要求が高まっている。例えば、CSP(chip size package)及びMCP(multi-chip package)に代表されるような複数のチップをワンパッケージ化する集積回路についてもその薄型化が求められている。その中において、一つの半導体パッケージの中に複数の半導体チップを搭載するシステム・イン・パッケージ(SiP)は、搭載されるチップを小型化、薄型化及び高集積化し、電子機器を高性能化、小型化かつ軽量化を実現する上で非常に重要な技術となっている。
薄型商品へのニーズに応えるためには、チップを150μm以下にまで薄くする必要がある。さらに、CSP及びMCPにおいては100μm以下、ICカードにおいては50μm以下にチップを薄化加工する必要がある。
従来、SiP製品には、積層したチップごとのバンプ(電極)と回路基板とを、ワイヤ・ボンディング技術により配線する手法が用いられている。また、このような薄型化や高集積化への要求に応えるためには、ワイヤ・ボンディング技術ではなく、貫通電極を形成したチップを積層し、チップの裏面にバンプを形成する貫通電極技術も必要となる。
薄型のチップは、例えば、高純度シリコン単結晶等をスライスしてウェハーとした後、ウェハー表面にIC等の所定の回路パターンをエッチング形成して集積回路を組み込み、得られた半導体ウェハーの裏面を研削機により研削して、所定の厚さに研削後の半導体ウェハーをダイシングしてチップ化することにより製造されている。このとき、上記所定の厚さは、100〜600μm程度である。さらに、貫通電極を形成する場合は、厚さ50〜100μm程度にまで研削している。
半導体チップの製造では、半導体ウェハー自体が肉薄で脆く、また回路パターンには凹凸があるので、研削工程やダイシング工程への搬送時に外力が加わると破損しやすい。また、研削工程においては、生じた研磨屑を除去したり、研磨時に発生した熱を除去するために精製水を用いて半導体ウェハー裏面を洗浄したりしながら研削処理している。このとき、洗浄に用いる上記精製水によって回路パターン面が汚染されることを防ぐ必要がある。
そこで、半導体ウェハーの回路パターン面を保護するとともに、半導体ウェハーの破損を防止するために、回路パターン面に加工用粘着フィルムを貼着した上で、研削作業が行われている。
また、ダイシング時には、半導体ウェハー裏面側に保護シートを貼り付けて、半導体ウェハーを接着固定した状態でダイシングし、得られたチップをフィルム基材側からニードルで突き上げてピックアップし、ダイパッド上に固定させている。
このような加工用粘着フィルムや保護シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の基材フィルムに接着剤組成物から形成した接着剤層が設けられたものが知られている(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
また、加工用粘着フィルムや保護シートの代わりに窒化アルミニウム−窒化硼素気孔焼結体にラダー型シリコーンオリゴマーを含浸せしめた保護基板を用い、この保護基板と半導体ウェハーとを熱可塑性フィルムを用いて接着する構成も開示されている(特許文献4)。また保護基板として半導体ウェハーと実質的に同一の熱膨張率のアルミナ、窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素等の材料を用い、また保護基板と半導体ウェハーとを接着する接着剤としてポリイミド等の熱可塑性樹脂を用い、この接着剤の適用法として、10〜100μmの厚さのフィルムとする構成と、接着剤組成物をスピンコートし、乾燥させて20μm以下のフィルムにする方法が提案されている(特許文献5)。
また、半導体素子の多層配線化に伴って、回路が形成された半導体ウェハーの表面に接着剤組成物を用いて保護基板を接着し、半導体ウェハーの裏面を研磨し、その後、研磨面をエッチングして鏡面にし、この鏡面に裏面側回路を形成するプロセスが実施されている。この場合、裏面側回路が形成されるまでは、保護基板は接着したままになっている(特許文献6)。
特開2003−173993号公報(2003年6月20日公開) 特開2001−279208号公報(2001年10月10日公開) 特開2003−292931号公報(2003年10月15日公開) 特開2002−203821号公報(2002年7月19日公開) 特開2001−77304号公報(2001年3月23日公開) 特開昭61−158145号公報(1986年7月17日公開)
しかし、従来の上記加工用粘着フィルム等は、貫通電極の形成のように、高温プロセス及び高真空プロセスを必要とする工程に用いるには、高温環境下における接着強度の不足や、高真空環境下におけるガスの発生等による接着不良の問題や、上記高温プロセス後における剥離時に、残渣物が残存するなどの剥離不良という問題点を有している。
例えば、貫通電極の形成では、半導体チップにバンプを形成した後、半導体チップ間を接続するとき、200℃程度まで加熱して、さらに高真空状態にするプロセスを要する。しかし、上記特許文献1及び上記特許文献2に係る保護テープの接着剤層を構成する接着剤組成物は、200℃もの高温に対する耐性が無い。また、加熱により上記接着剤層にガスが発生するため接着不良となる。
また、薄型の半導体ウェハーは、研削やダイシングの後、上記保護基板から剥離することが必要となる。しかし、上記特許文献3に開示される保護テープの接着剤層を構成する接着剤組成物は、エポキシ樹脂組成物であり、200℃もの高温ではエポキシ樹脂が変質して、硬化するため、剥離時に残渣物が残り、剥離不良が生じるという問題点を有する。
さらに、上記特許文献4や上記特許文献5に係る、保護基板と半導体ウェハーとの接着に用いられる熱可塑性フィルムでは、吸湿した水分に由来するガスを生じるため、接着不良の問題が生じる。上記特許文献6に係る半導体基板の加工方法では、エッチング液による鏡面化プロセスや真空蒸着による金属膜形成が行われるため、保護基板と半導体ウェハーとを接着するための接着剤組成物には、耐熱性、剥離性が要求される。しかし、上記特許文献6には、接着剤組成物の組成について全く開示がなされていない。
また、本発明者らの調査では、半導体ウェハーやチップの加工において、アクリル系樹脂材料を用いた接着剤が、クラック耐性が良好であることから、好ましいとされている。しかし、このようなアクリル系樹脂材料を用いた接着剤においても、以下のような問題点を有することが判明した。
(1)接着剤層と保護基板とを熱圧着したとき、接着剤層が吸湿した水分がガスとなって接着界面に泡状の剥がれを生じるため、高温環境下における接着強度が低い。また、このようなガスの発生は、高温環境下における接着強度を低下させるのみならず、真空条件による加工プロセス等を行なう場合において、真空環境の作製又は保持に支障を来たす。
(2)約200℃に加熱した場合、耐熱性が低いため接着剤組成物が変質し、剥離液に不溶な物質が形成されるなど、剥離不良を生じる。
(3)剥離時に、約250℃において熱処理を行うと、接着剤組成物が溶解する際にガスを発生してしまい、剥離不良を生じる。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い耐熱性、及び高温環境下、特に200℃以上において高い接着強度を有しており、かつ、半導体ウェハー及びチップ等からの剥離時における熱処理において高い溶解性を有するとともにガスの発生を抑制する、剥離容易性に優れた接着剤組成物を提供することにある。
本発明の第1の態様は、2種類以上の単量体をリビングアニオン重合してなる共重合体を含むことを特徴とする接着剤組成物である。
本発明の第2の態様は、フィルム上に、本発明に係る接着剤組成物を含有する接着剤層を備えることを特徴とする接着フィルムである。
本発明に係る接着剤組成物によれば、上述のように、2種類以上の単量体をリビングアニオン重合してなる共重合体を含んでいるので、高い耐熱性、及び高温環境下における高い接着強度を有し、かつ、半導体ウェハー及びチップ等からの剥離時における熱処理において、高い溶解性を有するとともにガスの発生を抑制する、剥離容易性に優れた接着剤組成物を提供することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る接着フィルムでは、以上のように、フィルム上に、上記接着剤組成物を含有する接着剤層を備える。よって、高い耐熱性、及び高温環境下における高い接着強度を備え、かつ、半導体ウェハー及びチップ等からの剥離時における熱処理において高い溶解性を有するとともにガスの発生を抑制する、剥離容易性に優れた接着フィルムを提供することができるという効果を奏する。
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りである。なお、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
〔接着剤組成物〕
本実施の形態に係る接着剤組成物は、2種類以上の単量体をリビングアニオン重合してなる共重合体を含む。
本実施の形態の共重合体とは、2種類以上の単量体をリビングアニオン重合して得られるブロックポリマーであることが好ましい。
リビングアニオン重合とは、アニオン重合法により単量体をリビング重合させる重合方法である。2種類以上の単量体をリビングアニオン重合することにより、従来の重合方法により得られるポリマーに比べて、分子量分布が低いブロックポリマーを得ることができる。分子量分布が低いブロックポリマーは、高温環境下において溶解性が高く、クラック耐性を有し、またガスをほとんど発生しない。従って、このようなブロックポリマーを共重合体として含む接着剤組成物は、半導体ウェハー及びチップ等からの剥離時における熱処理において、特に約250℃1時間の熱処理においても、高い溶解性を有するとともにガスの発生を抑制するため、剥離容易性に優れている。
本実施の形態におけるリビングアニオン重合の方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば国際公開第2005/121189号パンフレットに記載されたアニオン重合体の製造方法を用いることができる。
また、重合反応時間の長さ等、調整することによって、共重合体の分子量を調整することができる。
リビングアニオン重合により得られるポリマーとしては、リニア構造を有するブロックポリマー、スター構造を有するブロックポリマー(ブロックスターポリマー)などが好ましい。
例えば、接着剤組成物にリニア構造を有するブロックポリマーを用いれば、クラック耐性を有し、かつ接着強度が高いため、好ましい。
また、例えば、接着剤組成物にブロックスターポリマーを用いれば、クラック耐性を有し、かつ高温環境下において分解されて重量平均分子量が低下するため溶解性が高く、またガスをほとんど発生しないため、好ましい。
共重合体における分子量分布(Mw/Mn)は、1.01以上、2.00以下であることがより好ましい。分子量分布とは、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)にて割ったものである。
単量体としては、特に限定されないが、例えば、単量体のうち少なくとも1種類はスチレン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種類を含むことがより好ましい。具体的には、p−ヒドロキシスチレン、スチレンなどが挙げられる。
p−ヒドロキシスチレン、スチレンなどは、200℃以上の高温環境下においても変質することが無いため、これらを含むことによって、接着剤組成物の耐熱性が向上する。共重合体が含む2種類以上の単量体の総量におけるp−ヒドロキシスチレンの割合は、5モル%以上、80モル%以下であることが好ましく、10モル%以上、70モル%以下であることがより好ましい。5モル%以上であるとクラック性、耐熱性が向上し、80モル%以下であると溶解性が良好となる。また、共重合体が含む2種類以上の単量体の総量におけるスチレンの割合は、10モル%以上、90モル%以下であることがより好ましい。上記の構成であれば、接着剤組成物の耐熱性及び耐熱溶解性が良好となり、また、ガスをほとんど発生しないため好ましい。
また、単量体のうちの少なくとも1種類は、(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、炭素数15〜20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。
アクリル系長鎖アルキルエステルとしては、アルキル基がn−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、当該アルキル基は、分岐状であってもよい。
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては、既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば、アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基等からなるアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、イソボルニルメタアクリレートがより好ましい。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、芳香族環としては、例えばフェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基等が挙げられる。また、芳香族環は、炭素数1〜5の鎖状又は分岐状のアルキル基を有していてもよい。具体的には、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いれば、得られる接着剤組成物の柔軟性をさらに向上させることができる。つまり、少ない量で、目的とする柔軟性を得ることができる。よって、接着剤組成物のガラス転移温度を向上させる成分の量を増やすことができ、柔軟性が高く、かつ、高温環境下における接着強度が高い接着剤組成物を得ることができる。
(メタ)アクリル酸エステルを他の単量体と共に用いる場合、(メタ)アクリル酸エステルの量は、当該他の単量体と共重合反応が進む限り、限定されるものではない。例えば、目的とする接着強度、耐熱性等の接着剤組成物の性質に応じて、適宜定めればよいが、単量体の全量に対して5モル%以上、50モル%以下が好ましく、10モル%以上、40モル%以下であることがより好ましい。5モル%以上とすることで、クラック耐性が向上し、50モル%以下とすることで、耐熱性が向上する。
共重合体としてブロックスターポリマーを用いる場合、特定量以上のスチレン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種類の繰り返し単位と、(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し単位とを有するポリマー鎖をアーム部とし、ポリアクリレートから誘導されるポリマー鎖をコア部とするブロックスターポリマーを用いることが、本願発明の効果に優れることから好ましい。
この場合、スチレン及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種類としては、上述したものと同様のものが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、上述したものと同様のものが挙げられる。
前記アーム部における繰り返し単位の結合様式としては、特に制限されず、具体的には、ランダム結合、ブロック結合、交互結合、またはグラフト結合等を例示することができ、なかでも特にブロック結合であることが好ましい。
ポリアクリレートとしては、下記一般式(I)で表される単量体から誘導される繰り返し単位を用いることができる。
Figure 0005525779
(上記式(I)中、(A)は、n価の連結基を表し、Rは、水素原子、またはメチル基を表し、nは、2以上の整数を表す。)
具体的には、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、またはトリメチロールプロパントリメタクリレート等を例示することができる。ポリアクリレートの量は、単量体の全量に対して0.5モル%以上、10モル%以下が好ましく、1〜5モル%がさらに好ましい。上記範囲にすることにより、本願発明の効果に優れたものとなる。
本実施の形態に係る接着剤組成物には、他の添加成分として熱重合禁止剤、ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド、アクリロイルモルホリンなどのモルホリンなどを配合してもよい。これらの配合により、耐熱性と接着性との同時改善が期待できる。
ここで、熱重合禁止剤について以下に説明する。
(熱重合禁止剤)
熱重合禁止剤は、熱によるラジカル重合反応を防止するのに有効な物質である。熱重合禁止剤は、ラジカルに対して高い反応性を示し、モノマーよりも優先的に反応するため、重合が禁止される。そのため、熱重合禁止剤を含む接着剤組成物は、高温環境下(特に250℃〜350℃)における接着剤組成物の重合反応が抑制される。これにより、250℃で1時間加熱する高温プロセスを経ても、接着剤組成物を容易に溶解できる。従って、接着剤組成物により形成された接着剤層を、高温プロセス後においても容易に剥離することができ、また残渣の発生も抑えることができる。
熱重合禁止剤としては、熱によるラジカル重合反応を防止するのに有効であれば特に限定されるものではないが、フェノール系の熱重合禁止剤が好ましい。
熱重合禁止剤としては、例えばピロガロール、ベンゾキノン、ヒドロキノン、メチレンブルー、tert−ブチルカテコール、モノベンジルエーテル、メチルヒドロキノン、アミルキノン、アミロキシヒドロキノン、n−ブチルフェノール、フェノール、ヒドロキノンモノプロピルエーテル、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−[1−〔4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル〕エチリデン]ビスフェノール、4,4’,4”−エチリデントリス(2−メチルフェノール)、4,4’,4”−エチリデントリスフェノール、1,1,3−トリス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニルプロパン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tertブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tertブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tertブチルフェノール)、3,9−ビス[2−(3−(3−tertブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−tertブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、n−オクチル−3−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリルテトラキス[3−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名IRGANOX1010、チバスペシャリティケミカルズ社製)、トリス(3,5−ジ−tertブチルヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジtertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられ、これらの中でもフェノール系の熱重合禁止剤が好ましい。
熱重合禁止剤の含有量は、主成分として含まれるポリマー、ならびに接着剤組成物の用途及び使用環境に応じて適宜決定すればよいが、主成分として含まれるポリマーに対して0.1質量%以上、10.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5質量%以上、7.0質量%以下であり、最も好ましくは、1.0質量%以上、5.0質量%以下である。上記範囲内とすることにより、熱による重合を抑える効果が良好に発揮され、高温プロセス後における接着剤層の剥離をさらに容易にすることが可能である。また、上記範囲とすることにより、クラックの発生を防止することができる。
本実施の形態に係る接着剤組成物には、本発明における本質的な特性を損なわない範囲で、さらに、混和性のある添加剤、例えば接着剤の性能を改良するための付加的樹脂、可塑剤、接着助剤、安定剤、着色剤、界面活性剤などの慣用されているものを添加することができる。
さらに接着剤組成物は、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、粘度調整のために有機溶剤を用いて希釈してもよい。上記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;及び乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。特に、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体が好ましい。
有機溶剤の使用量は、接着剤組成物を塗布する膜厚に応じて適宜設定されるものであり、接着剤組成物が半導体ウェハー等の支持体上に塗布可能な濃度であれば特に限定されるものではない。一般的には、接着剤組成物の固形分濃度が20〜70質量%、好ましくは25〜60質量%の範囲内となるように用いられる。
〔接着フィルム〕
以上述べてきた本実施の形態に係る接着剤組成物は、用途に応じて様々な利用方法を用いることができる。例えば、液状のまま、半導体ウェハー等の被加工体の上に塗布して接着剤層を形成する方法を用いてもよいし、本発明に係る接着フィルム、即ち、予め可撓性フィルム等のフィルム上に上記のいずれかの接着剤組成物を含む接着剤層を形成した後、乾燥させておき、このフィルム(接着フィルム)を、被加工体に貼り付けて使用する方法(接着フィルム法)を用いてもよい。
このように、本発明に係る接着フィルムは、フィルム上に、上記のいずれかの接着剤組成物を含有する接着剤層を備える。
従って、高温環境下において高い接着強度を備え、耐熱性が高く、かつ剥離容易性に優れた接着フィルムを得ることができる。
上記接着フィルムは、上記接着剤層にさらに保護フィルムを被覆して用いてもよい。この場合、接着剤層上の保護フィルムを剥離し、被加工体の上に露出した接着剤層を重ねた後、接着剤層から上記フィルムを剥離することによって被加工体上に接着剤層を容易に設けることができる。
従って、上記接着フィルムを用いれば、被加工体の上に直接接着剤組成物を塗布して接着剤層を形成する場合と比較して、膜厚均一性及び表面平滑性の良好な層を形成することができる。
また、上記接着フィルムの製造に使用する上記フィルムとしては、フィルム上に製膜された接着剤層をフィルムから剥離することができ、接着剤層を保護基板やウェハー等の被処理面上に転写できる離型フィルムであれば限定されるものではない。例えば、膜厚15〜125μmのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂フィルムからなる可撓性フィルムが挙げられる。上記フィルムには必要に応じて、転写が容易となるように離型処理されることが好ましい。
上記フィルム上に接着剤層を形成する方法としては、所望する接着剤層の膜厚や均一性に応じて適宜、公知の方法を用いればよく、限定されるものではないが、例えば、アプリケーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター等を用いて、フィルム上に上記接着剤層の乾燥膜厚が10〜1000μmとなるように、本発明に係る接着剤組成物を塗布する方法が挙げられる。中でもロールコーターが膜厚の均一性に優れ、かつ厚さの厚い膜が効率よく形成できるため好ましい。
また、上記保護フィルムを用いる場合、上記保護フィルムとしては、上記接着剤層から剥離することができる限り限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムが好ましい。また、上記各保護フィルムは、シリコンをコーティング又は焼き付けしてあることが好ましい。上記接着剤層からの剥離が容易となるからである。上記保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが15〜125μmが好ましい。保護フィルムを備えた上記接着フィルムの柔軟性を確保できるからである。
上記接着フィルムの使用方法は、特に限定されるものでは無いが、例えば、保護フィルムを用いた場合は、これを剥離した上で、被加工体の上に露出した接着剤層を重ねて、フィルム上(接着剤層の形成された面の裏面)から加熱ローラを移動させることにより、接着剤層を被加工体の表面に熱圧着させる方法が挙げられる。このとき、接着フィルムから剥離した保護フィルムは、順次巻き取りローラ等でロール状に巻き取れば、保存し再利用することが可能である。
本発明の接着剤組成物及び接着フィルムの用途は、接着用途に用いられる限り、特に限定されるものではないが、半導体ウェハーの精密加工用保護基板を半導体ウェハー等の基板に接着する用途に、好適に用いることができる。特に、半導体ウェハー等の基板を研削して薄板化する際に、当該基板をサポートプレートに貼り付けるための接着剤として、好適に用いることができる(例えば、特開2005−191550号公報)。
〔剥離液〕
本発明に係る接着剤組成物を取り除くための剥離液としては、通常用いられる剥離液を用いることができるが、特に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と表記する)、酢酸エチル、メチルエチルケトンを主成分とする剥離液が環境負荷や剥離性の点で好ましい。
以下に、本発明に係る接着剤組成物の実施例について説明する。
〔実施例1〜10〕
実施例1〜10及び後述する実施例11〜14における接着剤組成物を構成する樹脂1〜10を、以下に示す方法を用いて合成した。なお、質量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準で求めた。樹脂の組成比(モル比)は13C-NMRにより分析した。
(樹脂1の合成:ブロックスターポリマー)
窒素雰囲気下、フラスコにトルエン(480g)、THF(130g)およびスチレン(ST)(61.3g;589mmol)を加えて−40℃に冷却した。この溶液中にn−ブチルリチウム(n−BuLi)溶液(2.44g;6mmol)を加え、25分間攪拌した。その後、ジフェニルエチレン(1.2g;7mmol)を加え10分間攪拌した。次に、THF(30g)にメチルメタクリレート(MMA)(14.7g;147mmol)、ジエチル亜鉛ヘキサン溶液(5.12g;7mmol)、及び塩化リチウム(6.72g;6mmol)を加えた溶液を5分間かけて滴下した後、15分間攪拌した。続いて、THF(30g)にエチレングリコールジメタクリレート(EGMA)(3.46g;18mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(3.67g;5mmol)を加えた溶液を5分間かけて滴下した後30分間攪拌した。この反応溶液を室温まで昇温させながら140分間攪拌した後、メタノールを加えキリングした。反応溶液を大量のメタノールに添加し析出したポリマーを濾過・乾燥した。次に、このポリマーを15wt%THF溶液とし、メタノールにて3回洗浄することにより得られたタール状物を再度THFに溶解し、20wt%溶液とした。この溶液を大量のメタノールに添加し析出したポリマーを濾過・乾燥した。
得られたポリマーをGPC(RI)により分析した結果は、Mw=155200であり、分散度=1.09であった。また、ST/MMA/EGMA=79/19/2(モル%)であった。
(樹脂2の合成:リニア構造を有するブロックポリマー)
窒素雰囲気下、トルエン(480g)、THF(180g)及びST(62.0g;595mmol)を加えて−40℃に冷却した。この溶液中にn−BuLi溶液(1.38g;3mmol)を加え、30分間攪拌した。その後、ジフェニルエチレン(0.66g;4mmol)を加え10分間攪拌した。次に、THF(30g)にMMA(15.1g;151mmol)、ジエチル亜鉛ヘキサン溶液(5.44g;7mmol)、及び塩化リチウム(3.55g;3mmol)を加えた溶液を5分間かけて滴下した後、75分間攪拌し、メタノールを添加して反応を停止させた。得られた反応溶液に酢酸エチルを添加し3回水洗した後、THFに溶媒置換し15wt%溶液とした。この溶液を大量のメタノールに添加し、析出したポリマーを濾過・乾燥した。
得られたポリマーをGPC(RI)により分析した結果は、Mw=45400であり、分散度=1.15であった。また、ST/MMA=82/18(モル%)であった。
(樹脂3の合成:リニア構造を有するブロックポリマー)
窒素雰囲気下、トルエン(480g)、THF(120g)及びST(60.3g;579mmol)を加えて−40℃に冷却した。この溶液中にn−BuLi溶液(2.20g;5mmol)を加え、30分間攪拌した。その後、ジフェニルエチレン(1.09g;6mmol)を加え10分間攪拌した。次に、THF(30g)にMMA(15.0g;150mmol)、ジエチル亜鉛ヘキサン溶液(5.06g;7mmol)、及び塩化リチウム(6.42g;6mmol)を加えた溶液を5分間かけて滴下した後、90分間攪拌し、メタノールを添加して反応を停止させた。得られた反応溶液に酢酸エチルを添加し3回水洗した後、THFに溶媒置換し15wt%溶液とした。この溶液を大量のメタノールに添加し、析出したポリマーを濾過・乾燥した。
得られたポリマーをGPC(RI)により分析した結果は、Mw=19700であり、分散度=1.05であった。また、ST/MMA=81/19(モル%)であった。
(樹脂4の合成:リニア構造を有するブロックポリマー)
窒素雰囲気下、室温でTHF(450g)、塩化リチウム(1.67g;2mmol)及びn−BuLi溶液(2.41g;6mmol)を加え、20分間攪拌した。−40℃に冷却し、n−BuLi溶液(1.61g;4mmol)を加え、次いでジエチル亜鉛ヘキサン溶液(2.17g;3mmol)を加え、最後にST(31.4g;302mmol)を加えた。この溶液中にn−BuLi溶液(0.22g;0.5mmol)を加え、10分間攪拌した。その後、ジフェニルエチレン(0.46g;3mmol)を加え10分間攪拌した。次に、THF(30g)にMMA(7.35g;73mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(1.00g;1mmol)を加えた溶液を5分間かけて滴下した後、60分間攪拌し、メタノールを添加して反応を停止させた。得られた反応溶液にトルエン及び酢酸エチルを添加し6回水洗した後、THFに溶媒置換し12wt%溶液とした。この溶液を大量のメタノールに添加し、析出したポリマーを濾過・乾燥した。
得られたポリマーをGPC(RI)により分析した結果は、Mw=78800であり、分散度=1.06であった。また、ST/MMA=82/18(モル%)であった。
(樹脂5の合成:リニア構造を有するブロックポリマー)
窒素雰囲気下、フラスコにTHF(500g)と2−メルカプトチアゾリン(0.12g:1mmol)とを入れ、スターラーで攪拌しながら、室温においてn−BuLi溶液(1.67g;4mmol)を加え、15分間攪拌した。続いて、−40℃に冷却し、n−BuLi溶液(0.68g;2mmol)を加え、THF(60g)にp−tertブトキシスチレン(PTBST)(31.03g;176mmol)、ST(18.73g;180mmol)及びジブチルマグネシウムヘキサン溶液(1.19g;2mmol)を加えた溶液を30分かけて滴下し、滴下終了後、ジブチルマグネシウムヘキサン溶液(0.85g;1mmol)を加え、15分間攪拌した。続いて、3.79%塩化リチウムTHF溶液(5.73g:5mmol)にジフェニルエチレン(0.37g;2mmol)及びジブチルマグネシウムヘキサン溶液(0.32g;0.5mmol)を加えた溶液を2分かけて滴下し、滴下終了後15分間攪拌した。その後、−50℃に冷却し、THF(10g)にMMA(8.99g;90mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(1.00g;1mmol)を加えた溶液を7分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌し、メタノールを加えキリングした。得られたキリング液をガスクロマトグラフィーにより測定したが、PTBST、ST及びMMAは観測されなかった。
その後、キリング液を濃縮した後、酢酸エチル(800g)を加え、純水(400g)で3回洗浄分液した。上層を濃縮した後、THF(150g)で希釈し、メタノール(800g)に攪拌しながら滴下してポリマーを析出させ、1時間攪拌し、濾過後、40℃で減圧乾燥させた。乾燥ポリマー(100g)をトルエン/エタノール(35/65wt%)混合溶媒で35%になるように溶解し、25%濃塩酸(40g)を添加し、70℃で4時間加熱撹拌した。冷却した溶液に酢酸エチル(500g)を加え、炭酸水素ナトリウムで中和後、純水(250g)で3回洗浄した。上層を濃縮した後、THF(250g)を加え、ヘキサン(5kg)に攪拌しながら滴下してポリマーを析出させ、1時間攪拌し、濾過後、40℃で減圧乾燥させた。
得られたポリマーをGPCにより分析した結果は、Mw=85300、分散度=1.19であり、13C−NMRにより組成比を分析した結果は、p−ヒドロキシスチレン(PHS)が41モル%、STが41モル%、MMAが18モル%であった。
(樹脂6の合成:リニア構造を有するブロックポリマー)
窒素雰囲気下、フラスコにTHF(1350g)と2−メルカプトチアゾリン(0.36g:3mmol)とを入れ、スターラーで攪拌しながら、室温においてn−BuLi溶液(4.28g;10mmol)を加え、15分間攪拌した。続いて、−40℃に冷却し、n−BuLi溶液(1.16g;3mmol)を加え、THF(60g)にPTBST(84.47g;479mmol)、ST(50.02g;480mmol)及びジブチルマグネシウムヘキサン溶液(2.13g;3mmol)を加えた溶液を25分かけて滴下し、滴下終了5分後、ジブチルマグネシウムヘキサン溶液(2.56g;4mmol)を加え、5分間攪拌した。続いて、3.71%塩化リチウムTHF溶液(8.54g:7mmol)にジフェニルエチレン(1.08g;6mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(0.20g;0.3mmol)を加えた溶液を2分かけて滴下し、滴下終了後10分間攪拌し、−50℃に冷却した。その後、THF(20g)にMMA(24.02g;240mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(0.46g;0.6mmol)を加えた溶液を13分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌し、メタノールを加えキリングした。得られたキリング液をガスクロマトグラフィーにより測定したが、PTBST、ST及びMMAは観測されなかった。
その後の処理は、上記樹脂5と同様に行い、ポリマーを得た。
得られたポリマーをGPCにより分析した結果は、Mw=70000、分散度=1.08であり、13C−NMRにより組成比を分析した結果は、PHSが41モル%、STが42モル%、MMAが17モル%であった。
(樹脂7の合成:リニア構造を有するブロックポリマー)
窒素雰囲気下、フラスコにTHF(1340g)と2−メルカプトチアゾリン(0.36g:3mmol)とを入れ、スターラーで攪拌しながら、室温においてn−BuLi溶液(4.89g;12mmol)を加え、15分間攪拌した。続いて、−40℃に冷却し、n−BuLi溶液(0.94g;2mmol)を加え、THF(60g)にPTBST(84.48g;479mmol)、ST(49.94g;480mmol)及びジブチルマグネシウムヘキサン溶液(2.00g;3mmol)を加えた溶液を27分かけて滴下し、滴下終了5分後、ジブチルマグネシウムヘキサン溶液(1.91g;3mmol)を加え、5分間攪拌した。続いて、3.71%塩化リチウムTHF溶液(8.19g:7mmol)にジフェニルエチレン(1.09g;6mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(0.22g;0.3mmol)を加えた溶液を2分かけて滴下し、滴下終了後15分間攪拌し、−50℃に冷却した。その後、THF(20g)にMMA(24.01g;240mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(0.38g;0.5mmol)を加えた溶液を12分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌し、メタノールを加えキリングした。得られたキリング液をガスクロマトグラフィーにより測定したが、PTBST、ST及びMMAは観測されなかった。
その後の処理は、上記樹脂5と同様に行い、ポリマーを得た。
得られたポリマーをGPCにより分析した結果は、Mw=90400、分散度=1.08であり、13C−NMRにより組成比を分析した結果は、PHSが44モル%、STが44モル%、MMAが12モル%であった。
(樹脂8の合成:リニア構造を有するブロックポリマー)
窒素雰囲気下、フラスコにTHF(500g)と2−メルカプトチアゾリン(0.12g:1mmol)とを入れ、スターラーで攪拌しながら室温においてn−BuLi溶液(1.57g;4mmol)を加え、15分間攪拌した。続いて、−40℃に冷却し、n−BuLi溶液(0.73g;2mmol)を加え、THF(60g)にp−(1−エトキシエトキシ)スチレン(PEES)(47.47g;242mmol)、ST(24.33g;234mmol)及びジブチルマグネシウムヘキサン溶液(1.71g;2mmol)を加えた溶液を23分かけて滴下し、滴下終了5分後、ジブチルマグネシウムヘキサン溶液(1.02g;1mmol)を加え、10分間攪拌した。続いて、ジフェニルエチレン(0.35g;2mmol)を加え、10分間攪拌した。その後、−50℃に冷却し、3.71%塩化リチウムTHF溶液(9.26g:8mmol)にジエチル亜鉛ヘキサン溶液(0.61g;1mmol)を加えた溶液を1分かけて滴下し、THF(10g)にMMA(12.36g;123mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(0.64g;1mmol)を加えた溶液を10分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌し、メタノールを加えキリングした。得られたキリング液をガスクロマトグラフィーにより測定したが、PEES、ST及びMMAは観測されなかった。
その後、濃塩酸(6.98g;69mmol)を加え、50℃で1時間攪拌後、トリエチルアミン(5.22g;52mmol)を加え、攪拌し、酢酸(1.86g;31mmol)を加えた。得られたトリエチルアミン/塩酸塩を濾過後、濃縮し、純水(3Kg)を加え、1時間攪拌後、濾過した。得られたポリマーをTHF(450g)と酢酸エチル(500g)との混合溶媒に溶解し、純水(250g)で分液し、更に純水(500g)で更に2回分液した。上層を濃縮した後、THF(200g)を加え、ヘキサン(3Kg)に攪拌しながら落としてポリマーを析出させ、1時間攪拌し、濾過後、40度で減圧乾燥させた。
得られたポリマーをGPCにより分析した結果は、Mw=75000、分散度=1.36であり、13C−NMRにより組成比を分析した結果は、PHSが42モル%、STが41モル%、MMAが17モル%であった。
(樹脂9の合成:リニア構造を有するブロックポリマー)
窒素雰囲気下、フラスコにTHF(700g)と2−メルカプトチアゾリン(0.23g:2mmol)とを入れ、スターラーで攪拌しながら室温においてn−BuLi溶液(4.89g;12mmol)を加え、60分間攪拌した。続いて、−40℃に冷却し、n−BuLi溶液(2.03g;5mmol)を加え、PTBST(22.63g;128mmol)、ST(40.41g;388mmol)及びジブチルマグネシウムヘキサン溶液(0.88g;1mmol)の混合溶液を10分かけて滴下し、滴下終了5分後、ジブチルマグネシウムヘキサン溶液(0.81g;1mmol)を加え、5分攪拌した。続いて、3.79%塩化リチウムTHF溶液(3.78g:3mmol)にジフェニルエチレン(0.83g;5mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(0.33g;0.5mmol)を加えた溶液を1分かけて滴下し、滴下終了後15分間攪拌し、−50℃に冷却した。その後、MMA(13.09g;131mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(0.23g;0.3mmol)の混合溶液を3分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌し、メタノールを加えキリングした。得られたキリング液をガスクロマトグラフィーにより測定したが、PTBST、ST及びMMAは観測されなかった。
その後の処理は、乾燥ポリマー(100g)に対してトルエン/エタノール(35/65wt%)混合溶媒で10%になるように溶解した点以外は、上記樹脂5と同様に行い、ポリマーを得た。
得られたポリマーをGPCにより分析した結果は、Mw=104500、分散度=1.07であり、13C−NMRにより組成比を分析した結果は、PHSが21モル%、STが60モル%、MMAが19モル%であった。
(樹脂10の合成:リニア構造を有するブロックポリマー)
窒素雰囲気下、フラスコにTHF(750g)と2−メルカプトチアゾリン(0.23g:2mmol)とを入れ、スターラーで攪拌しながら室温においてn−BuLi溶液(1.99g;5mmol)を加え、60分間攪拌した。続いて、−40℃に冷却し、n−BuLi溶液(0.47g;1mmol)を加え、PTBST(62.06g;352mmol)、ST(12.15g;117mmol)及びジブチルマグネシウムヘキサン溶液(0.89g;1mmol)の混合溶液を10分かけて滴下し、滴下終了5分後、ジブチルマグネシウムヘキサン溶液(0.82g;1mmol)を加え、5分間攪拌した。続いて、3.79%塩化リチウムTHF溶液(4.08g:3.6mmol)にジフェニルエチレン(0.95g;5.3mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(0.44g;0.6mmol)を加えた溶液を1分かけて滴下し、滴下終了後15分間攪拌し、−50℃に冷却した。その後、MMA(11.64g;116mmol)及びジエチル亜鉛ヘキサン溶液(0.27g;0.4mmol)の混合溶液を2分かけて滴下し、滴下終了後60分間攪拌し、メタノールを加えキリングした。得られたキリング液をガスクロマトグラフィーにより測定したが、PTBST、ST及びMMAは観測されなかった。
その後の処理は、乾燥ポリマー(100g)に対してトルエン/エタノール(35/65wt%)混合溶媒で20%になるように溶解した点以外は、上記樹脂5と同様に行い、ポリマーを得た。
得られたポリマーをGPCにより分析した結果は、Mw=123500、分散度=1.07であり、13C−NMRにより組成比を分析した結果は、PHSが61モル%、STが20モル%、MMAが19モル%であった。
上述した各樹脂の組成、Mw及びMw/Mnを下記表1に示す。
Figure 0005525779
(接着剤組成物)
実施例1〜10に係る接着剤組成物として、下記表2に示す樹脂及び重合禁止剤をPGMEAに溶解し、固形分濃度が40質量%の接着剤組成物を得た。なお、下記表2における[]内の数値の単位は質量部である。
Figure 0005525779
〔比較例1〕
比較例1における接着剤組成物を構成する比較樹脂1を、以下の方法により合成した。
(比較樹脂1の合成)
上記表1に示す組成のスチレン、メチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、及びn−ブチルアクリレート(n−BA)を、公知のラジカル重合を用いて合成した。
(接着剤組成物)
比較例1における接着剤組成物として、上記表2に示す樹脂及び重合禁止剤をPGMEAに溶解し、固形分濃度が40質量%の接着剤組成物を得た。
〔実施例11〜14〕
実施例11〜14に係る接着剤組成物として、下記表3に示す樹脂をPGMEAに溶解して、固形分濃度が40質量%の接着剤組成物を得た。
Figure 0005525779
〔接着剤組成物の評価〕
実施例1〜14及び比較例1における各接着剤組成物において、クラック耐性、脱ガス量、接着性、溶解性及び耐熱溶解性について測定し、評価を行った結果を、上記表2及び表3に示した。
なお、各項目における測定方法及び評価方法、ならびに得られた結果について以下に説明する。
(塗膜の形成方法)
各項目についての測定及び評価は、各接着剤組成物を用いて以下の方法により形成させた塗膜を用いて行った。
まず、各接着剤組成物を、それぞれ6インチのシリコンウェハー上に、乾燥膜厚が15μmまたは50μmとなるように塗布した。その後、110℃で3分間、次いで150℃で3分間、次いで200℃で3分間の条件により乾燥することにより、塗膜を作成した。
(クラック耐性)
クラック耐性については、実施例1〜14及び比較例1に係る各接着剤組成物について、乾燥膜厚が15μmまたは50μmとなるように形成させた塗膜を目視にて観察することにより測定した。なお、塗膜層にクラックが認められない場合を良好と判定して「○」で表し、塗膜層にクラックが認められる場合を不良と判定して「×」で表した。
実施例1〜14に係る接着剤組成物のクラック耐性は、上記表2及び表3に示すように、比較例1よりも概ね良好であった。なお、実施例3の接着剤組成物は、乾燥膜厚が50μmとなるように塗膜を形成させた場合にはクラック耐性が不良であったが、これにより、樹脂のMwが高いほうがクラック耐性が良好になることが示された。
(脱ガス量)
実施例1〜14及び比較例1に係る各接着剤組成物について、乾燥膜厚が15μmとなるように形成させた塗膜を40℃から300℃まで昇温して、塗膜からの脱ガス量を測定した。
上記脱ガス量の測定には、TDS法(Thermal Desorption Spectroscopy法、昇温脱離分析法)を用いた。TDS測定装置(放出ガス測定装置)は、電子科学株式会社製のEMD−WA1000を使用した。
TDS装置の測定条件は、Width:100、Center Mass Number:50、Gain:9、Scan Speed:4、Emult Volt:1.3KVで行った。
脱ガス量の評価は、300℃において、TDS測定装置により求められる強度(Indensity)が400000未満である場合は良好であると判定して「○」で表し、400000以上である場合は不良であると判定して「×」で表した。
上記表2及び表3に示すように、実施例1〜14に係る接着剤組成物の脱ガス量は少なく良好であった。これに対し、比較例1の接着剤組成物は脱ガス量が多く不良であった。
(接着性)
実施例1〜14及び比較例1に係る各接着剤組成物について、乾燥膜厚が15μmとなるように形成させた塗膜に、ガラス板を200℃において1kgの加重で接着させた後、各温度環境下において当該ガラス基板を引っ張り、シリコンウェハーから剥がれた時の接着強度を縦型電動計測スタンド「MX−500N」(株式会社イマダ社製)を用いて測定した。そして、接着強度が3kg/cmを維持できる温度の上限値を測定した。
上記表2及び表3に示すように、実施例1〜14に係る接着剤組成物の接着性は、比較例1の接着剤組成物と比較して、接着強度3kg/cmを維持できる温度の上限値が高く、良好であった。
(溶解性)
実施例1〜14及び比較例1に係る接着剤組成物について、乾燥膜厚が15μmとなるように形成させた塗膜を、室温条件下において溶剤2−ヘプタノンに溶解し、有機溶剤に対する溶解性を確認し、溶け残りがないものを良好であると判定して「○」で表した。
上記表2及び表3に示すように、実施例1〜14に係る接着剤組成物の溶解性はいずれも良好であった。
(耐熱溶解性)
実施例1〜14及び比較例1に係る接着剤組成物について、乾燥膜厚が15μmとなるように形成させた塗膜をそれぞれ250℃で1時間過熱した後、2−ヘプタノンに浸漬し、層厚と溶解時間との関係から溶解速度(nm/sec)を算出した。そして、溶解速度が200nm/secより大きく300nm/sec以下であるときには、耐熱溶解性が非常に良好であると判定して「◎」で表し、溶解速度が50〜200nm/secであるときには、良好であると判定して「○」で表した。
上記表2及び表3に示すように、実施例1〜14に係る接着剤組成物の耐熱溶解性はいずれも良好であり、特に実施例2〜4、12〜14における接着剤組成物の耐熱溶解性は、比較例1のものよりも非常に良好であった。
本発明に係る接着剤組成物及び接着フィルムは、高温環境下においてガスを発生せず高い耐熱性を有し、高い接着強度を備え、かつ、半導体ウェハー及びチップ等からの剥離時における熱処理において高い溶解性を有するとともにガスの発生を抑制する、優れた剥離容易性を備えている。よって高温プロセス、高真空プロセス、アルカリ等様々な化学薬品を用いるプロセスを経る半導体ウェハー又はチップの加工工程に、好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. スチレン及びその誘導体と(メタ)アクリル酸エステルとを含み、かつ、スチレンの誘導体としてp−ヒドロキシスチレンを5モル%以上、80モル%以下の範囲で含む単量体をリビングアニオン重合してなるブロックポリマーを含むことを特徴とする接着剤組成物。
  2. 上記ブロックポリマーにおける分子量分布(Mw/Mn)が、1.01以上、2.00以下であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
  3. 上記単量体の総量における上記スチレンの割合が、10モル%以上、90モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載の接着剤組成物。
  4. フィルム上に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤組成物を含有する接着剤層を備えることを特徴とする接着フィルム。
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