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JP5578680B2 - 炭素含有耐火物 - Google Patents

炭素含有耐火物 Download PDF

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Description

本発明は工業窯炉に使用される耐火物、特に鉄鋼業の製銑、製鋼プロセスに使用される耐火物に関する。
工業窯炉、特に鉄鋼業の製銑、製鋼プロセスにおける溶鉄などの溶融金属の保持容器の内張り、例えば高炉、混銑車、鍋、転炉、真空脱ガス槽あるいは連続鋳造用のノズル、プレートなどには耐火物が使用されている。耐火物は使用によって溶損あるいは損耗するため、寿命と判断された場合には使用済み品を解体した後に新しい耐火物をライニングしたり新品に交換したりする必要がある。このため、近年の生産性向上のニーズの高まりによって、このような解体及びライニングあるいは交換に要する時間、あるいはこれに起因する操業停止時間を短縮するため、耐火物の耐食性を改善する必要性が高まっている。
耐食性の改善手法には様々な手法があり、一般的に焼結温度アップによる緻密化、金属や結合剤の多量添加による高強度化、耐食性に劣る炭素成分、SiO成分の減量などの手法が採用されているが、いずれも耐スポール性の低下を招くことから、実用上は各手法の適用には限界があり、それぞれの用途や使用条件に応じて適宜調整するのが現状である。例えば、塩基性耐火原料、特にマグネシア原料は耐食性に非常に優れているため、溶融金属の保持容器の内張りとしては最も重要な原料であるが、熱膨張率が大きいため、マグネシア原料を使用した耐火物は、耐スポール性に劣るという問題がある。したがって、耐食性と耐スポール性の両方を改善させる手法こそが真に耐火物の耐用を改善する手法と言える。
本発明の必須原料である酸化ランタンを耐火物の原料として適用した従来技術としては次のような例がある。特許文献1には、塩基性耐火物原料中に希土類酸化物を0.2〜20質量%含有させた耐火物が開示されており、希土類酸化物として酸化ランタンが記載されている。酸化ランタンがスラグ中のSiOと反応してスラグが高融点化することで、耐食性に優れた耐火物が得られている。しかしながら、この耐火物は耐スポール性が悪いため実用化は困難である。
特許文献2には、耐火原料配合物に硼化ランタン(LaB)を添加した炭素含有耐火物が開示されている。しかしながら、硼化ランタンの添加によって耐酸化性は改善されるものの、硼素は耐食性を悪化させるため必ずしも耐食性の改善とはならず、また硼化ランタンは非常に高価な原料のため実用的ではない。
特開2000−128624号公報 特開平6−135762号公報
本発明が解決しようとする課題は、工業窯炉に使用される耐火物、特に鉄鋼業の製銑、製鋼プロセスに使用される耐火物の耐食性及び耐スポール性を改善することにある。
本発明者らは、酸化ランタンを耐火原料配合物に配合した場合の作用及び効果について鋭意検討を行った結果、酸化ランタン及び炭素原料を規定量含む耐火原料配合物に、結合剤を添加し混練して得られた坏土を成形し、得られた成形体を熱処理する際に、酸化ランタンを炭酸ランタンに変化させることによって、耐食性のみならず耐スポール性についても顕著な改善効果を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
(1)酸化ランタンを0.1〜5質量%、炭素原料を0.5〜25質量%を含む耐火原料配合物に、結合剤を添加し混練して得られた坏土を成形し、その成形体を熱処理して得られる炭素含有耐火物であって、次の条件a及び条件bのうち少なくとも一方を満足する炭素含有耐火物。
条件a:100℃〜500℃の間に3時間以上保持される条件で熱処理中に水蒸気を発生する結合剤を使用する。
条件b:絶対湿度が5g/kg以上の水蒸気及び/又はCO 濃度が1vol%以上の炭酸ガスを含む雰囲気下で100℃〜500℃の間に3時間以上保持される条件で熱処理する。
(2)耐火原料配合物の酸化ランタンの含有量が0.1〜2質量%である(1)に記載の炭素含有耐火物。
(3)耐火原料配合物の炭素原料の含有量が0.5〜10質量%である(1)又は(2)に記載の炭素含有耐火物。
(4)耐火原料配合物の炭素原料の含有量が0.5〜5質量%である(1)又は(2)に記載の炭素含有耐火物。
(5)耐火原料配合物が、炭素原料として、黒鉛、ピッチ、カーボンブラックの中から選択される少なくとも1種類以上を含む(1)〜(4)のいずれかに記載の炭素含有耐火物。
(6)耐火原料配合物のマグネシアの含有量が50質量%以上である(1)〜(5)のいずれかに記載の炭素含有耐火物。
(7)結合剤の添加量が、耐火原料配合物に対する外掛けで1〜15質量%である(1)〜(6)のいずれかに記載の炭素含有耐火物。
)熱処理中に炭酸ランタンが生成する(1)〜()のいずれかに記載の炭素含有耐火物。
本発明によって耐スポール性が改善される理由については必ずしも明確ではないが、酸化ランタン及び炭素原料を規定量含む耐火原料配合物に、結合剤を添加し混練して得られた坏土を成形して得た成形体を熱処理する際に、水蒸気及び/又は炭酸ガスが作用することで、酸化ランタンが炭酸ランタンに変化し、その際に、体積膨張を伴うことによって耐火物組織内にマイクロクラックを生成することで弾性率が低下し、これによって耐スポール性が改善されると推定する。
熱処理中の炭酸ランタンの生成には炭素原料、水蒸気及び炭酸ガスの存在が大きく関与していると考えられる。酸化ランタンは、水蒸気と比較的反応しやすく、これによって酸化ランタンの表面が活性化され、さらに炭素原料又は炭酸ガスと反応して炭酸ランタンが生成する。したがって、炭酸ランタンの生成を促進するには、水蒸気の存在が重要であり、例えば熱処理中に水蒸気を発生する結合剤を使用することが好ましい(条件a)。一例を挙げると、グリコール系ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂のほかに、結合剤中へ溶剤として水を添加することや、結合剤中の溶剤としてエチレングリコールのように吸湿性のある溶剤を適用する方法もある。
あるいは、熱処理を水蒸気及び/又は炭酸ガスを含む雰囲気下で実施する方法もある(条件b)。雰囲気中の水蒸気の含有量については、絶対湿度5g/kg以上とし、好ましくは10g/kg以上とする。絶対湿度が低い場合には、熱処理炉内を加湿することによって、より好ましい絶対湿度を得ることが可能である。雰囲気中の炭酸ガスの含有量については、CO濃度で1vol%以上とする特に、燃焼排ガスを利用すると、高濃度の炭酸ガスを含みかつ高温の雰囲気を安価に得ることができるので実用上特に好ましい。
前述の条件aと条件bのうち、いずれか一方の条件を満足すれば本発明の効果を得ることができるが、最も好ましいのは両方の条件を満たすことである。なお、水蒸気が存在しない炭酸ガスを含む雰囲気中でも炭酸ランタンは生成するが、生成させるのに長い時間を要するため、実用的には水蒸気を発生する結合剤を使用するか、水蒸気を含む雰囲気下で熱処理することが好ましい。
熱処理、100℃〜500℃の間に3時間以上保持される条件で実施する。100℃以下では炭酸ランタンの生成が不十分な場合がある。一方、500℃を超えると、炭酸ランタンが分解するため、炭酸ランタンの生成を促進するには100℃〜500℃の間で3時間以上保持するなお、100℃〜500℃の間では必ずしも一定の温度に保持する必要はない。100℃〜500℃の間で3時間以上保持した後は、冷却した後、必要に応じて加工等を加えて製品としても良いし、再度高温で熱処理しても良いし、冷却せずに引き続き500℃以上の高温で熱処理しても良い。ただし、500℃以上で熱処理する場合には、炭素原料の酸化を防止するため非酸化性の雰囲気で熱処理することが好ましい。
原料として使用する酸化ランタンの含有量は、耐火原料配合物全体に占める割合で、0.1〜5質量%である必要がある。0.1質量%未満では酸化ランタンの添加による耐スポール性、耐食性の改善効果を発揮させることが困難である。一方、5質量%を超えると炭酸ランタンの生成によるマイクロクラックが過剰となり、耐スポール性や耐食性の改善効果がほとんどなくなる上に、原料コストが増大する。改善効果と原料コストのバランスを考慮すると酸化ランタンの含有量は、0.1〜2質量%が好ましい。酸化ランタンの原料特性としては特に制限はないが、分散性と反応性を考慮すると比較的微粉の原料が好ましく、例えば粒度が0.1mm以下の原料を使用する。また、純度についても特に制限はなく、例えば他の希土類との混合酸化物原料でも問題ない。逆に混合酸化物は比較的低コストで入手可能なため耐火物用原料としては好都合である。混合酸化物を使用する場合、混合酸化物中の酸化ランタン分が、耐火原料配合物全体に占める割合で0.1〜5質量%となるようにする。
炭素原料は、少なくとも0.5質量%は必要である。0.5質量%未満では熱処理中の炭酸ランタンの生成が促進されず、本発明の効果である耐スポール性の改善効果を得ることができない。また、25質量%を超えると、元々耐スポール性に優れた耐火物となり、本発明の効果を認識することが困難である。
炭素原料の含有量としては0.5〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。これは、一般に炭素原料が少ないほど耐スポール性に劣っており、そのような耐火物において本発明が特に顕著な効果を発揮するためである。
炭素原料としては、耐火原料として使用されている一般的な炭素原料を使用することが可能であるが、その中では黒鉛、ピッチ、カーボンブラックが好ましい。炭素原料としては、これらの中から1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することも可能である。
酸化ランタン、炭素原料以外の耐火原料としては一般的な耐火物用の原料を使用することが可能である。例えば、マグネシア、アルミナ、シリカ、スピネル、ジルコニア、ムライト、炭化珪素、窒化珪素、炭化硼素などを挙げることができる。なお、アルミニウム、シリコン、マグネシウムなどの金属あるいはその合金は、それ自身は融点が低く耐火原料とは言いにくい面もあるが、熱処理中あるいは使用中に雰囲気あるいは耐火原料と反応して酸化物、炭化物、窒化物等を生成して高融点化するため、本発明においては耐火原料に含まれるものとする。
耐火原料配合物中にはマグネシアが50質量%以上含まれていることが好ましい。マグネシアは、耐火原料の中でも特に耐食性に優れ、また比較的安価であるため最も有用な耐火原料と言えるが、熱膨張率が大きいためマグネシアを使用した耐火物は、耐スポール性に劣っている。本発明は、このような耐火物について特に顕著な改善効果を発揮するため、マグネシア原料を50質量%以上と炭素原料を0.5〜25質量%含有した、いわゆるマグネシアカーボン耐火物への適用が最も好ましい。
酸化ランタン、炭素原料を規定量含む耐火原料配合物に、結合剤を添加し均一に混練して坏土を得る。結合剤としては耐火物用として使用されている一般的な結合剤が使用可能であるが、前述したように熱処理中に水蒸気を発生させる結合剤がより好ましい。結合剤の添加量は耐火原料配合物100質量%に対して外掛けで1〜15質量%が好ましい。1質量%未満では成形体の強度が低く取り扱いが困難となり、15質量%を超えると熱処理時の結合剤の揮発によって成形体に亀裂を生じる恐れがある。なお、結合剤のほかに可塑剤や硬化剤などの添加物を併用することも可能である。
混練、成形については一般的な耐火物の製法と同一である。熱処理についても基本的には一般的な耐火物の製法と同一であるが、本発明の効果をより顕著に発現させるためには、前述したように熱処理雰囲気中の水蒸気含有量、炭酸ガス含有量、処理温度及び保持時間を十分考慮する必要がある。
熱処理が終わった耐火物は、必要に応じて含浸、加工、付帯物の装着等を実施して耐火物製品となる。
本発明によって、耐スポール性及び耐食性に優れた工業窯炉用炭素含有耐火物を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
表1に示す配合割合及び熱処理条件にて、熱処理中に結合剤から発生する水蒸気の有無及び熱処理中の雰囲気が、耐火物の耐食性及び耐スポール性に及ぼす影響を調査した。耐火原料としては、マグネシアクリンカーを主要原料として、黒鉛を10質量%、アルミニウムを3質量%、酸化ランタンを2質量%配合した。本配合は転炉の内張り用耐火物として好適である。結合剤としては、熱処理中に水蒸気を発生しないエステル系ノボラック型フェノール樹脂と熱処理中に水蒸気が発生するグリコール系ノボラック型フェノール樹脂の2種類を使用した。表1の配合割合の耐火原料配合物及び結合剤をミキサーにて均一に混練して坏土を得た。得られた坏土を圧力100MPaにて並型形状に成形して成形体を得た。熱処理については3種類の雰囲気下で実施した。窒素雰囲気は、水分、炭酸ガスを含まない市販の窒素ボンベから窒素を炉内に吹き込みながら熱処理した。大気雰囲気は、絶対湿度が10g/kgの大気中で熱処理した。排ガス雰囲気は、水分を除去したCO濃度が7vol%の燃焼排ガスを炉内に吹き込みながら熱処理した。それぞれの熱処理時の最高温度は250℃で、保持時間は5時間である。
熱処理後の耐火物について耐食性と耐スポール性の評価を行った。耐食性は、回転侵食法にて評価した。使用したスラグは、C/S=3(質量比)、T.Fe=15質量%で、スラグと鋼の廃滓・投入を30分毎に10回繰り返した。試験温度は1750℃である。試験終了後のサンプルを切断し、最大溶損量を測定し、比較例1の溶損量の逆数を100として、その他のサンプルの溶損量を指数化した。したがって、数値が大きいほど耐食性は良好であることを示す。
耐スポール性は、1600℃の溶銑中にサンプルを浸漬し空冷する操作を3回繰り返し、試験前後のサンプルの弾性率を共振法にて測定して弾性率の維持率を求めた。表1に記載の指数は、比較例1の弾性率維持率を100とした数値で、数値が大きいほど耐スポール性に優れていることを示す。
Figure 0005578680
表1に示す評価結果から、比較例1と本発明による実施例1〜5を比較すると耐食性はほぼ同レベルであるが、本発明の実施例1〜5は、いずれも比較例1と比較して耐スポール性に優れていることが明らかである。また、実施例1の結果から、水分、炭酸ガスを含まない雰囲気中でも、熱処理中に水蒸気が発生する結合剤を使用した場合、耐スポール性が改善されることが分かる。ただし、その改善程度は比較的小さい。実施例2〜3は絶対湿度10g/kgの大気中で熱処理した場合であるが、熱処理中に水蒸気が発生しない結合剤を使用しても耐スポール性が改善されていることが明らかである。さらに、熱処理中に水蒸気が発生する結合剤を使用した場合には、耐スポール性の改善効果が顕著である(実施例3)。実施例4〜5は燃焼排ガス中で熱処理した場合で、CO濃度が7vol%である。この場合、熱処理中に水蒸気を発生する結合剤を使用した場合に、特に顕著な耐スポール性の改善効果が得られている。これらの結果から、表1に示す配合割合を原料とした坏土の成形体を、熱処理中に水蒸気を発生する結合剤を使用するか、水蒸気及び/又は炭酸ガスを含む雰囲気下で熱処理することによって耐スポール性が改善されることが明らかである。
熱処理後の耐火物について粉末X線法にて炭酸ランタンの有無について調査した結果、実施例1〜5には炭酸ランタンの生成が認められたが、比較例1には認められなかった。また、実施例1〜5に含まれる炭酸ランタンの含有量と耐スポール性の指数は正の相関性が高いことが明らかになり、炭酸ランタンの生成によって耐スポール性が改善されていることが明らかになった。
表2に示す配合割合にて、耐火原料配合物中の酸化ランタンの含有量が、耐火物の耐食性及び耐スポール性に及ぼす影響を調査した。耐火原料としてはマグネシアクリンカーを主要原料として、黒鉛を5質量%、Al−Mg合金を3質量%とし、酸化ランタンの含有量をゼロから6質量%まで変化させた。坏土及び成形体の製造方法は、表1の実施例にて実施した方法と同一である。また、熱処理は実施例2、3と同様の方法にて実施した。耐食性、耐スポール性の評価方法についても表1の実施例にて実施した方法と同一である。
Figure 0005578680
表2の評価結果から、酸化ランタンの含有量が0.1質量%以上になると、含有量が0.1質量%未満の場合と比較して耐食性、耐スポール性が改善されることが明らかである。しかし、酸化ランタンの含有量が5質量%を超えると耐食性が低下し、耐スポール性の改善効果もほとんどなくなることから、原料のコストも考慮すると5質量%を超える使用は好ましくない。原料コストとのバランスを考慮すると、より好ましい含有量は0.1〜2質量%である。
表3に示す配合割合にて、耐火原料配合物中の炭素原料の含有量と種類が、耐火物の耐食性及び耐スポール性に及ぼす影響を調査した。耐火原料としてはマグネシアクリンカーを主要原料として、Al−Mg合金、炭化硼素、酸化ランタンを微量添加し、炭素原料として、黒鉛、ピッチ、カーボンブラックをゼロあるいは微量添加した。本配合は真空脱ガス装置用の耐火物として好適である。耐火物の製造方法、評価方法については表2に記載の実施例と同一である。
Figure 0005578680
表3の評価結果から明らかなように、炭素原料を0.5質量%以上含有させることで、耐スポール性が顕著に改善されることが明らかである。また、黒鉛をピッチあるいはカーボンブラックに置換、あるいはこれらを組み合わせても改善効果が得られることが明らかである。比較例6は酸化ランタンを含まない例であるが、同一黒鉛量の実施例15と比較すると、耐食性、耐スポール性ともに著しく劣っており、本発明の効果が顕著に発揮されている。このように本発明は、炭素原料の含有量が5質量%以下のような低カーボン炭素含有耐火物において特に顕著な改善効果を示す。
表4に示す配合割合にて、耐火原料配合物中の炭素原料の含有量が20質量%以上の範囲における耐火物の耐食性及び耐スポール性に及ぼす影響を調査した。耐火原料としては電融アルミナ、溶融シリカを主要原料とし、黒鉛を20質量%、25質量%、30質量%と変化させて、それぞれに酸化ランタンの添加有無を組み合わせた。また、結合剤としては熱処理中に水蒸気を発生するレゾール型フェノール樹脂を使用した。本配合は主として連続鋳造用の浸漬ノズルやロングノズルとして好適な配合である。坏土及び成形体の製造方法は表1の実施例にて実施した方法と同一であり、熱処理は200℃のCO濃度7vol%の排ガス中で実施した。その後、熱処理した成形体をコークス中に埋め込んで、1000℃で3時間還元焼成して供試耐火物とした。
耐食性は、高周波炉内張り法にて評価した。高周波炉に内張りしたサンプル中で鋼を1600℃で溶解し、C/S=1(質量比)、Al=20質量%のスラグを投入して2時間試験を行った。試験終了後のサンプルを切断し、最大溶損量を測定し、比較例7の溶損量の逆数を100として、その他のサンプルの溶損量を指数化した。したがって、数値が大きいほど耐食性は良好であることを示す。
耐スポール性は、1600℃の溶銑中にサンプルを浸漬し水冷する操作を5回繰り返し、試験前後のサンプルの弾性率を共振法にて測定して弾性率の維持率を求めた。表4に記載の指数は、比較例7の弾性率維持率を100とした数値で、数値が大きいほど耐スポール性に優れていることを示す。
Figure 0005578680
表4の評価結果から明らかなように、炭素原料の含有量が20質量%、25質量%の場合、酸化ランタンを添加することによって耐食性、耐スポール性ともに改善されている。また、本発明の実施例では、100℃〜500℃のような比較的低温での熱処理にて炭酸ランタンを生成させた後であれば、高温で焼成した後でも本発明の効果は持続することが明らかである。しかし、炭素原料の含有量が30質量%の場合、酸化ランタンの添加による耐スポール性の改善効果は非常に小さくなる。
表5に示す配合割合にて熱処理雰囲気中の絶対湿度が、耐火物の耐食性及び耐スポール性に及ぼす影響を調査した。耐火原料としては、電融アルミナ、仮焼アルミナを主要原料とし、カーボンブラック、炭化珪素、粘土、炭化硼素、アルミニウム、シリコンを添加した。結合剤としては、熱処理中に水蒸気が発生するグリコール系ノボラック型フェノール樹脂と熱処理中に水蒸気が発生しない珪素樹脂を併用した。本配合は主として連続鋳造用のスライディングプレートとして好適な配合である。坏土及び成形体の製造方法は表1の実施例にて実施した方法と同一であり、熱処理は雰囲気中の絶対湿度を2g/kg〜25g/kgまで変化させた。耐食性の評価方法は表4にて実施した方法と同一であり、耐スポール性の評価方法は表1にて実施した方法と同一である。
表5の評価結果から明らかなように、本発明の実施例22〜26は比較例11と比較して耐食性、耐スポール性ともに優れている。絶対湿度が2g/kgという低湿度の雰囲気で熱処理した場合でも改善効果は得られるが、好ましくは絶対湿度5g/kg以上、より好ましくは10g/kg以上の雰囲気で熱処理することで、さらなる改善効果を得ることができる。
Figure 0005578680
表6に示す配合割合にて熱処理雰囲気中のCO濃度が、耐火物の耐食性及び耐スポール性に及ぼす影響を調査した。熱処理中の雰囲気が異なることを除けば、配合割合、製造方法、評価方法は表5にて実施した方法と同一である。
表6の評価結果から明らかなように、本発明の実施例27〜31は比較例12と比較して耐食性、耐スポール性ともに優れている。CO濃度が0.03Vol%という通常の大気雰囲気中で熱処理した場合でも改善効果は得られるが、CO濃度が1vol%以上の雰囲気で熱処理することで、さらなる改善効果を得ることができる。
Figure 0005578680
表7に示す配合割合にて熱処理時の100℃以上の保持時間が、耐火物の耐食性及び耐スポール性に及ぼす影響を調査した。耐火原料としてはマグネシアクリンカーを主要原料として、各種炭素原料、添加剤を組み合わせた。坏土及び成形体の製造方法、評価方法は表1の実施例にて実施した方法と同一であり、熱処理は大気中にて最高温度300℃とし、昇温速度や最高温度での保持時間を変化させることで100℃以上の保持時間を2時間から50時間まで変化させた。
表7の評価結果から明らかなように、本発明の実施例32〜37は比較例13と比較して耐食性、耐スポール性ともに優れている。ただし、100℃以上の保持時間が2時間である実施例32は、耐スポール性の改善効果が比較的小さく、保持時間は3時間以上が好ましいことが明らかである。特に好ましくは保持時間を10時間以上とする。
Figure 0005578680

Claims (8)

  1. 酸化ランタンを0.1〜5質量%、炭素原料を0.5〜25質量%を含む耐火原料配合物に、結合剤を添加し混練して得られた坏土を成形し、その成形体を熱処理して得られる炭素含有耐火物であって、次の条件a及び条件bのうち少なくとも一方を満足する炭素含有耐火物。
    条件a:100℃〜500℃の間に3時間以上保持される条件で熱処理中に水蒸気を発生する結合剤を使用する。
    条件b:絶対湿度が5g/kg以上の水蒸気及び/又はCO 濃度が1vol%以上の炭酸ガスを含む雰囲気下で100℃〜500℃の間に3時間以上保持される条件で熱処理する。
  2. 耐火原料配合物の酸化ランタンの含有量が0.1〜2質量%である請求項1に記載の炭素含有耐火物。
  3. 耐火原料配合物の炭素原料の含有量が0.5〜10質量%である請求項1又は2に記載の炭素含有耐火物。
  4. 耐火原料配合物の炭素原料の含有量が0.5〜5質量%である請求項1又は2に記載の炭素含有耐火物。
  5. 耐火原料配合物が、炭素原料として、黒鉛、ピッチ、カーボンブラックの中から選択される少なくとも1種類以上を含む請求項1〜4のいずれかに記載の炭素含有耐火物。
  6. 耐火原料配合物のマグネシアの含有量が50質量%以上である請求項1〜5のいずれかに記載の炭素含有耐火物。
  7. 結合剤の添加量が、耐火原料配合物に対する外掛けで1〜15質量%である請求項1〜6のいずれかに記載の炭素含有耐火物。
  8. 熱処理中に炭酸ランタンが生成する請求項1〜のいずれかに記載の炭素含有耐火物。
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