JP5566681B2 - 光電変換素子用電解質組成物及び光電変換素子 - Google Patents
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Description
まず、図1及び図2を参照しながら、本発明の一実施形態に係る光電変換素子の全体構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換素子1の全体構成を示す説明図である。図2は、本実施形態に係る光電変換素子1の作動原理を模式的に示す説明図である。なお、以下では、光電変換素子1として、図1に示したようなグレッツェル・セルを有する色素増感型太陽電池を例に挙げて説明する。
2つの基板2(2A,2B)は、所定の間隔を空けて互いに対向して配置される。この基板2の材質としては、光電変換素子1の外部からの光(太陽光など)の可視から近赤外領域に対して光吸収が少ない透明な材料であれば特に限定はされない。基板2の材質としては、例えば、石英、並ガラス、BK7、鉛ガラス等のガラス基材や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリビニルブチラート、ポリプロピレン、テトラアセチルセルロース、シンジオクタチックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステルスルフォン、ポリエーテルイミド、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ、塩化ビニル等の樹脂基材などが挙げられる。
本実施形態に係る透明電極10(10A,10B)は、透明導電性の基板であり、2つの基板2のうち、少なくとも、外部からの光が入射する側の基板2Aの表面に設けられている。また、光電変換効率向上の観点から、透明電極10のシート抵抗(表面抵抗)はできるだけ低い方が好ましく、具体的には20Ω/cm2(Ω/sq.)以下であることが好ましい。なお、一般に、透明電極10のシート抵抗が高い(概ね10Ω/sq以上)ことから、発生した電流がTCO等の比較的導電性が低い基材中でジュール熱に変換されてしまい、光電変換効率が低くなってしまう現象が生じる場合がある。従って、色素増感型太陽電池等の光電変換素子1の面積を大面積化しようとする場合に支障が生じる。従って、透明電極10の表面に、光電極3から透明電極10Aに到達した励起電子を取り出し導線7まで伝達するための金属配線(集電電極)を設けてもよい。
光電極3は、光電変換素子1において、光電変換機能を有する無機金属酸化物半導体膜として使用されるものであり、多孔質の膜状に形成されている。より詳細には、図1に示すように、光電極3は、透明電極10の表面に、複数のTiO2等の無機金属酸化物半導体の微粒子31(以下、単に「金属酸化物微粒子31」と称する。)を積層して形成され、この積層された金属酸化物微粒子31の層の中にナノメートルオーダーの細孔を有する多孔質体(ナノポーラスな膜)となっている。この光電極3は、このように、多数の細孔を有する多孔質体となっていることにより、光電極3の表面積を増加させることができ、多量の増感色素33を金属酸化物微粒子31の表面に連結させることができ(図2参照)、これにより、光電変換素子1が高い光電変換効率を有することができる。
一般に、無機金属酸化物半導体は、一部の波長域の光について光電変換機能を有しているが、金属酸化物微粒子31の表面に増感色素33を連結することにより、可視光から近赤外光までの領域の光に対する光電変換が可能となる。このような金属酸化物微粒子31として使用できる化合物としては、増感色素33を連結することで光電変換機能が増感されるものであれば特に制限はされないが、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化ストロンチウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化ランタノイド、酸化イットリウム、酸化バナジウム等が挙げられる。ここで、金属酸化物微粒子31の表面が増感色素33によって増感されるためには、無機金属酸化物の伝導帯が増感色素33の光励起準位から電子を受け取りやすい位置に存在していることが好ましい。このような観点から、金属酸化物微粒子31として使用する化合物としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ等が特に好ましい。さらに、価格や環境衛生等の観点から、酸化チタンがさらに好ましい。なお、本実施形態では、金属酸化物微粒子31として、上述した無機金属酸化物のうちの一種を単独で用いてもよく、あるいは、複数種を組み合わせて用いてもよい。
増感色素33としては、金属酸化物微粒子31が光電変換機能を有していない領域(例えば、可視から近赤外の領域)の光に対して光電変換機能を有しているものであれば特に限定はされないが、例えば、アゾ系色素、キナクリドン系色素、ジケトピロロピロール系色素、スクワリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、クロロフィル系色素、ルテニウム錯体系色素、インジゴ系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、アントラキノン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、及びこれらの誘導体などを用いることができる。
<対極>
さらに、透明電極10Aと対極4との間の空間には、スペーサ6により電解質溶液5が封入されている。電解質溶液5は、本実施形態に係る電解質組成物に対応するもので、例えば、電解質、媒体、及び添加物を含み、さらに、詳しくは後述するように、マイエナイト型化合物を含んでいる。
次に、図2(必要に応じて図1)を参照しながら、前述した光電変換素子1の作動原理について詳細に説明する。
次に、本実施形態に係る電解質溶液5が封入されている電解質層の構成について詳細に説明する。本実施形態に係る電解質層は、電解質組成物として、少なくとも、レドックス対(例えば、I−/I3 −系、Br−/Br3 −系など)と、マイエナイト型化合物とを含有する。
本実施形態において、マイエナイト型化合物とは、立方晶系の結晶構造を有するセメント鉱物であるマイエナイト及びマイエナイトと類似した結晶構造を有する化合物を意味する。具体的には、本実施形態におけるマイエナイト型化合物の代表的な組成は、12CaO・7Al2O3(以下、「C12A7」と表す。)、または、12SrO・7Al2O3等で表され、Ca2+、Al3+及びO2−の結合により、かご(ケージ)状の結晶構造を形成している。より詳細には、このマイエナイト型化合物の結晶は、その結晶格子中に、直径0.4nm〜0.6nm程度の微小な空隙を単位格子当たり12個有しており、例えば、C12A7結晶は、その空隙内に単位格子当たり2個のO2−を包含している(取り込んでいる)。すなわち、C12A7結晶は、[Ca24Al28O64]4+・2O2−と表記され得る構造を有している。また、C12A7結晶中のO2−は、カチオンと結合できない状態で空隙内に緩く束縛されており、フリー酸素と呼ばれている(例えば、H.B.Bartl and T.Scheller, Neuses Jarhrb.Minerai,Monatsh.(1970年),547を参照)。
そこで、本発明者らは、前述したようなマイエナイト型化合物を光電変換素子用電解質組成物へ適用可能か否かについて検討した。その結果、色素増感型太陽電池等の光電変換素子においては、特許文献18に記載されたプラズマディスプレイや、特許文献19に記載されたLiイオンバッテリーとは、本質的に、導電性を発現する機構が全く異なっているため、特許文献18や特許文献19に記載された技術を単純には適用できないことが判明した。
以下、図3及び図4を参照しながら、マイエナイト型化合物を光電変換素子用電解質組成物へ適用した場合の効果について説明する。図3は、本実施形態に係る電解質組成物に含まれるマイエナイト型化合物の結晶構造の一例を示す説明図である。図4は、本実施形態に係る電解質溶液中におけるイオン伝導の一例を示す説明図である。
本実施形態において、光電変換素子用の電解質組成物に添加するときのマイエナイト型化合物の形態については、結晶格子内にO2−を包含するC12A7等の結晶の形態、O2−が電子に置換されたC12A7エレクトライド等の形態、O2−がハロゲン化物イオンやポリハロゲン化物イオンに置換された形態のいずれでもよく、特に限定はされない。
図4に示すように、色素増感型太陽電池等の光電変換素子の電解質溶液5中には、還元体の電解質51(Red)としてのヨウ化物イオン(I−)と、酸化体の電解質51(Ox)としての3ヨウ化物イオン(I3 −)とからなるレドックス対(酸化還元対)が存在している。この場合に、増感色素33が、光エネルギー(hν)を吸収して電子を放出し、半導体の酸化チタン(TiO2)がその電子を受け取って光電極3へと引き渡す。そして、増感色素33に残留したホール(h+)は、還元体の電解質51(Red)としてのI−によって還元される。このとき、I−は、酸化体のI3 −へ酸化される。酸化されたI3 −は、対極4の近傍まで電解質溶液5中を拡散するなどして、対極4から再び電子を受け取ることにより還元され、還元体のI−に戻る。
以上説明したように、本実施形態に係る電解質組成物(電解質溶液)においては、電解質溶液内におけるヨウ化物イオンの濃度を局所的に増加させて、イオン交換反応による電荷の移動を促進することが重要である。このような観点から、本実施形態に係る電解質組成物には、マイエナイト型化合物を、電解質組成物全体に対して0.1質量%以上50質量%以下含有させることが好ましい。マイエナイト化合物の含有量が0.1質量%以上で、イオン交換反応による電荷の移動を効果的に促進することができる。一方、マイエナイト化合物の含有量が過剰であると、マイエナイト型化合物中に拘束されている(取り込まれている)ハロゲン化物イオンと、自由に振舞える(電子を供給してカチオンと結合できる)ハロゲン化物イオンのバランスが崩れるため、光電変換素子の特性が低下し、また、電解質組成物中のマイエナイト型化合物が成分の大部分を占めてしまい、電解質組成物の流動性が著しく低下するため、光電変換素子に電解質組成物を注入したり、塗布したりすることが困難になる。このため、50質量%以下とすることが好ましい。
以上、本発明の一実施形態に係る光電変換素子1の構成について詳細に説明した。続いて、前述した構成を有する本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法について詳細に説明する。
まず、前述した基板2(ガラス基板や透明樹脂基板等)の表面に、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO2(酸化スズ)、FTO(フッ素等がドープされた酸化スズ)、ITO/ATO(アンチモン含有酸化スズ)、ZnO2(酸化亜鉛)等のTCOをスパッタリング法等により塗布し、透明電極10を形成する。
次に、負極については、まず、正極の場合と同様にして、基板2の表面に、透明電極10を形成する。
以上のようにして作製した正極と負極とを対面させ、それぞれの基板2の周縁部にスペーサ6(例えば、三井デュポン・ポリケミカル製のハイミラン(商品名)等のアイオノマー樹脂)を配置し、120℃程度の温度で正極と負極とを熱融着させる。
次いで、電解質溶液5を電解液の注入口から注入し、セル全体に行き渡らせ、光電変換素子1を得ることができる。ここで、電解質溶液5としては、例えば、LiIとI2とを溶解したアセトニトリル電解質溶液とすることができる。また、この電解質溶液5には、マイエナイト型化合物を添加する。マイエナイト型化合物の添加方法は、特に限定されないが、マイエナイト型化合物を、電解質溶液5中になるべく均一に分散させることが好ましい。
まず、色素増感型太陽電池セルの製造方法について説明する。
透明電極として、フッ素ドープ型酸化スズ層(透明電極層)付きのFTOガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)を使用した。
対極として、フッ素ドープ型酸化スズ層付きのFTOガラス基板(旭ガラス社製、タイプU−TCO)の導電層上に、スパッタリング法により厚み150nmの白金層(白金電極層)を積層したものを使用した。
次に、酸化チタン光電極を作製した。具体的には、まず、チタニウムテトラ−n−プロポキシド2ml、酢酸4ml、イオン交換水1ml、ポリビニルピロリン0.8g、及び2−プロパノール40mlを混合して混合溶液を調製し、この混合溶液をFTOガラス基板上にスピンコートし、室温で乾燥後、空気中、450℃で1時間焼成した。焼成して得られた電極上に再度、同一の混合溶液を用いてスピンコートし、空気中、450℃で1時間焼成した。
次に、前述したようにして得られた酸化チタン電極に、以下のようにして増感色素を吸着させた。光電変換用増感色素N719(Solaronix社製)をエタノール(濃度0.6mmol/L)に溶解させて色素溶液を調製し、この色素溶液に、上記酸化チタン電極を浸漬させた後に、室温で24時間放置した。着色した酸化チタン電極の表面をエタノールで洗浄した後、4−t−ブチルピリジンの2mol%アルコール溶液に30分間浸漬させ、室温で乾燥させて、増感色素の吸着した酸化チタン多孔質膜を有する光電極を得た。
次に、標準電解質溶液として、下記処方の電解質溶液を調製した。電解質を溶解させる溶媒としては、揮発性の溶媒として、3−メトキシプロピオニトリル(3MPN)、イオン性液体として、N−メチル−N’−ヘキシルイミダゾリウムヨウ化物塩(HMII)、ゲル電解質溶液として、ポリフッ化ビニリデン−6フッ化プロピレン共重合体(PVDF−HFP)を3MPNに15質量%溶解したものをそれぞれ用いた。
LiI : 0.1M
I2 : 0.05M
4−t−ブチルピリジン : 0.5M
1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド : 0.6M
また、標準電解質溶液に添加するマイエナイト型化合物は、以下のようにして合成した。
炭酸カルシウムと酸化アルミニウムとを、酸化物換算のモル比で12:7となるように調合して、大気雰囲気下、1300℃で6時間保持した後、室温まで冷却した。得られた焼結物を粉砕及び分級して平均粒子径が0.5〜50μmの粉末を得た。得られた粉末は白色の絶縁体であり、X線回折によるとマイエナイト型の構造を有するC12A7化合物(以下、「試料MA」とする。)であった。
1)で得られたマイエナイト型化合物の100質量部に対して0.4質量部の炭素粉末(平均粒子径:10μm)を混合した混合粉末を、200kgf/cm2の圧力でプレス成型して直径3cm、高さ3cmの成型体(試料A)とした。試料A中のCa、SrおよびAlの合計原子数に対する炭素原子数の比は1.9%であった。この試料Aを蓋付きカーボン容器に入れ、酸素濃度0.6体積%の窒素ガス雰囲気の窒素フロー炉中で、1300℃まで昇温させて2時間保持する熱処理を施した。熱処理後の成型体(試料B)は濃緑色で、X線回折測定よりマイエナイト型化合物と同定された。この試料Bの電子密度は1.5×1020/cm3で、1S/cm超の電気伝導率を有することがわかった。以上により、導電性マイエナイト型化合物(以下、「試料MB」とする。)が得られたことが確認された。
先に合成したマイエナイト型化合物(試料MA)0.5gを石英管内に充填し、電気炉で加熱して試料MAを700℃に加熱した後、石英管内に0.002mol/lのヨウ素水溶液と窒素ガスとを導入した。試料MAの反応前後におけるX線回折パターンを比較すると、反応後の試料の回折パターンは反応前の試料の回折パターンよりも低角度側にシフトしており、結晶の単位格子が大きくなっていることを示しているため、得られた反応後の試料(以下、「試料MC」とする。)では、ヨウ素が結晶構造中に取り込まれていると確認した。
次に、上述したようにして作製した光電極及び対極を用いて、図1に示したような光電変換セル(色素増感型太陽電池)の試験サンプルを組み立てた。すなわち、上記のようにして作製した光電極と、上記のようにして作製した対極とを、樹脂フィルム製スペーサ(三井・デュポンポリケミカル社製「ハイミラン」フィルム(50μm厚))を挟んで固定し、熱圧着により封止した。次に、予め空けておいた電解液注入口より、上記電解質溶液を注入して電解質溶液層を形成した。電解液注入口を上記と同様にして熱圧着により封止した。ガラス基板には、それぞれ変換効率測定用の導線を接続した。
以上のようにして作製した各実施例及び比較例における光電変換セルについて、以下の方法により変換効率を測定した。すなわち、ORIEL社製ソーラーシュミレータ(#8116)をエアマスフィルタと組み合わせ、光量計で100mW/cm2の光量に調整して測定用光源とし、光電変換セルの試験サンプルに光照射をしながら、KEITHLEY MODEL2400ソースメーターを使用してI‐Vカーブ特性を測定した。変換効率η(%)は、I‐Vカーブ特性測定から得られたVoc(開放電圧値)、Isc(短絡電流値)、ff(フィルファクター値)を用いて、下記変換効率式(1)により算出した。得られた変換効率の値を表1に示した。
同様に、作製した各実施例及び比較例における光電変換セルを85℃、湿度85%の恒温恒湿槽に200時間放置した後に、再び、前述した方法で変換効率を測定し、初期の変換効率に対する恒温恒湿槽に放置後の変換効率の初期特性の保持率(=(恒温恒湿槽に放置後の変換効率)/(初期の変換効率)×100)を求めた。得られた初期特性の保持率を表1に示した。
2 基板
3 光電極
4 対極
5 電解質溶液
6 スペーサ
7 取り出し導線
10 透明電極
31 金属酸化物微粒子
33 増感色素
51 電解質
Claims (4)
- ハロゲン化物イオンとポリハロゲン化物イオンとからなるレドックス対と、マイエナイト型化合物と、を含み、
前記マイエナイト型化合物は、結晶格子中に存在する複数の空隙のうちの少なくとも一部の空隙内に、カチオンと結合できない状態のハロゲン化物イオンまたはポリハロゲン化物イオンを包含しており、
前記レドックス対を伝導させる媒体が、ゲル電解質またはイオン性液体であることを特徴とする、光電変換素子用電解質組成物。 - 前記マイエナイト型化合物は、前記電解質組成物全体に対して0.1質量%以上50質量%以下含まれることを特徴とする、請求項1に記載の光電変換素子用電解質組成物。
- 請求項1または2に記載の光電変換素子用電解質組成物を用いた電解質層を備える、光電変換素子。
- 前記光電変換素子は、色素増感型太陽電池であることを特徴とする、請求項3に記載の光電変換素子。
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