本発明の射出成形体は、接合部で、少なくとも一方が板状である互いに異なる2種の構成部材の端面同士を突き合せた状態で、接合された、2色の成形体である。具体的には、例えば、容器や保護カバー体のように、側周壁や底壁を有して一方向に開口する容器状物を底壁壁面と垂直な境界面を境に2色に成形した成形体である。あるいは板状部を有する成形体を、その板状部の厚さ方向と略平行でその板状部に位置する境界面を境に2色に成形した成形体である。
まず、本発明の射出成形体の成形方法について説明する。本発明においては、後述される特殊板状形状のキャビティの中で、射出された第一の成形材料(以下樹脂Aと称する)と第二の成形材料(以下樹脂Bと称する)とを合流させて射出成形体を得る。樹脂Aおよび樹脂Bはポリマーそのものあるいはポリマーに添加物等が含有された組成物であり得る。
本発明においては図1に示すような成形装置(射出成形装置)2が用いられる。なお、本明細書においては、各図にわたって記される同じ符号は同一又は同様の部材やものを示す。成形装置2は、キャビティ12を有する金型10を備える。金型10は、可動金型19と固定金型21と固定金型21を固定する台座23を備える。キャビティ12は、対向する一対の壁面25、25aに挟まれ間隔hの板形状の空間部18を有する。空間部18は平らな板形状であってもよい。3次元的に曲がった板形状であってもよい。空間部18は境界面20で、第一のキャビティ部分22の一端で、互いに連通する第一のキャビティ部分22と第二のキャビティ部分24に区画される。なお、境界面20は実体ではなく、位置を表す。境界面20は射出された樹脂Aと樹脂Bとが会合して接合する境界面すなわち接合面に位置するものである。また、境界面20は自身の長手に沿った方向に直線状にまたは曲線状に延びている。
さらに、成形装置2は、樹脂Aを一定量射出する第一の射出シリンダ130a及び樹脂Aを送通するための樹脂流路132a、第一のキャビティ部分22へ溶融状態の樹脂Aを注入するための第一の注入ノズル孔136a、からなる第一の射出手段14aと、樹脂Bを一定量射出する第二の射出シリンダ130b及び樹脂Bを送通するための樹脂流路132b、第二のキャビティ部分24へ溶融状態の樹脂Bを注入するための第二の注入ノズル孔136b、からなる第二の射出手段14bとを備える。
図2に示すように第一のキャビティ部分22の壁面25に凹条42が形成されている。凹条42は、境界面20の長手に沿う方向と並行して設けられる。凹条42と境界面20との、壁面25の面方向の、間隔wが空間部18の間隔hの2倍以下となっている。wは0でもよい。
凹条42の深さdwと幅zwはhの0.2〜3倍であることが好ましい。凹条42の断面形状はコの字形やU字形であることができるが、コの字形やU字形に限定されない。
成形装置2を用いた本発明の2色の射出成形体の成形手順を説明する。
ステージ1(図3(a))において、第一のキャビティ部分22に樹脂A(7)が第一の注入ノズル孔136aを介して射出・注入され、第二のキャビティ部分24に樹脂B(9)が第二の注入ノズル孔136bを介して射出・注入される。
次いでステージ2(図3(b))において、第一のキャビティ部分22の先端17すなわち境界面20に樹脂Aの先端11(図3(a))が達する。
次いでステージ3(図3(c))において、第二のキャビティ部分24の先端すなわち境界面20に樹脂Bの先端13が達して、境界面20に達した樹脂Aの先端11(図3(a))と会合し面接する。
図3(d)に、キャビティ12を有する金型を用いて上記の成形手順で成形された2色の射出成形体の、境界面20の近傍に対応する部分(板部58の接合境界面52の近傍)の形状を示す。キャビティ12により板部58が成形される。板部58は、接合境界面52を境に、互いに異なる成形材料からなる第一の構成部54と第二の構成部55とが、端面同士を接合境界面52で面接させて接合されてなる。第一の構成部54は接合境界面52に平行なリブ62を板部58の片面64に有し、接合境界面52とリブ62との、壁面25の面方向の、間隔wsが板部58の厚さhsの2倍以下とされている。wsは0であってもよい。接合境界面52は境界面20(図2)に対応し、ws、hsはそれぞれw、hに対応する。リブ62は凹条42(図19)により形成されたものである。hsは通常1〜5mm程度である。リブ62の高さdwsと幅zwsはhsの0.2〜3倍であることが好ましい。
ステージ1における樹脂Aの第一のキャビティ部分22への注入開始から、ステージ2の状態に至る時間taは、樹脂Aの単位時間あたりの射出量v(cc/min)と第一のキャビティ部分22の容量y(cc)から、y/vとしてほぼ決まる。樹脂Bの第二のキャビティ部分24への注入開始から、ステージ3の状態に至る時間tbは、樹脂Bの単位時間あたりの射出量v´(cc/min)と第二のキャビティ部分24の容量y´(cc)から、y´/v´としてほぼ決まる。従って、ステージ2からステージ3に至る時間は樹脂A、樹脂Bのそれぞれの射出開始時間により調整することができる。
図3に示す本発明の態様においては、第一のキャビティ部分22が壁面25に凹条42による流れ抑制部201を備えていることにより、第一のキャビティ部分22に注入されて流れ抑制部201に達した樹脂Aは凹条42に流入して凹条42の長手方向に拡がるので、樹脂Aの流れが境界面20を越えて第二のキャビティがわに流入しにくくなり、すなわち、流れ抑制部201により、樹脂Aの、空間部18内を第一の注入ノズル孔136aから境界面20に向けて進む流れが抑制される。これにより、凹条42の近傍すなわち境界面20に凹条42の長手に沿う方向に並行して樹脂Aの先端が形成される。境界面20が、自身の面方向にみて曲線状であっても、ステージ1から3に至るステップで樹脂Aと樹脂Bとの接合境界面が凹条42の長手に沿う方向に並行する境界面20に形状が乱れることなく容易に形成される。流れ抑制部201は空間部18の間隔が拡大した間隔拡大部202からなる。
wが空間部18の間隔hの2倍以下となっていることにより、凹条42の近傍あるいは凹条42に接した位置に、凹条42の長手に沿う方向に並行して樹脂Aの先端が乱れることなく形成される。この位置は境界面20の位置である。なお、本発明においては、凹条42の存在により、吐出された樹脂Aの先端部分が凹条42の長手に沿う方向とほぼ並行しているので、境界面20の位置は、樹脂Aのワンショットの射出量と第一のキャビティ部分22の容量で決まる。wを空間部18の間隔hの2倍を超えて大きくすると、樹脂Aの先端の形状が乱れ、境界面20の位置が乱れて定まらない。
本発明においては、ステージ2の状態からステージ3の状態に至る時間t、すなわち、第一のキャビティ部分22の先端すなわち境界面20に樹脂Aの先端が達し終る時点から、樹脂Bの先端が樹脂Aの先端に到達し終わるまでの時間tは、第一のキャビティ部分22の先端すなわち境界面20に樹脂Aの先端が達し終る時点から、樹脂Aの先端の温度が下がって樹脂Aの融点未満となり、かつ樹脂Aの軟化点以上の所定の温度に達した時点までの時間trであることが好ましい。軟化点はJIS
K−7206に準拠して測定される軟化点温度である。
樹脂Aと樹脂Bとがともに溶融状態で会合すると境界面が不安定で崩れやすいが、溶融温度未満で軟化状態の樹脂Aの先端と、溶融状態の樹脂Bの先端が会合するタイミングで樹脂Aと樹脂Bとが接合されると、溶融状態ではなくある程度の硬さを有する樹脂Aの先端部と、溶融状態の樹脂Bとを会合させることができて、両者の境界の面(接合境界面)の形状が崩れることがほとんどない。さらに、会合時の樹脂Aの先端部の温度が軟化点以上であるので、異種ポリマー同士の接合であっても冷却後に強固な接合強度を得ることができる。例えば樹脂Aがポリプロピレン(以下PPと称す)のような軟化点が常温以上で比較的硬い樹脂からなり、樹脂Bが熱可塑性エラストマーを素材とする場合であっても、強固な接合強度を得ることができる。
この場合、樹脂Aの先端部の温度およびその経時変化は、金型10に計測用孔を穿孔し、計測用孔の先端を境界面20に出来るだけ近づけ、計測用孔に熱電対を挿入して温度の経時変化を計測し、近似的に求めることができる。この計測は実機によらずとも金型モデルを使って実施してもよい。あるいは、3次元流体の流れと各部位の温度の時間的経緯を解析する流体解析計算によるシミュレーションにより求めてもよい。この経時変化からtrを求めることができる。
このような会合のタイミングを実現させる樹脂A、樹脂Bの射出のタイミングは、ta、tb、trから設定することができる。
また、先端部の樹脂温度を計測せずとも、樹脂Aの射出開始時間と樹脂Bの射出開始時間との差tdを段階的に変えてそれぞれテスト成形を行い、接合強度に関して最適のtdを決定することもできる。例えば、樹脂Aと樹脂Bとが同時に境界面20に達する場合のtdをta、tbから求めてtdsとしたとき、tdsから0.5秒ほどの刻みで10〜20段階のタイムラグでの射出のテストに基づき最適のtdを決めることができる。
このように、本発明においては、空間部18に、境界面20の長手に沿う方向に並行して、樹脂Aの、空間部18内を第一の注入ノズル孔136aから境界面20に向けて進む流れを抑制する、細長の、図3(a)に示されるような流れ抑制部201を設けることにより、樹脂Aの先端をワンショットで境界面20に合致した状態に揃えることができる。
流れ抑制部201を構成する間隔拡大部202は図4に示すように対向する一対の凹条42aa、42bbによる間隔拡大部202aであってもよい。また、流れ抑制部は、図5(a)に示すような、凸条66により空間部18の間隔が縮小した細長の狭隘部206による流れ抑制部201aaであってもよい。狭隘部206により、樹脂Aの、空間部18内を第一の注入ノズル孔136aから境界面20に向けて進む流れが抑制される。狭隘部206と境界面20との、壁面25の面方向の、間隔kkbはhの2倍以下であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。狭隘部206の幅(キャビティの厚さ方向)khbはhの0.2〜0.9倍であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。凸条66bの幅xwbはhの0.2〜3倍であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。凸条66により流れ抑制部201aaが形成される。
狭隘部は図5(b)に示すように相対する凸条66p、66qによる狭隘部206a(流れ抑制部201aaa)であってもよい。
流れ抑制部は、図6に示すような、壁面から立ち上がる段差部208による流れ抑制部201bであってもよい。さらには、図7に示すような、邪魔板212による流れ抑制部201cであってもよい。あるいは図8に示すような、境界面20と直交する方向に略U字形に折れ曲がる曲り部214からなる流れ抑制部201dであってもよい。
流れ抑制部が、凹条単独あるいは凸条単独のものであると、射出圧が比較的高圧の場合、樹脂の先端が流れ抑制部を越えて流出してしまうことがある。射出圧を低圧にするとキャビティの隅々まで樹脂が行き渡らない場合がある。流れ抑制部を、図9(a)、(b)に示すように、凹条42と凸条66が組み合わされた流れ抑制部201pp、201pppにすることにより、射出圧が高くても乱れのない接合境界面が得られる。また図9(c)に示すように、一対の凹条42q、42qqが近接並設された流れ抑制部201pqや、図9(d)に示すように、一対の凸条66q、66qqが近接並設された流れ抑制部201qpであってもよい。
また、本発明においては、射出圧が高いと、境界面20に沿った乱れの少ない樹脂先端の状態が実現されにくい場合があるが、図10に示すように流れ抑制部を、空間部18に複数個が所定の間隔をおいて互いに並行するように設けることにより、矢印Yの方向に進行する樹脂が、流れ抑制部に到達するごとに先端が揃えられるので、射出圧が高圧であってもの極めて乱れの少ない接合境界面を得ることができる。なお、符号201xは流れ抑制部を一般的に示したものである。隣り合う流れ抑制部201x同士の間の間隔hp1、hp2、hp3、・・・は1h〜10hであることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。
成形装置2を用いて成形された本発明の2色の射出成形体の一例を挙げるならば、図11に示すように、この射出成形体50は一方向に開口した開口47を有する容器状のものであり、壁面と略垂直な接合境界面52を境に、互いに異なる成形材料からなる第一の構成部54と第二の構成部55とが、端面同士を面接させて接合されてなる。接合境界面52は射出成形体50の縁の一つの位置pから周壁56を底壁壁面49に向けて下って底壁壁面49に沿ってカーブしながら通過して、周壁56に相対する周壁57をのぼって、位置pに相対する、射出成形体50の縁の他の位置qに達するように延びている。射出成形体50の接合境界面52の近傍の部分は板部58である。図11に示す態様においては板部58の形状は曲がった板状であるが、成形体の種類によっては板部58が平板状であってもよい。平板状の部分を含んでいてもよい。
第一の構成部54は接合境界面52に平行なリブ62を板部58の片面64(ここでは射出成形体50の壁面)に有する。
キャビティ12の形状を変えることにより、リブ62が射出成形体50の外壁面に形成されてもよい。
射出成形体50は、前述のようにリブ62の長手方向に沿って接合境界面52が所定の形状に、乱れることなく形成されているとともに、リブ62により、接合境界面52の近傍での第一の構成部54の曲げ剛性が補強される。とくに、第一の構成部54がPPのような軟化点が常温以上で比較的硬い樹脂からなり、第二の構成部55がエラストマーを素材とする場合は、この補強が射出成形体50全体の、外力に対する寸法安定性の確保にとって有効である。なお、射出成形体50の外壁面を滑らかにするうえでは、図11におけるようにリブ62が射出成形体50の壁面に設けられていることが好ましい。
本発明の他の態様においては、図12(a)に示すように、キャビティ12aの第一のキャビティ部分22aの壁面25に凹条42が形成されているとともに、凹条42より第二のキャビティ部分24aがわに凹条42の長手方向に沿って凸条66aが形成され、凸条66aと凹条42との、壁面25の面方向の、間隔daが、hの2倍以下とされている。凹条42により流れ抑制部2015aが、凸条66aにより流れ抑制部2015bがそれぞれ形成される。
キャビティ12aは境界面20を境に、第一のキャビティ部分22aと第二のキャビティ部分24aに区画される。凸条66aによりキャビティ12aの、凹条42より第二のキャビティ部分24aに向かうがわに、境界面20aの長手方向に沿って細長の狭隘部70が形成される。狭隘部70と凹条42との、壁面25の面方向の、間隔ka(=da)は空間部18の間隔hの2倍以下であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。kaは0であってもよい。凸条66aの高さhwはhの0.1〜0.7倍であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。凸条66aの幅xwはhの0.2〜3倍であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。狭隘部70の幅khはhの0.2〜0.9倍であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。境界面20aは凸条66aの下方またはその近傍に位置する。境界面20aと凹条42との、壁面25の面方向の、間隔wxはhの2倍以下であることが好ましい。
このような態様においては、樹脂Aの進入に対して凹条42の前述の効果とともに、凸条66aが樹脂流れを妨げて境界面20の長手方向に拡がらせて、樹脂Aの流れが境界面20を越えて第二のキャビティ24aがわにさらに流入しにくくなり、樹脂Aと樹脂Bとの接合面(境界面20)が、形状がきわめて整然と乱れることなく容易に形成される。
図12(b)に、キャビティ12aの構成により成形された本発明の2色の射出成形体の境界面20の近傍に対応する部分(板部58aの接合境界面52aの近傍)の形状を示す。板部58aは、接合境界面52aを境に、互いに異なる成形材料からなる第一の構成部54aと第二の構成部55aとが、端面同士を接合境界面52aで面接させて接合されてなる。第一の構成部54aは接合境界面52aに平行なリブ62aを板部58aの片面64aに有し、接合境界面52aとリブ62aとの、壁面25の面方向の間隔wsが板部58の厚さhsaの2倍以下とされている。wsは0であってもよい。接合境界面52aで第一の構成部54aと第二の構成部55aが互いに端面をつきあわせて接合されている。リブ62aは凹条42により形成されたものであり、リブ62aと平行な溝99aが凸条66aにより形成されている。溝99aにより形成された、リブ62aと平行な細長の肉薄部78aと、リブ62aとの、壁面25の面方向の、間隔maはhsaの2倍以下であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。maは0であってもよい。肉薄部78aの厚さnsはhsaの0.2〜0.7であることが好ましい。
図12(a)に示すキャビティ12aの構成により成形された本発明の2色の射出成形体の一例を図13に示す。図13に示す射出成形体50aの形状は図11に示す射出成形体50の形状とほぼ同じであるが、第一の構成部54aは接合境界面52aに平行なリブ62aを板部58aの片面64aに有し、接合境界面52aとリブ62aとの、壁面25の面方向の、間隔は0とされている。接合境界面52aは境界面20に対応する。接合境界面52aで第一の構成部54aと第二の構成部55aが互いに端面をつきあわせて接合されている。リブ62aは凹条42により形成されたものであり、溝99a、肉薄部78aが凸条66aにより形成されている。射出成形体50aにおいては、第一の構成部54aは樹脂Aからなり、第二の構成部55aは樹脂Bからなる。樹脂AはPPのような比較的剛性の高い樹脂であり、樹脂Bはエラストマーからなる。
射出成形体50aは、リブ62aにより、接合境界面52aの近傍での第一の構成部54aの曲げ剛性が補強され、乱れのきわめて少ない接合境界面を得るための肉薄部78aによる第一の構成部54aの剛性の低下を補強するうえでも有効に機能している。
さらに、肉薄部78aが存在することにより、第二の構成部55aが外力を受けたとき、第二の構成部55aが肉薄部78aの部分で集中的に曲げ変形するので、第二の構成部55aの他の部分は外力を受けたにもかかわらず原形を比較的維持させることができる。
すなわち、局所的に外力を受けたとき、第二の構成部55aは、その外力を受けた部分のみが局所的に凹むなどして大きく変形するのではなく、第二の構成部全体として元の曲面形状をおおよそ維持しつつ肉薄部78aの部分で集中的に曲げ変形させることができる。
図12(a)に示すキャビティ12aの構成により成形された本発明の2色の射出成形体の他の一例を図14に示す。図14に示す射出成形体50fの形状は全体として上方に開口した方形の箱型であり、一の側壁90の一部分に樹脂Bからなる略矩形の板部92(第二の構成部55f)を有する。射出成形体50fの第二の構成部55fを除く部分が第一の構成部54fである。板部92は、一の側壁90の中央上方に位置して、上縁を一の側壁90の上縁の一部と共有している。射出成形体50fの板部92を除く部分94は樹脂Aからなる。樹脂AはPPのような比較的剛性の高い樹脂であり、樹脂Bはエラストマーからなる。接合境界面52f、リブ62f、細長の肉薄部78fがそれぞれ板部92の上縁を除く周縁部に沿って板部92の周縁に平行に延出されている。接合境界面52f、リブ62f、細長の肉薄部78f、一の側壁90の厚さの相互の距離関係や相互のサイズの関係の態様は図13における態様と同様である。
図15に射出成形体50fを成形する金型100(可動金型119と固定金型121)の要部を模式的に示す。金型100はキャビティ12fを備え、キャビティ12fは境界面20fを境に、第一のキャビティ部分22fと第二のキャビティ部分24fに区画される。
第一のキャビティ部分22fの壁面25fに凹条42fが形成されているとともに、凹条42fより第二のキャビティ部分24fがわに凹条42fの長手方向に沿って凸条66fが形成されている。凸条66f、凹条42f、境界面20の相互の位置関係やサイズの関係は図12(a)に示すキャビティ12aにおける関係と同様である。
可動金型119は型抜きのため、部分119a、部分119b、部分119cの3つの部分からなる。
またさらに、本発明において用いられる成形装置の金型のキャビティは、図16に示すように、キャビティ12bの、凹条42が形成された壁面25に相対する壁面25aに凸条66bが形成されて狭隘部70bが形成されてもよい。キャビティ12bは境界面20を境に、第一のキャビティ部分22bと第二のキャビティ部分24bに区画される。凸条66bと凹条42との、壁面25の面方向の間隔dbがhの2倍以下とされている。凸条66bによりキャビティ12bの、凹条42より第二のキャビティ部分24bに向かうがわに、境界面の長手方向に沿って細長の狭隘部70bが形成される。狭隘部70bと凹条42との、壁面25の面方向の、間隔kb(=db)はhの2倍以下であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。狭隘部70bの幅khbはhの0.2〜0.9倍であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。凸条66bの幅xwbはhの0.2〜3倍であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。凸条66bにより流れ抑制部2015cが形成される。
あるいは、図17に示すキャビティ12cのように、凹条42が形成された壁面25と、壁面25aとにそれぞれ凸条66c、凸条66dが設けられて狭隘部70cが形成されてもよい。キャビティ12cは境界面20を境に、第一のキャビティ部分22cと第二のキャビティ部分24cに区画される。狭隘部70cと凹条42との、壁面25の面方向の、間隔kcがhの2倍以下であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。狭隘部70cの幅khcはhの0.2〜0.9倍であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。凸条66c、凸条66dの幅xwc、xwdはhの0.2〜3倍であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。狭隘部70cにより流れ抑制部2015dが形成される。
あるいはまた、図18に示すキャビティ12dのように、壁面25の第一のキャビティ部分22dの部分に凹条42が形成されているとともに、壁面25の第二のキャビティ部分24dの部分に凹条43が形成されている態様であってもよい。凹条43は凹条42と平行に配され、その形状、サイズは凹条43と類似したものである。凹条43と境界面20との、壁面25の面方向の、間隔w2がhの2倍以下となっている。凹条43により流れ抑制部2015eが形成される。
この態様は、凹条42により樹脂Aの先端の形状が境界面20に沿って揃えられるとともに、凹条43により樹脂Bの先端の形状が境界面20に沿って揃えられるので、両方の樹脂の接合面が境界面20に沿って揃えられて乱れがきわめて小さい。
さらにまた、図19に示すように、図18に示す態様に加えて境界面20の位置に凸条66eによる狭隘部70dが設けられたキャビティ12eが用いられてもよい。狭隘部70dにより流れ抑制部2015fが形成される。
また、図20に示すキャビティ12gのように、図2に示すキャビティ12の態様に加えて凹条42に第二の凹条44が隣設されてもよい。第二の凹条44は凹条42からみて第二のキャビティ部分24から遠ざかるがわに、凹条42と平行に設けられる。第二の凹条44により流れ抑制部2015gが形成される。凹条42と第二の凹条44との、壁面25の面方向の、間隔ddはhの2倍以下である。凹条44の深さddwと幅dzwはhの0.2〜3倍であることが好ましい。この態様は、図2に示すキャビティ12の態様に比べて、射出成形体の接合境界面の接合面がさらに乱れの少ないものになり好ましい。
さらに、図21に示すキャビティ12hのように、図12に示すキャビティ12aの態様に加えて、凹条42に第二の凹条44が隣設されてもよい。第二の凹条44は凹条42からみて第二のキャビティ部分24から遠ざかるがわに、凹条42と平行に設けられる。凹条42と第二の凹条44との、壁面25の面方向の、間隔ddはhの2倍以下である。この態様は、図2に示すキャビティ12の態様に比べて、射出成形体の接合境界面の接合面がさらに乱れの少ないものになり好ましい。
なお、図2、図12、図18、図19、図20、図21に示す態様は、射出成形体の片壁面が滑らかになるうえでは図16、図17に示す態様に比べて好ましい。
また、本発明においては、凹条42が壁面25に設けられているが、加えて、壁面25に相対する壁面25aにも設けられていてよい。
さらに、本発明においては、図22に示すように第二のキャビティ部分24が、対向する一対の壁面25b、25bbに挟まれた板形状の他の空間部18bbを有し、他の空間部18bbの一端である境界面20において第一のキャビティ部分22に連通していてもよい。
またさらに、図23に示すように、他の空間部18bbに、第二の成形材料の、他の空間部18bb内を境界面20に向けて進む流れを抑制し、境界面20の長手に沿った方向に並行する細長の他の流れ抑制部201yが設けられることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。また、一対の壁面25b、25bb間の間隔をh´としたとき、境界面20に最近接の他の流れ抑制部201kkと境界面20との間の、壁面25bの面方向の、間隔wkは0〜2h´であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。第一のキャビテイの空間部に加えて第二のキャビテイの他の空間部に流れ抑制部(他の流れ抑制部201y)を設けることによって、樹脂Aと樹脂Bの溶融粘度等の性状が互いに異なる場合であっても、均整な境界面を得ることができる。
図16に示すキャビティ12bにより成形された本発明の射出成形体の接合部近傍の形状を、図24に示す。図24において、第一の構成部54bは接合境界面52bに平行なリブ62bを板部58bの片面64bに有し、接合境界面52bとリブ62bとの、板部58bの面方向の、間隔wgbが板部58bの厚さhsbの2倍以下であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。接合境界面52bは境界面20に対応し、wgb、hsbはそれぞれw、hに対応する。接合境界面52bで第一の構成部54bと第二の構成部55bが互いに端面をつきあわせて接合されている。リブ62bは凹条42により形成されたものであり、リブ62bと平行な溝99bが、凸条66bにより形成されている。リブ62bと溝99bとの、板部58bの面方向の、間隔mbはdbに対応する。溝99bにより形成された、細長の肉薄部78bと、リブ62bとの、板部58bの面方向の、間隔mbはhsbの2倍以下であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。
図17に示すキャビティ12cにより成形された本発明の射出成形体の接合部近傍の形状を、図25に示す。図25において、第一の構成部54cは接合境界面52cに平行なリブ62cを板部58cの片面64cに有し、接合境界面52cとリブ62cとの、板部58cの面方向の、間隔wscが板部58cの厚さhscの2倍以下とされている。接合境界面52cは境界面20に対応し、wsc、hscはそれぞれw、hに対応する。接合境界面52cで第一の構成部54cと第二の構成部55cが互いに端面をつきあわせて接合されている。リブ62cは凹条42により形成されたものであり、リブ62cと平行な溝99c、溝99dがそれぞれ凸条66c、凸条66dにより形成されている。溝99c、溝99dにより、リブ62cと平行な細長の肉薄部78cが形成されている。リブ62c肉薄部78cとの、板部58cの面方向の、間隔mcはhscの2倍以下であることが乱れの少ない接合境界面を得るうえで好ましい。
図18に示すキャビティ12dにより成形された本発明の射出成形体50dの接合部近傍の形状を、図26に示す。図26において、第一の構成部54dは接合境界面52dに平行なリブ62dを板部58dの片面64dに有し、接合境界面52dとリブ62dとの、板部58dの面方向の、間隔wsdが板部58dの厚さhsdの2倍以下とされている。接合境界面52dで第一の構成部54bと第二の構成部55bが互いに端面をつきあわせて接合されている。接合境界面52dは境界面20に対応し、wsd、hsdはそれぞれw、hに対応する。リブ62dは凹条42により形成されたものである。第二の構成部55dは接合境界面52dに平行なリブ63dを他の板部59dの片面64ddに有し、接合境界面52dとリブ63dとの、板部58bの面方向の、間隔wsd2がhsdの2倍以下とされている。リブ63dは凹条43により形成されたものである。
図19に示すキャビティ12eにより成形された本発明の射出成形体50eの接合部近傍の形状を、図27に示す。図27においては、図26に示す態様に加えて、接合境界面52eの位置にリブ62dと平行な細長の肉薄部78dが形成されている。
図20に示すキャビティ12gにより成形された本発明の射出成形体50gの接合部近傍の形状を、図28に示す。図28においては、図3(d)に示す態様に加えて、第二のリブ65がリブ62に隣設されている。第二のリブ65はリブ62からみて第二の構造部55から遠ざかるがわに、リブ62と平行に設けられる。リブ62と第二のリブ65との、板部58bの面方向の、間隔ddsは板部58bの厚さhsの2倍以下である。第二のリブ65の高さddwsと幅dzwsはhsの0.2〜3倍であることが好ましい。
図21に示すキャビティ12hにより成形された本発明の射出成形体50hの接合部近傍の形状を、図29に示す。図29においては、図12(b)に示す態様に加えて、第二のリブ65がリブ62aに隣設されている。第二のリブ65はリブ62aからみて第二の構造部55から遠ざかるがわに、リブ62aと平行に設けられる。リブ62aと第二のリブ65との、板部58aの面方向の、間隔ddsは板部58aの厚さhsaの2倍以下である。第二のリブ65の高さddwsと幅dzwsはhsaの0.2〜3倍であることが好ましい。
また、図10に示す複数の流れ抑制部201xを有する成形装置により得られる射出成形体の板部には、それぞれの流れ抑制部201xに対応して複数の肉厚変化部が形成される。例えば、図30の、第一の構成部54xと第二の構成部55xとが接合境界面で接合された射出成形体50xに示すように、リブ62xによる肉厚変化部222xが複数個形成される。隣り合う肉厚変化部222x同士の間隔(wx1、wx2など)は1h0〜10h0であることができる。
複数の流れ抑制部201x、201yを有する成形装置により得られる射出成形体の板部には、それぞれの流れ抑制部201x、201yに対応して複数の肉厚変化部が形成される。
なお、本発明において得られる射出成形体の接合境界面(接合境界面52など)は、図においては、説明の便宜上、板部(板部58など)の、板部の長手に沿った方向と直交する断面形状が板部の厚さ方向に平行な直線状に表示されているが、実際はこの断面形状は、曲線状であったり、板部の厚さ方向に対して傾斜している場合がある。
とくに、図12あるいは図13、図5(a)、図5(b)に示す態様のキャビティにおいては、この断面形状が第一の構造部から第二の構造部の方向に向けて凸の曲線状である接合境界面が得られる。すなわち、図31に示す、境界面20に最近接の流れ抑制部が凸条66からなるキャビティ12sp(最近接の流れ抑制部を除く流れ抑制部は不図示)を用いた本発明の射出成形装置においては、図32に示すように、まず、樹脂A(符号77)が凸条66を乗り越えたところで樹脂Aが空間18の厚さ方向に急激に広がり、樹脂Aの先端部150が形成される(図32(a))。先端部150の、凸条66の長手に沿った方向に直交する断面の形状は、第一のキャビティ部分22から第二のキャビティ部分24の方向に向けて出っ張った曲線状となる。この曲線の形状は必ずしも対称形ではなく、図面視下方すなわち、壁面25aの方向にふくらみが垂れているような曲線であることが多い。すなわち、先端部150と壁面25aとの間にくさび形の隙間152が、先端部150と壁面25との間に隙間154が形成され、隙間152が隙間154より狭くなっていることが多い。隙間154の尖端158は凸条66により形成された壁面25の段差159の部分に位置して、凸条66の長手に沿った方向に延びている。隙間152の尖端160は、段差159の立ち上がり158の大略図面視直下、すなわち、大略、立ち上がり158から壁面25の面に直交する方向に向けて壁面25aに射影された位置に存在する状態となる。
次いで、樹脂B(符号79)の先端が樹脂Aの先端部150に達すると、樹脂Bは先端で隙間152と隙間154に進入する(図32(b))。先端部150は冷え切っておらずまだ軟化状態にあるので、隙間152に進入した樹脂Bの圧力で先端部150が壁面25の方向に押されて、隙間154に進入した樹脂Bの圧力とのバランスにより、先端部150の断面形状が、壁面25と壁面25aとの間で略対称形の山形となる。また、樹脂Bは樹脂圧により隙間154と隙間152にくまなく充填される。これにより、図33に示すように、接合境界面の乱れが小さい射出成形体50spが得られる。
射出成形体50spは、第一の構造部54spと第二の構造部55spとを備える。第一の構造部54spは板部58spを備え、第二の構造部55spは他の板部59spを備える。板部58spの先端と板部58sppの先端とが接合境界面52spを介して接合されている。板部58spの一の面64spには、溝99spが形成されている。接合境界面52spが第二の構成部55spの方向に凸な山形形状をなし、他の板部59spが先端の部分で二股に分かれて一の先端部88spと他のくさび形状の先端部88sppが形成されている。一の先端部88spの尖端89spが溝99spの、第二の構造部55sp寄りの部分90spに接し、他のくさび形状部88sppの尖端89sppが板部58spの、一の面64spと反対がわの他の面64sppに接している。尖端89sppは、尖端89spの図面視直下、すなわち、溝99spの開口縁90spから板部58spの厚さ方向に他の面64sppに射影された位置に大略存在する。
他の態様においては、図31に示す態様に加えて、壁面25aに凸条66に対向して他の凸条が設けられてもよい。
また、図31に示すキャビティ12sspにおいて、図12に示すキャビティ12aのように、凸条66に隣り合って凹条42が設けられた場合は、接合境界面の乱れがさらに小さくなる。
射出成形体50sp等においては、板部58sに、他のリブや他の溝が、接合境界面の長手に沿った方向に並行して、溝99に関して接合境界面の反対がわに、形成されていてもよい。
本発明においては、図34に示すように、接合境界面52zを挟んで板部58z(第一の構成部54z)と板部59z(第二の構成部55z)が対峙している、射出成形体50zの構成において、板部58zに溝99zによる肉薄部78zが形成され、板部59zに溝99zzによる肉薄部78zzが形成されていてもよい。かかる構成にあっては、肉薄部78zと肉薄部78zzとの間に存在する部分を中間部300zとしたとき、射出成形体50zを用済み後廃棄するとき、肉薄部78zの部分と、肉薄部78zzの部分で切断することにより、射出成形体50zを図面視左がわの樹脂Bからなる部分と、樹脂Bと樹脂Aとからなる中間部300zと、図面視右がわの樹脂Aからなる部分とに3分割することができる。これにより、帯形状の中間部300zを除いては異素材が混在しない樹脂からなる部材が容易に得られ、樹脂の高度なリサイクル再利用が容易に可能となる。
肉薄部78zの部分と、肉薄部78zzの部分は、他の部分に比べて強力が低いので、このような切り離しは容易に実施することができる。また肉薄部78zの部分と、肉薄部78zzの部分は、切断用の工具を用いて切断するときの案内溝ともなり、その位置での正確な切断を可能にする。
肉薄部78zや肉薄部78zzはそれぞれ単独の溝により形成されてもよく、あるいは図面視上下一対の溝により形成されてもよい。
本発明においては、第一のキャビティ部分(第一のキャビティ部分12など)の厚さが、流れ抑制部(流れ抑制部210など)の、境界面20に対して進行する樹脂Aの流れ抑制部の上流がわのある領域で、樹脂Aの流れ方向と直交する方向に沿って変化していてもよい。この領域での、第一のキャビティ部分の、樹脂Aの流れ方向と直交する断面の断面形状を調節しておくことにより、樹脂の流れが制御されて接合境界面の形状の乱れをさらに少なくすることができる。好ましい断面形状の一例は図35に示される。最適の断面形状は境界面20の形状により、これらを含めた各種の断面形状のうちから選択され得る。
また、第一のキャビティ部分(第一のキャビティ部分12など)の壁面(壁面25など)が、流れ抑制部(流れ抑制部210など)の、境界面20に対して進行する樹脂Aの流れ抑制部の上流がわのある領域で、凹凸面の部分を有していてもよい。この凹凸面により、接合境界面の形状の乱れをさらに少なくすることができる。最適の凹凸面の形状、位置、広さ、凹凸の形状(表面あらさ、ピッチなど)は境界面20の形状により選択され得る。
以下に第一のキャビティ部分(第一のキャビティ部分12など)の厚さを、流れ抑制部(流れ抑制部210など)の、境界面20に対して進行する樹脂Aの流れ抑制部の上流がわの領域で、樹脂Aの流れ方向と直交する方向に沿って変化させることにより境界面20を流れ抑制部の長手方向に平行に乱れなく形成させる実験例を示す。
実験例
図36に示す金型300を用いて2色射出成型を行った。金型300は固定金型302と可動金型304から構成され、可動金型304のキャビテイ306に面する面305は平面であり、固定金型302は浅底の四角盆状の成形体340(図39)を成型するためのキャビテイを有している。なお、図36においてはキャビテイ306は概念として模式的に示されている。
図37に固定金型302のキャビテイ側の平面図を、図38に図37の各断面方向の断面端面図を示す。固定金型302には成形体の縁部側壁を形成するための周回溝310が形成され、周回溝310の内側に、成形体の内底面を形成するための平面部312を備える。平面部312は溝314とリブ316からなる流れ抑制部315を境に、平面部Aと平面部Bに分画されている。流れ抑制部315は平面部Aを内側にみて曲った(流れ抑制部315を長手方向にたどると平面部Aのがわに曲ってゆく)曲り部320と曲り部320の両端部322それぞれから曲り部320の長手方向の接線方向に略直線状に延出された一対の直線部324とを有する。
平面部Aと可動金型304のキャビテイ306に面する面305とに挟まれて、キャビテイ306の構成要素である空間部307が形成される。
平面部Aには樹脂の流れを制御するための制御用溝326が形成されている。
制御用溝326は一対の直線部324の対称軸に相当する直線Lの方向に略一致する方向に曲り部320に向けて延出している。これにより、平面部Aに面するキャビテイの、互いに相対する壁面の間隔が拡張された間隔拡張路330が形成される。間隔拡張路330を通過する樹脂は他の部分を通過する樹脂よりも流路抵抗が低いので、樹脂の流れが促進されて、射出により、間隔拡張路330の先端近傍に位置する曲り部320の近傍に樹脂を容易に到達させることができる。
実験に用いた固定金型304の各部の寸法(mm)を表1に示す。
制御用溝326の延出方向は直線Lの方向と所定の角度をなしていてもよいが、直線Lの方向に略一致することが好ましい。
平面部Aに面するキャビテイには間隔拡張路330の他端近傍332に位置する注入孔(不図示)から第一の成形材料として樹脂−1(PP(プライムポリマー社製:プライムポリプロ))を注入し、キャビテイ306の平面部Bに面する部分に第二の成形材料として樹脂−2(熱可塑性エラストマー(リケンテクノス社製:レオストマー))を射出して2色成型を行い、流れ抑制部315の長手方向に沿った境界面360(図39)で樹脂−1と樹脂−2が会合した2色成型体(成形体340)が得られた。
図39は得られた成型体340を示す平面図、図40は図39の各断面方向の断面端面形状を示す。成型体340は底板部352の縁を周回する縁部側壁354を備える。底板部352は樹脂−1(PP)から構成される底板部Aと樹脂−2(熱可塑性エラストマー)から構成される底板部Bとからなる。底板部352には、溝314によりリブ部356が形成され、リブ316により溝部358が形成されている。溝部358に沿った底板部B側に、底板部Aと底板部Bの境界面360が形成されている。また、底板部352には制御用溝326により突条362が形成されている。
この実験例に対する対比例として、図37に示す固定金型302と同一の形状で、ただし平面部Aに制御用溝326が形成されていない金型を用いてこの実験例と同様に樹脂−1と樹脂−2を射出して得られた成型体370の形状を図41の平面図に示す。成型体370にあっては、樹脂−1と樹脂−2の境界面372が溝部358に沿っておらず、溝部358を樹脂−2の側から樹脂−1の側に向けて乗り越えて形成されている。すなわち、射出された樹脂−1が曲り部320に到達することなくその手前でとどまってしまい、とどまった樹脂−1の先端の位置に境界面372が形成されている。
このように平面部を内側にみて曲った曲り部(320)を有する金型を用いた2色成型においては、キャビテイの空間部に空間部の間隔幅が拡張されてなる間隔拡張路(330)を設けることが、流れ抑制部(315)に沿った所定の均整な境界面を得るうえで好ましい。間隔拡張路(330)の形状は用いる樹脂の種類や粘度により最適化することができる。樹脂の種類や粘度によっては間隔拡張路(330)がなくとも均整な境界面が得られる場合もある。
間隔拡張路(330)は曲り部(320)に向けて1本形成されてもよいが、互いに平行に複数本形成されてもよい。
曲り部(320)において流れ抑制部(315)に沿った所定の均整な境界面を得るためには、間隔拡張路(330)に限らずほかの樹脂の流れ制御手段を設けてもよい。流れ制御手段は、例えば、平面部Aの、曲り部320に向けて延出する帯状の領域の温度がその他の領域の温度より高温になった金型であってもよい。あるいは、平面部Aの、曲り部320に向けて延出する帯状の領域の表面粗さがその他の領域の表面粗さより小さくされた金型であってもよい。さらには、流れ抑制部(315)の形状に応じて所定の均整な境界面を得るように最適にシミュレートされた表面の高低プロファイルの平面部Aを有する金型であってもよい。流れ抑制部(315)の形状に応じて所定の均整な境界面を得るように最適にシミュレートされた面間隔プロファイルの空間部(18、307など)を有する金型であってもよい。さらにまた、流れ抑制部(315)の形状に応じて所定の均整な境界面を得るように最適にシミュレートされた表面温度プロファイルの平面部Aを有する金型であってもよい。
本発明において用いられる樹脂A、樹脂Bは射出成形可能な材料であれば特に限定されない。例示するならば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリルスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、SMA樹脂、ポリアルキルメタクリレート樹脂などに代表される汎用プラスチックス、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂(非晶性ポリアリレート、液晶性ポリアリレート)等に代表されるエンジニアリングプラスチックス、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイドなどのいわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックスと呼ばれるものも用いることができる。さらに、各種の熱可塑性エラストマーを用いることができる。この熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン­−スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロックコポリマーなどのポリスチレン系エラストマー;オレフィン系熱可塑性エラストマー;シンジオタクチック−1,2ポリブタジエン、トランスポリイソプレン、天然ゴム系熱可塑性エラストマーなどのポリジオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリ塩化ビニル系エラストマー、塩素化ポリエチレン系エラストマーなどの塩素系エラストマー;ポリウレタン系エラストマー;ポリエステル・ポリエーテル型エラストマー、ポリエステル・ポリエステル型エラストマー、液晶型ポリエステル系エラストマーなどのポリエステル系エラストマー;ポリアミド系エラストマー;フッソ系エラストマー;シリコーン系エラストマー;ポリイソブチレン系;アクリル系ブロックコポリマー;ポリ乳酸系などの生分解性エラストマーなどの熱可塑性エラストマーも用いることができる。また、これらの樹脂の構成単位を含む共重合樹脂やこれらの樹脂の変性樹脂や各種のポリマーアロイであってもよい。また、これらの樹脂を混合して用いてもよい。さらには、射出後硬化する熱硬化性樹脂(例えば、ユリア樹脂系、フェノール樹脂系、エポキシ樹脂系)の使用も可能である。また、架橋型のエラストマーの使用も可能である。
また、これらの射出成形材料には、増量、高比重化、導電化、電磁波遮蔽化、高強力化、難燃化、抗菌、光触媒系防汚、衝撃改質、耐熱などを目的にフィラーを相当量含む樹脂が用いられてもよい。フィラーとしては、タルク、マイカ、クレイ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、カーボンビーズ、ガラスバルーン、黒鉛、炭素フレーク、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、金属繊維、金属コートガラス繊維、金属コート炭素繊維、シリカ、炭化ケイ素などのセラミック粒子、ウイスカー、ハロゲン系、リン酸エステル系などの難燃剤、帯電防止剤、流動改質剤、結晶核剤、グラフトゴムのような衝撃改質剤、などが挙げられる。
また、これらの射出成形材料には、光拡散、着色、蛍光増白などを目的に、顔料、染料、蓄光顔料、蛍光顔料、蛍光染料、ブルーイング剤、光拡散剤(アクリル系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ガラスフレーク、炭酸カルシウム粒子、金属フレーク、金属コートガラスフレーク、など)が添加されていてもよい。また、これらの射出成形材料には可塑剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、発泡剤、静電防止剤、滑剤、結晶調整剤、難燃剤、架橋剤、抗菌剤、香料などが添加されていてもよい。
相接する2部分を構成する樹脂は互いに相溶性を有するように選択されることが好ましい。製品の要求特性上選択が制約される場合は、それぞれにあるいはいずれかに相溶剤を混入させて用いてもよい。
さらに、本発明においては、相接する2部分を、必要に応じて極めて短いタイムラグのもとに、ほぼ同時に成形することができる。従って、1部分を予め成形しておく必要がなく、成形されたその1部分を金型に装着する操作も当然ないので、インサート法を用いた製造方法にくらべて製造工程が大幅に短縮され、製造コストの削減が可能となる。
また、相接する2部分の境界に開閉可能な遮断装置を設ける必要もないので、装置を簡単な構造にすることができ、装置コストや可動部のメンテナンスのコストを少なくすることができる。かつ、遮断装置の開閉に必要な時間が不要となるので成形時間が大幅に短縮され、製造コストの削減が可能となる。
また、本発明においては、相接する2部分がワンサイクルで上述のようにほぼ同時打ちされ、かつ一方が溶融状態を保ち他方が溶融状態に近い温度の軟化状態を保って会合し接合されるようにすることができるので、両者の収縮差が接合時に緩和され、製品のそりや、樹脂の洩れ込みや、両者の収縮差による寸法違いが発生しにくく、また、高い接合強度が得られる。
これに対して従来のインサート成形にあっては、インサートワークに向けて射出工程で射出された樹脂が冷却時に収縮するため、インサートワークとその樹脂とで射出工程後の冷却過程で収縮差が生じ、インサートワーク用のキャビティ部分と射出樹脂用のキャビティ部分との壁面が面一であっても成形体の面に段差や勾配やバリが生ずるという問題がある。
さらに、従来の2色成形においては、第一の樹脂を射出したのち、境界用の金型部を後退させたあとで第2の樹脂が注入される。この後退に時間がかかるので第一の樹脂がキャビティ内で収縮し、キャビティと第一の樹脂との間に隙間ができ、第2の樹脂がその隙間に入り込むという問題が生じやすい。
本発明の射出成形体はその特徴を活かして例えば、エラストマーと、PPやABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)のようなそのエラストマーより硬質の樹脂との組み合わせ構造からなる部材を1個の金型でワンサイクルの射出成形工程で得ることができる。これにより、車両のシートやインストルメントパネルやドアトリム等に用いられる内装材として好適に用いることができる。この硬質の樹脂としては、前記のエンジニアリングプラスチックス、エンジニアリングプラスチックス、スーパーエンジニアリングプラスチックスが挙げられる。この硬質の樹脂は室温以上の軟化点を有する。軟化点はビカット軟化点であり、JISK7206に準拠して求められる。この場合、本発明においては、 第一の成形材料として硬質の樹脂を、第二の成形材料としてエラストマーを用いることが均整な境界面を得るうえで好ましいが、第一の成形材料としてエラストマーを、第二の成形材料として硬質の樹脂を用いてもよい。
具体的な用途の一例としては、ハンドルのステアリングコラムのカバー部にエラストマーからなる構造部を配することにより、カバーをハンドルの位置調整のためのステアリングコラムの変位に追従して変形させることができる。あるいは、シートのサイドのラチェットギアのカバー部にエラストマーからなる構造部を配することにより、背もたれの搖動時にカバーで背もたれがこすれて擦損することを防止できる。
さらに、本発明の射出成形体は、車両用の内装材に限らず、車両用の異素材の組み合わせ構造からなる構造材として好適に用いることができる。
さらに、本発明の射出成形体の用途としては、エアコンやテレビのような家電製品のボデイ、什器、用具、機械類の構造部材が挙げられる。一例としては、椅子式マッサージ機のアームレストで、本体は剛性及び軽量性を実現させるべくPPやABS等の硬質の樹脂による第一の構成部と、触感と柔軟性が優れたエラストマー等の機能性材料を第二の構成部として用いた2色複合成形品からなる部材を1個の金型でワンサイクルの射出成形工程で得ることができる。