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JP5424875B2 - 下地層および耐温度性多層反射防止被覆層によって被覆された光学製品およびその製造方法 - Google Patents

下地層および耐温度性多層反射防止被覆層によって被覆された光学製品およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、一般に、高い耐熱性および良好な耐摩耗性を有する多層反射防止被覆層を備える基材を含む光学製品、特にメガネ用の眼科用レンズと、同製品の製造方法とに関する。
眼科用光学製品の分野では、眼科用レンズはレンズに複数の機械的および/または光学的特性を付与するための各種被覆層を従来から備えている。このように、連続する被覆層、例えば耐衝撃性被覆層、耐摩耗性被覆層および/または反射防止被覆層が眼科用レンズ上に従来から形成されている。
以下に定義するように、反射防止被覆層は光学最終製品の反射防止特性を改善するために光学製品の表面に成膜される被覆層を意味する。この層によって可視光スペクトルの相対的に大きな範囲において、製品−空気の境界域における光反射を低減することが可能になる。
反射防止被覆層は公知であり、SiO、SiO、Al、MgF、LiF、Si、TiO、ZrO、Nb、Y、HfO、Sc、Ta、Pr、またはそれらの混合物のような誘電物質の単一の積層体または多層の積層体を従来から備えている。
公知のように、反射防止被覆層は、高屈折率層および低屈折率層を交互に備える多層の被覆層であることが好ましい。
該被覆層の耐摩耗性および/または耐擦傷性を改善するために、基材と反射防止被覆層との間に下地層を挟むことが知られている。
一般に、従来の反射防止被覆層は、温度約70℃まで、良好な耐熱性を有する。温度がこの値を超えると、反射防止積層体中に特に製品の基材面上に反射防止被覆層が損傷を受けたことを示す亀裂が発生しうる。本願では、被覆層の臨界温度とは、その温度から亀裂が観察されうる温度であると定義される。
基材が有機ガラス(合成樹脂)製である場合は、基材への損傷を避けるために中温を用いる方法によって、任意の下地層および反射防止被覆層の成膜を行う必要があり、無機ガラス製の基材を用いる場合にはその必要はない。
その結果、有機ガラス製の基材を用いる場合は、反射防止被覆層の耐性の低下、特に基材に対する該被覆層の接着性の低下、および耐熱特性の低下などが観察されうる。
また、無機ガラス製の基材、または下地層を形成する無機物質、または反射防止被覆層の各層に比べて、有機ガラス製の基材は高い熱膨張係数を有するので、亀裂につながる高い歪を発生する可能性がある製品となる。
いくつかの特許には、反射防止積層体の1または複数の低屈折率層中の、最も一般的な物質であるシリカの代わりに、アルミナをドープしたシリカなどの他の物質を用いて、改善された特性を得る方法が記載されている。
米国特許出願第2005/0,219,724号には、高屈折率層(TiO)と低屈折率層とを交互に備える反射防止被覆層のような多層誘電層によって被覆された光学製品が記載されている。すべての低屈折率層は、屈折率(nと記載する)が1.47になるように、少量のAlをドープしたSiOを主体とする。
この文書では、SiO(n=1.46)を単独で含む低屈折率層を用いないことを推奨している。その理由は、そのような層は,高い圧縮応力を発生する層となり、このように、基材に対する良好な接着特性を長期間得ることが不可能になるからである。SiOおよびAlの混合物を使用することにより、低屈折率層の応力を低減し、また、従って基材面の亀裂の可能性を低減することが可能になる。
露国特許第SU1,176,280号には、5つの高屈折率層(ZrO、n=1.95〜2.05)および低屈折率層(3%のAlでドープしたSiO2、n=1.45〜1.47)を交互に含む積層体によって被覆された基材が記載されている。
本出願人の名前で出願された、国際特許出願第WO2005/059603号では、可視領域において吸収し、準化学量論のチタン酸化物TiO(x<2)を主体とする2以上の高屈折率層と、SiOおよびAlの総重量に対して、1〜5重量%のAlでドープしたSiOを主体とする、好ましくは1以上の低屈折率層(LI)とを有する、多層で、有色の、反射防止被覆層を備える製品が記載されている。このようなLI層は被覆層の寿命および色の均一性を改善する。製品の相対可視光透過率(Tv)は最大40%であり、最も好ましくは約15%である。
この文書では、更に特に、100〜110nmの厚さのシリカ下地層(耐擦傷性機能を有する)によって、TiO層、SiO/Al層、TiO層、SiO/Al層、TiO層、SiO/Al層によって、および防汚性被覆層によって、順次被覆されている基材が記載されている。耐熱性製品の製造の問題点に関しての記載はない。
日本国特許第H05−011101号では、初期的に良好な耐熱性を有し、不可避的に時間と共に減少するその耐熱特性を、数ヶ月間は高度に維持することができる光学製品の作製が記載されている。これらの2つの特徴は屈折率nが1.48〜1.52の範囲のSiO/Al下地層を用いることにより得られる。
この特許に記載される光学製品は、このように、上述の下地層(厚みが0.125l〜0.8l、ここでl=500nm)によって、および2つの低屈折率層の間に挟まれる高屈折率層を含む反射防止積層体によって、被覆された基材を備える。基材から一番遠くの低屈折率層は、常に、非常に厚いSiO層(0.25l)である。この下地層によって、臨界温度を改善することができる。臨界温度は基材の表面に亀裂が現れるときの温度であり、第1段階で約100〜105℃である。
日本国特許第H05−034502号は、上述の発明の代替として、屈折率n=1.48〜1.52のSiO/Al下地層の代わりに、以下の3層を含む積層下地層を用いることを示唆している:厚みが薄く(0.05l〜0.15l)、屈折率n=1.45〜1.47のSiO層、厚みが非常に薄く(0.01l〜0.10l)、屈折率n=2.0〜2.1のTa層、および日本国特許第H05−011101号に記載されたものより厚みが厚く(0.75l〜1.50l)、屈折率n=1.48〜1.52のSiO/Al層。これらの3層は、記載順に基材上に成膜される。日本国特許第H05−034502号に記載された、基材表面に亀裂が現れるときの温度である臨界温度は、実質的にSiO/Al層を含むこの下地層のおかげで、第1段階では、約95〜120℃の範囲である。また、反射防止被覆層のすべての低屈折率層がSiO/Alを含有してはいない。
しかしながら、成膜工程数を増やさないために、このような層状の下地層の作製を避けることが好ましい。
従って、本発明の1つの目的は、優れた透明性を有し、かつ光学的欠陥がなく、温度変動に対する耐性を保つ一方、先行技術の欠点を克服する、無機または有機ガラス製の基材と、下地層と、反射防止積層体とを備える透明な光学製品、特に眼科用レンズを提供することである。
また、本発明の光学製品は、光放射、特に紫外線放射によるフォトダメージに対して優れた耐性を有する。
また、これらの製品は表面の機械的歪を伴う温水中での浸漬処理に対して良好な耐性を有する。
本発明のもう1つの目的は、静電防止性および良好な耐摩耗性を備える光学製品を提供することを含む。
本発明の更にもう1つの目的は、上記に定義されたような製品の製造方法であって、従来の製造プロセスに容易に組込むことができ、基材の加熱を避ける方法を提供することである。
本発明は、反射防止被覆層の耐熱性の問題を解決するために考え出された。それは、一方では下地層の特性に関する選択、他方では反射防止積層体を構成する低屈折率層に関する選択、という2重の選択に基づくものであり、それによって耐熱性と耐摩耗性の両方が改善された反射防止光学製品の製造を可能にする。また、複数の層の位置をどのように選択するかということにも基づく。
本目的は、本発明による、反射防止特性を有する光学製品であって、基材および、基材側から順に:
厚みが75nm以上であり、Alを含有しない、SiOを主体とする層を備える下地層;および
1以上の高屈折率層および1以上の低屈折率層を含む積層体を備える多層反射防止被覆層、を備え、
そのすべての低屈折率層は、SiOおよびAlの混合物を含有し、そのすべての高屈折率層は、可視領域において吸収し、準化学量論のチタン酸化物TiOを含有し、また前記可視光吸収層をまったく有さない同等製品に比較して光学製品の可視光透過率(tn、以下Tvと記載)、または相対可視光透過率ともいう、を少なくとも10%以上低減する層ではない、製品を提供することを目的とする。
Tv率は、国際的に標準化された定義(ISO標準 13666:1998)を有し、ISO標準8980−3に準拠して測定される。380〜780nmの範囲の波長制限内で定義される。
高屈折率層は、化学式TiO、式中x<2、で表される、準化学量論のチタン酸化物を含有しうる。ここで、これらの層は、可視光吸収層をまったく有さない同等製品に比較して、本発明の光学製品の相対可視光透過率(Tv)を、10%以上低減することがないことを条件とする。なお、従来から化学式TiOで表されるチタン酸化物は、事実上、僅かに準化学量論的である。
本発明の特定の実施形態によると、本発明の光学製品は、可視領域において吸収しない、またはほんの僅かしか吸収しない。これは、本願では、その相対可視光透過率(Tv)が、90%より上、より好ましくは95%より上、更により好ましくは96%より上、最も好ましくは97%より上であることを意味する。
他の実施形態によると、反射防止被覆層の高屈折率層は、可視領域において吸収しない;反射防止被覆層の高屈折率層は、化学式TiO、ここでx≦1.5、好ましくはx≦1.7、より好ましくはx≦1.9、の準化学量論のチタン酸化物を含有しない。
好ましくは、本発明の被覆された製品の光吸収は、1%以下である。
好ましくは、本発明に従って被覆された製品の可視領域(400〜700nm)における平均反射率、(R)は製品面毎に2.5%未満、より好ましくは製品面毎に2%未満、更に好ましくは製品面毎に1%未満である。最適な実施形態では、製品のR 総合値(2つの面による合計反射率)は1%未満、好ましくは0.7〜0.8%の範囲である。
本出願では、「平均反射率」とは、ISO標準13666:1998で定義されるものであり、ISO標準8980−4に準拠して測定される。すなわち、400〜700nmの間の可視光スペクトル全体のスペクトル反射平均である。
本発明によると、光学製品は、主前面と裏面とを有し、少なくとも該主面の1つは多層反射防止被覆層を備える下地層を有する、有機または無機ガラス製の基材、好ましくは透明基材を含む。
本発明においては、SiOを主体とし、Alを含有しない下地層を、SiO/Alの混合物を主体とする低屈折率層と組合せて用いられる。本発明者等は本発明の反射防止積層体との組合せにおいて、日本国特許第H05−011101号および第H05−034502号に教示されるように、SiO/Alを主体とする下地層の使用は推奨されないことを観察した。いかなる特定の理論に縛られることを望まないが、このような下地層は、過剰な圧縮応力を引き起し、その結果製品の積層の剥離が発生し、耐摩耗性を損なう恐れがあることが示唆されうる。
本書中に「下地層」または結合層という用語が用いられる場合は、反射防止積層体の成膜の前に、基材(裸の基材、または被覆基材)上に成膜される被覆層を意味する。下地層は、反射防止被覆層の耐摩耗性を促進するために十分な厚みがなくてはならないが、光透過率Tvを著しく低下させるような光吸収を発生する程厚くはないことが好ましい。
下地層は、相対的に厚いので、通常、反射防止光学的挙動に関する役割を担わない。下地層は反射防止積層体には属せず、また顕著な光学的効果を持たない。
下地層は、Alを含有しない、SiOを主体とする層を含み、その厚みは75nm以上、好ましくは80nm以上、より好ましくは100nm以上、最も好ましくは120nm以上である。その厚みは、通常、250nm未満、より好ましくは200nm未満である。
下地層は、積層することができる。すなわち、厚みが75nm以上で、Alを含有しないSiOを主体とする層に加えて、他の層を含むことができる。
好ましくは、下地層は、厚みが75nm以上で、Alを含有しないSiO層、および任意に被覆された基材とAlを含有しないSiO層との間に挿入される、最大3層、好ましくは最大2層を備える。
特に、基材が高屈折率(すなわち1.55以上、好ましくは1.57以上)を有する場合で、かつ、下地層が基材の上に直接成膜されている場合、または基材が高屈折率(すなわち1.55以上、好ましくは1.57以上)を有する、好ましくはエポキシシランを主体とする耐摩耗性被覆層によって被覆されている場合で、かつ下地層が直接耐摩耗性被覆層の上に成膜されている場合、下地層は、好ましくは、上述のSiO層に加えて、高屈折率を有し、厚みが薄く、80nm以下、より好ましくは50nm以下、更により好ましくは30nm以下の層を含む。
このような高屈折率層は、高屈折率の基材または高屈折率の耐摩耗性被覆層に直接接触する。
あるいは、上述のSiO層と上述の高屈折率層とに加えて、下地層は、その上に高屈折率層が成膜される、低屈折率のSiOを主体とする物質からなる層であって、Alを含有する、または含有しない層、を含む。
その場合、下地層は、通常、厚み25nmのSiO層と、厚み10nmのZrO層と、厚み160nmのSiO層とを、基材側からこの順に備える。
単層型の下地層は、好ましく用いられる。
厚みが75nm以上の、上記SiOを主体とする層は、シリカに加えて、従来から下地層の作製に用いられる1または複数の他の物質(類)、例えば、アルミナを除く上述の誘電物質から選択される1または複数の物質(類)を含有しうる。
本発明の下地層は、好ましくは、70重量%以上のSiO、より好ましくは80重量%、最もこの好ましくは90重量%のSiOを含有する。本発明の最適な実施形態では、該下地層は、100重量%のシリカを含有する。
本願では、反射防止積層体の層は、その屈折率が1.6以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.8以上、更により好ましくは1.9以上であるときに、高屈折率層(HI)であるという。反射防止積層体の層は、その屈折率が1.54以下、好ましくは1.52以下、より好ましくは1.50以下であるときに、低屈折率層 (LI)という。
特に指定がない場合、本発明で用いられる反射率は気温25℃、波長550nmにおいて表されるものである。
反射防止被覆層のすべてのLI層は、SiOおよびAlの混合物を含有する。これ以降の記載においては、それらは、通常、「SiO/Al層」という。
それらは、シリカおよびアルミナに加えて、例えば、本書で既に記載された誘電物質から選択される、従来から反射防止層の製造に用いられている1または複数の他の物質を含有しうる。
好ましくは、反射防止被覆層のすべての低屈折率層は、好ましくは、SiOおよびAlの混合物を含む。好ましくは、それらは、これらの層のSiO+Al の総重量に対して、1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%のAlを含有する。過剰のアルミナは反射防止被覆層の性能に影響を与える。
市販のSiO/Al混合物、例えば、Umicore Materials AG社から販売されているLIMA(R)(550nmにおいて屈折率n=1.48〜1.50)、またはMerck KGaA社から販売されているL5(R)物質(500nmにおいて屈折率n=1.48)を用いることができる。
二酸化ケイ素および酸化アルミニウムの混合物を主体とする低屈折率層(LI)は、二酸化ケイ素を主体とする低屈折率層に比べて、2つの主要な効果を有する。その1つは、それらが、反射防止被覆層の寿命、その環境安定性、特に紫外線放射に対する安定性を改善することができることであり、またもう1つは、それらが、薄層上に亀裂が生じるときの温度、すなわち被覆層の臨界温度を上昇させることを可能にすることである。
本発明の被覆された製品の臨界温度は、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは85℃以上であり、最も好ましくは90℃以上である。
本発明を、その解釈において、限定することを望むものではないが、本発明者等は、他の特性は変化させずに、純粋シリカをアルミでドープしたシリカで代替することにより、積層体全体の圧縮応力を増大させることができ、その結果製品の臨界温度を改善することができると考える。これは、SiO/Al層は、SiO層よりも、歪の発生が少ないと主張する、米国特許出願第2005/0,219,724号の教示と反対である。
別の観点からいうと、圧縮応力が高すぎると、接着性の問題を引き起こし、耐摩耗性を損なう恐れがある。これについては、以下の実施例によって明らかになろう。
HI層は、この分野では公知である通常の高屈折率層である。それらは、通常、ジルコニア(ZrO)、チタン酸化物(TiO)、五酸化タンタル(Ta)、酸化ネオジム (Nd)、酸化プラセオジム(Pr)、チタン酸塩プラセオジム(PrTiO)、La、Dy、Nb、Yのような1または複数の無機酸化物(類)を含有するが、これらに限定されるものではない。高屈折率層は、シリカまたはアルミナを更に任意に含有しうるが、それらの屈折率が1.6以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.8以上であることを条件とする。TiO、PrTiO、ZrOおよびそれらの混合物は、最も好ましい物質である。
本発明の特定の実施形態によると、反射防止積層体の1以上のHI層は、その高屈折率が特に有益であるTiO,を主体とする層である。この層はイオンアシスト成膜法(IAD)によって成膜されることが好ましく、それによって、この層の圧縮を増加して、その屈折率を増加する。
本発明の他の特定の実施形態によると、反射防止積層体の1以上のHI層は、その高い耐熱性が特に有益であるPrTiOを主体とする層である。
通常、HI層は、10〜120nmの範囲の物理的厚みを有し、LI層は、10〜100nmの範囲の物理的厚みを有する。
好ましくは反射防止被覆層の総物理的厚みは、1マイクロメータ未満、より好ましくは、 500nm以下、更により好ましくは250nm以下である。反射防止被覆層の総物理的厚みは、通常、100nmより上であり、好ましくは、150nmより上である。本願において記載される厚みの値は、特に指定がない限り、物理的厚みの値である。
好ましくは、多層反射防止被覆層は下地層に直接接触する。
より好ましくは、多層反射防止被覆層は、少なくとも2つの低屈折率層(LI)と、少なくとも2つの高屈折率層(HI)とを備える積層体を含む。好ましくは、反射防止積層体の総層数は、6以下である。
HI層およびLI層は、本発明の1つの実施形態によると、積層体中で交互でありうるが、必ずしも交互でなくてもよい。2つのHI層(またはそれ以上)が互いの上に成膜されうる。同様に2つのLI層(またはそれ以上)が互いの上に成膜されうる。このように、例えば、ZrO HI層およびTiO HI層を、互いに積層させることは、これらの隣接する2つのHI層の代わりに1つのTiO 層を用いる場合より、耐摩耗性に関して有益である。
好ましくは、下地層のSiOを主体とする層は、反射防止積層体の高屈折率層(HI)に隣接する。より好ましくは二酸化ケイ素および酸化アルミニウムの混合物を積層順に含有する第1の低屈折率層は、高屈折率層上に成膜され、そして化学的特性が異なる、または同一の、別の高屈折率層によって被覆される。
他の好ましい特徴によると、多層の、反射防止積層体の外側層、すなわち基材から最も離れた層は、二酸化ケイ素および酸化アルミニウムから作製された混合物を含有する層である。
光学製品は、特に乾燥環境下で、表面を布、合成発泡体片、またはポリエステルによって擦ることによって清浄した場合に、静電気によって帯電する傾向があることは公知である。それらは、次に、それらの回りの塵埃などの小さい粒子を引付け、固着させ、それによって、製品上に常時電荷が残った状態が続くことがある。製品はその表面に導電性層が存在することにより、帯電防止性を取得しうるということは最新技術では公知である。この方法は、国際特許出願第WO 01/55752号および欧州特許第EP0834092号において用いられている。このような層により、電荷を迅速に放散させることが可能になる。
「帯電防止」とは、製品が実質的に静電荷を保有しない、および/または発生しない、能力を有することを意味する。製品は、通常、その表面の1つを適切な布を用いて擦った後、塵埃および小さい粒子の引付けおよび固着を起こさない場合に、許容可能な帯電防止性を有するものと考えられる。
物質の帯電防止性を数値化するには各種の方法がある。
そのような方法の1つは、物質の静電位を考慮する。物質の静電位(製品が帯電していないままの状態で測定する)が、0 KV +/−0.1 KV (絶対値)の時に、その物質は帯電防止性であるといわれ、一方、静電位が、0 KV +/− 0.1 KV (絶対値)以外の時に、その物質は静電性であるといわれる。
他の方法によれば、布または他の静電荷(コロナ荷電した電荷)を発生させるに適切な手段を用いて擦った後にそのガラスが静電荷を放出する能力は、その電荷の放散時間を測定することによって数値化しうる。このように、帯電防止性ガラスは放電時間が約100ミリ秒であり、それに対して静電性ガラスはそれが約数十秒である。
本発明の製品は、反射防止積層体中に1以上の導電性層を組込むことによって帯電防止性にすることができる。導電性層は、反射防止特性を阻害しないことを条件として、反射防止被覆層の様々な位置に配置することができる。それは、例えば本発明の下地層の上に成膜し反射防止積層体の第1の層を形成することができる。それは、低屈折率層の下に配置されることが好ましい。
導電性層は反射防止被覆層の透明性を損なわないように、十分薄くなければならない。通常、その厚みは、特性に依存するが、0.1〜150nmの範囲、より好ましくは0.1〜50nmの範囲である。その厚みが0.1nm未満である場合は、通常、十分な導電性を得ることはできない。一方、その厚みが150nmを超えると、通常、要求される透明性および低吸収性が得られない。
導電性層は、好ましくは、導電性および高い透明性のある物質で作製される。その場合、その厚みは、好ましくは0.1〜30nmの範囲であり、より好ましくは1〜20nmの範囲であり、更により好ましくは1〜10nmの範囲である。該物質は、好ましくはインジウム、スズ、および亜鉛酸化物、ならびにそれらの混合物から選択される金属酸化物である。インジウム−スズ酸化物(In:Sn、すなわち、スズでドープしたインジウム酸化物)およびスズ酸化物(In)が好ましい。最適な実施形態によると、導電性および光学的透明性を有する層はインジウム−スズ酸化物層であり、ITO層と称する。
通常、導電性層は、反射防止特性を取得し、反射防止被覆層中に高屈折率層を形成するのに貢献する。それは、層がITO層のような導電性および高い透明性のある物質で作製される場合である。
導電性層は、また、その厚みが通常1nm未満、より好ましくは0.5nm未満の非常に薄い貴金属で作製された層でありうる。
反射防止積層体が、5つの誘電層、および任意に、製品に帯電防止性を付与する1つの導電性層を備えることは特に有利である。
好ましい実施形態によると、厚みが好ましくは75nm以上のSiO下地層、通常厚みが10〜40nmの範囲、好ましくは15〜35nmの範囲のZrO層、厚みが通常10〜40nmの範囲、好ましくは15〜35nmの範囲のSiO/Al層、通常厚みが40〜150nmの範囲、好ましくは50〜120nmの範囲のTiO層、通常厚みが10〜30nmの範囲、好ましくは10〜25 nmの範囲のZrO層、任意に、通常厚みが0.1〜30nmの範囲、好ましくは1〜20nmの範囲の導電性層、好ましくはITO層、および通常厚みが40〜150nmの範囲、好ましくは50〜100nmの範囲のSiO/Al層が、基材表面側から、順次成膜される。本発明の反射防止積層体は、導電性層を備えることが好ましい。より好ましくは、本発明の製品は、TiO/ZrO/導電性層のような積層体を備える。
特に好ましい実施形態によると、厚みが120nm以上のSiO下地層、厚みが20〜30nmの範囲のZrO層、厚みが20〜30nmの範囲のSiO/Al層、厚みが75〜105nmの範囲のTiO層、厚みが10〜20nmの範囲のZrO層、厚みが2〜20nmの範囲のITO層、および厚みが60〜90nmの範囲のSiO/Al 層が、基材表面側から、順次成膜される。
3つの連続する、TiO/ZrO/導電性層(好ましくはITO)は、好ましくはイオンアシスト法(IAD)を用いて成膜される。
このような製品は、BAYER試験を用いて測定すると、優れた耐摩耗性を有する。
一般に、本発明による光学製品の下地層および反射防止被覆層は、有機または無機ガラス製の任意の基材、好ましくは透明基材の上に成膜しうる。好ましくは例えば、熱可塑性または熱硬化性物質のような有機ガラス基材上に成膜しうる。
基材に用いるに適した熱可塑性物質としては、(メタ)アクリル酸(コ)ポリマー、特にメチル ポリ(メタクリレート)(PMMA)、チオ(メタ)アクリル酸(コ)ポリマー、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、ポリ(チオウレタン)、ポリオール アリルカーボネート(コ)ポリマー、エチレンおよびビニル アセテートの熱可塑性コポリマー、ポリエチレン テレフタレート(PET)またはポリブチレン テレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリエピスルフィド、ポリエポキシド、ポリカーボネートおよびポリエステルのコポリマー、エチレンおよびノルボルネンのコポリマーまたはエチレンおよびシクロペンタジエンのようなシクロオレフィンのコポリマー、およびそれらの組合せが含まれる。
本書中、「(コ)ポリマー」を用いる場合はコポリマーまたはポリマーを意味する。(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを意味する。
本発明による好ましい基材としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、特にメチル(メタ)アクリレートおよびエチル(メタ)アクリレートのようなC〜Cアルキル(メタ)アクリレート、ポリエトキシル化 ビスフェノール ジ (メタ)アクリレートのようなポリエトキシル化芳香族(メタ)アクリレート、脂肪族または芳香族、直鎖または分岐鎖ポリオール アリルカーボネートのようなアリル誘導体、チオ(メタ)アクリレート、エピスルフィドおよびポリチオールおよびポリイソシアネートの前駆体混合物(ポリチオウレタンを取得するため)などの重合により得られる基材が含まれる。
本書中、「ポリカーボネート」(PC)が用いられる場合は、ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートおよびブロックコポリカーボネートの両方を意味する。ポリカーボネートは、市販されており、例えば、GENERAL ELECTRIC COMPANY社の商品名LEXAN(R)、TEIJIN社の商品名PANLITE(R)、BAYER社の商品名BAYBLEND(R)、MOBAY CHEMICHAL Corp.社の商品名MAKROLON(R)、およびDOW CHEMICAL Co.社の商品名CALIBRE(R)などがある。
ポリオール アリルカーボネート(コ)ポリマーの適切な例としては、エチレン グリコール ビス (アリルカーボネート)、ジエチレン グリコール ビス 2−メチル カーボネート、ジエチレン グリコール ビス (アリルカーボネート)、エチレン グリコール ビス (2−クロロ アリルカーボネート)、トリエチレン グリコール ビス (アリルカーボネート)、1,3−プロパンジオール ビス (アリルカーボネート)、プロピレングリコール ビス(2−エチル アリルカーボネート)、1,3−ブテンジオール ビス (アリルカーボネート)、1,4−ブテンジオール ビス(2−ブロモ アリルカーボネート)、ジプロピレングリコール ビス(アリルカーボネート)、トリメチレン グリコール ビス(2−エチル アリルカーボネート)、ペンタメチレン グリコール ビス(アリルカーボネート)、イソプロピレン ビスフェノール−A ビス(アリルカーボネート)の(コ)ポリマーが含まれる。
特に推奨される基材は、ジエチレン グリコールのビス アリルカーボネートの共重合または重合によって得られる基材であり、例えば、商品名CR−39(R)としてPPGインダストリーズ社から販売されているもの(ESSILOR ORMA(R) レンズ)などがある。
また、特に推奨される基材としては、仏国特許第FR2734827号に記載されるものようなチオ(メタ)アクリル酸モノマーの重合によって得られる基材が含まれる。
基材が、上述のモノマーの混合物の重合によって取得しうること、あるいは、そのようなポリマーおよび(コ)ポリマーの混合物を含有しうることは言うまでもない。
本発明において好ましいとされる有機基材は、その熱膨張係数が50.10−6−1 から 180.10−6−1,の範囲、好ましくは100.10−6−1 から 180.10−6−1の範囲である基材である。
本発明によると、下地層および反射防止積層体は、基材の前面および/または裏面に成膜しうる。それらは基材の前面および裏面に成膜されることが好ましい。
本書中、基材の「裏面」と記載する場合は、製品の装着時に装着者の眼に最も近くに位置する面を意味する。一方、基材の「前面」と記載する場合は、製品の装着時に装着者の眼から最も遠くに位置する面を意味する。
下地層を、例えば耐摩耗性のエポキシシランを主体とする被覆層などによって任意に被覆された基材上に成膜する場合、通常、その前に該基材の表面に下地層の接着性を増強するための処理を行う。この処理は、高エネルギー種を用いる衝撃のように、通常真空下で行われる。たとえばイオンビーム(「イオン予備清浄」または「IPC」)、コロナ放電、イオン破砕処理、または真空下のプラズマ処理などがある。これらの清浄処理のおかげで、基材表面の清浄度が最適化される。イオン衝撃処理が好ましい。
多層積層体を形成する各種層は、「光学層」と呼ばれ、下地層は、好ましくは、以下の方法のいずれか1つによる真空成膜によって成膜される。:i)任意にイオンビームアシスト法を用いる蒸着;ii)イオンビームスパッタリング;iii)陰極スパッタリング;iv)プラズマアシスト化学蒸着。これらの各方法は、「Thin Film Processes」および「Thin Film Processes II」(Vossen & Kern, Ed.著、 Academic Press社から、それぞれ1978年および1991年に発刊)に記載されている。上述の真空下での蒸着が特に推奨される方法である。
導電性層、すなわち通常反射防止積層体の高屈折率層は、例えば、真空成膜、蒸着、好ましくはイオンビームアシスト成膜(IAD)、または陰極スパッタリング、またはイオンビーム法などの任意の適切な方法によって成膜しうる。
導電性層の透明性および電気的特性は、最近技術では公知のように、とりわけ、被覆工程中の酸素量を精細に制御することに依存する。
既に記載したように、上述の各層の1つ、または複数の層を成膜すると同時に、高エネルギー種を用いて、特にイオンを用いて、処理工程を行うことができる。反射防止積層体の各層(なかでも導電性層)および下地層の成膜は、特に、イオンアシスト法(「IAD法」=イオンアシスト成膜)を用いて行うことができる。該方法は、重イオンを用いて上述の層を、密度を高めるために圧縮しながら、形成する工程を含む。高密度化に加えて、成膜された層の接着性の改善および屈折率の増加が可能である。
本書中「高エネルギー種」は、1〜150eVの範囲、好ましくは10〜150eVの範囲、より好ましくは40〜150eVの範囲のエネルギーを有する種であると定義される。高エネルギー種は、イオン、ラジカルのような化学種、または光子または電子のような種でありうる。
IADおよびイオン処理表面の準備工程は、イオン銃(例えば、Commonwealth Mark II型)を用いて行われる;イオンはガス電子からなる粒子であり、そこから1または複数の電子(類)が抽出される。この工程では、好ましくは、処理する表面をアルゴンイオン(Ar)を用いて衝撃する工程が含まれる。その電流密度は、通常、8.10−5 ミリバール〜52.10−4 ミリバール(以下mバールとする)の範囲である、真空チャンバー内の残圧下において、活性化された表面に対して、10〜100 mA/cmの範囲である。
下地層および反射防止積層体は、裸の基材に直接成膜されてもよい。いくつかの用途では、基材の主面が、耐摩耗性層および/または耐擦傷性層によって、耐衝撃性プライマー層によって、または耐衝撃性プライマー層および耐摩耗性層および/または耐擦傷性層によって、この順に被覆されていることが好ましい。従来から使用されている他の被覆層も用いることができる。
下地層および反射防止被覆層は、好ましくは耐摩耗性および/または耐擦傷性被覆層の上に成膜される。耐摩耗性および/または耐擦傷性被覆層は、眼科用レンズ分野において耐摩耗性および/または耐擦傷性被覆層として従来から用いられている層であればいかなる層でもよい。
耐摩耗性および/または耐擦傷性被覆層は、好ましくはポリ(メタ)アクリレートまたはシランを主体とするハードコート被覆層である。
ハードコートの耐摩耗性および/または耐擦傷性被覆層は、好ましくは、例えば、塩酸溶液を用いる加水分解によって得られる、1以上のアルコキシシランおよび/または1つのその水解物を含有する組成物から製造される。通常2h〜24hの範囲、好ましくは2h〜6hの範囲の加水分解工程の後、触媒を、任意に、添加することができる。好ましくは、成膜の光学品質を最適化するために、界面活性化合物を添加することもできる。
本発明による推奨被覆層としては、仏国特許第FR2,702,486号(欧州特許第EP0,614,957号)、米国特許第US4,211,823号および米国特許第US5,015,523号に記載されるようなエポキシシラン水解物を主体とする被覆層が含まれる。
好適な耐摩耗性および/または耐擦傷性被覆層組成物は、本出願人の名前で出願された仏国特許第FR2,702,486号に開示される組成物である。この組成物はエポキシ トリアルコキシシランおよびジアルキル ジアルコキシシラン水解物、コロイダルシリカ、および触媒量のアルミニウム アセチル アセトネートのようなアルミニウムを主体とする硬化触媒、を含有し、残部のほとんどの部分は、従来からそのような組成物の配合に用いられる溶媒である。用いられる水解物は、g−グリシドキシプロピル トリメトキシシラン(GLYMO)およびジメチルジエトキシシラン(DMDES)水解物であることが好ましい。
耐摩耗性および/または耐擦傷性被覆層組成物は、ディップコートまたはスピンコートにより、基材の主面に成膜しうる。次に、適切な方法(好ましくは、熱または紫外線方法)により硬化させる。
耐摩耗性および/または耐擦傷性被覆層の厚みは、通常、2〜10mmの範囲、好ましくは3〜5mmの範囲である。
耐摩耗性および/または耐擦傷性被覆層の成膜の前に、最終製品における次層の耐衝撃性および/または接着性を改善するために、基材上にプライマー被覆層を成膜しうる。
この被覆層は、眼科用レンズのような、透明ポリマー物質製の製品に従来から用いられている任意の耐衝撃性プライマー層であってよい。
好適なプライマー組成物としては、日本国特許第JP63−141001号および第JP63−87223号に記載されている組成物のような、熱可塑性ポリウレタンを主体とする組成物、米国特許第US5,015,523号に記載されている組成物のようなポリ(メタ)アクリル酸型プライマー組成物、欧州特許第EP0404111号に記載されている組成物のような熱硬化性ポリウレタンを主体とする組成物、および米国特許第US5,316,791号および欧州特許第EP0680492号に記載されている組成物のようなポリ(メタ)アクリル酸型のラテックスまたはポリウレタン型のラテックスを主体とする組成物が含まれる。
好適なプライマー組成物は、ポリウレタンを主体とする組成物、およびラテックス、特にポリウレタン型ラテックスを主体とする組成物である。
ポリ(メタ)アクリル酸型ラテックスは、例えば、エチル、ブチル、メトキシエチル、またはエトキシエチル (メタ)アクリレートのような、(メタ)アクリレートを主に主体としたコポリマーラテックス、通常、少量の、1以上の、例えばスチレンのような他のコポリマーを含む。
好適なポリ(メタ)アクリル酸型ラテックスは、アクリレート−スチレンコポリマーを主体とするラテックスである。そのようなアクリレート−スチレンコポリマーのラテックスは、ZENECA RESINS社から商品名NEOCRYL(R)として市販されている。
ポリウレタン型のラテックスも、公知であり市販されている。1つの例としては、ポリエステル単位を有するポリウレタン型のラテックスが適している。そのようなラテックスも、ZENECA RESINS社から商品名NEOREZ(R) として、また、BAXENDEN CHEMICALS社から商品名WITCOBOND(R)として市販されている。
また、これらのラテックスの混合物、特にポリウレタン型およびポリ(メタ)アクリル酸型ラテックスもプライマー組成物中に用いうる。
これらのプライマー組成物は、ディップコートまたはスピンコートによって製品面上に成膜することができ、次に70℃以上100℃以下、好ましくは約90℃の温度で2分〜2時間、通常、約15分の間乾燥し、硬化後の厚みが0.2〜2.5mmの範囲、好ましくは0.5〜1.5 mmの範囲のプライマー層を形成する。
また、本発明による光学製品は、疎水性被覆層および/または疎油性被覆層(防汚性トップコート)のように、その表面特性を変化させうる被覆層を、反射防止被覆層上に形成することができることは言うまでも無い。これらの被覆層は、好ましくは、反射防止被覆層の外側層上に成膜される。それらの厚みは、一般に10nm以下であり、好ましくは1〜10nmの範囲、より好ましくは1〜5nmの範囲である。
それらは、一般に、フルオロシランまたはフルオロシラザン型の被覆層である。それらは好ましくは1つの分子に対して少なくとも2つの加水分解可能基を含有するフルオロシランまたはフルオロシラザン前駆体を成膜することによって得られる。フルオロシラン前駆体は、好ましくはフルオロポリエーテル物質、より好ましくはペルフルオロポリエーテル物質を有する。これらのフルオロシランは公知であり、とりわけ、米国特許第US5,081,192号、米国特許第US5,763,061号、米国特許第US6,183,872号、米国特許第US5,739,639号、米国特許第US5,922,787号、米国特許第US6,337,235号、米国特許第US6,277,485号、および欧州特許第EP0933377に記載されている。
通常、本発明の光学製品は、耐衝撃性プライマー層、耐衝撃性および/または耐擦傷性層、本発明の下地層、本発明の反射防止被覆層によって、および疎水性および/または疎油性被覆層によって順次被覆された基材を備える。本発明の製品は好ましくは光学レンズであり、より好ましくは眼科用レンズ、または光学または眼科用レンズのブランクである。
本発明は、また上記で定義した反射防止特性を有する光学製品の製造方法に関し、下地層に属するすべての層、次いで反射防止被覆層に属するすべての層が真空下の蒸着によって成膜されている方法に関する。このような方法によって、有利なこととして、基材の加熱を防止することが可能になり、これは有機ガラスの場合に特に有益であることである。
以下の実施例では、本発明を更に詳細に示すが、それに限定されるものではない。
(1.一般的な手順)
例において用いた光学製品は、直径65mm、倍率−2,00ジオプトリ、厚み1,2mmのORMA(R) ESSILORレンズ用の基材を備え、この基材は欧州特許第EP0614957号の実施例3に開示された耐摩耗性および/または耐擦傷性被覆層(ハードコート)によって被覆されており(屈折率1.50)、コロイダルシリカおよびアルミニウム アセチル アセトネートのGLYMOおよびDMDESの水解物を主体とする。この耐摩耗性被覆層は、224重量部のGLYMO、80.5重量部のHCl 0.1 N、120重量部のDMDES、718重量部の、メタノール中の30重量%のコロイダルシリカ、15重量部のアルミニウム アセチル アセトネートおよび44重量部のエチルセロソルブを含有する組成物の成膜および硬化によって得た。また、この組成物は、組成物の総重量に対して、0.1重量%の界面活性剤FLUORADTM FC−430(R)(3M)を含有していた。この耐摩耗性被覆層は、基材上に直接成膜した。
下地層および反射防止被覆層は、基材の加熱はせずに、真空下で蒸着によって成膜した。その際、任意に、イオンビームアシストを行った(蒸着ソース:電子銃)。イオンビームアシストを行った箇所にはその旨明記した。
用いられたSiO/Al混合物は、SiO+Alの総重量に対して、4重量%のAlを含有する、Umicore Materials AG社から販売されているLIMA(R)物質(例1、2、3、5)、またはMerck KGaA社から販売されているL5(R)物質(例4)である。
成膜フレームは、酸化物を蒸着するためのイオン銃ESV14(8kV)と、トップコートを成膜するためのジュール効果ポットと、アルゴンガスを用いる表面処理の予備段階用のイオン銃(Commonwealth Mark II)とを備える、Leybold 1104装置である。
層の厚みは、水晶微量化学はかりの手段によって調整する。
(2.手順)
(例1〜7)
成膜工程は、製品を真空成膜チャンバーへ導入する工程、吸入排出工程、アルゴンのイオンビーム(IPC)(圧力2.10−5 mバール)を用いるイオン性表面処理工程、速度1nm/sでのLI耐摩耗性下地層(SiOまたはSiO/Al)の成膜工程、速度0.3nm/sでの第1のHI層(ZrO)の成膜工程、速度0.7nm/sでの第1のLI層(SiOまたはSiO/Al)の成膜工程、圧力1.10−4 mバール、速度0.3〜0.5 nm/sの範囲、および2.5A−120Vに対応する酸素イオンアシストを用いる、第2のHI層(TiO)の成膜工程、次いで、速度0.3nm/s(例2、5、7を除く)での第3のHI層(ZrO)の成膜工程、速度0.3〜0.5nm/sの範囲で、2.5A−120V(例3および6を除く)に対応する酸素イオンアシストを用いる、ITO層の成膜工程、速度1nm/sでの第2のLI層(SiOまたはSiO/Al)の成膜工程、防汚性被覆層(トップコート)の成膜工程、および通気工程を含む。
(例8)
成膜工程は、製品を真空成膜チャンバーに導入する工程、吸入排出工程、アルゴン イオンビーム(IPC)(圧力1.10−4 mバール)を用いるイオン性表面処理工程、圧力8.10−5 mバールおよび速度0.3 nm/s、O雰囲気下での第1のHI層(ZrO)の成膜工程、速度0.7 nm/sでの第1のLI層(SiO)の成膜工程、O雰囲気調整下、圧力8.10−5mバール、速度0.3nm/sでの第2のHI層(ZrO)層の成膜工程、速度1nm/sでの第2のLI層(SiO)の成膜工程、防汚性被覆層(トップコート)の成膜工程、および通気工程を含む。
(3.特性決定)
(a.耐熱性の特性決定:臨界温度の評価)
反射防止被覆層で被覆された眼科用有機ガラスを、温度Tを50℃に温度調整した炉中に1時間静置し、次いで、オーブンから取り出し、その外観をデスクランプ下で光の反射により評価した。反射防止被覆層が無傷に見える場合は、眼科用有機ガラスを、温度Tが+5℃の炉中に更に1時間再度静置した。反射防止被覆層上に亀裂が認められた直後に、試験を停止した。臨界温度は、亀裂が現れたときの温度に対応する。
複数のガラスを試験した場合は、上述の亀裂形成温度は、その結果の平均に対応する。
(b.耐摩耗性の特性決定)
耐摩耗性は、下地層(例8を除く)および反射防止被覆層を備える基材上のBAYER値を測定することによって評価した。
(ASTM BAYER試験(バイエル サンド試験))
このBAYER値の決定は、ASTM標準F735.81に準拠して行った。BAYER試験値が高くなると、耐摩耗性が高くなる。
この試験は、所定の粒径の研磨粒子(砂)を含むタンク中で、周波数100サイクル/分の交互運動を用いて2分間、ガラス試料およびガラス試験片を同時に攪拌する工程を含む。「前/後」のガラス試料のH拡散測定値を、ガラス試験片の同値と比較した。ガラス試験片は、ここではBAYER値が1に固定されている CR−39(R)を主体とする裸ガラスである。
BAYER値は、R = H ガラス試験片/H ガラス試料である。
(ISTM バイエル試験(バイエル アルミナ))
このBAYER値の測定は、以下の変更を伴う、ASTM標準F735−81に準拠して行った:
研磨は、300サイクルで、約500gのアルミナ(酸化アルミニウム Al)ZF 152412(Ceramic Grains社(以前はNorton Materials社、New Bond Street, PO Box 15137 Worcester, Mass. 01615−00137)が提供)を用いて行った。拡散は、透過率計モデルXL−211を用いて測定する。
ASTMバイエル値(バイエル サンド)はRが3.4以上かつ4.5未満である場合に、適格とみなされる。
ISTMバイエル値(バイエル サンド)はRが3以上かつ4.5未満である場合に、適格とみなされる。
バイエル サンド値またはISTM値は4.5およびそれ以上の場合に優良とみなされる。
(4.結果)
例1〜8により取得される積層体については、以下に詳細に説明する。臨界温度測定(CT、℃)および耐摩耗性評価の結果を表1に示す。
例8のレンズ(従来の4層の反射防止被覆層)は、研磨に対して抵抗力が高いが、その臨界温度は、70℃しかない。
本発明による例1、2、および4のレンズは、優良な耐摩耗性および高い臨界温度の両方を有する。例4は、これら2つの特性の両方の間の最良の妥協を提供する。例1と例2を比較すると、TiO/ZrOの2つの高屈折率層は、隣接して用いると、単一のTiO層を用いる場合に比べて、臨界温度の減少は僅かであるにもかかわらず耐摩耗性が改善することがわかる。一方、TiO層とITO層の間に、ZrO層を挟むと、ITO層とTiO 層とが隣接して配置された製品に比べて、拡散を低減することができる。
例3および5のレンズは、低屈折率層および下地層中に存在するSiO/Al混合物のおかげで良好な耐熱性を有するが、その耐摩耗性は低く、特に例3では低い。驚くべきこととして、SiOおよびAlの混合物を含有する下地層を用いることが有利ではないことが観察された(例2および5の直接比較を行うことができる)。いかなる特定の理論にも縛られることを望まないが、本発明者等は、シリカを、アルミナでドープしたシリカによって置き換えることによる、積層体の広範囲の圧縮応力の増大は、実際には、高すぎて、積層体の層の接着性を弱め、かつ研磨試験結果に影響を与えると考える。
反射防止被覆層の低屈折率層がSiOを含有する例6および7のレンズは、相対的に低い臨界温度を有する。例2を例7に比較することにより、両方のSiO低屈折率層を2つのSiO/Al低屈折率層によって置き換え、他の条件はすべて変更しない場合は、耐摩耗性に影響は与えないが、一方で臨界温度(+10℃)が顕著に上昇することがわかる。
380〜780nmの範囲の波長制限内で計算される本発明の製品の相対可視光透過率Tvが90%より上であるように、Perkin Elmer社のlambda 900のような分光光度計を用いて調製されていた。
(例で作製されたレンズの配合)

Claims (28)

  1. 反射防止特性を有する光学製品であって、基材および、基材側から順に:
    厚みが75nm以上であり、Alを含有しない、SiOを主体とする層を備える下地層;および
    1以上の高屈折率層および1以上の低屈折率層を含む積層体を備える多層反射防止被覆層、を備え、
    前記反射防止被覆層のすべての前記低屈折率層はSiOおよびAlの混合物を含有し、
    前記反射防止被覆層の前記高屈折率層は、以下の(i)〜(iii)を満たす層ではない、製品。
    (i)可視領域において吸収する
    (ii)準化学量論のチタン酸化物を含有する
    (iii)前記層が光学製品中にある場合、可視領域において吸収し準化学量論のチタン酸化物を含有する層を有さない対応光学製品と比較して前記光学製品の相対可視光透過率(Tv)を少なくとも10%低減する
  2. 相対可視光透過率(Tv)が90%より高い請求項1に記載の製品。
  3. 可視領域(Rm)における製品面毎の平均反射率が2.5%より低い請求項1または2に記載の製品。
  4. 可視領域(Rm)における製品面毎の平均反射率が2%より低い請求項1または2に記載の製品。
  5. 可視領域(Rm)における製品面毎の平均反射率が1%より低い請求項1または2に記載の製品。
  6. 臨界温度が80℃以上である請求項1から5のいずれかに記載の製品。
  7. 臨界温度が85℃以上である請求項1から5のいずれかに記載の製品。
  8. 臨界温度が90℃以上である請求項1から5のいずれかに記載の製品。
  9. 前記SiOを主体とし、Alを含有しない層の厚みは、80nm以上である請求項1から8のいずれかに記載の製品。
  10. 前記SiOを主体とし、Alを含有しない層の厚みは、100nm以上である請求項1から8のいずれかに記載の製品。
  11. 前記SiOを主体とし、Alを含有しない層の厚みは、120nm以上である請求項1から8のいずれかに記載の製品。
  12. 前記反射防止被覆層のすべての前記低屈折率層は、これらの層中のSiO+Alの総重量に対して、1〜10重量%を含有する請求項1から11のいずれかに記載の製品。
  13. 前記反射防止被覆層の前記高屈折率層は、TiO、PrTiO、ZrOおよびそれらの混合物から選択される1以上の物質を含有する請求項1から12のいずれかに記載の製品。
  14. 前記反射防止被覆層の1以上の高屈折率層はTiOを主体とする層である請求項1から13のいずれかに記載の製品。
  15. 前記TiOを主体とする層は、イオンアシストを用いて成膜されている請求項14に記載の製品。
  16. 前記反射防止被覆層は、交互に成膜される、TiOを主体とする層およびZrOを主体とする層を備える請求項1から15のいずれかに記載の製品。
  17. 前記反射防止被覆層は1以上の導電性層を備える請求項1から16のいずれかに記載の製品。
  18. 前記導電性層は、インジウム、スズまたは亜鉛酸化物、およびそれらの混合物から選択される金属酸化物を含有する請求項17に記載の製品。
  19. 前記金属酸化物はインジウム−スズ酸化物である請求項18に記載の製品。
  20. 前記導電性層はイオンアシストを用いて成膜されている請求項17から19のいずれかに記載の製品。
  21. 前記反射防止被覆層はTiO/ZrO/導電性層の積層体を備える請求項1から20のいずれかに記載の製品。
  22. 基材側から順に、厚みが75nm以上のSiO下地層、厚みが10〜40nmの範囲のZrO層、厚みが10〜40nmの範囲のSiO/Al層、厚みが40〜150nmの範囲のTiO層、厚みが10〜30nmの範囲のZrO層、厚みが0.1〜30nmの範囲の導電性層および厚みが40〜150nmの範囲のSiO/Al層を備える請求項1から21のいずれかに記載の製品。
  23. 前記基材は有機または無機ガラスである請求項1から22のいずれかに記載の製品。
  24. 前記基材は、熱膨張係数が50.10−6−1 から 180.10−6−1の範囲の有機ガラスである請求項1から23のいずれかに記載の製品。
  25. 前記基材は、熱膨張係数が100.10−6−1 から 180.10−6−1の範囲の有機ガラスである請求項1から23のいずれかに記載の製品。
  26. 前記基材は、耐衝撃性および/または耐擦傷性層によって、耐衝撃性プライマー層によって、または耐衝撃性および/または耐擦傷性層を備える耐衝撃性プライマー層によって被覆されている請求項1から25のいずれかに記載の製品。
  27. 前記製品は光学レンズである、請求項1から26のいずれかに記載の製品。
  28. 請求項1から27のいずれかに記載の反射防止特性を有する光学製品の製造方法であって、下地層に属するすべての層、次に反射防止被覆層に属するすべての層が真空蒸着により成膜されている方法。
JP2009517351A 2006-06-28 2007-06-26 下地層および耐温度性多層反射防止被覆層によって被覆された光学製品およびその製造方法 Active JP5424875B2 (ja)

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