この発明に係る導電性ローラは、軸体の外周面に形成された弾性層と、前記弾性層の外周面に形成され、ウレタン樹脂と少なくとも1種の前記イオン液体とフッ素系界面活性剤とを所定の割合で含有するウレタンコート層とを備えてなる。このように、導電性ローラが弾性層の外周面に前記ウレタンコート層を備えていると、前記したように、ウレタンコート層に現像剤が長期間にわたって表面に固着しにくいうえ、画像形成装置の現像装置に装着されたときに、相対湿度が例えば20%以下の低湿度環境下においても前記画像形成装置がかぶりのない画像を形成することに貢献できる。さらに、前記イオン液体の種類によっては、例えば、イオン液体が2つの水酸基を有するイオン液体である場合には、ウレタンコート層に現像剤が長期間にわたって表面に固着しにくいうえ、画像形成装置の待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続してもその後に形成される画像に白筋が発生することを実質的に抑えることができ、この画像形成装置が高品質の画像を形成することに貢献できる。
この発明に係る導電性ローラにおいて、前記ウレタン樹脂とイオン液体とフッ素系界面活性剤とは、ウレタンコート層内に、互いに独立に存在していてもよく、また、これらが反応した反応体として存在していてもよく、複合体等として存在していてもよい。
この発明に係る導電性ローラを、その一例を挙げて、説明する。この発明に係る導電性ローラの一例である導電性ローラは、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された弾性層3と、弾性層3の外周面に形成されたウレタンコート層4とを備えている。
前記軸体2は、従来公知の導電性ローラにおける軸体と基本的に同様である。この軸体2は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体であり、良好な導電特性を有している。軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよい。
前記弾性層3は、従来公知の導電性ローラにおける弾性層と基本的に同様である。この弾性層3は、前記軸体2の外周面に後述する導電性組成物を硬化して成り、20〜70のJIS A硬度を有しているのが好ましい。弾性層3が20〜70のJIS A硬度(JIS K6301)を有していると、導電性ローラ1と被当接体との接触面積を大きくすることができ、また、弾性層3の反発弾性及び圧縮永久ひずみが優れる。
前記弾性層3は、体積抵抗率が101〜107Ω・cmの範囲にあり、及び/又は、電気抵抗率が101〜109Ωの範囲にあるのが好ましい。弾性層3の体積抵抗率及び/又は電気抵抗率が前記範囲内にあると、導電性ローラ1を画像形成装置に装着しときに、現像剤を所望のように担持、供給して所望の品質を有する画像を形成することに貢献できる。前記体積抵抗率はJIS K6911に規定された方法(印加電圧を100V)に準じて測定することができる。前記電気抵抗率は、例えば、電気抵抗計(商品名:ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A、株式会社アドバンテスト製)を用い、前記導電性ローラ1を水平に置き、5mmの厚さ、30mmの幅、及び、前記導電性ローラ1の前記ウレタンコート層4全体を載せることのできる長さを有する金メッキ製板を電極とし、500gの荷重を前記導電性ローラ1における前記軸体2の両端それぞれに支持させた状態にして、軸体2と電極との間にDC100Vを印加し、1秒後の電気抵抗計の値を読み取り、この値を電気抵抗値とする方法に準拠して、測定することができる。
弾性層3は、被当接体との当接状態において被当接体と弾性層3との均一なニップ幅を確保することができる点で、その厚さは1mm以上であるのが好ましく、5mm以上であるのが特に好ましい。一方、弾性層3の厚さの上限は弾性層3の外径精度を損なわない限り特に制限されないが、一般に弾性層3の厚さを厚くしすぎると弾性層3の作製コストが上昇するから、実用的な作製コストを考慮すると弾性層3の厚さは30mm以下であるのが好ましく、20mm以下であるのがより好ましい。なお、弾性層3の厚さは、所望のニップ幅を達成するために、弾性層3の硬度、例えば、JIS A硬度等に応じて、適宜選択される。
弾性層3を形成する導電性組成物は、ゴムと、導電性付与剤と、所望により各種添加剤とを含有する。前記ゴムは、例えば、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等のゴムが挙げられるが、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴム又はウレタンゴムであるのが好ましく、シリコーン若しくはシリコーン変性ゴムが、耐熱性及び帯電特性等に優れる点で、特に好ましい。これらのゴムは、液状型であってもミラブル型であってもよい。前記導電性付与剤は、導電性を有していれば特に限定されず、例えば、導電性カーボン、ゴム用カーボン類、金属、導電性ポリマー等の導電性粉末が挙げられる。各種添加剤としては、例えば、鎖延長剤及び架橋剤等の助剤、触媒、分散剤、発泡剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、溶剤等が挙げられる。
前記導電性組成物として、例えば、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物等を好適に挙げることができる。前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、(A)下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、(B)充填材、及び、(C)上記(B)成分に属するもの以外の導電性材料を含有する。
RnSiO(4−n)/2 (1)
ここで、Rは、同一又は異なっていてもよい、置換又は非置換の一価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基であり、nは1.95〜2.05の正数である。
前記Rは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基及びドデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基及びトリル基等のアリール基、β−フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基及びシアノエチル基等が挙げられる。
前記(A)オルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基等で封鎖されていることが好ましい。このオルガノポリシロキサンは分子中に少なくとも2個の前記アルケニル基を有することが好ましく、具体的には、Rのうち0.001〜5モル%、特に0.01〜0.5モル%のアルケニル基を有することが好ましく、特にビニル基を有することが好ましい。特に、後述する硬化剤として白金系触媒とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせて使用する場合には、このようなアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが通常使用される。
また、この(A)オルガノポリシロキサンは、通常選択されたオルガノハロシランの1種若しくは2種以上を共加水分解縮合することによって、又は、シロキサンの3量体若しくは4量体等の環状ポリシロキサンをアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。この(A)オルガノポリシロキサンは基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、一部分岐していてもよい。また、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。この(A)オルガノポリシロキサンは、通常、25℃におけるその粘度が100cSt以上であり、好ましくは100,000〜10,000,000cStである。また、(A)オルガノポリシロキサンは、通常、その重合度は100以上であり、好ましくは3,000以上であり、その上限は、好ましくは100,000であり、さらに10,000が好ましい。
前記(B)充填材は、特に限定されないが、シリカ系充填材を用いることができる。シリカ系充填材としては、例えば、煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)3で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。なお、シランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、市販品を用いてもよく、例えば、J.M.HUBER株式会社製の商品名「Zeothix 95」等が入手可能である。シリカ系充填材の配合量は、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、11〜39質量部であるのが好ましく、15〜35質量部であるのが特に好ましい。また、シリカ系充填材の平均粒子径としては、1〜80μmであるのが好ましく、2〜40μmであるのが特に好ましい。シリカ系充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として測定することができる。
前記(C)導電性材料は、前記充填材(B)に属さない導電性材料であり、物理的化学的に同一材料からなるものであっても充填材(B)として規定されたシリカ系充填材と形態及び状態等が異なる導電性材料は(C)導電性材料に属する。このような導電性材料は、導電性付与成分であり、例えば、前記導電性付与剤が挙げられ、これらの中でも、カーボンブラックが好ましい。導電性材料は単独で用いても二種以上を併用してもよい。(C)導電性材料の配合量は、前記(A)オルガノポリシロキサン100質量部に対して、2〜80質量部とすることができる。
付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲内で、添加剤等を含有してもよい。添加剤として、例えば、硬化剤、着色剤、オクチル酸鉄、酸化鉄、酸化セリウム等の耐熱向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、アルコキシシラン、重合度がオルガノポリシロキサン(A)よりも低いジメチルシロキサンオイル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール、α,ω−ジメチルシロキサンジオール等の両末端シラノール基封鎖低分子シロキサンやシラン等の分散剤、接着性や成形加工性を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、架橋反応等を阻害しない硬化又は未硬化の各種オレフィン系エラストマー等が挙げられる。
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、(D)一分子中にケイ素原子と結合するアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンと、(E)一分子中にケイ素原子と結合する水素原子を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(F)平均粒径が1〜30μmで、嵩密度が0.1〜0.5g/cm3である無機質充填材と、(G)導電性付与剤と、(H)付加反応触媒とを含有する付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物が挙げられる。
前記(D)オルガノポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示される化合物が好適である。
R1 aSiO(4−a)/2 (2)
ここで、前記平均組成式(2)におけるR1は互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.02の範囲の正数である。
前記R1は、前記付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物に含有されるオルガノポリシロキサン(A)のRで例示した、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基及びこれらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子又はシアノ基等で置換した炭化水素基等が挙げられる。R1の少なくとも2個はアルケニル基、特にビニル基であり、90%以上がメチル基であるのが好ましい。具体的には、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10−6〜5.0×10−3mol/g、特に5.0×10−6〜1.0×10−3mol/gであることが好ましい。
(D)オルガノポリシロキサンの重合度については、室温(25℃)で液状(例えば、25℃での粘度が100〜1,000,000mPa・s、好ましくは200〜100,000mPa・s程度)であればよく、平均重合度が100〜800であるのが好ましく、150〜600であるのが特に好ましい。
前記(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(3)で示され、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜200個)、より好ましくは3〜100個の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するものが好適に用いられる。
R2 bHcSiO(4−b−c)/2 (3)
ここで、前記平均組成式(3)におけるR2は互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10の置換又は非置換の一価炭化水素基である。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。
前記ケイ素原子に結合した水素原子(Si−H)の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中0.001〜0.017mol/g、特に0.002〜0.015mol/gとすることが好ましい。
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)としては、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、及び、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(E)の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部であるのが好ましく、0.3〜20質量部であるのが特に好ましい。また、(D)オルガノポリシロキサンのアルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比は、0.3〜5.0であるのが好ましく、0.5〜2.5であるのが特に好ましい。
前記(F)無機質充填材は、低圧縮永久ひずみで体積抵抗率が経時で安定し、かつ十分なローラ耐久性を得るのに重要な成分である。無機質充填材は、平均粒径が1〜30μm、好ましくは2〜20μm、嵩密度が0.1〜0.5g/cm3、好ましくは0.15〜0.45g/cm3である。平均粒径が1μmより小さいと経時で電気抵抗率が変化することがあり、30μmより大きいと弾性層3の耐久性が低下することがある。また、嵩密度が0.1g/cm3より小さいと圧縮永久ひずみが悪化すると共に経時での電気抵抗率が変化することがあり、0.5μmより大きいと弾性層3の強度が不十分で耐久性が低下することがある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができ、嵩密度は、JIS K 6223の見かけ比重の測定方法に基づいて求めることができる。
このような無機質充填材(F)としては、珪藻土、パーライト、マイカ、炭酸カルシウム、ガラスフレーク、及び、中空フィラー等が挙げられるが、中でも珪藻土、パーライト及び発泡パーライトの粉砕物が好ましい。
(F)無機質充填材の配合量は、(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して5〜100質量部であるのが好ましく、10〜80質量部であるのが特に好ましい。
前記(G)導電性付与剤は、前記導電性付与剤と同様であり、その配合量は(D)オルガノポリシロキサン100質量部に対して2〜80質量部とすることができる。
前記(H)付加反応触媒としては、白金黒、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。なお、この(H)付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、例えば、白金族金属量として、(D)オルガノポリシロキサン及び(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンの合計質量に対して、0.5〜1,000ppmであるのが好ましく、1〜500ppm程度であるのが特に好ましい。
この付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、前記成分に加えて、低分子シロキサンエステル、シラノール、例えば、ジフェニルシランジオール等の分散剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、接着性や成形加工性を向上させる各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させるハロゲン化合物等を本発明の目的を損なわない範囲で含有してもよい。
前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物は、25℃において、5〜500Pa・sの粘度を有しているのがよく、5〜200Pa・sの粘度を有しているのが特によい。
前記ウレタンコート層4は、導電性ローラ1の最外層として形成され、前記弾性層3の外周面に後述するウレタン樹脂組成物を硬化して成り、ウレタン樹脂に加えて、ピリジニウム系イオン液体、アミン系イオン液体及び2つの水酸基を有するイオン液体より成る群から選択される少なくとも1種のイオン液体をウレタン樹脂100質量部に対して1〜20質量部の割合で含有すると共に、フッ素系界面活性剤をウレタン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含有している。
この発明において、イオン液体が後述する2つの水酸基を有するイオン液体(以下、水酸基含有イオン液体と称することがある。)である場合には、前記ウレタンコート層4は、水酸基含有イオン液体を含有するウレタン樹脂組成物を弾性層3の外周面に塗布硬化して形成される。したがって、このウレタンコート層4は、前記ウレタン樹脂組成物で形成されるウレタン樹脂とフッ素系界面活性剤とを含有し、このウレタン樹脂は、前記ウレタン樹脂組成物に含有されるウレタン形成成分である、水酸基含有イオン液体とこの水酸基含有イオン液体以外のポリオールとポリイソシアネートとから形成され、水酸基含有イオン液体の含有量は前記ポリオール及び前記ポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときに1〜20質量部である。すなわち、前記ウレタンコート層4は、水酸基含有イオン液体以外のポリオール、ポリイソシアネート、並びに、前記ポリオール及び前記ポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときに1〜20質量部の水酸基含有イオン液体が反応してなるウレタン樹脂100質量部とフッ素系界面活性剤0.1〜5質量部とを含有している。
このウレタンコート層4は、前記ウレタン樹脂の他に、所望により、各種ウレタン樹脂組成物に通常用いられる各種添加剤等を含有していてもよい。このような添加剤として、例えばカーボンブラック等の導電性付与剤、後述するウレタン樹脂組成物における他の成分例えば助剤等が任意成分として含有されることがある。
前記ウレタンコート層4は、通常、0.1〜50μmの層厚を有しているのが好ましく、10〜25μmの層厚を有しているのがより好ましい。
前記ウレタンコート層4に含有されるイオン液体は、オニウム塩の1種であり、少なくとも室温付近の温度で液体状態にある高導電率を有する液体化合物であって、「イオン性液体」とも称される。この発明において、前記イオン液体は、各種のイオン液体の中でも、ピリジニウム系イオン液体、アミン系イオン液体及び2つの水酸基を有するイオン液体より成る群から選択される少なくとも1種であることが重要である。イオン液体が前記群から選択される少なくとも1種であると、低湿度環境下におけるかぶりの発生を実質的に抑えることができる。したがって、イオン液体は、前記群から選択されるものであれば1種でも複数でもよい。
前記イオン液体は、ピリジニウム系イオン液体、アミン系イオン液体及び水酸基含有イオン液体である。
前記ピリジニウム系イオン液体は、陽イオンとして、ピリジン環を構成する窒素原子にアルキル基等が結合して成るピリジニウムイオンを基本骨格とするイオン液体であり、分子内に2つの水酸基を有していない。前記アルキル基は置換基を有していてもよい炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基であるのが好ましく、炭素数4〜18の直鎖状のアルキル基であるのが特に好ましい。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
前記ピリジン環は、その環を構成する炭素原子に結合する水素原子がアルキル基で置換されたアルキル基置換ピリジン環であってもよい。前記水素原子を置換するアルキル基は、1つでも複数でもよく、前記ピリジン環を構成する窒素原子に結合するアルキル基と基本的に同様であり、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基であるのが好ましく、炭素数4〜18の直鎖状のアルキル基であるのが特に好ましい。アルキル基置換ピリジン環として、具体的には、前記アルキル基として1つのメチルを有するα−ピコリン、β−ピコリン及びγ−ピコリン、前記アルキル基として1つのエチルを有するα−エチルピリジン、β−エチルピリジン及びγ−エチルピリジン、前記アルキル基として2つのメチルを有する2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン等が挙げられる。これらの中でもγ−ピコリンであるのがよい。
前記ピリジニウム系イオン液体を構成する陰イオンは、特に限定されず、例えば、ハロゲンイオン、BF4 −、PF6 −、CF3SO3 −(トリフルオロメタンスルホニルイオン)、(CF3SO2)2N− (ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン:TFSI)等が挙げられる。これらの中でも、有機酸陰イオンであるBF4 −、PF6 −、CF3SO3 −及び(CF3SO2)2N−が好ましく、(CF3SO2)2N−が特に好ましい。
前記アルキル基で置換されていないピリジニウムイオンを陽イオンとし、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンを陰イオンとする前記ピリジニウム系イオン液体として、具体的には、例えば、N−プロピルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−アリルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
また、前記アルキル基で置換されたピリジニウムイオンを陽イオンとし、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンを陰イオンとする前記ピリジニウム系イオン液体として、具体的には、例えば、N−プロピル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシル−2−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−プロピル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシル−3−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−プロピル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ブチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ペンチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘキシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ヘプチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−オクチル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−ノニル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−デシル−4−メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。さらに、前記アルキル基で置換されたピリジニウムイオンを陽イオンとし、ヘキサフルオロホスファートイオンを陰イオンとする前記ピリジニウム系イオン液体として、具体的には、例えば、1−オクチル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスファート、1−ノニル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスファート、1−デシル−4−メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。
前記アミン系イオン液体は、陽イオンとして、脂肪族系アミン化合物の窒素原子にアルキル基等が結合して成るアンモニウムイオンを基本骨格とする脂肪族のアミン系イオン液体であり、分子内に2つの水酸基を有していない。前記アルキル基はピリジニウム系イオン液体における窒素原子に結合する前記アルキル基と基本的に同様である。
前記脂肪族系アミン化合物としては、例えば、脂環式アミン化合物、脂肪族アミン化合物等が挙げられる。これらのアミン化合物からなるアンモニウムイオンとしては、例えば、R1 4N+イオン(4つのR1は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基であり、複数のR1が環を形成していてもよい。)等が挙げられる。
4つの前記アルキル基R1が同じアミン系イオン液体として、具体的には、例えば、N,N,N,N−テトラブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラオクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラノニルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラドデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラヘキサデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N,N−テトラオクタデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
3つの前記アルキル基R1が同じアミン系イオン液体として、具体的には、例えば、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ペンチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ヘプチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−オクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−ノニルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N,N−トリメチル−N−デシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
この発明において、このアミン系イオン液体は、前記した中でも、陰イオンとしてCF3SO3 −(トリフルオロメタンスルホニルイオン)であるのが好ましく、また、4つの前記R1すべてが炭素数3以下のアルキル基であるのが好ましい。
前記水酸基含有イオン液体は、2つの水酸基を有しており、好ましくは末端に2つの水酸基を有している。このような2つの水酸基を有するイオン液体は、特に限定されず、例えば、2つの水酸基を有するアンモニウムイオンを陽イオンとする2つの水酸基を有するアミン系イオン液体、2つの水酸基を有するイミダゾリウムイオンを陽イオンとする2つの水酸基を有するイミダゾリウム系イオン液体、2つの水酸基を有するピリジニウムイオンを陽イオンとする2つの水酸基を有するピリジニウム系イオン液体等が挙げられる。前記ウレタン樹脂組成物に含有される前記水酸基含有イオン液体は1種でもよく複数でもよい。水酸基含有イオン液体における陰イオンは前記陰イオンと基本的に同様である。水酸基含有イオン液体の中でも、2つの水酸基を有するアミン系イオン液体、特に、2つの水酸基を有する脂肪族アミン系イオン液体であるのが、低湿度環境下におけるかぶりの発生を実質的に抑えることができるうえ、画像形成装置の待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続してもその後に形成される画像に白筋が発生することを実質的に抑えることができる点で、好ましい。
前記2つの水酸基を有する脂肪族アミン系イオン液体は、陽イオンとして、脂肪族系アミン化合物の窒素原子に4つの置換基が結合して成る、2つの水酸基を有するアンモニウムイオンを基本骨格とする脂肪族のアミン系イオン液体である。前記脂肪族系アミン化合物としては、例えば、脂環式アミン化合物及び脂肪族アミン化合物等が挙げられる。
前記アンモニウムイオンとしては、例えば、(R11R12R13R14)N+イオン(R11、R12、R13及びR14の2つは、同一でも異なっていてもよい、水酸基を1個有する炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族有機基であり、R11、R12、R13及びR14の残り2つは、同一でも異なっていてもよい、炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基又はアルケニル基であり、R11、R12、R13及びR14の2つで環を形成していてもよい。)等が挙げられる。
R11、R12、R13及びR14の2つの前記脂肪族有機基は、直鎖状の脂肪族有機基であるのが好ましく、水酸基以外の置換基を有していてもよい。前記脂肪族有機基としては、例えば、水酸基を1個有するアルキル基、水酸基を1個有するアルケニル基、ポリオキシアルキレン基等が挙げられる。前記アルキル基及び前記アルケニル基は炭素数1〜40であるのが好ましく、前記ポリオキシアルキレン基は炭素数4〜16、例えばポリオキシエチレンの場合には重合度が2〜8であるのが好ましい。このような有機基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシヘキシル基等のヒドロキシアルキル基、ヒドロキシエテニル基、ヒドロキシプロペニル基等のヒドロキシアルケニル基、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基等が挙げられる。この発明において、R11、R12、R13及びR14のうちの2つが同一の前記脂肪族有機基であるのが好ましい。
R11、R12、R13及びR14のうち前記脂肪族有機基以外の残り2つは、炭素数1〜40の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基又はアルケニル基であり、直鎖状のアルキル基又はアルケニル基であるのが好ましい。前記アルキル基又は前記アルケニル基は置換基を有していてもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基等が挙げられる。
前記2つの水酸基を有する脂肪族アミン系イオン液体として、例えば、2つの2−ヒドロキシエチル基を有する脂肪族アミン系イオン液体、2つのポリオキシエチレン基を有する脂肪族アミン系イオン液体等が挙げられる。2つの2−ヒドロキシエチル基を有する脂肪族アミン系イオン液体としては、具体的には、例えば、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−オクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−デシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−ドデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−テトラデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−ヘキサデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(2−ヒドロキシエチル)−メチル−オクタデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−オクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−デシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−ドデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−テトラデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−ヘキサデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)−オクタデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、オレイル−エチル−ビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
2つのポリオキシエチレン基を有する脂肪族アミン系イオン液体としては、具体的には、例えば、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−オクチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−デシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−ドデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−テトラデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−ヘキサデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(ポリオキシエチレン)−メチル−オクタデシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、オレイル−ビス(ポリオキシエチレン)−メチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。
前記イオン液体は、低湿度環境下におけるかぶりの発生を抑えることが特に重要であれば、ピリジニウム系イオン液体から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。一方、前記イオン液体は、前記かぶりの発生と共に前記画像に白筋が発生することを抑えることが特に重要であれば、前記水酸基含有イオン液体、特に2つの水酸基を有するアミン系イオン液体であるのが好ましい。
前記ウレタンコート層4に含有されるウレタン樹脂は、前記イオン液体が水酸基含有しイオン液体でない場合には、公知のウレタン樹脂であればよく、通常、ポリオールとポリイソシアネートとから得られる。このポリオールはポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールであるのが好ましく、このポリイソシアネートは、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。詳細はウレタン樹脂組成物において説明する。
一方、前記ウレタンコート層4に含有されるウレタン樹脂は、前記イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合には、このイオン液体と前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとの反応生成物であり、その主鎖又は側鎖に前記イオン液体、具体的には、その前記陽イオン部分が結合して成る。前記水酸基含有イオン液体の陰イオンは、ウレタンコート層4内に存在していれば、静電作用で陽イオンに結合して、又は、陽イオンの近傍に存在して、ウレタン樹脂の一部となっていてもよく、また、陽イオンから離れて存在し、ウレタン樹脂とは独立していてもよく、これら両方であってもよい。このようなウレタン樹脂は、繰り返し単位(I)〜(III)からなる。すなわち、このウレタン樹脂は、繰り返し単位(I)〜(III)を含有している。
(I) −O−A−O−
(II) Rol(−O−)n
(III) Ris(−NHCO−)m
前記繰り返し単位(I)〜(III)において、前記繰り返し単位(I)は前記水酸基含有イオン液体の残基であって、前記陰イオンを含んでいてもいなくてもよく、前記Aは前記水酸基含有イオン液体の水酸基を除く残基である。前記繰り返し単位(II)は前記ポリオールの残基で、前記Rolは前記ポリオールの水酸基を除く残基で、nは2以上の整数であり、n個以上の前記(−O−)はそれぞれ独立に前記Rolに結合している。前記繰り返し単位(III)は前記ポリイソシアネートの残基で、前記Risは前記ポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基であり、mは2以上の整数であり、m個以上の前記(−NHCO−)はそれぞれ独立に前記Risに結合している。
前記繰り返し単位(I)〜(III)はそれぞれ、前記水酸基含有イオン液体、前記ポリオール及び前記ポリイソシアネートに由来し、これらと基本的に同様である。したがって、例えば、前記繰り返し単位(I)は2つの水酸基を有する脂肪族アミン系イオン液体の残基であるのが好ましく、前記繰り返し単位(II)はポリエステルジオール又はポリエーテルジオールの残基であるのが好ましく、前記繰り返し単位(III)は脂肪族ジイソシアネートの残基又は芳香族ポリイソシアネートの残基であるのが好ましい。前記ポリオール及び前記ポリイソシアネートは、水酸基を含有していないイオン液体における前記ウレタン樹脂を形成する前記ポリオール及び前記ポリイソシアネートと基本的に同様であり、その詳細はウレタン樹脂組成物において説明する。
前記ウレタン樹脂は、繰り返し単位(II)の質量及び繰り返し単位(III)の質量の合計質量を100質量部としたときに、繰り返し単位(I)の質量が1〜20質量部となるように、繰り返し単位(I)〜(III)を有している。ここで、前記繰り返し単位(I)の質量は反応前の前記水酸基含有イオン液体(陰イオンを含む。)に換算したときの質量であり、前記繰り返し単位(II)の質量は反応前の前記ポリオールに換算したときの質量であり、前記繰り返し単位(III)の質量は反応前の前記ポリイソシアネートに換算したときの質量である。通常、このウレタン樹脂における各繰り返し単位(I)〜(III)の含有量はウレタンコート層4を形成するウレタン樹脂組成物に含有されるウレタン樹脂調整成分及びイオン液体の含有量とほぼ一致する。
前記ウレタンコート層4は、前記イオン液体を前記ウレタン樹脂100質量部に対して1〜20質量部の割合で含有している。イオン液体の含有量が1質量部未満であると、イオン液体の効果が十分に得られず、低湿度環境下におけるかぶりの発生を抑えることができないことがある。一方、イオン液体の含有量が20質量部を超えると、帯電した現像剤の電荷が抜けてしまい現像ローラ表面に現像剤を担持できないことがある。その結果、低湿度環境下においてかぶりが発生しやすく、また、ハーフトーン画像に濃度ムラが発生しやすくなり、形成される画像の品質が低下することがある。イオン液体が前記水酸基含有イオン液体である場合に、前記含有量が20質量部を超えると、画像形成装置の待機後に形成される画像に白筋が発生して画像の品質が低下することがある。この発明において、低湿度環境下におけるかぶりの発生を実質的に抑えることができ、所望により、画像形成装置の待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続してもその後に形成される画像に白筋が発生することを効果的に抑えることができる点で、イオン液体の含有量は、前記ウレタン樹脂100質量部に対して9〜19質量部であるのが好ましい。通常、ウレタンコート層4におけるイオン液体の含有量は、ウレタンコート層4を形成するウレタン樹脂組成物に含有されるウレタン樹脂調整成分100質量部に対するイオン液体の含有量とほぼ一致する。
前記ウレタンコート層4に含有される前記フッ素系界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基(−CnF2n+1)を有する化合物が好ましく、前記パーフルオロアルキル基は、炭素数が1〜6のパーフルオロアルキル基であるのが好ましく、特に、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基等が好ましい。このように、導電性ローラ1のウレタンコート層4にフッ素系界面活性剤が所定量含有されていると、イオン液体が含有されていても、現像剤に対するウレタンコート層4の特性、例えば、接触角及び/又は表面エネルギー等を改善することができ、この発明の目的をよく達成することができる。
前記フッ素系界面活性剤としては、特に低分子化合物のフッ素系界面活性剤及びオリゴマーのフッ素系界面活性剤であるのが、接触角及び/又は表面エネルギー等をより改善することができる点で、好ましい。前記低分子化合物のフッ素系界面活性剤としては、例えば、分子内にパーフルオロアルキル基を有する各種酸又はその塩等が挙げられ、具体的には、例えば、パーフルオロブチルスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル、パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル型配合物、及び、エチレンオキシド付加物等が挙げられる。前記パーフルオロブチルスルホン酸塩としては例えば商品名「メガファック」(品番F−114)、前記パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩としては例えば商品名「メガファック」(品番F−410)、前記パーフルオロアルキル基含有リン酸エステルとしては例えば商品名「メガファック」(品番F−493)、前記パーフルオロアルキル基含有リン酸エステル型配合物としては例えば商品名「メガファック」(品番F−494)、並びに、前記エチレンオキシド付加物としては、例えば、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物と称される、商品名「メガファック」(品番F−443)、商品名「メガファック」(品番F−444)、商品名「メガファック」(品番F−445)及び商品名「メガファック」(品番F−446)(以上、大日本インキ化学工業製)等が挙げられる。
オリゴマーのフッ素系界面活性剤としては、その主鎖がパーフルオロアルキル基で、分子量がGPCによるポリスチレン換算で500〜1万が好ましく、600〜9000がさらに好ましく、700〜8000が特に好ましい。このようなオリゴマーのフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー等が挙げられる。オリゴマーのフッ素系界面活性剤としては、より具体的には、例えば、パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー(商品名「メガファック」(品番F−470、F−471、F−475、F−477、F−479、R−08、R−30及びR−110)等、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー(商品名「メガファック」(品番F−480SF)、パーフルオロアルキル基・親油性基含有オリゴマー(商品名「メガファック」(品番F−482、F−483、F−489)(以上、大日本インキ化学工業製)等を挙げられる。また、別のオリゴマーとして、例えば、パーフルオロブタンスルホン酸基を含有する界面活性剤が挙げられる。このような界面活性剤として、例えば、商品名「ノベック FC−4430」及び「ノベック FC−4432」(住友スリーエム株式会社)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤のイオン性は特に限定されないが、ノニオン性であるのが、導電調整用のカーボンブラックの分散性に影響を与えないという理由で、好ましい。
フッ素系界面活性剤の含有量は、ウレタン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部である。フッ素系界面活性剤の含有量が0.1質量部未満であると、フッ素系界面活性剤を含有させた効果が十分に得られず、この発明の目的を十分に達成することができないことがある。一方、フッ素系界面活性剤の含有量が5質量部を超えてもこの発明の目的を十分に達成することができるが、フッ素系界面活性剤を含有させた効果がそれほど増大しないのでフッ素系界面活性剤の使用量を低減するという観点から5質量部にするのが好ましい。この発明の目的及びフッ素系界面活性剤の使用量低減を十分に達成できる点で、フッ素系界面活性剤の含有量は、ウレタン樹脂100質量部に対して0.1〜2質量部であるのが好ましく、0.1〜0.7質量部であるのが特に好ましい。フッ素系界面活性剤の含有量は、ウレタンコート層4を光電子分光装置(ESCA)により分析することによって、測定することができる。通常、ウレタンコート層4におけるフッ素系界面活性剤の含有量は、ウレタンコート層4を形成するウレタン樹脂組成物に含有されるウレタン樹脂調整成分100質量部に対するフッ素系界面活性剤の含有量とほぼ一致する。
前記ウレタンコート層4がカーボンブラックを含有する場合には、カーボンブラックのDBP吸着量が100mL/100g未満であるのが好ましい。前記DBP吸着量はJIS K6217−4に準じて測定できる。なお、前記ウレタンコート層4は特許文献5のような樹脂粒子を実質的に含有していない。
前記組成を有するウレタンコート層4は、その表面に接触又は担持する現像剤の接触角よりも大きな接触角を有しているのが好ましい。ウレタンコート層4がこのような大きな接触角を有していると画像形成装置の稼動によって現像剤が溶融しても、ウレタンコート層4にほとんど付着せず、ウレタンコート層4に固着する現像剤量を著しく低減できる。
前記ウレタンコート層4は、ヘキサデカンの接触角が45〜75°であるのが好ましく、45〜70°であるのがより好ましく、50〜70°であるのが特に好ましい。前記接触角は例えば接触角計(商品名「CA‐DT型」、協和界面化学株式会社製)を用いて測定できる。前記ウレタンコート層4のうち現像剤が接触する領域を10mm×10mmに切り出した試料を接触角計にセットし試料上に液滴径が2mmとなるように試験液としてヘキサデカンの液滴を滴下する。接触角の計測は試料と液滴の接点と液滴頂点部でなす角度を接触角計に内蔵された角度目盛りで読み取り2倍に換算して求める。
前記ウレタンコート層4は、表面エネルギーが14〜17mN/mであるのが好ましい。前記表面エネルギーは、接触角計(型式「CA−A型、協和界面科学株式会社製)を用いてジスマンプロットにより求めることができる。具体的には、ヘキサデカン及びジヨードメタンを測定溶媒として前記接触角計にて前記ウレタンコート層4の各測定溶媒における表面張力と接触角θとを測定する。測定された表面張力の値を横軸、測定された接触角θから算出したcosθの値を縦軸としてXY座標上にプロットして2つのプロットを結ぶ直線の延長線とX(cosθ)=1.0の直線との交点の値をウレタンコート層4の表面エネルギーとする。
前記接触角及び前記表面エネルギーが前記範囲内にあると、画像形成装置の稼動によって溶融した現像剤が前記ウレタンコート層4にほとんど付着しなくなり、ウレタンコート層4に固着する現像剤量を著しく低減できる。
前記ウレタンコート層4を形成するウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂を形成する前駆体であるウレタン調整成分と、所定量すなわち前記ウレタン調整成分100質量部に対して1〜20質量部のイオン液体と、所定量すなわち前記ウレタン調整成分100質量部に対して0.1〜5質量部のフッ素系界面活性剤と、所望により各種添加剤とを含有している。したがって、ウレタンコート層4は、ウレタン調整成分と、所定量のイオン液体と、所定量のフッ素系界面活性剤と、所望により各種添加剤とを含有するウレタン樹脂組成物を弾性層3の外周面に塗布硬化して形成されている。前記ウレタン樹脂組成物におけるイオン液体、フッ素系界面活性剤及び各種添加剤は前記した通りである。
前記ウレタン調整成分は、ポリウレタンを形成することができる成分であればよく、例えば、ポリオールとイソシアネートとの混合物が挙げられる。
前記ポリオールは、分子内に好ましくは末端に水酸基を少なくとも2つ有する、ポリウレタンの調製に通常使用される各種のポリオールであればよく、イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合にはイオン液体以外のポリオールであってポリウレタンの調製に通常使用される各種ポリオールであればよい。このようなポリオールとして、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールから選択された少なくとも1種のポリオールであるのが好ましい。イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合には、前記ポリオールはジオールであるのが好ましく、したがって、ポリエステルジオール又はポリエーテルジオールであるのがさらに好ましく、ポリエステルジオールが特に好ましい。
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール−エチレングリコール等のポリアルキレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合ポリオール、及び、これらの各種変性体又はこれらの混合物等が挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジピン酸等のジカルボン酸とエチレングリコール、ヘキサンジオール等のポリオールとの縮合により得られる縮合系ポエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、これらの混合物等が挙げられる。前記ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを組み合わせて使用してもよい。前記ポリオールは、熱的安定性に優れる点で、ポリエステルポリオールが好ましい。前記ポリオールは、後述するポリイソシアネート等との相溶性に優れる点で、1000〜8000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましく、イオン液体が水酸基含有イオン液体である場合には、800〜15000の数平均分子量を有するのが好ましく、1000〜5000の数平均分子量を有するのがさらに好ましい。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレンに換算したときの分子量である。
前記ポリイソシアネートは、分子内に好ましくは末端にイソシアネート基を少なくとも2つ有する、ポリウレタンの調製に通常使用される各種ポリイソシアネートであればよく、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらの誘導体等が挙げられる。ポリイソシアネートは、貯蔵安定性に優れ、反応速度を制御しやすい点で、脂肪族ポリイソシアネートであるのが好ましい。イオン液体が前記水酸基含有イオン液体である場合には、前記ポリイソシアネートは、ジイソシアネートであるのが好ましく、また、画像形成装置の長期間にわたる待機又は停止後においても、また低湿度環境下においても高品質の画像を形成することができる点で、脂肪族ポリイソシアネートであるのが好ましく、したがって、脂肪族ジイソシアネートであるのが特に好ましい。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイシシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(トリレンジイソシアネートとも称する。TDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4−TDIの二量体)、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート等が挙げられる。前記誘導体としては、前記ポリイソシアネートの多核体、ポリオール等で変性したウレタン変性物(ウレタンプレポリマーを含む)、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド変性物、ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物等が挙げられる。前記ポリイソシアネートは、1種単独で又は2種以上を用いることができる。ポリイソシアネートは、500〜2000の分子量を有するのが好ましく、700〜1500の分子量を有するのがさらに好ましい。
前記ポリオール及び含有される場合には前記水酸基含有イオン液体と前記ポリイソシアネートとの混合割合は、特に限定されないが、ポリオールに含まれる水酸基(OH)及び前記水酸基含有イオン液体に含まれる水酸基(OH)の合計モル数と、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基(NCO)のモル数との比率[NCO/OH]が0.7〜1.15であるのが好ましい。この比率[NCO/OH]は、ポリウレタンの加水分解を防止することができる点で、0.85〜1.10であるのがより好ましい。ただし、実際には、作業環境、作業上の誤差を考慮して前記適正モル比の3〜4倍相当量を配合してもよい。
前記ウレタン樹脂組成物における前記イオン液体は、前記ポリオール及び前記ポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときに1〜20質量部である。前記イオン液体の含有量が1質量部未満であると、前記したようにイオン液体の効果が十分に得られないことがあり、一方、前記含有量が20質量部を超えると、前記したように形成される画像の品質が低下することがある。低湿度環境下におけるかぶりの発生を効果的に抑えることができるうえ、画像形成装置の待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続してもその後に形成される画像に白筋が発生することを効果的に抑えることができる点で、イオン液体の含有量は、前記ポリオール及び前記ポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときに、9〜19質量部であるのが好ましい。
前記ウレタン樹脂組成物には、ポリオール及びポリイソシアネートに加えて、ポリオールとポリイソシアネートとの反応に通常使用される助剤、例えば、鎖延長剤、架橋剤等を併用してもよい。鎖延長剤、架橋剤としては、例えば、グリコール類、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン及びアミン類等が挙げられる。
前記ウレタン樹脂組成物は、前記イオン液体と前記ポリオールと前記ポリイソシアネートと、所望により、溶媒、助剤等を適宜の方法で混合して得られる。
導電性ローラ1の製造方法を以下に説明する。前記導電性ローラ1は、軸体2の外周面に弾性層3を形成し、さらに、弾性層3の外周面にウレタンコート層4を形成して、製造される。導電性ローラ1を製造するには、まず、軸体2が準備される。例えば、軸体2は公知の方法により所望の形状に調製される。この軸体2は、弾性層3が形成される前にプライマーが塗布されてもよい。軸体2に塗布されるプライマーとしては、特に制限はないが、前記弾性層3とウレタンコート層4とを接着又は密着させるプライマー層とを形成する材料と同様の樹脂及び架橋剤が挙げられる。プライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体の外周面に塗布される。
弾性層3は、前記導電性組成物を軸体2の外周面に加熱硬化して形成される。例えば、弾性層3は、公知の成形方法によって、加熱硬化と成形とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。導電性組成物の硬化方法は導電性組成物の硬化に必要な熱を加えられる方法であればよく、また弾性層3の成形方法も押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、導電性組成物が付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、押出成形等を選択することができ、導電性組成物が付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物である場合には、例えば、金型を用いる成形法を選択することができる。導電性組成物を硬化させる際の加熱温度は、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜500℃、特に120〜300℃、時間は数秒以上1時間以下、特に10秒以上〜35分以下であるのが好ましく、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜300℃、特に110〜200℃、時間は5分〜5時間、特に1〜3時間であるのが好ましい。また、必要に応じ、付加硬化型ミラブル導電性シリコーンゴム組成物の場合は、100〜200℃で1〜20時間程度の硬化条件で、また、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物の場合は、120〜250℃で2〜70時間程度の硬化条件で、二次加硫してもよい。また、導電性組成物は既知の方法で発泡硬化させることにより、気泡を有するスポンジ状弾性層を容易に形成することもできる。
このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面が研磨、研削されて、外径及び表面状態等が調整される。また、このようにして形成された弾性層3は、ウレタンコート層4が形成される前に、前記プライマー層が形成されてもよい。
ウレタンコート層4は、このようにして形成された弾性層3、又は、所望により形成されたプライマー層の外周面に、前記ウレタン樹脂組成物を塗工し、次いで、塗工されたウレタン樹脂組成物を加熱硬化又は湿気硬化させて、形成される。ウレタン樹脂組成物の塗工は、例えば、ウレタン樹脂組成物の塗工液を塗工する塗布法、前記塗工液に弾性層3等を浸漬するディッピング法、前記塗工液を弾性層3等に吹き付けるスプレーコーティング法等の公知の塗工方法によって、行われる。ウレタン樹脂組成物は、そのまま塗工してもよいし、ウレタン樹脂組成物に、例えば、メタノール及びエタノール等のアルコール、キシレン及びトルエン等の芳香族系溶媒、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒等の揮発性溶媒、又は、水を加えた塗工液を塗工してもよい。このようにして塗工されたウレタン樹脂組成物を硬化する方法は、ウレタン樹脂組成物の硬化等に必要な熱又は水分を加えられる方法であればよく、例えば、ウレタン樹脂組成物が塗工された弾性層3等を加熱器で加熱する方法、ウレタン樹脂組成物が塗工された弾性層3等を高湿度下に静置する方法等が挙げられる。ウレタン樹脂組成物を加熱硬化させる際の加熱温度は、例えば、100〜200℃、特に120〜160℃、加熱時間は10〜120分間、特に30〜60分間であるのが好ましい。なお、前記塗工に代えて、前記ウレタン樹脂組成物を弾性層3又はプライマー層の外周面に、押出成形、プレス成形、インジェクション成形等の公知の成形方法によって、積層すると共に、又は、積層した後に、積層されたウレタン樹脂組成物を硬化させる方法等が採用されることができる。
導電性ローラ1は、ウレタン樹脂と、前記ウレタン樹脂100質量部に対して1〜20質量部の、ピリジニウム系イオン液体、アミン系イオン液体及び2つの水酸基を有するイオン液体より成る群から選択される少なくとも1種のイオン液体と、前記ウレタン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部のフッ素系界面活性剤とを含有しているウレタンコート層4を備えてなるから、現像剤が溶融しても前記ウレタンコート層4にほとんど付着せず、その結果、画像形成装置を長期間にわたって稼動しても現像剤が表面に実質的に固着しなくなる。このように、この導電性ローラ1は、現像剤が長期間にわたって表面に固着しにくいから、後述する前記イオン液体が奏する効果を損なうことなく、長期間にわたって、所定量の現像剤を像担持体に供給して画像品質を維持でき、さらに、現像装置から現像剤を漏出させることがない。したがって、この発明に係る導電性ローラは、現像装置及び/又は画像形成装置に装着されたときに、長期間にわたる画像品質の維持及び現像剤の漏出防止に貢献できる。すなわち、この発明に係る導電性ローラは、かぶりのない画像形成を目的としてイオン液体を含有していたとしても長期間にわたって現像剤の担持搬送機能が低下することなく現像剤を漏出させることもない。
また、この導電性ローラ1は、前記ウレタンコート層4を備えているから、通常の湿度はもちろん、例えば相対湿度10%の低湿度環境下においてもかぶりの発生を実質的に抑えることができる。導電性ローラ1がこのような優れた効果を奏するのは、低湿度環境下において像担持体に供給される現像剤がたとえ過剰に帯電したとしても、前記ウレタンコート層4を表面層とする前記導電性ローラ1を現像ローラとして用いれば、現像剤に帯電した過剰な帯電量を導電性ローラ1が効果的に除電して、像担持体に供給される現像剤の帯電量を通常の湿度環境下における帯電量とほぼ同程度にすることができるのではないかと、本願発明者らは推測している。
さらに、導電性ローラ1は、その周囲の湿度が例えば通常の湿度から低湿度に変化してもかぶりの発生を実質的に抑えることができる。したがって、この発明によれば、その周囲の湿度が低湿度に変化してもかぶりのない画像を形成することのできる導電性ローラ及び画像形成装置を提供するという目的を達成することができる。
この導電性ローラ1は、前記ウレタンコート層4を備えているから、画像形成装置に装着された導電性ローラ1が像担持体等の被当接体に接触又は圧接した状態で、画像形成装置がたとえ長期間、例えば、5日以上にわたって継続して待機又は停止しても、その後に画像形成装置が稼動して形成される画像に白筋が発生することを実質的に抑えることができる。特に、ウレタンコート層4が前記水酸基含有イオン液体を含有していると、前記かぶりの発生防止に加えて、画像に前記白筋が発生することを高度に防止することができる。導電性ローラ1がこのような優れた効果を奏するのは、画像形成装置の待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続しても、ウレタンコート層4中に存在するイオン液体がウレタンコート層4内を移動しにくく、また導電性ローラ1が当接する被当接体に移行しにくいため、ウレタンコート層4の均一性を損なうことも前記被当接体を汚染することもないことによるものではないかと、本願発明者らは推測している。
このように、前記導電性ローラ1は、例えば現像ローラ等の導電性ローラとして画像形成装置に装着されると、画像形成装置の長期間にわたる待機又は停止後においても、また低湿度環境下においても、画像形成装置が高品質の画像を形成することに貢献することができる。また、導電性ローラ1は、その周囲の湿度が例えば通常の湿度から低湿度に変化してもかぶりの発生を実質的に抑えることができるから、この発明によれば、画像形成装置の長期間にわたる待機又は停止後においても、また周囲の湿度が低湿度に変化してもかぶりのない画像を形成することのできる導電性ローラ及び画像形成装置を提供するという目的を達成することができる。さらに、導電性ローラ1は、前記ウレタン樹脂組成物中に1〜20質量部のイオン液体を含有していても、特に、5質量部以上含有していても、このウレタン樹脂組成物を硬化してなるウレタンコート層4からイオン液体がブリードアウトしにくい。その結果、導電性ローラ1が当接する被当接体を汚染することがなく、高品質の画像を形成することに貢献することができる。
このように、導電性ローラ1はその周囲が低湿度であってもかぶりの発生を実質的に抑えることができるうえ、画像形成装置の長期間にわたる待機又は停止後においても白筋の発生を実質的に抑えることができ、加えて、現像剤の固着も防止できるから、例えば、自身の表面に、所望の帯電量に帯電した現像剤を均一な厚さに担持して像担持体に供給するという作用・機能を発揮する必要のある現像ローラ及び現像剤供給ローラとして好適に用いられ、特に、像担持体等の被当接体に接触又は圧接した状態で装着される現像ローラ及び現像剤供給ローラとして好適に用いられる。
この発明に係る導電性ローラは、前記特性を有するから、自身の接触角よりも小さな接触角を有する現像剤、例えば、ヘキサデカンの接触角が35〜40°の現像剤が収納された現像装置に特に好適に用いられる。このような現像剤は後述する。
次に、この発明に係る導電性ローラ1を備えた現像装置(以下、この発明に係る現像装置と称することがある。)の一例、及び、この一例の現像装置を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図2を参照して、説明する。
この画像形成装置10は、図2に示されるように、この発明に係る現像装置20B、20C、20M及び20Yを備えている。現像装置20B、20C、20M及び20Y並びに画像形成装置10において、導電性ローラ1は、現像剤担持体23B、23C、23M及び23Y、すなわち、現像ローラとして装着されている。この画像形成装置10は、図2に示されるように、各色の現像ユニットB、C、M及びYに装備された複数の像担持体11B、11C、11M及び11Yを転写搬送ベルト6上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置であり、したがって、現像ユニットB、C、M及びYが2本の支持ローラ42に巻回された転写搬送ベルト6上に直列に配置されている。現像ユニットBは、像担持体11B例えば感光体(感光ドラムとも称される。)と、帯電手段12B例えば帯電ローラと、露光手段13Bと、現像装置20Bと、転写搬送ベルト6を介して像担持体11Bに当接する転写手段14B例えば転写ローラと、クリーニング手段15Bとを備えている。現像ユニットC、M及びYは現像装置Bと基本的に同様に構成されている。
前記現像装置20Bは、一成分非磁性の現像剤22Bを収容する筐体21Bと、現像剤22Bを像担持体11Bに供給する現像剤担持体23B例えば現像ローラと、現像剤22Bの厚みを調整する現像剤量調節手段24B例えばブレードとを備えて成る。この現像装置20Bは、現像剤担持体23Bとしての導電性ローラ1が像担持体11Bに当接又は圧接するように、画像形成装置10に装着されている。このときの導電性ローラ1と像担持体11Bとのニップ幅は、通常、導電性ローラ1の周方向長さが0.1〜2mmとなるように調整される。現像装置20C、20M及び20Yは現像装置20Bと基本的に同様に構成されている。
画像形成装置10に使用される現像剤22B、22C、22M及び22Yは、いずれも、摩擦により帯電可能な現像剤であって、その接触角が導電性ローラ1のウレタンコート層4の接触角よりも小さいのが好ましく、例えば、そのヘキサデカンに対する接触角は35〜40°であるのが好ましく、36〜40°であるのが特に好ましい。したがって、現像剤22B、22C、22M及び22Yはこのような現像剤であればよく、例えば、乾式現像剤でも湿式現像剤でもよく、また、非磁性現像剤でも磁性現像剤でもよい。各現像ユニットの筐体21B、21C、21M及び21Y内には、前記接触角が35〜40°である、一成分非磁性の、黒色現像剤22B、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yが収納されている。このような現像剤として、例えば、プリンター(商品名「HL−4040CN」、ブラザー工業株式会社製)の現像剤等が挙げられる。現像剤の接触角は、10mm×10mmに切り出した試料に代えて現像剤からなる10mm×10mmを普通紙にベタ印字した試料を用いて、ウレタンコート層4の接触角と基本的に同様にして測定できる。このような現像剤として、例えば、プリンター(商品名「HL−4040CN」、ブラザー工業株式会社製)の現像剤等が挙げられる。現像剤のヘキサデカンの接触角が前記範囲内にあると、画像形成装置の稼動によって溶融しても、ウレタンコート層4にほとんど付着せず、ウレタンコート層4に固着する現像剤量を著しく低減できる。ここで、導電性ローラ1のウレタンコート層4の接触角と現像剤の接触角との差は、例えば、10〜25°であるのが好ましい。接触角の前記差が前記範囲内にあると、この発明の目的をよく達成することができる。
定着手段30は、記録体16の搬送方向下流であって現像ユニットYの下流側に配置されている。この定着手段30は、記録体16を通過させる開口部35を有する筐体内に、定着ローラ31と、定着ローラ31の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ33と、定着ローラ31及び無端ベルト支持ローラ33に巻き掛けられた無端ベルト36と、定着ローラ31と対向配置された加圧ローラ32とを備え、無端ベルト36を介して定着ローラ31と加圧ローラ32とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。画像形成装置10の底部には、記録体16を収容するカセット41が設置されている。
画像形成装置10は、以下のようにして記録体16にカラー画像を形成する。まず、現像ユニットBにおいて、帯電手段12Bで帯電した像担持体11Bの表面に露光手段13Bにより静電潜像が形成され、現像剤担持体23Bにより供給された現像剤22Bで黒色の静電潜像が現像される。そして、記録体16が転写手段14Bと像担持体11Bとの間を通過する際に黒色の静電潜像が記録体16Bの表面に転写される。次いで、現像ユニットBと同様にして、現像ユニットC、M及びYによって、静電潜像が黒像に顕像化された記録体16に、それぞれシアン像、マゼンタ像及び黄色像が重畳され、カラー像が顕像化される。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は、定着手段30によりカラー像が永久画像として記録体16に定着される。このようにして、記録体16にカラー画像を形成することができる。
前記現像装置20B、20C、20M及び20Yは、導電性ローラ1と前記現像剤とを備えているから、現像剤が溶融しても導電性ローラ1のウレタンコート層4にほとんど付着せず、現像装置20B、20C、20M及び20Yを長期間にわたって稼動しても現像剤が表面に実質的に固着しなくなる。このように、この発明に係る現像装置及び画像形成装置はこの発明に係る導電性ローラを備えているから、前記イオン液体が奏する効果を損なうことなく、長期間にわたって、所定量の現像剤を像担持体に供給して画像品質を維持でき、さらに、現像装置から現像剤を漏出させることがない。したがって、この発明に係る現像装置は、画像形成装置に装着されたときに、長期間にわたる画像品質の維持及び現像剤の漏出防止に貢献でき、その結果、画像形成装置が長期間にわたって高品質の画像を形成することに貢献できる。また、この発明に係る画像形成装置は長期間にわたって高品質の画像を形成することができる。すなわち、この発明に係る現像装置及び画像形成装置は、かぶりのない画像形成を目的としてイオン液体を含有する導電性ローラを備えていても、長期間にわたって現像剤が漏れにくくて記録体を汚染することがなく、かつ、現像剤の担持搬送機能が低下せずに高濃度の画像を形成することができる。
このタンデム型画像形成装置10は、現像剤担持体23として導電性ローラ1が装着されてえるから、通常の湿度はもちろん、例えば相対湿度10%の低湿度環境下においてもかぶりが実質的にない高品質の画像を形成することができる。また、現像剤担持体23として導電性ローラ1が装着されていると、タンデム型画像形成装置10を長期間にわたって待機又は停止しても導電性ローラ1のウレタンコート層4の均一性を損なうことも像担持体11を汚染することもなく、このタンデム型画像形成装置10は待機又は停止がたとえ長期間にわたって継続したとしても白筋が実質的にない高品質の画像を形成できる。
前記画像形成装置10は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。なお、画像形成装置10においてはこの発明に係る導電性ローラ1を現像剤担持体23の一例である現像ローラとして用いた例を参照して説明したが、現像剤供給ローラとしてこの発明に係る導電性ローラ1を用いても同様に高品質の画像を形成することができる。
この発明に係る導電性ローラ、現像装置及び画像形成装置は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る導電性ローラは、弾性層とウレタンコート層との間に、他の層を有してもよい。他の層としては、例えば、弾性層とウレタンコート層とを接着又は密着させるプライマー層等が挙げられる。プライマー層を形成する材料としては、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、これらの樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
前記画像形成装置10は電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、この発明に係る導電性ローラが配設される画像形成装置は、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置に限られず、例えば、単一の現像ユニットを備えたモノクロ画像形成装置、像担持体上に担持された現像剤像を無端ベルトに順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置等であってもよい。また、画像形成装置に用いられる現像剤は、一成分非磁性現像剤とされているが、この発明においては、一成分磁性現像剤であってもよく、二成分非磁性現像剤であっても、また、二成分磁性現像剤であってもよい。前記定着手段30は、熱ローラ定着装置、加熱定着装置、圧力定着装置等が採用されてもよい。
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(SUM22製、直径10mm、長さ275mm)をエタノールで洗浄し、その表面にシリコーン系プライマー(商品名「プライマーNo.16」、信越化学工業株式会社製)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギヤオーブンを用いて、150℃の温度にて10分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、軸体の表面にプライマー層を形成した。
次いで、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(D)(重合度300)100質量部、BET比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製、R−972)1質量部、平均粒径6μm、嵩密度が0.25g/cm3である珪藻土(F)(オプライトW−3005S、北秋珪藻土株式会社製)40質量部、及び、アセチレンブラック(G)(デンカブラックHS−100、電気化学工業株式会社製)5質量部をプラネタリーミキサーに入れ、30分撹拌した後、3本ロールに1回通した。これを再度プラネタリーミキサーに戻し、架橋剤として、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(E)(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)2.1質量部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.1質量部、及び、白金触媒(H)(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌して混練して、付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を調製した。調製した付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を液体射出成形により前記軸体2の外周面に成形した。液体射出成形において、前記付加硬化型液状導電性シリコーンゴム組成物を10分間150℃に加熱して硬化させた。この成形体を研磨して外径20mmの弾性層3を形成した。
下記組成を有するウレタンコート層4形成用のウレタン樹脂組成物を調製した。ウレタン樹脂組成物において、下記ポリオール及び下記ポリイソシアネートの合計含有量を100質量部としたときのイオン液体、フッ素系界面活性剤及びカーボンブラックの含有量(質量部)を「換算含有量(質量部)」と表記して、第1表に示す。
・ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネート)14質量部
・縮合系ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸との混合モル比[COOH/OH]=12/13、前記測定方法で測定された数平均分子量は前記範囲内にあった。)28質量部(ポリイソシアネートと縮合系ポリエステルポリオールとのモル比[NCO/OH]=1.1/1)
・ピリジニウム系イオン液体として「C5H5N+−C6H13[(CF3SO2)2N]− (N−ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)(関東化学株式会社製)」1質量部
・フッ素系界面活性剤として、「パーフルオロブタンスルホン酸基含有オリゴマー」(商品名「ノベック FC−4432」、住友スリーエム株式会社製)0.1質量部
・ジブチル錫ジラウレート(商品名「ジ−n−ブチルすずジラウレート」、昭和化学株式会社製)0.03質量部
・シリカ(商品名「ACEMATT OK−607」、デグサ社製)4質量部
・カーボンブラック(商品名「トーカブラック#4500」、東海カーボン株式会社製)3質量部
このようにして調製したウレタン樹脂組成物を弾性層3の外周面にスプレーコーティング法によって塗布し、160℃で30分間加熱して、層厚22μmのウレタンコート層4を形成した。このようにして実施例1の導電性ローラを製造した。
(実施例2及び3)
前記フッ素系界面活性剤の含有量を0.2質量部及び0.5質量部に変更したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして実施例2及び3の導電性ローラをそれぞれ製造した。
(比較例1)
前記ピリジニウム系イオン液体を含有させないこと以外は、実施例1と基本的に同様にして比較例1の導電性ローラを製造した。
(比較例2)
前記ピリジニウム系イオン液体を含有させず、前記カーボンブラックの含有量を6質量部に変更したこと以外は、実施例1と基本的に同様にして比較例2の導電性ローラを製造した。
(参考例1)
前記フッ素系界面活性剤を含有させないこと以外は、実施例1と基本的に同様にして参考例1の導電性ローラを製造した。
製造した各導電性ローラのウレタンコート層から切り出した試料を用いて前記方法に従って溶媒「ヘキサデカン」に対する接触角を測定した結果、前記方法に従って求めた表面エネルギーの値等を第1表に示す。なお、第1表に示した接触角の値はいずれも3回測定したときの算術平均値である。
(現像剤の固着評価1)
実施例1〜3、比較例1〜2及び参考例1で製造した各導電性ローラを用いて耐久印字テストを行い、現像剤の固着量を目視にて評価した。前記耐久印字テストは次のようにして行った。すなわち、製造した各導電性ローラを現像ローラとして装着したプリンター(商品名「HL−4040CN」、ブラザー工業株式会社製)を用い、常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度50%)において、A4用紙片面の全面積の5%に対して、黒ベタ印字を通算で2000枚印刷した。評価は、耐久印字テスト後の導電性ローラの表面に固着した現像剤が皆無であった場合を「◎」、実用上問題がない程度にわずかに現像剤が固着していた場合を「○」、実用上許容できないほど現像剤が固着していた場合を「×」とした。これらの評価結果を「固着評価1」として第1表に示す。なお、現像剤は、前記プリンターに収納されていた黒トナー(黒色現像剤22B、非磁性一成分現像剤)を用いた。この黒トナーの溶媒「ヘキサデカン」に対する接触角は38.5°であり、ウレタンコート層の接触角(ヘキサデカン)との差を第1表に示す。
(現像剤の固着評価2)
前記黒トナーに代えて、前記プリンターに収納されていたマゼンタトナー(マゼンタ現像剤22M、非磁性一成分現像剤)を用いたこと以外は前記「現像剤の固着評価1」と基本的に同様にして現像剤の固着量を評価した。このマゼンタトナーの溶媒「ヘキサデカン」に対する接触角は39.6°であり、ウレタンコート層の接触角(ヘキサデカン)との差を第1表に示す。
第1表に示されるように、現像剤の固着評価1及び2評価が「○」以上であれば、実機においても長期間にわたって導電性ローラの表面に現像剤が固着することがないことが分かった。このように、この発明によれば、イオン液体を用いる効果を損なうことなく、長期間にわたって、所定量の現像剤を像担持体に供給して画像品質を維持でき、さらに、現像装置から現像剤を漏出させることもないことがわかった。