[第1の実施の形態]
以下に、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
図1から図4は、本発明の第1の実施形態の超電導モータを示している。図1、図2に示すように、超電導モータ10は、モータ本体12と、モータ本体12を冷却するための冷凍機14とを備える。モータ本体12は、モータケース16と、モータケース16に回転可能に支持された回転軸18と、モータケース16の内側で回転軸18の外側に固定されることにより、回転可能に配置されたロータ20とを含む。また、モータ本体12は、モータケース16の内周面に固定されることにより、ロータ20の径方向外側に対向配置された略円筒状のステータ22とを含む。また、冷凍機14は、モータケース16に固定されている。なお、以下の説明では、特に断らない限り回転軸18の中心軸Xに関し、これに沿う方向を軸方向といい、回転中心軸Xに対し直交する放射方向を径方向といい、回転中心軸Xを中心として描かれる円形に沿う方向を周方向という。
ロータ20は、例えば電磁鋼板を積層してカシメや溶接等により一体に構成される円筒状のロータコア24と、ロータコア24の外周面の等間隔複数個所に設けられた永久磁石26とを含む。すなわち、ロータコア24の外周面には、複数(図2に示す例では6個)の永久磁石26が露出した状態で周方向の等間隔に固定されている。永久磁石26は、径方向に着磁されており、その着磁方向を周方向に交互に異ならせている。このため、ロータ20の外周面には、N極とS極とが交互に配置されている。ただし、ロータ20に設けられる永久磁石26は、外周面に露出していなくてもよく、外周面近傍の内部に埋設されてもよい。このようなロータ20は、丸棒鋼材等からなる回転軸18の外周面に固定されている。
回転軸18は、その両端部において、モータケース16の両端部を構成する円盤状のエンドプレート28,30に固定された軸受32により回転可能に支持されている。これにより、ステータ22の内部に回転磁界が生成されると、その影響を受けてロータ20が回転する。
ステータ22は、略円筒状をなす固定子鉄心であるステータコア34と、超電導コイルであるコイル36とを含む。すなわち、ステータコア34は、環状のバックヨーク38と、バックヨーク38の径方向一端部である、内周端部の周方向等間隔複数個所(図2に示す例では9個所)に径方向に突出するように設けられたティース40とを有する。また、ステータコア34は、バックヨーク38の内周部の周方向に隣り合うティース40間に設けられた、周方向複数個所(図示の例では9個所)等間隔位置のスロット42を有する。ステータコア34は、例えば複数の略円環状の電磁鋼板を軸方向に積層してカシメ、接着、溶接等によって一体に組み付けて構成できる。ただし、ステータコアは、それぞれ1つのティースを有する複数の分割コアを円環状に連ねて配置してその外側から筒状の締結部材により締め付けることによって造られてもよい。上記の分割コアは、圧粉磁心により造られてもよい。
ステータコア34の複数のティース40には、超電導線材により構成される複数のコイル36が集中巻きで巻装されている。なお、複数のコイル36は、ティース40に分布巻きで巻装されることもできる。また、超電導線材は、断面形状が円形状でもよいし、あるいは、矩形状であってもよい。例えば、コイル36は、断面矩形状の平角線である超電導線材を、フラットワイズ状に巻くことで構成することもできる。例えば、コイル36は、ティース40に超電導線材をソレノイド巻きまたはパンケーキ巻きに巻くことにより構成することもできる。また、超電導線材には、例えば、イットリウム系超電導材料やビスマス系超電導材料を好適に使用できる。ただし、超電導線材を構成する超電導材料は、これらに限定されるものではなく、他の公知の超電導材料、あるいは、将来開発される、より高温で超電導特性を発現する超電導材料であってもよい。
コイル36を構成する超電導線材は、絶縁被覆されていてもよい。これにより、コイル36として密着して巻回されたときに各ターン間での電気絶縁が確保される。ただし、超電導線材が絶縁被覆されていない場合、コイル36を形成するときに絶縁紙や絶縁フィルム等を挟みながらコイル状に巻くことで各ターン間の電気絶縁が確保されてもよい。
コイル36は、ステータコアの複数個所に設けられるスロット42(図2)内に位置するスロット配置部44と、ステータコア34の軸方向両端面から軸方向外側へそれぞれ突出するコイルエンド部46とを含む。各コイル36は、2つ置きごとのコイル36と直列接続されてU,V,Wの各相コイルを構成する。各相コイルの一端は、図示しない中性点において互いに接続され、各相コイルの他端は図示しない各相電流導入端子にそれぞれ接続されている。
また、モータケース16は、ロータ20及びステータ22を収容するもので、円筒状の外周筒部48と、外周筒部48の軸方向両端部にその外周縁部が気密に結合された一対のエンドプレート28,30とを含む。外周筒部48及び各エンドプレート28,30は、例えばステンレス等の非磁性材料から構成される。なお、外周筒部48を片側のエンドプレート28(または30)と一体の部材により造ることもできる。
外周筒部48内には、それぞれ円筒状をなす内筒部材50及び中間筒部材52がロータ20と同心に設けられている。内筒部材50及び中間筒部材52の軸方向両端部は、エンドプレート28,30の内面に気密状態を保持可能に連結されている。内筒部材50は、磁界の通過を妨げず且つ非導電性である非金属材料(例えばFRP等)により造られるのが好ましい。より好ましくは、内筒部材50は、低熱伝導率材料により造る。なお、内筒部材50は、基本的機能として、磁束を通す機能と、内筒部材50を含む空間密封部分での真空を保持できる機能とを有するものであればよく、非導電性材料を使用するものに限定されない。例えば、内筒部材50を構成する材料として、非磁性の低電気伝導率を有する材料(例えばステンレス)等も使用可能である。一方、中間筒部材52は、低熱伝導率材料(例えばFRP等)で造られるのが好ましく、低熱伝導率の非磁性材料で造られるのがより好ましい。
内筒部材50は、ロータ20の最外接円の直径よりも若干大きい内径を有し、ロータ20の外周面との間に隙間が形成されている。また、内筒部材50と中間筒部材52との間には、筒状空間である第1真空室54が設けられている。第1真空室54内には、コイル36を含むステータ22が収容されている。ステータ22を構成するステータコア34の外周面は、中間筒部材52の内周面に固定されている。
第1真空室54は、後で詳しく説明する冷凍機14を含めて超電導モータ10が組み立てられた後に、エンドプレート28,30もしくは外周筒部48等の第1真空室54及び第2真空室56の一方または両方と外側空間とに接する部材の少なくとも何れかに形成された図示しない空気抜き穴から真空引きされて、真空状態に維持される。このように、コイル36及びステータ22と接触しない内筒部材50及び熱伝導率が低い中間筒部材52で区画形成し、かつ、内部を真空とすることで、第1真空室54内に収容されたコイル36を含むステータ22への断熱性を高めることができる。
さらに、中間筒部材52とモータケース16との間には、筒状空間からなる第2真空室56が形成されている。第2真空室56もまた、第1真空室54と同様に真空状態になっている。中間筒部材52には、第1真空室54と第2真空室56とを連通する穴を設けることが好ましい。これにより、第1真空室54内に収容されたコイル36を含むステータ22が第2真空室56によってもモータ外部と隔てられることで、コイル36を含むステータ22に対する断熱効果をより一層高めることができる。
また、超電導モータ10を構成するモータ本体12に、冷凍機14が固定されている。次に、図3、図4を用いて、冷凍機14の基本構成を説明する。図3は、本実施の形態で使用する冷凍機14の基本構成を、細管66をすべて直線状にした状態で示す図であり、図4は、図3のB−B断面図である。冷凍機14は、複数の冷媒ガス流通用の細管66を有する、フリーピストン式のスターリングクーラ型(FPSC型)としている。すなわち、冷凍機14は、一端側に設けられた冷凍機駆動源である圧力振動源58と、圧力振動源58に一端部が固定されるコールドヘッドと呼ばれる蓄冷器68と、他端側に設けられた位相制御器62と、位相制御器62に一端部が固定される第2ピストン収容部70と、蓄冷器68と第2ピストン収容部70との間に接続された複数の冷却部であり、伝熱性の良好な材料からなる複数の細管66とを含む。蓄冷器68は、内部に図示しない蓄冷材が設けられている。また、蓄冷器68及び第2ピストン収容部70は、外部を断熱材により覆われた断熱構造である。
冷凍機14は、圧力振動源58に設けられたシリンダ72内で直線的に往復移動する駆動ピストンである第1ピストン74を有し、このシリンダ72内の空間が蓄冷器68の内側を介して複数の細管66内に通じている。また、冷凍機14は、第2ピストン収容部70に設けたシリンダ76内でも直線的に往復移動する膨張ピストンまたは従動ピストンと呼ばれる第2ピストン78を有し、このシリンダ76内の空間が低温側熱交換部である複数の細管66内に通じている。複数の細管66を含む、第1ピストン74と第2ピストン78との間の内部空間に冷媒である冷媒ガス(例えば、Heガス)が封入されている。すなわち、各細管66は、内側に低温の冷媒ガスが流れるように構成されている。
また、圧力振動源58及び第2ピストン収容部70は、各ピストン74,78の移動方向が同一直線上となるように対向配置されている。第1ピストン74は、例えば圧力振動源58を構成する図示しないリニアモータ等の可動子と接続されており、リニアモータにより、第1ピストン74をシリンダ72内で往復駆動させる。第1ピストン74の往復駆動に伴って、圧力振動源58のシリンダ72内で冷媒ガスが圧力変動し、この圧力変動により、位相制御器62の内部に図示しないコイルスプリングもしくは板ばね等で構成されたバネによって懸架された第2ピストン78も従属的に往復移動する。この図示しないバネと第2ピストン78の重量と、第1ピストン74の往復移動による圧力変動によって、冷媒ガスの圧力変動と位置変動の位相差を調整することができる。また、位相制御器62の内部に、第2ピストン78の往復移動により生じる圧力変動を緩和する空間部を設けることにより、第2ピストン78を配置するシリンダ76内と連通して、冷媒ガスの圧力変動と位置変動の位相差を調整することができる。
第1ピストン74の往復移動に伴って、第2ピストン収容部70の細管66端部近傍で冷媒ガスが断熱膨張して冷却されるので、各細管66内部を流れる冷媒ガスも冷却される。このように、第1ピストン74と第2ピストン78との間で冷媒ガスの圧縮及び膨張が繰り返されることで、冷媒ガスが流れる各細管66が冷却される。
冷凍機14は、超電導線材からなるコイル36が超電導特性を発現する所望の極低温(例えば、約70K)まで冷却可能な冷却性能を有し、第1ピストン74のストロークを制御することによって冷却温度を調節できる。このために、図示しない制御部により、第1ピストン74のストロークが制御される。制御部は、超電導モータ10(図1)の負荷に応じて冷凍機14の冷却温度を制御するように構成することもできる。例えば、超電導モータ10の負荷の上昇に伴って冷却温度を低下させることもできる。超電導モータ10が電気自動車等の電動車両に走行用動力源として搭載される場合、設置スペースの制約や車両重量の軽量化のため冷凍機14は小型で軽量のものであることが好ましい。上記のように冷凍機14に、FPSC型を使用する場合、小型化及び軽量化を図れる。
本実施の形態では、このような基本構成を有する冷凍機14を、モータ本体12(図1)に固定している。すなわち、図1に示すように、超電導モータ10において、軸方向片側(図1の右側)に位置するエンドプレート28の周方向一部(図1の上部)には、冷凍機14を構成する圧力振動源58側の筒状の第1ブラケット60が固定され、片側のエンドプレート28において、圧力振動源58とは回転軸18の直径方向に関して反対側(図1の下側)には、冷凍機14を構成する位相制御器62側の筒状の第2ブラケット64が固定されている。また、蓄冷器68の一端部及び第2ピストン収容部70の一端部は、それぞれ第1ブラケット60または第2ブラケット64の内側を介して第1真空室54内に突出している。
また、図2に示すように、低温側熱交換部である複数の細管66は、それぞれ長さ方向中間部の2個所に設けられた第1コア貫通部92及び第2コア貫通部94を有する。複数のコア貫通部92,94は、ステータコア34を構成するバックヨーク38の周方向複数個所(図示の例の場合は8個所)で、一部のティース40を除いて、ティース40の周方向中央部と周方向に関して同位置を軸方向に貫通するように設けられている。
このような各細管66からは、寒冷がステータコア34の内部からコイル36に伝達され、コイル36を冷却する。このように複数の細管66のそれぞれは、中間部がステータコア34の周方向複数個所を貫通するように配置される構成とするので、複数の細管66の一部または全部は、中間部が略ゲート形、クランク形等に曲げ形成されている。すなわち、複数の細管66は、それぞれバックヨーク38の周方向一部を貫通する第1コア貫通部92を有する第1直線部96と、ステータコア34において、この周方向一部に対しステータコア34の直径方向の略反対側等、周方向の異なる位置を貫通する第2コア貫通部94を有する第2直線部98と、第1、第2両直線部96,98を、それぞれの内部を互いに通じさせるように連結する連結部100とを有する。例えば、各細管66の少なくともコア貫通部92,94を含む部分は、磁性材製とする。このように磁性材によりコア貫通部92,94を構成した場合でも、超電導モータ10の使用時にステータコア34内を通過する磁束の磁路に影響を与えにくい位置にコア貫通部92,94が配置されているので、モータ性能に及ぼす影響を小さくできる。このため、本実施の形態では、ステータコア34に設けられた軸方向に貫通する各貫通孔にそれぞれ1本の細管66のコア貫通部92(または94)が貫通するように挿入されている。また、各貫通孔とコア貫通部92(または94)とが熱接触している。すなわち、各貫通孔にコア貫通部92(または94)が接触状態で挿入されているか、またはコア貫通部92(または94)が伝熱材料を介して接触している。
また、複数の貫通部92,94は、細管66同士で、ステータコア34の周方向の異なる位置に設けられている。このため、細管66の数は、貫通部92,94の総数の1/2となっている。また、貫通部92,94の長さは、すべての貫通部92,94で同一となっている。すなわち、冷凍機14を構成し、ステータコア34を貫通する複数の細管66の貫通部92,94の長さは、複数の細管66のすべてで同一となっている。なお、図1では、1の細管66を構成する第1直線部96に設けられた第1コア貫通部92を斜格子で表している。
上記のように、圧力振動源58及び第2ピストン収容部70は、モータ本体12に関して軸方向片側に配置されている。ただし、本実施の形態は、このような構成に限定するものではなく、後述する図11に示すように、圧力振動源58及び第2ピストン収容部70は、一対のエンドプレート28,30の外側、すなわちモータ本体12の両側に、同一直線上や、直径方向反対側等、周方向の異なる位置に設けることもできる。例えば、圧力振動源58及び第2ピストン収容部70は、モータ本体12に関して軸方向両側に、直径方向反対側、すなわち回転軸18に関して軸対称な位置等、互いに周方向の異なる位置に設けることもできる。
このような構成では、複数の細管66により低温側熱交換部が構成されている。また、第2ピストン収容部70のモータケース16の外側に配置される端部により、高温側熱交換部が構成される。このような冷凍機14は、圧力振動源58と、高温側熱交換部と、蓄冷器68と、低温側熱交換部と、第2ピストン78(図3)とを備える。
このような超電導モータ10によれば、冷凍機14に設けられ、内側に低温の冷媒ガスが流れる細管66が、ステータコア34を貫通するように設けられたコア貫通部92,94を有する。このため、細管66が、コイル36に熱接触するように構成されている。したがって、冷凍機の寒冷を伝達する熱伝導材がステータコアの超電導コイルの反対側の端部に接触して、超電導コイルを冷却する構成の場合と異なり、本実施の形態によれば、熱伝導材である細管66をコイル36に近づけて、コイル36を所望の極低温に効率よく冷却することができる。これとともに、大きな熱容量を有するステータコア34を熱伝達時のバッファとして機能させることで、高負荷時や過渡的なモータ動作状態でも、コイル36の温度上昇に対して細管66による冷却が追従できなくなることを有効に防止して、コイル36を安定して冷却し続けることができる。したがって、安定した超電導状態を有効に作り出すことができる。さらに、ステータコアの超電導コイル側に熱伝導材を配置して、超電導コイルを冷却する構成の場合と異なり、熱伝導材である細管66の設置位置の自由度及び取付性の向上を図れる。なお、本明細書全体で「熱接触」とは、互いに伝熱する部材を直接に接触させる他、熱伝導性のある部材を介して接触させる場合も含む。さらに、本実施の形態によれば、各細管66の長さを略同一にすることができるので、冷凍性能を向上できる。すなわち、冷凍機14の性能は、低温部熱交換器及びピストン配置空間での圧力変動と作動ガスである冷媒ガスの位置の変動が適切な位相角で保たれている必要がある。細管1本の間での位相角の変化量、すなわち細管内で変化する位相角の変化量が最適化されていたと仮定すると、他の長さでは最適値からずれることになる。このため、すべての細管の長さを略同一にすることで、すべての細管において最適値に近い位相角を得ることができ、冷凍性能を向上できる。例えば、本実施の形態では、第1コア貫通部92と第2コア貫通部94との組み合わせによって、各細管66の長さを略同一としている。このため、冷凍性能を向上できる。
また、各細管66は、ステータコア34内において、ステータ22の軸方向に延設するコア貫通部92,94を有する。一般的に、超電導コイルでは、通常の常温で使用する電動モータのコイルを構成する銅線に比べて極端に熱伝導性が悪いため、均一に冷却することが難しい。これに対して、上記の構成を有する本実施の形態によれば、例えばコイル36において、コイルエンド部46だけを冷却する構成の場合と異なり、コイル36のスロット配置部44も効率よく冷却できて、超電導コイルであるコイル36の全体をより均一に冷却しやすくなる。すなわち、コイル36全体の温度分布の偏りを少なくしつつコイル36を冷却できる。
また、本実施の形態では、図2に示すように、各ティース40の周囲でコイル36と対向する部分に電気絶縁性を有するインシュレータ102が、それぞれ設けられている。各コイル36は、インシュレータ102を介してティース40に熱接触させている。この場合に、各インシュレータ102の厚さを極力薄くしたり、シリカ、アルミナ、熱伝導性のよい非磁性材料等のフィラーが含有された樹脂等の、熱伝導性の良好な材料により構成することもできる。これによれば、コイル36に対する冷却性をより向上できる。なお、図示の例では、ティース40が9つと奇数であるため、複数のコア貫通部92,94のすべては、バックヨーク38の周方向等間隔位置に設けられていない。ただし、ティース40の数を偶数とし、バックヨーク38において、ティース40と周方向に関して同位置に細管66のコア貫通部92,94を設ける等により、ステータコア34の周方向等間隔複数個所にコア貫通部を設けることもできる。なお、本実施の形態ではティース40の周囲にインシュレータ102が設けられているが、超電導コイルであるコイル36が絶縁被覆され、コイル36とティース40との接触性を確保できるのであれば、後述する図6のようにインシュレータを省略することもできる。また、本実施の形態で、コイル36とインシュレータ102とを接触させるとともにインシュレータ102とティース40とを接触させ、互いの接触性を確保するのは伝熱性を確保するためであるので、インシュレータ102を省略し、その代わりにフィラー入りのエポキシ樹脂接着剤等の伝熱部材を使用することもできる。
図5は、本発明から外れた比較例の超電導モータを示す、軸方向に沿った断面図である。図6は、図5のC−C断面図である。図5、図6に示す比較例の超電導モータ10は、上記の本実施の形態の構造において、冷凍機14(図1等)の代わりに、一対の冷凍機82をモータ本体12の両側に設けたような構造を有する。すなわち、各冷凍機82は、上記の冷凍機14と異なり、冷媒を流すための細管が設けられていないFPSC型であり、圧力振動源であるガス圧縮機84と、ガス圧縮機84に接続された冷却部である蓄冷器86とをそれぞれ有する。また、蓄冷器86は、エンドプレート28に固定された筒状のブラケット88の内側を通じて先端部が円板状の伝熱部材90に接触している。各伝熱部材90の片面はコイルエンド部46の軸方向外端部に接触している。
冷凍機82は、ガス圧縮機84の内部に設けられた図示しないシリンダ内でピストン(図示せず)が往復移動して冷媒ガスの圧縮及び膨張を繰り返し行うことで、蓄冷器86及び伝熱部材90を介して各コイル36を冷却する。このような構成でも、コイル36を冷却することが可能であるが、コイル36の全体を均一に冷却しやすくする面からは改良の余地がある。また、伝熱部材90は、内部に冷媒を流す細管を用いる構成と異なり、固体のみで冷却対象に伝熱するものであり、複数のコイル36を均一に冷却する面からは改良の余地がある。上記の本実施の形態によれば、このような改良すべき点をいずれも改良できる。
なお、上記では、冷凍機14として、第2ピストン78が第1ピストン74の変位にしたがって、従属的に変位するパッシブ型の冷凍機14を説明した。ただし、冷凍機として、第1ピストン74が往復変位する場合に、その往復変位の1サイクルの位相の90〜120度程度ずらせた位相で第2ピストン78が変位するように、第2ピストン78側を強制的に変位させるリニアモータ等の第2駆動源を位相制御器62側に設けることもできる。この場合には、アクティブ型の冷凍機が構成され、さらなる省エネルギ化を図れる。
また、冷凍機14として、FPSC型以外の冷凍機を使用することもできる。例えば、冷凍機の設置スペース及び重量の制約が緩い場合、例えば、超電導モータ10が電車や船舶等の大型の移動体の動力源として、あるいは、設置位置が固定された機械の動力源として用いられる場合には、上記のように複数の細管を有し、極低温(例えば、約70K)まで冷却可能な冷却性能を有する冷凍機であれば、体格が大きくて重い冷凍機を用いることもできる。
また、冷凍機として、それぞれ細管を有する、スターリング型パルス管冷凍機や、GM冷凍機等を使用することもできる。例えばパルス管冷凍機では、上記の第2ピストン収容部70の代わりに細管66と位相制御器62との間に接続されたパルス管を使用する。パルス管の内部にはピストンは設けない。このパルス管冷凍機において、圧力振動源58として、バルブ開閉の切換により圧力を振動させる構造を用いることもできる。また、GM冷凍機として、上記のFPSC型の冷凍機で、圧力振動源58として、回転型の圧縮機や、バルブ開閉の切換により圧力を振動させる構造を用いることもできる。また、この構造では、位相制御器62を省略して、細管66の圧力振動源58とは反対側の端部に接続された膨張圧縮部において膨張ピストンとしてディスプレーサを往復移動可能に設ける。ディスプレーサは、例えば冷凍機の作動中に、ステッピングモータ等のモータにより往復移動されるようにする。このように本発明では、冷凍機として内部に冷媒が流れる細管を有するものであれば、種々の種類の冷凍機を使用することができる。
[第2の実施の形態]
図7は、本発明の第2の実施の形態の超電導モータを示す、軸方向に沿った断面図である。図8は、図7のD−D断面図である。
本実施の形態の超電導モータ10の場合、上記の第1の実施の形態において、複数の細管66は、直線部96,98(図1等参照)の代わりに、クランク形に曲げ形成されているクランク形部を有する。すなわち、複数の細管66は、それぞれ長さ方向中間部の2個所に設けられた第1コア貫通部104及び第2コア貫通部106を有する。各コア貫通部104,106は、ステータコア34に設けられた複数のティース40のうち、一部のティース40を除く複数のティース40の周方向略中央部で、径方向略中央部を軸方向に貫通するように設けられている。
すなわち、複数の細管66は、それぞれ周方向一部のティース40を軸方向に貫通する第1コア貫通部104を有する第1クランク形部108と、このティース40に対しステータ22の直径径方向の略反対側等、周方向の異なる位置に設けられた別のティース40を軸方向に貫通する第2コア貫通部106を有する第2クランク形部110と、第1、第2両クランク形部108,110を、それぞれの内部を互いに通じさせるように連結する連結部112(図7)とを有する。各クランク形部108,110は、コア貫通部104,106を含む直線部の両端から径方向外側に伸びる径方向部と、径方向部の径方向外端と連結部112との間、または径方向部の径方向外端と蓄冷器68または第2ピストン収容部70との間に連結され、軸方向に伸びる軸方向部とを有する。また、複数のコア貫通部104,106は、細管66同士で、周方向の異なる位置のティース40を貫通するように設けられている。このため、細管66の数は、ティース40の総数の1/2となっている。また、本実施の形態では、ステータコア34に設けられた軸方向に貫通する各貫通孔にそれぞれ1本の細管66のコア貫通部104(または106)が貫通するように挿入されている。また、各貫通孔とコア貫通部104(または106)とが熱接触している。すなわち、各貫通孔にコア貫通部104(または106)が接触状態で挿入されているか、またはコア貫通部104(または106)が伝熱材料を介して接触している。なお、図7では、1の細管66を構成する第1クランク形部108に設けられた第1コア貫通部104を斜格子で表している。例えば、各細管66の少なくともコア貫通部104,106を含む部分は、非磁性材製とする。本実施の形態では、コア貫通部104,106は、超電導モータ10の使用時にステータコア34内を通過する磁束の磁路に対して影響を与えやすい位置に配置されている。ただし、上記のように非磁性材によりコア貫通部104,106を構成すれば、コア貫通部104,106の配置位置にかかわらず、モータ性能が過度に低下することを有効に防止できる。
このような本実施の形態の場合も、超電導線材からなるコイル36を所望の極低温に効率よく冷却するとともに、高負荷時や過渡的なモータ動作状態でも、安定した超電導状態を有効に作り出すことができ、さらに、熱伝導材である細管66の設置位置の自由度及び取付性の向上を図れる。また、本実施の形態の場合も、第1コア貫通部104と第2コア貫通部106との組み合わせによって、各細管66の長さを略同一にすることができるので、冷凍性能を向上できる。なお、図7に示す例では、各クランク形部108,110のステータコア34の軸方向両端から突出した部分を、コイルエンド部46の内側にコイル36に対し接触しないように配置している。ただし、コイルエンド部46にクランク形部108,110を接触させてコイル36に対する冷却性をより向上させることもできる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
図9は、本発明の第3の実施の形態の超電導モータを示す、軸方向に沿った断面図である。図10は、図9のE−E断面図である。
本実施の形態の超電導モータ10は、上記の図7から図8に示した第2の実施の形態と、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態とを組み合わせたような構成を有する。すなわち、上記の第2の実施の形態において、冷凍機14は、それぞれ内側に低温の冷媒ガスを流す第1細管114及び第2細管116を有する。第1細管114及び第2細管116は、それぞれ複数ずつが設けられている。このうちの各第1細管114は、上記の第1の実施の形態を構成する細管66(図1、図2)と同様の構成を有し、バックヨーク38(図10)の直径方向の略反対側位置等、周方向の異なる2個所位置を軸方向に貫通するように設けられた2つの第1コア貫通部118を有する。各第1コア貫通部118は、バックヨーク38の周方向に関して、一部を除く複数のスロット42の周方向中央部と同位置に設けられている。
また、各第2細管116は、上記の第2の実施の形態を構成する細管66(図7、図8)と同様の構成を有し、ステータコア34の直径方向の略反対側位置等、周方向の異なる2個所位置に設けられた2つのティース40を軸方向に貫通するように設けられた2つの第2コア貫通部120を有する。第1コア貫通部118は直線部122の中間部に設けられており、第2コア貫通部120は、クランク形部124の中間部に設けられている。
また、細管に設けられたコア貫通部の配置位置に応じてコア貫通部を構成する材料を異ならせている。すなわち、各第1細管114の少なくとも第1コア貫通部118を含む部分は、磁性材製とするとともに、各第2細管116の少なくとも第2コア貫通部120を含む部分は、非磁性材製としている。このようなステータコア34の複数個所に細管114,116を貫通して設ける場合、ティース40に設けられたコア貫通部120が磁性材製であると、超電導モータ10の使用時にステータコア34内を通過する磁束に対しコア貫通部120が影響を与えて、モータ性能を低下させる可能性がないとはいえない。これに対して、上記のようにティース40に配置する第2コア貫通部120を含む部分を非磁性材製とする場合には、第2コア貫通部120によりモータ性能が過度に低下することを有効に防止できる。ただし、本実施の形態では、細管に設けられたコア貫通部の配置位置に応じてコア貫通部を構成する材料を異ならせる構成に限定するものではなく、すべてのコア貫通部を含む部分を同一の材料により構成することもできる。
このような本実施の形態の場合には、上記の各実施の形態よりもコイル36に対する冷却性をより向上できる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態、または、図7から図8に示した第2の実施の形態と同様である。例えば、本実施の形態の場合には、それぞれ2つの第1コア貫通部118の組み合わせを有する各第1細管114と、それぞれ2つの第2コア貫通部120の組み合わせを有する各第2細管116とによって、各細管114,116の長さを略同一にすることができるので、冷凍性能を向上できる。なお、本実施の形態では、バックヨーク38を貫通する細管114と、ティース40を貫通する細管116とが別々に設けられている。ただし、1本の細管がバックヨーク38を貫通する貫通部と、ティース40を貫通する貫通部との両方を有するようにすることもできる。この場合には、複数の細管の長さを同一にする、またはより同一の長さに近づけることができる。
[第4の実施の形態]
図11は、本発明の第4の実施の形態の超電導モータを示す、軸方向に沿った断面図である。本実施の形態では、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態において、冷凍機14を構成する圧力振動源58及び第2ピストン収容部70を、モータ本体12に関して軸方向両側に配置している。すなわち、圧力振動源58及び第2ピストン収容部70は、一対のエンドプレート28,30のそれぞれの外側、すなわちモータ本体12の両側に、回転軸18の回転中心軸Xと平行な同一直線上に設けている。また、各細管66の中間部は、ステータコア34のバックヨーク38の周方向の異なる複数個所を軸方向に貫通するコア貫通部126をそれぞれ有する。これに伴って、複数の細管66の一部または全部の中間部は、略クランク形等に曲げ形成している。このように本発明では、冷凍機14を構成する圧力振動源58及び第2ピストン収容部70の配置関係を種々に異ならせることができる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図4に示した第1の実施の形態と同様である。
なお、上記の各実施の形態では、ステータがロータの径方向外側に対向配置されたインナーロータの構造に本発明を適用した場合を説明した。ただし、本発明は、これに限定するものではなく、ステータがロータの径方向内側に対向配置されたアウターロータの構造に本発明を適用することもできる。この場合、超電導コイルは、ステータコアの径方向一端部である外周端部に巻装される。