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JP5488254B2 - 燃料電池用親水性多孔質層、ガス拡散電極およびその製造方法、ならびに膜電極接合体 - Google Patents

燃料電池用親水性多孔質層、ガス拡散電極およびその製造方法、ならびに膜電極接合体 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池用親水性多孔質層、ガス拡散電極およびその製造方法、ならびに膜電極接合体に関する。
固体高分子型燃料電池(PEFC)は、電解質の散逸がなく、電極間の差圧制御が容易で、作動温度が低く短時間で起動でき、小型・軽量化が可能とする特徴を有する。しかしながら、電解質である膜が高いイオン伝導性を維持するためには、常に加湿されている必要がある。また、固体高分子型燃料電池(PEFC)は、以下の化学式1のように電極反応が行われる。
上記反応のように、固体高分子型燃料電池セルのアノード側に水素、カソード側に酸素を供給することにより電気エネルギーを外部に取り出している。そのため、カソード側で生成される生成水が過剰になるとフラッディング現象が生じ、ガスの拡散を抑制することに起因する電圧低下を招く。そこで、固体高分子型燃料電池(PEFC)では、膜の加湿とともにカソード側で生成される生成水および膜内を移動する水を含めた総合的な水制御が電池性能および寿命にとって極めて重要な課題である。
また、例えば、固体高分子型燃料電池を零下から起動させる場合、予め燃料電池内部から水分を除去しておくような総合的な水制御が必要である。なぜなら、零下雰囲気では、燃料電池内部に残留した水が凍ってしまい、反応ガスの拡散を妨げ、発電不能に陥ってしまうからである。
かかる総合的な水制御の重要な課題を解決するために、例えば特許文献1が挙げられる。当該特許文献1では、外部から供給されるガスを触媒反応させる電極触媒層と、外部から供給されるガスを均一に拡散させるガス拡散層との間に、水の保持性を高める保水層および水の排出性を高める撥水層を設けている。当該保水層および当該電極触媒層の両者には結晶性炭素繊維を含有し、さらに当該保水層には保水性物質および電子導電性物質を含んだ固体高分子型燃料電池用の電極が開示されている。これにより、燃料電池へ供給する反応ガスの加湿条件にかかわらず保水層が設けられているため湿度の変動を受け難い安定した高い発電性能を示すことが当該特許文献1に記載されている。
特許第3778506号明細書
特許文献1の発明における高電流密度においてアノード側への水(水蒸気、液水)の輸送性向上を考えた場合、本来であれば、液水と水蒸気との双方の輸送性を確保した親水性多孔質層が必要である。しかしながら、前記特許文献1の発明では結晶性炭素繊維などの撥水性材料を含ませているために液水の輸送性が悪化し、結果として水輸送性が促進されない。さらに、前記特許文献1の発明のように、基材、撥水層、および保水層の構造だと、撥水層の存在により、液水の輸送パスがなくなるために水輸送性が悪化するという問題がある。
そこで、上記問題を解決するために、特に低温条件下において水の輸送を促進し、ガス輸送性向上を図れるMEA構成要素とその製造方法を提供する。具体的には、電解質と導電性材料からなる層で、電解質の導電性材料に対する被覆状態、およびその層の構造を規定した燃料電池用親水性多孔質層とその製造方法を提供する。これにより、蒸発面積が確保され、低温起動時(特に氷点下)などに見られる、液水の影響による電圧低下の抑制を図ることを目的とする。
上記課題に鑑み鋭意検討した結果、蒸発面積を確保することで電解質における液水の蒸発を促進させ、ガスの輸送性を向上させる親水性多孔質層によって上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
本発明に係る親水性多孔質層により、蒸発面積が確保され、低温起動時、特に氷点下などにみられる、液水の影響による電圧低下の抑制を図ることができる。
膜電極接合体の構造を示す図である。 本発明の親水性多孔質層を示す模式図である。 本発明に係る親水性多孔質層における相対湿度と電気二重層容量との関係を示す図である。 本発明に係る導電性材料の表面に親水性材料が被覆した状態を示す模式図である。 本発明に係る親水性材料と導電性材料との質量比と、親水性材料の被覆率との関係を示す模式図である。 本発明に係る親水性材料と導電性材料との質量比と、親水性材料の被覆率との関係を示す図である。 本発明に係る親水性多孔質層における水の活量と水の輸送抵抗(Rwater)との関係を示す図である。 種々の導電性材料を用いた場合の、相対湿度と電気二重層容量との関係を示す図である。 本発明に係る溶媒種による親水性多孔質層の空孔径の分布の差を示す図である。 本発明の実施例におけるサンプルAの親水性多孔質層における水銀圧入法により空孔分布を測定した結果を示す図である。 本発明の実施例におけるサンプルAの親水性多孔質層用インクの2次粒子の粒径とその分布とを示す図である。 本発明の実施例におけるサンプルAで用いられるカーボン粉末を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した写真である。 本発明の膜電極接合体を含むPEFCを示す断面模式図である。 実施例のガス拡散層を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察した結果(A)と、EPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いて解析した結果(B)とを示す図である。
一般に固体高分子型燃料電池の構成は、図1に示すように、電解質膜電極接合体1(膜電極接合体とも称する)を、ガス拡散層13(アノードガス拡散層およびカソードガス拡散層)さらにはセパレータで挟持した構造となっている。当該電解質膜電極接合体は、電解質膜の一方の面に、カソードとして、触媒層(カソード触媒層またはカソード触媒電極とも称する)が接合され、他方の面にアノードとして、触媒層(アノード触媒層またはアノード触媒電極とも称する)が接合されている。また、触媒層およびガス拡散層を拡散電極層と称し、カソード側であればカソード拡散電極層、アノード側であればアノード拡散電極層と称される。当該ガス拡散層は、ミクロポア層とマクロポア層(基材)とを有してもよい。なお、本明細書における固体高分子型燃料電池の構成部に使用される用語と上記各用語とは同一の定義である。
図1に示すように、カソード側で生成された生成水(主に液水)は、2つのルートで輸送または排出されると考えられている。1つ目のルートは、カソードミクロポア層14cおよび(カソード)マクロポア層(カソード基材)15cの内部空孔を通って、液水または水蒸気としてカソードガス流路17に排出されるルートである。2つ目のルートは、電解質膜を介してアノード側へ輸送され、アノード触媒層12aで保持された一部の生成水を除き、アノードミクロポア層14aおよび(アノード)マクロポア層(アノード基材)15aの内部空孔を通って、液水または水蒸気としてアノードガス流路18に排出されるルートである。また、アノードまたはカソード触媒層やミクロポア層内部の生成水の輸送は、水蒸気による空孔中の輸送、液水による電解質中の輸送、および電解質中の液水の蒸発による空孔中の輸送が主に考えられている。そのため、カソード側で生成された生成水は、カソードガス流路まで短いためアノード側への輸送に比べて水は排出されやすい。しかし、乾燥/湿潤状態や、常温/零下など様々な運転環境変化において、高い膜電極接合体(MEA)電圧を維持できるといった観点で、カソードガス拡散電極の仕様のみでは、十分にカソード側からアノード側への水の輸送を制御できないと考えられる。したがって、膜の加湿とともにカソード側で生成される生成水および膜内を移動する水を含めた総合的な水制御という重要な課題を解決する方法の1つとして、アノード側への水の輸送を促進させることが必要である。
本発明の第一の実施形態は、親水性材料および導電性材料が密着し、かつ前記親水性材料を相互に連通させて連続的な水(液水)の輸送経路を前記親水性材料内に形成された導電性材料−親水性材料集合体を有し、前記導電性材料−親水性材料集合体相互間に水蒸気の輸送経路を形成した層である。−40℃(想定される最低温度)において、前記水の輸送経路における水の輸送抵抗Rwaterが、前記水蒸気の輸送経路における水蒸気の輸送抵抗Rgasより大きいことを特徴とする、親水性多孔質層である。
例えば、当該親水性多孔質層を燃料電池に設けた場合、上記の説明のように、燃料電池触媒層内を輸送する水は、水蒸気として気相を輸送される形態と、液水として液相を輸送される形態がある。通常、常温下では気相における輸送が支配的であるが、低温条件下、特に零下時においては、液相における輸送も大きく寄与すると考えられる。しかし、通常の燃料電池では、液相としての輸送経路が十分確保されておらず、系全体における水の輸送を妨げる場合がある。本発明のような親水性多孔質層を触媒層やガス拡散電極として設けることにより、低温条件下における、水の輸送性を向上させることができる(液相輸送経路の連続性を確保できる)。
すなわち、図2に示すように、親水性材料21と導電性材料25とが混合または密着して、親水性材料21同士が連通や一体化により連続的な水(液水)の通り道である輸送経路(連通した水の輸送経路)22が親水性材料21の内部に形成される。また、親水性材料21と導電性材料25とが密着した親水性材料−導電性材料集合体20も形成される。さらに、当該親水性材料−導電性材料集合体20が複数集合する際に、当該親水性材料−導電性材料集合体20相互の立体的な構造から空孔が形成され、当該親水性材料−導電性材料集合体20相互間に水蒸気の輸送経路23が形成されると考えられる。そのため、液相の輸送抵抗を気相の輸送抵抗より高い構造にすると、親水性材料内部の輸送経路22を移動する液水が長持間外気にふれることができる。したがって、本発明に係る親水性多孔質層内において、例えば、図2の液水から水蒸気のルート24のように液水を速やかに気化させて、気相において輸送させることができる。その結果、系全体における水輸送性を向上させることができると考えられる。
なお、図2では、導電性材料の表面に触媒成分を担持したものを図示しているが、導電性材料単体でも、また導電性材料の表面に触媒成分を担持したものと混合したものを使用してもよい。
さらに、零下条件では、液相から気相への移動が起きにくいため、液相から気相への移動が律速となる。また、同時に、温度域により、液相(液水)の輸送と気相(水蒸気)の輸送とが逆転する。したがって、零下起動時においては、特に律速である気相の水の輸送を促進させることによって、全体として水(液水+水蒸気)の輸送を高めることができ、生成水の凍結を抑制することができる。
本明細書における水の輸送抵抗Rwaterおよび水蒸気の輸送抵抗Rgasは、以下の拡散式から定義することができる。
(水蒸気の輸送抵抗 Rgas
また、拡散係数Deff gasは、ある径の空孔中における水蒸気の輸送について、分子拡散とKnudsen拡散を考慮すると、これらが混在する環境下の拡散係数は以下のように決定される。
さらに、本発明に係る親水性多孔質層内においては、種々の径の空孔が連通していることを考慮し、各ポア(空孔)の拡散係数をDtiとし、各ポア径をrとして総括拡散係数を求めることができる。
さらに、有効拡散係数Deff gasは、以下のように定義した。
(水の輸送抵抗 Rwater
気相における輸送抵抗と比較するため、活量差を駆動力として輸送される条件で算出する必要がある。例えば、Nafion(登録商標)のような材料を親水性材料として用いた場合、単位スルホン酸基量における含水量(λ)勾配を駆動力とした拡散係数が計測される。これを用いるためには、下記のような変換が必要である。
また、本発明に係る親水性多孔質層内における液水の有効拡散係数は、親水性材料バルクにおける水の拡散係数(Dwater)と、本発明に係る親水性多孔質層内における親水性材料の体積分率から、以下のように表される。
また、本発明において、連続的な水(液水)の通り道である輸送経路(連通した水の輸送経路)を形成しているか否かは相対湿度と電気二重層容量と関係を測定することで確認している。例えば、図3は、本発明に係る親水性多孔質層における相対湿度と電気二重層容量との関係を示す実験結果である。図3に示すように、電気二重層容量と相対湿度の関係が、実線のように相対湿度の変化により電気二重層容量の変化が一定である場合、導電性材料とイオン伝導性を有する親水性材料との界面のみから電気二重層容量が形成されていると考えられる。そのため、水(液水)の輸送経路は連続しているとみなせる。
また、電気二重層容量と相対湿度の関係が、図3の一点鎖線のようであった場合、高加湿条件下では、導電性材料および導電性材料表面に吸着した水、または親水性材料との界面に形成された電気二重層が計測される。一方で、低加湿条件下では、親水性材料と導電性材料との界面のみが寄与する。一方、親水性材料による水(液水)の輸送経路が連通していない場合、図3の破線のように相対湿度の低下に伴いイオン伝導経路が切断される。このことにより、電気二重層が形成されなくなる。
以上のことから、本発明では、相対湿度40%と30%との電気二重層容量を比較して、その変化率が10%以内であるものを、連続的な水(液水)の通り道である輸送経路(連通した水の輸送経路)を形成しているものとみなしている。
本発明に係る親水性多孔質層の厚さは、特に制限されるものではないが、本発明に係る親水性多孔質層の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは2〜40μm、より好ましくは2〜25μmとするのがよい。親水性多孔質層の厚さが上記範囲内であれば、水の輸送性とガス拡散性との両立を確保することができるため好ましい。
本発明に係る親水性多孔質層の全体の空孔率は、特に制限されるものではないが、30〜80%であることが好ましく、40〜70%であることがより好ましい。空孔率が上記範囲内であれば、水の輸送性およびガス拡散性が確保できるため好ましい。空孔率は、水銀圧入法による細孔分布測定などにより層の内部に存在する空孔(微細孔)の体積を測定し、層の体積に対する割合として求めることができる。
本発明に係る親水性多孔質層は、親水性材料と導電性材料とを含む層であり、当該導電性材料に触媒成分を担持させてもよい。
本発明に係る親水性多孔質層における親水性材料の質量は、導電性材料100質量部に対して50〜150質量部であることが好ましく、70〜130質量部であることがより好ましい。
当該親水性多孔質層における親水性材料の質量部が、導電性材料100質量部に対して50質量部未満であると、導電性材料に対する親水性材料の比が低く、親水性材料が相互に密着して連続的な水(液水)の輸送経路を形成できない場合がある。一方、150質量部を超えると、水蒸気の輸送経路が十分確保できず、層全体の水輸送性が低下する場合がある。
また、当該親水性多孔質層は、導電性材料およびバインダー以外に、他の材料を含有していてもよい。親水性多孔質層中、導電性材料と親水性材料との含有量は60体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましい。さらに好ましくは、親水性多孔質層は、導電性材料およびイオン伝導性材料から構成される。
本発明に係る親水性多孔質層における導電性材料に触媒成分を担持し、電極触媒として用いる場合、電極触媒中、当該触媒成分の含有量は、10〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。電極触媒中、当該触媒成分の含有量が、10質量%未満であると、触媒表面積が低く、十分な発電性能が得られない場合があり、80質量%を超えると触媒粒子の凝集が顕著になり、担持量に対する触媒表面積が低下する場合がある。
以上のように、導電性材料に対する親水性材料の被覆面積を所定の範囲に規定することで、水蒸気の輸送経路および液水の輸送経路を形成することができることにより、生成水の輸送性を向上させる事ができる。したがって、本発明に係る親水性多孔質層を膜電極接合体(MEA)に適用した場合、零下における起動性を高電流密度運転で行うことができる。具体的には、零下起動時において、水の輸送性の向上により凍結を防ぎ、凍結による燃料電池の破損やガス拡散性の低下による電圧低下を抑制することができる。
以下、本発明の親水性多孔質層を構成する各成分について説明する。
(導電性材料)
本発明に係る導電性(担体)材料としては、天然黒鉛、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、フラン樹脂などの有機化合物から得られる人造黒鉛、活性炭、カーボンブラック(オイルファーネスブラック、ファーネスブラック、チャネルブラック、ケッチェンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなど)などの炭素材料や、金属(Sn、Tiなど)酸化物などが挙げられる。好ましくは、炭素材料である。より具体的には、キャボット社製バルカン(登録商標)XC−72R、バルカン(登録商標)P、ブラックパールズ(登録商標)880、ブラックパールズ(登録商標)1100、ブラックパールズ(登録商標)1300、ブラックパールズ(登録商標)2000、リーガル(登録商標)400、ケッチェンブラック・インターナショナル社製ケッチェンブラック(登録商標)EC、ケッチェンブラック(登録商標)EC600JD、三菱化学社製#3150、#3250などが挙げられ、アセチレンブラックとしては電気化学工業社製デンカブラック(登録商標)などが挙げられる。
本発明に係る導電性材料の形状は、粒子状、顆粒状、棒状、板状、不定形粒子状、繊維状、チューブ状、円錐状、メガホン状のものも用いることができる。また、これら導電性材料を後処理加工したものを用いてもよい。また、Au、Pt、Ti、Cu、Al、ステンレスなどの金属微粒子、酸化錫、インジウム錫酸化物の粒子、ポリアニリンやフラーレンなどの電子伝導性高分子を添加することもできる。
本発明に係る導電性材料の1次粒子の平均粒子径は、60nm以下であることが好ましく、5〜50nmであることがより好ましく、5〜40nmであることがさらに好ましい。
1次粒子の平均粒子径が60nm以下であると、より少量の材料で、高い表面積を確保できる。その結果、本発明の親水性多孔質層自体の厚さを薄くすることができ、系全体の輸送抵抗を減少することができる。
また、本明細書において「1次粒子」とは、導電性材料、例えば上記のカーボンブラックなどの炭素材料は、一般的に複数凝集しているが、その個々の粒子をいい、凝集体を構成する個々の粒子をいう。
なお、本明細書中において、「粒子径」とは、活物質粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
本発明に係る導電性材料は、予め表面を酸処理していることが好ましい。
酸処理を施すことで、導電性材料表面の親水性サイトが増大するため、本発明の親水性多孔質層内に保持できる水の量が増えるため、触媒層からの水の排出性が向上する。
本発明に係る導電性材料の表面を酸処理する方法としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜硝酸、亜硫酸リン酸などの無機酸、酢酸、ギ酸、弗酸などの有機酸やこれらの混酸などの公知の酸溶液に導電性材料を含浸する方法、酸水溶液をスプレーで導電性材料に吹きつける方法、などが挙げられる。
上記の酸溶液に用いられる溶媒は主に水であるが、導電性材料を分散させやすくする目的でアセトン、アルコール類などの極性有機溶媒を含んでいても良い。上記酸溶液の濃度は、酸性を示す濃度であれば特に制限されない。
上記の含浸する方法により、本発明に係る導電性材料の表面に親水性サイトを形成させる場合の含浸時間は特に限定されず酸溶液のpHや導電性材料の大きさなどに合わせて適宜選択されるものである。例えば所定の量の酸溶液に1〜48時間程度含浸させるとよい。なお、本発明に係る導電性材料を酸処理した後に、必要に応じて、熱処理、焼成、洗浄、乾燥などすることにより酸を除去してもよい。なお、この場合の熱処理、焼成の温度は、20〜300℃が好ましい。
(親水性材料)
本発明に係る親水性材料は、イオン伝導性を示し、導電性材料を結着できる材料であれば、特に限定されない。例えば、ポリアクリルアミド、水性ウレタン樹脂、シリコン樹脂等の高分子;高分子電解質等が挙げられる。好適には高分子電解質である。高分子電解質を親水性材料とすることで、同じ親水性材料やイオン伝導性材料を含むMEAの構成要素(電解質膜または触媒層)と隣接して親水性多孔質層を配置する場合に安定して配置させることができ、触媒層や膜と、導電性材料との間の水輸送抵抗を低減することができる。この結果、電解質膜または触媒層と、導電性材料との間の水輸送性が向上し、より早い時間で平衡に達することができる。親水性材料が高分子電解質である場合は、当該電解質は、触媒層や電解質膜中に使用される高分子電解質と同じであってもよいし、異なってもよい。さらに、親水性多孔質層を含むMEAを作製する場合、材料を共通化することもでき、作製時の省力化が図れる。
本発明において好適に用いられる親水性材料は特に限定されるものではない。具体的には、ポリマー骨格の全部又は一部にフッ素原子を含むフッ素系電解質と、ポリマー骨格にフッ素原子を含まない炭化水素系電解質とに大別される。
当該フッ素系電解質としては、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。フッ素系電解質は、耐久性、機械強度に優れる。
当該炭化水素系電解質として、具体的には、ポリスルホンスルホン酸、ポリアリールエーテルケトンスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸、ポリフェニルスルホン酸などが好適な一例として挙げられる。また、当該親水性材料は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
親水性多孔質層においては、水の移動速度が重要であるため、親水性材料のEWは低いほうが好ましい。好ましくはEWが1200g/eq.以下、より好ましくは1000g/eq.以下、さらに好ましくは700g/eq.以下である。かような範囲であれば、液水の拡散を促進し、零下起動性と常温での高電流密度運転を両立した親水性多孔質層を提供できる。EWの下限は特に限定されるものではないが、通常500g/eq.以上であることが好ましい。なお、EW(Equivalent Weight)は、イオン交換基当量質量を表す。
本発明に係る親水性材料は、前記導電性材料の少なくとも一部を被覆しており、前記導電性材料の少なくとも一部を被覆した親水性材料の被覆面積Sionが、以下の式
で表され、かつ前記親水性材料の被覆面積Sionが導電性材料の単位質量あたりで200m/g以上であることが好ましく、200m/g以上1600m/g以下であることがより好ましい。
これにより、親水性材料と気相との界面を増大させることで、液相から気相への相変化を促進することができ、気相への相変化が促進された結果、系全体における水輸送性が向上する。
当該親水性材料の被覆面積Sionが200m/g以上1600m/g以下であると、蒸発面積が大きいため液水の排水を促進することができる。
図4は、本発明に係る導電性材料45の表面の少なくとも一部に親水性材料41が被覆した状態の模式図である。図4に示すように、導電性材料のBET窒素比表面積(SBET)46が破線の部分に相当する。したがって、導電性材料に対して親水性材料が覆う部分(表面積)である親水性材料の被覆面積(Sion)47は、破線46と親水性材料の内側の表面積である一点鎖線48との重複部分に相当する。すなわち、導電性材料に対する親水性材料が覆う親水性材料の被覆面積(Sion)47は、導電性材料45と親水性材料41とが接する面積である。
本発明に係る親水性材料の被覆率θionは、相対湿度30%および相対湿度100%における電気二重層容量(Cdl)の比(θion=相対湿度30%のCdl/相対湿度100%のCdlで決定される)で表される。ここで、相対湿度30%と相対湿度100%との比を採る理由は以下の通りである。高加湿条件下では、導電性材料と導電性材料表面に吸着した水との、または導電性材料と親水性材料との界面に形成された電気二重層が計測される。一方で、低加湿条件下では、導電性材料と親水性材料との界面に形成された電気二重層が主として計測される。ここで、相対湿度30%程度以下で、電気二重層容量はほぼ一定となる。したがって、本発明では、相対湿度30%および相対湿度100%をそれぞれ低加湿条件および高加湿条件の代表地点と定め、両者の電気二重層容量の比を採ることにより、導電性材料が親水性材料によりどの程度被覆されているかの指標とした。
本発明に係る電気二重層容量は、以下の方法によって測定される値を採用する。
まず、触媒成分を含まない親水性多孔質層と触媒層を電解質膜の異なる面にそれぞれ配した膜電極接合体を作製し、その両面をガス拡散層、さらにカーボンセパレーター、さらには金メッキした集電板で挟持し、通常の燃料電池と同様のセルを得た。触媒層に調湿した水素ガスを、親水性多孔質層に調湿した窒素ガスを供給した状態で、触媒層を参照極および対極として用い、親水性多孔質層の電位を参照極に対して0.2〜0.6Vの範囲で5〜10回走査した。走査速度は50mV/sで行った。得られた電流と電位の関係は長方形に近い波形を示した。これは、電極上での酸化および還元反応が生じておらず、電気二重層の充電および放電が電流の主要因であることを示している。この波形において、ある電位、例えば、0.3Vにおける酸化電流と還元電流の絶対値の平均の値を走査速度で除することで電気二重層容量を算出した。この測定を種々の加湿条件下で行い、電気二重層容量と相対湿度との関係を得た。
また、導電性材料のBET窒素比表面積は、以下の方法により測定された値を採用する。
(窒素BET比表面積の測定方法)
1.サンプリング、秤量・予備乾燥
粉末は、約0.04〜0.07gを精秤し、試料管に封入した。この試料管を真空乾燥器で90℃×数時間予備乾燥し、測定に供した。秤量には、島津製作所株式会社製電子天秤(AW220)を用いた。なお、塗布シートについては、これの全質量から、同面積のテフロン(基材)質量を差し引いた塗布層の正味の質量約0.03〜0.04gを試料質量として用いた。
2.測定条件
3.測定方法
吸着・脱着等温線の吸着側において、相対圧(P/P)約0.00〜0.45の範囲から、BETプロットを作成することで、その傾きと切片からBET比表面積を算出する。
図6は、種々の導電性材料を用いた場合の、相対湿度と電気二重層容量との関係を示す図および各導電性材料のSBET、θionおよびSionを示す表である。図6中、カーボン材料としては、カーボン材料Aは、ケッチェンブラックEC(ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製)、カーボン材料BはケッチェンブラックECに2000〜3000℃、2〜120分の熱処理を施したものである。カーボン材料Cはアセチレンブラック(SAB、電気化学工業製)、カーボン材料Dはアセチレンブラック(OSAB、電気化学工業製)である。
本発明に係る親水性材料の被覆率θionは、親水性材料の被覆率θionの最大値の±20%領域であることが好ましい。
親水性材料相互間のネットワークが確保されていることで、本発明の親水性多孔質層内において有効に利用できる親水性材料が増大するため、気相への相変化が促進される。
親水性材料と導電性材料との質量比(=親水性材料の質量/導電性材料の質量)が増大すると、系内における親水性材料の量が増大するため、当然導電性材料と親水性材料との接触面積である親水性材料の被覆率θionは、増大すると考えられる。すなわち、図5−1に示すように、親水性材料と導電性材料との質量比が低いと、導電性材料と親水性材料との接触面積である親水性材料の被覆率θionは、低下する。その結果、導電性材料−親水性材料集合体内における親水性材料が相互に密着されておらず連続的な水(液水)の輸送経路が形成していないと考えられる。この親水性材料と導電性材料との質量比および親水性材料の被覆率θionとの関係は、図5−2に示すように、ある特定の親水性材料と導電性材料との質量比を境に親水性材料の被覆率θionが一定になることが確認される。また、本発明に係る親水性材料の被覆率θionは、親水性材料の被覆率θionの最大値の±20%領域であると、親水性材料および導電性材料が密着し、かつ前記親水性材料を相互に連通させて連続的な水(液水)の輸送経路が形成されていることが好ましい。
本発明に係る親水性材料の被覆率θionは、0.7未満であることが好ましく、0.2以上0.7未満がより好ましく、0.2以上0.5未満がさらに好ましい。
上記導電性材料に対する親水性材料の被覆率θionが、0.2以上0.7未満であると、親水性材料の含水量が増加し、親水性材料中の水拡散係数が増す。その結果、本発明の親水性多孔質層内に保持できる水の量が増えるため、触媒層からの水の排出性が向上する。
また、親水性材料の被覆率θionが上記の範囲であると、図4に示す親水性材料が浸入できない微細な空孔49を有している。この微細な空孔に液水を保持することができるため、その付近の親水性材料の含水量が空孔を有しない場合に比べて大きくなると考えられる。
また、後述する実施例のサンプルAの親水性多孔質層における水の活量と水の輸送抵抗(Rwater)との関係においても、空孔がある場合は、水の輸送性が増大することが確認される(図5−3参照)。
(触媒成分)
本発明に係る触媒成分は、本発明に係る親水性多孔質層を電極触媒として利用する場合に必要であり、カソード触媒層では、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく、公知の触媒が同様にして使用できる。また、アノード触媒層では、酸素の還元反応に触媒作用を有する機能以外に水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、及びそれらの合金等などから選択される。これらのうち、本発明に係る触媒成分薄膜に用いられる触媒成分は、少なくともPt、あるいはPtを含む合金であることが好ましい。
前記合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、白金が30〜90原子%、合金化する金属が10〜70原子%とするのがよい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。
合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがある。しかし、本発明ではいずれであってもよい。
また、触媒成分薄膜は複数の層で形成されていてもよく、例えばPt層とPt合金層からなる二層構造やその他の金属が含まれる多層構造であってもよい。
本発明に係る触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状および大きさが使用できるが、触媒成分は、粒状であることが好ましい。この際、触媒粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜30nm、より好ましくは1.5〜20nm、さらに好ましくは2〜10nm、特に好ましくは2〜5nmである。触媒粒子の平均粒子径がかような範囲内の値であると、電気化学反応が進行する有効電極面積に関連する触媒利用率と担持の簡便さとのバランスが適切に制御されうる。なお、本発明における「触媒粒子の平均粒子径」は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過型電子顕微鏡像より調べられる触媒成分の粒子径の平均値として測定されうる。
(ガス拡散電極)
本発明の第二は、前記親水性材料および触媒成分が担持された前記導電性材料が密着し、かつ前記親水性材料を相互に連通させて連続的な水(液水)の輸送経路を前記親水性材料内に形成した触媒成分を含有する導電性材料−親水性材料集合体を含む触媒層と、本発明に係る親水性多孔質層とを有し、前記触媒層と前記親水性多孔質層とが密着して設けられていることを特徴とする、ガス拡散電極である。
これにより、前記触媒層から親水性多孔質層及び親水処理部への水(液水)の輸送経路が確保される。その結果、触媒層から輸送された液水を効率良く系外に輸送することができる。また、前記触媒層は、触媒成分、親水性材料、および導電性材料、必要により電解質、およびその他添加物を含むことが好ましい。さらに、前記触媒層は、触媒成分を含有する導電性材料−親水性材料集合体を含むだけではなく、当該触媒成分を含有する導電性材料−親水性材料集合体相互間に水蒸気の輸送経路を形成した層であってもよい。
前記ガス拡散電極の厚みとしては、得られる膜電極接合体の特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは50〜400μm、より好ましくは100〜300μmである。
(膜電極接合体)
本発明の第三は、高分子電解質膜の両側に一対の本発明に係るガス拡散電極層を挟持してなる膜電極接合体、または高分子電解質膜の両側に一対の本発明に係る触媒層を挟持し、さらに当該触媒層上に本発明に係るガス拡散層を挟持してなる膜電極接合体である。
本発明に係る親水性多孔質層は、電極触媒層および/またはガス拡散層に使用することが好ましい。以下、本発明に係る膜電極接合体の各構成要素を説明する。
(電解質膜)
本発明の膜電極接合体に用いられる高分子電解質膜としては、特に限定されず、電極触媒層に用いた親水性材料と同様の高分子電解質からなる膜が挙げられる。また、デュポン社製の各種のNafion(登録商標)やフレミオン(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸膜、ダウケミカル社製のイオン交換樹脂、エチレン−四フッ化エチレン共重合体樹脂膜、トリフルオロスチレンをベース高分子とする樹脂膜などのフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂系膜など、一般的に市販されている高分子型電解質膜、高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。前記高分子電解質膜に用いられる高分子電解質と、各電極触媒層に用いられる高分子電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、各電極触媒層と高分子電解質膜との密着性を向上させる観点から、同じものを用いるのが好ましい。
前記高分子電解質膜の厚みとしては、得られる膜電極接合体の特性を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1〜50μm、より好ましくは2〜30μm、特に好ましくは5〜30μmである。製膜時の強度や膜電極接合体作動時の耐久性の観点から1μm超であることが好ましく、膜電極接合体作動時の出力特性の観点から50μm未満であることが好ましい。
また、上記高分子電解質膜としては、上記したようなフッ素系高分子電解質や、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂による膜を使用することができる。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などから形成された多孔質状の薄膜に、リン酸やイオン性液体等の電解質成分を含浸したものを使用してもよい。
(触媒層)
本発明に係る親水性多孔質層をガス拡散層にだけ使用する場合、本発明に係る触媒層は、実際に上記化学式1の反応が進行する層である。具体的には、アノード触媒層では水素の酸化反応が進行し、カソード触媒層では酸素の還元反応が進行する。当該触媒層は、触媒成分、触媒成分を担持する導電性担体、およびプロトン伝導性の高分子電解質を含む。上記アノード側触媒層に用いられる触媒成分は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。また、カソード側触媒層に用いられる触媒成分もまた、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒が同様にして使用できる。触媒層における触媒成分は、上記「触媒成分」の欄で説明したものと同様であるためここでは省略する。
上記導電性担体は、上述した触媒成分を担持するための担体、および触媒成分との電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。
本発明に係る導電性担体としては、触媒成分を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、充分な電子伝導性を有しているものであればよく、主成分がカーボンである炭素系材料であることが好ましい。具体的には、カーボンブラック、黒鉛化処理したカーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンおよびカーボンフィブリル構造体などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、「実質的に炭素原子からなる」とは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されうることを意味する。また、本発明に係る導電性担体は、導電性材料と同じでものを使用してもよい。
上記導電性担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに充分な比表面積であればよいが、好ましくは20〜1600m/g、より好ましくは80〜1200m/gである。導電性担体の比表面積がかような範囲内の値であると、導電性担体上での触媒成分の分散性と触媒成分の有効利用率とのバランスが適切に制御されうる。
上記導電性担体のサイズについても特に限定されないが、担持の簡便さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲で制御するなどの観点からは、平均粒子径を5〜200nm、好ましくは10〜100nm程度とするとよい。
導電性担体に触媒成分が担持されてなる複合体において、触媒成分の担持量は、触媒層の全量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%である。触媒成分の担持量がかような範囲内の値であると、導電性担体上での触媒成分の分散度と触媒性能とのバランスが適切に制御されうる。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって測定されうる。
上記触媒層、特にアノード側触媒層に黒鉛化処理したカーボンブラックなどの黒鉛化した導電性を示す材料、より好ましくは黒鉛化した炭素材料を導電性担体として用いると、導電性材料の腐食耐性を向上することができるため、好ましい。しかしながら、黒鉛化した導電性材料は、イオン伝導性材料の被覆面積が小さく、液水の蒸発面積が小さい為、零下での凍結または常温でのフラッディングが懸念される。黒鉛化させた導電性材料を用いた触媒層に親水性多孔質を隣接するように設置する事で、排水性を向上することができ、零下起動性と常温での高電流密度運転を両立し、さらに導電性材料の腐食耐性を付与した燃料電池用の膜電極接合体を提供する。黒鉛化処理したカーボンブラックは球状であることが好ましく、X線回折から算出される[002]面の平均格子面間隔d002が0.343〜0.358nmかつBET比表面積が100〜300m/gであることが好ましい。
また、上記導電性担体への触媒成分の担持は公知の方法で行うことができる。例えば、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法が使用できる。
または、本発明において、導電性担体に触媒成分が担持されてなる複合体は市販品を使用してもよい。このような市販品としては、例えば、田中貴金属工業製、エヌ・イー・ケムキャット製、E−TEK製、ジョンソンマッセイ製などの電極触媒が使用できる。これらの電極触媒は、カーボン担体に、白金や白金合金を担持(触媒種の担持濃度、20〜70質量%)したものである。上記において、カーボン担体としては、ケッチェンブラック、バルカン、アセチレンブラック、ブラックパール、予め高温で熱処理した黒鉛化処理カーボン担体(例えば、黒鉛化処理ケッチェンブラック)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンファイバー、メソポーラスカーボンなどがある。
本発明に係る触媒層には、電極触媒に加えて、イオン伝導性の高分子電解質が含まれる。当該高分子電解質は特に限定されず従来公知の知見が適宜参照されうるが、例えば、上述した電解質膜を構成するイオン交換樹脂が前記高分子電解質として触媒層に、触媒層中の導電性担体100質量部に対して好ましくは50〜150質量部、より好ましくは70〜130質量部添加されうる。
(ガス拡散層)
本発明に係る親水性多孔質層を触媒層にだけ使用する場合において、ガス拡散層はセパレータ流路を介して系内に供給されたガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)の触媒層への拡散を促進する機能、および電子伝導パスとしての機能を有する。
本発明に係るガス拡散層の基材を構成する材料は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性および多孔質性を有するシート状材料が挙げられる。基材の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、30〜500μm程度とすればよい。基材の厚さがかような範囲内の値であれば、機械的強度とガスおよび水などの拡散性とのバランスが適切に制御されうる。
上記ガス拡散層が優れた電子伝導性を有していると、発電反応により生じた電子の効率的な運搬が達成され、燃料電池の性能が向上する。また、ガス拡散層が優れた撥水性を有していると、生成した水が効率的に排出される。
さらに、上記ガス拡散層は、撥水性をより高めてフラッディング現象などを防止することを目的として、撥水剤を含むことが好ましい。撥水剤としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系の高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。
また、撥水性をより向上させるために、ガス拡散層は、バインダー、撥水剤を含むカーボン粒子の集合体からなるカーボン粒子層(マイクロポーラス層:MPL)を基材の触媒層側に有するものであってもよい。さらに、カーボン粒子およびバインダーからなるフィルム自体をガス拡散層として使用してもよい。
当該カーボン粒子層に含まれるカーボン粒子は特に限定されず、カーボンブラック、黒鉛、膨張黒鉛などの従来公知の材料が適宜採用されうる。なかでも、電子伝導性に優れ、比表面積が大きいことから、オイルファーネスブラック、チャネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが好ましく用いられうる。カーボン粒子の平均粒子径は、10〜100nm程度とするのがよい。これにより、毛細管力による高い排水性が得られるとともに、触媒層との接触性も向上させることが可能となる。
カーボン粒子層に用いられる撥水剤としては、上述した撥水剤と同様のものが挙げられる。なかでも、撥水性、電極反応時の耐食性などに優れることから、フッ素系の高分子材料が好ましく用いられうる。
上記カーボン粒子層におけるカーボン粒子と撥水剤との混合比は、撥水性および電子伝導性のバランスを考慮して、質量比で90:10〜40:60(カーボン粒子:撥水剤)程度とするのがよい。なお、カーボン粒子層の厚さについても特に制限はなく、得られるガス拡散層の撥水性を考慮して適宜決定すればよい。
該ガス拡散層の水蒸気の有効拡散係数(D)は、1気圧、−20℃で、下記式を満たすことが好ましい。
式中、εはガス拡散層基材の空孔率であり、γは、ガス拡散基材層の屈曲度である。より好ましくは、D≧3.39×10−5×εγ/sである。かような範囲であれば、隣接する親水性多孔質層のガス輸送性の低下を抑制することができる。
ガス拡散層の有効拡散係数が上記の値以上の場合は、気体分子同士の衝突が律速となる分子拡散であるが、この値以下になると細孔壁との衝突が律速となるクヌーセン拡散となり、拡散性が急激に低下する場合がある。発電中において、生成水の付着などによる空孔率の低下に対する拡散性の低下代が大きくなる場合がある。なお、前記ガス拡散層の空孔率εは、水銀圧入法で得られた空孔量と体積から算出できる。
好ましくは、前記ガス拡散層基材の空孔の空孔径は、最小値(最小空孔径)が1μm以上であることが好ましい。最小空孔径が1μm以上であれば、クヌーセン拡散による水蒸気の拡散はほぼ無視することができ、分子拡散による水蒸気の拡散が支配的となるため、水蒸気の輸送速度をより向上させることができる。そのため、水の排出速度が向上しうる。ここで、ガス拡散層基材の最小空孔径は、水銀圧入法による細孔分布測定などにより求めることができる。最小空孔径の上限値は特に制限されないが、実質的に、10μm程度である。
また、該ガス拡散層は、前記親水性材料(イオン伝導性材料)および前記親水性材料(イオン伝導性材料)に被覆される導電性材料を含む親水性多孔質層と、多孔質性のガス拡散層基材と、を含み、前記親水性多孔質層の少なくとも一部が、前記ガス拡散層基材に設置され、前記ガス拡散層基材の少なくとも一部が、親水処理された親水処理部であることが好ましい。このような形態とすることによって、液水が蒸発しうる気液界面の表面積をさらに増大させることができ、水の排出速度をより向上させることができる。そのため、零下発電時の生成水が空孔内に蓄積されにくくなり、反応ガスの拡散性の低下が抑制され、零下発電性能が向上しうる。
前記親水処理部は、イオン伝導性材料、金属酸化物、および親水性ポリマーからなる群より選択される1以上を含むことが好ましい。さらに具体的な例として、イオン伝導性材料としては、例えば、パーフルオロスルホン酸、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。親水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。
親水性多孔質層は、少なくともその一部がガス拡散層基材に埋没されていればよいが、好ましくは、親水性多孔質層の厚みに対して10〜100%の部分が、ガス拡散層基材の内部に埋没して形成される。親水性多孔質層の厚みに対して10%以上の部分が埋没している場合、親水性多孔質層からガス拡散層基材216にかけて連続的な親水ネットワークが形成できる。さらに水の輸送距離を短縮できるため、水の排出速度を向上させることができる。特に、親水性多孔質層の全体がガス拡散層基材に埋没される、すなわち親水性多孔質層がガス拡散層基材の内部に形成されることが好ましい。これは、親水性多孔質層の厚みの100%がガス拡散層基材に埋没される形態に相当する。このような形態であれば、上述の効果が特に顕著に得られうる。
尚、「バインダー」とは接着の役割を有する物質をいう。また、本発明に係る実施例では、バインダーの役割および撥水性の役割を兼ね備えたフッ素系樹脂を使用しているが、必ずしもこれに限定されず、バインダーおよび撥水材料を個々独立した物質で混合して使用しても良い。
本発明に係る膜電極接合体において、必要に応じて使用される添加剤、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、水、撥水剤、バインダーの量は、諸条件によって適宜選択されるものである。
(親水性多孔質層およびガス拡散電極の製造方法)
本発明に係る親水性多孔質層およびガス拡散電極の好適な製造法の一例を以下説明する。
(親水性多孔質層の製造方法)
本発明に係る親水性多孔質層の作製方法としては、例えば、導電性材料2〜13.3質量%と、親水性材料1.7〜12質量%と、および溶媒80〜95質量%とを混合する。そして、必要によりその他バインダーを前記の混合物に対して0〜15質量%添加して親水性多孔質層用インクを調製することが好ましい。
次いで、当該インクを所定の基材に塗布した後、乾燥させる。また、触媒成分が担持された導電性材料を用いる場合には、含浸法、液相還元担持法、蒸発乾固法、コロイド吸着法、噴霧熱分解法、逆ミセル(マイクロエマルジョン法)などの公知の方法を用いて、予め導電性材料に触媒成分を担持させておくのがよい。また、当該インクを調製する前に、上記の方法により、導電性材料を酸で表面処理することが好ましい。さらに、触媒成分が担持された導電性材料を使用する場合、例えば、導電性材料2.1〜15.7質量%と、親水性材料1.1〜11.5質量%と、および溶媒80〜95質量%とを混合する。そして、必要によりその他バインダーを前記の混合物に対して0〜15質量%添加して親水性多孔質層用インクを調製することが好ましい。
また、当該触媒成分が担持された導電性材料を使用する場合、導電性材料中、当該触媒成分の含有量は、10〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。
上記乾燥の条件としては、特に限定されるものではないが、20〜170℃で、1〜40分間程度、乾燥を行うことが好ましい。なお、熱処理工程は、膜電極接合体作製過程のいずれかの段階で行われればよく、親水性多孔質層用インクを基材上に塗布した後、すぐに親水性多孔質層用インクを形態だけに限定されない。
また、乾燥時の雰囲気は特に限定されるものではないが、空気雰囲気または不活性ガス雰囲気下で乾燥を行うことが好ましい。なお、親水性多孔質層用インクを乾燥する工程は膜電極接合体作製過程のいずれかの段階で行われればよく、親水性多孔質層用インクを基材上に塗布した後、すぐに親水性多孔質層用インクを乾燥する形態だけに限られない。
親水性多孔質層用インクを塗布する基材は、最終的に得られる親水性多孔質層の形態により適宜選択すればよく、触媒層、ガス拡散層、またはポリテトラフルオロエチレンシート(PTFE)等の高分子シート等を用いることができる。
本発明に係る親水性多孔質層用インクには、導電性材料、親水性材料と、および溶媒と、必要により触媒成分、電解質やその他バインダー以外に、造孔剤をさらに含むことが好ましい。
これにより、親水性多孔質層内の空孔径を比較的大きくすることができる。その結果、層内における気相の輸送抵抗を減少することができる。また、当該造孔剤としては、沸点が150℃以上の有機溶媒(プロピレングリコール、エチレングリコール、)または結晶性炭素繊維(VGCF)などが挙げられ、当該親水性多孔質層用分散媒に20〜60質量%添加することが好ましい。また、本発明に係る親水性多孔質層用インクを調製する造孔剤と溶媒とは重複する成分であってもよい。
当該親水性多孔質層用インクに用いられる溶媒としては、特に限定されるものではないが、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール等のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、またはグリセリンなどの多価アルコールなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。
上記造孔剤および上記溶媒の選択は、親水性多孔質層の空孔率を制御する上で重要である。後述するように、本発明の親水性多孔質層を作製する場合、親水性多孔質層用インクに造孔剤(沸点が150℃を超える高沸点有機溶媒を混合した溶媒)または結晶性炭素繊維を用いることが好ましい。当該インクに造孔剤を混合した場合、平均空孔径を大きくすることができ、また、空孔率も大きくすることができる。当該インク中の溶媒種による親水性多孔質層の空孔径の分布の差を図7に示す。図7において、Pore Size Diameterは細孔径を、Cumulative Intrusion(mL/g)は積算容積を、Log Differential Intrusion(mL/g)は微分細孔容積を示す。図7において、溶媒1の組成は、水:NPA(1−プロパノール):プロピレングリコール=4:1:3(質量比)であり、溶媒2の組成は、水:NPA(1−プロパノール)=6:4である。)
沸点が150℃を超える有機溶媒としては、エチレングリコール(沸点:197.6℃)、プロピレングリコール(沸点:188.2℃)、1,2−ブタンジオール(沸点:190.5℃)、1,3−ブタンジオール(沸点:207.5℃)、1,4−ブタンジオール(沸点:229.2℃)、グリセリン(沸点290℃)、NMP(N−methylpyrrolidone)(沸点:202℃)、DMSO(dimethyl sulfoxide)(沸点:189℃)などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用して用いてもよい。なお、高沸点有機溶媒は、水と均一に混合されることが好ましい。
なお、本明細書における溶媒および溶剤とは、バインダーおよび導電性材料等の固形成分が分散される分散媒、すなわち固形成分および造孔剤以外の液体成分を全て含む。したがって、例えば、水に分散されたイオン伝導性材料である親水性材料と、有機溶媒とを混合して親水性多孔質層用インクを製造する場合、本明細書でいう溶媒は、水および有機溶媒の双方を指す。
本発明に係る親水性多孔質層用インクの固形分率(親水性多孔質層用インク全質量に対する固形分の質量割合)は、特に限定されるものではないが、通常5〜20質量%程度である。このような範囲とすることで、多孔質層の形成効率とインクの安定性の点で優れる。
本発明に係る親水性多孔質層は、導電性材料、親水性材料、および溶媒を含み、かつインク中における二次粒子の平均粒子径が、0.5μm以上であり、モード径が0.35μm以上であるインクを用いて作製することが好ましい。
これにより、2次粒子の粒径が大きいため、親水性多孔質層内の空孔径を比較的大きくすることができる。その結果、当該層内における気相の輸送抵抗を減少することができる。
上記導電性材料、親水性材料、および溶媒からなるインク中における2次粒子とは、本発明に係る導電性材料や導電材料の1次粒子の集合した2次粒子、導電性材料−親水性材料集合体、または導電性材料−親水性材料集合体前駆体が相当する。これらの2次粒子のモード径が好ましくは0.35μm以上0.40μm以下で、かつ平均粒径0.5μm以上0.8μm以下であると、親水性多孔質層内の空孔径を比較的大きくすることができる。
また、上記モード径および平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定法により算出している。なお、後述する実施例におけるサンプルAの2次粒子の直径と空孔率との関係を図8に示す。
本発明に係る親水性多孔質層用インクの調製方法は、特に制限されず、親水性材料、導電性材料、および溶媒、必要により電解質や造孔剤の混合順序は、特に制限されない。
本発明に係る親水性材料を含有した溶液は、自ら調整してもよいし、市販品を用いてもよい。上記親水性材料を含有した溶液中における親水性材料の分散溶媒は、特に限定されるものではないが、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。分散性を考慮すると、好ましくは、水、エタノール、1−プロパノールである。これらの分散溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また、親水性多孔質層用インクの製造工程において、親水性材料と、導電性材料と、溶媒とを混合した後は、良好に混合するために、別途混合工程を設けてもよい。このような混合工程としては、触媒インクを超音波ホモジナイザーでよく分散する、あるいは、この混合スラリーをサンドグラインダー、循環式ボールミル、循環式ビーズミルなどの装置でよく粉砕させた後、減圧脱泡操作を加えることなどが好ましく挙げられる。
次に、得られた親水性多孔質層用インクを基材上に塗布した後、親水性多孔質層用インクが塗布された基材を乾燥する。
親水性多孔質層用インクの基材表面または電解質膜への塗布方法は、特に制限されず、公知の方法を使用できる。具体的には、スプレー(スプレー塗布)法、ガリバー印刷法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、転写法など、公知の方法を用いて行うことができる。また、触媒インクの基材表面への塗布に使用される装置もまた、特に制限されず、公知の装置が使用できる。具体的には、スクリーンプリンター、スプレー装置、バーコーター、ダイコーター、リバースコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スプレーコーター、ドクターナイフなどの塗布装置を用いることができる。なお、塗布工程は、1回行ってもあるいは複数回繰り返し行ってもよい。
(ガス拡散電極の製造方法)
本発明に係るガス拡散電極の作製方法は、導電性材料、親水性材料、および溶媒を含む親水性多孔質層用インク(1)と、触媒成分を担持した導電性材料、親水性材料、および溶媒からなる親水性多孔質層用インク(2)と、を順次塗布して作製することが好ましい。
これにより、積層方向の序列が電解質膜−触媒層−親水性多孔質層となる膜電極接合体を得る際に、予め触媒層と親水性多孔質層とを積層して作製することができる。そのため、親水性多孔質層と隣り合う触媒層の電解質の接着性を良好にすることができる。その結果、親水性多孔質層と隣り合う触媒層間の液相における輸送抵抗を減少することができる。
より詳細な本発明に係るガス拡散電極の作製方法およびガス拡散電極を有する膜電極接合体の好ましい実施形態の一例を、以下、各工程に分けて、2つの方法を説明する。
第1方法:(工程1)当該親水性多孔質層用インク(1)は、例えば、導電性材料2.1〜15.7質量%と、親水性材料1.1〜11.5質量%と、および溶媒80〜95質量%とを混合する。そして、必要によりその他バインダーを前記の混合物に対して0〜15質量%添加して親水性多孔質層用インクを調製することが好ましい。
当該親水性多孔質層用インク(2)は、触媒成分が担持された導電性材料2.1〜15.7質量%と、親水性材料1.1〜11.5質量%と、および溶媒80〜95質量%とを混合する。そして、必要によりその他バインダーを前記の混合物に対して0〜15質量%添加して親水性多孔質層用インクを調製することが好ましい。
(工程2)次いで、当該インク(1)を基材に塗布した後、さらにその上に当該インク(2)を塗布することが好ましい。この際、当該インク(1)を基材に塗布した後、乾燥工程を経ても経なくてもよい。
(工程3)当該インク(1)から得られた親水性多孔質層の上に、当該インク(2)から得られた触媒成分が担持された導電性材料を有する親水性多孔質層が積層されたガス拡散電極を所定の方法で電解質膜に転写する方法が好ましい。
第2方法:(工程1)当該親水性多孔質層用インク(1)は、導電性材料2.1〜15.7質量%と、親水性材料1.1〜11.5質量%と、および溶媒80〜95質量%とを混合する。そして、必要によりその他バインダーを前記の混合物に対して0〜15質量%添加して親水性多孔質層用インクを調製することが好ましい。
当該親水性多孔質層用インク(2)は、触媒成分が担持された導電性材料2.1〜15.7質量%と、親水性材料1.1〜11.5質量%と、および溶媒80〜95質量%とを混合する。そして、必要によりその他バインダーを前記の混合物に対して0〜15質量%添加して親水性多孔質層用インクを調製することが好ましい。
(工程2)次いで、当該インク(2)を電解質膜に塗布した後、さらにその上に当該インク(1)を塗布することが好ましい。この際、当該インク(1)を電解質膜に塗布した後、乾燥工程を得ても得なくてもよいが、乾燥工程を得ないほうがより好ましい。
(工程3)電解質膜、当該インク(2)から得られた触媒成分が担持された導電性材料を有する親水性多孔質層、および当該インク(1)から得られた親水性多孔質層の順で積層されたガス拡散電極を有する膜電極接合体が得られる。
「膜電極接合体の製造方法」
本発明に係る膜電極接合体の製造方法は、触媒成分担持導電性担体、電解質などを混合した触媒層インク、上述した方法により親水性多孔質層用インクを調整する。ついで、PTFE製シートなどの基材上に親水性多孔質層スラリーを塗布する。次いで、親水性多孔質層スラリー上に触媒層インクを塗布し触媒層を形成する。このようにして得られた、親水性多孔質層−触媒層を、電解質膜上に、転写等によって形成する。基材としてPTFE製シートを用いた場合には、ホットプレスした後に、PTFE製シートのみを剥がし、その後ガス拡散層を積層させればよい。また、上述したガス拡散電極を電解質膜上に、転写して電解質膜とホットプレス法などにより接合して膜電極接合体の製造をしてもよい。
当該ホットプレスによる転写をする際の条件は、90〜170℃、1〜30min、0.5〜1.5Mpaの条件が好ましい。
なお、上述の親水性多孔質層の製造方法において説明した親水性多孔質層用インクを乾燥する工程は膜電極接合体作製過程のどの段階で行ってもよく、親水性多孔質層用インクを基材上に塗布した後、すぐに親水性多孔質層用インクを乾燥する形態に限られない。
(燃料電池)
本発明に係る燃料電池は、上記燃料電池用膜電極接合体が一対のセパレータにより挟持されてなる構造であることが好ましい。
次に、図面を参照しながら本発明のMEAを用いる好適な実施形態であるPEFCについて説明する。
図11は、燃料電池用膜電極接合体が一対のセパレータにより挟持されてなるPEFCの単セルであり、本発明の好適な実施形態の一例を示す模式断面図である。
当該燃料電池は、燃料電池用膜電極接合体100’をアノード側セパレータ7およびカソード側セパレータ2で挟持することで構成されていることが好ましい。また、燃料電池用膜電極接合体100’に供給される燃料ガスおよび酸化剤ガスは、アノード側セパレータ7およびカソード側セパレータ2に、それぞれ複数箇所設けられたガス供給溝3、4、などを介して供給される。また、PEFC100において、ガスケット20が、燃料電池用膜電極接合体100’の表面に位置する電極の外周を、取り囲むように配置されている。ガスケット20はシール部材であり、接着層を介して、燃料電池用膜電極接合体100’の固体高分子電解質膜8の外面に固定される構成を有していてもよい。ガスケット20は、セパレータと燃料電池用膜電極接合体とのシール性を確保する機能を有している。なお、必要に応じて用いられる接着層は、接着性を確保することを考慮すると、ガスケットの形状に対応し、電解質膜の全周縁部に、額縁状に配置されることが好ましい。
以下、燃料電池用膜電極接合体以外のPEFCの各構成要素について、順に詳細に説明する。
(ガスケット)
ガスケットは、触媒層またはガス拡散層(すなわち、ガス拡散電極)を包囲するように配置され、供給されたガス(燃料ガスまたは酸化剤ガス)のガス拡散電極からの漏出を防止する機能を有する。
ガスケットを構成する材料は、ガス、特に酸素や水素に対して不透過性であればよく、特に制限されることはない。ガスケットの構成材料としては、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴムなどのゴム材料、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などの高分子材料が挙げられる。ただし、その他の材料が用いられてもよいことは勿論である。
ガスケットのサイズについても特に制限はなく、所望のガスシール性や他の部材のサイズとの関係などを考慮して適宜決定すればよい。
(セパレータ)
膜電極接合体をセパレータで挟持してPEFC(固体高分子型燃料電池)の単セルを構成する。PEFCは、単セルが複数個直列に接続されてなるスタック構造を有するのが一般的である。この際、セパレータは、各MEAを直列に電気的に接続する機能に加えて、燃料ガスおよび酸化剤ガス並びに冷媒といった異なる流体を流す流路やマニホールドを備え、さらにはスタックの機械的強度を保つといった機能をも有する。
セパレータを構成する材料は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうるが、例えば、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン材料や、ステンレス等の金属材料などが挙げられる。セパレータのサイズや流路の形状などは特に限定されず、PEFCの出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
PEFCの製造方法は特に制限されず、燃料電池の分野において従来公知の知見を適宜参照することにより製造可能である。
以上、高分子電解質形燃料電池を例に挙げて説明したが、燃料電池としてはこの他にも、アルカリ型燃料電池、ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられ、いずれの電池に適用してもよい。なかでも小型かつ高密度・高出力化が可能であるから、高分子電解質形燃料電池(PEFC)が好ましく挙げられる。
前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動/停止や出力変動が頻繁に発生する車両、より好ましくは自動車用途で特に好適に使用できる。
以下に、本発明の親水性多孔質膜、ガス拡散電極層および膜電極接合体の作製手順の一実施例を記載する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
(1)親水性多孔質膜、ガス拡散電極層および膜電極接合体の製造方法
1.サンプルAの作製
親水性多孔質層用インクは、導電性材料として、カーボン粉末(ケッチェンブラックEC, ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株))を用意した。親水性材料として、アイオノマー分散液(Nafion(登録商標) D2020, DuPont社製)とを用意した。そして、カーボン粉末とアイオノマーとの質量比(導電性材料/親水性材料)が0.7となるよう混合し、さらに、溶媒および造孔剤として、プロピレングリコール溶液(50%)を、インクの固形分率が12%となるよう添加して調製した。
また、親水性多孔質層用の触媒インクは、電極触媒粉末(TEC10E50E, 田中貴金属工業製)とアイオノマー分散液(Nafion(登録商標) D2020, DuPont社製)とを用意した。そして、カーボン担体とアイオノマーの質量比(触媒成分担持導電性材料/親水性材料)とが0.9となるよう混合し、さらに、溶媒および造孔剤として、プロピレングリコール溶液(50%)を、インクの固形分率が19%となるよう添加して調製した。
まず、親水性多孔質層はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基材上に、スクリーン印刷法により、カーボン担持量がおよそ0.3mg・cm−2となるよう塗布した。その後、有機物を除去するために、130℃で30min熱処理を施して、サンプルAの親水性多孔質膜を作製した。この親水性多孔質膜の上に、触媒層をPt担持量がおよそ0.05mg・cm−2となるよう塗布した。その後、再度130℃で30min熱処理を施してサンプルAのガス拡散電極層を作製した。
上記のようにして作製したガス拡散電極層を電解質膜(Nafion(登録商標) NR211, DuPont社製)へ転写してサンプルAの膜電極接合体を作製した。転写は150℃、10min、0.8Mpaの条件で行った。
2.サンプルBの作製
上記サンプルAにおける親水性多孔質層用インクで使用したカーボン粉末のケッチェンブラックECの代わりに、ケッチェンブラックECに熱処理(3000℃で2時間)を施したものを使用した。これ以外全く同一条件でサンプルBの親水性多孔質膜、ガス拡散電極層および膜電極接合体を作製した。
3.サンプルCの作製
上記サンプルAにおける親水性多孔質層用インクで使用したカーボン粉末のケッチェンブラックECの代わりに、アセチレンブラック(SAB、電気化学工業製)を使用した。これ以外全く同一条件でサンプルCの親水性多孔質膜、ガス拡散電極層および膜電極接合体を作製した。
4.サンプルDの作製
上記サンプルAにおける親水性多孔質層用インクで使用したカーボン粉末のケッチェンブラックECの代わりに、アセチレンブラック(OSAB、電気化学工業製)を使用した。これ以外全く同一条件でサンプルDの親水性多孔質膜、ガス拡散電極層および膜電極接合体を作製した。
(2)評価
1.空孔分布の測定
上記の方法により得られたサンプルAの親水性多孔質層を水銀圧入法により、空孔分布を測定した。その結果を、図8に示す。親水性多孔質層の空孔分布は、自動ポロシメーター(オートポアIV 9510型、マイクロメリティクス社製)を用いて、3nm〜400nmの空孔径範囲で測定した。
親水性多孔質層用インクの2次粒子の粒径とその(頻度)分布は、レーザー回折・散乱式粒度分布計(マイクロトラックMT3000、日機装社製)により測定した。循環溶媒には2−プロパノールを使用し、これに超音波分散させた希釈触媒インクを適量投入して測定を行った。その結果を、図9に示す。
2.相対湿度と電気二重層容量の変化との関係
上記の方法により得られたサンプルA〜Dの親水性多孔質層について、相対湿度と電気二重層容量の変化との関係、Sion、導電性材料のBET窒素比表面積SBET、および親水性材料の被覆率θionを求めた。
まず、触媒成分を含まない親水性多孔質層と触媒層を電解質膜の異なる面にそれぞれ配した膜電極接合体を作製し、その両面をガス拡散層、さらにカーボンセパレーター、さらには金メッキした集電板で挟持し、通常の燃料電池と同様のセルを得た。触媒層に調湿した水素ガスを、親水性多孔質層に調湿した窒素ガスを供給した状態で、触媒層を参照極および対極として用い、親水性多孔質層の電位を参照極に対して0.2〜0.6Vの範囲で5〜10回走査した。走査速度は50mV/sで行った。得られた電流と電位の関係は長方形に近い波形を示した。これは、電極上での酸化および還元反応が生じておらず、電気二重層の充電および放電が電流の主要因であることを示している。この波形において、ある電位、例えば0.3Vにおける酸化電流と還元電流の絶対値の平均の値を走査速度で除することで電気二重層容量を算出した。この測定を種々の加湿条件下で行い、電気二重層容量と相対湿度の関係を得た。
相対湿度と電気二重層容量の変化との関係を図6に示し、Sion、導電性材料のBET窒素比表面積SBET、および親水性材料の被覆率θionを表2に示す。
3.電解質の水輸送性(輸送抵抗の逆数)
まず、水の活量と含水量との関係をBELSORP18 PLUS−HT(日本ベル製)を用いて測定した。これと、含水量と水の拡散係数の関係(Journal of The Electrochemical Society,147 (9) 3171−3177(2000))から、水の活量と輸送抵抗との関係を得た。
4.カーボン(KB)粉末の観察
1次粒径を確認するために、カーボン(KB)粉末を、HD−2000(走査型電子顕微鏡、日立製作所製)を用いて観察した。その結果を図10に示す。
5.ガス拡散層の観察
親水性を示す箇所を確認し、アイオノマーのフッ素原子を確認するために、実施例のガス拡散層を、SEM(走査型電子顕微鏡、日本電子社製、JSM−6380LA)を用いて観察し、EPMA(電子線マイクロアナラザ)を用いて解析した。その結果を図12に示す。(A)がSEMの観察結果であり、(B)がEPMAの観察結果である。EPMAにて、写真上部の水色になっている部分が、親水処理部であり、フッ素原子が分散している部分である。
6.零下発電試験
ガス拡散層基材として東レ製 H−060に親水処理部を設けたガス拡散層をアノード(燃料極)に使用し、カソード(空気極)にSGLカーボン製GDL24BCを使用した膜電極接合体(発電面積10cm)を小型単セルに組み込み、零下発電性能を確認した。具体的には、はじめに、コンディショニングのために50℃において両極に相対湿度60%の窒素ガスを3時間供給した。次に、小型単セルの温度を−20℃まで約1時間で冷却し、十分温度が安定した後、各極にそれぞれ乾燥水素(1.0NL/min)と乾燥空気(1.0NL/min)の供給を開始し、90秒経過した後、負荷(電流密度:40mA/cm)を瞬時に取り出した。零下環境であるため生成水が凍結しセル電圧が低下するが、それまでの時間が長いものほど生成水の気相排出性が高いと考えた。そこで、発電開始からセル電圧が0.2Vとなるまでの時間を比較した。その結果を表3に示す。
上記表3のように、発電開始からセル電圧が0.2Vとなるまでの時間は、アノードに本発明の親水処理を実施しない上記ガス拡散層を用いた電池が212秒であるのに対して、本願実施例の電池は、222秒であった。すなわち、本願実施例の電池は、未実施の電池と比較して、10秒以上発電可能時間が延長された。したがって、本発明によれば、零下起動時に生成水を膜電極接合体外へ効果的に排出できるため、電池の電圧低下をより長時間抑制することが可能になる。
1 膜電極接合体、
2 カソード側セパレータ、
3、4 ガス供給溝、
5 カソード側電極触媒層、
6 カソード側ガス拡散層、
7 アノード側セパレータ、
8 固体高分子電解質膜、
9 アノード側ガス拡散層、
10 親水性多孔質層、
11 高分子電解質膜、
12a アノード触媒層、
12c カソード触媒層、
13a アノードガス拡散層、
13c カソードガス拡散層、
14a アノードミクロポア層、
14c カソードミクロポア層、
15a アノードマクロポア層、
15c カソードマクロポア層、
16a アノードガス拡散電極、
16c カソードガス拡散電極、
17 カソードガス流路、
18 アノードガス流路、
19 アノード側電極触媒層、
20 親水性材料−導電性材料集合体、
21、41 親水性材料、
22 連続的な水の通り道である輸送経路(連通した水の輸送経路)、
23 水蒸気の輸送経路、
24 液水から水蒸気のルート、
25、45 導電性材料、
46 導電性材料のBET窒素比表面積(SBET)、
47 親水性材料の被覆面積(Sion)、
48 親水性材料の内側の表面、
49 微細な空孔、
100 固体高分子電解質型燃料電池、
100’ 膜電極接合体、
101 アノード(電極)触媒層、
102 カソード(電極)触媒層。

Claims (18)

  1. 膜電極接合体を含む燃料電池であって、
    前記膜電極接合体は、アノード側の触媒層とガス拡散層との間に設けられた親水性多孔質層を含み、
    前記親水性多孔質層は、親水性材料および導電性材料が密着し、かつ前記親水性材料を相互に連通させて連続的な水の輸送経路を前記親水性材料内に形成した導電性材料−親水性材料集合体を有し、前記導電性材料−親水性材料集合体相互間に水蒸気の輸送経路を形成した層であって、
    前記水の輸送経路における水の輸送抵抗Rwaterが、前記水蒸気の輸送経路における水蒸気の輸送抵抗Rgasより大きいことを特徴とする、燃料電池
  2. 前記親水性材料は前記導電性材料の表面の少なくとも一部を被覆しており、前記導電性材料の表面の少なくとも一部を被覆した親水性材料の被覆面積Sionが、以下の式
    で表され、かつ前記親水性材料の被覆面積Sionが導電性材料の単位質量あたりで200m/g以上であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池
  3. 前記親水性材料の被覆率θionは、0.7未満であることを特徴とする、請求項2に記載の燃料電池
  4. 前記導電性材料は、予め表面を酸処理していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池
  5. 前記導電性材料の1次粒子の平均粒子径は、60nm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池
  6. 親水性材料の被覆率θionは、親水性材料の被覆率θionの最大値の±20%領域であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池
  7. 前記触媒層は、前記親水性材料および触媒成分が担持された前記導電性材料が密着し、かつ前記親水性材料を相互に連通させて連続的な水の輸送経路を前記親水性材料内に形成した触媒成分を含有する導電性材料−親水性材料集合体を有してなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の燃料電池
  8. 導電性材料、親水性材料、および溶媒を含み、かつインク中における二次粒子の平均粒子径が、0.5μm以上であり、モード径が0.35μm以上であるインクを用いて作製したことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料電池
  9. 造孔剤を含む、インクを用いて作製したことを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の燃料電池
  10. 前記ガス拡散層を構成する多孔質性のガス拡散層基材の少なくとも一部が、親水処理されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の燃料電池
  11. 前記ガス拡散層基材の前記親水性多孔質層側の面にのみ前記親水処理が施されている、請求項10に記載の燃料電池
  12. 前記ガス拡散層を構成する多孔質性のガス拡散層基材における水蒸気の有効拡散係数D(m/s)は、1気圧、−20℃で、下記式を満たす、請求項1〜11のいずれか1項に記載の燃料電池
    式中、εはガス拡散層基材の空孔率であり、γは、ガス拡散基材層の屈曲度である。
  13. 前記ガス拡散層基材中の空孔の最小空孔径が1μm以上である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の燃料電池
  14. 前記親水処理部は、イオン伝導性材料、金属酸化物、および親水性ポリマーからなる群より選択される1以上を含む、請求項10または11に記載の燃料電池
  15. 前記親水性材料のEWが1000g/eq.以下である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の燃料電池
  16. 導電性材料、親水性材料、および溶媒を含む親水性多孔質層用インク(1)と、触媒成分を担持した導電性材料、親水性材料、および溶媒からなる親水性多孔質層用インク(2)とを順次塗布して作製することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の燃料電池の製造方法。
  17. ガス拡散層基材の表面に親水剤を含む溶液を塗布する段階と、
    前記溶液が乾燥する前に、導電性材料、親水性材料、および溶媒を含む親水性多孔質層用インクをさらに塗布し、乾燥させる段階と、
    を含む、請求項10または11に記載の燃料電池の製造方法。
  18. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の燃料電池、または請求項16もしくは17に記載の製造方法により製造された燃料電池を搭載した車両。
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