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JP5460660B2 - ヒトg−csfの調整方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生産段階の間の、高塩誘発によるプラスミド安定性の増加を介した、G−CSFの高収率での改良された生産方法に関する。
サイトカイン顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)の治療により、重篤な慢性好中球減少症を有する患者の生活の質が著しく改善する(非特許文献1)。G−CSFは、骨髄の貯蔵庫からの好中球の放出および抗菌作用の増強活性化のための、潜在的な内因性要因である。G−CSFは、さまざまな急性疾患の前臨床モデルにおいて幅広く評価されており、おおむね良好な結果を得ている(非特許文献2)。化学療法サイクル間の証明された有効性のために、G−CSFは腫瘍学において用いられる、重要な生物医薬品である。G−CSFはさまざまな種類の細胞でクローン化され、発現しており、例えば微生物細胞(非特許文献3および4)、酵母細胞(非特許文献5および特許文献1)、イネ細胞(非特許文献6)、ネコ細胞(非特許文献7)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(非特許文献8)、昆虫細胞(非特許文献9)、およびさらにはトランスジェニックヤギ(非特許文献10)がある。医薬的な使用のために、G−CSFは初めに大腸菌で、封入体として産生され(非特許文献11)、封入体は本来ではないコンフォメーションでの、不溶性の組換えタンパク質の会合体であり(非特許文献12)、一般的に生物学的活性を有しない(非特許文献13)。G−CSFの分泌産生技術についても報告されている(非特許文献14および15)。分泌発現は通常、適切に折り畳まれたG−CSFを、ペリプラズム空間または細胞外培地内に放出させるが、その収量は、封入体で得られる場合に比べて遥かに少ない。したがって、封入体として大腸菌でG−CSFを発現させるのは、工業用の利点がある。適切に折り畳まれた、生物学的に活性のあるG−CSFタンパク質は、封入体の単離および可溶化の後で、変性および再生を適用させることによって、工業的に実行可能な態様で封入体から容易に得られる(非特許文献16および17)。
大腸菌における組換えタンパク質産生のもっとも効率的な方法の一つは、フェドバッチ培養であり、循環(cyclic)モードおよび非循環モードで実行され得る。非循環方法は、より複雑ではないので、工業生産により適している。事実、先行技術には、非循環フェドバッチ培養方法からの最もGCSFの収率が高いものの一つが記載されており、それは4.2〜4.4g/Lの範囲である(非特許文献18)。より高い累積収率を得るための循環モードでのフェドバッチ培養による発酵(fermentation)を行うと、プラスミドの不安定性が高くなり(非特許文献19)、それゆえに、この方法のロバスト性が制限される。
一般的に、高発現の産物を有するために、この産物の遺伝子を含有する染色体外プラスミドを、適切な形態で細胞中に保持し続けることが不可欠である。これは、通常、培養ブロスに適切な抗生物質を加えることによって、組換え微生物への選択圧を維持することにより達成される。組換え株の「分離不安定性」を減少させるための発酵の間、1〜2hごとに抗生物質(アンピシリン)を加えることによって、G−CSFの発現レベルが上昇することが報告されている(特許文献2)。最終産物からの抗生物質のクリアランス(clearance)の証拠を調節的に要求することが、使用の制限を必然的に伴わせる。高用量の抗生物質もまた、望ましくない環境への影響を潜在的に高く有する可能性がある。しかし、抗生物質の選択圧の減少は、しばしば、方法のロバスト性を危うくする、プラスミドの安定性および発現レベルの減少という結果になる。したがって、特に生産段階の間に、プラスミドの安定性および産物の発現レベルを増加させる一方で、抗生物質の使用を制限しようという技術的な挑戦がある。さらに、生産段階の間のプラスミドの低安定性は、代謝性ストレスに起因する可能性もあり(非特許文献20)、特に高培養液量において、低発現レベルへとつながる可能性がある(非特許文献21)。
Lee S.M. et al. Korean patent KR 160934 B1 19981116 Krivopalova G.N. et al. Russian Patent RU 2158303 C2 20001027
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抗生物質による高選択圧を維持するのに加えて、プラスミド安定性は、ベクター構築の段階で改善され得る(非特許文献22および23)。方法において、プラスミド安定性は、栄養飢餓を避けるなどの、培養条件を調節することによって改善され得る(非特許文献24)。大規模な基質制限フェドバッチ培養方法を実行する間、栄養制限/栄養飢餓は差し迫った問題であり、あまりに頻繁に、または大量に抗生物質を加えることは、複雑さが低い方法での、高収量の産物およびプラスミドの高安定性を維持するためには非現実的であり高価な溶液である。したがって、単純でロバストな方法を用いて、プラスミドの高安定性を維持することによって、G−CSFを高体積収量で調整する代替方法を開発する、明らかな必要性が存在する。
本発明は、生産培地および培養ブロスにおいて、高濃度の、マグネシウムイオンもしくはナトリウムイオンと組み合わせたカリウムイオンを用いて、培養物でのプラスミドの高安定性を維持することによって、大腸菌において高体積収量で顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)を生産するための、非循環フェドバッチ培養方法について記述する。
バッチの収穫時の、BL21(DE3)細胞でのG−CSF遺伝子を含有しているプラスミドの安定性に関しての、生産段階での高濃度のカリウムおよびナトリウム陽イオンの使用効果を示す図である。生産段階において、バッチ2は高濃度のカリウムおよびナトリウム塩で実行し、バッチ1は高濃度のカリウムおよびナトリウム塩なしで実行した。これらのバッチは30Lの発酵槽で別々に実行された。 収穫バッチでのG−CSFの体積収量に関する生産段階での高濃度のカリウムおよびナトリウム陽イオンの使用効果を示す図である。生産段階において、バッチ2は高濃度のカリウムおよびナトリウム塩で実行し、バッチ1は高濃度のカリウムおよびナトリウム塩なしで実行した。これらのバッチは30Lの発酵槽で別々に実行された。 バッチの収穫時の、BL21(DE3)細胞でのG−CSF遺伝子を含有しているプラスミドの安定性に関しての、生産段階での高濃度のマグネシウムおよびカリウム陽イオンの使用効果を示す図である。生産段階において、バッチ4は高濃度のマグネシウム塩で実行し、バッチ3は高濃度のマグネシウム塩は用いなかった。両バッチは高濃度のカリウム塩で、30Lの発酵槽で別々に実行された。 収穫バッチでのG−CSFの体積収量に関する高濃度のマグネシウムおよびカリウム陽イオンの使用効果を示す図である。生産段階において、バッチ4は高濃度のマグネシウム塩で実行し、バッチ3は高濃度のマグネシウム塩は用いなかった。両バッチは高濃度のカリウム塩で、30Lの発酵槽で別々に実行された。 収穫バッチでのG−CSFの体積収量に関しての生産段階での高特異的な成長速度の使用効果を示す図である。生産段階の間、バッチ4は約0.04l/hの平均特異的成長速度を有し、バッチ5は約0.07l/hの平均特異的成長速度を有した。両バッチは高濃度のカリウムおよびマグネシウム塩で、30Lの発酵槽で別々に実行された。 収穫バッチでのG−CSFの体積収量に関する生産段階での高濃度のチアミンの使用効果を示す図である。生産段階において、バッチ1は7g/Lのチアミンを生産培地で有し、バッチ6は生産培地にチアミンを少しも用いず行った。両バッチは、30Lの発酵槽で別々に実行された。
本発明は、体積収量(volumetric yields)が改善された水準での、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)の産生のための、発酵方法の改善に関する。それはまた、さらにはG−CSFの高体積収量につながる、プラスミドの安定性の改良に関する培養条件を開示する。本発明の方法は、生産培地での高濃度の、ナトリウム、マグネシウムなどの他の無機塩と組み合わせて、高濃度のカリウムの存在下で実行される、複数回誘導(multiple inductions)を介しての、非循環フェドバッチ培養方法に関与する。驚くべきことに、これ以降詳細に記述される、本発明での塩を用いるこのような方法を、特異的な高成長速度と組み合わせて用いた場合には、プラスミドの高安定性がそれでもなお維持され、さらなる体積収量の増加へとつながる。
本発明は、以下にさらに詳細に記述される。
任意の顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」ともまた呼ばれる)ポリペプチドを利用してよい。用語「顆粒球コロニー刺激因子」または「G−CSF」は、天然のG−CSF、突然変異タンパク質、断片、融合タンパク質、アナログおよびそれらの派生物であって、天然のhG−CSFのレセプター結合活性の少なくとも60%を生物学的に示すか、あるいはアミノ酸同一性で少なくとも約80%を保持しているものを意味する。このようなG−CSF配列の例には、Genbank配列番号GI:27437048が含まれ、それらは、米国特許第4810643号に記載される。
大腸菌細胞は、当該技術分野に著名な形質転換技術を用いて、他のベクター成分とともに、G−CSFならびにt7、tacおよび類似のプロモーターから選択される適切なプロモーターのコード配列を含む、適切な発現ベクターで形質転換される。
以下で記載される方法において、発酵とは、G−CSFの産生のための、微生物、好ましくは組換え大腸菌の好気生育を意味する。このような方法では、成長のバッチ段階(batch phase)とは、播種後の、(もし必要があれば)発酵槽の培養ブロスに水酸化アンモニウムを加えるのを除いては、栄養物のない期間を指す。培養ブロスは、細胞、培地ならびに(もしあれば)培地と細胞の派生物の懸濁液である。成長段階での基質制限フェドバッチ培養とは、主な炭素/エネルギー源(例えばグルコース)の濃度が制限されているような方法で、フェドバッチ培養基を培養ブロスに加えることによって、バイオマスの主要な増加(少なくとも2倍に)が生じる成長段階でのそれを意味する。前記培地の流量が、培養物の特異的な成長速度を決定する。前誘導培地とは、誘導体(例えばIPTG)を加える前に、培養ブロスに加えられる培養基とは異なる組成物を有する培地を指す。誘導とは、誘導体(例えばIPTGおよびラクトース)の添加によって、先行技術によって知られているツールによって決定されるように、細胞中のG−CSFの濃度を感知できるほどに増加させる方法である。生産培地は、培養基(growth media)とは異なる組成物を有し、G−CSF遺伝子の誘導の間、発酵槽中の培養ブロスに添加される。生産培地は、基質(例えばグルコース)の濃度を制限するような方法でも、加えられた。生産培地の流量は、生産段階の間の培養物の特異的な成長速度を決定する。
G−CSFをコードする適切な発現ベクターで事前に形質転換された、宿主である大腸菌は、最初にシェーカーフラスコ内で37℃で培養して、発酵槽のための種を成長させた。この種培養物を、発酵槽中の無菌の培養基を播種するために用いた。組換え大腸菌培養物が成長をし始め、培養ブロス中のグルコース濃度が0.5g/L以下にいったん落ちると、発酵の成長段階での基質制限フェドバッチ培養モードが開始される。基質制限フェドバッチ培養の態様で、フェドバッチ培養用培養基の供給が、成長段階の間、(指数的にまたは定速で)連続して、あるいは不連続で続けられた。培養ブロス中の、乾燥細胞重量で1〜60g/Lの細胞密度およびグルコース濃度が0.5g/L未満に到達した後、前生産培地を添加し、続いて生産培地の供給を開始して、連続または不連続の基質制限態様で続けた。G−CSFの複数回誘導を、IPTGで行った。誘導体の添加の間もしくは後、平均的な特異的成長速度は減少しない。pHを約5〜7に維持する。温度を約30〜42℃に維持する。前生産培地を添加して2から48h後に、培地を取り除いて、記載される技術に従い、ダウンストリーム処理(down stream processing)を行った。
成長段階の培地は、グルコース、グリセロール、などまたはそれらの混合物を含む群から選択される炭素およびエネルギー源、酵母抽出物、トリプトン、ペプトン、カゼイン酵素加水分解物、大豆(soyabean)カゼイン加水分解物など、またはそれらの混合物を含む群から選択される複合培地成分、クエン酸、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素カリウム、酪酸ナトリウム、チアミン、グリシン、および塩化亜鉛を含む群から選択される、適切な塩/栄養物を含む。
エアレーション、撹拌、播種、播種の時間などのような、他の発酵条件は、便宜上すべて取り入れるものは、先行技術で周知である。
前生産培地は、例えばチアミン、グリシンなどまたはそれらの混合物のような栄養物、カナマイシン、およびアンピシリンなどのような抗生物質とともに、酵母抽出物、トリプトン、ペプトン、カゼイン酵素加水分解物、大豆カゼイン加水分解物から選択される、複合培地成分を含む。適切な塩は、培地が高濃度水準のKイオンをNaもしくはMgイオンのいずれかとともに含む、クエン酸、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素カリウム、酪酸ナトリウム、および塩化亜鉛を含む群から選択される。
生産培地は、前生産培地の構成成分に加えて、炭素源を含む。適切な炭素源は、グリセロール、グルコース、フルクトースなどまたはそれらの混合物からなる群から選択され得る。本発明の好ましい炭素源はグルコースである。生産段階の間、培養ブロスは、NaもしくはMgイオンのいずれかとともに高濃度水準のKイオンで維持される。培養ブロス中で、Kイオンの濃度は約60mMから約300mM、Naイオンの濃度は約60mMから約300mM、Mgイオンの濃度は約150mMから約250mMで維持される。好ましい実施態様では、培養ブロス中、Kイオンの濃度は90mMから150mM、Naイオンの濃度は60mMから120mM、およびMgイオンの濃度は180mMから220mMの範囲である。
さらなる実施態様では、高濃度(5g/Lから10g/Lの範囲で)のチアミンの添加により、5〜6g/Lの範囲のG−CSFの収量が提供される。
本発明の方法により、成長段階および生産段階(75〜90%)を通して、プラスミドの高安定性の維持を伴う、G−CSFの高収量(5〜9.5g/L)での産生がもたらされる。
ある態様において、本発明は以下の通りである:
[態様1]
NaまたはMgから選択される高濃度の無機陽イオンとともに、60mMから180mMの濃度範囲でKイオンを含む培養ブロスでの発酵での、高体積収量の顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)を得るための改良方法。
[態様2]
前記Naイオンの濃度が90mMから300mMの範囲であり、Mgイオンの濃度が150mMから250mMの範囲である、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記培養ブロスが、酵母抽出物、トリプトン、ペプトン、カゼイン酵素加水分解物、および大豆カゼイン加水分解物からなる群から選択される複合培地成分を含む、態様1または2に記載の方法。
[態様4]
基質制限フェドバッチ培養方法である、態様1から3のいずれか一項に記載の方法。
[態様5]
生産段階の間に、遺伝子の複数回誘導を行う、態様1から4のいずれか一項に記載の方法。
[態様6]
前記培養ブロスがさらに、グルコース、グリセロール、およびフルクトースから選択される炭素源を含む、態様1から5のいずれか一項に記載の方法。
[態様7]
生産段階と前生産段階の間に、平均的な特異的成長速度が同一であるように維持される、態様1から6のいずれか一項に記載の方法。
[態様8]
Kイオンの濃度が90mMから150mMであり、Naイオンの濃度が60mMから120mMであり、Mgイオンの濃度が180mMから220mMの濃度である、態様1から7のいずれか一項に記載の方法。
[態様9]
プラスミドの安定性が少なくとも75%である、態様1から8のいずれか一項に記載の方法。
[態様10]
培養ブロスへの60mMから180mMの範囲でKイオンの添加によってG−CSFのプラスミド安定性を改善させる方法。
[態様11]
生産段階の抗生物質の濃度が、成長段階で用いられる濃度よりも低い、態様1から10のいずれか一項に記載の方法。
[態様12]
i) G−CSFをコードする適切な発現ベクターであらかじめ形質転換された適切な大腸菌の培養物を発酵槽に播種する工程と、
ii) バイオマスを増加させるための、成長段階のバッチ培養およびフェドバッチ培養のモードの工程と、
iii) 適切な前誘導培地の添加の工程と、
iv) 前記遺伝子の複数回誘導を行う前記基質制限フェドバッチ培養モードでの適切な生産培地の添加の工程を含み、
v) 前記培養ブロス中のK、NaおよびMgイオンの最終濃度が、態様1から11の一項もしくは複数項に規定された濃度である、
G−CSFの生産方法。
[態様13]
前記G−CSFの体積収量が5g/Lから9.5g/Lの範囲である、態様1から12のいずれか一項に記載の方法。
[態様14]
培養ブロスが、5g/Lから10g/Lの範囲でチアミンを含む、発酵での高体積収量のG−CSFを得るための改良方法。
以下に、本発明の例示として実施例を開示する。
プラスミドの安定性および体積収量に関するNaおよびKイオンの高濃度の効果
この実験を30Lの発酵槽で実行した。ヒトG−CSF遺伝子で形質転換された大腸菌BL21(DE3)細胞の種培養物を、以下の組成物の培養基に播種した。
組成物 播種前の濃度
KHPO 13.3g/L
(NHHPO 4.0g/L
酵母抽出物 1.0g/L
グルコース 10.0g/L
クエン酸 1.7g/L
MgSO・7HO 1.2g/L
微量要素溶液 20.0mL/L
(Trace element solution)
カナマイシン 50mg/L
微量金属溶液:
組成物 濃度
FeCl・6HO 0.162g/L
ZnCl・4HO 0.0144g/L
CoCl・6HO 0.12g/L
NaMoO・2HO 0.012g/L
CaCl・2HO 0.006g/L
CuCl 1.9g/L
BO 0.5g/L
基質制限フェドバッチ培養モードに、以下の「フェドバッチ培養用培養基」を添加することにより、バイオマスの重要な増加がもたらされた:
組成物 濃度
グルコース 700g/L
MgSO・7HO 20g/L
微量要素溶液 20mL/L
カナマイシン 500mg/L
成長段階では、水酸化アンモニウムを、6.8〜7.0の範囲にpHを維持するためのpH調節剤として用いた。温度を37℃に維持した。バッチ2で(600nmで)約50AUの光学濃度に到達した後に、以下の組成物から成る、前誘導培地を培養ブロスに加えた。
組成物 濃度
酵母抽出物 84.38g/L
塩化カリウム 75.41g/L
塩化ナトリウム 123.13g/L
塩化水素チアミン 8.44g/L
培養ブロス中のカリウムおよびナトリウム陽イオンの最終濃度は、それぞれ約120mMおよび250mMであった。
以下の生産培地の供給を、続いて開始した。
組成物 濃度
グルコース 270g/L
MgSO・7HO 1g/L
酵母抽出物 214g/L
塩化水素チアミン 7g/L
塩化カリウム 8.94g/L(バッチ2でのみ)
塩化ナトリウム 17.5g/L(バッチ2でのみ)
G−CSF遺伝子の発現を、培養ブロスにろ過滅菌したIPTG溶液を複数回添加することによって誘導させた。生産段階では、水酸化アンモニウムを、pH6.8に維持するためのpH調節剤として用いた。温度を37℃に維持した。選択圧を加えるために、カナマイシンを培養物に添加した。バッチ2の生産段階の間に用いられたカナマイシンの量(一度のみ37.5mgが添加された)は、バッチ1で用いられた量(複数回添加、2925mg)の約1%であったので、プラスミドの安定性に関する塩の効果について試すこととなった。
プラスミドの安定性は、はじめに無菌的に最後のバッチのサンプルを無菌チューブに回収してから、カナマイシン(50mg/L)有りもしくはなしのLB培地上に、適切に希釈したサンプルを適量、無菌的に塗ることによって決定した。プレートを37℃で48時間インキュベーションしてから、統計的に有意性のあるコロニーを、これらのプレートでカウントした。カナマイシンを含むプレートで得られるコロニー数を、カナマイシンを含まないプレートで得られるコロニー数で割ることによって得られる値を、プラスミドの安定性を計算するために用いた。バッチ2のプラスミド安定性(96.8%)は、バッチ1のプラスミド安定性(45.0%)と比較して2倍以上であったので、プラスミド安定性を改善するのにナトリウムおよびカリウムイオンの重要性が示された(図1)。
G−CSFの体積収量は、SDS−PAGEの後に、信憑性のあるスタンダードを用いた標準プロットに対してのGCSFバンドの比重の(densitometric)定量化によって決定し、バッチ1で5.38g/Lおよびバッチ2で5.81g/Lであった。バッチ2の体積収量は、バッチ1のそれより約8%高かった(図2)。
[実施例2]
プラスミドの安定性および体積収量に関するマグネシウムおよびカリウム陽イオンの高濃度の効果
この実験を30Lの発酵槽で実行した。両バッチ(バッチ3およびバッチ4)の生産段階培地は、マグネシウム陽イオンの濃度のみを除いて、カリウム陽イオンの濃度をも含む、同一であり、その結果は、カリウムおよびマグネシウム陽イオンの組み合わせの効果を反映した。ヒトG−CSF遺伝子で形質転換された大腸菌BL21(DE3)細胞の種培養物を、以下の組成物の培養基に播種した。
組成物 播種前の濃度
KHPO 13.3g/L
(NHHPO 4.0g/L
酵母抽出物 1.0g/L
グルコース 10.0g/L
クエン酸 1.7g/L
MgSO・7HO 1.2g/L
微量要素溶液 20.0mL/L
カナマイシン 50mg/L
微量金属溶液:
組成物 濃度
FeCl・6HO 0.162g/L
ZnCl・4HO 0.0144g/L
CoCl・6HO 0.12g/L
NaMoO・2HO 0.012g/L
CaCl・2HO 0.006g/L
CuCl 1.9g/L
BO 0.5g/L
基質制限フェドバッチ培養モードに、以下の「フェドバッチ培養用培養基」を添加することにより、バイオマスの重要な増加がもたらされた:
組成物 濃度
グルコース 700g/L
MgSO・7HO 20g/L
微量要素溶液 20mL/L
カナマイシン 500mg/L
成長段階では、水酸化アンモニウムを、6.8〜7.0の範囲にpHを維持するためのpH調節剤として用いた。温度を37℃に維持した。(600nmで)約50AUの光学濃度に到達した後に、以下の組成物から成る、前誘導培地を培養ブロスに加えた。
組成物 濃度
酵母抽出物 84.38g/L
塩化カリウム 75.44g/L
塩化水素チアミン 8.38g/L
硫酸マグネシウム 187.06g/L(バッチ4でのみ)
以下の生産培地の供給を、続いて開始した。
組成物 濃度
グルコース 270g/L
硫酸マグネシウム 1g/L(バッチ3でのみ)
硫酸マグネシウム 50.3g/L(バッチ4でのみ)
酵母抽出物 214g/L
塩化水素チアミン 7g/L
塩化カリウム 8.94g/L
G−CSF遺伝子の発現を、培養ブロスにろ過滅菌したIPTG溶液を複数回添加することによって誘導させた。生産段階では、水酸化アンモニウムを、pH6.8に維持するためのpH調節剤として用いた。温度を37℃に維持した。選択圧を加えるために、カナマイシンを培養物に添加した。生産段階の間、等量のカナマイシン(一度のみ37.5mgが添加された)を用いた。培養ブロス中のカリウムおよびマグネシウム陽イオンの濃度は、生産段階の間、それぞれ約120mMおよび200mMであった。
プラスミドの安定性は、前に記載したように決定した。バッチ4のプラスミド安定性(97.3%)は、バッチ3のプラスミド安定性(91.8%)と比較して約6%高かったので、プラスミド安定性を改善するのにマグネシウムおよびカリウムイオンの有効性が示された(図3)。マグネシウムおよびカリウム陽イオンの存在下で得られるプラスミド安定性は、バッチ1(生産段階での高濃度の塩がない)でのそれより116.2%高かった。
G−CSFの体積収量は、SDS−PAGEの後に、信憑性のあるスタンダードを用いた標準プロットに対してのGCSFバンドの比重の定量化によって決定し、バッチ3で5.48g/Lおよびバッチ4で8.35g/Lであった(図4)。バッチ4の体積収量は、バッチ1のそれより約55%高かった。
[実施例3]
体積収量に関しての生産段階の間の高特異的な成長速度の効果
この実験を30Lの発酵槽で実行した。両バッチ(バッチ4およびバッチ5)の生産段階の培地組成物は、マグネシウムおよびカリウム陽イオンの濃度を含めて同一であった。バッチ5の生産段階の間の平均的な特異的成長速度は、バッチ4の生産段階のそれより高かった。ヒトG−CSF遺伝子で形質転換された大腸菌BL21(DE3)細胞の種培養物を、以下の組成物の培養基に播種した。
組成物 播種前の濃度
KHPO 13.3g/L
(NHHPO 4.0g/L
酵母抽出物 1.0g/L
グルコース 10.0g/L
クエン酸 1.7g/L
MgSO・7HO 1.2g/L
微量要素溶液 20.0mL/L
カナマイシン 50mg/L
微量金属溶液:
組成物 濃度
FeCl・6HO 0.162g/L
ZnCl・4HO 0.0144g/L
CoCl・6HO 0.12g/L
NaMoO・2HO 0.012g/L
CaCl・2HO 0.006g/L
CuCl 1.9g/L
BO 0.5g/L
基質制限フェドバッチ培養モードに、以下の「フェドバッチ培養用培養基」を添加することにより、バイオマスの重要な増加がもたらされた:
組成物 濃度
グルコース 700g/L
MgSO・7HO 20g/L
微量要素溶液 20mL/L
カナマイシン 500mg/L
成長段階では、水酸化アンモニウムを、6.8〜7.0の範囲にpHを維持するためのpH調節剤として用いた。温度を37℃に維持した。(600nmで)約50AUの光学濃度に到達した後に、以下の組成物から成る、前誘導培地を培養ブロスに加えた。
組成物 濃度
酵母抽出物 84.38g/L
塩化カリウム 75.44g/L
塩化水素チアミン 8.38g/L
硫酸マグネシウム 187.06g/L
以下の生産培地の供給を、続いて開始した。
組成物 濃度
グルコース 270g/L
硫酸マグネシウム 50.3g/L
酵母抽出物 214g/L
塩化水素チアミン 7g/L
塩化カリウム 8.94g/L
G−CSF遺伝子の発現を、培養ブロスにろ過滅菌したIPTG溶液を複数回添加することによって誘導させた。生産段階では、水酸化アンモニウムを、pH6.8に維持するためのpH調節剤として用いた。温度を37℃に維持した。選択圧を加えるために、カナマイシンを培養物に添加した。生産段階の間、等量のカナマイシン(一度のみ37.5mgが添加された)を用いた。バッチ4の生産段階の間の平均的な特異的成長速度は約0.04l/hであり、バッチ5のそれは約0.07l/hであった。
G−CSFの体積収量は、すでに述べたようにして、バッチ4で8.35g/Lであり、バッチ5で9.94g/Lであると決定された。バッチ5の体積収量はバッチ4のそれより約19%高かった(図5)。両バッチの最後のバッチのサンプルでのプラスミド安定性は高かった(>75%)。
[実施例4]
体積収量に関しての生産段階での高濃度のチアミンを用いる効果
この実験を30Lの発酵槽で実行した。ヒトG−CSF遺伝子で形質転換された大腸菌BL21(DE3)細胞の種培養物を、以下の組成物の培養基に播種した。
組成物 播種前の濃度
KHPO 13.3g/L
(NHHPO 4.0g/L
酵母抽出物 1.0g/L
グルコース 10.0g/L
クエン酸 1.7g/L
MgSO・7HO 1.2g/L
微量要素溶液 20.0mL/L
カナマイシン 50mg/L(バッチ1において)
アンピシリン 100mg/L(バッチ6において)
微量金属溶液:
組成物 濃度
FeCl・6HO 0.162g/L
ZnCl・4HO 0.0144g/L
CoCl・6HO 0.12g/L
NaMoO・2HO 0.012g/L
CaCl・2HO 0.006g/L
CuCl 1.9g/L
BO 0.5g/L
基質制限フェドバッチ培養モードに、以下の「フェドバッチ培養用培養基」を添加することにより、バイオマスの重要な増加がもたらされた:
組成物 濃度
グルコース 700g/L
MgSO・7HO 20g/L
微量要素溶液 20mL/L
カナマイシン 500mg/L(バッチ1において)
アンピシリン バッチ6においてのみ培養ブロスに各添加50mg/
Lで。バッチの「フェドバッチ培養成長」段階の間に、
全部で6回の添加がなされた。
成長段階では、水酸化アンモニウムを、pH約6.8を維持するためのpH調節剤として用いた。温度を37℃に維持した。(600nmで)約50AUの光学濃度に到達した後に、以下の生産培地の供給を開始した。
組成物 濃度
グルコース 270g/L
MgSO・7HO 1g/L
酵母抽出物 214g/L
塩化水素チアミン 7g/L(バッチ1においてのみ)
カナマイシン 2.925g(バッチ1で複数回添加された)
アンピシリン 2.689g(バッチ6で複数回添加された)
G−CSF遺伝子の発現を、培養ブロスにろ過滅菌したIPTG溶液を複数回添加することによって誘導させた。生産段階では、水酸化アンモニウムを、pH6.8に維持するためのpH調節剤として用いた。温度を37℃に維持した。
G−CSFの体積収量は、すでに述べたようにして決定された。バッチ1(高チアミンバッチ)の最後のバッチのサンプルでの体積収量は、バッチ6(4.86g/L)のそれよりも約10.7%高かったので、G−CSFの体積収量を改善させるのに、高濃度のチアミンの効果が示された(図6)。
方法の利点
(1)高体積収量により、スモールスケールでの収量がより多くなるので、スケールアップに関する資本支出を制限するのが可能になる。
(2)高体積収量は、非常に低いコストの培地成分(マグネシウム、カリウムおよびマグネシウム塩)を用いて達成される。
(3)高プラスミド安定性を有する培養により、例えば高特異的な成長速度の条件でのG−CSF遺伝子の発現のような、代謝性ストレスの高い条件でのG−CSFの体積収量を産生することがより可能になる。

Claims (1)

  1. 培養ブロスが、90mMから300mMの濃度範囲にあるNaイオン及び150mMから250mMの濃度範囲にあるMgイオンから選択される高濃度の無機陽イオンとともに、60mMから180mMの濃度範囲でKイオン、ならびに5g/Lから10g/Lの範囲でチアミンを含む、培養ブロスにおける組換え大腸菌による発酵での高体積収量のサイトカイン顆粒球コロニー刺激因子(G−CSFを得るための改良方法。
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