JP5459465B2 - 低重合収縮性ビニルシクロプロパン化合物及びその重合方法 - Google Patents
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Description
本発明のビニルシクロプロパン化合物及びその重合物は、光学材料、成形材料、複合材料、注型材料、封止材料、医用材料、歯科材料、記録材料、セメント、塗料及び接着剤等の原料として有用であり、特にホログラム光記録媒体の材料として好適である。
また体積収縮の抑制効果が見込める化合物であっても、室温で固体であるため(非特許文献2及び非特許文献3)実際の使用において作業性に劣るという問題が残されていた。
すなわち、本発明は、第1観点として、式(1)で表されるビニルシクロプロパン化合物に関する。
R1は非置換の、又は、炭素原子数1乃至12の直鎖アルキル基、炭素原子数3乃至12のシクロアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、炭素原子数1乃至12のアシル基、炭素原子数1乃至12のアシルオキシ基及びヒドロキシ基からなる群から選択される置換基によって置換された炭素原子数3乃至18のシクロアルキル基を表し、
R2は水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。)
第2観点として、X及びYがC(=O)OR1を表す、第1観点に記載のビニルシクロプロパン化合物に関する。
第3観点として、R1が非置換の、又は、炭素原子数1乃至12の直鎖アルキル基、炭素原子数3乃至12のシクロアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、炭素原子数1乃至12のアシル基、炭素原子数1乃至12のアシルオキシ基及びヒドロキシ基からなる群から選択される置換基によって置換された炭素原子数5乃至8のシクロアルキル基を表す、第1観点又は第2観点に記載のビニルシクロプロパン化合物に関する。
第4観点として、R1がシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基又はシクロオクチル基を表す、第3観点に記載のビニルシクロプロパン化合物に関する。
第5観点として、第1観点乃至第4観点のうち何れか一項に記載のビニルシクロプロパン化合物の重合により又は該ビニルシクロプロパン化合物とその他のラジカル重合性化合物との共重合により得られる、重合物及び共重合物に関する。
第6観点として、ビニルシクロプロパン化合物の光重合方法であって、ビニルシクロプロパン化合物と、チタノセン化合物及び、チオール化合物とを含んで成る混合系に、可視光線を照射することを特徴とする光重合方法に関する。
第7観点として、前記ビニルシクロプロパン化合物が、下記式(1)で表されるビニルシクロプロパン化合物である、第6観点記載の光重合方法に関する。
R1は非置換の、又は、炭素原子数1乃至12の直鎖アルキル基、炭素原子数3乃至12のシクロアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、炭素原子数1乃至12のアシル基、炭素原子数1乃至12のアシルオキシ基及びヒドロキシ基からなる群から選択される置換基によって置換された炭素原子数3乃至18のシクロアルキル基を表し、
R2は水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。)
第8観点として、前記混合系の体積に基づいて、前記ビニルシクロプロパン化合物が50体積%以上を占める、第6観点又は第7観点に記載の光重合方法に関する。
第9観点として、前記可視光線が波長400乃至550nmの光であることを特徴とする、第6観点乃至第8観点のうち何れか一項に記載の光重合方法に関する。
第10観点として、第6観点乃至第9観点のうち何れか一項に記載の方法によって得られる重合物に関する。
また本発明のビニルシクロプロパン化合物よりなる重合物及び共重合物は、モノマーからの体積収縮が小さい(共)重合物であり、また、低屈折率の(共)重合物でもある。
従って、本発明のビニルシクロプロパン化合物及びそれよりなる(共)重合物は、その体積収縮が少ない特性を利用して、例えば接着剤、セメント、歯科材料、単板材料、複合材料、又は成形体の構成成分として利用することができる。さらに、体積収縮が少ないことに加えてその低屈折率、高透明性、重合前の低い粘性などの特性を利用して、例えばカメラプリズム、コーティング材料、光学窓材料、非線形型光学素子、光記録材料、ギャップフィル材料、体積ホログラムなどの光学材料として利用することができる。
従って、本発明の重合方法は、例えば接着剤、セメント、歯科材料、単板材料、複合材料、又は成形体等の製造時に、或いは、カメラプリズム、コーティング材料、光学窓材料、非線形型光学素子、光記録材料、ギャップフィル材料、体積ホログラムなどの光学材料製造時に好適に利用できる。
しかも本発明の重合方法は、ビニルシクロプロパン化合物に可視光線を照射することにより光重合させる方法を提供できる。したがって、紫外線を照射することが不可能あるいは不適切な系、例えば紫外線吸収剤を添加したり、紫外線を遮断した系でも潤沢に光重合又は光架橋硬化できる。このため、本方法は、インキ、塗料、コーティング、プリント基板、ホログラム材料、封止材料、レジスト材料など多くの産業分野にて応用が可能である。
本発明のビニルシクロプロパン化合物は、前記式(1)で表される化合物である。
本発明は、ビニルシクロプロパン化合物の構造中にシクロアルキル基を有する点を特徴としている。シクロアルキル基はその構造がフレキシブルであることから、当該ビニルシクロプロパン化合物が低粘度の液体となることを実現している。また本発明のビニルシクロプロパン化合物は、その置換基の選択により、炭素原子、水素原子、若しくは酸素原子のみからなるため、化合物の低屈折率化も可能であることを特徴としている。
R1は置換されていてもよい炭素原子数3乃至18のシクロアルキル基を表し、R2は水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基の何れかを表す。ここで、R1におけるシクロアルキル基の置換基としては炭素原子数1乃至12の直鎖アルキル基、炭素原子数3乃至12のシクロアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、炭素原子数1乃至12のアシル基、炭素原子数1乃至12のアシルオキシ基及びヒドロキシ基からなる群から選択される。
ここで、上記ビニルシクロプロパン化合物の重合時又は共重合時に用いる光重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス〔N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔2−(1−ヒドロキシブチル)〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕硫酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕等のアゾ系化合物;p−アジドベンズアルデヒド、p−アジドアセトフェノン、p−アジド安息香酸、p−アジドベンザルアセトフェノン、4,4’−ジアジドカルコン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフィド、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、及び4,4’−ジアジドスチルベン等のアジド系化合物;1−ジアゾ−2,5−ジエトキシ−4−p−トリルメルカプトベンゼンボロフルオリド、1−ジアゾ−4−N,N−ジメチルアミノベンゼンクロリド、及び1−ジアゾ−4−N,N−ジエチルアミノベンゼンボロフルオリド等のジアゾ系化合物;1,2−ナフトキノン−ジアジド(2)−4−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−ジアジド(2)−5−スルホン酸エステル、及び1,2−ナフトキノン−ジアジド(2)−4−スルホニルクロリド等のo−キノンジアジド系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイル ビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、ベンジル等のベンゾフェノン類;3,3’−カルボニルビス(7−(ジエチルアミノ)−2H−クロメン−2−オン)(みどり化学株式会社でBC(CAS[63226−13−1])として市販されている)等のビスクマリン;2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、及び2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等のビイミダゾール化合物;のほか、有機過酸化物、チタノセン化合物、チオール化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、トリクロロメチルトリアジン化合物、あるいはヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物等のオニウム塩化合物等が用いられる。これらのうちチタノセン化合物とチオール化合物とを組み合わせて用いることが好ましい。これら光重合開始剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
本発明においては、エチレン性不飽和結合を有する化合物の中でもアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルの単量体が特に好ましい。
またそれぞれのラジカル重合性化合物は単独で用いても良いし、必要に応じ混合して用いても構わない。
(4−ブロモベンジル)エステル−1−カルボニルオキシ)エトキシメチル)メタン、1−(2,2,2−トリス(2−(2−ビニルシクロプロパン−1−カルボン酸(4−ブロモベンジル)エステル−1−カルボニルオキシ)エトキシメチル))エトキシ−3−メトキシ−2,2−ビス(2−(2−ビニルシクロプロパン−1−カルボン酸(4−ブロモベンジル)エステル−1−カルボニルオキシ)エトキシメチル)プロパン、2,2,2−トリス(2−(2−ビニルシクロプロパン−1−カルボン酸(4−ブロモベンジル)エステル−1−カルボニルオキシ)エトキシメチル)エトキシ−2,2,2−トリス(2−(2−ビニルシクロプロパン−1−カルボン酸(4−ブロモベンジル)エステル−1−カルボニルオキシ)エトキシメチル)エタン、2,5−ビス(2−(2−ビニルシクロプロパン−1−カルボン酸エチルエステル−1−カルボニルオキシ)エトキシ)チオフェン、1−アセチル−2−ビニル−1−シクロプロパンカルボン酸エチルエステル及び1−ベンゾイル−2−ビニル−1−シクロプロパンカルボン酸エチルエステル等。
増感剤の例としては、具体的には、N−フェニルグリシン、ビスクマリン、ビスイミダゾール化合物、ベンゾイン化合物、ヨードニウム塩、アシルホスフィンオキシド化合物等が挙げられる。
の体積に基いて、ビニルシクロプロパン化合物の割合は、50体積%以上を占めることが好ましい。ビニルシクロプロパン化合物の占有割合が少ないと、重合時の収縮率抑制の効果が充分に得られない。また、ホログラム記録用の組成物として用いる場合、ホログラム記録の際に充分な回折効率が得られないといった問題が生じる可能性がある。
なお上記重合法において、混合系は上記ビニルシクロプロパン化合物群に加え前述のエチレン性不飽和結合を有する化合物として挙げたラジカル重合性化合物を含んでいてもよい。
前記体積ホログラム記録用組成物には、式(1)で表されるビニルシクロプロパン化合物を含み、さらに光重合開始剤及び無機微粒子とを含む。上記光重合開始剤としては前述のものを挙げることができる。
また、体積ホログラム記録用組成物の体積に基いて、上記式(1)で表されるビニルシクロプロパン化合物の割合が50体積%以上を占めることが好ましい。
上記体積ホログラム記録用組成物中、無機微粒子の割合は、重合状態における無機微粒子と樹脂成分の合計体積に占める無機微粒子の割合が3体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることがより好ましい。但し、組成物中に分散できる無機微粒子の量には限界があり、あまり多いと分散しにくくなるので、50体積%以下であることが好ましい。
表面処理剤としては無機微粒子表面と親和性があり、かつ重合性化合物中への分散性を高めるために表面官能基と疎水基を兼ね備えたものが好ましい。
表面反応性官能基としては、例えば、メチルシラン、エチルシランなどのアルキルシランや、メトキシシラン、エトキシシランなどのアルコキシシラン、クロロシランなどのハロゲン化シラン等の反応性シラン化合物、塩化チタンや、メトキシチタン、エトキシチタンなどのアルコキシチタン等の反応性チタン化合物、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、又はそのエステル等が挙げられる。
なお、実施例にて使用した分析装置及び条件は、下記のとおりである。
[1]融点
測定機器:メトラー・トレド株式会社製 自動融点測定装置、FP62
[2]質量分析
機種:日本ウォーターズ株式会社製 ZQ2000
検出法:ESI法
[3]1H NMR
機種:日本電子株式会社製 JNM−ECX300
測定溶媒:CDCl3
[4]13C NMR
機種:日本電子株式会社製 JNM−ECX300
測定溶媒:CDCl3
[5]粘度(E型粘度計)
機種:株式会社トキメック製 VISCONIC EMD
[6]ゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)
機種:東ソー株式会社製 HLC−8220GPC,
カラム:SHODEX GPC−8051×2本+ガードカラム(SHODEX GPC KF−G)
リファレンスカラム:SHODEX GPC KF−800RH×2本
カラム温度:40℃
検出器:UV(254nm)及びRI
溶離液:THF
カラム流速:1.0ml/min
リファレンスカラム流速:0.2ml/min
[7]屈折率
機種:京都電子工業株式会社製 屈折計RA−520N
測定波長:633nm
[8]密度
機種:株式会社島津製作所製 アキュピック1330
機種:京都電子工業株式会社製 密度比重計DA−500
重合前のモノマーの25℃における密度(dモノマー)と、重合して得られた重合硬化物の25℃における密度(d重合物)をそれぞれ測定し、下記式により体積収縮率(%)を求めた。
体積収縮率(%)={(d重合物−dモノマー)/d重合物}×100
・m/z:315(M+Na+)(計算値315.16(M+Na+))
・1H NMR(300MHz,CDCl3):1.49(1H,q,J=4.5Hz),1.55〜1.90(17H,m),2.53(1H,q,J=8.1Hz),5.12(1H,dd,J=1.8Hz,9.9Hz),5.17〜5.22(2H,m),5.28(1H,dd,J=1.8Hz,17.1Hz),5.36〜5.48(1H,m)ppm
・13C NMR(75MHz,CDCl3):20.2(s),23.7(t),30.8(s),32.4(t),36.1(s),78.3(d),118.1(s),133.2(s),167.2(s),169.5(s)ppm
・m/z:343(M+Na+) (計算値343.19(M+Na+))
・1H NMR(300MHz,CDCl3):1.23〜1.90(22H,m),2.55(1H,q,J=8.1Hz),4.78〜4.82(2H,m),5.11(1H,dd,J=1.8Hz,9.9Hz),5.28(1H,dd,J=1.8Hz,17.1Hz),5.37〜5.49(1H,m)ppm
・13C NMR(75MHz,CDCl3):20.2(s),23.6(t),25.3(d),30.7(s),31.4(t),36.2(s),73.9(d),118.1(s),133.3(s),167.0(s),169.2(s)ppm
、シクロヘプタノール 5.71g(50.0mmol)、及び4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)0.61g(5.0mmol)を反応容器に投入し、窒素雰囲気下でジクロロメタン 29gを加えて攪拌し、溶解させた後、0℃に冷却した。その中に、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)14.4g(70.0mmol)をジクロロメタン 6gに溶解した溶液を、発熱に留意しながら滴下した。滴下終了後、さらに室温で12時間撹拌した。反応混合物から析出した固体をろ過して除去した後、溶媒を留去し得られた粗生成物をシリカゲルカラムで精製(ヘキサン:酢酸エチル=98:2)し、無色透明の液体である目的物を収量5.5g(収率63%)で得た。目的物の質量分析、1H NMR、13C NMRの結果を以下に示す。
・m/z:371(M+Na+) (計算値371.22(M+Na+))
・1H NMR(300MHz,CDCl3):1.45〜1.77(22H,m),1.80〜1.98(4H,m),2.54(1H,q,J=8.1Hz),4.92〜5.01(2H,m),5.11(1H,dd,J=1.8Hz,9.9Hz),5.27(1H,dd,J=1.8Hz,17.1Hz),5.36〜5.46(1H,m)ppm・13C NMR(75MHz,CDCl3):20.2(s),22.8(t),28.3(t),30.7(s),33.6(t),36.3(s),76.4(s),118.1(s),133.4(s),166.9(s),169.2(s)ppm
・m/z:399(M+Na+) (計算値399.25(M+Na+))
・1H NMR(300MHz,CDCl3):1.42〜1.89(30H,m),2.53(1H,q,J=8.1Hz),4.92〜5.03(2H,m),5.11(1H,dd,J=1.8Hz,9.9Hz),5.27(1H,dd,J=1.8Hz,17.1Hz),5.36〜5.48(1H,m)ppm
・13C NMR(75MHz,CDCl3):20.2(s),22.9(q),25.3(d),27.0(s),27.1(t),30.7(s),31.3(q),36.2(s),76.4(s),118.1(s),133.4(s),166.9(s),169.2(s)ppm
実施例1で調製したジシクロペンチル 2−ビニルシクロプロパン−1,1−ジカルボキシレート 1.0gにベンゾインエチルエーテル 20mgを混合した。この混合系をガラス基板上に滴下して照射用サンプルを調製した。浜松ホトニクス株式会社製 LIGHTENINGSシリーズLC5を用い、光源として35W メタルハライドランプを用い、光源から20cmの位置に照射用サンプルを設置し、25℃において30分光照射を行うことにより重合硬化物を得た。硬化物の25℃における密度を測定した結果、1.134g/cm3であり、そこから計算される体積収縮率は5.7%であった。得られた重合硬化物のGPCによる重量平均分子量Mwと1H NMRの結果を示す。
・Mw(GPC):63,000
・1H NMR(300MHz,CDCl3):1.4〜1.9(16H,brs),2.47(4H,brs),5.15(2H,brs),5.33(2H,brs)ppm
実施例2で調製したジシクロヘキシル 2−ビニルシクロプロパン−1,1−ジカルボキシレート 1.0gにベンゾインエチルエーテル 20mgを混合した。この混合系に実施例5と同様の方法で光照射を行うことにより重合硬化物を得た。硬化物の25℃における密度を測定した結果、1.102g/cm3であり、そこから計算される体積収縮率は4.2%であった。得られた重合硬化物のGPCによる重量平均分子量Mwと1H NMRの結果を示す。
・Mw(GPC):85,000
・1H NMR(300MHz,CDCl3):1.2〜1.9(20H,brs),2.54(4H,brs),4.77(2H,brs),5.34(2H,brs)ppm
実施例3で調製したジシクロヘプチル 2−ビニルシクロプロパン−1,1−ジカルボキシレート 1.0gにベンゾインエチルエーテル 20mgを混合した。この混合系に実施例5と同様の方法で光照射を行うことにより重合硬化物を得た。硬化物の25℃における密度を測定した結果、1.148g/cm3であり、そこから計算される体積収縮率は8.4%であった。得られた重合硬化物のGPCによる重量平均分子量Mwと1H NMRの結果を示す。
・Mw(GPC):133,000
・1H NMR(300MHz,CDCl3):1.4〜1.9(24H,brs),2.48(4H,brs),4.93(2H,brs),5.33(2H,brs)ppm
実施例4で調製したジシクロオクチル 2−ビニルシクロプロパン−1,1−ジカルボキシレート 1.0gにベンゾインエチルエーテル 20mgを混合した。この混合系に実施例5と同様の方法で光照射を行うことにより重合硬化物を得た。硬化物の25℃における密度を測定した結果、1.128g/cm3であり、そこから計算される体積収縮率は7.5%であった。得られた重合硬化物のGPCによる重量平均分子量Mwと1H N
MRの結果を示す。
・Mw(GPC):218,000
・1H NMR(300MHz,CDCl3):1.4〜1.9(28H,brs),2.47(4H,brs),4.93(2H,brs),5.33(2H,brs)ppm
マロネート 19.39g(103mmol)を無水テトラヒドロフラン 22mLに溶解した溶液を、発熱、発泡に留意しながら滴下した。滴下終了後、1時間攪拌し、さらに室温で88時間撹拌した。その後、反応系中に水 58gをゆっくり滴下して攪拌した。その後、ジイソプロピルエーテル 200mLで3回抽出し、得られた有機層を5%炭酸水素ナトリウム水 100mLで洗浄した。分液後の有機層に無水硫酸マグネシウムを加えて静置後、ろ過し、溶媒をエバポレーターで留去することで、21.78gの粗物を得た。そこから9.37gを取り出し、シリカゲルカラムで精製(ヘキサン:酢酸エチル=95:5〜90:10)し、無色透明オイルの目的物を収量6.16g(収率58%)で得た。得られた目的物の1H NMR及び13C NMRを以下に示す。
・1H NMR(300MHz,CDCl3):1.20〜1.29(12H,m),1.49(1H,q,J=4.5Hz),1.64(1H,q,J=4.5Hz),2.55(1H,q,J=8.1Hz),5.00〜5.14(3H,m),5.28(1H,d,J=17.1Hz),5.31〜5.49(1H,m)ppm
・13C NMR(75MHz,CDCl3):20.0(s),21.6(q),30.6(s),36.1(s),68.8(s),69.1(s),118.1(s),133.2(s),166.9(s),169.2(s)ppm
得た。そこから5.68gを取り出し、シリカゲルカラムで精製(ヘキサン:酢酸エチル=95:5〜90:10)し、白色結晶2.50gで得た。これにヘプタン 7.50gを加えて室温で溶解させた後に−70℃に冷却して析出した結晶を洗浄し、乾燥させ、白色結晶の目的物を収量1.81g(収率38%)で得た。融点52.9℃(2回測定した平均値)。得られた目的物の1H NMR及び13C NMRを以下に示す。
・1H NMR(300MHz,CDCl3):1.23〜1.55(20H,m),2.42〜2.50(1H,m),5.09〜5.30(2H,m),5.37〜5.49(1H,m)ppm
・13C NMR(300MHz,CDCl3):19.7(s),28.0(s),29.9(s),37.6(s),81.2(s),81.7(s),117.7(s),133.5(s),166.8(s),169.1(s)ppm
マクロモレキュルズ(Macromolecules),1993年,26巻,p.1818−1824に記載のジエチル 2−ビニルシクロプロパン−1,1−ジカルボキシレートの25℃における密度は1.020g/cm3、この化合物の重合物の密度は1.134g/cm3である。これらの値から計算される重合物の体積収縮率は10.1%である。
比較例1で調製したジイソプロピル 2−ビニルシクロプロパン−1,1−ジカルボキシレート(液状、25℃における密度1.104g/cm3)1.0gにベンゾインエチルエーテル 30mgを混合した。この混合系に実施例5と同様の方法で光照射を行うことにより重合硬化物を得た。硬化物の密度を測定した結果、1.213g/cm3であり、そこから計算される体積収縮率は9.0%であった。
また参考例1及び比較例3の結果より、化合物内の置換基がエチルエステル基、イソプロピルエステル基であるビニルシクロプロパン化合物では、重合物の体積収縮抑制の効果が不充分であり、比較例2で調製したターシャリーブチルエステル基を有するビニルシクロプロパン化合物では室温で固体となるとする結果となった。
1,1−ビス(シクロヘキシルオキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン 300mgに、ジルコニアゾル(住友大阪セメント株式会社製、製品名:ナノジルコニアトルエン分散液)1.914g、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)(チバ・ジャパン株式会社製、商品名:Irgacure 784)3mg、ペンタエリスリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)(東京化成工業株式会社製)3mgを混合し、均一に分散させ、感光性組成物を調製した。
国際公開第2008/23612号パンフレットに記載の実施例1の方法に従い、実施例9で調製した組成物を用いて体積位相型ホログラム記録媒体を作製し、その回折効率を測定したところ、露光時間500秒で最高約95%であった。
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名A−DCP)500mgに、ジルコニアゾル(住友大阪セメント株式会社製、製品名:ナノジルコニアトルエン分散液)3.05g、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)(チバ・ジャパン株式会社製、商品名:Irgacure 784)5mgを混合し、均一に分散させ、感光性組成物を調製した。
比較例4で調製した感光性組成物を用い、実施例10と同様の方法で体積ホログラムの記録を実施した。本サンプルの回折効率は露光時間500秒で最高約45%であった。
以下の実施例12〜実施例14、比較例6〜比較例9で用いた1,1−ビス(メトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパンは例えば特開昭63−150249記載の方法により得ることができる。
なお、実施例12〜実施例14、比較例6〜比較例9の硬化試験に用いたレオメーターは、ジャスコインタナショナル株式会社製 VAR−50を用いた。レオメーターの測定条件は、波長532nmのNd:YVO4レーザーを光源として強度60mW/cm2の光を照射し、厚さ50μm、周波数1Hz、応力104Paとして実施した。以下に示す硬化時間は、光照射を開始してから貯蔵弾性率が104Paを超えるまでの時間と定義した。
実施例2で調製したジシクロヘキシル 2−ビニルシクロプロパン−1,1−ジカルボキシレート 100質量部と、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)(チバ・ジャパン株式会社製、商品名:Irgacure 784)1質量部と、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(東京化成工業株式会社製)1質量部とを混合し、均一の混合系とした。この混合系をガラス基板上に滴下して照射用サンプルを作製した。光照射はコヒレント・ジャパン株式会社製 Verdi(波長532nm)を光源として用い、ビーム径を広げてサンプル全面に照射できるようにして実施した。この方法で、25℃において強度100mW/cm2の光を30分照射することにより、重合硬化物を得た。得られた重合硬化物のGPCによる重量平均分子量Mwと1H NMRの測定結果を示す。
・Mw(GPC):32,000
・1H NMR(300MHz,CDCl3):1.2〜1.9(20H,brs),2.54(4H,brs),4.77(2H,brs),5.34(2H,brs)ppm
1,1−ビス(メトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン 100質量部と、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)(チバ・ジャパン株式会社製、商品名:Irgacure 784)1質量部と、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(東京化成工業株式会社製)1質量部とを混合し、均一の混合系とした。レオメーターを用いてこの混合系の硬化試験を実施したところ、硬化したことを確認できた。硬化時間は52
0秒であった。
1,1−ビス(メトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン 100質量部と、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)(チバ・ジャパン株式会社製、商品名:Irgacure 784)1質量部と、2−ベンゾチアゾールチオール(関東化学株式会社製)1質量部とを混合し、均一の混合系とした。レオメーターを用いてこの混合系の硬化試験を実施したところ、硬化したことを確認できた。硬化時間は1370秒であった。
1,1−ビス(メトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン 100質量部と、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)(チバ・ジャパン株式会社製、商品名:Irgacure 784)1質量部と、1−ドデカンチオール(東京化成工業株式会社製)1質量部とを混合し、均一の混合系とした。レオメーターを用いてこの混合系の硬化試験を実施したところ、硬化したことを確認できた。硬化時間は650秒であった。
1,1−ビス(メトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン 100質量部と、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)(チバ・ジャパン株式会社製、商品名:Irgacure 784)1質量部と、チオール化合物に代えてベンゾフェノン系光重合開始剤である4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)1質量部とを混合し、均一の混合系とした。レオメーターを用いてこの混合系の硬化試験を実施したところ、混合系が硬化したことを確認できなかった。
1,1−ビス(メトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン100質量部と、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)(チバ・ジャパン株式会社製、商品名:Irgacure 784)1質量部のみを混合し、チオール化合物を用いずに均一の混合系とした。レオメーターを用いてこの混合系の硬化試験を実施したところ、混合系が硬化したことを確認できなかった。
1,1−ビス(メトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン100質量部と、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)(チバ・ジャパン株式会社製、商品名:Irgacure 784)1質量部と、チオール化合物に代えて増感剤としてN−フェニルグリシン(東京化成工業株式会社製)1質量部とを混合し、均一の混合系とした。レオメーターを用いてこの混合系の硬化試験を実施したところ、混合系が硬化したことを確認できなかった。
1,1−ビス(メトキシカルボニル)−2−ビニルシクロプロパン100質量部と、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)(チバ・ジャパン株式会社製、商品名:Irgacure 784)1質量部と、チオール化合物に代えてビスイミダゾール化合物系光安定剤として2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール(黒金化成株式会社製、商品名ビイミダゾール)1質量部と、さらに増感剤
としてN−フェニルグリシン1質量部(東京化成工業株式会社製)とを混合し、均一の混合系とした。レオメーターを用いてこの混合系の硬化試験を実施したところ、混合系が硬化したことを確認できなかった。
一方、チオール化合物を使用しない比較例6乃至比較例9は混合系は、たとえ増感剤等を併用しても硬化せず本発明の目的を達成できないことが判明した。
Claims (9)
- 式(1)で表されるビニルシクロプロパン化合物。
R1は非置換の、又は、炭素原子数1乃至12の直鎖アルキル基、炭素原子数3乃至12のシクロアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、炭素原子数1乃至12のアシル基、炭素原子数1乃至12のアシルオキシ基及びヒドロキシ基からなる群から選択される置換基によって置換された炭素原子数3乃至18のシクロアルキル基を表し、
R2は水素原子、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基を表す。) - X及びYがC(=O)OR1を表す、請求項1に記載のビニルシクロプロパン化合物。
- R1が非置換の、又は、炭素原子数1乃至12の直鎖アルキル基、炭素原子数3乃至12のシクロアルキル基、炭素原子数1乃至12のアルコキシ基、炭素原子数1乃至12のアシル基、炭素原子数1乃至12のアシルオキシ基及びヒドロキシ基からなる群から選択される置換基によって置換された炭素原子数5乃至8のシクロアルキル基を表す、請求項1又は請求項2に記載のビニルシクロプロパン化合物。
- R1がシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基又はシクロオクチル基を表す、請求項3に記載のビニルシクロプロパン化合物。
- 請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載のビニルシクロプロパン化合物の重合により又は該ビニルシクロプロパン化合物とその他のラジカル重合性化合物との共重合により得られる、重合物及び共重合物。
- ビニルシクロプロパン化合物の光重合方法であって、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載のビニルシクロプロパン化合物と、チタノセン化合物及び、チオール化合物とを含んで成る混合系に、可視光線を照射することを特徴とする光重合方法。
- 前記混合系の体積に基づいて、前記ビニルシクロプロパン化合物が50体積%以上を占める、請求項6に記載の光重合方法。
- 前記可視光線が波長400乃至550nmの光であることを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の光重合方法。
- 請求項6乃至請求項8のうち何れか一項に記載の方法によって得られる重合物。
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