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JP5446499B2 - 耐遅れ破壊特性に優れた鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐遅れ破壊特性に優れた鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐遅れ破壊特性に優れた鋼板に関するものである。詳しく述べると本発明は、主として自動車分野および建材分野に用いる強度部材に適用され、耐遅れ破壊特性が要求される、引張り強度1180MPa(約120kgf/mm)以上を有する高張力鋼板に関するものである。
従来、自動車用鋼板としては、その板厚の精度や平担度に関する要求から冷延鋼板が用いられているが、近年、自動車のCO排出量の低減及び安全性確保の観点から、自動車用鋼板の高強度化が図られている。
しかしながら、鋼材の強度を高めていくと、「遅れ破壊」という現象が生じやすくなることが知られており、これは強度の増大と共に著しく激しくなり、特に引張り強さ1180MPa以上の高強度鋼で顕著となる。なお、「遅れ破壊」とは、高強度鋼材が静的な負荷応力(引張り強さ以下の負荷応力)を受けた状態で、ある時間が経過したとき、外見上はほとんど組成変形を伴うことなく、突然脆性的な破壊が生じる現象である。
この「遅れ破壊」は、鋼板の場合、プレス加工により所定の形状に成形したときの残留応力と、このような応力集中部における鋼の水素脆性により生じるものであることが知られている。この水素脆性の起因となる水素は、ほとんどの場合外部環境より鋼中に侵入し、それが拡散するものと考えられており、代表的には、鋼材の腐食に伴い侵入する水素である。
高強度鋼板におけるこのような遅れ破壊を防止する上で、例えば特許文献1に記載のように、鋼板の組織や成分を調整することにより、遅れ破壊感受性を弱める検討がなされている。しかしながら、このような手法を用いた場合には、鋼板内部へ外部環境から侵入する水素量を抑制する効果はなく、遅れ破壊発生を遅らせることは可能であるとしても、遅れ破壊自体を抑制することはできない。すなわち、遅れ破壊を本質的に改善するためには、鋼板内部への水素侵入量自体を制御する方法が必要である。
このような観点から、特許文献2においては、冷延鋼板上にNi又はNi基合金メッキを施すことにより鋼板内部への水素侵入量を抑制することで遅れ破壊を抑制する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献2に記載のNi又はNi基合金を電気メッキした場合、メッキ時に発生する水素が鋼板内に残存することで、遅れ破壊を引き起こすことが考えられる。さらに、鋼板表面にメッキしたままで、プレス加工に供した場合、メッキ層と鋼板との密着性が弱く、加工時にメッキ層が損傷し、目的とする効果が得られない可能性も高い。
特開2004−231992 特開平6−346277号
従って本発明は、上記したような従来技術における課題を解決してなる耐遅れ破壊特性に優れた鋼板を提供することを課題とするものである。本発明はさらに、主として自動車分野および建材に用いる強度部材として好適な、耐遅れ破壊特性に優れた、引張り強度1180MPa以上を有する高張力鋼板を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋼板内への水素の侵入を抑制することにより、遅れ破壊を防止する手段に関し、鋭意検討および研究を重ねた。その結果、鋼板表面に所定量のNiないしNi基合金を付着させた後、熱処理を行うことによりNiを鋼板内部へと拡散させることにより、鋼材への水素侵入量を大幅に抑制し、鋼材の遅れ破壊を抑制することが可能であることを見出した。
本発明は、以上のような知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
すなわち、上記課題を解決する本発明は、表面近傍にNi拡散領域を有し、該Ni拡散領域はNiまたはNi基合金を有し、且つNiまたはNi基合金の片面当たりの付着量が10mg/m以上2000mg/m以下(Ni基合金の場合、上記量はNi換算値である。)であることを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた鋼板である。
本発明は、また、前記鋼板が、1180MPa以上の引張り強度を有する冷延鋼板である耐遅れ破壊性に優れた鋼板を示すものである。
上記課題を解決する本発明は、鋼板表面に片面当たり10mg/m以上2000mg/m以下(Ni基合金の場合、上記量はNi換算値である。)のNiまたはNi基合金を付着させた後、加熱処理を行い、鋼へNiを拡散させることを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた鋼板の製造方法である。
本発明はさらに、前記熱処理が700℃以上1100℃以下の温度にて10秒以上行われるものである耐遅れ破壊性に優れた鋼板の製造方法を示すものである。
本発明は、また、前記鋼板として、冷延鋼板を用いる耐遅れ破壊性に優れた鋼板の製造方法を示すものである。
本発明によれば、遅れ破壊を効果的に抑制することが可能である鋼板、特に高張力冷延鋼板を提供することができ、腐食代の削減による板厚減少も可能となるため、自動車ないし各種構造物の重量削減が可能となり、工業的に極めて価値のたかいものである。
実施例における遅れ破壊評価に際して用いられた評価用試験片の概略形状を示す図である。 実施例において行った複合サイクル腐食試験の工程を説明する図である。
以下、本発明を、実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明に係る耐遅れ破壊性に優れた鋼板の基質となる鋼板としては、その化学組成および組織構造、あるいは圧延方法等については特に限定されるものではなく、各種のものとすることができる。
しかしながら、このうち、自動車分野や建材分野等において用いられる、特に自動車分野等において多く用いられる冷延鋼板が望ましい。なかでも、引張り強度が、980MPa(約100kgf/mm)以上、特に、1180MPa(約120kgf/mm)以上の冷延鋼板であることが望ましい。
すなわち、引張り強度が、例えば980MPa以下の鋼板に対し、本発明に係るNi拡散領域を形成しても当該鋼板の各種特性には影響は与えないので980MPa以下の鋼板へ適用してもよい。しかしながら、引張り強度の低い鋼板は、本質的に遅れ破壊が生じにくいため、本発明に係るNi拡散領域を形成することでコスト増加につながることから、上記したような高張力鋼に適用することが望ましい。
なお、上記したように本発明において好ましく用いられる高強度冷延鋼板においては、機械特性等の諸特性を向上させるために、例えば、C、Nなどの侵入型固溶元素およびSi、Mn、P、Crなどの置換型固溶元素の添加による固溶体強化、Ti、Nb、Vなどの炭・窒化物による析出強化、その他、W、Zr、Hf、Co、B、希土類元素等の強化元素の添加といった化学組成的改質、再結晶の起こらない温度で回復焼きなましすることによる強化あるいは完全に再結晶させずに未再結晶領域を残す部分再結晶強化、ベイナイトやマルテンサイト単相化あるいはフェライトとこれら変態組織の複合組織化といった変態組織による強化、フェライト粒径をdとしたときのHall-Petchの式:σ=σ0+kd1/2(式中σ:応力、σ0、k:材料定数)で表される細粒化強化、圧延などによる加工強化といった組織的ないし構造的改質が、単独ないし複数組み合わせて行われているが、上記したように本発明において用いられる鋼板の化学組成および金属組織としては、特に限定されるものではなく、所期の引張り強度を有するものであれば、いかなる組成および組織を有するものでも良い。
なお、このような高強度冷延鋼板の組成として、一例を挙げると、例えば、C:0.1〜0.4質量%、Si:0〜2.5質量%、Mn:1〜3質量%、P:0〜0.05質量%、S:0〜0.005質量%、および残部がFeおよび不可避的不純物であるもの、Cu、Ti、V、Al、Crなどを例示することができるが、もちろん何らこれらに限定されるものではない。
また、高強度冷延鋼板として商業的に入手可能なものとしては、例えば、JFE−CA1180、JFE−CA1370、JFE−CA1470、JFE−CA1180SF、JFE−CA1180Y1、JFE−CA1180Y2 (以上、JFEスチール製)、SAFC1180D(新日本製鐵製)等が非限定的に例示できる。
また、特に限定されるものではないが、本発明において基質となる鋼板の厚さとしては、例えば、0.8〜2.5mm程度、より好ましくは1.2〜2.0mm程度のものが適当である。
本発明に係る耐遅れ破壊性に優れた鋼板は、上記したような鋼板表面に所定量のNiまたはNi基合金を付着させ、加熱処理を行うことにより鋼板内部へNiを拡散させてなるものであって、当該所定の付着量で鋼板表面近傍部位にNi拡散領域を有する。
なお、上記したように商業的に入手可能な高強度冷延鋼板に本発明に係るNi拡散領域を形成する場合、製品とされた冷延鋼板表面にNiないしNi基合金を鋼材表面に付着させ、その後鋼板を加熱することでNiを鋼板内に拡散させることも可能であるが、後述するように、このような鋼板の製造過程において、冷間圧延後の鋼板に、NiないしNi基合金を鋼板表面に付着させ、その後鋼板を加熱および急速冷却を行い鋼板の強度調整を行う連続焼鈍時にNiを鋼板内に拡散させることも可能である。
本発明者らの研究および検討結果によれば、腐食過程における鋼板内部への水素侵入は、湿潤環境下におけるFe錆の酸化還元反応が大きく寄与していると考えられる。すなわち、水素侵入を抑制するためには、Fe錆を変化しにくい状態にする、いわゆる「安定錆」を形成することが重要である。安定錆を形成するためには、鋼へのNi添加が有効であり、耐候性鋼として用いられる分野においては、Ni添加鋼は広く用いられ、大きな効果が得られている。しかしながら、耐候性鋼として用いられる分野においては加工が厳しくないため、耐候性鋼を用いることができる。しかしながら、例えば、自動車分野のような強加工を強いられる分野では、加工により鋼材の割れの発生を引き起こし易くなるため、鋼板成分としてNiを添加することは好ましくない。また、鋼板成分としてNiを添加する場合、本発明と同等の効果を得るためには、過大な添加量が必要となるため、コスト増加につながり、工業的に好ましくないと言える。
上記したような安定錆を、鋼板表層で形成させるためには、鋼板表面へのNiの付着量として片面当たり10mg/m以上2000mg/m以下とすることが必要である。Niの付着量が10mg/mより少ない場合、熱処理により鋼板表層部にNiを拡散させても、安定錆が形成されることがなく、Niを添加しない場合と同程度の遅れ破壊挙動を示す。一方、付着量が2000mg/mより多くなる場合、遅れ破壊を抑制する効果は得られるものの、プレス加工時に、表面に形成したNi皮膜ないしNi拡散領域が欠損し、例えば、自動車の製造における連続プレス時の欠陥となるため好ましくない。
なお、特に限定されるものではないが、より望ましいNi付着量としては、50mg/m以上300mg/m以下程度である。
また、本発明においては、このように、鋼板表面へNiを例えばメッキにより付着させた後、加熱処理を行い、表面に付着したNiを鋼板表層部位に拡散させることが必要である。加熱処理を行わない場合、表面に付着したNi皮膜、例えば、Niメッキ皮膜と鋼板との密着性が十分なものでないため、プレス加工時にNi皮膜が欠損し、前述したと同様にプレス時の欠陥となるために好ましくない。さらに加熱処理を行わない場合、例えば、メッキ処理時にNi皮膜中に侵入した水素が残存しているため、遅れ破壊発生の原因となる。さらに安定錆形成の観点から、Niメッキのままの場合は、錆中に金属Niとして残存することが多く、安定錆形成に寄与するNiが非常に少なくなるため、本発明の所期の効果が十分に得られない。
Niを鋼板表層部位に拡散させるための加熱処理条件としては、700℃以上で実施することが好ましい。700℃より処理温度が低い場合、鋼へのNi拡散速度が遅くなるため、十分な拡散処理が実施できず、本発明の所期の効果が十分に得られない。処理温度の上限としては、特に限定されるものではないが、製造ラインや加熱炉の能力を考慮すれば、一般的には1100℃程度までであることが望ましい。また加熱時間としては、処理温度、Niの付着量等によってもある程度左右されるが、例えば10秒よりも短い場合、鋼へのNi拡散速度が遅くなるため、十分な拡散処理が実施できず、本発明の所期の効果が十分に発揮できなくなるおそれがある。一方、加熱時間の上限値としては、特に制限はない。ただ、必要以上にあまり長時間行っても効果の面で差異は生じず、エネルギーコスト面からも不利となるので、例えば、1時間程度の範囲内に留めることが望ましい。
本発明に係る耐遅れ破壊性に優れた鋼板を得る上で、鋼板表面に付着させるNiとしては、Ni単体のみならず、Ni基合金であっても良い。ここで、Ni基合金とは、NiにFe、Co、Zn、Cr、Mn、Cu、MoおよびO等の1種または2種以上を、当該合金の20質量%以下で含有するものを指し、この範囲内のものであれば、本発明の所期の効果を十分に達成することが可能である。なお、このようなNi基合金を使用する場合、上記した10mg/m以上2000mg/m以下という付着量は、これらの合金に含まれるNiでの換算値である。
NiまたはNi基合金を鋼板表面へと付着させる方法としては、特に限定されるものではなく、公知の各種の方法により実施することが可能であるが、例えば、電気メッキ法、無電解メッキ法、蒸着法等を用いることができる。
また、NiまたはNi基合金を鋼板表面へと付着させた際、鋼板表面に付着したNi層またはNi基合金層は、必ずしも鋼板表面を完全に被覆した皮膜である必要性はなく、例えば、鋼板表面において部分的に島状に点在するような形であっても良い。これは、本発明において、鋼板表面に付着させるNi量が上記したように10mg/m以上2000mg/m以下とごく微量であるとともに、鋼板表面にNiまたはNi基合金を付着させた後に加熱処理を行うことによって、Niを鋼板表層部位に拡散させるためである。すなわち、ごく微量のNiまたはNi基合金を付着させる工程においては、それ程の均一性は必要とされず、上記のように島状に点在するような形であっても、加熱処理後において、鋼板表面近傍に有効なNi拡散領域を形成できるためである。
このような工程を経て得られる本発明に係る耐遅れ破壊性に優れた鋼板は、代表的には、表面近傍にNiまたはNi基合金の10mg/m以上2000mg/m以下の含有量(Ni基合金の場合、上記量はNi換算値である。)でNi拡散領域を有し、980MPa以上、より好ましくは、1180MPa以上の引張り強度を有することを特徴とするものとなる。なお、上記したNi拡散領域は、鋼板のいずれか一方の表面近傍に設けたものでも、もちろん、両面の表面近傍に設けたものであっても良い。
また、本発明に係る鋼板において、前記Ni拡散領域の形成深さは鋼板の厚さ等によっても左右されるものであり、特に限定されるものではない。例えば、鋼板表面より3μm以上の深さ、より好ましくは表面より5μm以上50μm以内の深さで形成させることが望ましい。
以上述べたような本発明に係る耐遅れ破壊性に優れた鋼板の製造方法としては、既に述べたように、鋼板表面に10mg/m以上2000mg/m以下のNiまたはNi基合金を付着させた後、所定の加熱処理を行い、鋼へNiを拡散させることを特徴とするものである。
なお、基質として使用される鋼板としては前記したように特に限定されるものではなく、その製造履歴としても任意のものである。
本発明の理解を容易とするために、例えば、冷延鋼板に本発明に係るNi拡散領域を形成する場合における、製鋼からの一連のプロセスを、以下に一例を挙げて簡単に説明する。基質となる鋼板の製造工程としては、もちろん以下の例示に何ら限定されるものではない。
所定成分の鋼を溶製し、常法に従い連続鋳造でスラブとする。次いで、得られたスラブを加熱炉中で1100〜1300℃の温度で加熱し、750〜950℃の仕上げ温度で熱間圧延を行い、500〜650℃にて巻き取る。これに続いて酸洗後、圧下率30〜70%の冷間圧延を行う。その後、必要に応じて、常法に従い、アルカリまたはアルカリと界面活性剤およびキレート剤との混合溶液による洗浄、電解洗浄、温水洗浄、乾燥といった清浄化処理を行った後、冷間圧延鋼板表面に、上記したような電気メッキ法、無電解メッキ法、蒸着法等の適当な方法にて、NiまたはNi基合金を10mg/m以上2000mg/m以下の所定量付着させる。その後、750〜900℃にて加熱処理し、冷却を行うことで鋼板上に付着したNiまたはNi基合金を鋼板表面近傍に拡散させると共に、鋼板の硬度調整を行う。さらに必要に応じて、常法に従い0.01〜0.5%程度の調質圧延を行う。
その結果、本発明に係るNi拡散領域を表面近傍に有する耐遅れ破壊性に優れた冷延鋼板を得る。
なお、上記では、冷延鋼板の製造プロセスにおいて、冷間圧延後の鋼板の組織並びに硬度調整のための焼鈍工程前にNiまたはNi基合金を鋼板表面に付着させ、この加熱処理を利用して、NiまたはNi基合金を鋼中へ拡散させているが、本発明に係る鋼板表面近傍へのNi拡散領域の形成は、このような冷延鋼板の製造プロセス途中の加熱処理を利用する態様のみならず、冷延鋼板の製造プロセス後において、NiまたはNi基合金を鋼板表面に付着させ、別途、加熱処理を行うことで、Ni拡散領域の形成を行うものであっても良い。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
使用した供試材である鋼板の成分を表1に示す。冷間圧延を行ったままの厚さ1.5mmの当該鋼板を用い、Watt浴をベースとする浴(硫酸Ni:240g/L、塩化Ni:35g/L、ほう酸:30g/L)を用い、電流密度を1mA/cmの条件下で両面に電気Niメッキを施した。ここでNiメッキ量は、通電時間を変化させることで変化させ、鋼板上に付着したNiメッキの付着量は、付着量既知の標準板により作成した検量線を用いて蛍光X線分析により測定した。
また、前記浴中に硫酸Znを50g/L添加し、Ni−Znメッキ鋼板を合わせて作成した。なお、Ni−ZnメッキにおけるZn含有量は10質量%であった。
次に、このようにして表面にNiメッキ層またはNi−Znメッキ層を形成した鋼板を、窒素雰囲気中で900℃にて30分間加熱した後、急速冷却を行い鋼板の強度を調整した。急速冷却は加熱炉から鋼板を取り出し後、液体窒素に挿入して実施した。本熱処理条件にて得られた鋼板強度は各種メッキの有無に関らず、1480MPaであった。
以上のようにして、Ni付着量が5mg/m(比較例1)、10mg/m(実施例1)、50mg/m(実施例2)、100mg/m(実施例3)、1000mg/m(実施例4)、3000mg/m(比較例2)の両面にNi拡散領域を有する鋼板(Ni拡散鋼板)、およびNi−Znメッキ鋼板を加熱して、Ni付着量が50mg/m(実施例5)、1000mg/m(実施例6)の両面にNi拡散領域を有する鋼板(Ni基合金拡散鋼板)を得た。
また、比較対照として、各種メッキ処理を行わないで熱処理を施した鋼板(比較例3)、さらに比較例として、熱処理を施した後に、上記と同様のNiメッキ処理を両面に施したNiメッキ鋼板(比較例4〜6)(Niは鋼板表面にそのままメッキ層として存在)を作製した。
100mg/m(実施例3)、1000mg/m(実施例4)
以上のようにして得られた各鋼板に対し、以下の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
(1)加工性評価
上述したNi拡散鋼板、Ni基合金拡散鋼板、Niメッキ鋼板および非メッキ鋼板をそれぞれ幅35mm×長さ100mmにせん断し、幅が30mmとなるまで研削加工を施し、試験片を作製した。次に、この試験片に対し、3点曲げ試験機を用い、曲げ加工を施した。
曲げの曲率は4mmRとし、加工性を評価した。評価は曲げ頂部外側面の目視による外観観察を行い、メッキ皮膜ないし拡散層の欠落などの有無を、以下の基準により評価した。
〇:メッキ皮膜ないし拡散層の欠落なし。
△:表面に微細なクラックが認められる。
×:メッキ皮膜の剥れが認められる。
(2)遅れ破壊評価
上記したと同様にして研削加工後、曲げ加工を施し作製した試験片1を、図1に模示するようにボルト2とナット3を用いて締結し、試験片形状を固定させ、遅れ破壊評価用試験片を得た。このようにして作製した遅れ破壊評価用試験片に対し、米国自動車技術会で定めたSAE J2334に規定された、乾燥・湿潤・塩水浸漬の工程からなる複合サイクル腐食試験(図2参照)を、最大80サイクルまで実施した。各サイクルの塩水浸漬の工程前に目視により試験片外側面の鋼板の割れの発生の有無を調査し、割れ発生サイクルを測定した。また、本試験は、各鋼板3検体ずつ実施し、その平均値をもって評価を行った。評価はサイクル数から、以下の基準により評価した。
〇:70サイクル以上。
△:40サイクル以上70サイクル未満。
×:40サイクル未満。
Figure 0005446499
Figure 0005446499
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜4並びに比較例1および2は、加熱処理前に鋼板表面に付着させるNiメッキのメッキ量を変化させた例であるが、比較例1は、メッキ処理を施さなかった比較対照となる比較例3と比較して、遅れ破壊特性が若干向上しているが、その効果が十分でないことが判る。また比較例2は、本発明に係る実施例1〜4よりもメッキ量が多い例であるが、遅れ破壊特性は良好であるものの、加工後の割れが大きく、皮膜の脱離が認められるため好ましくない。これに対し、所定量のNiを付着させて加熱加工を行いNi拡散領域を形成した本発明に係る実施例1〜4においては、いずれも加工性および遅れ破壊特性の双方において良好な結果を示した。
また実施例5および6は、Ni基合金を用いた本発明の例であるが、加工性および遅れ破壊特性の双方においてNiを用いた実施例1〜4と同様に良好な結果を示した。
比較例4〜6は、Niの熱拡散を行わずNiメッキ層をそのまま鋼板表面に残した例であるが、いずれの場合も、比較対照となる比較例3と比較して若干の遅れ破壊特性の向上が認められるものの、その効果が十分に得られていないことが判る。また付着量の多い比較例5および6については加工性についても劣るものであった。
本発明によれば、遅れ破壊を抑制する高張力鋼板を提供でき、自動車分野や建材分野を中心に広範な分野で適用が可能となる。
1 試験片
2 ボルト
3 ナット

Claims (2)

  1. 1180MPa以上の引張り強度を有する冷延鋼板の表面近傍にNi拡散領域を有し、該Ni拡散領域はNiまたはNi基合金を有し、且つNiまたはNi基合金の片面当たりの付着量が10mg/m2以上2000mg/m2以下(Ni基合金の場合、上記量はNi換算値である。)であることを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた鋼板。
  2. 冷延鋼板の表面に片面当たり10mg/m2以上2000mg/m2以下(Ni基合金の場合、上記量はNi換算値である。)のNiまたはNi基合金を付着させた後、700℃以上1100℃以下の温度にて10秒以上加熱処理を行い、鋼へNiを拡散させることを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた鋼板の製造方法。
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