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JP5334455B2 - 水素吸蔵合金及びニッケル・水素蓄電池 - Google Patents

水素吸蔵合金及びニッケル・水素蓄電池 Download PDF

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Description

本発明は、ニッケル・水素蓄電池の負極における負極活物質や、ヒートポンプ等に使用される水素吸蔵合金及びこのような水素吸蔵合金を負極に用いたニッケル・水素蓄電池に係り、特に、水素の吸蔵時と放出時とにおける圧力変化のヒステリシスを低減させて、ニッケル・水素蓄電池の負極における負極活物質や、ヒートポンプにおいて有効に利用できる水素吸蔵合金を提供するようにした点に特徴を有するものである。
従来から、水素吸蔵合金は、ニッケル・水素蓄電池の負極における負極活物質や、ヒートポンプ等の様々な分野において利用されている。
そして、ニッケル・水素蓄電池の負極における負極活物質等に使用される水素吸蔵合金としては、CaCu5型結晶を主相とする希土類−Ni系水素吸蔵合金や、Ti,Zr,V及びNiを構成元素として含有するAB2格子のラーベス相を主相とする水素吸蔵合金が一般に利用されている。
また、近年においては、上記のニッケル・水素蓄電池が各種のポータブル機器やハイブリッド電気自動車などに使用されるようになり、このニッケル・水素蓄電池をさらに高容量化させることが期待され、またヒートポンプにおいてもさらに高能力化させることが期待されている。
しかし、上記の水素吸蔵合金は、水素吸蔵能力が必ずしも十分であるとはいえず、ニッケル・水素蓄電池を十分に高容量化させたり、ヒートポンプをさらに高能力化させることが困難であった。
そして、近年においては、上記のCaCu5型結晶を主相とする希土類−Ni系水素吸蔵合金にMg等を含有させて、CaCu5型以外のCe2Ni7型やCeNi3型等の結晶構造を有する希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金が、従来の希土類−Ni系水素吸蔵合金に比べて高い水素吸蔵能力を示すことが見出され、このような希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金をニッケル・水素蓄電池の負極における負極活物質等に用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、上記の希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金は、CaCu5型結晶を主相とする希土類−ニッケル系水素吸蔵合金に比べて、水素を吸蔵・放出する際における圧力変化のヒステリシスが大きく、水素の吸蔵時における圧力に対して放出時における圧力が低くなると共にこの水素吸蔵合金が劣化しやすくなり、ニッケル・水素蓄電池の負極に使用した場合には、その放電電圧が低下したり、充放電により水素吸蔵合金が劣化して、電池のサイクル特性が低下したりするという問題があった。
また、上記の希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金をヒートポンプに用いた場合には、ヒートポンプの冷却・昇温能力が低下して使用温度領域が制限され、また取り出される温熱・冷熱量が減少してヒートポンプの効率が低下するという問題があった。
そして、近年においては、上記の希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金中におけるLaに対するCeの量を所定量以下に制限して、この水素吸蔵合金中におけるMgの濃度の均質性を高め、水素の吸蔵時と放出時とにおける平衡圧の差を低減させて、ニッケル・水素蓄電池の負極に使用した場合に、放電電圧が低下するのを防止することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、このように希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金中におけるLaに対するCeの量を所定量以下に制限して、この水素吸蔵合金中におけるMgの濃度の均質性を高めた場合においても、水素の吸蔵時と放出時とにおける平衡圧の差を十分に低減させることは困難であった。
特開平11−162459号公報 特開2000−265229号公報
本発明は、希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金における上記のような問題を解決することを課題とするものであり、上記の希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金を改善し、水素の吸蔵時と放出時とにおける圧力変化のヒステリシスを低減させて、ニッケル・水素蓄電池の負極における負極活物質や、ヒートポンプにおいて有効に利用できる水素吸蔵合金を提供すると共に、特に、水素吸蔵合金を負極に用いたニッケル・水素蓄電池において、放電電圧が低下したり、充放電により水素吸蔵合金が劣化してサイクル特性が低下したりするのを防止することを課題とするものである。
本発明の水素吸蔵合金においては、上記のような課題を解決するため、一般式Ln1-xMgxNiy Al z(式中、Lnは、Yを含む希土類元素から選択される少なくとも1種の元素であり、x,y,zが、0.05≦x≦0.25、0<z≦1.5、2.8≦y+z≦4.0の条件を満たす。)で表される水素吸蔵合金において、上記のLn中にSmが20モル%以上含まれるようにした。
また、上記の一般式におけるMgのモル比xが0.1≦xの条件を満たすことが好ましく、また上記の一般式のLn中にLaが含まれていることが好ましい。
また、本発明のニッケル・水素蓄電池においては、上記のような課題を解決するため、正極と、水素吸蔵合金を用いた負極と、アルカリ電解液とを備えたニッケル・水素蓄電池において、その負極に上記の水素吸蔵合金を用いるようにしたのである。
ここで、前記の希土類−Mg−Ni系水素吸蔵合金の場合、水素の吸蔵時に水素が結晶格子間に入り込むことにより、結晶構造に歪み等が生じて、この水素吸蔵合金が水素化状態で安定な結晶構造に変化し、これによって吸蔵された水素が放出されにくくなり、この結果、水素の吸蔵時における圧力に対して放出時における圧力が低くなって、水素を吸蔵・放出する際における圧力変化のヒステリシスが大きくなると考えられる。
そして、本発明における水素吸蔵合金のように、一般式Ln1-xMgxNiy Al z(式中、Lnは、Yを含む希土類元素から選択される少なくとも1種の元素であり、x,y,zが、0.05≦x≦0.25、0<z≦1.5、2.8≦y+z≦4.0の条件を満たす。)で表される水素吸蔵合金において、上記のLn中にSmが20モル%以上含まれるようにすると、この水素吸蔵合金に水素を吸蔵させた際に、この水素吸蔵合金の結晶構造に歪み等が生じるのが、この水素吸蔵合金中に含まれる上記のSmによって抑制されて、水素の吸蔵時における圧力に対して放出時における圧力が低くなるのが防止されるようになる。
この結果、本発明における水素吸蔵合金においては、水素を吸蔵・放出する際における圧力変化のヒステリシスが減少し、ニッケル・水素蓄電池の負極に使用した場合に、放電電圧が低下したり、充放電により水素吸蔵合金が劣化してサイクル特性が低下したりするのが防止され、またヒートポンプに用いた場合には、ヒートポンプの効率が向上する。
また、上記の一般式で示される水素吸蔵合金において、Mgのモル比xがx<0.05の場合には、水素吸蔵能力が著しく低下するため0.05≦xを満たす必要がある。さらにMgのモル比xが0.1≦xの条件を満たすようにすると、この水素吸蔵合金中におけるMgの割合が多くなり、この水素吸蔵合金における水素吸蔵能力が向上し、平衡圧が高くなって、より大きなエネルギーが得られるようになる。
一方、Mgのモル比xが0.25を超えて大きくなると、合金の耐久性が低くなって、水素吸蔵放出において合金の微粉化が加速する。そして、合金の微粉化によって電池では寿命特性が低下し、ヒートポンプでは熱伝導を阻害して反応速度が遅くなるため、Mgのモル比は0.05≦x≦0.25の条件を満たすようにする必要がある。そしてより望ましくは0.1≦x≦0.25である。
また、上記の一般式で示される水素吸蔵合金において、Mgのモル比xが0.1≦xの条件を満たすようにすると、この水素吸蔵合金中におけるMgの割合が多くなり、この水素吸蔵合金における水素吸蔵能力が向上し、平衡圧が高くなって、より大きなエネルギーが得られるようになる。
また、このように水素吸蔵合金中におけるMgの割合を多くすると共に、上記のように一般式のLn中にSmやLaが多く含まれるようにすると、Ln中に高価なPrやNdが多く含まれる水素吸蔵合金よりも、水素吸蔵合金の材料コストが低減されると共に、上記のように水素を吸蔵させた際に、この水素吸蔵合金の結晶構造に歪み等が生じるのが抑制されると共に、大きなエネルギーが得られるようになり、安価で水素吸蔵量が多い水素吸蔵合金を提供できるようになる。
以下、本発明の実施例に係る水素吸蔵合金について具体的に説明すると共に、本発明の実施例に係る水素吸蔵合金においては、水素の吸蔵時における圧力に対して放出時における圧力が低くなるのが防止されて、水素を吸蔵・放出する際における圧力変化のヒステリシスが減少すると共に、この本発明の実施例に係る水素吸蔵合金をニッケル・水素蓄電池の負極に使用した場合に、充放電により水素吸蔵合金が劣化してサイクル特性が低下するのが防止されることを、比較例を挙げて明らかにする。なお、本発明における水素吸蔵合金及びニッケル・水素蓄電池は、下記の実施例に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
(実施例1)
実施例1においては、上記の一般式におけるLnとしてサマリウムSmだけを用い、サマリウムSmとマグネシウムMgとニッケルNiとアルミニウムAlとを所定の合金組成になるように混合し、高周波誘導溶解炉を用いてこれを溶融させた後、冷却させて、組成が下記の表1に示すように(Sm1.000.90Mg0.10Ni3.33Al0.17になった水素吸蔵合金のインゴットを作製した。なお、上記の水素吸蔵合金の組成は、誘導結合プラズマ分光分析(ICP)により測定した。
次いで、この水素吸蔵合金のインゴットを、アルゴン雰囲気中において1000℃で10時間熱処理して合金組織を均質化させた後、この水素吸蔵合金のインゴットを不活性雰囲気中において機械的に粉砕し、これを分級して、上記の組成の水素吸蔵合金粉末を得た。なお、この水素吸蔵合金粉末についてレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置により粒度分布を測定した結果、重量積分が50%における平均粒径が65μmになっていた。
(実施例2〜4)
実施例2〜4においては、上記の一般式におけるLnとして、サマリウムSmとネオジウムNdを用い、それぞれサマリウムSmとネオジウムNdとマグネシウムMgとニッケルNiとアルミニウムAlとを所定の合金組成になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例2〜4の各水素吸蔵合金粉末を得た。
ここで、実施例2〜4の各水素吸蔵合金について、その組成を誘導結合プラズマ分光分析(ICP)により測定した結果、下記の表1に示すように、実施例2では(Sm0.60Nd0.400.90Mg0.10Ni3.33Al0.17、実施例3では(Sm0.40Nd0.600.90Mg0.10Ni3.33Al0.17、実施例4では(Sm0.20Nd0.800.90Mg0.10Ni3.33Al0.17の組成になっていた。また、これらの水素吸蔵合金粉末について、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置により粒度分布を測定した結果、何れも重量積分が50%における平均粒径は65μmになっていた。
(比較例1)
比較例1においては、上記の一般式におけるLnとして、サマリウムSmを用いずにネオジウムNdだけを用い、ネオジウムNdとマグネシウムMgとニッケルNiとアルミニウムAlとを所定の合金組成になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例1の水素吸蔵合金粉末を得た。
ここで、比較例1の水素吸蔵合金について、その組成を誘導結合プラズマ分光分析(ICP)により測定した結果、(Nd1.000.90Mg0.10Ni3.33Al0.17の組成になっていた。また、この水素吸蔵合金粉末について、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置により粒度分布を測定した結果、重量積分が50%における平均粒径は65μmになっていた。
そして、上記のようにして得た実施例1〜4及び比較例1の各水素吸蔵合金粉末に対して、水素の吸蔵・放出を繰り返して行い、各水素吸蔵合金粉末を活性化させた。
そして、このように活性化された各水素吸蔵合金粉末について、それぞれ80℃の条件において、JIS H7201に規定される「水素吸蔵合金の圧力−等温線(PCT線)の測定法」に基づいてPCT線の測定を行い、実施例1の水素吸蔵合金粉末の測定結果を図1に、比較例1の水素吸蔵合金粉末の測定結果を図2に示した。
また、上記の各水素吸蔵合金粉末について、それぞれH/M=0.4における吸蔵プラトー圧Paと解離プラトー圧Pdとを求め、各水素吸蔵合金粉末におけるヒステリシスファクターHf[=ln(Pa/Pd)]を算出し、その結果を下記の表1に示した。
Figure 0005334455
これらの結果から明らかなように、前記の一般式におけるLn中にサマリウムSmを20モル%以上含有させた実施例1〜4の各水素吸蔵合金粉末においては、Ln中にサマリウムSmを含有させずにネオジウムNdだけを含有させた比較例1の水素吸蔵合金粉末に比べて、ヒステリシスファクターHfの値が減少しており、水素の吸蔵時と放出時とにおける圧力変化のヒステリシスが減少し、水素の吸蔵時と放出時とにおける平衡圧の差が少なくなっていた。
そして、上記のLn中におけるサマリウムSmの割合が増加するにつれて、ヒステリシスファクターHfの値が減少し、水素の吸蔵時と放出時とにおける平衡圧の差がより少なくなっていた。
また、上記のようにして得た実施例1,4及び比較例1の各水素吸蔵合金粉末を用い、それぞれ水素吸蔵合金粉末1重量部に対して、導電剤のニッケル粉末を3重量部の割合で加えて混合し、これをペレット状に加圧成型して、実施例1,4及び比較例1の各水素吸蔵合金粉末を用いた各負極を作製した。
一方、正極には、上記の各負極に対して過剰の容量を有する円筒状に形成した焼結式ニッケル極を用い、アルカリ電解液には7mol/lのKOH水溶液を用いて、90mAhの負極容量規制になった各試験用ニッケル・水素蓄電池を作製した。
ここで、上記の各試験用ニッケル・水素蓄電池においては、図3に示すように、ポリプロピレン製の容器10内に上記のアルカリ電解液13を収容させ、上記の円筒状に形成した正極11内に、それぞれ負極12を収容させた状態で、上記の正極11と負極12とを上記のアルカリ電解液13に浸漬させた。
そして、上記の各負極を用いた各試験用ニッケル・水素蓄電池を、それぞれ25℃の雰囲気条件において、45mAの電流で170分間充電させて、20分間休止した後、45mAの電流で電池電圧が0.8Vになるまで放電させて、10分間休止し、これを1サイクルとして50サイクルの充放電を繰り返して行い、各試験用ニッケル・水素蓄電池における最大の放電容量Qmaxと、50サイクル後における各試験用ニッケル・水素蓄電池の放電容量Q50とを求めた。
そして、上記の各試験用ニッケル・水素蓄電池における容量劣化量として、最大の放電容量Qmaxに対する50サイクル後における放電容量Q50の差(Qmax−Q50)を求め、上記の実施例1の水素吸蔵合金を用いた試験用ニッケル・水素蓄電池の容量劣化量を100とした指数で、実施例4及び比較例1の水素吸蔵合金を用いた各試験用ニッケル・水素蓄電池の容量劣化量を算出し、その結果を下記の表2に示した。
Figure 0005334455
この結果から明らかなように、前記の一般式におけるLn中にサマリウムSmを20モル%以上含有させた実施例1,4の各水素吸蔵合金粉末を負極に使用した各試験用ニッケル・水素蓄電池においては、Ln中にサマリウムSmを含有させずにネオジウムNdだけを含有させた比較例1の水素吸蔵合金粉末を負極に使用した試験用ニッケル・水素蓄電池に比べて、容量劣化量が大きく低減されており、充放電により水素吸蔵合金が劣化するのが抑制されてサイクル特性が向上していた。
(実施例5)
実施例5においては、上記の一般式におけるLnとして、サマリウムSmとランタンLaを用い、サマリウムSmとランタンLaとマグネシウムMgとニッケルNiとアルミニウムAlとを所定の合金組成になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例5の水素吸蔵合金粉末を得た。
ここで、実施例5の水素吸蔵合金について、その組成を誘導結合プラズマ分光分析(ICP)により測定した結果、その組成は(Sm0.80La0.200.90Mg0.10Ni3.33Al0.17になっていた。また、この水素吸蔵合金粉末について、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置により粒度分布を測定した結果、重量積分が50%における平均粒径は65μmになっていた。
(比較例2)
比較例2においては、上記の一般式におけるLnとして、サマリウムSmを用いずにランタンLaだけを用い、ランタンLaとマグネシウムMgとニッケルNiとアルミニウムAlとを所定の合金組成になるように混合し、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例2の水素吸蔵合金粉末を得た。
ここで、比較例2の水素吸蔵合金について、その組成を誘導結合プラズマ分光分析(ICP)により測定した結果、その組成は(La1.000.90Mg0.10Ni3.33Al0.17になっていた。また、この水素吸蔵合金粉末について、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置により粒度分布を測定した結果、重量積分が50%における平均粒径は65μmになっていた。
そして、上記のようにして得た実施例5及び比較例2の各水素吸蔵合金粉末に対して、水素の吸蔵・放出を繰り返して行い、各水素吸蔵合金粉末を活性化させた。
そして、このように活性化された各水素吸蔵合金粉末について、前記の場合と同様に、それぞれ80℃の条件において、JIS H7201に規定される「水素吸蔵合金の圧力−等温線(PCT線)の測定法」に基づいてPCT線の測定を行い、上記の各水素吸蔵合金粉末について、それぞれH/M=0.4における吸蔵プラトー圧Paと解離プラトー圧Pdとを求め、各水素吸蔵合金粉末におけるヒステリシスファクターHf[=ln(Pa/Pd)]を算出し、その結果を下記の表3に示した。
また、上記のようにして得た実施例5及び比較例2の各水素吸蔵合金粉末を用い、それぞれ水素吸蔵合金粉末1重量部に対して、導電剤のニッケル粉末を3重量部の割合で加えて混合し、これをペレット状に加圧成型して、実施例5及び比較例2の各水素吸蔵合金粉末を用いた各負極を作製し、このように作製した各負極を使用し、前記の場合と同様にして、90mAhの負極容量規制になった各試験用ニッケル・水素蓄電池を作製した。
そして、上記の各負極を用いた各試験用ニッケル・水素蓄電池を、それぞれ25℃の雰囲気条件において、45mAの電流で170分間充電させて、20分間休止した後、45mAの電流で電池電圧が0.8Vになるまで放電させて、10分間休止し、これを1サイクルとして10サイクルの充放電を繰り返して行って、各試験用ニッケル・水素蓄電池における最大の放電容量Qmaxと、10サイクル後における各試験用ニッケル・水素蓄電池の放電容量Q10とを求めた。
そして、上記の各試験用ニッケル・水素蓄電池における容量劣化量として、最大の放電容量Qmaxに対する10サイクル後における放電容量Q10の差(Qmax−Q10)を求め、上記の実施例5の水素吸蔵合金を用いた試験用ニッケル・水素蓄電池の容量劣化量を100とした指数で、比較例5の水素吸蔵合金を用いた各試験用ニッケル・水素蓄電池の容量劣化量を算出し、その結果を下記の表3に合わせて示した。
Figure 0005334455
この結果から明らかなように、前記の一般式におけるLn中にサマリウムSmを含有させずにランタンLaだけを含有させた比較例2の水素吸蔵合金粉末においては、ヒステリシスファクターHfが非常に高い値を示したが、Ln中にランタンLaの他にサマリウムSmを20モル%以上含有させた実施例5の水素吸蔵合金粉末においては、ヒステリシスファクターHfの値が大幅に減少しており、水素の吸蔵時と放出時とにおける圧力変化のヒステリシスが減少し、水素の吸蔵時と放出時とにおける平衡圧の差が大きく低減されるようになった。
また、前記の一般式におけるLn中にランタンLaの他にサマリウムSmを20モル%以上含有させた実施例5の水素吸蔵合金粉末を負極に使用した試験用ニッケル・水素蓄電池は、Ln中にサマリウムSmを含有させずにランタンLaだけを含有させた比較例2の水素吸蔵合金粉末を負極に使用した試験用ニッケル・水素蓄電池に比べて、容量劣化量が大きく低減され、充放電により水素吸蔵合金が劣化するのが抑制されてサイクル特性が大幅に向上していた。
実施例1の水素吸蔵合金粉末を用いて測定したPCT線を示した図である。 比較例1の水素吸蔵合金粉末を用いて測定したPCT線を示した図である。 実施例1,4,5及び比較例1,2の水素吸蔵合金粉末を負極に用いた試験用ニッケル・水素蓄電池を示した概略説明図である。
符号の説明
10 容器
11 正極
12 負極
13 アルカリ電解液

Claims (4)

  1. 一般式Ln1-xMgxNiy Al z(式中、Lnは、Yを含む希土類元素から選択される少なくとも1種の元素であり、x,y,zが、0.05≦x≦0.25、0<z≦1.5、2.8≦y+z≦4.0の条件を満たす。)で表される水素吸蔵合金において、上記のLn中にSmが20モル%以上含まれていることを特徴とする水素吸蔵合金。
  2. 請求項1に記載の水素吸蔵合金において、上記の一般式におけるMgのモル比xが0.1≦xの条件を満たすことを特徴とする水素吸蔵合金。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の水素吸蔵合金において、上記の一般式のLn中にLaが含まれていることを特徴とする水素吸蔵合金。
  4. 正極と、水素吸蔵合金を用いた負極と、アルカリ電解液とを備えたニッケル・水素蓄電池において、上記の負極に請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の水素吸蔵合金を用いたことを特徴とするニッケル・水素蓄電池。
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