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JP5329658B2 - 検出対象の検出方法及び定量方法 - Google Patents

検出対象の検出方法及び定量方法 Download PDF

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Description

本発明は、検出対象の検出方法及び定量方法に関する。
従来から、被検体中の検出対象を検出する方法として、ラテックス凝集法が利用されてきた。ラテックス凝集法とは、生体試料等の流体中における抗原を検出する場合、抗原に特異的に結合する抗体もしくはそのフラグメントを担持させたラテックスと、流体とを混合して、ラテックスの凝集の程度を測定することにより、抗原を検出又は定量する方法である(例えば、特許文献1参照)。
このラテックス凝集法によれば、検体として添加された抗原が複数のラテックス結合抗体を架橋させ、ラテックスの凝集を促す。このように手順が単純であるから、簡便且つ迅速に抗原を検出できる。しかし、抗原が微量の場合、その架橋が起こりにくいため、ラテックスが十分に凝集しない。このため、微量の抗原を検出することが困難であった。
そこで、ELISA法やCLEIA法といった酵素基質反応を利用する方法も広く利用されている。これらの方法では、例えば、抗原に特異的に結合する一次抗体を抗原に結合させ、この一次抗体に酵素を有する二次抗体を結合させる。ここで、酵素の基質を添加し、酵素が触媒する反応の程度を測定することで、抗原を検出又は定量する。
これらの方法によれば、例えば基質として発光試薬を用いると、基質添加後の発光の検出感度が高いため、微量の抗原も検出できる。
しかし、酵素基質反応を利用する方法では、二次抗体や発光試薬等の特殊な試薬が多数必須であり、作業コストが高い。また、発光試薬の退色(ブリーチング現象)を抑制する必要から、測定工程を極めて短時間に終了せざるを得ないため、測定精度が不充分になることが懸念される。
一方、この方法は、試料及び各試薬をインキュベーションする工程、系を洗浄する工程、発光を測定する工程等の多段階からなっており、操作が煩雑である。しかも、各段階に要する時間が極めて長く、大規模処理には適さない。
特公昭58−11575号公報
そこで、本発明者らは、刺激応答性ポリマーを含有する物質と検出対象に対する親和性物質とが結合した結合物、並びに電荷を有する物質と検出対象に対する親和性物質とが結合した結合物を用いた、検出対象の検出及び定量技術を開発した(国際公開WO2008/001868号パンフレット)。この技術は、上記2種類の結合物と検体とを混合した混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する条件下においた後、濁度測定等によって刺激応答性ポリマーの凝集の程度が低下したと判定された場合には、検体中に検出対象が存在すると判別するものである。
この技術によれば、刺激応答性ポリマーを含有する物質、親和性物質及び電荷を有する物質のみを用いて達成され、特殊な試薬を特に使用することなく行われるので、安価且つ簡便である。また、凝集阻害の程度を測定するだけであり、酵素によって触媒される反応を利用する系ではないから、迅速に行うことができる。
しかし、上記技術では、検出対象の存在の判別のために、濁度測定等を行う精密機器が必要になる場合が多く、検出や定量を設備が整った実験室等の環境で行うことが望まれる。しかし、環境汚染検査、食品検査等の場合には、実験室外等の設備が整っていない場所で検出及び定量を行うことが一般的であるため、検出対象の存在の判別が困難である。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、種々の環境において、検出対象を迅速、安価、簡便且つ高精度に検出、定量できる検出対象の検出方法及び定量方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、2種類の結合物と検体との混合物を展開担体に展開させると、検出対象の存在の有無によって、展開担体における前記結合物の存在に起因する信号が大きく異なることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下の構成を有する。
[1] 検体中の検出対象を検出する方法であって、
刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、親水性を有する第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、前記検体とを混合し、
得られた混合物を前記刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におき、前記混合物を展開担体に展開させ、又は得られた混合物を展開担体に展開させ、前記混合物を前記刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におき、
前記展開担体における第1の結合物又は第2の結合物の存在に起因する信号を確認し、前記信号が、前記検出対象の非存在下と異なる場合には、前記検体中に検出対象が存在すると判別する工程を含む方法であり、
第1の親和性物質と第2の親和性物質とが、前記検出対象の異なる部位に結合できる方法。
[2] 第1の結合物の存在に起因する信号の強度が、前記検出対象の非存在下よりも弱い場合に、前記検体中に検出対象が存在すると判別する[1]記載の方法。
[3] 前記混合物は、第1の結合物の凝集体を除去した後に前記展開担体に展開させ、
第1の結合物の存在に起因する信号の強度が、前記検出対象の非存在下よりも強い場合に、前記検体中に検出対象が存在すると判別する[1]記載の方法。
[4] 検体中の検出対象を定量する方法であって、
刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、親水性を有する第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、前記検体とを混合し、
得られた混合物を前記刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におき、前記混合物を展開担体に展開させ、又は得られた混合物を展開担体に展開させ、前記混合物を前記刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におき、
前記展開担体における第1の結合物又は第2の結合物の存在に起因する信号の強度を測定し、前記検出対象の量と信号強度との前記所定条件下における相関式に基づいて、前記検体中の検出対象の量を算出する工程を含む方法であり、
第1の親和性物質と第2の親和性物質とが、前記検出対象の異なる部位に結合できる方法。
[5] 第1の結合物の凝集体の存在に起因する信号を測定する[4]記載の方法。
[6] 前記混合物は、第1の結合物の凝集体を除去した後に前記展開担体に展開させ、
第1の結合物の存在に起因する信号の強度を測定する[4]記載の方法。
[7] 第1の結合物は有色粒子を有し、
前記信号は、前記有色粒子の存在に基づく色に依存したものである[1]から[6]いずれか記載の方法。
[8] 第1の結合物又は第2の結合物は、前記展開担体上で発色もしくは発光する物質を有し、
前記信号は、前記発色もしくは発光する物質の存在に基づく色又は光に依存したものである[1]から[7]いずれか記載の方法。
[9] 検出対象を検出及び/又は定量するためのキットであって、
刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、親水性を有する第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、
前記結合物を展開するための展開担体と、を備えるキット。
[10] 第1の結合物は有色粒子を有する[9]記載のキット。
[11] 第1の結合物又は第2の結合物は、前記展開担体上で発色もしくは発光する物質を有する[9]又は[10]記載のキット。
本発明によれば、検出対象が存在する場合、この結合対象に第1の親和性物質及び第2の親和性物質が結合するため、第1の親和性物質に結合した刺激応答性ポリマーと、第2の親和性物質に結合した第2の物質が接近する。これにより、電荷部分又は親水性部分が刺激応答性ポリマーの近傍に配置されるため、刺激に応答した刺激応答性ポリマーの凝集が阻害される。このため、混合物を展開担体に展開させたときの信号が、検出対象の存在量に応じて変化するので、この変化の有無や程度に基づいて、検出対象を簡便に検出又は定量することができる。
以上の手順は、いずれも特殊な試薬、機器を特に使用することなく行われるので、種々の環境において、安価且つ簡便に実施できる。また、展開後の信号を確認するだけであり、酵素によって触媒される反応を利用する系ではないから、迅速に行うことができる。
本発明の一実施形態に係る方法において使用される結合物の概略構成図である。 前記実施形態に係る結合物の使用状態を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係る方法の手順を示す図である。 本発明の別の実施形態に係る方法の手順を示す図である。 本発明の別の実施形態に係る方法の手順を示す図である。 本発明の別の実施形態に係る方法で用いる展開担体を備える展開器具の平面図である。 図6の展開器具のVII−VII線断面図である。 図6の展開担体の変化を示す図である。 本発明の一実施例に係る方法を実施した結果を示す写真である。 本発明の別の実施例に係る方法を実施した結果を示す写真である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<検出方法>
〔混合・凝集〕
本発明の検出方法では、まず、結合物及び検体を混合し、この混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におく。ここで用いる結合物は少なくとも2種であり、そのうち必須の構成要素である第1の結合物、及び第2の結合物について詳細に説明する。
[第1の結合物]
第1の結合物は、刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と、検出対象に対する第1の親和性物質とが結合したものである。
(第1の物質)
本発明で用いられる第1の物質は刺激応答性ポリマーを含有する物質であり、この刺激応答性ポリマーは、外的な刺激に応答して構造変化を起こし、凝集及び分散を調整できるポリマーである。刺激としては、特に限定されないが、温度変化、光の照射、酸又は塩基の添加(pHの変化)、電場変化等が挙げられる。
特に、本発明では、刺激応答性ポリマーとしては、温度変化によって凝集及び分散可能な温度応答性ポリマーが利用できる。なお、温度応答性ポリマーとしては、下限臨界溶液温度(以下、LCSTとも称する)を有するポリマーや上限臨界溶液温度を有するポリマー(以下、UCSTとも称する)が挙げられる。例えば、LCSTが37℃である下限臨界溶液温度を有するポリマーは、LCST未満の温度の水溶液中では完全に分散し、LCST以上に水温を上昇させると直ちに凝集させることができる。また、UCSTが5℃である上限臨界溶液温度を有するポリマーは、UCSTを超える温度の水溶液中では完全に分散し、UCST以下に水温を下降させると直ちに凝集させることができる。
本発明で用いられる下限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリン等のN置換(メタ)アクリルアミド誘導体からなるポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリビニルメチルエーテル、(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン誘導体;ポリオキシエチレンソルビタンラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル誘導体;(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート類;及び(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(メタ)アクリレート類等のポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。更に、これらのポリマー及びこれらの少なくとも2種のモノマーからなるコポリマーも利用できる。また、N−イソプロピルアクリルアミドとN−t−ブチルアクリルアミドのコポリマーも利用できる。(メタ)アクリルアミド誘導体を含むポリマーを使用する場合、このポリマーにその他の共重合可能なモノマーを、下限臨界溶液温度を有する範囲で共重合してもよい。本発明では、なかでも、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなるポリマー又はN−イソプロピルアクリルアミドとN−t−ブチルアクリルアミドのコポリマーが好ましく利用できる。また、Val−Pro−Gly−X−Gly(Xはプロリン以外のアミノ酸)に代表されるようなペンタポリペプチドの繰返し配列を持つエラスチン由来ポリペプチド等も利用できる。
本発明で用いられる上限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、アクリロイルグリシンアミド、アクリロイルニペコタミド、アクリロイルアスパラギンアミド及びアクリロイルグルタミンアミド等からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなるポリマーが利用できる。また、これらの少なくとも2種のモノマーからなるコポリマーであってもよい。これらのポリマーには、アクリルアミド、アセチルアクリルアミド、ビオチノールアクリレート、N−ビオチニル−N’−メタクリロイルトリメチレンアミド、アクリロイルザルコシンアミド、メタクリルザルコシンアミド、アクリロイルメチルウラシル等、その他の共重合可能なモノマーを、上限臨界溶液温度を有する範囲で共重合してもよい。
また、本発明では、刺激応答性ポリマーとして、pHの変化によって凝集及び分散可能なpH応答性ポリマーが利用できる。pH応答性ポリマーが構造変化を起こすpHは、特に限定されないが、刺激付与時における第1の結合物、後述の第2の結合物、及び検体の変性等による検出・定量精度の低下を抑制できる点で、pH4〜10が好ましく、pH5〜9であることが更に好ましい。
このようなpH応答性ポリマーとしては、カルボキシル、リン酸、スルホニル、アミノ等の基を官能基として含有するポリマーが例示できる。より具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ホスホリルエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の解離基を有するモノマーが重合されたものであってもよく、これら解離基を有するモノマーと、pH応答能が損なわれない程度において、他のビニルモノマー、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン、塩化ビニル、N−ビニルピロリドン等のビニル化合物、(メタ)アクリルアミド類等とが共重合されたものであってもよい。
(微粒子)
第1の物質は、刺激応答性ポリマー及び後述の親和性物質を担持する微粒子を含有してもよい。ここで用いる微粒子は、凝集の程度に応じて展開担体上の信号が変化するように、単独では後述の展開担体の孔径よりも小さく、且つ、凝集した際には展開担体の孔径よりも大きくなるような平均粒子径を有する必要があるが、その具体的組成は刺激応答性ポリマー及び親和性物質を担持できる限りにおいて特に限定されない。
従来のラテックス凝集法では、検出対象の存在に応じてラテックスが凝集し、その凝集を検出する必要があるところ、検出感度を向上するために微粒子が大きい粒子径を有することが好ましい。対照的に、本発明の方法では、微粒子が小さい粒子径になる程、単位体積あたりの比表面積が増し、検出対象の結合の増加による刺激応答性ポリマーの凝集阻害が効率的になるので、微粒子の粒子径が小さいことが好ましい。ただし、微粒子の平均粒子径は、非凝集時には展開担体の孔径よりも小さく、凝集した際には展開担体の孔径よりも大きくなるよう設定される必要がある。このように、微粒子を用いる場合には、微粒子の平均粒子径は、凝集阻害の効率、凝集の仕方(特に径の変化)、及び展開担体の孔径等を考慮して適宜設定されてよい。一般的に、その平均粒子径の下限は、0.001μmであることが好ましく、より好ましくは0.010μm、最も好ましくは0.1μmであり、上限は0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.3μm、最も好ましくは0.2μmである。
微粒子は、展開担体への展開時に色に依存した信号を形成し、その信号が容易に確認又は測定できる点で、有色粒子であることが好ましい。有色粒子は、特に限定されず、金属コロイド粒子(例えば金コロイド粒子)、ポリスチレンラテックス等の合成高分子、ゼラチン等の天然高分子からなる均質な球状粒子等であってよい。ただし、第1の結合物は、本発明の方法のみならず、国際公開WO2008/001868号パンフレットに記載される検出方法にも使用でき、この場合には磁力付加により凝集体を分離することで、検出精度を向上できる(詳細は国際公開WO2008/001868号パンフレット)。そこで、汎用性を向上するべく、微粒子は磁性物質を含むことが好ましく、かかる磁性物質は、多価アルコールとマグネタイトとで構成されてよい。
多価アルコールは、構成単位に水酸基を少なくとも2個有し且つ鉄イオンと結合可能なアルコール構造体である限りにおいて特に限定されず、例えば、デキストラン、ポリビニルアルコール、マンニトール、ソルビトール、シクロデキストリンが挙げられる。例えば特開2005−82538公報には、デキストランを用いた微粒子状の磁性物質の製造方法が開示されている。また、グリシジルメタクリレート重合体のようにエポキシを有し、開環後多価アルコール構造体を形成する化合物も使用できる。
(第1の親和性物質)
第1の親和性物質は、例えば、検出対象の異なる抗原決定基を認識するモノクローナル抗体であってよい。ここで用いる抗体は、いかなるタイプの免疫グロブリン分子であってもよく、Fab等の抗原結合部位を有する免疫グロブリン分子断片であってもよい。また、抗体は、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよい。
[第1の結合物の作製]
第1の結合物は、第1の物質と第1の親和性物質とを結合することによって作製する。この結合方法は、特に限定されないが、例えば、第1の物質側(例えば刺激応答性ポリマー部分)及び第1の親和性物質(例えば、第1の抗体)側の双方に、互いに親和性の物質(例えば、アビジン及びビオチン、グルタチオン及びグルタチオンSトランスフェラーゼ)を結合させ、これら物質を介して第1の物質及び第1の親和性物質を結合させる。
具体的には、刺激応答性ポリマーへのビオチンの結合は、国際公開WO01/009141に記載されているように、ビオチン等をメタクリルやアクリル等の重合性官能基と結合させて付加重合性モノマーとし、他のモノマーと共重合することにより行うことができる。また、第1の親和性物質へのアビジン等の結合は常法に従って行うことができる。次に、ビオチン結合刺激応答性ポリマー及びアビジン結合第1の親和性物質を混合すると、アビジンとビオチンとの結合を介して、第1の親和性物質及び刺激応答性ポリマーが結合する。
別法として、ポリマーの製造時にカルボキシル、アミノ又はエポキシ等の官能基を持つモノマーを他のモノマーと共重合させ、この官能基を介し、当技術分野で周知の方法に従って抗体親和性物質(例えば、メロンゲル、プロテインA、プロテインG)をポリマーに結合させる方法が利用できる。このようにして得られた抗体親和性物質に第1の抗体を結合させることにより、刺激応答性ポリマーと、検出対象の抗原に対する第1の抗体との第1の結合物が作製される。
あるいは、ポリマーの製造時にカルボキシル、アミノ又はエポキシ等の官能基を有するモノマーを他のモノマーと共重合させ、これらの官能基に検出対象の抗原に対する第1の抗体を常法に従って直接結合させてもよい。
あるいは、微粒子状の磁性物質に第1の親和性物質及び刺激応答性ポリマーを結合させてもよい。
第1の物質を刺激応答性ポリマーが凝集する条件においた後、遠心分離によって分離することで、第1の結合物を精製してもよい。第1の結合物の精製は、刺激応答性ポリマーに微粒子状の磁性物質を結合させ、更に第1の親和性物質を結合させた後、刺激応答性ポリマーが凝集する条件におき、磁力を付加して磁性物質を回収する方法によって行ってもよい。
微粒子状の磁性物質と刺激応答性ポリマーとの結合は、反応性官能基を介して結合する方法や、磁性物質中の多価アルコール上の活性水素又は多価アルコールに重合性不飽和結合を導入してグラフト重合する方法等の当技術分野で周知の方法で行ってよい(例えば、ADV.Polym.Sci.、Vol.4、p111、1965やJ.Polymer Sci.、Part−A、3、p1031、1965参照)。
[第2の結合物]
本発明の方法では、第1の結合物に加えて、親水性を有する第2の物質と、検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物を用いる。これにより、検出感度を向上することができる。
(第2の物質)
親水性を有する第2の物質は、例えば電荷を有する高分子化合物であり、ポリアニオン又はポリカチオンであることが好ましい。ポリアニオンとは複数のアニオン基を有する物質を意味し、ポリカチオンとは複数のカチオン基を有する物質を意味する。ポリアニオンの例として、DNA及びRNA等の核酸が挙げられる。これらの核酸は、核酸骨恪に沿って複数個のホスホジエステル基が存在することにより、ポリアニオンの性質を有する。また、ポリアニオンには、多数のカルボキシルを含むポリペプチド(グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸からなるポリペプチド)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスルホン酸及びアクリル酸やメタクリル酸を重合成分として含有するポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、及びヘパリン等の多糖等も含まれる。一方、ポリカチオンの例としては、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリアルキルアミン、ポリエチレンイミンやポリプロピルエチレンイミン等が挙げられる。なお、ポリアニオン(カルボキシル)やポリカチオン(アミノ)の官能基数は、25個以上が好ましい。また、カルボキシル基を持つラテックス粒子等も挙げられる。
また、親水性を有する第2の物質は、例えば水溶性の高分子化合物であり、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のエーテル結合を含有する高分子、ポリビニルアルコール等のアルコール性水酸基を含有する高分子、デキストラン、シクロデキストリン、アガロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性多糖類、中性アミノ酸を含むポリペプチド等が挙げられる。
これら親水性を有する物質は、高分子鎖の中又は末端に、第2の親和性物質を結合させるための官能基等を有していてもよい。また、親水性を有する第2の物質は、一種単独で利用しても、複数を混合して利用してもよい。
(第2の親和性物質)
第2の親和性物質は、第1の親和性物質とは異なる部位において、第1の親和性物質と同じ検出対象に結合できるものである。第1の親和性物質及び第2の親和性物質は、例えば、検出対象の異なる抗原決定基を認識するモノクローナル抗体であってよい。
[作製方法]
第2の結合物は、第2の物質と第2の親和性物質とを直接又は間接に結合することによって作製する。特に限定されないが、例えば、第2の物質側及び第2の親和性物質(例えば、第2の抗体)側の双方に、互いに親和性の物質(例えば、アビジン及びビオチン、グルタチオン及びグルタチオンSトランスフェラーゼ)を結合させ、これら物質を介して第2の物質及び第2の親和性物質を間接的に結合させる。
第2の物質と第2の親和性物質とを直接的に結合させる場合、官能基を介して結合させてもよく、例えば、官能基を用いる場合、ゴッシュらの方法(Ghosh et al.:Bioconjugate Chem.、 1、 71−76、1990)のマレイミド−チオールカップリングに従って結合できる。具体的には、以下の2つの方法が挙げられる。
第1の方法では、まず、核酸の5’末端にメルカプト基(別名、スルフヒドリル基)を導入する一方、抗体に6−マレイミドヘキサノイックアシッドスクシンイミドエステル(例えば、「EMCS(商品名)」((株)同仁化学研究所製))を反応させてマレイミド基を導入する。次に、これら2種の物質をメルカプト基及びマレイミド基を介して結合させる。
第2の方法では、まず、第1の方法と同様にして核酸の5’末端にメルカプト基を導入し、このメルカプト基に更にホモ二官能性試薬であるN,N−1,2−フェニレンジマレイミドと反応させることによって核酸の5’末端にマレイミド基を導入する一方、抗体にメルカプト基を導入する。次に、これら2種の物質をメルカプト基及びマレイミド基を介して結合させる。
この他に、核酸をタンパク質に導入する方法としては、例えば、Nucleic Acids Research 第15巻5275頁(1987年)及びNucleic Acids Research 第16巻3671頁(1988年)に記載された方法が知られている。これらの技術は核酸と抗体の結合に応用できる。
Nucleic Acids Research 第16巻3671頁(1988年)によると、まず、オリゴヌクレオチドを、シスタミン、カルボジイミド及び1−メチルイミダゾールと反応させることによって、オリゴヌクレオチドの5’末端の水酸基にメルカプト基を導入する。メルカプト基を導入したオリゴヌクレオチドを精製した後、ジチオトレイトールを用いて還元し、この後に2、2’−ジピリジルジスルフィドを加えることによってオリゴヌクレオチドの5’末端にジスルフィド結合を介してピリジル基を導入する。一方、タンパク質に対しては、イミノチアレンを反応させてメルカプト基を導入しておく。これらピリジルジスルフィドを導入したオリゴヌクレオチドとメルカプト基を導入したタンパク質を混合し、ピリジル基とメルカプト基を特異的に反応させてタンパク質とオリゴヌクレオチドを結合させる。
Nulcleic Acids Reseach 第15巻5275頁(1987年)によると、まず、オリゴヌクレオチドの3’末端にアミノ基を導入しておき、ホモ二官能性試薬であるジチオ−ビス−プロピオニックアシッド−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(略称:ジチオ−ビス−プロピオニル−NHS)を反応させる。反応後、ジチオトレイトールを添加することによりジチオ−ビス−プロピオニル−NHS分子中のジスルフィド結合を還元して、オリゴヌクレオチドの3’末端にメルカプト基を導入する。タンパク質の処理については、特開平5−48100号公報に示すようなヘテロ二官能性架橋剤が用いられる。まず、タンパク質中の官能基(例えば、アミノ基)と反応しうる第1の反応性基(スクシンイミド)、及びメルカプト基と反応しうる第2の反応性基(例えば、マレイミド等)を有するヘテロ二官能性架橋剤と、タンパク質を反応させることにより、タンパク質に第2の反応性基を導入し、予め活性化されたタンパク試薬とする。このようにして得られたタンパク試薬をチオール化ポリヌクレオチドのメルカプト基へ共有結合させる。
核酸以外のポリアニオンやポリカチオンを使用する場合にも、これらの末端等にメルカプト基を導入することで、上記と同様の操作で第2の結合物を作製できる。
再び、検出方法の手順の説明に戻る。以上のような2種類の結合物及び検体の混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におくと、検出対象が存在する場合には、刺激応答性ポリマーが検出対象の電荷部分又は親水性部分によって凝集阻害されて分散する。一方、検出対象が存在しない場合には、刺激応答性ポリマーが凝集阻害されず凝集することになる。なお、第1の結合物、第2の結合物、及び検体は、すべてを同時に混合してもよく、1種ずつを別々に混合してもよい。
この現象を、図1〜図2を参照しながら説明する。
図1に示されるように、第1の結合物10は刺激応答性ポリマー11を含有し、この刺激応答性ポリマー11はアビジン15及びビオチン17を介して検出対象50に対する第1の抗体13に結合されている。また、第1の結合物10は微粒子状の磁性物質19を含み、この磁性物質19の表面に第1の物質としての刺激応答性ポリマー11が結合されている。一方、第2の結合物20では、検出対象50に対する第2の抗体23と、第2の物質21とが結合されている。そして、第1の抗体13及び第2の抗体23は、検出対象50の異なる部位に結合できることから、同じ検出対象50に結合できる。第2の結合物20は検出対象50と刺激応答性ポリマー11とを介して磁性物質19に接近でき、このとき第2の物質21が磁性物質19の近傍に位置することになる。
図2に示されるように、第1の結合物10、第2の結合物20及び検体の混合物を所定条件下におくと、検出対象50が存在する場合には、刺激応答性ポリマー11が第2の結合物20中の電荷部分又は親水性部分によって凝集阻害されて分散する。(図2(A))。一方、検出対象50が存在しない場合には刺激応答性ポリマー11が凝集阻害されず凝集することになる((図2(B))。なお、本実施形態では、第2の結合物20の電荷部分又は親水性部分が磁性物質19の近傍に位置する構成としたが、これに限られず、検出対象の電荷部分又は親水性部分が磁性物質19の近傍に位置する構成であってもよい。
刺激応答性ポリマー11を凝集させるためには、例えば温度応答性ポリマーを用いた場合、混合液の入った容器を温度応答性ポリマーの凝集する温度の恒温槽に移せばよい。温度応答性ポリマーには、上限臨界溶液温度(以下「UCST」と略すことがある。)を有するポリマーと、下限臨界溶液温度(以下「LCST」と略すことがある。)を有するポリマーの2種類がある。例えば、LCSTが37℃である下限臨界溶液温度を有するポリマーを用いた場合には、混合液の入った容器を37℃以上の恒温槽に移すことで、温度応答性ポリマーを凝集させることができる。また、UCSTが5℃である上限臨界溶液温度を有するポリマーを用いた場合には、混合液の入った容器を5℃未満の恒温槽に移すことで、温度応答性ポリマーを凝集させることができる。
また、LCSTは、温度応答性ポリマーの周囲の塩濃度の増加に伴って低下することが知られている。このため、ある温度で温度応答性ポリマーが分散している溶液に、所定濃度の塩(例えば、NaCl)を添加することにより、一定温度下で温度応答性ポリマーを凝集させることも可能である。
本発明で用いられる塩としては、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム等の硫酸塩;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、等のハロゲン化物;硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム等の硝酸塩;チオシアン化カリウム等のチオシアン酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;ホウ酸塩;リン酸塩等が挙げられる。これらの塩は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、酢酸ナトリウム等のモノカルボン酸のナトリウム塩、アスパラギン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、イミノ二酢酸ナトリウム、マレイン酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、又は、酒石酸ナトリウム等のジカルボン酸のナトリウム塩、クエン酸二ナトリウム等のトリカルボン酸のナトリウム塩、エチレンジアミン4酢酸二ナトリウム等のテトラカルボン酸のナトリウム塩等の有機酸塩等が挙げられ、これらのカリウム塩等の有機酸塩等も利用できる。これらの塩は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
温度応答性ポリマーを凝集させるためには、例えば、所望の塩濃度となるように塩の水溶液を添加すればよい。温度応答性ポリマーを凝集させるための塩の必要添加量は、塩の種類、水溶液の温度、温度応答性ポリマーの種類、温度応答性ポリマーの濃度によって異なるが、水溶液中終濃度で概ね50mM〜5M、好ましくは100〜1000mMの範囲である。
また、pH応答性ポリマーを用いた場合、混合液の入った容器に酸溶液又はアルカリ溶液を加えればよい。具体的には、pH応答性ポリマーが構造変化を起こすpH範囲の外にある分散混合液の入った容器に、酸溶液又はアルカリ溶液を加え、容器内をpH応答性ポリマーが構造変化を起こすpH範囲に変更すればよい。例えば、pH5以下で凝集、pH5超で分散するpH応答性ポリマーを用いた場合、pH5超で分散している混合液の入った容器に、pHが5以下になるように酸溶液を加えればよい。また、pH10以上で凝集、pH10未満で分散するpH応答性ポリマーを用いた場合、pH10未満で分散している混合液の入った容器に、pHが10以上になるようにアルカリ溶液を加えればよい。pH応答性ポリマーが構造変化を起こすpHは、特に限定されないが、pH4〜10が好ましく、pH5〜9であることが更に好ましい。具体的には、多数のカルボキシルを含むポリペプチド(グルタミン酸、アスパラギン酸等のアミノ酸からなるポリペプチド)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びアクリル酸やメタクリル酸を重合成分として含有するポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ヘパリン等の多糖類、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリアルキルアミン、ポリエチレンイミン及びポリプロピルエチレンイミン等が挙げられる。
また、光応答性ポリマーを用いた場合、混合液の入った容器にポリマーを凝集できる波長の光を照射すればよい。凝集させるための好ましい光は、光応答性ポリマーに含まれる光応答性官能基の種類及び構造により異なるが、一般に波長190〜800nmの紫外光又は可視光が好適に使用できる。このとき、強度は0.1〜1000mW/cmが好ましい。なお、光応答性ポリマーは、測定精度を向上できる点で、濁度の測定に用いられる光が照射された際、分散を生じにくいもの、換言すれば凝集するものであることが好ましい。光応答性ポリマーとして、濁度の測定に用いられる光が照射された際に分散を生じるものを用いる場合、照射時間を短縮することで測定精度を向上できる。具体的には、アゾベンゼン、スピロベンゾピラン及びスピロベンゾチオピラン等の光応答性の官能基を含有するポリマー等が挙げられる。
かかる条件下に第1の結合物10、第2の結合物20及び検体の混合物をおくと、検出対象50が存在する場合には、刺激応答性ポリマー11が第2の結合物20中の電荷部分又は親水性部分によって凝集阻害されて分散する(図2(A))。一方、検出対象50が存在しない場合には刺激応答性ポリマー11が凝集阻害されず凝集することになる((図2(B))。
なお、温度応答性ポリマーの凝集は、第1の結合物及び第2の結合物と検出対象との結合後に行ってもよいし、同時並行的に行ってもよいが、処理時間を短縮できる点で後者が好ましい。
ここで、下限臨界溶液温度は、次のように決定する。まず、試料を吸光光度計のセルに入れ、1℃/分の速度で試料を昇温する。この間、550nmにおける透過率変化を記録する。ここで、ポリマーが透明に溶解しているときの透過率を100%、完全に凝集したときの透過率を0%としたとき、透過率が50%になるときの温度をLCSTとして求める。
また、上限臨界溶液温度は、次のように決定する。1℃/分の速度で試料を冷却し、下限臨界溶液温度の場合と同様に550nmにおける透過率変化を記録する。ここで、ポリマーが透明に溶解しているときの透過率を100%、完全に凝集したときの透過率を0%としたとき、透過率が50%になるときの温度をUCSTとして求める。
〔判別〕
検体と結合物との混合物を展開担体に展開させ、この展開担体における結合物の存在に起因する信号を確認し、この信号が、検出対象の非存在下と異なる場合には、検体中に検出対象が存在すると判別する。つまり、図2に示したように、検出対象の有無に応じて、各混合物中の凝集の状態が異なるため、各混合物の展開態様も異なることになる。そこで、検出対象の非存在下と異なる信号が確認された場合には、検体中に検出対象が存在したと判別できるのである。このように、判別が、展開担体上の信号を確認するだけで、特殊な試薬、機器を特に使用することなく行われるので、種々の環境において、安価且つ簡便に検出を実施できる。
なお、後述するように、混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におくタイミングは、展開よりも前であってもよい(混合物を凝集条件においた後に展開させる)し、展開と同時並行であってもよい(展開中に凝集条件におく)。
(展開担体)
本発明の方法で用いられる展開担体は、水溶液中で微粒子を展開できるものであれば特に限定されず、従来公知のクロマトグラフィー用担体であってよい。具体的には、有孔の三次元構造膜、例えばナイロン膜、ニトロセルロース膜等が挙げられ、合成又は天然高分子膜のいずれであってもよい。ただし、展開担体は、前述した微粒子の平均粒子径よりも大きく且つ凝集体の凝集径よりも小さい孔径を有する必要があるところ、種々の微粒子に対応でき汎用性に優れる点で、0.01μm〜0.5μm程度の孔径を有することが好ましい。
展開及び判別の具体的手順は、特に限定されず、任意であってよい。好ましい手順を以下に説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る方法の手順を示す図である。この実施形態では、検体及び第1の結合物を前述の条件で混合してインキュベートし、更に第2の結合物を前述の条件で混合してインキュベートする。本実施形態では、この時点で既に、刺激応答性ポリマーが凝集する条件が成立している。
その後、展開担体を、その下端から所定高さの位置まで混合物に浸し、この状態で混合物を展開させる。すると、検体中に検出対象が存在しない場合には、多量の凝集体が混合物中に形成されているところ、凝集体径が孔径よりも大きいため、メニスカスに集中して、凝集体中の結合物(通常は微粒子)の存在に起因する有色のバンド(信号の一例)が確認される。これに対して、検体中に検出対象が存在する場合には、検出対象の存在量に応じて凝集体の量が顕著に低下し、孔径よりも小さい非凝集体が展開担体上を移動していくため、凝集体の存在に起因する有色のバンドは確認されず又は薄くなるとともに、広範囲に非凝集体中の結合物(通常は微粒子)の存在に起因する有色域(信号の一例)が確認される。
従って、凝集体の存在に起因する強度(信号有色域の濃さ)が、検出対象の非存在下よりも弱い場合に、検体中に検出対象が存在すると判別することができる。また、本実施形態では、信号有色域の位置が検出対象の非存在下の場合と異なることによっても、検体中に検出対象が存在すると判別することができる。
図4は、本発明の別の実施形態に係る方法の手順を示す図である。本実施形態では、図4(a)に示されるように、展開担体の下端から離れた位置(便宜上図示しているが、実際には視認不能であってよい)に、室温で刺激応答性ポリマー(特にLCSTを有するポリマー)を凝集させる有効量の塩(例えばNaCl)が配置されている。そして、混合物を凝集条件下にはおかず(例えば、刺激応答性ポリマーのLCSTよりも低い温度におく)に展開を開始する。
すると、検体中に検出対象が存在しない場合、混合物は、塩が配置された位置まで移動するものの、この位置で凝集して移動不能になるために集中する。これに対して、検体中に検出対象が存在する場合、混合物は、塩が配置された位置まで移動しても凝集阻害されるので、この位置を通過して更に移動していく。このため、凝集体の存在に起因する有色のバンドは確認されず又は薄くなるとともに、広範囲に非凝集体中の結合物(通常は微粒子)の存在に起因する有色域(信号の一例)が確認される。
従って、凝集体の存在に起因する強度(信号有色域の濃さ)が、検出対象の非存在下よりも弱い場合に、検体中に検出対象が存在すると判別することができる。また、本実施形態においては、非凝集体中の結合物(通常は微粒子)の存在に起因する有色域の範囲が非存在下の場合と異なることによっても、検体中に検出対象が存在すると判別することができる。
前記実施形態では、有色バンドがメニスカスに確認されるため、液面を一定に保つのが困難な環境下では、有色バンドが不鮮明になるおそれがあるが、本実施形態では、塩が配置された位置に有色バンドが確認されるため、液面にかかわらず、有色バンドを鮮明化することができる。この効果は、実験室外等の環境下で検出を行う場合にとりわけ重要である。
なお、塩を配置する箇所は、特に限定されず、展開担体の下端より上端側の任意の箇所であってよい。ただし、展開担体をいずれの方向で用いても(つまり、両端部が上下いずれの方向に向いていても)、同様の信号が得られる点で、展開担体の中央近傍に塩を配置することが好ましい。この効果も、実験室外等の環境下で検出を行う場合にとりわけ重要である。また、展開担体の方向を示す目印等を展開担体に設けてもよく、これにより塩を配置する箇所の自由度を増すことができる。
本実施形態では、展開担体に塩を配置したが、刺激応答性ポリマーの凝集可能な条件であれば、特に限定されない。具体的には、展開担体の所定箇所のみを凝集可能な温度に設定してもよく、凝集pHにする酸又は塩基を配置してもよく、あるいは光を照射してもよい。
図5は、本発明の別の実施形態に係る方法の手順を示す図である。本実施形態では、図5(a)に示されるように、展開担体の下端から離れた位置(便宜上図示しているが、実際には視認不能であってよい)に、結合物と併存すると展開担体上で発色もしくは発光する物質が配置されている。かかる展開担体を用いて図3と同様の手順で展開を行うと、図5(b)に示されるように、検体中に検出対象が存在する場合には、孔径よりも小さい非凝集体が展開担体上を、発色もしくは発光する物質の位置へと移動するため、この位置で発色又は発光(信号の一例)が確認される。これに対して、検体中に検出対象が存在しない場合には、多量の凝集体が混合物中に形成されているため、発色又は発光は確認され難い。この態様によれば、発色又は発光の強度を適宜選択することで、検出の感度及び精度をより向上することができる。本態様では、発色又は発光が信号に相当する。
発色又は発光する物質は、従来周知のものから適宜選択されてよい。発色物質としては、トリアジン、1,10−フェナンスロリン等の可視領域に吸収帯を有するものが挙げられる。発光物質としては、ルミノール、ルシフェラーゼ等の蛍光、化学発光する物質が挙げられる。肉眼で確認できて光照射機器等が不要である点では、発色物質が好ましいが、これに限られない。また、磁性物質を用いる場合には、磁気量を測定してもよく、この場合には磁気量が信号に相当する。
なお、図5の態様において、結合物を有色に構成すれば、検体中に検出対象が存在しない場合に、凝集体の存在に起因する有色域がメニスカスに対応する位置に確認することもできる。このように、信号は1種でも複数種でもよく、適宜選択されてよい。
図6は本発明の別の実施形態に係る方法で用いる展開担体30を備える展開器具40の平面図であり、図7は図6の展開器具40のVII−VII線断面図である。
図7に示されるように、展開器具40において、水平に配置される展開担体30の一端(図6では下端、図7では左端)上にフィルタ47が配置されるとともに、この一端から離れた位置31に、結合物と併存すると展開担体30上で発色もしくは発光する物質が配置されている。また、展開担体30の他端には吸液体49が当接している。
フィルタ47は、展開担体30と同じ又は異なる素材で構成されてよいが、凝集体を透過させず且つ非凝集体を透過させる、つまり前述した微粒子の平均粒子径よりも大きく且つ凝集体の凝集径よりも小さい孔径を有する必要がある。また、吸液体49は、混合物中の溶媒を吸収できるものであれば、特に限定されない。
この状態の展開担体30、フィルタ47及び吸液体49が上保持具41及び下保持具42によって保持され、フィルタ47は供給口部43を通して露出し、位置31は窓部44を通して外部から視認可能である。なお、保持の方式は特に限定されないが、上保持具41及び下保持具42を再利用可能な点では、上保持具41及び下保持具42が着脱自在であることが好ましい。
かかる展開器具40を用い、図3と同様の手順で調製した混合物をフィルタ47にロードする。これにより、混合物は、凝集体がフィルタ47で除去された後に展開担体に展開されることになる。このため、検体中に検出対象が存在する場合には、多量の非凝集体がフィルタ47を透過し、展開担体30上を位置31へと移動し、位置31において発色又は発光が確認される。これに対して、検体中に検出対象が存在しない場合には、混合物中に形成された多量の凝集体がフィルタ47上に残留する一方、フィルタ47を透過できる非凝集体が極めて少ない又は存在しないため、位置31に発色又は発光が確認され難い。
従って、凝集体の存在に起因する信号(ここでは発色又は発光)の強度が、検出対象の非存在下よりも強い場合に、検体中に検出対象が存在すると判別することができる。この実施形態は、前述した実施形態とは異なり、展開の間、混合物に展開担体を同じ姿勢で支持し続けなければならないという制約が小さいため、実験室外等の支持台が存在しなかったり、風等で外気が流動したりする環境にも対応できる点で好ましい。
<定量方法>
本発明の定量方法によれば、まず、第1の結合物、第2の結合物及び検体を混合し、この混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する所定条件下におく。次に、混合物を展開担体に展開させ、この展開担体における結合物の存在に起因する信号の強度を測定し、検出対象の量と信号強度との所定条件下における相関式に基づいて、検体中の検出対象の量を算出する。展開までの手順は前述した検出方法と共通するので、説明を省略する。
(測定)
測定は、測定すべき信号の種類に応じ、従来公知の手順に従って行えばよく、肉眼で又は測定機器を用いて行ってよい。また、次に説明する相関式で用いる信号強度は、測定値そのものであってもよいし、信号強度の範囲に応じて分類された群のスコア値であってもよい。スコア値とは、例えば、以下のようなものである。
スコア0:信号が確認されず。
スコア1:信号が微弱である。
スコア2:信号が明確に確認される。
(相関式)
上記所定条件と同一の条件における、検出対象の量と信号強度との相関式を作成する。この相関式を構成する検出対象の量と信号強度との測定は、データが多い程に信頼性の高い相関式が得られる。そこでデータは、2点以上の検出対象の量に関するものであればよく、3点以上の検出対象の量に関するものであることが好ましい。
ここで、検出対象の量と信号強度との相関式は、検出対象の量と信号強度との直接的な相関を示す式のみならず、検出対象の量と、信号強度を反映するパラメータ又は前述のスコア値との相関式であってもよい。
(算出)
混合物を展開したときの信号強度値を、作成した相関式に代入することによって、検体中の検出対象の量を算出できる。
(検出対象)
以上の検出方法で検出できる対象としては、環境汚染物質、飲食品汚染物質、臨床診断に利用される物質が挙げられ、具体的には、ダイオキシン、環境ホルモン、農薬、PCB、有機水銀等、プリオン、カビ毒、フグ毒、抗生物質、防カビ剤等、体液、尿、喀痰、糞便中等に含まれるヒトイムノグロブリンG、ヒトイムノグロブリンM、ヒトイムノグロブリンA、ヒトイムノグロブリンE、ヒトアルブミン、ヒトフィブリノーゲン(フィブリン及びそれらの分解産物)、α−フェトプロテイン(AFP)、C反応性タンパク質(CRP)、ミオグロビン、ガン胎児性抗原、肝炎ウイルス抗原、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヒト胎盤性ラクトーゲン(HPL)、HIVウイルス抗原、アレルゲン、細菌毒素、細菌抗原、酵素、ホルモン(例えば、ヒト甲状腺刺激ホルモン(TSH)、インスリン等)、薬剤等が挙げられる。
<キット>
本発明は、検出対象を検出及び/又は定量するためのキットも包含する。このキットは、刺激応答性ポリマーを含有する凝集性物質を持つ第1の物質と検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、親水性を有する第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、この結合物を展開するための展開担体と、を備える。第1の物質又は第2の物質は有色粒子を有することが好ましい。また、第1の結合物又は第2の結合物は、前記展開担体上で発色もしくは発光する物質を有することが好ましい。各構成要素の詳細は前述の通りであるので、省略する。
本発明の実施例で用いた代表的な試薬は次の通りである。
PBSバッファー:10倍濃度の市販のPBS(81mM NaHPO、14.7mM KHPO、26.8mM KCl、1370mM NaCl、pH7.4、ニッポンジーン(株)製)を精製水で1/10(V/V)に希釈して用いた。
精製水:MILLIPORE社製「Direct−Q」(商品名)で精製した水。
<実施例1>
本実施例では、第1の結合物として抗TSHβ抗体結合−温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子を、第2の結合物として抗TSHα抗体結合ポリアクリル酸ナトリウムを用いて、ヒト甲状腺刺激ホルモン(TSH)を検出する例を示す。
(第1の結合物の調製)
Leinco Technologies,Inc.製の抗ヒトTSHβ抗体(Anti−Human Thyroid Stimulating Hormone Beta、クローン:195マウス、クラス:マウスIgG)をsulfo−NHS−Biotinを用いて旭テクノグラス社がビオチン化し、ビオチン化抗ヒトTSHβ抗体を調製した。
ストレプトアビジン結合−温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子として、マグナビート(株)製のTherma−Max(登録商標) LSA Streptavidin(0.4質量%)250μLを1.5mLのマイクロチューブに取り、更にPBSバッファーに溶解したビオチン化抗ヒトTSHβ抗体50μL(0.75mg/mL)を加え、4℃で15分間転倒混和した。前記マイクロチューブを37℃に加熱した後、前記磁性粒子を磁石で回収し、上清部分を除去した。ここにPBSバッファー250μLを加え、冷却して、前記磁性粒子を分散させた。更に、過剰量のビオチンをチューブ内に添加してストレプトアビジンのビオチン結合部位をマスクした。再度マイクロチューブを37℃に加熱した後、前記磁性粒子を磁石で回収し、上清部分を除去することで、抗ヒトTSHβ抗体化温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子を調製した。
この抗ヒトTSHβ抗体化温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子を含むチューブに、0.5%(w/v)BSA(シグマ社製)、0.5%(w/v)Tween(登録商標)20、10mM EDTAを含有するPBSバッファー(pH7.4)500μLを加え、冷却することで分散させ、第1の結合物の分散溶液を調製した。
(第2の結合物の調製)
まず、検出対象としてのヒト甲状腺刺激ホルモン(TSH)に対する第2の親和性物質としての抗ヒトTSHα抗体(Anti−Human Thyroid Stimulating Hormone Alpha、クローン:176マウス、マウスIgG、Leinco Technology,Inc.製、1mg/mL)1mLに2−メルカプトエタノール6mgを加え、37℃で120分間反応させた。反応後、Slide−A−Lyzer(商品名) 透析カセット、10K MWCO(Pierce)により、PBSバッファー500mLに対して透析を行って、過剰の2−メルカプトエタノールを除き、限界排除分子量10000の限外濾過膜(MILLIPORE社製[Amicon Ultra−4 Ultracel 10k])を用いて0.5mLに濃縮し、マウス抗ヒトTSHα抗体の還元抗体を得た。この還元抗体0.5mLと、100μLマレイミド化ポリアクリル酸ナトリウムとを4℃で1晩反応させ、続いてSuperdex−200 10/300GL(GEヘルスケア社製)を用いてゲル濾過することで、標識抗体を調製した。この標識抗体(この抗体は、ポリアクリル酸ナトリウム−抗ヒトTSHα抗体結合物ともいう。)を、0.5%(w/v)BSA(シグマ社製)、0.5%(w/v)Tween(登録商標)20、10mM EDTAを含有するPBSバッファー(pH7.4)でタンパク質濃度4μg/mLになるように希釈することで、第2の結合物を調製した。
なお、上記マレイミド化ポリアクリル酸ナトリウムは、次のように調製した。まず、窒素ガス導入管、温度計、及び撹拌装置を付した100mLの三口フラスコ内で、アクリル酸(和光純薬工業社製)2g、2−アミノエタンチオール(和光純薬工業社製)0.021g、及びアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業社製)0.023gをN,N−ジメチルホルムアミド50mLに溶解し、1時間に亘り窒素置換を行った。その後、70℃で7時間に亘り重合反応を行った。得られた反応液を10mLまで減圧濃縮し、粘稠状の物が粉状になるまでジエチルエーテルで再沈殿を行った。白色沈殿をろ別し、更に真空乾燥機で1晩乾燥することで、アミノ基末端ポリアクリル酸を得た(収量1.5g)。このアミノ基末端ポリアクリル酸0.5g及びN,N−ジメチルホルムアミド10mLを、窒素ガス導入管、及び撹拌装置を付した50mLのナスフラスコに入れ、溶解した。そこにEMCS(N−(6−マレイミドカプロイロキシ)スクシンイミド)(同仁化学研究所社製)3mgを加え、一晩反応した。得られた反応液を1mLまで減圧濃縮し、粘稠な物が粉状になるまでジエチルエーテルで再沈殿を行った。白色沈殿をろ別し、更に真空乾燥機で、1晩乾燥しマレイミド基末端ポリアクリル酸を得た。このマレイミド基末端ポリアクリル酸の数平均分子量は約130000(GPCシステム:島津製作所製、カラム:東ソー社製、TSKgel Super AW3000、6mm ID.×150mm、移動相:0.1M 硝酸ナトリウム)であり、収量は0.4gであった。
(検体の調製)
TSH;Aspen Bio Pharma,Inc.製ヒト甲状腺刺激ホルモン(活性8.5IU/mg、WHO80/558)の溶液(濃度30μg/mL)を、オーソ・クリニカル・ダイアグノスティクス社製「ビトロス(登録商標) TSH キャリブレータ1」で、0.06mIU/L、0.0012mIU/Lとなるよう希釈したものを、それぞれ検体2、3とした。なお、ヒト甲状腺刺激ホルモン活性を含有しないことを除き、同様の手順で調製したものを検体1とした。
(展開)
第1の結合物の分散溶液150μL及び第2の結合物の分散溶液200μLをマイクロチューブ内に注ぎ、ボルテックスミキサーで1秒間撹拌した後、検体1〜3各々を50μL注ぎ、ボルテックスミキサーで撹拌した後、室温(21℃)で5分間インキュベートした。チューブから反応液全量を採り、予め37℃に保温してある反応管(図3参照)に注ぎ、37℃で5分間に亘り保温した。
その後、反応管内の反応液に、寸法5mm×50mm、0.1μm以下の孔径を有する展開担体としてのMILLIPORE社製メンブレンフィルタ「Hi−Flow Membrane #SNHF0400」(商品名)を、その下端から約10mmの位置まで浸し、1分間に亘り静置した。その後、メンブレンフィルタを静かに引き上げ、メンブレンフィルタ上の様子を観察した。この結果を図9に示す。
(判別)
図9に示されるように、検出対象を含有しない検体1では、メニスカスに対応する位置(下端から約10mm)に、凝集体中の結合物(磁性粒子)の存在に起因する茶色のバンドが確認された。これに対して、検出対象を含有する検体2、3では、メニスカスに対応する位置での茶色のバンドは確認されず、広範囲に茶色域が確認された。従って、メニスカスに対応する位置の茶色バンドの濃さが、検出対象の非存在下よりも弱い場合に、検体中に検出対象が存在すると判別できることが分かった。また、茶色域の位置がメニスカス位置に集中せず、広範囲に亘ることによっても、検体中に検出対象が存在すると判別できることが分かった。
<実施例2>
本実施例では、第1の結合物として抗HBs抗体結合−温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子を、第2の結合物として抗HBs抗体結合ポリエチレングリコールを用いて、HBs抗原を検出する例を示す。
(第1の結合物の調製)
(株)特殊免疫研究所製の抗HBsモノクローナル抗体(抗原決定基:a、クローン番号Hyb−824)を、PIERCE社製EZ−Link Sulfo−NHS−Biotin Kit,Product#21420(商品名)を用い、キットに添付のビオチン化方法に従ってビオチン化し、ビオチン化抗HBsモノクローナル抗体を調製した。
温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子であるマグナビート(株)製のTherma−Max(登録商標) LSA Streptavidin(30)(0.2質量%)500μlを1.5mLのマイクロチューブに取り、更にPBSバッファーに溶解したビオチン化抗HBsモノクローナル抗体50μl(0.75mg/mL)を加え、4℃で15分間に亘り転倒混和した。前記マイクロチューブを37℃に加熱した後、前記磁性粒子を磁石で回収し、上清部分を除去し、抗HBsモノクローナル抗体化温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子を調製した。
この抗HBsモノクローナル抗体化温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子を含むチューブに、0.5%(w/v)BSA(シグマ社製)、0.5%(w/v)Tween(登録商標)20、10mM EDTAを含有するPBSバッファー(pH7.4)500μLを加え、冷却することで、前記磁性粒子を分散させ、第1の結合物の分散溶液を調製した。
(第2の結合物の調製)
抗ヒトTSHα抗体の代わりに、(株)特殊免疫研究所製の抗HBsモノクローナル抗体(抗原決定基:d、クローン番号Hyb−3423)及び抗HBsモノクローナル抗体(抗原決定基:y、クローン番号Hyb−3457)を用いた点、及び2−メルカプトエタノールの代わりに2−メルカプトエチルアミン塩酸塩を用いた点を除き、実施例1と同様の手順で、2種類の抗HBsモノクローナル抗体の還元抗体を得た。これらの還元抗体から、マレイミド化ポリアクリル酸ナトリウムの代わりにマレイミド化ポリエチレングリコールを用いた点を除き、実施例1と同様の手順で2種類の標識抗体を得て、第2の結合物を調製した。なお、用いたマレイミド化ポリエチレングリコールは、SUNBRIGHT ME−400MA(商品名)日油(株)製 重量平均分子量40,000である。
(検体の調製)
(株)特殊免疫研究所製の精製HBs抗原を、0.5%BSA(シグマ社製)及びPBSバッファー(pH7.4)で、1000ng/mLの濃度へと希釈した。この希釈物を、オーソ・クリニカル・ダイアグノスティックス社製「ビトロス(登録商標) HBs抗原(ロット番号2330)キットで陰性と判断されたヒト血清で、10ng/mLの濃度へと希釈したものを陽性検体(検体2)とした。また、このヒト血清を陰性検体(検体1)とした。
(展開)
第1の結合物の分散溶液100μL、第2の結合物の分散溶液100μL及び検体5μLを用いた点を除き、実施例1と同様の手順でメンブレンフィルタへの展開を行い、メンブレンフィルタ上の様子を観察した。この結果を図10に示す。
(判別)
図10に示されるように、検出対象を含有しない検体1では、メニスカスに対応する位置(図中の矢印で示す位置)に、凝集体中の結合物(磁性粒子)の存在に起因する茶色のバンドが確認された。これに対して、検出対象を含有する検体2では、メニスカスに対応する位置での茶色のバンドは確認されず、広範囲に茶色域が確認された。従って、メニスカスに対応する位置の茶色バンドの濃さが、検出対象の非存在下よりも弱い場合に、検体中に検出対象が存在すると判別できることが分かった。また、茶色域の位置がメニスカス位置に集中せず、広範囲に亘ることによっても、検体中に検出対象が存在すると判別できることが分かった。
10 第1の結合物
11 刺激応答性ポリマー
13 第1の抗体(第1の親和性物質)
15 アビジン
17 ビオチン
19 磁性物質
20 第2の結合物
21 第2の物質
23 第2の抗体(第2の親和性物質)
30 展開担体
40 展開器具
41 上保持具
42 下保持具
43 供給口部
44 窓部
47 フィルタ
50 検出対象

Claims (11)

  1. 検体中の検出対象を検出する方法であって、
    刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、親水性を有する第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、前記検体とを混合し、
    得られた混合物を前記刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におき、前記混合物を展開担体に展開させ、又は得られた混合物を展開担体に展開させ、展開中の前記混合物を前記刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におき、
    前記展開担体における第1の結合物又は第2の結合物の存在に起因する信号を確認し、前記信号が、前記検出対象の非存在下と異なる場合には、前記検体中に検出対象が存在すると判別する工程を含む方法であり、
    第1の親和性物質と第2の親和性物質とが、前記検出対象の異なる部位に結合できる方法。
  2. 第1の結合物の存在に起因する信号の強度が、前記検出対象の非存在下よりも弱い場合に、前記検体中に検出対象が存在すると判別する請求項1記載の方法。
  3. 前記混合物は、第1の結合物の凝集体を除去した後に前記展開担体に展開させ、
    第1の結合物の存在に起因する信号の強度が、前記検出対象の非存在下よりも強い場合に、前記検体中に検出対象が存在すると判別する請求項1記載の方法。
  4. 検体中の検出対象を定量する方法であって、
    刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、親水性を有する第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、前記検体とを混合し、
    得られた混合物を前記刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におき、前記混合物を展開担体に展開させ、又は得られた混合物を展開担体に展開させ、展開中の前記混合物を前記刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におき、
    前記展開担体における第1の結合物又は第2の結合物の存在に起因する信号の強度を測定し、前記検出対象の量と信号強度との前記所定条件下における相関式に基づいて、前記検体中の検出対象の量を算出する工程を含む方法であり、
    第1の親和性物質と第2の親和性物質とが、前記検出対象の異なる部位に結合できる方法。
  5. 第1の結合物の凝集体の存在に起因する信号を測定する請求項4記載の方法。
  6. 前記混合物は、第1の結合物の凝集体を除去した後に前記展開担体に展開させ、
    第1の結合物の存在に起因する信号の強度を測定する請求項4記載の方法。
  7. 第1の結合物は有色粒子を有し、
    前記信号は、前記有色粒子の存在に基づく色に依存したものである請求項1から6いずれか記載の方法。
  8. 第1の結合物又は第2の結合物は、前記展開担体上で発色もしくは発光する物質を有し、
    前記信号は、前記発色もしくは発光する物質の存在に基づく色又は光に依存したものである請求項1から7いずれか記載の方法。
  9. 検出対象を検出及び/又は定量するためのキットであって、
    刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、親水性を有する第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、
    前記結合物を展開するための展開担体と、を備えるキット。
  10. 第1の結合物は有色粒子を有する請求項9記載のキット。
  11. 第1の結合物又は第2の結合物は、前記展開担体上で発色もしくは発光する物質を有する請求項9又は10記載のキット。
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