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JP5184554B2 - 検出対象の検出方法及び定量方法 - Google Patents

検出対象の検出方法及び定量方法 Download PDF

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Description

従来から、被検体中の検出対象を検出する方法として、ラテックス凝集法が行われてきた。ラテックス凝集法とは、生体試料等の流体中における抗原を検出する場合、抗原に特異的に結合する抗体もしくはそのフラグメントを担持させたラテックスと、流体とを混合して、ラテックスの凝集の程度を測定することにより、抗原を検出又は定量する方法である(例えば、特許文献1参照)。
このラテックス凝集法によれば、検体として添加された抗原が複数のラテックス結合抗体を架橋させ、ラテックスの凝集を促す。このように手順が単純であるから、簡便且つ迅速に抗原を検出できる。しかし、抗原が微量の場合、その架橋が起こりにくいため、ラテックスが十分に凝集しない。このため、微量の抗原を検出することが困難であった。また手技の測定において、測定結果のバラツキが多い等の問題もあった。
そこで、ELISA法やCLEIA法といった酵素基質反応を利用する方法も広く採用されている。これらの方法では、例えば、抗原に特異的に結合する一次抗体を抗原に結合させ、この一次抗体に酵素を有する二次抗体を結合させる。ここで、酵素の基質を添加し、酵素が触媒する反応の程度を測定することで、抗原を検出又は定量する。
これらの方法によれば、例えば基質として発光試薬を用いると、基質添加後の発光の検出感度が高いため、微量の抗原も検出できる。
特公昭58−11575号公報
しかし、酵素基質反応を利用する方法では、二次抗体、発光試薬、発光検出装置等の特殊な試薬、機器が必須であり、作業コストが高い。
また、図8に示すように、この方法は、試料及び各試薬をインキュベーションする工程(ST110、ST130)、系を洗浄する工程(ST120)、発光を測定する工程(ST140)等の多段階からなっており、操作が煩雑である。しかも、各段階に要する時間が極めて長く、大規模処理には適さない。
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、検出対象を迅速、安価且つ簡便に検出、定量できる検出、定量用キット、及び高精度に検出、定量できる方法を提供することを課題とする。
発明者らは、親水性の化合物を接近させると、刺激応答性ポリマーの凝集が阻害されることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
[1]検出対象を検出及び/又は定量するためのキットであって、
刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、
親水性の第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、を含み、
第1の親和性物質と第2の親和性物質が、前記検出対象の異なる部位において、同時に前記検出対象に結合できるキット。
[2]第1の物質が、微粒子状の磁性物質を含む[1]に記載のキット。
[3]第2の物質が、親水性のポリマーである[1]又は[2]に記載のキット。
[4]第2の物質が、ポリオールである[1]〜[3]のいずれか1項に記載のキット。
[5]第2の物質が、ポリオキシアルキレンを構成単位として含むポリマーである[1]〜[3]のいずれか1項に記載のキット。
[6]検体中の検出対象を検出する方法であって、
刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、親水性の第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、前記検体とを混合し、この混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におき、前記刺激応答性ポリマーの分散の有無を判定する工程を含み、
第1の親和性物質と第2の親和性物質が、前記検出対象の異なる部位において、同時に前記検出対象に結合できる方法。
[7]第1の物質が微粒子状の磁性物質を含有し、
前記方法は、磁力を付加することで、凝集した磁性物質を分離することを更に含む[6]に記載の方法。
[8]検体中の検出対象を定量する方法であって、
刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、親水性の第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、前記検体とを混合し、この混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する所定条件下におき、
前記混合物の濁度を測定し、前記検出対象の量と濁度との前記所定条件下における相関式に基づいて、前記検体中の検出対象の量を算出することを含む方法。
[9]第1の物質が微粒子状の磁性物質を含有し、
前記方法は、磁力を付加することで、凝集した磁性物質を分離することを更に含む[8]に記載の方法。
本発明によれば、検出対象が存在すると、この検出対象に第1の親和性物質及び第2の親和性物質が結合するため、第1の親和性物質に結合した刺激応答性ポリマーと、第2の親和性物質に結合した第2の物質が接近する。これにより、親水性部分が刺激応答性ポリマーの近傍に配置されるため、刺激に応答した刺激応答性ポリマーの凝集が阻害される。従って、この凝集阻害の有無を観察することで、検出対象の存否を検出できる。また、凝集阻害の程度を測定することで、検出対象を定量できる。
以上の手順は、いずれも特殊な試薬、機器を特に使用することなく行うことができ、安価且つ簡便である。また、凝集阻害の程度を測定するだけであり、酵素によって触媒される反応を利用する系ではないから、迅速に行うことができる。また、第2の物質が有する親水性部分が刺激応答性ポリマーの凝集を高度に阻害するので、高感度で検出対象を検出、定量できる。
本発明の一実施形態に係る方法において使用される結合物の概略構成図である。 前記実施形態に係る結合物の使用状態を示す模式図である。 本発明の一実施例に係る方法における磁力の付加の態様を示す図である。 本発明の一実施例に係る方法のフローチャートである。 本発明の一実施例に係る方法における測定時間と濁度との関係を示すグラフである。 本発明の別の実施例に係る方法における測定時間と濁度との関係を示すグラフである。 図6の実施例に係る方法における検出対象の量と、濁度との相関式を示すグラフである。 従来例に係る方法のフローチャートである。
符号の説明
10 第1の結合物
11 刺激応答性ポリマー
13 第1の抗体(第1の親和性物質)
15 アビジン
17 ビオチン
19 磁性物質
20 第2の結合物
21 第2の物質
23 第2の抗体(第2の親和性物質)
50 検出対象
71 セル
73 永久磁石
発明を実施するための形態
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<キット>
本発明のキットは、検出対象を検出又は定量するためのキットであって、第1の結合物と、第2の結合物とを含有する。各構成について、以下詳細に説明する。
〔第1の結合物〕
第1の結合物は、刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と、検出対象に対する第1の親和性物質とが結合したものである。
(第1の物質)
本発明で用いられる第1の物質は刺激応答性ポリマーを含有する物質であり、この刺激応答性ポリマーは、外的な刺激に応答して構造変化を起こし、凝集及び分散を調整できるポリマーである。刺激としては、特に限定されないが、温度変化、光の照射、酸又は塩基の添加(pHの変化)、電場変化等が挙げられる。
特に、本発明では、刺激応答性ポリマーは、温度変化によって凝集及び分散可能な温度応答性ポリマーであることが好ましい。なお、温度応答性ポリマーとしては、下限臨界溶液温度(以下、LCSTとも称する)を有するポリマーや上限臨界溶液温度を有するポリマー(以下、UCSTとも称する)が挙げられる。
本発明で用いられる下限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリン等のN置換(メタ)アクリルアミド誘導体からなるポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリビニルメチルエーテル、(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン)ブロックコポリマー、ポリオキシエチレンラウリルアミン等のポリオキシエチレンアルキルアミン誘導体;ポリオキシエチレンソルビタンラウレート等のポリオキシエチレンソルビタンエステル誘導体;(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)(メタ)アクリレート類;及び(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)アクリレート、(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)メタクリレート等の(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)(メタ)アクリレート類等のポリオキシエチレン(メタ)アクリル酸エステル誘導体等が挙げられる。更に、これらのポリマー及びこれらの少なくとも2種のモノマーからなるコポリマーも利用できる。また、N−イソプロピルアクリルアミドとN−t−ブチルアクリルアミドのコポリマーも利用できる。(メタ)アクリルアミド誘導体を含むポリマーを使用する場合、このポリマーにその他の共重合可能なモノマーを、下限臨界溶液温度を有する範囲で共重合してもよい。本発明では、なかでも、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N、N−ジメチルメタクリルアミド、N−メタクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルモルホリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなるポリマー又はN−イソプロピルアクリルアミドとN−t−ブチルアクリルアミドのコポリマーが好ましく利用できる。
本発明で用いられる上限臨界溶液温度を有するポリマーとしては、アクリロイルグリシンアミド、アクリロイルニペコタミド、アクリロイルアスパラギンアミド及びアクリロイルグルタミンアミド等からなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーからなるポリマーが利用できる。また、これらの少なくとも2種のモノマーからなるコポリマーであってもよい。これらのポリマーには、アクリルアミド、アセチルアクリルアミド、ビオチノールアクリレート、N−ビオチニル−N’−メタクリロイルトリメチレンアミド、アクリロイルザルコシンアミド、メタクリルザルコシンアミド、アクリロイルメチルウラシル等、その他の共重合可能なモノマーを、上限臨界溶液温度を有する範囲で共重合してもよい。
また、本発明では、刺激応答性ポリマーとして、pH変化によって凝集及び分散可能なpH応答性ポリマーが利用できる。pH応答性ポリマーが構造変化を起こすpHは、特に限定されないが、刺激付与時における第1の結合物、第2の結合物、及び検体の変性等による検出・定量精度の低下を抑制できる点で、pH4〜10が好ましく、pH5〜9であることが更に好ましい。
このようなpH応答性ポリマーとしては、カルボキシル、リン酸、スルホニル、アミノ等の基を官能基として含有するポリマーが例示できる。より具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ホスホリルエチル(メタ)アクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の解離基を有するモノマーが重合されたものであってもよく、これら解離基を有するモノマーと、pH応答能が損なわれない程度において、他のビニルモノマー、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン、塩化ビニル、N−ビニルピロリドン等のビニル化合物、(メタ)アクリルアミド類等とが共重合されたものであってもよい。
(微粒子状の磁性物質)
ここで用いる微粒子状の磁性物質は、多価アルコールとマグネタイトとで構成されてよい。この多価アルコールは、構成単位に水酸基を少なくとも2個有し且つ鉄イオンと結合可能なアルコール構造体である限りにおいて特に限定されず、例えば、デキストラン、ポリビニルアルコール、マンニトール、ソルビトール、シクロデキストリンが挙げられる。例えば特開2005−82538公報には、デキストランを用いた微粒子状の磁性物質の製造方法が開示されている。また、グリシジルメタクリレート重合体のようにエポキシを有し、開環後多価アルコール構造体を形成する化合物も使用できる。このような多価アルコールを用いて調製された微粒子状の磁性物質(磁性微粒子)は、良好な分散性を有するように、その平均粒径が0.9nm以上1000nm未満であることが好ましい。平均粒径は、特に目的とする検出対象の検出感度を高めるためには、2.9nm以上200nm未満であることが好ましい。
〔第2の結合物〕
第2の結合物は、親水性の第2の物質と、検出対象に対する第2の親和性物質とが結合したものである。
(第2の物質)
親水性の第2の物質は、例えば水溶性のポリマーであり、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリオキシアルキレンを構成単位として含有するポリマー、ポリビニルアルコール等のアルコール性水酸基を含有するポリマー、デキストラン、シクロデキストリン、アガロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性多糖類等のポリオールが挙げられる。これら親水性の物質は、ポリマー鎖の中又は末端に、第2の親和性物質を結合させるための官能基等を有していてもよい。
(第1の親和性物質、第2の親和性物質)
第1の結合物の第1の親和性物質、及び第2の結合物の第2の親和性物質は、検出対象の異なる部位において、同時に検出対象に結合できるものである。第1の親和性物質及び第2の親和性物質は、例えば、検出対象の異なる抗原決定基を認識するモノクローナル抗体であってよい。
ここで用いる抗体は、いかなるタイプの免疫グロブリン分子であってもよく、Fab等の抗原結合部位を有する免疫グロブリン分子断片であってもよい。また、抗体は、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいが、異なる抗原認識部位を有する2種類のモノクローナル抗体であることが好ましい。
〔作製方法〕
以上のキットの作成方法を説明する。
[第1の結合物の作製]
第1の結合物は、第1の物質と第1の親和性物質とを結合することによって作製する。この結合方法は、特に限定されないが、例えば、第1の物質側(例えば刺激応答性ポリマー部分)及び第1の親和性物質(例えば、第1の抗体)側の双方に、互いに親和性の物質(例えば、アビジン及びビオチン、グルタチオン及びグルタチオンSトランスフェラーゼ)を結合させ、これら物質を介して第1の物質及び第1の親和性物質を結合させる。
具体的には、刺激応答性ポリマーへのビオチンの結合は、国際公開WO01/09141号パンフレットに記載されているように、ビオチン等をメタクリルやアクリル等の重合性官能基と結合させて付加重合性モノマーとし、他のモノマーと共重合することにより行うことができる。また、第1の親和性物質へのアビジン等の結合は常法に従って行うことができる。次に、ビオチン結合刺激応答性ポリマー及びアビジン結合第1の親和性物質を混合すると、アビジンとビオチンとの結合を介して、第1の親和性物質及び刺激応答性ポリマーが結合する。
別法として、ポリマーの重合時にカルボキシル、アミノ又はエポキシ等の官能基を持つモノマーを他のモノマーと共重合させ、この官能基を介し、当技術分野で周知の方法に従って抗体親和性物質(例えば、メロンゲル、プロテインA、プロテインG)をポリマーに結合させる方法が利用できる。このようにして得られた抗体親和性物質に第1の抗体を結合させることにより、刺激応答性ポリマーと、検出対象の抗原に対する第1の抗体との第1の結合物が作製される。
あるいは、ポリマーの重合時にカルボキシル、アミノ又はエポキシ等の官能基を有するモノマーを他のモノマーと共重合させ、これらの官能基に検出対象の抗原に対する第1の抗体を常法に従って直接結合させてもよい。
あるいは、微粒子状の磁性物質に第1の親和性物質及び刺激応答性ポリマーを結合させてもよい。
第1の物質を刺激応答性ポリマーが凝集する条件においた後、遠心分離によって分離することで、第1の結合物を精製してもよい。第1の結合物の精製は、刺激応答性ポリマーに微粒子状の磁性物質を結合させ、更に第1の親和性物質を結合させた後、磁力を付加して磁性物質を回収する方法によって行ってもよい。
微粒子状の磁性物質と刺激応答性ポリマーとの結合は、反応性官能基を介して結合する方法や、磁性物質中の多価アルコール上の活性水素又は多価アルコールに重合性不飽和結合を導入してグラフト重合する方法等の当技術分野で周知の方法で行ってよい(例えば、ADV.Polym.Sci.、Vol.4、p111、1965やJ.Polymer Sci.、Part−A、3、p1031、1965参照)。
次に、親水性の第2の物質と、検出対象の抗原に対する第2の抗体とを結合させ第2の結合物を作製する方法について記述する。
[第2の結合物の作製]
第2の結合物は、第2の物質と第2の親和性物質とを直接又は間接に結合することによって作製する。特に限定されないが、例えば、第2の物質側及び第2の親和性物質(例えば、第2の抗体)側の双方に、互いに親和性の物質(例えば、アビジン及びビオチン、グルタチオン及びグルタチオンSトランスフェラーゼ)を結合させ、これら物質を介して第2の物質及び第2の親和性物質を間接的に結合させる。
第2の物質と第2の親和性物質とを直接的に結合させる場合、官能基を介して結合させてもよく、例えば、官能基を用いる場合、ゴッシュらの方法(Ghosh et al.:Bioconjugate Chem.、 1、 71−76、1990)のマレイミド−チオールカップリングに従って結合できる。
このようにして製造されるキットは、例えば以下のような方法で、検出対象を検出又は定量するために使用できる。
<検出方法>
本発明の検出方法は、まず第1の結合物、第2の結合物及び検体を混合し、この混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する条件下において、刺激応答性ポリマーの分散の有無を判定する工程を含む。手順の詳細を以下に説明する。
(混合・凝集)
まず、第1の結合物と第2の結合物とを容器内で混合し、更に検体を添加して混合物を得る。続いて、この混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におく。すると、検出対象が存在する場合には、刺激応答性ポリマーが第2の結合物中の親水性部分によって凝集阻害されて分散する。一方、検出対象が存在しない場合には、刺激応答性ポリマーが凝集阻害されず凝集することになる。
この現象を、図1〜図2を参照しながら説明する。
図1に示されるように、第1の結合物10は刺激応答性ポリマー11を含有し、この刺激応答性ポリマー11はアビジン15及びビオチン17を介して検出対象50に対する第1の抗体13に結合されている。また、第1の結合物10は微粒子状の磁性物質19を含み、この磁性物質19の表面に刺激応答性ポリマー11が結合されている。一方、第2の結合物20は親水性の第2の物質21を含み、この第2の物質21は検出対象50に対する第2の抗体23に結合されている。そして、第1の抗体13及び第2の抗体23は、検出対象50の異なる部位において、同時に検出対象50に結合できる。
図2に示されるように、第1の結合物10、第2の結合物20及び検体の混合物を所定条件下におくと、検出対象50が存在する場合には、刺激応答性ポリマー11が第2の結合物20中の親水性部分によって凝集阻害されて分散する(図2(A))。一方、検出対象50が存在しない場合には刺激応答性ポリマー11が凝集阻害されず凝集することになる(図2(B))。
刺激応答性ポリマー11を凝集させるためには、例えば温度応答性ポリマーを用いた場合、混合液の入った容器を温度応答性ポリマーの凝集する温度の恒温槽に移せばよい。温度応答性ポリマーには、上限臨界溶液温度(以下「UCST」と略すことがある。)を有するポリマーと、下限臨界溶液温度(以下「LCST」と略すことがある。)を有するポリマーの2種類がある。例えば、LCSTが37℃である下限臨界溶液温度を有するポリマーを用いた場合には、混合液の入った容器を37℃以上の恒温槽に移すことで、温度応答性ポリマーを凝集させることができる。また、UCSTが5℃である上限臨界溶液温度を有するポリマーを用いた場合には、混合液の入った容器を5℃未満の恒温槽に移すことで、温度応答性ポリマーを凝集させることができる。
また、pH応答性ポリマーを用いた場合、混合液の入った容器に酸溶液又はアルカリ溶液を加えればよい。具体的には、pH応答性ポリマーが構造変化を起こすpH範囲の外にある分散混合液の入った容器に、酸溶液又はアルカリ溶液を加え、容器内をpH応答性ポリマーが構造変化を起こすpH範囲に変更すればよい。例えば、pH5以下で凝集、pH5超で分散するpH応答性ポリマーを用いた場合、pH5超で分散している混合液の入った容器に、pHが5以下になるように酸溶液を加えればよい。また、pH10以上で凝集、pH10未満で分散するpH応答性ポリマーを用いた場合、pH10未満で分散している混合液の入った容器に、pHが10以上になるようにアルカリ溶液を加えればよい。pH応答性ポリマーが構造変化を起こすpHは、特に限定されないが、pH4〜10が好ましく、pH5〜9であることが更に好ましい。
また、光応答性ポリマーを用いた場合、混合液の入った容器にポリマーを凝集できる波長の光を照射すればよい。凝集させるための好ましい光は、光応答性ポリマーに含まれる光応答性官能基の種類及び構造により異なるが、一般に波長190〜800nmの紫外光又は可視光が好適に使用できる。このとき、強度は0.1〜1000mW/cmが好ましい。なお、光応答性ポリマーは、測定精度を向上できる点で、濁度の測定に用いられる光が照射された際、分散を生じにくいもの、換言すれば凝集するものであることが好ましい。光応答性ポリマーとして、濁度の測定に用いられる光が照射された際に分散を生じるものを用いる場合、照射時間を短縮することで測定精度を向上できる。
なお、温度応答性ポリマーの凝集は、第1の結合物及び第2の結合物の検出対象への結合の後に行ってもよいし、同時並行的に行ってもよいが、処理時間を短縮できる点で後者が好ましい。ただし、温度応答性ポリマーが凝集する条件が、第1の結合物及び第2の結合物が検出対象に結合する条件と大幅に異なる場合、前者が好ましい。
ここで、下限臨界溶液温度は、次のように決定する。まず、試料を吸光光度計のセルに入れ、1℃/分の速度で試料を昇温する。この間、550nmにおける透過率変化を記録する。ここで、ポリマーが透明に溶解しているときの透過率を100%、完全に凝集したときの透過率を0%としたとき、透過率が50%になるときの温度をLCSTとして求める。
また、上限臨界溶液温度の場合は、次のように決定する。1℃/分の速度で試料を冷却し、同様に550nmにおける透過率変化を記録する。ここで、ポリマーが透明に溶解しているときの透過率を100%、完全に凝集したときの透過率を0%としたとき、透過率が50%になるときの温度をUCSTとして求める。
(判定)
分散の有無の判定は、例えば目視又は濁度測定で行うことができる。濁度は光散乱装置での光透過率から算出でき、濁度が低ければ刺激応答性ポリマーの凝集が阻害されており、検出物質の存在が示唆される。ここで、使用する光の波長は、磁性物質の粒径等に応じ所望の検出感度が得られるよう適宜設定されてよい。光の波長は、従来汎用の装置を利用できる点で、可視光の範囲内(例えば、550nm)であることが好ましい。
目視又は濁度測定は、一定の時点で断続的に行ってもよいし、経時的に連続して行ってもよい。また、ある時点における濁度測定値と、他の時点における濁度測定値との差に基づいて判定を行ってもよい。
<定量方法>
本発明の定量方法によれば、まず、第1の結合物、第2の結合物及び検体を混合し、この混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する所定条件下におく、次に、混合物の濁度を測定し、検出対象の量と濁度との所定条件下における相関式に基づいて、検体中の検出対象の量を算出する。前半部分の手順は前述した検出方法と類似するので、説明を省略する。
(相関式)
上記所定条件と同一の条件における、検出対象の量と濁度との相関式を作成する。この相関式を構成する検出対象の量と濁度との測定は、データが多い程に信頼性の高い相関式が得られる。そこでデータは、2点以上の検出対象の量に関するものであればよく、3点以上の検出対象の量に関するものであることが好ましい。
ここで、検出対象の量と濁度との相関式は、検出対象の量と濁度との直接的な相関を示す式のみならず、検出対象の量と濁度を反映するパラメータとの相関式であってもよい。
(算出)
混合物の濁度測定値を、作成した相関式に代入することによって、検体中の検出対象の量を算出できる。
(分離)
第1の物質が微粒子状の磁性物質を含有する場合、本発明の検出方法又は定量方法は、磁力を付加することで、凝集した磁性物質を分離することを更に含むことが好ましい。これによって、凝集した磁性物質が、非凝集状態の磁性物質を含む夾雑物から分離される。このため、分離した磁性物質の量、溶媒に分散した際の光透過率等の測定値は、夾雑物の影響が除外され、検出物質の存在をより忠実に反映したものとなる。
磁力の付加は磁性物質に磁石を接近させて行うことができる。この磁石の磁力は、用いる磁性物質が有する磁力の大きさによって異なる。磁石としては、例えばマグナ社製ネオジ磁石が挙げられる。
また、磁力の付加は、判定の前又は判定と同時並行して行ってよいが、工程に費やされる時間を短縮化できる点で同時並行が好ましい。なお、磁力を付加すると、凝集した磁性物質は夾雑物を巻き込んで分離されるため、分離後における混合物の濁度は、夾雑物が存在していた場合の方がむしろ小さくなるものと推測される。
なお、検出方法又は定量方法における「濁度測定」には、濁度を直接的に測定することのみならず、濁度を反映するパラメータを測定することも包含される。かかるパラメータとしては、複数時点での濁度測定値の差異、分離された凝集物量、分離後の非凝集物の濁度等が挙げられる。ここで、複数時点のうちの1点は、例えば、検出対象が非存在である陰性対照に磁力を付加した際、濁度が最大値となる時点近傍であることが好ましい。これにより、別の時点での濁度測定値との差異が大きくなり、検出対象の量をより正確に定量できることになる。
(検出対象)
検体中の検出対象としては、臨床診断に利用される物質が挙げられ、具体的には、体液、尿、喀痰、糞便中等に含まれるヒトイムノグロブリンG、ヒトイムノグロブリンM、ヒトイムノグロブリンA、ヒトイムノグロブリンE、ヒトアルブミン、ヒトフィブリノーゲン(フィブリン及びそれらの分解産物)、α−フェトプロテイン(AFP)、C反応性タンパク質(CRP)、ミオグロビン、ガン胎児性抗原、肝炎ウイルス抗原、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ヒト胎盤性ラクトーゲン(HPL)、HIVウイルス抗原、アレルゲン、細菌毒素、細菌抗原、酵素、ホルモン(例えば、ヒト甲状腺刺激ホルモン(TSH)、インスリン等)、薬剤等が挙げられる。
[キットの構成とその使用方法の例]
以下に、本発明の方法を利用するためのキットの構成とその使用方法の例を、検出対象が抗原の場合について説明する。
試薬キットは、例えば、下記の試薬から構成される。
抗原検出用試薬キット:
試薬A:検出対象の抗原に特異的に結合する第1の抗体及び温度応答性ポリマーが結合した微粒子状の磁性物質
試薬B:第1の抗体とは異なる部位を認識し、検出対象の抗原に同時に結合しうる第2の抗体が結合した、親水性の物質
試薬C:被測定物質の標準品(具体例として、精製抗原が挙げられる。)。
試薬D:希釈用バッファー(上記試薬の希釈用、並びに被測定試料の希釈用に使用可能なバッファーであって、トリス塩酸バッファー、リン酸バッファー等が挙げられる。)
また、濁度を測定する装置としては、容器内をポリマーが凝集する温度に保温でき、200nm〜900nmの透過光を照射できる従来周知の装置が使用できる。
上記した試薬からなるキットは、例えば、以下の方法で使用できる。
まず、試薬A 5〜1000μLと試薬B 5〜1000μLとを混合する。試薬Aと試薬Bの入った溶液中に(1)被測定物質の標準品を添加した陽性対照、(2)何も添加しない陰性対照、(3)被検液の5〜1000μLを添加したサンプル、を準備し、一定時間ポリマーが分散する温度(例えば約0〜30℃)で反応させる。温度応答性ポリマーを用いた場合、反応後、そのポリマーの凝集温度(例えば42℃)に保温された容器に反応液を入れ、550nmの透過光を照射して濁度を測定し、抗原の有無の判定又は抗原の定量を行う。
上記とは別の使用方法として、試薬Aと上記(1)、(2)、及び(3)を一定時間ポリマーが分散する温度で反応させた後、試薬Bを添加するか、又は試薬Bと上記(1)、(2)、及び(3)とを反応させた後、ポリマーが分散する温度で試薬Aを添加し、一定時間反応後、凝集温度に保温された容器に反応液を入れ、550nmの透過光を照射して濁度を測定し、抗原の有無の判定又は抗原の定量を行ってもよい。
本発明の実施例で用いた代表的な試薬は次のとおりである。
PBSバッファー:10倍濃度の市販のPBS(8.1mM NaHPO、1.5mM KHPO、2.7mM KCl、137mM NaCl、pH7.4、ニッポンジーン(株)製)を精製水で1/10(V/V)に希釈して用いた。
ホウ酸緩衝液:ポリサイエンス社製Borate buffer、100mM ホウ酸、pH8.5。
精製水:MILLIPORE社製「Direct−Q」(商品名)で精製した水。
<実施例1>
本実施例では、第1の結合物としてビオチン結合−温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子を、第2の結合物としてビオチン結合ポリビニルアルコールを用いて、ストレプトアビジンを検出、定量する例を示す。
(第1の結合物の調製)
ビオチン結合−温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子として、マグナビート(社)製のTherma−Max LB Biotin(0.4質量%)を用いた。Therma−Max LB Biotin500μLを1.5mLマイクロチューブにとり、このマイクロチューブを42℃に加熱することで、Therma−Max LB Biotinを凝集させ、磁石で回収した後、上清を除去した。除去後のマイクロチューブに0.5%(w/v)BSA(シグマ社製)、0.5%(w/v)Tween(登録商標)20、10mM EDTAを含有するPBSバッファー(pH7.4)500μLを加え、冷却することで分散させ、第1の結合物の分散溶液を調製した。
(第2の結合物の調製)
[製造例1]ビオチン結合ポリビニルアルコールの調製方法
1%(w/v)ポリビニルアルコール(クラレ社製、M205、片末端にチオール基含有)水溶液1mL及び1%(w/v)Biotin−PEAC5−maleimide(同仁化学研究所社製)水溶液10μLを混合し、37℃で1時間静置した。この反応液をスピンカラム(MILLIPORE社製、Microcon YM−10)2本を用いて精製し、全量を精製水で1mLとした。このうち100μlと、0.5%(w/v)BSA(シグマ社製)、0.5%(w/v)Tween(登録商標)20、10mM EDTAを含有するPBSバッファー(pH7.4)900μlを混合することで、第2の結合物の分散溶液を調製した。
(ビオチン結合−温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子及びビオチン結合ポリビニルアルコールを用いたストレプトアビジンの定量)
[試料の調製]
ストレプトアビジン(和光純薬工業社製)を精製水で10mg/mLとなるように溶解した。この溶液を0.5%(w/v)BSA(シグマ社製)、0.5%(w/v)Tween(登録商標)20、10mM EDTAを含有するPBSバッファー(pH7.4)で13.3μg/mL、6.7μg/mL、及び0μg/mLとなるよう希釈したものを、それぞれ試料とした。
[定量]
図3に示されるように、汎用の分光光度計用セミミクロセル71の光路外に、寸法5mm×9mm×2mmのネオジム永久磁石73(西興産業社製)を取り付けた。このセル71を、セル温度制御機が設けられた紫外可視分光光度計V−660DS(日本分光社製)内に設置し、37℃のもと10分間以上保持した。
図4は、実施例に係る定量方法の手順を示すフローチャートである。定量方法は、上記の第1の結合物、第2の結合物及び試料を混合する工程(ST10)と、混合物の濁度を測定する工程(ST20)とを含む。
(混合)
第1の結合物の分散溶液150μL、第2の結合物の分散溶液120μL、及び各試料750μLをマイクロチューブ内に注ぎ、ピペッティングで混合した後、ボルテックスミキサーで5分間撹拌した。
(濁度の測定)
この撹拌液をセル71内に分注し、分光光度計に添付の使用説明書に従ってゼロ補正し、波長420nmの光を用いて、直ちにバンド幅2.0nmで1000秒間にわたって連続して測定した。この結果を図5に示す。
図5に示されるように、測定開始約260秒後までは、ストレプトアビジンの量が多い程、濁度が低かった。これは、温度応答性ポリマーがストレプトアビジンを介して親水性のポリビニルアルコールに近接することによって凝集阻害を受けて分散したためである。一方、測定開始約260秒後付近から、ストレプトアビジンの量と濁度との関係が反転し始め、時間の経過とともに濁度が初期値よりも低下した。これは、凝集した磁性物質が磁石に吸着されて分離されたことによるものと推測される。
次に、各試料について、測定開始260秒後及び1000秒後の2点での測定値の差異を表した。この結果を表1に示す。
Figure 0005184554
表1に示されるように、測定開始260秒後及び1000秒後の2点間の測定値の差は、ストレプトアビジンの量に依存するものであった。すなわちストレプトアビジン濃度が上がるにつれ、測定開始260秒後及び1000秒後の2点間の測定値の差は小さくなった。これにより、測定開始260秒後及び1000秒後の2点間の測定値の差を測定することで、検出物質を検出又は定量できることがわかった。
更に1000秒以内という検出時間は、インキュベーション時間を含め約90分間費やす従来技術(図8参照)に比べて、格段に短いものである。また、ST10及びST20という操作(図4参照)を、実際の検体について行うだけで検出物質を検出又は定量できるので、手順が簡便である。
以上の結果により、ストレプトアビジンの濃度に応じて濁度が変化すること、換言すれば、濁度を測定することでストレプトアビジンの濃度を定量できることが示された。つまり、本発明に係る方法は、二次抗体、発光試薬、発光検出装置等の特殊な試薬、機器を必要とせず、検出対象を迅速、安価且つ簡便に検出、定量できる新規な方法であることが確認された。
<実施例2>
本実施例では、第1の結合物として保護チオール基を含む温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子(以後、TM−LPDPとも称する)を用い、第2の結合物としてN−ヒドロキシスクシンイミドが結合したポリエチレングリコール(以後、NHS−PEGとも称する)「SUN BRIGHT ME−400CS」(日油社製、重量平均分子量40000)を用いて、グルタチオン(GSH)を検出、定量する例を示す。
(第1の結合物の調製)
アミノ基結合−温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子として、マグナビート(社)製のTherma−Max LAm Amine(以後、TM−LAmと称する)0.4質量%を用いた。TM−LAm 2mLを2mLマイクロチューブにとり、このマイクロチューブを42℃に加熱することで、TM−LAmを凝集させ、磁石で回収した後、上清を除去した。除去後のマイクロチューブにホウ酸緩衝液2mLを加えて溶媒を置換し、TM−LAmを充分に分散させることで、磁性微粒子含有ホウ酸緩衝液を得た。
続いて、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(同仁化学研究所社製、SPDP)2mgをジメチルスルホキシド100μLに溶解した溶液と、上記の磁性微粒子含有ホウ酸緩衝液とを混合し、20℃で一晩に亘り撹拌した。撹拌された液を42℃に加熱し、凝集体を磁石で回収した後、上清を除去した。その後、凝集体にPBSバッファー 2mLを加え、充分に分散させた。以上の洗浄を2回行い、未反応のSPDPを除去した。分散液を42℃に再加熱し、凝集体を磁石で回収し、上清を除去した後、保護チオール基を含む温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子をPBSバッファーに分散させることで、第1の結合物を調製した(粒子の含有量0.3質量%)。
(保護チオール基を含む温度応答性ポリマー表面修飾磁性粒子及びN−ヒドロキシスクシンイミド結合ポリエチレングリコールを用いたグルタチオンの定量)
[試料の調製]
還元型グルタチオン(和光純薬工業社製)を、10mM EDTAを含有するPBSバッファー1mLに溶解し、10mM EDTAを含有するPBSバッファーで、12μg/mL、6μg/mL、及び3μg/mLとなるよう希釈したもの、及びグルタチオンを含まないものをそれぞれ作製し、試料とした。
[定量]
(混合)
1.5mLチューブに、上述した第1の結合物のPBSバッファー分散液500μLをとり、0.5M EDTA溶液(pH8、ニッポンジーン社製)10μLを添加し、混合することで溶液を作製した。この溶液に上記の試料200μLを加え、4℃で6時間に亘り撹拌した。その後、チューブに、NHS−PEGを700μL(200μM)加え、4℃で12時間に亘り撹拌した。この撹拌物400μLにPBS800μLを加え、混合物を得た。
(相関式の作成)
この混合物を実施例1で用いたセル71内に分注し、実施例1と同様の条件で濁度を測定した。この結果を図6に示す。
図6に示されるように、測定開始約50秒後から既に、各試料の濁度の差異が大きかった。これにより、検体中の検出対象の検出及び定量を、極めて迅速に行うことができることが分かった。また、各試料の濁度の差異は測定開始約450秒後に最大値になることから、測定開始時から450秒後を測定時点として選択することが好ましいことが確認された。
上記の第1の結合物、第2の結合物及び試料を4℃の暗所内で保存し、1日1回ずつ3日間、同様の手順で濁度の測定を行った。この結果を表2に示す。なお、表2における数値は、測定開始時における各試料の濁度から、測定開始時から450秒後における各試料の濁度を差し引いた値(Δ0−450)の平均値を指す。
Figure 0005184554
表2に示されるように、3日間に亘るいずれの時点間でも、CV(変動係数)は3.3以下という低い値であった。よって、本実施例の系によれば高い再現性が得られることが確認された。ここで、CV(%)は、CV=標準偏差(STDEVA)/平均値×100の式に基づいて算出した。
また、グルタチオン0μg/mlの測定開始時における各試料の濁度から、測定開始時から450秒後における各試料の濁度を差し引いた値(GSH 0μg/ml、Δ0−450)の平均値、並びに各試料の測定開始時における濁度から、測定開始時から450秒後における各試料の濁度を差し引いた値(GSH 3μg/ml,6μg/ml,12μg/ml、Δ0−450)の平均値を差し引いた値と、グルタチオンの量との相関式を示すグラフを図7に示す。
図7に示されるように相関式は、y=0.0937x−0.0133(式中、xはグルタチオンの量、yは濁度である)と求められた。また、相関係数Rは0.97と極めて高く、この相関式を用いることで、グルタチオン量を高精度に定量できることが分かった。これにより、本実施例のように、第2の物質としてポリエチレングリコールのように、粒子表面に接近させることで立体反発を示し、生体成分への非特異的な吸着をしにくいポリオキシアルキレンを用いることで、検体中の検出対象量を極めて高精度に定量できることが分かった。また、ポリオールについても同様の作用が考えられる。
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。また、本発明では刺激応答性ポリマーを必須に用いるが、ポリマーに限られず、刺激応答性の低分子を用いてもよい。かかる低分子としては、例えば、特許第3693979号公報、特許第3916330号公報、特開2002−85957号公報、特許第4071738号公報、特許第2869684号公報、特許第2927601号公報、特許第3845249号公報、特開2006−242597号公報等に開示される低分子が挙げられる。

Claims (9)

  1. 検出対象を検出及び/又は定量するためのキットであって、
    刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、
    親水性の第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、を含み、
    第1の親和性物質と第2の親和性物質が、前記検出対象の異なる部位において、同時に前記検出対象に結合できるキット。
  2. 第1の物質が、微粒子状の磁性物質を含む請求項1に記載のキット。
  3. 第2の物質が、親水性のポリマーである請求項1又は2に記載のキット。
  4. 第2の物質が、ポリオールである請求項1〜3のいずれか1項に記載のキット。
  5. 第2の物質が、ポリオキシアルキレンを構成単位として含むポリマーである請求項1〜3のいずれか1項に記載のキット。
  6. 検体中の検出対象を検出する方法であって、
    刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、親水性の第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、前記検体とを混合し、この混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する条件下におき、前記刺激応答性ポリマーの分散の有無を判定する工程を含み、
    第1の親和性物質と第2の親和性物質が、前記検出対象の異なる部位において、同時に前記検出対象に結合できる方法。
  7. 第1の物質が微粒子状の磁性物質を含有し、
    前記方法は、磁力を付加することで、凝集した磁性物質を分離することを更に含む請求項6に記載の方法。
  8. 検体中の検出対象を定量する方法であって、
    刺激応答性ポリマーを含有する第1の物質と前記検出対象に対する第1の親和性物質とが結合した第1の結合物と、親水性の第2の物質と前記検出対象に対する第2の親和性物質とが結合した第2の結合物と、前記検体とを混合し、この混合物を刺激応答性ポリマーが凝集する所定条件下におき、
    前記混合物の濁度を測定し、前記検出対象の量と濁度との前記所定条件下における相関式に基づいて、前記検体中の検出対象の量を算出することを含む方法。
  9. 第1の物質が微粒子状の磁性物質を含有し、
    前記方法は、磁力を付加することで、凝集した磁性物質を分離することを更に含む請求項8に記載の方法。
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