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JP5382594B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、表面被覆切削工具に関する。
超硬合金等の基材を各種の被膜で被覆した表面被覆切削工具が、各種の材料を切削する切削工具として用いられている。このような切削工具を高速切削条件で使用すると、刃先温度が最高で約850℃以上になることが知られている。刃先が高温になれば、その熱は被膜を通って、基材まで伝達されることになるが、基材が高温に曝されると種々の悪影響が及ぼされるので、熱の伝達を防止することが望まれる。
昨今、切削加工による生産性を高めるため、従来よりも高速または高送りの切削条件が採用される傾向にあり、たとえば300〜600m/min以上の高速で切削可能な切削工具の開発に対する要求が各種の産業界、特に自動車メーカーやオートバイメーカーで高まっている。
そこで、上記のような切削条件下において基材を高温の適用から保護すべく、断熱性に優れる素材として知られるZrO2(酸化ジルコニウム)またはZrを酸化アルミニウムと併用した被膜を形成した各種の表面被覆切削工具が提案されている(特開2010−110833号公報(特許文献1)、特開2009−045729号公報(特許文献2)、特開平08−188879号公報(特許文献3))。
特開2010−110833号公報 特開2009−045729号公報 特開平08−188879号公報
特許文献1は、AlとZrとの原子比Zr/(Al+Zr)を0.002〜0.01の範囲で有する被膜を用いた表面被覆切削工具を開示している。しかしながら、この被膜は、上記のようにZrの含有量が低く、またZrがZrO2として独立して存在するのではなく、Alとの固溶体酸化物として存在する。特許文献1は、このようなZrの含有形態を採用する理由として、Zrを原子比で0.01以上含有するとZrO2が析出し強度が低下することを挙げているが、断熱性に優れるZrの含有量が制限されるため、十分な断熱性を得ることができないと考えられる。
特許文献2は、酸化ジルコニウムを含有した酸化アルミニウム層を含む被膜を形成した表面被覆切削工具を開示している。しかしながら、この酸化ジルコニウムを含有した酸化アルミニウム層は、α型酸化アルミニウムの単独層の直上に形成されており、酸化アルミニウムの結晶粒子が両層に連続して存在する形態を有している。このため、酸化ジルコニウムによる断熱性はある程度期待されるものの、切削加工時に被膜に亀裂が生じるとこの連続する酸化アルミニウムの結晶粒子に沿ってその亀裂が伝播し、その結果として断続切削性能が劣ることになる。
特許文献3は、ZrO2を含有するAl23被膜を形成した表面被覆切削工具を開示しており、このZrO2は正方晶から単斜晶に変態された結晶構造を有するため、強度および耐欠損性に優れるとされている。この被膜により、ある程度の断熱性は期待されるものの、昨今の切削条件によっては更なる断熱性の向上が望まれる。
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、被膜の断熱効果と切削性能とを両立させた表面被覆切削工具を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねたところ、Al23とZrO2とを併用し、その場合におけるZrO2の混合割合と結晶構造とを制御することが課題解決に最も有効であるとの知見を得、この知見に基づきさらに検討を重ねることにより本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被膜とを含み、該被膜は、酸化アルミニウム層と酸化物混合層とを含み、該酸化アルミニウム層は、酸化物としてAl23を含み、該酸化物混合層は、酸化物としてAl23とZrO2とを、AlとZrとの原子比が0.01≦Zr/(Al+Zr)≦0.5となる範囲で含み、該ZrO2は、その結晶構造として少なくとも立方晶が存在する状態で含まれることを特徴とする。
ここで、該ZrO2は、平均粒径1μm以下の結晶粒として含まれることが好ましく、該酸化アルミニウム層は、該酸化物混合層の直下に配置されることが好ましい。
また、該酸化アルミニウム層と該酸化物混合層とは、これら両層にまたがって存在するAl23の結晶粒を含まないことが好ましく、該被膜は、2500〜10000Js-1/2-2-1の熱浸透率を有することが好ましい。
本発明の表面被覆切削工具は、被膜の断熱効果に優れ切削加工時に基材を有効に保護するとともに、切削性能にも優れるという極めて優れた効果を有する。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被膜とを備えるものである。このような構成を有する本発明の表面被覆切削工具は、例えばドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切り工具、リーマ、タップ、またはクランクシャフトのピンミーリング加工用チップなどとして極めて有効に用いることができる。
<基材>
本発明の表面被覆切削工具の基材としては、このような切削工具の基材として知られる従来公知のものを特に限定無く使用することができる。例えば、超硬合金(例えばWC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはさらにTi、Ta、Nb等の炭窒化物等を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化硅素、窒化硅素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、およびこれらの混合体など)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体等をこのような基材の例として挙げることができる。
このような基材として超硬合金を使用する場合、そのような超硬合金は組織中に遊離炭素やη相と呼ばれる異常相を含んでいても本発明の効果は示される。なお、これらの基材は、その表面が改質されたものであっても差し支えない。たとえば、超硬合金の場合はその表面に脱β層が形成されていたり、サーメットの場合には表面硬化層が形成されていたりしてもよく、このように表面が改質されていても本発明の効果は示される。
<被膜>
本発明の表面被覆切削工具の上記基材上に形成される被膜は、断熱性を有することにより基材を高温から保護する作用を有するとともに、耐摩耗性や耐欠損性等の切削性能を向上する作用を示す。このような本発明の被膜は、少なくとも酸化アルミニウム層と酸化物混合層とを含む。
本発明における被膜は、このように酸化アルミニウム層と酸化物混合層とを含む限り、さらに他の層を含んでいても差し支えない。なお、本発明における被膜は、基材上の全面を被覆するものであっても良いし、基材を部分的に被覆するものであっても良い。
なお、膜厚の測定方法としては、表面被覆切削工具を切断し、その断面をSEM(走査型電子顕微鏡)または金属顕微鏡にて観察することにより測定することができる。また、被膜の組成および結晶構造の同定は、電界放出型走査電子顕微鏡付属のエネルギー分散型X線分析装置により組成を特定することができ、X線回折装置を用いて結晶構造を特定することができる。
以下、本発明の被膜に含まれる各層について説明する。
<酸化物混合層>
本発明の酸化物混合層は、酸化物としてAl23とZrO2とを、AlとZrとの原子比が0.01≦Zr/(Al+Zr)≦0.5となる範囲で含み、該ZrO2は、その結晶構造として少なくとも立方晶が存在する状態で含まれることを特徴とする。すなわち、本発明の酸化物混合層は、上記のような条件でAl23とZrO2とを含む層であり、本発明の被膜はこのような酸化物混合層を1以上含むものである。
一般に、切削加工時に発生する熱が切削工具の基材に蓄積されるような過酷な切削条件では、基材をその熱から保護することが求められる。その熱により基材が変形または変質すると、切削性能に悪影響を及ぼすからである。ZrO2(酸化ジルコニウム、ジルコニア)は、熱伝導率がAl23(酸化アルミニウム、アルミナ)より低く、断熱性に優れることが知られる。そこで、被膜の構成要素として、このZrO2を用いることが考えられるが、ZrO2はAl23に比し硬度が低く単独で被膜を構成することは困難であった。このため、従来Al23と併用されていたが、ZrO2の配合比がAlとZrとの原子比で0.01以上になるとZrO2が析出し強度が低下すると考えられていた。
しかし、本発明者の研究によりこの従来の知見を覆す全く新たな知見が得られた。すなわち、Al23とZrO2とを、AlとZrとの原子比が0.01≦Zr/(Al+Zr)≦0.5となる範囲で含み、かつZrO2の結晶構造を少なくとも立方晶が存在する状態とすることにより、ZrO2によって優れた断熱効果が供与されるとともに、耐摩耗性等の切削性能も向上することが判明したのである。
ここで、上記AlとZrとの原子比は、より好ましくは0.01≦Zr/(Al+Zr)≦0.2である。この原子比が0.01未満になると、十分な断熱効果が示されなくなり、0.5を超えると切削性能が低下する。
また、AlとZrとの原子比が上記範囲を満たすだけでは十分ではなく、ZrO2が上記の結晶構造を有することが必須となる。これは、恐らく被膜中に、立方晶が含まれているので、加工時に刃先温度が上昇しても結晶構造が変化せずに安定しているためではないかと推測される。したがって、単斜晶等の他の結晶構造が単独で構成されることは好ましくなく、立方晶が存在することが重要となる。
また、このようなZrO2は、平均粒径1μm以下の結晶粒として含まれることが好ましい。これにより、断熱性の向上効果が高まるからである。なお、ここでいう平均粒径とは、表面被覆切削工具を切断した切断面においてこの酸化物混合層を電界放出型走査電子顕微鏡により観察し、Al23リッチとなっている結晶体の5μm×5μm(層の厚みが5μm未満の場合は層全体)の範囲で、結晶体中に点在するZrO2の結晶粒のそれぞれについて長径(最大となる粒子径)を測定する。この測定を任意の5箇所で行ない、その平均値をZrO2の平均粒径とする。
このような本発明の酸化物混合層の厚みは、特に限定されないが1μm以上30μm以下とすることが好ましく、より好ましくはその上限が25μm以下、さらに好ましくは20μm以下、その下限が1.5μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。その厚みが1μm未満の場合、断熱効果が十分に示されない場合があり、30μmを超えても、より大きな断熱性の改善効果は認められない傾向にあり、また、刃先強度が低下する場合があるため工業的に不利となる。
なお、この酸化物混合層に含まれるAl23については、結晶粒の大きさや結晶構造は特に限定されない。
<酸化アルミニウム層>
本発明の酸化アルミニウム層は、酸化物としてAl23を含む。すなわち、本発明の酸化アルミニウム層は、典型的にはAl23からなる層であり、本発明の被膜はこのような酸化アルミニウム層を1以上含むものである。
本発明の酸化物混合層は、上記の通り、優れた断熱性を有する層であるが、基材上に直接形成すると密着強度が不十分となる傾向を示す。そこで、この酸化アルミニウム層を形成することにより、基材との密着強度を向上させたものである。したがって、この酸化アルミニウム層は、特に酸化物混合層の直下に配置されることが好ましい。また、このような酸化アルミニウム層を2以上用い、また上記酸化物混合層も2以上用い、これら両者を上下交互に積層した態様とすることもできる。
このような酸化アルミニウム層は、このような表面被覆切削工具の被膜を構成する従来公知の構成のものを特に限定することなく採用することができる。したがって、この酸化アルミニウム層に含まれるAl23については、結晶粒の大きさや結晶構造は特に限定されない。ただし、この酸化アルミニウム層と上記酸化物混合層とは、これら両層にまたがって存在するAl23の結晶粒を含まないことが好ましい。なぜなら、これら両層にまたがってAl23の結晶粒が存在すると、被膜に亀裂が生じた場合、その亀裂がこの結晶粒に沿って伝播し、被膜全体を破壊する可能性があるからである。
このような本発明の酸化物アルミニウム層の厚みは、特に限定されないが1μm以上15μm以下とすることが好ましく、より好ましくはその上限が12μm以下、さらに好ましくは10μm以下、その下限が1μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上である。その厚みが1μm未満の場合、酸化物混合層の密着強度を向上させる効果が十分に示されない場合があり、15μmを超えても、より大きな密着強度の改善効果は認められない傾向にあり、また、刃先強度が低下する場合があるため工業的に不利となる。
<その他の層>
本発明における被膜は、上記のような酸化物混合層や酸化アルミニウム層以外の他の層をさらに1以上含むことができる。そのような他の層の形成位置は特に限定されない。このような他の層を形成することにより、たとえば、被膜と基材との密着力をさらに向上させたり、種々の切削性能を向上させたり、潤滑性を付与したり、被削材との凝着を抑制したり、使用刃先の識別力を付与させたりすることができるという効果を付与することができる。
このような他の層を構成する化合物や金属としては、例えば元素周期律表のIVa族元素(Ti、Zr、Hf等)、Va族元素(V、Nb、Ta等)、VIa族元素(Cr、Mo、W等)、Al、Si、Cu、Pt、Au、Ag、Pd、Fe、CoおよびNiからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属(元素)またはその金属を含む合金、または元素周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、AlおよびSiからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素およびホウ素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素とにより構成される化合物等を挙げることができる。より具体的には、AlN、AlCN、AlTiN、TiN、TiCN、TiC、TiCO、TiBN、TiCBN、VN、ZrC、ZrN、ZrCN、CrN、TiAlN、SiAlON、SiC、HfN、HfC、HfCN等を挙げることができる。なお、このような他の層は、0.01μm以上20μm以下、好ましくは0.1μm以上10μm以下の厚みとすることが好ましい。
<熱浸透率>
本発明の上記のような構成を有する被膜は、2500〜10000Js-1/2-2-1の熱浸透率を有することが好ましい。熱浸透率は、断熱効果の指標となるものであり、その数値が0に近づくほど断熱性に優れることを示す。本発明においては、上記被膜の構成、特に酸化物混合層を含むことにより、被膜の熱浸透率を上記範囲とすることができ、これにより十分な断熱性効果が発揮される。
なお、上記熱浸透率が2500Js-1/2-2-1未満になると、優れた断熱性が示されるものの、切削性能が低下する傾向を示す。一方、10000Js-1/2-2-1を超えると、十分な断熱効果が示されない。このような熱浸透率は、熱物性顕微鏡装置を用いて測定することができる。
<製造方法>
本発明の表面被覆切削工具は、基材上に被膜を化学蒸着法(CVD法)で成膜することにより作製することができる。
被膜のうち、酸化物混合層を除く、酸化アルミニウム層や他の層は、従来公知のCVD法により形成することができ、特に限定されない。
たとえば、上記他の層は、各化合物を構成する原料ガスと、水素ガス等のキャリアガスとを用いて、700〜1300℃、70kPa以下の圧力で形成することができる。また酸化アルミニウム層も、例えば、原料ガスとしてAlCl3、CO2、H2S、HCl、H2などのガスを用いて、700〜1500℃、50kPa以下の圧力で形成することができる。
これに対して、酸化物混合層は下記のようにして形成することが好ましい。
すなわち、まず、反応ガス組成としては、2〜10体積%のAlCl3、2〜6体積%のZrCl4、1〜2体積%のCO2、0.01〜0.02体積%のC24、5〜10体積%のHCl、0.09〜0.5体積%のH2S、7〜20体積%のAr、および残部をH2とする。この組成は、従来知られている組成に比し、ZrCl4の濃度が高い点に特徴がある。
また、反応雰囲気温度は850〜1300℃とし、反応雰囲気圧力は2〜30kPaとし、以上の条件で酸化物混合層を蒸着形成する。この温度および圧力は、従来の条件よりも広範囲に選択できる。
そして、より具体的には、上記反応ガスにおいてAlCl3を先に導入した後にArをパルス状で流しつつ、ZrCl4を導入することによって、化学蒸着装置内の反応ガスの流れがパルス流制御され、これにより上記のような酸化物混合層の組織(すなわちAlとZrとを上記の原子比で含み、ZrO2が特定の結晶構造を有するとともに、平均粒径1μm以下の結晶粒として含まれるような組織)を制御することができる。
このようにして、本発明の被膜は、通常の化学蒸着装置にて、化学蒸着法により基材上に形成される。
なお、酸化アルミニウム層を酸化物混合層の直下に配置する構成とする場合は、上記化学蒸着装置において、酸化アルミニウム層を形成した後に、一旦Arガスを流し、酸化アルミニウム層表面をArガスにより活性化することが好ましい。これにより、Arガスで表面が活性化された酸化アルミニウム層の表面に酸化物混合層が形成され、両層の密着性が向上するとともに、両層にまたがってAl23の結晶粒が存在すること(すなわちAl23の結晶粒が両層にまたがって連続して成長すること)を防止することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<基材の調製>
1質量%のTiC粉末、3質量%のNbC粉末、1質量%のTaC粉末、1質量%のTaNbC粉末、5質量%のCo粉末、および残部WC粉末からなる原料粉末を用意し、この原料粉末をアセトン中で27時間ボールミルにより混合した。
次いで、この混合粉末を低圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス形成した。続いて、この圧粉体を6Paの真空中、1300〜1500℃の所定温度で真空焼結した。
その後、得られた焼結体の刃先部にアール(R)が0.060mmとなるようにホーニング加工を施すことによって、ISO CNMG120408に規定するスローアウェイチップ形状をもったWC超硬合金製の基材を得た。
<被膜の形成>
以下の表1に記載した構成の被膜(被膜No.1〜被膜No.12)および表2に記載した構成の被膜(被膜No.13〜被膜No.18)をそれぞれ、上記で得られた基材の表面に化学蒸着法により形成することにより、表面被覆切削工具(刃先交換型切削チップ)を作製した。
表1に記載した被膜は、本発明の実施例であり、表2に記載した被膜は比較例である。表2中、Zr含有層とは、本発明の酸化物混合層の比較対照となる層である。
なお、表1および表2の被膜構成は、左のものから順に基材上に積層したことを示し、括弧内の数字は厚み(μm)を示す。また、表1および表2中、酸化アルミニウム層および酸化物混合層(Zr含有層)以外の化合物は、上記で述べたその他の層に相当する。
Figure 0005382594
Figure 0005382594
各被膜の化学蒸着法による具体的な形成条件は次の通りである。すなわち、基材を通常の化学蒸着装置に装入し、表3〜表5に記載した条件に従って、各被膜の各層を順に形成した。
たとえば、表1の被膜No.1を例に取ると、基材上に、まず厚み1μmのTiN層を表3の反応ガス組成(4体積%のTiCl4、35体積%のN2、および残部H2)、反応圧力(20kPa)、反応温度(840℃)で形成した後、同じく表3に記載の条件で厚み5μmのTiC層および厚み3μmのAlTiN層を形成した。次いで、厚み2μmの「酸化アルミニウム層1」を表4に記載の条件で形成した(表1および2における「酸化アルミニウム層1」、「酸化アルミニウム層2」、「酸化アルミニウム層3」は、いずれも酸化アルミニウム層であるが、表4のように形成条件が異なることを示す)。
引続き、上記で形成した「酸化アルミニウム層1」上に厚み20μmの「酸化物混合層1」を形成した。この場合、「酸化アルミニウム層1」の形成後、Arガスを流量30L/分で10分間流し、炉内雰囲気をArに変え、形成された酸化アルミニウム層の表面をArで活性化した。このように本発明の被膜は、被膜No.2〜No.12においても同様に、酸化アルミニウム層の表面をこの条件でArで活性化した後に、酸化物混合層を形成することを特徴としている。
その後、このArで活性化された「酸化アルミニウム層1」の表面に表5の反応ガス組成、反応時間(320分)、反応圧力(5kPa)、反応温度(870℃)で「酸化物混合層1」を形成した。この場合、まず反応ガスとしてAlCl3、H2、HCl、CO2、C24、H2Sを炉内へ350秒間導入する。その後、Arをパルス状に流しながら、ZrCl4を炉内へ導入する。Arのパルスの間隔は2秒ごとである。なお、表5に記載の反応ガス組成はZrCl4を炉内へ導入した後の組成(体積%)を示している。なお、このような酸化物混合層は、酸化物混合層2〜8においても同様に、Arをパルス状に流しながらZrCl4を炉内へ導入する方法で形成されることを特徴としている。このように表1における「酸化物混合層1」〜「酸化物混合層8」は、いずれも酸化物混合層であるが、表5のように形成条件が異なることを示している。
その後、上記で形成された「酸化物混合層1」の上に、厚み1μmのTiN層および厚み1μmのTiC層を表3の条件で形成することにより、基材上に総厚み33μmの被膜No.1の被膜が形成される。
一方、表2に記載される被膜は、Zr含有層を除き、表1に記載される被膜と同様にして形成した。Zr含有層は、表6に記載の条件に従って形成した。表6中、「開始時」と「終了時」の表示があるものは、Zr含有層を形成するに際し、反応ガス組成と反応温度とを表示されている通り開始時から終了時にかけて徐々に変更したことを示す。また、反応ガス組成からも明らかなように、「Zr含有層1」〜「Zr含有層5」はAl23とZrO2との両者を含むが、「Zr含有層6」はZrO2単独の層である。なお、酸化アルミニウム層上にZr含有層を形成する場合、酸化アルミニウム層の表面に対してArによる活性化は行なわなかった。
Figure 0005382594
Figure 0005382594
Figure 0005382594
Figure 0005382594
<評価>
<酸化物混合層の物性>
上記で作製した酸化物混合層およびZr含有層の物性を測定した。
まず、各層が酸化物としてAl23とZrO2とを含み、AlとZrとの原子比Zr/(Al+Zr)がどのようになっているかを確認した。具体的には電界放出型走査電子顕微鏡(商品名「SU6600」、日立ハイテク(株)製、以下、「FE−SEM」と記す)付属のエネルギー分散型X線分析装置(商品名:「INCA X−ACT」、オックスフォード・インストゥルメンツ(株)製、以下「EDX」と記す)を用いて、各層の幅(50μm)×各層の厚み(全厚み)の領域を、15kVで測定することにより、Al23とZrO2とを含むこと、およびAlとZrとの原子比Zr/(Al+Zr)を求めた。その結果、各層は、Al23とZrO2とを含み、AlとZrとの原子比Zr/(Al+Zr)は以下の表7の通りであった。
次に、各層に含まれるZrO2の結晶構造を確認した。具体的には、各層をX線回折装置(商品名:「X’Pert」、PANalytical(株)製)により測定することによって結晶構造を特定した。測定条件は、薄膜法を用いて、θ〜2θのX線入射角度を0.5°とした。ピーク位置は、JCPDSカード(JCPDSとは、Joint Committee on Powder Diffraction Standardsを示し、特定の物質の結晶面間隔を示す)により±0.3度の範囲内で特定した。なお、正方晶、立方晶、単斜晶のカード番号は、00−050−1089、00−051−1149、00−37−1481である。その結果は、以下の表7に示すとおり、酸化物混合層のZrO2の結晶構造は立方晶が存在したが、Zr含有層のZrO2の結晶構造は全て単斜晶であった。
さらに、各層に含まれるZrO2の結晶粒の平均粒径を確認した。具体的には、上記のFE−SEMを用いて上記で定義した方法により平均粒径を求めた。FE−SEMの倍率は10000倍、加速電圧は5kVとした。その結果を以下の表7に示す。表7からも明らかなように、酸化物混合層においては、ZrO2が平均粒径1μm以下の結晶粒としてAl23中に分散していることが確認できた。
Figure 0005382594
なお、表7中、酸化物混合層1は表1の被膜No.1のものを、酸化物混合層2は同被膜No.2のものを、酸化物混合層3は同被膜No.5のものを、酸化物混合層4は同被膜No.8のものを、酸化物混合層5は同被膜No.3のものを、酸化物混合層6は同被膜No.10のものを、酸化物混合層7は同被膜No.11のものを、酸化物混合層8は同被膜No.12のものを、それぞれ測定した。一方、Zr含有層1〜6は表2中の被膜No.13〜18のものをそれぞれ測定した。
表7より明らかなように、本発明の実施例である酸化物混合層1〜8は、Zr含有層1〜5に比し、ZrO2の結晶粒の平均粒径が小さく、またその結晶構造も立方晶が含まれていたことから、上記のような本発明に特有の成膜方法で形成したことによりこれらの性状が具備されたことを示している。
<熱浸透率>
表1記載の被膜No.1〜No.12および表2記載の被膜No.13〜No.18の各被膜の熱浸透率を、熱物性顕微鏡装置(商品名:「サーマルマイクロスコープ TM3」、BETHEL(株)製)を用いて測定した。なお、測定は室温で、加熱用レーザの周波数を2000kHzとして行なった。その結果を以下の表8に示す。
<切削性能>
表1記載の被膜No.1〜No.12および表2記載の被膜No.13〜No.18の各被膜を形成した表面被覆切削工具それぞれについて切削性能を確認した。切削性能を確認するための試験条件は以下の通りであり、丸棒の被削材による連続切削を行なった。そして、刃先が切削熱からの塑性変形もしくは欠損するまでの時間、あるいは逃げ面最大摩耗幅Vbmaxが0.5mm以上になるまでの時間を測定し、その時間を工具寿命として判定した。なお、刃先は倍率100倍の光学顕微鏡で観察した。その結果を以下の表8に示す。上記工具寿命が長いものほど、切削性能に優れていることを示す。
(試験条件)
被削材:S55C(丸棒)
加工方法:旋削加工
切削速度:400m/min
送り:0.5mm/rev
切り込み:1.5mm
切削液:無し(ドライ加工)
Figure 0005382594
表8より明らかなように、本発明の実施例である被膜No.1〜No.12を形成した表面被覆切削工具は、比較例である被膜No.13〜No.18を形成した表面被覆切削工具に比し、工具寿命が2倍以上長く、優れた切削性能を示すことは明らかである。表1より明らかなように被膜No.1〜No.12は、いずれも本発明の酸化物混合層を備えており、表8より被膜の熱浸透率が低くなっていることから、これらの被膜が優れた断熱性を示したことにより、切削性能が向上したことは明らかである。
また、本発明の実施例である被膜No.1〜No.12がこのように優れた断熱効果を示すのは、表7に示されるように各酸化物混合層が本発明で規定する性状を有するためであることは明らかである。
なお、本発明の実施例である被膜No.1〜No.12では、酸化物混合層の直下に酸化アルミニウム層が配置されているため、被膜の密着性が高く、被膜のチッピングなどは見られなく、正常摩耗であった。Zr含有層としてZrO2単独で構成した比較例の被膜No.18を形成した表面被覆切削工具は、熱浸透率が低く断熱性に優れるものの、被膜硬度の低下により、クレーターが非常に早い段階で掘れ、工具寿命は極めて短いものとなった。
このように、本発明の表面被覆切削工具が、被膜の断熱効果に優れ切削加工時に基材を有効に保護するとともに、切削性能にも優れるという極めて優れた効果を示すことが確認できた。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (5)

  1. 基材と該基材上に形成された被膜とを含み、
    前記被膜は、酸化アルミニウム層と酸化物混合層とを含み、
    前記酸化アルミニウム層は、酸化物としてAl23を含み、
    前記酸化物混合層は、酸化物としてAl23とZrO2とを、AlとZrとの原子比が0.01≦Zr/(Al+Zr)≦0.5となる範囲で含み、
    前記ZrO2は、その結晶構造として少なくとも立方晶が存在する状態で含まれる、表面被覆切削工具。
  2. 前記ZrO2は、平均粒径1μm以下の結晶粒として含まれる、請求項1記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記酸化アルミニウム層は、前記酸化物混合層の直下に配置される、請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記酸化アルミニウム層と前記酸化物混合層とは、これら両層にまたがって存在するAl23の結晶粒を含まない、請求項1〜3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記被膜は、2500〜10000Js-1/2-2-1の熱浸透率を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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