JP2006334720A - 被覆工具部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】
α-アルミナを主成分とする酸化物層とチタン化合物層との間に、結晶整合性に優れた中間層を導入することによって、層間の剥離を防止して寿命を向上させた被覆工具部材を提供する。
【解決手段】
α-アルミナを主成分とする酸化物層とチタン化合物層との間に5〜50重量%の酸化クロムと、残りが周期律表4a,5a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種との混合物および/または相互固溶体からなる中間層を挿入する。代表的な中間層は、Al2O3-Cr2O3固溶体、Cr2O3とZrNの混合物である。
【選択図】なし
α-アルミナを主成分とする酸化物層とチタン化合物層との間に、結晶整合性に優れた中間層を導入することによって、層間の剥離を防止して寿命を向上させた被覆工具部材を提供する。
【解決手段】
α-アルミナを主成分とする酸化物層とチタン化合物層との間に5〜50重量%の酸化クロムと、残りが周期律表4a,5a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種との混合物および/または相互固溶体からなる中間層を挿入する。代表的な中間層は、Al2O3-Cr2O3固溶体、Cr2O3とZrNの混合物である。
【選択図】なし
Description
本発明は、刃先交換型チップに代表される切削工具に使用する被覆工具部材に関し、具体的には、チタン化合物層と酸化物層との間に両層との密着性に優れた中間層を挿入することによって、鋼の高速高送り切削や高切込み断続切削などの過酷な切削条件でも各層の層間で剥離することなく、長寿命を達成できる被覆工具部材に関する。
従来、一般のコーティング超硬工具では、機械的な摩耗に対して優れた性能を示すチタンの炭化物,窒化物,炭窒化物と熱的な摩耗に対して優れた性能を示すアルミナとが積層被覆されている。しかし、近年の切削加工における高速高送り化に伴って、従来工具ではアルミナ層の剥離による寿命低下が著しいのが現状である。そこで、層間の密着性を改善するために、種々の新規化合物を中間層として挿入したアルミナ被覆工具が提案されている。
アルミナ被覆工具の従来技術として、Al,Ti,OおよびCの元素を含む中間層を有する酸化アルミニウム被覆工具部材がある(例えば、特許文献1参照。)。この中間層は、チタン化合物と酸化アルミニウムの混合成分を用いて層間の密着性を改善したものではあるが、チタンとアルミニウムの複合酸化物が脆弱なために、近年の過酷な使用条件で用いると層間で剥離が生じ、工具寿命が低下するようになってきた。
また、Ti2O3を主体とする中間層を有する表面被覆超硬合金製切削工具がある(例えば、特許文献2参照。)。この中間層は、α-アルミナと同一結晶構造を有するために酸化アルミニウム層との整合性は高いものの、Ti2O3自体が脆弱なために層間の密着性の改善が不十分であると言う問題がある。
さらに、Ti,Zr及びHfのうちの1又は複数の炭化物,炭窒化物又はカルボキシ窒化物からなる層をアルミナ層に隣接して被覆した超硬合金体がある(例えば、特許文献3参照。)。Ti,Zr及びHfのうちの1又は複数の炭化物,炭窒化物又はカルボキシ窒化物からなる層は、耐摩耗性やアルミナ層との密着性を改善するものの、アルミナ層との結晶整合性が低く、また炭素を含有して脆弱なために層間の密着性の改善が不十分であると言う問題がある。
本発明は、上記のような問題点を解決したもので、α-アルミナを主成分とする酸化物層とチタン化合物層との間に、結晶整合性に優れた中間層を導入することによって、層間の剥離を防止して寿命を向上させた被覆工具部材の提供を目的とする。
本発明者は、長年に亘り、酸化アルミニウム層との層間の密着性の改善について検討していたところ、六方晶のα-アルミナと立方晶B1型のチタン化合物とは、結晶構造と共に格子定数が大きく異なるために、それぞれの結晶面の組合せでも整合する面が少ないこと、整合する面の組合せ数を増加させ、かつ界面での結晶面同士のミスフィットを小さくするには、酸化クロムを含有した中間層を導入すれば良いこと、すなわち、α-アルミナと同一結晶構造で全率固溶する三二酸化クロムは、α-アルミナ層と完全整合すると共に、格子定数を変化させてチタン化合物層との整合面を増加させると言う知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。
ここで、α-アルミナ結晶と三二酸化クロム(Cr2O3)における所定面の面間距離を基準に、これに対応したB1型化合物の主要面での面間距離を算出した。例えば、α-アルミナおよび三二酸化クロムの(001)面の面間距離は1.299nmおよび1.367nmで、この面と整合するB1型化合物の面間距離は(100)面で0.433nmおよび0.456nm、(110)面で0.459nmおよび0.456nmとなる。この様な計算をα-アルミナと三二酸化クロム結晶の主要面について行った結果、α-アルミナに三二酸化クロムを固溶させるとB1型化合物と整合する面の組合せ数が増加し、かつB1型チタン化合物(例えば、TiCN)との面間距離の差(ミスフィット)が少なくなる。酸化クロムを中間層に用いれば、α-アルミナ層とB1型チタン化合物層の結晶方位に関係なく、層間の密着性を向上できる。
すなわち、本発明の被覆工具部材は、基材の表面に、α-アルミナを主成分とする酸化物層と、チタンの炭化物,窒化物,炭窒化物,炭酸化物,窒酸化物,炭窒酸化物の中から選ばれた少なくとも1種のチタン化合物層と、酸化物層とチタン化合物層との間に設けた中間層とを被覆した工具部材において、中間層は、5〜50重量%の酸化クロムと、残りが周期律表4a,5a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種とからなるものである。
本発明の被覆工具部材は、α-アルミナを主成分とする酸化物層とチタン化合物層と中間層とを有する被覆層を被覆してなるもので、被覆層は、他の化合物層を含んでも良い。また、各層の平均厚みは0.1〜10μmであり、各層の合計、すなわち、被覆層の平均厚みは1〜30μmの範囲のものである。
本発明の被覆工具部材におけるα-アルミナを主成分とする酸化物層は、コランダム構造のα−Al2O3を主成分とし、α−Al2O3、または、α−Al2O3に20重量%以下のCr2O3,Ti2O3,V2O5,Fe2O3,Co2O3など他のコランダム構造を有する酸化物を固溶させたものである。これらの酸化物の固溶によって、耐溶着性や密着性が改善される。
本発明の被覆工具部材におけるチタン化合物層は、チタンの炭化物,窒化物,炭窒化物,炭酸化物,窒酸化物,炭窒酸化物の中から選ばれた少なくとも1種からなり、具体的には、TiC,TiN,Ti(C,N),Ti(C,O),Ti(N,O),Ti(C,N,O)を挙げることができる。これらの積層や傾斜組成層であっても良い。
本発明の被覆工具部材における中間層は、5〜50重量%の酸化クロムと、残りが周期律表の4a,5a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種との混合物および/または相互固溶体からなるものである。具体的には、Al2O3-Cr2O3固溶体、Al2O3-Cr2O3固溶体またはCr2O3と、TiN,TiC,Ti(C,N),ZrN,HfN,NbC,TaN,(Zr,Nb)(C,N),Zr(N,O),Zr(C,N,O),ZrO2,Si3N4などとの混合物を挙げることができる。これらの中でもAl2O3-Cr2O3固溶体は、α-アルミナを主成分とする酸化物層と完全に整合して密着性に優れるので好ましい。また、Cr2O3と、ZrN,HfN,Zr(N,O),Hf(N,O)との混合物は、チタン化合物層との密着性も良好なので好ましい。さらに、中間層は、Al2O3-Cr2O3固溶体の層と、Cr2O3と周期律表の4a,5a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種との混合物の層との積層であっても良い。さらに、Al2O3-Cr2O3固溶体の層中および混合物の層中のCr2O3成分が傾斜組成化していても良い。
本発明の被覆工具部材における中間層中の酸化クロムの含有量は、5重量%未満ではチタン化合物層あるいは中間層中のB1型化合物と整合する面の組合せ数が殆ど増加しないために層間の密着性の改善効果が少なく、逆に50重量%を超えて大きくなるとα-アルミナ層およびチタン化合物層とのミスフィットが大きくなると共に、中間層自体が脆弱となるために層間の密着性が低下するので、5〜50重量%と定めた。尚、中間層の平均厚みは、0.01〜1μmが好ましい。
本発明の被覆工具部材は、α-アルミナを主成分とする酸化物層とチタン化合物層との間に挿入された中間層が層間の密着性を高める作用をし、中間層に含有させた酸化クロムがα-アルミナ結晶とチタン化合物結晶の両方に対して結晶整合性を高める(ミスフィットの縮小と整合面の増大)作用をし、結果として層間の密着性が改善されて長寿命とする作用をしているものである。
本発明の被覆工具部材の基材としては、従来から市販されているステンレス鋼,耐熱合金,高速度鋼,ダイス鋼に代表される金属部材、超硬合金,サ−メット,粉末ハイスに代表される焼結合金、Al2O3系焼結体,Si3N4系焼結体,サイアロン系焼結体,ZrO2系焼結体に代表されるセラミックス焼結体を使用することができる。これらの基材のうち、好ましい基材は、コバルトおよび/またはニッケルを主成分とする結合相を3〜20重量%と、炭化タングステンまたは炭化タングステンと周期律表4a(Ti,Zr,Hf),5a(Ta,Nb,V),6a(W,Mo,Cr)族元素の炭化物、炭窒化物、炭酸化物、およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種でなる立方晶化合物とからなる硬質相を80〜97重量%とを含有する超硬合金である。この基材の表面を、必要に応じて研磨し、超音波洗浄、有機溶剤洗浄などを行った後に、従来から行われているPVD法,CVD法またはプラズマCVD法により基材上に被覆層を被覆して、本発明の被覆工具部材を作製することができる。
本発明の被覆工具部材は、従来のチタン系化合物を主体にした中間層を有する被覆工具部材に比べて、鋼および鋳物の高速切削において約2倍の工具寿命を達成できるという効果を有する。
84WC−4TiC−6TaC−6Co(重量%)の組成からなるISO規格でSNGN120408(ホーニングはR=0.10mm)の超硬チップを基材として用い、アセトン中で超音波洗浄した後、CVDコーティング装置に挿入し、20kPaのアルゴン雰囲気中で加熱・昇温した。そして、所定温度に達してから各種の反応性ガスに順次切り替えることによって、基材表面から順に平均厚み0.7μmのTiN、平均厚み8.0μmのTiCN、平均厚み0.3〜0.8μmの中間層、平均厚み2.0μmのα-アルミナ、平均厚み0.3μmのTiNを積層被覆して本発明品1〜7と比較品1〜5の被覆超硬チップを得た。表1に各層のCVD処理条件を、また表2には中間層のCVD条件を示す。ここで、反応性ガスはH2をキャリアーガスとし、被覆層中の非金属成分の供給源にはCH4,N2,CH3CN,CO,CO2を使用した。一方、金属成分のTiにはTiCl4、CrにはCrO2Cl2を加熱気化させ、AlとZrは400℃に加熱した反応容器中の金属塊にHClガスを導いてAlCl3,ZrCl4ガスを発生させた。
次に、実施例1で得られる中間層の組成・成分を確認するために、第3被覆(中間層)処理まで施した分析用被覆超硬チップを用意した。これら分析用チップの表面を薄膜X線回折で同定した組成と分析電顕を用いて測定した中間層の成分を表3に示す。また、実施例1で得られた被覆超硬チップの断面観察により測定した中間層の平均厚みを表3に併記した。
実施例1で得られた本発明品1,3,5,6と比較品1,2,4のCVD被覆超硬工具を用い、被削材:S45Cの4本溝入り,切削速度:250m/min,切込み:2.0mm,送り:0.3mm/revの条件で乾式での外周断続旋削試験を行った。切刃の平均逃げ面摩耗幅が0.30mmとなるまでの寿命時間と損傷理由を表4に示す。
次に、実施例1で得られた本発明品2,4,7と比較品3,5のCVD被覆超硬工具を用い、被削材:FCD400の円盤(盤面に十字の溝入り),切削速度:150〜50m/min,切込み:2.0mm,送り:0.25mm/revの条件で湿式での盤面断続旋削試験を行った。切刃の平均逃げ面摩耗幅が0.2mmとなるまでの寿命時間と損傷理由を表5に示す。
Claims (3)
- 基材の表面に、α-アルミナを主成分とする酸化物層と、チタンの炭化物,窒化物,炭窒化物,炭酸化物,窒酸化物,炭窒酸化物の中から選ばれた少なくとも1種のチタン化合物層と、酸化物層とチタン化合物層との間に設けられた中間層とを被覆した被覆工具部材において、中間層は、5〜50重量%の酸化クロムと、残りが周期律表4a,5a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種との混合物および/または相互固溶体からなる被覆工具部材。
- 中間層は、5〜50重量%の酸化クロムと、残りが酸化アルミニウムとの相互固溶体からなる請求項1に記載の被覆工具部材。
- 中間層は、5〜50重量%の酸化クロムと、残りがジルコニウム,ハフニウム,ニオブの窒化物,酸窒化物およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種との混合物からなる請求項1または2に記載の被覆工具部材。
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JP2005162467A JP2006334720A (ja) | 2005-06-02 | 2005-06-02 | 被覆工具部材 |
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Cited By (3)
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JP2008264961A (ja) * | 2007-04-23 | 2008-11-06 | Mitsubishi Materials Corp | 表面被覆切削工具 |
JP2009072838A (ja) * | 2007-09-19 | 2009-04-09 | Tokyo Institute Of Technology | 高速ミーリング加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具およびその製造方法 |
JP2010149235A (ja) * | 2008-12-25 | 2010-07-08 | Mitsubishi Materials Corp | 表面被覆切削工具 |
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2005
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Legal Events
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