JP5382140B2 - 車両用フード構造 - Google Patents
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Description
本発明は、自動車等の車両に適用される車両用フード構造に関する。
車両用フード構造においては、フードアウタパネルにフードインナパネルを結合した構造が知られており(例えば、特許文献1参照)、歩行者保護の観点から所定のフード剛性が確保されている。また、このような構造では、例えば、前面衝突時(以下、「前突時」という。)にフードを車両側面視で車両上方側に凸の折れ状態で変形させるために、フードインナパネルのフード前後方向略中央部にフード幅方向に沿ってビードを形成している場合がある。
特開2005−75163公報
しかしながら、衝突体がフードに衝突した際のエネルギー吸収性能の向上と、前突時におけるフードの変形性能の向上との両立という観点からは改善の余地がある。
本発明は、上記事実を考慮して、衝突体がフードに衝突した際のエネルギー吸収性能の向上と、前突時におけるフードの変形性能の向上とを両立させることができる車両用フード構造を得ることが目的である。
本発明の第1の態様に係る車両用フード構造は、フードの外板を構成するフードアウタパネルと、前記フードアウタパネルに対してフード下方側に配置されると共に前記フードアウタパネルに結合され、フードの内板を構成するフードインナパネルと、前記フードインナパネルにおける外周縁部を除く中央領域を構成し、前記フードアウタパネル側と反対方向へ凹む凹形状がフード前後方向に沿って延在するように形成された凹部が複数形成されると共に、フード前後方向略中央部にフード幅方向に沿って並設されかつ前記凹部の底部のみに複数の貫通孔又は複数の薄肉部が形成された骨格形成部と、を有し、前記貫通孔又は前記薄肉部は、前記凹部の底部に形成されている。
本発明の第1の態様に係る車両用フード構造によれば、フードの外板を構成するフードアウタパネルに対して、フードの内板を構成するフードインナパネルは、フード下方側に配置されると共にフードアウタパネルに結合されている。ここで、フードインナパネルにおける外周縁部を除く中央領域を構成する骨格形成部は、フードアウタパネル側と反対方向へ凹む凹形状がフード前後方向に沿って延在するように形成された凹部が複数形成されると共に、フード前後方向略中央部にフード幅方向に沿って並設されかつ前記凹部の底部のみに複数の貫通孔又は複数の薄肉部(他の部位よりも板厚が薄い部位)が形成されている。このような貫通孔又は薄肉部が形成されても、ビードが形成されるような対比構造とは異なり、フードインナパネルの断面高さは縮小しないので、フードインナパネルは、板厚を薄く設定しても比較的高い剛性が確保され、衝突体がフードへ衝突した際には塑性変形等に要するエネルギーを吸収する。
また、前突時には、フードインナパネルに形成された貫通孔又は薄肉部を曲げ起点として、所定の折れモードで曲げ変形する。
また、前突時には、フードインナパネルに形成された貫通孔又は薄肉部を曲げ起点として、所定の折れモードで曲げ変形する。
また、本発明の第1の態様に係る車両用フード構造によれば、フードインナパネルにおける貫通孔又は薄肉部は、凹部の底部のみに形成されている。このため、衝突体がフードに衝突した際にフードがフード下方側に撓もうとすると、凹部の底部には引っ張り荷重が作用するので、貫通孔又は薄肉部を起点としたフードインナパネルの座屈変形が抑えられる。また、前突時にフードがフード上方側に撓もうとすると、凹部の底部には圧縮荷重が作用するので、フードインナパネルは、貫通孔又は薄肉部を起点として比較的容易に座屈変形する。
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る車両用フード構造において、前記フードインナパネルの外周縁部におけるフード幅方向の両サイドは、前記骨格形成部に比べて剛性が高く設定され、前記両サイドにおいて前記貫通孔又は前記薄肉部とフード前後方向の位置を揃えた部位には、前記両サイドにおける他の部位に比べて剛性が低く設定された弱体部が形成されている。
本発明の第2の態様に係る車両用フード構造によれば、フードインナパネルの外周縁部におけるフード幅方向の両サイドは、骨格形成部に比べて剛性が高く設定されており、この外周縁部のフード幅方向の両サイドに形成された弱体部は、当該外周縁部のフード幅方向の両サイドにおける他の部位に比べて剛性が低く設定されている。このため、前突時にフードインナパネルは、まず、外周縁部の弱体部から折れ曲がりが生じる。
ここで、弱体部は、骨格形成部における貫通孔又は薄肉部とフード前後方向の位置を揃えた部位に形成されている。このため、前突時にフードインナパネルの弱体部で折れ曲がりが生じると、弱体部を起点として貫通孔又は薄肉部に沿って折れ曲がりが伝播していき、フードインナパネル全体が折れ曲がる。
本発明の第3の態様は、第2の態様に係る車両用フード構造において、前記弱体部は、フード平面視でフード幅方向に沿って形成されたビードであってかつ前記フードインナパネルへのフード前方側からの荷重入力時に前記骨格形成部より先に折れ曲がりが生じる起点となるように設定されている。本発明の第4の態様に係る車両用フード構造は、フードのフード前後方向の後端部でフード幅方向の軸回りに回転移動可能とされかつフード後方側への移動を規制されたフードに適用され、前記フードのフード前後方向略中央部には、フード幅方向両端縁部に一対の弱体部が形成され、前記一対の弱体部を結ぶ直線上に、フード上下方向成分を有する荷重に対してフード下方側への屈曲変形よりもフード上方側への屈曲変形を容易にする構造が設けられ、フード上下方向成分を有する荷重に対してフード下方側への屈曲変形よりもフード上方側への屈曲変形を容易にする構造は、フード下方側へ凹む凹形状がフード前後方向に沿って延在するように形成された凹部を備えると共に当該凹部の底部のみに貫通孔又は薄肉部が形成された構造とされている。
以上説明したように、本発明の第1の態様に係る車両用フード構造によれば、衝突体がフードに衝突した際のエネルギー吸収性能の向上と、前突時におけるフードの変形性能の向上とを両立させることができるという優れた効果を有する。
本発明の第2の態様に係る車両用フード構造によれば、前突時におけるフードの変形性能の一層の向上を図ることができるという優れた効果を有する。
本発明の第3の態様〜第4の態様に係る車両用フード構造によれば、衝突体がフードに衝突した際のエネルギー吸収性能の向上と、前突時におけるフードの変形性能の向上とを両立させることができるという優れた効果を有する。
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る車両用フード構造について図1〜図11を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印Wは車両幅方向を示している。また、フード閉止状態においては、フード前後方向は車両前後方向と同じ方向とし、フード上下方向は車両上下方向と同じ方向とし、フード幅方向は車両幅方向と同じ方向とする。
本発明の第1の実施形態に係る車両用フード構造について図1〜図11を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印Wは車両幅方向を示している。また、フード閉止状態においては、フード前後方向は車両前後方向と同じ方向とし、フード上下方向は車両上下方向と同じ方向とし、フード幅方向は車両幅方向と同じ方向とする。
図1には、本実施形態に係る車両用フード構造が適用された車両前部が平面図にて示されている。図1に示されるように、自動車(車両)10における車両前部10Aには、エンジンルーム12を開閉可能に覆うフード(エンジンフード)14が配設されている。フード14に覆われるエンジンルーム12の内部には、パワーユニット等のエンジンコンパートメント内蔵物(図示省略)が配設されている。
フード14は、金属製(本実施形態ではアルミニウム合金製)とされている。また、フード14のフード前後方向における後端部の両サイドには、ヒンジ(図示省略)が配設されており、これによって、フード14は、前記ヒンジにおけるフード幅方向の軸15X(図4A参照)回りに回転移動可能、すなわち開閉可能となっている。なお、フード14は、補強部材(広義には「フード付属部材」として把握される要素である。)によって、局部補強されている。すなわち、フード14には、前記ヒンジ側に設けられるヒンジリインフォース(図示省略)や、図4Aに示される前端のフードストライカ15A側に設けられるストライカリインフォース15Bやデントリインフォース15C等が配設されている。
図2には、フードアウタパネル16(想像線参照)を透視した状態のフード14が平面図にて示されている。この図に示されるフード14は、フード14の外板を構成すると共に略車両前後方向に沿って延在されるフードアウタパネル16と、このフードアウタパネル16に対してフード下方側に配置されると共にフードアウタパネル16に結合されてフード14の内板を構成するフードインナパネル18と、を含んで構成されている。
フードアウタパネル16及びフードインナパネル18は、いずれもアルミニウム合金板をプレス成形することにより形成されている。フードアウタパネル16の板厚及びフードインナパネル18の板厚は、軽量化や歩行者保護性能等の複数の観点から設定されている。フードアウタパネル16の外周部は、フードインナパネル18の外周部にヘミング加工によって結合されている。フードアウタパネル16とフードインナパネル18とが組付けられた状態では、両者は閉断面構造を形成しており、両者の間にはフード上下方向の隙間が形成されている。
フードインナパネル18における外周縁部20は、フード前後方向の前端側の前端縁部20A、フード前後方向の後端側の後端縁部20B、及びフード幅方向の両サイドのフード幅方向両端縁部20C、20Dで構成されており、外周縁部20の内側(すなわち、フードインナパネル18において外周縁部20を除く部分)が中央領域24となっている。
フード幅方向両端縁部20C、20Dは、フード14の捩り剛性を高めるために、断面高さ寸法が大きくなっており、中央領域24を構成する骨格形成部26に比べて剛性が高く設定された高剛性部とされている。また、このフード幅方向両端縁部20C、20Dの下面側には、フード前後方向に沿って配置されたフードヒンジリインフォース(図示省略)が固定されている。なお、フードヒンジリインフォースは、フード14におけるヒンジの取付部位を補強するための長尺状の高強度・高剛性部材である。
フード幅方向両端縁部20C、20Dには、フード前後方向略中央部に弱体部としてのビード22が形成されている。ビード22は、フード前後方向に沿う断面視でフードアウタパネル16側(フード上方側)に隆起して凸形状に形成されており、フード平面視でフード幅方向に沿って形成されている。このビード22は、フード幅方向両端縁部20C、20Dにおける他の部位に比べて、フード前後方向の荷重に対する剛性が低く設定されている。なお、フード幅方向両端縁部20C、20Dは骨格形成部26に比べて剛性が高く設定されているので、フード幅方向両端縁部20C、20Dに剛性が低いビード22が設けられた構成は、衝突体がフード14に衝突する場合における衝突体加速度をより好ましい範囲に設定する観点で一般に有利な構成(又は不利にならない構成)といえる。
また、フードインナパネル18の中央領域24には、複数のビード30がフード平面視でフード前後方向に沿って延在するように形成されている。各ビード30は、長手方向との直交面に沿う断面視で、中央領域24におけるパネル(フードインナパネル18)がフードアウタパネル16側に隆起して凸形状に形成され、図3A及び図3Bに示されるように、頂部30Aが平坦状とされている。図3Bに示されるように、ビード30における頂部30Aの一部は、フードアウタパネル16の裏面16Aに接着剤であるマスチック17を介して接合されている。
また、図2に示されるように、各ビード30の前端部30Bは、フードインナパネル18の前端縁部20Aの近傍に至っており、各ビード30の後端部30Cは、フードインナパネル18の後端縁部20Bの近傍に至っている。これらのビード30は、フードインナパネル18の中央領域24においてフード前後方向の曲げ剛性を向上する骨格を構成している。
複数のビード30が並列したフードインナパネル18の中央領域24には、隣り合うビード30の頂部30A間にフードアウタパネル16側と反対方向へ凹む凹形状とされた凹部32がそれぞれ形成されている。複数の凹部32は、フード前後方向に沿って延在するように形成されており、図3A及び図3Bに示されるように、凹部32の底部32Aは断面視で曲線状に形成されている。すなわち、図2に示されるように、中央領域24には、ビード30と凹部32とがフード幅方向に沿って交互に設けられて断面視で波形形状(概ねハット形状が連続的に形成されたような形状)とされた波状部28がほぼ全域に形成されている。この波状部28は、エンジンルーム12の内部のエンジンコンパートメント内蔵物(図示省略)と対面する位置に形成されている。
骨格形成部26には、フード前後方向略中央部にフード幅方向に沿って並設された複数の貫通孔34が貫通形成されている。これらの貫通孔34とフード幅方向両端縁部20C、20Dのビード22とは、フード前後方向の位置を揃えた位置に設定されており、前突時にフード前後方向略中央部でフードインナパネル18を折り曲げ変形させるための部位とされている。図3Aおよび図3Bに示されるように、貫通孔34は、本実施形態では、円孔(図3A参照)とされ、各凹部32の底部32A(フードインナパネル18の下部)にそれぞれ形成されている。なお、フードインナパネル18に貫通孔34が形成されることで、電着塗膜(ED塗膜)は貫通孔34に近い位置から順次形成されることになるため、電着塗料(ED塗料)のつきまわり性を良化させることができる。
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。なお、図4Aは、衝突体C(頭部インパクタ)の衝突時におけるフード14の状態を示し、図5Aは前突時におけるフード14の状態を示しており、これらの図では、変形後の状態を想像線(二点鎖線)にて示している。
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。なお、図4Aは、衝突体C(頭部インパクタ)の衝突時におけるフード14の状態を示し、図5Aは前突時におけるフード14の状態を示しており、これらの図では、変形後の状態を想像線(二点鎖線)にて示している。
図2に示されるように、フードインナパネル18において中央領域24を構成する骨格形成部26は、波状部28が形成されると共に、フード前後方向略中央部にフード幅方向に沿って並設された複数の貫通孔34が形成されている。これらの貫通孔34が形成されても、ビードが形成されるような対比構造とは異なり、図3Bに示されるように、フードインナパネル18の断面高さは縮小しないので、フードインナパネル18は、比較的高い剛性が維持される。よって、図4Aに示される衝突体Cの衝突時にフードインナパネル18は、その塑性変形等に要するエネルギーを吸収する。また、前突時には、図5Aに示されるように、フードインナパネル18に形成された貫通孔34を曲げ起点として、所定の折れモードで曲げ変形する。なお、図5Aでは、前突荷重の入力方向を矢印Fで示している。
ここで、図2に示されるように、凹部32は、フード前後方向に沿って延在するように形成されると共に、図3A及び図3Bに示されるように、フードインナパネル18における貫通孔34は、凹部32の底部32Aに形成されている。
このため、図4Aに示されるように、衝突体Cがフード14に衝突した際にフード14がフード下方側に撓もうとすると、図4Bに示されるように、凹部32の底部32Aには引っ張り荷重f1が作用し、ビード30の頂部30Aには、圧縮荷重f2が作用する。底部32Aにおける貫通孔34の端部は、引っ張り荷重f1に対しては比較的剛性が高いので、貫通孔34を起点としたフードインナパネル18の座屈変形(折れ変形)が抑えられる。これによって、図4Aに示される衝突体Cのフード14への衝突時における高いエネルギー吸収効率が維持される(歩行者保護対策)。
ここで、衝突体Cの衝突時における作用について、図8及び図9を参照しながら補足説明する。図8は、衝突体がフードに衝突した際の衝突体加速度と衝突体変位量(侵入量)との関係を示すG−S線図(CAE(Computer Aided Engineering)結果)である。ここで、横軸(S)は、フードに衝突した衝突体の変位量を示し、縦軸(G)は、衝突体が受ける加速度を示す。また、実線は、本実施形態に係る車両用フード構造におけるG−S線図を示し、二点鎖線は、本実施形態の貫通孔34が形成されていない点を除いて本実施形態と同様の構造におけるG−S線図を示す。
図8に示されるように、本実施形態に係る車両用フード構造は、貫通孔(34)が形成されても、貫通孔(34)が形成されない構造と比較して、衝突体(C)に発生する加速度に大きな減少はなく、(換言すれば、ほぼ同等のエネルギー吸収量を確保でき、)衝突体の変位量もほとんど変わらない。このため、フード(14)とエンジンルーム(12)の内部のエンジンコンパートメント内蔵物との間の隙間を、貫通孔(34)が形成されない場合と同様に設定しても、衝突体(C)のフード(14)を介してのエンジンコンパートメント内蔵物への衝突を避けることが可能となる。
また、図9に示されるように、衝突体Cのフード14への衝突によってフードインナパネル18がフード下方側へ撓んでも、底部32Aにおける貫通孔34の端部は、引っ張り荷重f1に対しては比較的剛性が高いので、貫通孔34からの折れ変形が抑えられる。なお、図9では、衝突体Cの衝突直後のフード14及び衝突体Cの位置を実線で示し、衝突体Cの衝突後に衝突体Cが所定量変位した状態のフード14及び衝突体Cの位置を二点鎖線で示している。
一方、前突時におけるフード14の状態を示す図5Aに示されるように、前突時には、フード14はフード上方側に撓もうとし、このとき、図5Bに示されるように、凹部32の底部32Aには圧縮荷重f3が作用し、ビード30の頂部30Aには、引っ張り荷重f4が作用する。つまり、衝突体C(図4A参照)のフード14への衝突時と前突時とでは、フード14が撓み変形しようとする方向が異なり、凹部32の底部32Aに作用する荷重方向も異なる。前突時には、凹部32の底部32Aに圧縮荷重f3が作用することによって、図6に示される底部32Aの貫通孔34の端部に応力が集中して貫通孔34の周囲が断面変形する。つまり、底部32Aは、弱体化された貫通孔34を起点として比較的容易に座屈変形する。
また、本実施形態に係る車両用フード構造では、図2に示されるフードインナパネル18の外周縁部20におけるフード幅方向両端縁部20C、20Dは、中央領域24の骨格形成部26に比べて剛性が高く設定されており、このフード幅方向両端縁部20C、20Dに形成されたビード22は、フード幅方向両端縁部20C、20Dにおける他の部位に比べて剛性が低く設定されている。このため、前突時におけるフードインナパネル18の変形状態を平面視にて模式的に示す図7A〜図7Eに示されるように、前突時におけるフードインナパネル18は、まず、図7Aに示される初期状態から、図7Bに示される外周縁部20のビード22への応力集中状態を経て、図7Cに示されるように、外周縁部20のビード22から折れ曲がりが生じる。すなわち、高剛性部のフード幅方向両端縁部20C、20Dに形成された弱体化用のビード22から安定的に折れ曲がり始める。
ここで、ビード22は、骨格形成部26における貫通孔34とフード前後方向の位置を揃えた部位に形成されているので、前突時にフードインナパネル18のビード22で折れ曲がりが生じると、図7Dに示されるように、ビード22を起点として貫通孔34に沿って折れ曲がりが伝播していく。すなわち、骨格形成部26においては、貫通孔34が最弱部位となるため、これらの貫通孔34の端部に応力が集中し、貫通孔34の近傍における断面変形が促進されることになる。そして、これらの貫通孔34は、フード幅方向に沿って並設されているので、フード幅方向内側へ向けて折れ曲がりが伝播していくことになる。つまり、フード14の折れ曲がり位置は、貫通孔34の位置で決定され、最終的には、図7Eに示されるように、フードインナパネル18(フード14)全体が貫通孔34に沿って折れ曲がる(安定的な折り曲げモード)。これにより、前突時にはフード14の後端における車両後方側への変位量を抑えることができる。
次に、前突時における作用について、図10及び図11A〜図11Eを参照しながら補足説明する。図10は、前突時におけるフードの変形荷重と変位量との関係を示すF−S線図(CAE(Computer Aided Engineering)結果)である。ここで、横軸(S)は、フードの変位量を示し、縦軸(G)は、フードの変形荷重を示す。また、実線は、本実施形態に係る車両用フード構造におけるF−S線図を示し、二点鎖線は、本実施形態の貫通孔34に代えてフード前後方向略中央部にフード幅方向に沿ってかつフードアウタパネル側に凸形状とされたビードが形成された対比構造におけるF−S線図を示す。図10に示されるように、本実施形態に係る車両用フード構造は、貫通孔(34)に代えてビードが形成された構造に比べて変形荷重(折れ荷重)が低減されていることが分かる。
図11A〜図11Eには、前突時におけるフードインナパネル18が変形していく状態が、模式的な側面視にて図11A、図11B、図11C、図11D、図11Eの順で示されている。実線は、本実施形態に係る車両用フード構造が適用されたフード14の変形状態を示し、二点鎖線Xは、本実施形態の貫通孔34に代えて前記ビードが形成された前記対比構造のフードの変形状態を示す。図11A〜図11Eに示されるように、本実施形態に係る車両用フード構造が適用されたフードは、前記対比構造のフードと比べて同等以上の変形性能(折れ性能)が確保されている。
以上説明したように、本実施形態に係る車両用フード構造によれば、図4Aに示される衝突体Cがフード14に衝突した際のエネルギー吸収性能の向上と、図5Aに示される前突時におけるフード14の変形性能の向上とを両立させることができる。
なお、上記実施形態では、図3A等に示されるように、凹部32の底部32Aに形成された貫通孔34が円孔とされているが、凹部の底部に形成された貫通孔は、図12Aに示されるような楕円孔の貫通孔34Aや、図12Bに示されるような矩形孔の貫通孔34Bや、図12Cに示されるような菱形形状の貫通孔34C等のような他の形状の貫通孔であってもよい。また、上記実施形態では、図3A等に示されるように、各底部32Aに1つの貫通孔34が形成されているが、図12Dに示されるように、各底部32Aに複数の貫通孔34Dがフード幅方向に並設されるように形成されてもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両用フード構造について、図13A及び図13Bを用いて説明する。図13Aには、フードアウタパネル16(想像線参照)を透視した状態のフード40が平面図(第1の実施形態の図2に相当する図)にて示されている。図13Bには、図13Aの13B−13B線に沿って切断した状態の断面図が示されている。
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両用フード構造について、図13A及び図13Bを用いて説明する。図13Aには、フードアウタパネル16(想像線参照)を透視した状態のフード40が平面図(第1の実施形態の図2に相当する図)にて示されている。図13Bには、図13Aの13B−13B線に沿って切断した状態の断面図が示されている。
これらの図に示されるように、フード40は、フードインナパネル42に複数本のビーム46を備えた構造となっている点で、第1の実施形態に係るフード14(図2参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
図13Aに示されるように、フード40におけるフードインナパネル42は、中央領域24に骨格形成部44を備えている。骨格形成部44は、フード前後方向に沿って延在するように形成された複数本(本実施形態では五本)のビーム46を備えており、これらのビーム46は、フード幅方向に所定の間隔で配列されている。この骨格形成部44に比べてフード幅方向両端縁部20C、20Dは剛性が高く設定されている。
図13Bに示されるように、ビーム46は、車両正面視で、フードアウタパネル16側が開放された断面ハット形状とされている。すなわち、これらのビーム46は、フードアウタパネル16側と反対方向へ凹む凹形状とされた凹部50がフード前後方向に沿って延在するように形成される(図13A参照)と共に、凹部50の開放端側で互いに離間する方向へ屈曲された一対のフランジ48がマスチック(図示省略)を介してフードアウタパネル16に結合されている。また、凹部50の底部50Aは断面視で曲線状に形成されている。
図13Aに示されるように、ビーム46を備えた骨格形成部44には、フード前後方向略中央部にフード幅方向に沿って並設された複数の貫通孔52が貫通形成されている。貫通孔52とビード22とは、フード前後方向の位置を揃えた位置に設定されている。図13Bに示されるように、貫通孔52は、凹部50の底部50Aに形成されており、図13Aに示されるように、本実施形態では、円孔とされている。
以上説明した本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
[実施形態の補足説明]
図14A及び図14Bに示されるように、フードインナパネル18Aの骨格形成部26Aは、フードアウタパネル16側と反対方向へ円弧曲面状に凹む凹形状とされた凹部62を含んで構成された略サイン曲線状の波状部28Aを備えた構成でもよい。なお、図14Aに示される凹部62の底部62Aには、第1実施形態の貫通孔34(図2等参照)と同様の位置(フード前後方向略中央部)に貫通孔34Eが貫通形成されている。
図14A及び図14Bに示されるように、フードインナパネル18Aの骨格形成部26Aは、フードアウタパネル16側と反対方向へ円弧曲面状に凹む凹形状とされた凹部62を含んで構成された略サイン曲線状の波状部28Aを備えた構成でもよい。なお、図14Aに示される凹部62の底部62Aには、第1実施形態の貫通孔34(図2等参照)と同様の位置(フード前後方向略中央部)に貫通孔34Eが貫通形成されている。
また、上記実施形態では、凹部32、50の底部32A、50Aに貫通孔34、52が貫通形成されているが、例えば、図14B、図14C及び図14Dに示されるように、凹部62、32、50の底部62A、32A、50Aには、貫通孔34E、34、52(図14A、図3B、図13B参照)に代えて薄肉部60A、60B、60Cが形成されてもよい。なお、薄肉部60A、60B、60Cは、図14B〜図14Dに示されるように、骨格形成部26A、26、44における他の部位よりも板厚が薄い部位であり、第1、第2の実施形態の貫通孔34、52(図2、図13A参照)と同様の位置(フード前後方向略中央部)に形成されている。
また、上記実施形態やその変形例では、貫通孔34、34A〜34E、52や薄肉部60A〜60Cは、凹部32、50、62の底部32A、50A、62Aに形成されており、そのような構成がより好ましいが、貫通孔や薄肉部は、例えば、フードインナパネルの骨格形成部の波状部においてフードアウタパネル側の頂部に形成されてもよい。
さらに、上記実施形態では、図2及び図13Aに示されるように、凹部32、50がフード前後方向に沿って延在するように形成されており、そのような構成がより好ましいが、凹部は、例えば、フード前後方向に対して斜めに延在するように形成された凹部等のような他の方向を長手方向とする凹部であってもよい。また、複数の凹部の延在方向(長手方向)が互いに交差する方向に設定されてもよい。
さらにまた、上記実施形態では、フード幅方向両端縁部20C、20Dにはフード前後方向略中央部に弱体部としてのビード22が形成されており、このような構成がより好ましいが、フードインナパネルの外周縁部におけるフード幅方向の両サイドにこのような弱体部が形成されていない構成としてもよい。また、上記実施形態におけるビード22に代えて弱体部としての貫通孔や薄肉部を形成する構成としてもよい。
なお、上記実施形態では、フード14(フードアウタパネル16及びフードインナパネル18、42)は、アルミニウム合金製とされているが、フード(フードアウタパネル及びフードインナパネル)は、例えば、鉄鋼製等のような他の金属製のフードや樹脂製のフードであってもよい。
Claims (4)
- フードの外板を構成するフードアウタパネルと、
前記フードアウタパネルに対してフード下方側に配置されると共に前記フードアウタパネルに結合され、フードの内板を構成するフードインナパネルと、
前記フードインナパネルにおける外周縁部を除く中央領域を構成し、前記フードアウタパネル側と反対方向へ凹む凹形状とされかつフード前後方向に沿って延在するように形成された凹部が複数形成されると共に、フード前後方向略中央部にフード幅方向に沿って並設された複数の貫通孔又は複数の薄肉部が形成された骨格形成部と、
を有し、
前記貫通孔又は前記薄肉部は、前記凹部の底部のみに形成されている車両用フード構造。 - 前記フードインナパネルの外周縁部におけるフード幅方向の両サイドは、前記骨格形成部に比べて剛性が高く設定され、前記両サイドにおいて前記貫通孔又は前記薄肉部とフード前後方向の位置を揃えた部位には、前記両サイドにおける他の部位に比べて剛性が低く設定された弱体部が形成されている請求項1記載の車両用フード構造。
- 前記弱体部は、フード平面視でフード幅方向に沿って形成されたビードであってかつ前記フードインナパネルへのフード前方側からの荷重入力時に前記骨格形成部より先に折れ曲がりが生じる起点となるように設定されている請求項2記載の車両用フード構造。
- フードのフード前後方向の後端部でフード幅方向の軸回りに回転移動可能とされかつフード後方側への移動を規制されたフードに適用され、前記フードのフード前後方向略中央部には、フード幅方向両端縁部に一対の弱体部が形成され、前記一対の弱体部を結ぶ直線上に、フード上下方向成分を有する荷重に対してフード下方側への屈曲変形よりもフード上方側への屈曲変形を容易にする構造が設けられ、
フード上下方向成分を有する荷重に対してフード下方側への屈曲変形よりもフード上方側への屈曲変形を容易にする構造は、フード下方側へ凹む凹形状がフード前後方向に沿って延在するように形成された凹部を備えると共に当該凹部の底部のみに貫通孔又は薄肉部が形成された構造とされている車両用フード構造。
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