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JP5369083B2 - 高耐電圧性を有する表面処理アルミニウム部材およびその製造方法 - Google Patents

高耐電圧性を有する表面処理アルミニウム部材およびその製造方法 Download PDF

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JP5369083B2 JP2010274026A JP2010274026A JP5369083B2 JP 5369083 B2 JP5369083 B2 JP 5369083B2 JP 2010274026 A JP2010274026 A JP 2010274026A JP 2010274026 A JP2010274026 A JP 2010274026A JP 5369083 B2 JP5369083 B2 JP 5369083B2
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Description

本発明は、ドライエッチング装置、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置、イオン注入装置、スパッタリング装置等のように、半導体や液晶の製造設備等の真空チャンバーや、その真空チャンバーの内部に設けられる部品の素材として有用な、アルミニウムやアルミニウム合金を基材とし、その表面が陽極酸化処理された表面処理アルミニウム部材およびその製造方法に関するものである。
アルミニウムやアルミニウム合金等を基材とした部材の表面に陽極酸化皮膜を形成して、その基材に耐プラズマ性や耐ガス腐食性を付与した陽極酸化処理は従来から広く行なわれている。
例えば、半導体製造設備のプラズマ処理装置に用いられる真空チャンバーや、その真空チャンバーの内部に設けられる各種部品は、アルミニウム合金を用いて構成されることが一般的である。しかしながら、そのアルミニウム合金を何らかの処理をしないまま(無垢のまま)で使用すれば、耐プラズマ性や耐ガス腐食性等を維持することができない。こうしたことから、アルミニウム合金によって構成された部材の表面に、陽極酸化皮膜を形成することによって、耐プラズマ性や耐ガス腐食性等を付与することが行なわれている。
一方、近年では配線幅の微細化に起因して、プラズマの高密度化に伴い、プラズマを生成させるために投入する電力が増加しており、従来の陽極酸化皮膜では、高電力投入時に発生する高電圧によって、皮膜が絶縁破壊を引き起こすことがある。こうした絶縁破壊が生じた部分では電気特性が変化するために、エッチング均一性や、成膜均一性が劣化することから、陽極酸化皮膜の高耐電圧化が望まれている。
陽極酸化皮膜を高耐電圧化するための技術は、これまでにも様々提案されている。例えば、特許文献1では、シュウ酸と蟻酸の混合溶液中で陽極酸化皮膜を形成した後に、ホウ酸アルカリ中で再度陽極酸化処理する方法が提案されている。しかしながら、この方法では、ホウ酸アルカリ中で陽極酸化処理するためには数百V以上の高電圧に対応した高価な整流器が必要となり、設備コストの点で問題がある。
また、特許文献2には、陽極酸化皮膜上に、ポリイミド前駆体を用いて形成されたポリイミド皮膜で陽極酸化皮膜を被覆する方法が提案されている。しかしながら、この技術では、ポリイミド前駆体を電着させる等の設備が別途必要となる。
一方、特許文献3には、アルコール性水酸基を有する溶媒に、無機酸の塩を溶解した電解液を用いて高耐電圧のバリア型陽極酸化皮膜を形成する方法が提案されている。しかしながら、この技術においても、陽極酸化処理による電解液体中のアルコールの濃度変化の管理が煩雑となるという問題がある。
特開昭60−204897号公報 特開2004−59997号公報 特開平11−229157号公報
従来、陽極酸化皮膜を高耐電圧化した表面処理部材や、そのような表面処理部材を得るための製造方法が種々提案されているが、製造工程の煩雑さ、製造コスト等の観点から改良の余地があった。また、高耐電圧化を図るために硫黄を高濃度に含有させた陽極酸化皮膜では、通常では耐電圧性に優れるものの、高温下では皮膜にクラックが発生して耐電圧性が低下するという問題があった。
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、より容易に製造できることを前提とし、単位膜厚当たりの耐電圧性に優れた陽極酸化皮膜、特に高温下でも耐電圧性に優れた陽極酸化皮膜を有する表面処理アルミニウム部材を提供することを目的とする。また、本発明は、高耐電圧を有する表面処理アルミニウム部材を容易に製造し得る製造方法を提供することも目的とする。
陽極酸化皮膜は絶縁体であるが、電圧印加時には陽極酸化皮膜にリーク電流が流れることになる。陽極酸化皮膜における絶縁破壊現象は、電圧印加時に陽極酸化皮膜を流れるリーク電流によって発生するジュール熱が、リーク電流の経路となる陽極酸化皮膜の体積の溶解に必要な熱量を上回った場合に、陽極酸化皮膜が溶解して、皮膜に欠陥が生成される現象と考えられる。
ここで、陽極酸化処理液として硫酸水溶液を用いると、形成される陽極酸化皮膜には、硫酸水溶液に起因する硫黄が含有される。硫黄を含有する陽極酸化皮膜では、皮膜中の硫黄がリーク電流に何らかの作用を及ぼすことにより、耐電圧特性が向上する。しかしながら、硫黄含有量の大きい陽極酸化皮膜は、300℃以上の高温に曝されると、陽極酸化皮膜にその表面から基材アルミニウム合金まで貫通するクラック或いは非貫通の微細なクラックが発生してしまい、陽極酸化皮膜が脆弱化してしまう。そのため、硫酸水溶液のみで形成した陽極酸化皮膜では、常温での耐電圧特性には優れるものの、高温下での耐電圧性が劣ることとなる。
本発明者らは、このような知見をもとに、陽極酸化皮膜中の硫黄含有量について検討を行ったところ、陽極酸化皮膜に硫黄を含有させつつ、皮膜の基材側における硫黄含有量を小さくすることにより、高温下においても高い耐電圧特性を得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の表面処理アルミニウム部材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材と、該基材表面に形成された陽極酸化皮膜とを有し、電圧印加部に用いられる表面処理アルミニウム部材であって、前記陽極酸化皮膜は、表面側に形成された第1皮膜と基材側に形成された第2皮膜とを有し、前記第1皮膜中のS(硫黄)含有量とAl(アルミニウム)含有量との質量比(S/Al)が0.10〜0.15、前記第2皮膜中のS含有量とAl含有量との質量比(S/Al)が0〜0.04であり、前記第1皮膜の厚さの全体膜厚に対する割合(第1皮膜/全体膜厚)が0.33以上であり、前記第2皮膜の厚さの全体膜厚に対する割合(第2皮膜/全体膜厚)が0.25以上であることを特徴とする。このような構成とすることにより、第1皮膜が硫黄を含有しているため、この硫黄がリーク電流に作用を及ぼすことにより、耐電圧特性が向上する。また、第2皮膜はS含有量が小さいため、高温に曝された場合でも第2皮膜にはクラックが発生せず、加熱による陽極酸化皮膜の脆弱化を抑制できる。従って、本発明の表面処理アルミニウム部材は、高温下においても耐電圧特性に優れることとなる。
前記陽極酸化皮膜のポーラス層において、表面のポア間固体部の平均厚さ(d1)と、基材側のポア間固体部の平均厚さ(D1)との比(d1/D1)は0.80以下であることが好ましい。このような構成とすることにより、表面処理アルミニウム部材の耐電圧性をより向上させることができる。また、前記陽極酸化皮膜の厚さは5μm超であることが好ましい。
本発明には、硫酸濃度が100g/L〜200g/Lの水溶液中で、陽極酸化皮膜の設定膜厚全体に対する割合が0.33〜0.75の膜厚を処理する第1皮膜形成工程、および、液温が10℃〜30℃で、シュウ酸濃度が20g/L〜40g/L、硫酸濃度が0g/L〜4g/Lの水溶液中で陽極酸化皮膜の設定膜厚の残りの部分を処理する第2皮膜形成工程を有することを特徴とする製造方法も含まれる。
前記製造方法においては、陽極酸化皮膜のポーラス層における、表面のポア間固体部の平均厚さ(d1)と、基材側のポア間固体部の平均厚さ(D1)との比(d1/D1)を0.80以下とすることが好ましい。前記陽極酸化皮膜の設定膜厚を5μm超とすることが好ましい。また、前記第1皮膜形成工程の前に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材を酸に浸けて、前記第1皮膜形成工程とは逆向きの電流を流す工程を有することも好ましい態様である。
本発明によれば、陽極酸化皮膜中のS(硫黄)含有量を制御することにより、耐電圧性に優れた表面処理アルミニウム部材が得られる。また、本発明製法によれば、耐電圧性に優れた表面処理アルミニウム部材を容易に作製することができる。
本発明の表面処理部材における陽極酸化皮膜の膜構造を模式的に示した断面図である。 本発明の表面処理部材における陽極酸化皮膜の膜構造を模式的に示した平面図である。
本発明の表面処理アルミニウム部材について説明する。本発明の表面処理部材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、「アルミニウム合金」で代表することがある)からなる基材と、その基材の表面に形成される陽極酸化皮膜より構成されるものである。本発明で用いるアルミニウム合金としては、特殊な化学成分組成のアルミニウム合金である必要はなく、市販のアルミニウム合金、例えばJIS H 4000に規定される6061、5052等のアルミニウム合金を基材として用いることができる。
本発明の表面処理アルミニウム部材は、陽極酸化皮膜が、S含有量の大きな第1皮膜とS含有量の小さな第2皮膜とから形成されているところに要旨を有する。このような構成とすることにより、第1皮膜が硫黄を含有しているため、この硫黄がリーク電流に作用を及ぼすことにより、耐電圧特性が向上する。また、第2皮膜はS含有量が小さいため、高温に曝された場合でも第2皮膜にはクラックが発生せず、加熱による陽極酸化皮膜の脆弱化を抑制できる。従って、本発明の表面処理アルミニウム部材は、高温下においても耐電圧特性に優れることとなる。
前記第1皮膜は、陽極酸化皮膜の表面側に形成される。前記第1皮膜中のS含有量とAl含有量との質量比(S/Al)は、0.10〜0.15である。前記質量比(S/Al)が0.10未満では、耐電圧性の向上効果が得られない。一方、前記質量比(S/Al)が0.15を超えても、耐電圧性の向上効果は飽和となり経済的でない。なお、前記第1皮膜中の質量比(S/Al)は、耐電圧性をより向上させるために0.12以上が好ましく、経済性の観点から0.14以下が好ましい。
前記第1皮膜中のS含有量は、皮膜全体にわたって均一でもよいし、膜厚方向に濃度勾配をもっていてもよい。なお、第1皮膜中のS含有量は、皮膜全体にわたって前記質量比(S/Al)0.10〜0.15を満足する必要がある。
前記第1皮膜の厚さは、陽極酸化皮膜の全体膜厚に対する割合(第1皮膜/全体膜厚)が、0.33(1/3)〜0.75(3/4)である。前記第1皮膜の厚さの割合が0.33未満では、第1皮膜による耐電圧性の向上効果が得られない。一方、前記第1皮膜の厚さの割合が0.75を超えると、相対的に第2皮膜が薄くなりすぎる。そのため、高温下で第1皮膜に発生したクラックが伝播し、第2皮膜にまでクラックが発生してしまうこととなり、高温下での耐電圧性の向上効果が得られない。前記第1皮膜の厚さの割合は、0.40以上が好ましく、0.70以下が好ましい。
前記第2皮膜は、陽極酸化皮膜の基材側に形成される。前記第2皮膜中のS含有量とAl含有量との質量比(S/Al)は、0〜0.04である。前記質量比(S/Al)が0.04を超えると、高温に曝された際に、第2皮膜にもクラックが発生してしまい、高温下での耐電圧性の向上効果が得られない。なお、第2皮膜中の質量比(S/Al)は、高温下での耐電圧性をより向上させるために0.02以下が好ましく、0が最も好ましい。
前記第2皮膜の厚さは、陽極酸化皮膜の全体膜厚に対する割合(第2皮膜/全体膜厚)が、0.25(1/4)〜0.67(2/3)であることが好ましい。前記第2皮膜の厚さの割合を0.25以上とすることで、第1皮膜のクラックが第2皮膜にまで伝播することがより抑制され、加熱後の耐電圧がより向上する。一方、前記第1皮膜の厚さを確保するために、第2皮膜の厚さの割合は0.67以下とする。前記第2皮膜の厚さの割合は、0.30以上が好ましく、0.60以下が好ましい。
前記陽極酸化皮膜の厚さは5μm超であることが好ましく、より好ましくは15μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。陽極酸化皮膜の厚みが5μm超であれば、表面処理アルミニウム部材の耐電圧性がより向上する。一方、陽極酸化皮膜の膜厚が厚くなり過ぎると皮膜の熱伝導率が低下することになる。ここで、半導体や液晶の製造設備等の真空チャンバー内部は、高温のプロセス温度に調節されるため、表面処理アルミニウム部材には高い熱電導率が要求される。そのため、陽極酸化皮膜の膜厚は薄い方が好ましい。なお、陽極酸化皮膜の膜厚は、要求される熱伝導率、すなわち成膜プロセスに対応した温度や部材形状に応じて適宜設定すればよいが、120μm以下であることが好ましく、より好ましくは90μm以下である。第1皮膜、第2皮膜及び陽極酸化皮膜の全体膜厚は、渦電流式膜厚計、皮膜断面のSEM(走査型電子顕微鏡)観察などにより測定すればよい。
なお、本発明の表面処理アルミニウム部材は、陽極酸化皮膜が前記第1皮膜と第2皮膜とを有することを特徴とするが、これらの間に、前記質量比(S/Al)が0.04超0.10未満の皮膜を有していてもよい。ただし、本発明の表面アルミニウム部材は、陽極酸化皮膜が前記第1皮膜と第2皮膜のみからなることが好ましい。
また、前記陽極酸化皮膜は、ポーラス層において、表面のポア間固体部の平均厚さ(d1)と、基材側のポア間固体部の平均厚さ(D1)との比(d1/D1)が0.80以下であることが好ましい。このような構成とすることにより、リーク電流の流れの経路を分散し、電流の集中を抑制できるため、発生するジュール熱を分散させることができる。さらに、リーク電流の経路となる皮膜の体積が増加するため、発生するジュール熱が皮膜の溶解に必要な熱量を上回ることを抑制することができる。よって、表面処理アルミニウム部材の耐電圧性をより向上させることができる。前記比(d1/D1)は0.50以下がより好ましく、0.30以下がさらに好ましい。
前記表面のポア間固体部の平均厚さ(d1)、基材側のポア間固体部の平均厚さ(D1)について、図1および図2を参照して説明する。図1は、本発明の表面処理部材における陽極酸化皮膜の膜構造を模式的に示した断面図であり、図2は平面図である。図1、2において、1は基材、2はセル部、3(および3a〜3c)はポア、4はポーラス層(ポアが形成された部分)、5はバリア層(ポーラス層4と基材1との間に介在してポア3のない層)、6はセル同士の境界部を夫々示す。
前記平均厚さd1は、陽極酸化皮膜の表面等を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したとき(図2参照)の近接する10以上のポア3について、夫々最近接(隣接)したポア3間の最短距離(セル部2の最小厚さ:図中d0で示す)を測定し、その測定値を平均化したものである。例えば、図2において、表面の固体部の最小厚さd0は、隣接したポア3a,3b間の最短距離を意味し、隣接していないポア3a,3c間の距離を含まないものである。前記平均厚さd1は、特に限定されるものではないが、機械的強度の観点から10nm以上が好ましく、より好ましくは25nm以上である。
前記平均厚さD1は、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した皮膜の破断面(図1参照)において、セル部2同士の境界部6が基材1と接する部分でのポア間固体部厚さをD0とし、近接する10以上のD0を平均化したものである。なお、陽極酸化皮膜は最近接(隣接)したポアを結んで破壊するため、D0についてもd0と同様に、ポア間の最短距離が重要となる。すなわち、D0においても隣接していないポア間の距離は含まない。前記平均厚さD1は、特に限定されるものではないが、機械的強度を維持し、前記比(d1/D1)を0.8以下とするため、12.5nm以上が好ましく、より好ましくは30nm以上である。
なお、リーク電流は、ポア間固体部を経路とするので、ポア3の径(ポア径)に依存しないものである。例えば、表面側のポア径が基材側のポア径よりも大きい場合であっても(前記図1参照)、上記比(d1/D1)が0.80以下を満足することによって、高耐電圧性がより向上する。また、前記図1では、ポーラス層4におけるポア間固体部2の厚さd0、D0が、連続的に変化する(d0→D0につれて増加する)場合について示したが、ポア間固体部厚さd0、D0が、深さ方向任意の区間で非連続的に変化する(増加する)場合であっても良い。
前記陽極酸化皮膜は、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液などの陽極酸化処理液、またはこれらの混合溶液にアルミニウム合金からなる基材を浸漬して陽極とし、電解処理を行うことにより形成できる。なお、陽極酸化処理液の濃度、陽極酸化処理を行う際の処理温度(液温)、電解電圧、処理時間は、所望の陽極処理酸化皮膜に応じて、適宜調節すればよい。
以下、本発明の表面処理アルミニウム部材の製造方法の一例を具体的に説明する。
本発明の表面アルミニウム部材の製造方法は、硫酸濃度が100g/L〜200g/Lの水溶液中で、陽極酸化皮膜の設定膜厚全体に対する割合が0.33〜0.75の膜厚を処理する第1皮膜形成工程、および、液温が10℃〜30℃で、シュウ酸濃度が20g/L〜40g/L、硫酸濃度が0g/L〜4g/Lの水溶液中で陽極酸化皮膜の設定膜厚の残りの部分を処理する第2皮膜形成工程を有することが好ましい。このように、第1皮膜と第2皮膜とを、それぞれ異なる陽極酸化処理液を用いて形成することにより、陽極酸化皮膜中のS含有量を容易に調節することができる。
前記第1皮膜形成工程では、陽極酸化皮膜を構成する第1皮膜を形成する。
第1皮膜形成工程では、陽極酸化処理液として硫酸濃度が100g/L〜200g/Lの水溶液を用いることが好ましい。陽極酸化処理液中の硫酸濃度が100g/L未満では、形成される第1皮膜中のS含有量が小さ過ぎ、得られる表面処理アルミニウム部材の耐電圧性が劣るおそれがある。一方、陽極酸化処理液中の硫酸濃度が200g/Lを超えても、耐電圧向上効果は飽和し、経済的でない。前記陽極酸化処理液中の硫酸濃度は、120g/L以上、170g/L以下がより好ましい。
なお、第1皮膜形成工程で用いる陽極酸化処理液は、含有される硫酸濃度が重要であり、本発明の効果を損なわない程度であれば、陽極酸化処理液に使用される他の成分を含有してもよい。他の成分としては、シュウ酸、ギ酸などの有機酸;リン酸、クロム酸などの無機酸が挙げられる。
陽極酸化処理を行う温度(液温)は、特に限定されないが、−5℃〜20℃で行えばよい。また、電解電圧(表面皮膜形成電圧)については、電解電圧が低いと電流密度が小さくなり成膜速度が遅くなり、一方、電解電圧が高過ぎると大電流による皮膜の溶解によって陽極酸化皮膜が形成されなくなる傾向がある。電解電圧による影響は、処理液の組成や陽極酸化処理を行う温度にも関係するため、適宜設定すればよい。なお、後述するようにポーラス層の構造を制御する場合には、その点も考慮して電解電圧を設定すればよい。
そして、第1皮膜形成工程では、陽極酸化皮膜の設定膜厚全体に対する割合が0.33〜0.75の膜厚を処理する。すなわち、第1皮膜の厚さの全体膜厚に対する割合(第1皮膜/全体膜厚)が0.33〜0.75となるように陽極酸化処理を行う必要がある。ここで、得られる表面処理アルミニウム部材の耐電圧性をより向上させるために、陽極酸化皮膜の全体膜厚の設定膜厚は5μm超とすることが好ましい。なお、膜厚については、実施する陽極酸化処理条件(陽極酸化処理液の組成、液温、電解電圧など)において、あらかじめ処理時間と形成される膜厚との関係を調査しておき、この関係をもとに処理時間を調整し、所望の膜厚とすればよい。
硫酸水溶液中での処理後、硫酸水溶液から取り出したアルミニウム合金は、十分に水洗し、第2皮膜形成工程で使用する陽極酸化処理液に硫酸を持ち込まないようにすることが好ましい。なお、アルミニウム合金を水洗する方法としては、シャワー洗浄や、水中での超音波洗浄が好適である。
前記第2皮膜形成工程では、陽極酸化皮膜を構成する第2皮膜を形成する。
第2皮膜形成工程では、陽極酸化処理液として、硫酸濃度が0g/L〜4g/Lの水溶液を用いることが好ましい。第2皮膜形成工程で用いる陽極酸化処理液は硫酸を含んでいなくてもよい。なお、陽極酸化処理液に硫酸を添加することにより、成膜速度が向上し生産性の観点で有利である。しかし、陽極酸化処理液中の硫酸濃度が4g/Lを超えると、形成される第2皮膜中のS含有量が大きくなり、得られる表面処理アルミニウム部材の高温下での耐電圧性が劣る。前記陽極酸化処理液中の硫酸濃度は、2g/L以下がより好ましい。
なお、第2皮膜形成工程で用いる陽極酸化処理液には、シュウ酸、ギ酸などの有機酸;リン酸、クロム酸などの無機酸が使用できる。これらの中でも、シュウ酸を用いることが好ましい。シュウ酸を用いる場合には、陽極酸化処理液中のシュウ酸濃度は特に限定されないが、20g/L〜40g/Lとすればよい。
第2皮膜形成工程では、陽極酸化処理を行う温度(液温)は、10℃〜30℃とすることが好ましい。処理温度が10℃未満であると、電流密度が小さくなって成膜速度が非常に遅くなり生産性が悪くなるおそれがある。一方、処理温度が30℃を超えると、皮膜の化学溶解によって第1皮膜が溶解してしまい、所望の陽極酸化皮膜を形成することができない。処理温度は15℃以上、25℃以下がより好ましい。
電解電圧(表面皮膜形成電圧)については、電解電圧が低いと電流密度が小さくなり成膜速度が遅くなり、一方、電解電圧が高過ぎると大電流による皮膜の溶解によって陽極酸化皮膜が形成されなくなる傾向がある。電解電圧による影響は、処理液の組成、陽極酸化処理を行う温度および第1皮膜の膜厚にも関係するため、適宜設定すればよい。なお、後述するようにポーラス層の構造を制御する場合には、その点も考慮して電解電圧を設定すればよい。
なお、膜厚については、前記第1皮膜形成工程と同様に、実施する陽極酸化処理条件(陽極酸化処理液の組成、液温、電解電圧など)において、あらかじめ処理時間と形成される膜厚との関係を調査しておき、この関係をもとに処理時間を調整すればよい。
また、本発明の表面処理アルミニウム部材の製造方法においては、前記陽極酸化皮膜のポーラス層における、表面のポア間固体部の平均厚さ(d1)と、基材側のポア間固体部の平均厚さ(D1)との比(d1/D1)を0.80以下に制御することが好ましい。前記比(d1/D1)を制御する方法としては、例えば、(I)電解電圧を調節する;(II)陽極酸化皮膜を、酸等に浸漬して化学的に溶解させる;等の方法が挙げられる。
前記(I)の方法は、陽極酸化皮膜におけるポア間固体部厚さ(障壁厚さ)が、処理液の処理電圧や温度等によって変化することを利用する。すなわち、低電圧で処理すると、ポア間の障壁厚さは小さくなり、高電圧で処理するとポア間の障壁厚さは大きくなる。従って、陽極酸化皮膜のポーラス層における前記比(d1/D1)を0.80以下にするためには、第1皮膜形成工程の電解電圧を低く、第2皮膜形成工程の電解電圧を高くなるように制御すれば良い。この場合、第1皮膜形成工程の電解電圧と第2皮膜形成工程の電解電圧との比(第1皮膜形成工程/第2皮膜形成工程)を0.05以上が好ましく、より好ましくは0.15以上であり、0.80以下、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.30以下である。
また、前記(II)の方法は、通常の陽極酸化処理条件にて作製した陽極酸化皮膜を、酸等に浸漬して化学的に溶解させ、表層側のポア間固体部厚さを小さくし、表層側と基材側のポア間固体部厚さの比(d1/D1)を制御する。陽極酸化皮膜を、例えば、フッ酸水溶液や緩衝フッ酸溶液(HFとNH4Fの混合溶液)等のフッ素を含む水溶液中に浸漬し、その陽極酸化皮膜の表層近傍を溶解させることによって、前記比(d1/D1)を制御できる。
なお、フッ素を含む水溶液としては、そのフッ素濃度が高く、また温度(液温)がより高温である方が、処理溶液による陽極酸化皮膜表面の化学溶解が起こりやすく、表層側のポア間固体部厚さ(d0)を短時間で小さくするのに有効である。しかしながら、その一方で、化学的な溶解が大きくなり過ぎると、膜厚が薄くなって陽極酸化皮膜を形成する目的が達成されなくなる可能性がある。こうしたことから、適宜その条件を適切な範囲に設定する必要がある。その条件は、陽極酸化皮膜の種類によっても異なるが、例えば、室温(25℃)で、0.5〜1.0mol/Lのフッ酸水溶液に5〜10分程度浸漬することが好ましい。
本発明の表面処理アルミニウム部材の製造方法においては、前記第1皮膜形成工程の前に、基材を酸に浸けて、前記第1皮膜形成工程とは逆向きの電流を流しておくこと(以下、このような操作を「カソード処理」と称することがある。)が好ましい。具体的には、前記第1皮膜形成工程において、電解電圧(表面皮膜形成電圧)を印加してアルミニウム部材が陽極となるように電流を流して該部材を酸化処理するのに先立って、これとは逆向きの方向となるように(アルミニウム部材が負極となるように)電流を流しておく。これにより、基材表面に存在する晶出物(FeAl3系、CuAl3系金属間化合物等)や、自然に形成された酸化皮膜を除去できる。その結果、短絡の原因となり得る晶出物が除去されるため耐電圧が向上する。また、晶出物に悪影響を受けることなく陽極酸化処理を行えるため、より均質な陽極酸化皮膜を形成でき、得られるアルミニウム部材の耐電圧性がより向上する。
前記カソード処理に用いる酸としては、例えば、硫酸、硝酸、シュウ酸等の各種酸溶液が挙げられる。これらの酸は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硝酸が好適である。前記酸として硝酸水溶液を用いる場合、濃度は1質量%以上(より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上)が好ましく、50質量%以下(より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下)が好ましい。
カソード処理を行う温度(液温)は、5℃以上(より好ましくは15℃以上)が好ましい。処理温度が高いほど、晶出物の除去に要する時間を短縮することができ、より生産性が向上する。液温が高いほど晶出物の除去に要する時間を短縮することができるが、通常、60℃以下(より好ましくは40℃以下)が好ましい。
また、カソード処理時に流す電流(第1皮膜形成工程とは逆向きの電流)の電流密度は、0.1A/dm2以上(より好ましくは0.5A/dm2以上、さらに好ましくは1.0A/dm2以上)が好ましく、100A/dm2以下(より好ましくは50A/dm2以下、さらに好ましくは20A/dm2以下)が好ましい。電流密度が0.1A/dm2以上であれば、晶出物の除去に要する時間を短縮することができ、より生産性が向上し、100A/dm2以下であれば、高価な設備を用いる必要もなく、晶出物を短時間で取り除ける。カソード処理の処理時間(通電時間)は、電流密度に応じて適宜調節すればよいが、通常、1〜180min程度が好ましい。
カソード処理後、硝酸水溶液から取り出したアルミニウム合金は、十分に水洗することが好ましい。なお、アルミニウム合金を水洗する方法としては、シャワー洗浄や、水中での超音波洗浄が好適である。
本発明の表面処理アルミニウム部材は、高温下での耐電圧性に優れているため、例えば、半導体や液晶の製造設備等の真空チャンバー部材や、真空チャンバー内部に配されるクランパー、シャワーヘッド、サセプターなどに好適に使用できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
アルミニウム合金鋳塊を溶製(サイズ:220mmW×250mmL×100mmt、冷却速度:15〜10℃/秒)し、その鋳塊を切断して面削(サイズ:220mmW×150mmL×60mmt)した後、均熱処理(540℃×4時間)を施した。
均熱処理後、60mm厚の素材を熱間圧延によって6mmの厚さの板材に圧延し、切断(サイズ:220mmW×450mmL×6mmt)した後、溶体化処理(510〜520℃×30分)を施した。溶体化処理後、水焼入れし、時効処理(160〜180℃×8時間)を施して、供試合金板を得た。このとき用いたアルミニウム合金の化学成分組成は、JIS H 4000に規定される6061合金に相当するものである。
得られた供試合金板から、サイズ:25mm×35mm(圧延方向)×3mmtの試験片を切り出し、その表面を面削加工した。次いで、60℃−10wt%NaOH水溶液中に2分間浸漬した後に水洗し、更に30℃−20wt%HNO3水溶液中に2分間浸漬した後水洗して表面を清浄化した後、下記表1に示す条件[陽極酸化処理液、処理液温度、皮膜形成電圧]にて陽極酸化処理を施して試験片の表面に各種陽極酸化皮膜を形成した。
なお、試験No.3aについては、第1皮膜工程に供する前に、アルミニウム合金についてカソード処理を行った。カソード処理条件は、処理液として25℃−20wt%HNO3水溶液を用い、電流密度を3A/dm2とし、処理時間(通電時間)を100minとした。
上記で得られた各試験片について、第1皮膜および第2皮膜の膜厚、皮膜中のS(硫黄)含有量とAl(アルミニウム)含有量との質量比(S/Al)、並びに、陽極酸化皮膜のポーラス層における表面のポア間固体部の平均厚さ(d1)と、基材側のポア間固体部の平均厚さ(D1)を測定し、また加熱後の耐電圧性を評価した。観察方法および評価方法は以下のように行った。
1.第1皮膜および第2皮膜の膜厚
第1皮膜を形成した後、陽極酸化処理液から取り出したアルミニウム合金を十分に水洗して、渦電流式膜厚計を用いて第1皮膜の膜厚を測定した。続いて、第2皮膜を形成した後、陽極酸化処理液から取り出したアルミニウム合金を十分に水洗して、渦電流式膜厚計を用いて陽極酸化皮膜の全体膜厚を測定した。そして、全体膜厚から第1皮膜の膜厚を差し引くことで第2皮膜の膜厚を求めた。
2.皮膜中のS(硫黄)含有量とAl(アルミニウム)含有量との質量比(S/Al)
陽極酸化皮膜の断面について、任意の部位を膜厚方向全体にわたってX線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro Analyzer)(スポット径;1μm)にて化学組成分析し、Sの重量化学組成とAlの重量化学組成の比を求めた。
3.陽極酸化皮膜のポーラス層の構造
表面のポア間固体部の平均厚さ(d1)は、陽極酸化皮膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、近接する10個のポアについて、それぞれ最も近接(隣接)したポアとの最短距離(固体部の最小厚さ)を測定し、その測定値を平均化した。
基材側のポア間固体部の平均厚さ(D1)は、陽極酸化皮膜の破断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、セル同士の境界部が基材と接する部分でのポア間固体部厚さをD0とし、近接する10個のD0を平均化した。
4.加熱後の耐電圧性
陽極酸化皮膜を形成した試験片を、オーブン中で、大気雰囲気下、400℃で4時間加熱処理を行った。
加熱処理後の試験片について、耐電圧試験器(「TOS5050A」 菊水電子工業株式会社製)を用い、+端子を針型のプローブに接続し、陽極酸化皮膜上に接触させ、−端子をアルミニウム合金基材に接続し、電圧を印加し、絶縁破壊電圧(この電圧を「耐電圧」と呼ぶ)によって耐電圧性を評価した。また、単位膜厚当りの耐電圧についても計算した。
上記の結果より、製造方法について、次のように考察できる。No.1,24,27,29,33,35のように、硫酸を含有しない陽極酸化処理液を用いた場合、得られる皮膜には硫黄が含有されない。また、No.4,31のように、第1皮膜形成工程で用いる陽極酸化処理液中の硫酸濃度が100g/L未満では、得られる第1皮膜中のS含有量が小さく、所望のS含有量が達成できない。一方、No.7のように、第1皮膜形成工程で用いる陽極酸化処理液中の硫酸濃度が200g/Lを超えると、得られる第1皮膜中のS含有量が大きくなりすぎる。
また、No.14のように、第2皮膜形成工程において、処理温度(液温)が10℃未満では、所望の膜厚を得るために非常に長時間を要し、生産性が悪くなる。一方、No.17のように、第2皮膜形成工程において、処理温度(液温)が30℃を超えると、皮膜が溶解してしまい所望の膜厚が得られない。なお、No.18〜20のように、陽極酸化処理液に硫酸を添加すると、No.3に比べて処理時間が短縮できることがわかる。しかしながら、No.20のように、陽極酸化処理液中の硫酸濃度が5g/Lでは、得られる第2皮膜中のS含有量が大きくなりすぎる。
また、上記の結果より、表面処理アルミニウム部材について次のように考察できる。No.1は陽極酸化皮膜が硫酸を含有しない場合、No.2は陽極酸化皮膜全体にわたりS含有量が大きい場合、No.3は陽極酸化皮膜がS含有量の大きな第1皮膜とS含有量の小さな第2皮膜とから形成されている場合である。これらを比較すると、本発明の要件を満足するNo.3のものが、No.1,2に比べて加熱後の耐電圧性に優れていることがわかる。
No.4〜7は第1皮膜中のS含有量を変化させたものである。これらとNo.3とを比較すると、No.4のようにS含有量が小さいと耐電圧性が向上しないことがわかる。No.5〜7のように、質量比(S/Al)が0.10以上であれば耐電圧性が向上している。なお、No.6とNo.7を比較すると、耐電圧性向上効果が同程度であることから、S含有量を質量比(S/Al)0.15以上としても、硫黄添加による耐電圧向上効果は飽和となることがわかる。
No.8〜13は第1皮膜の全体膜厚に対する割合を変化させたものである。これらの結果より、第1皮膜の割合が0.30では、第1皮膜による耐電圧性向上効果が得られないことがわかる、一方、第1皮膜の割合が0.75を超えると、相対的に第2皮膜が薄くなりすぎ(0.25未満)、加熱後の耐電圧性が低下することがわかる。
No.18〜20は第2皮膜中のS含有量を変化させたものである。No.3,4のように第2皮膜中の質量比(S/Al)が0.04以下であれば耐電圧性が向上している。しかし、No.20のように第2皮膜中の質量比(S/Al)が0.04を超えると、加熱により第2皮膜にもクラックが生じるため加熱後の耐電圧性が劣る。
No.21〜23は、ポーラス層における平均厚さ(d1)と平均厚さ(D1)との比(d1/D1)を変化させたものである。これらの結果より、比(d1/D1)を0.80以下に制御することにより、加熱後の耐電圧性がより向上することがわかる。なお、No.24,25は、陽極酸化皮膜の全体膜厚が5μmである場合であるが、本発明の要件を満足することにより加熱後の耐電圧性が向上しているが、その向上効果が小さくなっている。
No.26〜35は、膜厚やS含有量などを変化させたものであるが、これらの結果からも本発明の要件を満足する表面処理アルミニウム部材は、加熱後の耐電圧性に優れていることがわかる。
No.3aは、基材にカソード処理を施した後、No.3と同様の第1皮膜形成処理、第2皮膜形成処理を行ったものである。このNo.3aでは、カソード処理を施していないNo.3に比べて、加熱後の耐電圧が一層向上していることがわかる。
1:基材
2:セル部
3:ポア
4:ポーラス層
5:バリア層
6:境界部

Claims (7)

  1. アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材と、該基材表面に形成された陽極酸化皮膜とを有し、電圧印加部に用いられる表面処理アルミニウム部材であって、
    前記陽極酸化皮膜は、表面側に形成された第1皮膜と基材側に形成された第2皮膜とを有し、
    前記第1皮膜中のS(硫黄)含有量とAl(アルミニウム)含有量との質量比(S/Al)が0.10〜0.15、前記第2皮膜中のS含有量とAl含有量との質量比(S/Al)が0〜0.04であり、
    前記第1皮膜の厚さの全体膜厚に対する割合(第1皮膜/全体膜厚)が0.33以上であり、前記第2皮膜の厚さの全体膜厚に対する割合(第2皮膜/全体膜厚)が0.25以上であることを特徴とする、プラズマ装置に用いられる真空チャンバ用または真空チャンバ内の部品用表面処理アルミニウム部材。
  2. 前記陽極酸化皮膜のポーラス層において、表面のポア間固体部の平均厚さ(d1)と、基材側のポア間固体部の平均厚さ(D1)との比(d1/D1)が0.80以下である請求項1に記載の表面処理アルミニウム部材。
  3. 前記陽極酸化皮膜の厚さが5μm超である請求項1または2に記載の表面処理アルミニウム部材。
  4. アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材と、該基材表面に形成された陽極酸化皮膜とを有し、電圧印加部に用いられる表面処理アルミニウム部材の製造方法であって、
    硫酸濃度が100g/L〜200g/Lの水溶液中で、陽極酸化皮膜の設定膜厚全体に対する割合が0.33〜0.75の膜厚に処理する第1皮膜形成工程、および、
    液温が10℃〜30℃で、シュウ酸濃度が20g/L〜40g/L、硫酸濃度が0g/L〜4g/Lの水溶液中で陽極酸化皮膜の設定膜厚の残りの部分を処理する第2皮膜形成工程を有することを特徴とする、プラズマ装置に用いられる真空チャンバ用または真空チャンバ内の部品用表面処理アルミニウム部材の製造方法。
  5. 前記陽極酸化皮膜のポーラス層における、表面のポア間固体部の平均厚さ(d1)と、基材側のポア間固体部の平均厚さ(D1)との比(d1/D1)を0.80以下とする請求項4に記載の製造方法。
  6. 前記陽極酸化皮膜の設定膜厚が5μm超である請求項4または5に記載の製造方法。
  7. 前記第1皮膜形成工程の前に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材を酸に浸けて、前記第1皮膜形成工程とは逆向きの電流を流す工程を有する請求項4〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
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