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JP5365477B2 - 表面硬化処理用鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、表面硬化処理用鋼材に関し、詳しくは、浸炭処理、浸炭窒化処理など表面処理を施した後の焼入れにおいて発生する熱処理歪を低減し、寸法精度の高い表面硬化部品の製造を可能とする表面硬化処理用鋼材に関する。
従来、機械構造部品であるシャフト、ギヤなど表面硬化処理を施された部品の素材鋼として、JISに規定された「機械構造用合金鋼鋼材」であるSCr420、SCM420などが用いられてきた。なお、以下の説明において、表面硬化処理を施された部品を「表面硬化部品」という。
しかしながら、最近、表面硬化部品に対する高強度化の要求が益々高まっており、このため、曲げ強度、ねじり強度、疲労強度などを向上させるため種々の表面硬化処理用鋼(以下、「肌焼鋼」ということがある。)が提案されている。
表面硬化部品は、一般に、肌焼鋼を素材として用いて、「球状化焼鈍−伸線」または「伸線−球状化焼鈍−スキンパス」による鋼線の製造、冷間鍛造や機械加工による所定形状への成形、次いで、疲労強度、耐摩耗性などの特性を改善するための浸炭、浸炭窒化などの表面処理、焼入れおよび焼戻しの各処理を順次行うことによって製造される。
このようにして製造される表面硬化部品には、作動時の円滑性や静粛性を向上させるために高い寸法精度が求められ、これには、上記焼入れの際に生じる熱処理歪を極力少なくすることが重要となる。
そこで、熱処理歪を低減するための技術が、例えば、特許文献1〜3に提案されている。
具体的には、特許文献1に、棒状圧延材の横断面において等軸晶の占める領域を面積率で30%以下とした「浸炭焼入れによる熱処理歪の少ない肌焼鋼」が開示されている。なお、特許文献1によれば、比較的大きな速度で冷却を施しながら連続鋳造を行うことが望ましく、鋳造開始から約800℃までを4℃/min以上の速度で冷却し、等軸晶の占める面積率を30%以下することによって、低熱処理歪特性が得られる。
特許文献2には、「冷間加工性と低浸炭歪み特性に優れた肌焼鋼とその製造方法」が開示されている。特許文献2によれば、加熱温度を1150℃以上、熱間圧延の仕上げ温度を840〜1000℃、熱間圧延に引き続いて800〜500℃の温度範囲を1℃/秒以下の冷却速度で徐冷する条件により、ベイナイトの組織分率を15%以下に制限し、熱間圧延方向に平行な断面の組織のフェライトバンドの評点を1〜5とすることによって、浸炭焼入れ時の熱処理歪みを軽減できる。
特許文献3には、連続鋳造により製造した肌焼鋼であって、鋳片の径方向断面内におけるCおよびMnのミクロ偏析度を所定の範囲内にすること、すなわち、径方向断面において、4本の等分線で得られた全ての測定値における最大値と最小値の差と、4本の等分線において隣接する測定値の差を、特定の値以内とすることによって、浸炭処理後に焼入れした際に発生する歪を低減できる「肌焼鋼」が開示されている。
特開平11−131184号公報 特開平11−335777号公報 特開2006−97066号公報
前述の特許文献1〜3に開示された技術では、表面硬化部品に対する一層の高強度化要求に伴って増大することが避けられない熱処理歪を低減するには不十分である。
すなわち、特許文献1および特許文献2に開示されている肌焼鋼では、断面内の成分ばらつきによって焼入れ性が上がるので、発生する熱処理歪の増大の抑制が不十分になることを避けられない。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、浸炭処理、浸炭窒化処理など表面処理を施した後の焼入れにおいて生じる熱処理歪を十分低減することができ、寸法精度の高い「高強度表面硬化部品」を得るのに好適な表面硬化処理用鋼材を提供することを目的とする。
本発明者らは、表面硬化部品の製造において、表面処理後に焼入れした際の熱処理歪を低減させるために、一般的な肌焼鋼として周知のJISに規定された「クロム鋼」および「クロムモリブデン鋼」をベースとして、C、Si、Mn、P、S、Cr、Mo、Al、N、Ti、B、NbおよびVの含有量を種々変えた鋼を用い、これらの元素が表面硬化部品の熱処理歪に及ぼす影響について種々検討を重ねた。
その結果、特定の成分組成を有する表面硬化部品においては、熱処理歪が、式中の元素記号をその元素の質量%での含有量として、下記の(1)式で表されるDIと相関があることを見出した。
DI=0.311×C0.5×(1+0.64×Si)×(1+4.10×Mn)×(1+2.83×P)×(1−0.62×S)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)×{1+1.5×(0.90−C)}・・・(1)。
すなわち、特定の成分組成を有する表面硬化部品においては、上記(1)式で表されるDIを特定の値以下に調整したうえで、さらに、DIの標準偏差を特定の値以下にすれば、浸炭処理や浸炭窒化処理などの表面処理後の焼入れにおいて生じる熱処理歪を十分低減することができ、したがって、より高い寸法精度が得られることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(3)に示す表面硬化処理用鋼材にある。
(1)質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.35%以下、Mn:0.15〜1.5%、P:0.04%以下、S:0.001〜0.07%、Cr:1.5〜3.0%、Al:0.02〜0.05%、N:0.0035〜0.0100%、Ti:0.005〜0.10%およびB:0.0005〜0.0050%を含有し、下記の(1)式で表されるDIの範囲が4.1〜20.0、かつ、横断面内におけるDIの標準偏差が0.25以下であって、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有することを特徴とする表面硬化処理用鋼材。
DI=0.311×C0.5×(1+0.64×Si)×(1+4.10×Mn)×(1+2.83×P)×(1−0.62×S)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)×{1+1.5×(0.90−C)}・・・(1)
ただし、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.07%以下およびV:0.08%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする上記(1)に記載の表面硬化処理用鋼材。
(3)Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.50%以下を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の表面硬化処理用鋼材。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石やスクラップあるいは環境などから混入するものを指す。
本発明の表面硬化処理用鋼材は、浸炭処理、浸炭窒化処理など表面処理を施した後の焼入れにおいて生じる熱処理歪を十分低減することができるので、寸法精度の高い「高強度表面硬化部品」の素材として好適である。
実施例で用いた4点曲げ疲労試験片の形状を示す図である。図における寸法の単位は「mm」である。 実施例における「浸炭焼入れ−焼戻し」のヒートパターンを示す図である。なお、図中の「Cp」はカーボンポテンシャルを表し、「O.Q.(150℃)」は150℃の油中に焼入れしたことを示す。 実施例で用いた熱処理歪用試験片と熱処理歪測定の試験方法を説明する図である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
C:0.10〜0.30%
Cは、シャフト、ギヤなど表面硬化部品の生地の強度を確保するのに必要な元素であり、その含有量が0.10%未満では添加効果に乏しい。一方、その含有量が0.30%を超えると、前記表面硬化部品の生地の靱性が低下する。したがって、Cの含有量を0.10〜0.30%とした。なお、Cの含有量は0.12%以上、0.25%以下であることが好ましい。
Si:0.35%以下
Siは、脱酸作用を有する元素であるが、含有量が過剰になると加工性の低下をきたす。さらに、Siは、浸炭処理した部品の表面部に粒界酸化層を生成させて疲労強度の低下を招く。そのため、Siの含有量は0.35%以下とした。望ましいSiの含有量は0.30%以下である。
Mn:0.15〜1.5%
Mnは、焼入れ性を向上させる作用を有する。この効果を得るには、0.15%以上のMn含有量が必要である。しかしながら、Mnの含有量が1.5%を超えると、被削性が低下する。したがって、Mnの含有量を0.15〜1.5%とした。なお、Mnの含有量は0.30%以上、1.2%以下であることが好ましい。
P:0.04%以下
Pは、靱性を低下させる不純物であり、その含有量が多くなると靱性の低下が著しくなるため、その含有量は0.04%以下とした。なお、望ましいPの含有量は0.03%以下である。
S:0.001〜0.07%
Sは、被削性を向上させる作用を有する。この効果を得るには、0.001%以上のS含有量が必要である。しかしながら、Sの含有量が0.07%を超えると、冷間鍛造性および熱間加工性の低下をきたし、さらに、シャフト、ギヤなど表面硬化部品における表面硬化層の靱性が低下する。したがって、Sの含有量を0.001〜0.07%とした。なお、Sの含有量は0.01%以上、0.05%以下であることが好ましい。
Cr:1.5〜3.0%
Crは、シャフト、ギヤなど表面硬化部品の生地の焼入れ性を向上させる効果を有する。上記の効果を得るためには、1.5%以上のCrを含有させる必要がある。しかしながら、Crの含有量が3.0%を超えると、被削性が劣化する。したがって、Crの含有量を1.5〜3.0%とした。なお、Crの含有量は1.6%以上、2.5%以下であることが好ましい。
Al:0.02〜0.05%
Alは、Nと結合してAlNを形成し、オーステナイト領域での結晶粒粗大化を抑制する作用がある。上記の効果を得るためには、0.02%以上のAlを含有させる必要がある。しかしながら、Alの含有量が0.05%を超えると、疲労破壊の起点となる巨大なアルミナ介在物を生成し、疲労強度の低下をきたす場合がある。したがって、Alの含有量を0.02〜0.05%とした。
N:0.0035〜0.0100%
Nは、Alと結合してAlNを形成し、オーステナイト領域での結晶粒粗大化を抑制する作用がある。この効果を得るために、Nの含有量を0.0035%以上とする必要がある。しかしながら、Nの含有量が過剰になって0.0100%を超えると、冷間鍛造性の低下をきたし、さらに、Bと結合してBNを形成するので、後述するBの焼入れ性向上効果が不十分になってしまう。そのため、Nの含有量を0.0035〜0.0100%とした。
Ti:0.005〜0.10%
Tiは、CおよびNとともに炭窒化物を形成し、その粒界ピン止め作用によって粗粒化を抑制する作用を有する。しかしながら、Tiの含有量が0.005%未満では、耐粗粒化効果が乏しく、一方、0.10%を超えると、冷間鍛造性の低下を招く。そのため、Tiの含有量を0.005〜0.10%とした。なお、Tiの含有量は0.01%以上、0.05%以下であることが好ましい。
B:0.0005〜0.0050%
Bは、微量で鋼材の焼入れ性を向上させる作用を有しており、さらに結晶粒界を強化して低サイクル曲げ疲労強度を向上する作用も有している。しかしながら、Bの含有量が0.0005%未満では十分な焼入れ性向上効果が得られない。一方、0.0050%を超えるBを含有させてもその効果が飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Bの含有量は、0.0005〜0.0050%とした。なお、Bの含有量は0.001%以上、0.003%以下であることが好ましい。
DI:4.1〜20.0
C、Si、Mn、P、S、CrおよびMoは、低サイクル曲げ疲労特性および、浸炭処理や浸炭窒化処理などの表面処理後の焼入れにおいて生じる熱処理歪に影響を及ぼす元素であって、それぞれの含有量が適正な範囲にあり、しかも、前記の(1)式で表されるDI、つまり、〔0.311×C0.5×(1+0.64×Si)×(1+4.10×Mn)×(1+2.83×P)×(1−0.62×S)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)×{1+1.5×(0.90−C)}〕が4.1〜20.0の範囲にあることが必要である。
すなわち、前記の(1)式で表されるDIが4.1未満の場合には、低サイクル曲げ疲労強度の高強度化を満足できない。一方、DIが4.1以上の場合であっても、20.0を超えて大きい場合には、表面処理後の焼入れにおいて生じる熱処理歪も極めて大きくなるため、曲げ加工等による歪矯正だけでは、熱処理歪を除去することができない。したがって、DIが4.1〜20.0の範囲にあることが必要である。なお、DIは、4.5以上であることが好ましく、また、15.0以下であることが好ましい。
横断面内におけるDIの標準偏差:0.25以下
表面処理後の焼入れにおいて生じる熱処理歪を低減するためには、前記の(1)式で表されるDIが上記の4.1〜20.0の範囲であることに加えて、鋼材の横断面内におけるDIの標準偏差が0.25以下でなければならない。たとえDIが4.1〜20.0の範囲にあっても、鋼材の横断面内におけるDIの標準偏差が0.25を超えると、焼入れ性が部分的に高くなって、浸炭、浸炭窒化など表面処理後の焼入れ熱処理歪を低減することができなくなるからである。鋼材の横断面内におけるDIの標準偏差は0.22以下であることが好ましい。
鋼材の横断面内におけるDIの標準偏差は、例えば、後述の実施例に示すように、鋼材の横断面内の適宜の位置から化学成分分析用のサンプルを採取し、それぞれの位置におけるDIから算出することができる。
なお、例えば、浸炭、浸炭窒化などの表面処理を行う前に、鋼材に対して焼ならしなど適宜の処理を施すことによって、前記の(1)式に含まれる元素の偏析を抑えることができるので、上記した鋼材の横断面内におけるDIの標準偏差を容易に0.25以下にすることができる。
本発明の表面硬化処理用鋼材の一つは、上記元素のほか、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有するものである。
本発明の表面硬化処理用鋼材の他の一つは、Feの一部に代えて、Nb、VおよびMoのうちの1種以上の元素を含有するものである。
以下、任意元素である上記Nb、VおよびMoの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
NbおよびVは、いずれも、粗粒化を抑制する作用を有する。このため、粗粒化抑制効果を得たい場合には、これらの元素を含有させてもよい。以下、上記のNbおよびVについて説明する。
Nb:0.07%以下
Nbは、前記Tiと同様に、CおよびNとともに炭窒化物を形成し、その粒界ピン止め作用によって粗粒化を抑制する作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Nbの含有量が過剰になって0.07%を超えると、冷間鍛造性の低下を招く。したがって、含有させる場合のNbの含有量を0.07%以下とした。なお、Nbの含有量は0.05%以下であることが好ましい。
一方、前記したNbの粗粒化抑制効果を確実に得るためには、Nbの含有量は0.005%以上であることが好ましい。
V:0.08%以下
Vは、前記TiおよびNbと同様に、CおよびNとともに炭窒化物を形成し、その粒界ピン止め作用によって粗粒化を抑制する作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Vの含有量が過剰になって0.08%を超えると、冷間鍛造性の低下を招く。したがって、含有させる場合のVの含有量を0.08%以下とした。なお、Vの含有量は0.05%以下であることが好ましい。
一方、前記したVの粗粒化抑制効果を確実に得るためには、Vの含有量は0.005%以上であることが好ましい。
なお、上記のNbおよびVは、そのうちのいずれか1種のみ、または2種の複合で含有させることができる。なお、これらの元素の合計含有量は0.15%であっても構わないが、0.10%以下とすることが好ましい。
Mo:0.50%以下
Moは、焼入れ性を向上させる作用およびシャフト、ギヤなど表面硬化部品における生地の硬さを向上させる作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Moの含有量が過剰になって0.50%を超えると、冷間鍛造性の低下をきたす。したがって、含有させる場合のMoの含有量を0.50%以下とした。なお、Moの含有量は0.40%以下であることが好ましい。
一方、前記したMoの効果を確実に得るためには、Moの含有量は0.03%以上であることが好ましい。
本発明の表面硬化処理用鋼材は、例えば、次の〈1〉および〈2〉の工程を経ることで製造することができる。
〈1〉個々の成分元素の含有量が、それぞれ前記した範囲にある鋼を溶製した後、連続鋳造法または鋼塊法によって鋳込む際に、鋳込み開始から1250℃までの温度域を15℃/分以上の冷却速度で、また、1250℃から1000℃までの温度域を15℃/分以下の冷却速度で冷却する。
〈2〉上記〈1〉のようにして得た鋳片または鋼塊に、1250℃で5時間以上また、エネルギー消費が多大になることやスケールロス防止といった観点から15時間以内の均熱処理を施してから分塊圧延する。
なお、上記〈1〉の工程において、鋳込み開始から1250℃までの温度域を15℃/分以上の冷却速度で冷却することによって、C、Mn、CrなどDIを構成する各元素の偏析を低減でき、しかも、1250℃から1000℃までの温度域を15℃/分以下の冷却速度で冷却することによって、偏析していた元素が拡散するため、偏析をさらに低減できる。
そして、分塊圧延する前に、1250℃で5時間以上15時間以内の均熱処理を施すことによって、偏析した元素がさらに拡散するので、鋼材の横断面内DIの標準偏差を低減することができる。
なお、上記の各処理における温度および冷却速度は、いずれも表面を基準とする温度および冷却速度を指す。
上記〈1〉および〈2〉の工程を経て分塊圧延された鋼材を、さらに熱間圧延、熱間鍛造など各種の方法によって、棒鋼など所要の形状に加工することによって、鋼材の横断面内DIの標準偏差を一層低減することができる。
さらに、上記棒鋼など所要の形状に加工した鋼材に対して、浸炭、浸炭窒化などの表面処理を行う前に、焼ならしなど適宜の熱処理を施すことによって、上記した鋼材の横断面内におけるDIの標準偏差をさらに一層低減することができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼1〜12を真空溶解炉で溶解した後、インゴットに鋳造した。鋼1〜6は、個々の成分元素の含有量およびDIが本発明で規定する範囲内にある鋼であり、一方、鋼7〜12は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた鋼である。
Figure 0005365477
なお、鋼1、鋼5、鋼7〜9、鋼11および鋼12は50kg真空溶解炉で溶解し、50kg鋳型に鋳造して50kgインゴットを作製した。鋼2および鋼4は100kg真空溶解炉で溶解し、100kg鋳型に鋳造して100kgインゴットを作製した。また、鋼3は150kg真空溶解炉で溶解し、150kg鋳型に鋳造して150kgインゴットを作製した。さらに、鋼6および鋼10は200kg真空溶解炉で溶解し、50kg鋳型と150kg鋳型に分けて鋳造して、50kgインゴットと150kgインゴットを作製した。なお、いずれの場合も鋳鉄鋳型を用いて鋳造した。
インゴットの平均直径は、150kgインゴットが220mm、100kgインゴットが180mm、50kgインゴットが150mmである。ここで、インゴットのサイズを変化させたのは、鋳込みの冷却速度を種々変化させるためである。
上記のようにして得たインゴットのうちで、鋼1〜7および鋼1〜12のインゴットはいずれも3分割してから、また、鋼8および鋼9のインゴットは鋳造ままで分割することなく、以下に述べる各試験に供した。
(実施例1)
鋼1〜5および鋼7については、各3分割したうちの1つのインゴットを用いて、また、鋼6については、150kgインゴットを3分割したうちの1つのインゴットを用いて、さらに、鋼8および鋼9については、鋳造ままのインゴットを用いて、いずれも、1250℃で5時間保持してから熱間鍛造して直径30mmの丸棒を作製した。
このようにして得た直径30mmの丸棒は、925℃で60分間焼きならしした後、常温まで空冷した。
次いで、上記の熱処理を施した直径30mmの各丸棒の中心部から図1に示す形状の4点曲げ疲労試験片を加工し、この試験片に対して図2に示すヒートパターンによる「浸炭焼入れ−焼戻し」を施した。
なお、図1における上記4点曲げ疲労試験片の寸法の単位は「mm」である。また、図2中の「Cp」はカーボンポテンシャルを表し、「O.Q.(150℃)」は150℃の油中に焼入れしたことを示す。
上記の「浸炭焼入れ−焼戻し」を施した各試験片に、サーボ型疲労試験機を用いて、種々のレベルの応力をかけて低サイクル曲げ疲労試験(4点曲げ疲労試験)を行い、1000回疲労強度を測定した。なお、1000回疲労強度で1100MPa以上が確保されていれば、低サイクル曲げ疲労特性は良好であると評価した。
表2に、上記のようにして測定した1000回疲労強度を示す。
Figure 0005365477
表2から、個々の成分元素の含有量およびDIが本発明で規定する範囲内にある鋼1〜6を用いた試験番号1〜6の場合、1100MPaを超える1000回疲労強度が得られており、低サイクル曲げ疲労特性が良好であることがわかる。
これに対して、化学組成が本発明で規定する条件から外れた鋼7〜9を用いた試験番号7〜9の場合、1000回疲労強度が目標とする1100MPaに達しておらず、低サイクル曲げ疲労特性に劣っている。
(実施例2)
前記(実施例1)で用いた残りのインゴット、つまり、鋼1〜5および鋼7の各3分割したうちの残りのインゴット、鋼6の150kgインゴットを3分割したうちの残り2つのインゴットと50kgインゴットを3分割した全3つのインゴット、鋼10〜12の50kgインゴットを3分割した全3つのインゴットおよび鋼10の150kgインゴットを3分割した全3つのインゴットについて、1250℃で2〜8時間保持してから熱間鍛造して直径30mmの丸棒を作製した。
このようにして得た直径30mmの丸棒はいずれも、925℃で60分間焼きならしした後、常温まで空冷した。
次いで、上記の熱処理を施した直径30mmの各丸棒および前述の(実施例1)において上記と同じ熱処理を施した各丸棒について、直径2mmのドリルを用いて、中心部、表面と中心の中間部位8箇所、表面から3mmの部位12箇所の合計21箇所の横断面の各部位から化学成分分析のためのサンプル(切り粉)を採取して成分分析を行い、その結果に基づいて、横断面内におけるDIの標準偏差を算出した。さらに、上記各丸棒の中心部から図3に示す形状の熱処理歪用試験片を加工し、この試験片について、図2に示すヒートパターンによる「浸炭焼入れ−焼戻し」を施す前後で、190mmの間隔を設けた2つのVブロック上に載せて回転させ、二等分位置の変位を測定して熱処理歪を調査した。なお、変位が0.10mm以下である場合に、熱処理歪は小さく良好であると評価した。
表3に、上記の各調査結果を、鋳造したインゴットの質量および1250℃での保持時間とともに示す。
Figure 0005365477
表3から、試験番号10〜27、試験番号29および試験番号30の場合、用いた鋼1〜6の個々の成分元素の含有量およびDIが本発明で規定する範囲内にあり、しかも鋼材の横断面内におけるDIの標準偏差も本発明で規定する条件を満たすため、「浸炭焼入れ−焼戻し」を施す前後での変位量は0.10mm以下であって、熱処理歪は小さいことが明らかである。
これに対して、試験番号28の場合、用いた鋼6の個々の成分元素の含有量およびDIは本発明で規定する範囲内にあるものの、鋼材の横断面内におけるDIの標準偏差が0.28で本発明で規定する条件から外れるため、「浸炭焼入れ−焼戻し」を施す前後での変位量は目標とする0.10mmを大きく超える0.18mmであって、熱処理歪が大きくなっている。
また、試験番号34〜39の場合は、用いた鋼10の個々の成分元素の含有量は本発明で規定する範囲内にあるものの、DIが本発明で規定する条件から外れるため、「浸炭焼入れ−焼戻し」を施す前後での変位量は目標とする0.10mmを超える0.12〜0.21mmであって、熱処理歪が大きくなっている。上記のうちでも試験番号34〜38の場合は、鋼材の横断面内におけるDIの標準偏差が本発明で規定する条件から外れているため、「浸炭焼入れ−焼戻し」を施す前後での変位量は、鋼材の横断面内におけるDIの標準偏差が本発明で規定する条件を満たす試験番号39の場合の0.24mmに比べて大きい。
試験番号40〜42の場合、用いた鋼11のCr含有量が本発明で規定する条件から外れ、また、試験番号43〜45の場合、用いた鋼12のC含有量が本発明で規定する条件から外れ、さらに、いずれの場合も鋼材の横断面内におけるDIの標準偏差が本発明で規定する条件から外れているため、「浸炭焼入れ−焼戻し」を施す前後での変位量は目標とする0.10mmを大きく超える0.17〜0.24mmであって、熱処理歪が大きくなっている。
なお、試験番号31〜33の場合は、「浸炭焼入れ−焼戻し」を施す前後での変位量は0.10mm以下であって、熱処理歪は小さいが、用いた鋼7のCr含有量とDIが本発明で規定する条件から外れているので、前記(実施例1)で述べたように、1000回疲労強度が目標とする1100MPaに達しておらず、低サイクル曲げ疲労特性に劣っていた。
本発明の表面硬化処理用鋼材は、浸炭処理、浸炭窒化処理など表面処理を施した後の焼入れにおいて生じる熱処理歪を十分低減することができるので、寸法精度の高い「高強度表面硬化部品」の素材として好適である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.35%以下、Mn:0.15〜1.5%、P:0.04%以下、S:0.001〜0.07%、Cr:1.5〜3.0%、Al:0.02〜0.05%、N:0.0035〜0.0100%、Ti:0.005〜0.10%およびB:0.0005〜0.0050%を含有し、下記の(1)式で表されるDIの範囲が4.1〜20.0、かつ、横断面内におけるDIの標準偏差が0.25以下であって、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有することを特徴とする表面硬化処理用鋼材。
    DI=0.311×C0.5×(1+0.64×Si)×(1+4.10×Mn)×(1+2.83×P)×(1−0.62×S)×(1+2.33×Cr)×(1+3.14×Mo)×{1+1.5×(0.90−C)}・・・(1)
    ただし、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での含有量を表す。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.07%以下およびV:0.08%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の表面硬化処理用鋼材。
  3. Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.50%以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の表面硬化処理用鋼材。
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