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JP4328924B2 - 高強度軸部品の製造方法 - Google Patents

高強度軸部品の製造方法 Download PDF

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JP4328924B2 JP2000005074A JP2000005074A JP4328924B2 JP 4328924 B2 JP4328924 B2 JP 4328924B2 JP 2000005074 A JP2000005074 A JP 2000005074A JP 2000005074 A JP2000005074 A JP 2000005074A JP 4328924 B2 JP4328924 B2 JP 4328924B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高強度軸部品の製造方法に関し、詳しくは、シャフトなどの小物長尺高強度軸部品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
機械構造用部品として用いられるシャフトなどの高強度軸部品は、従来、JISの機械構造用中炭素鋼鋼材(S45CやS48Cなど)を熱間圧延後に球状化焼鈍し、次いで、寸法精度を高めるために伸線加工した後冷間鍛造して所定の形状に成形加工し、その後、部品によっては、焼入れ・焼戻しの所謂「調質処理」を行い、更に、高周波焼入れと必要に応じて焼戻しを行うことによって所望の強度、靱性や軸部における表面硬さを確保させている。しかし、この従来法の場合には、熱間圧延後の球状化焼鈍や調質処理のための熱処理コストが嵩む。更に、調質処理時に歪みが発生することが多いので、歪みを矯正する必要も生ずる。このため産業界には、球状化焼鈍や調質処理を省略したり、歪み矯正作業の省略を行って高強度軸部品の製造コストを低減したいとする要望が大きい。
【0003】
こうした要望に対して、球状化焼鈍、冷間鍛造後の調質処理及び調質処理後の歪み矯正作業を省略できる技術が、例えば、特開平7−54041号公報に提案されている。
【0004】
すなわち、特開平7−54041号公報には、最終鋼部品の延性・靱性を高めるために、鋼のC含有量の上限を0.25重量%に抑え、これに特定の条件で熱間圧延とその後の冷却を施してから冷間引き抜き加工を行い、更に、冷間鍛造と機械加工を施して製造した最終部品に対して、焼入れ・焼戻しの調質処理を施したJIS規格のS45Cと同等の強度を付与する技術が開示されている。しかし、この公報で提案された鋼はC含有量が低いので、高周波焼入れを施す部品に対しては、所望の表面硬さ及び硬化層の深さを確保できない。
【0005】
したがって、高周波焼入れで所望の表面硬さと硬化層の深さとを確保させたい場合には、C含有量の高い中炭素鋼鋼材を用いる必要があるが、この場合、熱間圧延後に球状化焼鈍処理を行っても変形抵抗が高いので冷間鍛造の工具寿命が短く、又、変形能が低いので冷間鍛造された部品に割れが生ずる場合もあった。
【0006】
このような問題に対し、特公平1−38847号公報及び特公平2−47536号公報には、冷間鍛造性を向上させるためにSiとMnの含有量を低く抑え、C、B、Ti、更に、必要に応じてCrを含有させて高周波焼入れ性の確保もできる冷間鍛造用鋼が開示されている。しかし、上記の各公報で提案された鋼は、その実施例における記載からも明らかなように、従来球状化焼鈍されていた中炭素鋼と同等以上の冷間鍛造性を得るためには、冷間鍛造前に球状化焼鈍を施す必要があるし、最終部品の強度確保のためには調質処理を施す必要もあるので、コストが嵩んでしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みなされたもので、熱間圧延後の球状化焼鈍、焼入れ・焼戻しの調質処理及び調質処理に起因する歪みの矯正作業を省略した高強度軸部品、なかでも軸部の硬さがロックウェルB硬さで95以上の高強度軸部品の製造方法を提供することを目的とする。具体的には、同等のC含有量のJIS機械構造用中炭素鋼を用いて従来法で軸部の硬さがロックウェルB硬さで95以上の高強度軸部品を製造する場合と同等の状況を、熱間圧延後の球状化焼鈍、焼入れ・焼戻しの調質処理及び調質処理に起因する歪みの矯正作業を省略した製造法で確保することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記に示す高強度軸部品の製造方法にある。
【0009】
すなわち、「質量%で、C:0.40〜0.60%、Mn:0.10〜0.40%、Nb:0.005〜0.05%、Al:0.015〜0.10%、B:0.0005〜0.005%、Si:0〜0.40%、Ti:0.005〜0.05%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のPは0.015%以下、Sは0.015%以下、Cuは0.10%以下、Niは0.10%以下、Crは0.15%以下、Moは0.10%以下、Nは0.0050%以下、O(酸素)は0.005%以下の化学組成を有する鋼片を、1000〜1250℃に加熱して、圧延仕上げ温度が1000〜800℃となるように熱間圧延し、熱間圧延終了後は少なくとも500℃までを0.5〜5℃/秒の冷却速度で冷却し、次いで、総減面率が25〜50%となる伸線加工を施し、更に、冷間加工して所定の形状に成形し、その後高周波焼入れすることを特徴とする高強度軸部品の製造方法。」である。
【0010】
なお、本発明でいう「圧延仕上げ温度」とは、圧延が仕上がった際の被圧延材の温度を指す。又、伸線加工における総減面率とは、伸線加工前の断面積をA0、最終伸線加工後の断面積をA1として(A0−A1)/A0 で表されるものをいい、これを100倍すれば%表示になる。
【0011】
本発明者らは、前記した課題を解決するために高強度軸部品の製造方法について、種々の調査・検討を行った。その結果、下記の知見を得た。
【0012】
▲1▼Mnの含有量を低く抑えるとともにSiの含有量をも低く抑え、更に適正量のNb、Alを含んでいる中炭素鋼を冷間鍛造など冷間加工する際の変形抵抗は、熱間圧延のための加熱温度、熱間圧延の仕上げ温度、圧延終了後の冷却条件、その後の伸線加工における総減面率によって変化する。したがって、上記の各種条件を適正に管理すれば、前記の鋼を冷間加工する際の変形抵抗を低くすることができ、球状化焼鈍を省略しても、同等のC含有量のJIS機械構造用中炭素鋼を球状化焼鈍した場合と同等以上の変形能を確保することができる。
▲2▼上記▲1▼のMnの含有量を低く抑えるとともにSiの含有量をも低く抑え、更に適正量のNb、Alを含んでいる中炭素鋼は、伸線加工における総減面率を従来レベルの20%程度より大きくすることで、所望の硬さを確保することが可能である。なお、伸線加工における総減面率を大きくした場合でも、伸線加工前の硬さが低い場合には、伸線加工時に所謂「シェブロンクラック」などの欠陥が発生することはない。
【0013】
▲3▼中炭素鋼をベースに適正量のBを含有させた鋼の高周波焼入れ性は、同等C量のJIS機械構造用炭素鋼の高周波焼入れ性と同等以上である。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)鋼の化学組成
C:0.40〜0.60%
Cは、高周波焼入れ性に影響を及ぼす元素で、焼入れ硬化層の硬さ及び深さを確保してシャフトなど高強度軸部品に所望の機械的性質を付与するのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.40%未満では添加効果に乏しい。一方、0.60%を超えて含有させると、圧延条件、冷却条件及び伸線加工条件を適正化しても充分に軟化せずに冷間加工性が劣化したり、靭性の劣化や焼割れの発生を招くことがある。したがって、Cの含有量を0.40〜0.60%とした。
【0015】
Mn:0.10〜0.40
Mnは、鋼中のSを固定して熱間加工性を高めるとともに強度(硬さ)を確保するために有効な元素で、0.10%以上含有させることが必要である。一方、Mnの含有量が高くなると、変形抵抗が大きくなって冷間加工性の劣化をきたす。したがって、Mnの含有量を0.10〜0.40%とした。
【0016】
Nb:0.005〜0.05%
Nbは、冷間加工性を大きく阻害することなく良好な高周波焼入れ性を確保するのに有効な元素である。更に、高周波焼入れ時の結晶粒の粗大化防止にも有効である。しかし、その含有量が0.005%未満では所望の効果が得られない。一方、0.05%を超えると、変形抵抗を増加させることが避けられず、又、粗大な未固溶炭窒化物が残留して冷間加工性の劣化を招くことがある。したがって、Nbの含有量を0.005〜0.05%とした。なお、Nb含有量の上限は0.03%とすることが好ましく、0.02%とすれば一層好ましい。更に好ましいNb含有量の上限は0.015%である。
【0017】
Al:0.015〜0.10%
Alは、脱酸作用を有する。更に、窒化物を生成して鋼中のNを固定するので、冷間鍛造など冷間加工時の加工硬化を抑制する作用がある。又、鋼中Nの固定によってBの高周波焼入れ性向上効果を確保するのにも有効である。しかし、その含有量が0.015%未満では上記の効果が確実には得られない。一方、0.10%を超えて含有させると、冷間加工時に鋼の変形能が低下する。したがって、Alの含有量を0.015〜0.10%とした。なお、Bの高周波焼入れ性向上効果の確保のために、Al含有量は0.03%以上とすることが好ましく、0.05%を超えて含有させれば一層好ましい。
【0018】
B:0.0005〜0.005%
Bは、冷間加工性を阻害することなく良好な高周波焼入れ性を確保するのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.0005%未満では添加効果に乏しい。一方、0.005%を超えて含有させるとその効果が飽和するばかりか、粒界脆化を招く場合がある。したがって、Bの含有量を0.0005〜0.005%とした。
【0019】
Si:0〜0.40%
Siは添加しなくてもよい。添加すれば、鋼の脱酸の安定化及び強度(硬さ)を高める効果がある。この効果を確実に得るには、Siは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。又、Siが添加された鋼は、熱間加工のための加熱中に低融点酸化物であるファイアライト(Fe2SiO4)を生成するので、その融点(1173℃)以上に加熱すれば、脱スケール性が極めて良好になる。この効果は、特に、Siの含有量が0.15%を超えた場合に大きい。しかし、その含有量が、0.40%を超えると冷間加工時の変形抵抗が大きくなって冷間加工性の低下を招く。したがって、Siの含有量を0〜0.40%とした。
【0020】
Ti:0.005〜0.05%
Tiは、窒化物や炭窒化物を生成して鋼中のNを固定する効果を有する。この効果を確実に得るために、Tiは0.005%以上の含有量とする。しかし、その含有量が0.05%を超えると、変形抵抗を増加させることが避けられず、又、粗大な窒化物や炭窒化物が残留して冷間加工性の劣化、疲労強度の劣化を招くことがある。したがって、Tiの含有量を0.005〜0.05%とした。なお、Ti含有量の上限は0.03%とすることが好ましく、0.02%とすれば一層好ましい。更に好ましいTi含有量の上限は0.015%である。
【0021】
本発明においては、不純物元素としてのP、S、Cu、Ni、Cr、Mo、N及びO(酸素)を下記のとおりに制限する。
【0022】
P:0.015%以下
Pは、冷間加工時の変形能を低下させてしまう。特に、Pの含有量が0.015%を超えると、冷間加工時の変形能の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのPの含有量を0.015%以下とした。
【0023】
S:0.015%以下
Sも冷間加工時の変形能を低下させてしまう。特に、Sの含有量が0.015%を超えると、冷間加工時の変形能の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのSの含有量を0.015%以下とした。
【0024】
Cu:0.10%以下
Cuは変形抵抗を高めて冷間加工性を劣化させてしまう。特に、Cuの含有量が0.10%を超えると、冷間加工性の劣化が著しくなる。したがって、不純物元素としてのCuの含有量を0.10%以下とした。なお、Cu含有量は0.05%以下に規制することが好ましい。
【0025】
Ni:0.10%以下
Niは変形抵抗を高めて冷間加工性を劣化させてしまう。特に、Niの含有量が0.10%を超えると、冷間加工性の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのNi含有量を0.10%以下とした。なお、Ni含有量は0.05%以下に規制することが好ましい。
【0026】
Cr:0.15%以下
Crも変形抵抗を高めて冷間加工性を劣化させてしまう。特に、Crの含有量が0.15%を超えると、冷間加工性の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのCr含有量を0.15%以下とした。なお、Cr含有量は0.10%以下に規制することが好ましい。
【0027】
Mo:0.10%以下
Moは変形抵抗を高めて冷間加工性を劣化させてしまう。特に、Moの含有量が0.10%を超えると、冷間加工性の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのMo含有量を0.10%以下とした。なお、Mo含有量は0.05%以下に規制することが好ましい。
【0028】
N:0.0050%以下
Nは、変形抵抗を高めて冷間加工性を劣化させてしまう。更に、容易にBと結びついてBNを形成するので、Bの高周波焼入れ性向上効果が確保できなくなる。特に、Nの含有量が0.0050%を超えると、冷間加工性の低下が著しくなるとともにBの高周波焼入れ性向上効果が得難くなる。したがって、不純物元素としてのN含有量を0.0050%以下とした。なお、N含有量は0.0040%以下に規制することが好ましく、0.0030%以下とすれば一層好ましい。
【0029】
O(酸素):0.005%以下
Oは、酸化物を形成して冷間加工時の変形能を低下させてしまう。特に、Oの含有量が0.005%を超えると、冷間加工時の変形能の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのOの含有量を0.005%以下とした。
(B)熱間圧延と冷却
(B−1)熱間圧延前の加熱温度
冷間鍛造など冷間加工する際の変形抵抗を下げるとともに、均質な組織を得るためには、加熱温度は1000℃以上にする必要がある。しかし、加熱温度が1250℃を超えると燃料コストが嵩む。更に、スケール発生も多くなって歩留りの低下が生じ、生産効率が低下する。したがって上記(A)に記載した化学組成を有する鋼片の熱間圧延前の加熱温度を1000〜1250℃とした。
【0030】
(B−2)圧延仕上げ温度
冷間鍛造など冷間加工する際の変形抵抗を下げるとともに、鋼材に良好な延性と靱性を確保させ、更に良好な伸線加工性を付与するためには、熱間圧延仕上げ温度を1000〜800℃にする必要がある。圧延仕上げ温度が1000℃を超えると、再結晶オーステナイト結晶粒が粗大となり、その後の冷却条件を制御しても微細なフェライト・パーライト組織になり難く、伸線加工時に断線が発生する場合があるし、冷間鍛造など冷間加工時の変形抵抗も大きくなってしまう。一方、圧延仕上げ温度が800℃を下回ると、延性と靱性の低下が大きくなるし、冷間鍛造など冷間加工時の変形抵抗も大きくなってしまう。したがって、熱間圧延仕上げ温度を1000〜800℃とした。
【0031】
(B−3)圧延後の冷却条件
冷間鍛造など冷間加工する際の変形抵抗を下げるためには、熱間圧延終了後、少なくとも500℃までを0.5〜5℃/秒の冷却速度で冷却する必要がある。
【0032】
これは、圧延仕上げ後、上記の条件で冷却することによって、微細なフェライト・パーライト組織が得られ、伸線加工性が高まるとともに冷間加工する際の変形抵抗が下がるためである。冷却速度が0.5℃/秒を下回ると、微細なフェライト、パーライト組織が得難く、伸線加工時に断線が発生する場合があるし、冷間鍛造など冷間加工時の変形抵抗も大きくなってしまう。更に、脱炭深さや生成するスケールの厚みも大きくなってしまう。一方、冷却速度が5℃/秒を超えると、マルテンサイトやベイナイトといった低温変態生成物が生成するので、強度が上昇し、冷間加工する際の変形抵抗が大きくなる。熱間圧延終了後、0.5〜5℃/秒の冷却速度で行う冷却の停止温度が500℃を超える場合には、微細なフェライト、パーライト組織が得難く、伸線加工時に断線が発生する場合があるし、冷間鍛造など冷間加工時の変形抵抗も大きくなってしまう。
【0033】
したがって、熱間圧延した後、少なくとも500℃までを0.5〜5℃/秒の冷却速度で冷却することとした。上記の0.5〜5℃/秒の冷却速度での冷却は常温まで行ってもよい。但し、生産性を高めるためには、500℃まで、望ましくは450℃までを0.5〜5℃/秒の冷却速度で冷却し、以後は急冷するのがよい。
(C)伸線加工
前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼片に上記(B)項に記載の熱間圧延と冷却を行っただけでは強度(硬さ)が低い。このため、焼入れ・焼戻しの調質処理を省略すると、従来調質処理が施されていた高強度軸部品、なかでも軸部の硬さがロックウェルB硬さで95以上の高強度軸部品として用いることはできない。したがって、本発明においては、前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼片に上記(B)項に記載の熱間圧延と冷却を行い、次いで、総減面率が25〜50%となる伸線加工を施して、所望のロックウェルB硬さで95以上の軸部硬さを確保させる。
【0034】
伸線加工の総減面率が25%を下回る場合には、伸線加工後の強度上昇は不十分で、所望のロックウェルB硬さで95以上の硬さが得られない場合がある。一方、伸線加工の総減面率が50%を超える場合には、被加工材の内部にクラックが生成することがある。したがって、総減面率が25〜50%となる伸線加工を施すこととした。この伸線加工の総減面率が35%を超える場合には、ロックウェルB硬さで95以上の硬さが極めて安定して得られる。なお、伸線加工における総減面率とは、伸線加工前の断面積をA0、最終伸線加工後の断面積をA1として(A0−A1)/A0 で表されるものをいい、これを100倍すれば%表示になることは既に述べたとおりである。この「伸線加工」は、通常行われるように冷間で行うのがよい。なお、500℃未満の温度であれば温間で行ってもよいが。温間で伸線加工する場合は、潤滑性能の面から200℃以下の温度で行うことが好ましい。
(D)冷間加工
(B)項に記載の熱間圧延と冷却を施され、次いで、(C)項に記載の伸線加工をうけた前記(A)項に記載の化学組成を有する鋼材は、更に冷間鍛造などの冷間加工を受けてシャフトなど所定の形状の高強度軸部品に成形される。本発明の場合、総減面率が25〜50%の伸線加工を施すため、伸線加工後の硬さは高いものの、圧縮加工での変形抵抗、変形能は伸線加工前の素材と同程度である。このため、冷間加工の方法は特に規定されるものではなく、通常の方法で行えばよい。
(E)高周波焼入れ
前記(A)に記載の化学組成を有し、熱間圧延、冷却、伸線加工を受け、冷間加工されて所定の形状に成形された鋼材は、その部品の仕様に応じて全面、もしくは局部的に高周波焼入れ、あるいは、必要に応じて高周波焼入れ後に焼戻しが施されて、所望の機械的性質を有する機械構造用部品に仕上げられる。この高周波焼入れの方法は特に規定されるものではなく、通常の方法で行えばよい。
【0035】
本発明の製造方法が対象とする(A)項に記載の化学組成を有する鋼材を通常の方法で高周波焼入れすれば、JIS機械構造用炭素鋼を高周波焼入れしていた従来の製造方法による場合と同等の硬化深さが得られる。
【0036】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0037】
【実施例】
(実施例1)
表1、表2に示す化学組成を有する鋼を通常の方法によって試験炉を用いて溶製した。表1における鋼A及び鋼C〜Iは化学組成が本発明で規定する範囲内にある本発明例、表2における鋼a〜rは成分のいずれかが本発明で規定する含有量の範囲から外れた比較例である。比較例の鋼のうち鋼p、鋼q及び鋼rはそれぞれJIS規格のS40C、S50C及びS58Cに相当する鋼である。
【0038】
【表1】
Figure 0004328924
【0039】
【表2】
Figure 0004328924
【0040】
次いで、これらの鋼を通常の方法によって鋼片にした後、1200℃に加熱して直径18mmの丸棒に熱間圧延し、熱間圧延終了後は各種の条件で冷却した。冷却後、通常の方法で総減面率が27%と48%の伸線加工も行った。
【0041】
上記のようにして得られた直径18mmの圧延ままの丸棒、及び伸線加工した丸棒から、直径が10mmで長さが15mmの冷間加工用試験片を作製し、500t高速プレス機による通常の方法で冷間(室温)拘束型据え込み試験を行い、割れが発生する限界の据え込み率を測定した。なお、据え込み率が75%まで、各条件ごとに5回の据え込み試験を行い、5個の試験片のうち3個以上に割れが発生する最小の加工率(据え込み率)を限界据え込み率として評価した。据え込み率75%で3個以上割れを生じないものは、そこで試験を終了した。
【0042】
上記の直径が10mmで長さが15mmの冷間加工用試験片を用いてロックウェルB硬さの測定も行った。
【0043】
更に、すべての鋼種の限界据え込み率以下である60%の据え込み率(最も大きな加工が加わる試験片中心部における相当歪は1.5)の場合の変形抵抗を測定した。なお、相当歪みとはε1 、ε2 、ε3 を主方向の対数歪みとして下記の式で表されるものである。
ε={(ε1 2+ε2 2+ε3 2)×2/3}1/2
表3〜5に、圧延仕上げ温度、圧延終了後の冷却条件の詳細を示す。この表3〜5には上記の各試験結果も併せて示した。
【0044】
【表3】
Figure 0004328924
【0045】
【表4】
Figure 0004328924
【0046】
【表5】
Figure 0004328924
【0047】
更に、前記の直径18mmの圧延材から直径が17.5mmで長さ50mmの試験片を採取し、これに周波数20kHzで高周波焼入れを行った後、通常の方法によって表面硬さとHvで400となる硬化深さ(つまり、焼入れ硬化層の深さ)tを測定した。次いで、電気炉を用いて150℃で30分の焼戻しを行い、通常の方法によって高周波焼入れ後の硬化部を測定した。
【0048】
表6に上記の試験結果を示す。
【0049】
【表6】
Figure 0004328924
【0050】
表3及び表6から、化学組成が本発明で規定する範囲内にある本発明例の鋼A及び鋼C〜Iを素材鋼とする場合は、圧延のまま、つまり伸線加工の総減面率0%の状態で、硬さと圧縮加工(据え込み加工)での変形抵抗が低く、75%以上の大きな限界据え込み率を有していることがわかる。又、上記の圧延ままの丸棒を総減面率25%又は48%で伸線加工を行っても、圧縮加工での変形抵抗と限界据え込み率は圧延ままの場合と同程度であり、硬さのみ上昇して、ロックウェルB硬さで95以上の硬さを確保できることが明らかである。更に、同等のC含有量のJIS機械構造用炭素鋼(JIS規格のS40C、S50C及びS58C)に相当する鋼p、鋼q及び鋼rを素材鋼とする場合と同等の高周波焼入れ性を有している。
【0051】
これに対して比較例の鋼を素材鋼とする場合には、表4〜6から、(イ)圧延のままの状態で硬さと変形抵抗が高く、限界据え込み率も低いので、総減面率が25%の伸線加工を施すと、変形抵抗は高いままで、限界据え込み率も低いままである。更に、総減面率が48%の伸線加工を施すと断線が発生する。(ロ)高周波焼入れした時の硬化深さtが、同等のC含有量のJIS機械構造用炭素鋼(JIS規格のS40C、S50C及びS58C)に相当する鋼p、鋼q及び鋼rを素材鋼とする場合以下である、のいずれかに該当する。
(実施例2)
実施例1で得た鋼D及び鋼Fの総減面率27%で伸線加工した丸棒と、鋼p〜rの直径18mmの圧延ままの丸棒を用いて、実部品の製造を想定した試験を行い、最終形状における曲がり量の測定を実施した。
【0052】
すなわち、鋼D及び鋼Fの総減面率27%で伸線加工した丸棒については、伸線加工したままの状態で、通常の方法によって冷間加工としての前方押し出し加工を行い、直径15.4mmで長さが120mmの軸形状にし、その後ダイアルゲージで曲がり量を測定した。
比較例として、鋼p〜rの直径18mmの圧延ままの丸棒には、745℃で4時間保持した後、毎時15℃の冷却速度で冷却する球状化焼鈍を施し、次いで、通常の方法で総減面率が27%の伸線加工を行い、更に、冷間加工としての前方押し出し加工を行って上記と同じ直径15.4mmで長さが120mmの軸形状にし、この後、860℃に加熱してから油焼入れし、更に200℃で焼戻しを行ってからダイアルゲージで曲がり量を測定した。なお上記の製造方法は、JISの機械構造用中炭素鋼鋼材を素材とした高強度軸部品の従来の製造法である。
表7に、上記の試験結果を示す。
【0053】
【表7】
Figure 0004328924
【0054】
表7から、JIS規格のS40C、S50C及びS58Cに相当する鋼である鋼p、鋼q及び鋼rを用いて、比較例の方法によって製造した場合、つまり、従来の調質処理によって製造した場合には曲がり量が大きいのに対して、本発明の方法によれば、最終部品の曲がり量は小さく、したがって、歪みの矯正作業を省略して高強度軸部品を製造できることが明らかである。
【0055】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、同等のC含有量のJIS機械構造用炭素鋼を用いて従来法で軸部の硬さがロックウェルB硬さで95以上の高強度軸部品を製造する場合と同等の状況を、熱間圧延後の球状化焼鈍、焼入れ・焼戻しの調質処理及び調質処理に起因する歪みの矯正作業を省略した製造法で確保することができ、実用価値はきわめて大きい。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.40〜0.60%、Mn:0.10〜0.40%、Nb:0.005〜0.05%、Al:0.015〜0.10%、B:0.0005〜0.005%、Si:0〜0.40%、Ti:0.005〜0.05%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のPは0.015%以下、Sは0.015%以下、Cuは0.10%以下、Niは0.10%以下、Crは0.15%以下、Moは0.10%以下、Nは0.0050%以下、O(酸素)は0.005%以下の化学組成を有する鋼片を、1000〜1250℃に加熱して、圧延仕上げ温度が1000〜800℃となるように熱間圧延し、熱間圧延終了後は少なくとも500℃までを0.5〜5℃/秒の冷却速度で冷却し、次いで、総減面率が25〜50%となる伸線加工を施し、更に、冷間加工して所定の形状に成形し、その後高周波焼入れすることを特徴とする高強度軸部品の製造方法。
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