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JP5258458B2 - 耐高面圧性に優れた歯車 - Google Patents

耐高面圧性に優れた歯車 Download PDF

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Description

本発明は、自動車などの輸送機器や建設機械、その他の各種産業機械などにおいて、高面圧下で使用される歯車およびその製造方法に関するものである。
近年、環境保全の観点から、歯車は小型・軽量化することが要望されている。歯車を小型化すると歯への負荷が増大し、歯の曲げ強度や剥離強度を高める必要がある。歯の曲げ強度については工法技術の向上等により実用上問題にならない程度にまで向上している。一方、剥離強度については、歯の耐熱性を向上させる試みがなされている。すなわち、歯は摺動時の発熱によって軟化し剥離を起こすことから、歯の初期硬さや軟化抵抗性を高めることによって剥離寿命を向上させるというものである。具体的には、セメンタイトを析出させる高濃度浸炭処理や、窒化物を析出させる浸炭窒化処理があり、炭化物や窒化物の硬い性質や、熱分解し難い性質を利用している。
また特許文献1では、曲げ疲労特性を向上するとの目的でカーボンポテンシャルが0.9〜1.5%で高濃度浸炭し、所定の温度域で保持することによりセメンタイトを生成させ、浸炭部品の硬さを一定範囲内に確保している。
しかし、高濃度浸炭処理は処理時間が長く生産性に劣り、また浸炭窒化処理は専用の炉が必要でありコストアップを招くため、いずれも汎用性に欠けるものである。また特許文献1の方法による初期硬さの向上効果は、剥離寿命を向上させるためには十分とは言えない。
特開2007−308772号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は通常の浸炭処理によって剥離寿命の長い歯車を製造する方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る歯車の製造方法とは、C:0.15〜0.25%(質量%の意味。以下、化学成分組成について同じ。)、Si:0.50〜1.6%、Mn:0.3〜2%、P:0.02%以下(0%を含まない)、S:0.03%以下(0%を含まない)、Cr:0.5〜2%、Al:0.1%以下(0%を含まない)、N:0.03%以下(0%を含まない)を含有し、残部は鉄および不可避不純物である鋼で形成された歯車を、炭化物を生じることなく浸炭して表面C濃度を0.80%以上とし、焼入れ・焼戻しした後、アークハイト値が0.5mmA以上のショットピーニングをし、前記ショットピーニングにより、表面組織に占める割合で10面積%以上の残留オーステナイトを加工誘起マルテンサイト変態させたことを特徴とするものである。
本発明の製造方法に用いる鋼は、必要に応じてさらに(a)Mo:0.08〜0.8%、(b)B:0.0005〜0.005%、Nb:0.01〜0.1%、Ti:0.01〜0.1%よりなる群から選ばれる少なくとも一種以上、を含有していてもよい。
本発明には、上記成分組成を満たす鋼からなり、浸炭されている歯車であって、表面C濃度が0.80%以上であり、表面の炭化物が0面積%であるとともに、表面のビッカース硬さが880Hv以上である耐高面圧性に優れた歯車も包含される。
本発明に係る歯車の製造方法によれば、母材としてSi量の多い鋼を用い、炭化物の生成を避けつつ表面C濃度を0.80%以上となる様に浸炭し、増大する残留オーステナイトをアークハイト量が0.5mmA以上のショットピーニングで加工誘起変態させているため、歯車表面の荒れを防ぎながらそのビッカース硬さを880Hv以上とすることができ、従来よりも剥離寿命の長い歯車を提供することが可能である。
本発明者は、高濃度浸炭処理や浸炭窒化処理などの特別な熱処理を行うことなく、通常の浸炭処理の条件を最適化するだけで歯車の初期硬さを確保し、剥離寿命を向上させるべく鋭意研究を重ねた。その結果、炭化物を生じることなく浸炭して表面C濃度を0.80%以上に高くし、焼入れ・焼戻しした後、アークハイト値が0.5mmA以上のショットピーニングをすれば、C濃度の高い残留オーステナイトが所定量以上変態し、C濃度の高い加工誘起変態マルテンサイトとなるので、初期硬さが飛躍的に上昇することを見出した。また前記の所定以上のアークハイト量のショットピーニングは、一般鋼であるSCr420H等では歯先のダレ、歯面の粗さ上昇の原因となり、歯車の静粛性が欠如してしまう。そこで、本発明ではSi量が所定以上の鋼を用い、歯車の強度および0.2%耐力を高めることによって、歯車の静粛性を損なうことなく所定以上のアークハイト量のショットピーニングを適用することが可能となった。
まず、本発明の歯車に用いる鋼の成分組成について以下に説明する。
C:0.15〜0.25%
Cは歯車として必要な芯部硬さを確保する上で重要な元素である。C量が0.15%未満であると、芯部硬さが不足することにより、歯車としての静的強度が不足する。そこでC量を0.15%以上と定めた。C量は好ましくは0.17%以上であり、より好ましくは0.18%以上である。一方、C量が過剰になると、硬さが過度に高くなって鍛造性や被削性が低下する。そこでC量を0.25%以下と定めた。C量は好ましくは、0.22%以下であり、より好ましくは0.20%以下である。
Si:0.50〜1.6%
Siは固溶強化元素として強度向上に寄与し、0.2%耐力も向上させる。強度を向上させ、0.2%耐力を向上させることにより、所定以上のアークハイト量のショットピーニングを行った場合でも歯先のダレや歯面の荒れを抑制することができる。このような効果を発揮させるためSi量を0.50%以上と定めた。Si量は好ましくは0.6%以上である。一方、Si量が過剰になると被削性、冷間加工性および熱間加工性に悪影響を与える。そこでSi量を1.6%以下と定めた。Si量は好ましくは1.5%以下である。
Mn:0.3〜2%
Mnは脱酸剤として作用し、酸化物系介在物量を低減して鋼材の品質を高める作用を有する。また、焼入れ性を向上させ歯車の芯部硬さや硬化層深さを高め、歯車の強度を確保するのに有効な元素である。そこでMn量を0.3%以上と定めた。Mn量は好ましくは0.35%以上である。一方、Mn量が過剰になると縞状の偏析が顕著となり、材質のバラツキが大きくなる結果、冷間加工性に悪影響を与える。従ってMn量を2%以下と定めた。Mn量は好ましくは1.6%以下であり、より好ましくは1.0%以下(特に0.7%以下)である。
P:0.02%以下(0%を含まない)
Pは鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、結晶粒界に偏析して歯車の衝撃特性を低下させる元素である。そこでP量を0.02%以下と定めた。P量は好ましくは0.018%以下、より好ましくは0.015%以下(特に0.01%以下)である。
S:0.03%以下(0%を含まない)
Sは、Mnと結合してMnS系介在物を形成し、歯車の疲労強度、衝撃強度を低下させる元素であるため、できるだけ低減することが好ましい。従ってS量を0.03%以下と定めた。S量は好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.015%以下である。一方、Sは切削性を向上させる作用を有するため、積極的に0.005%程度含有させることも好ましい。
Cr:0.5〜2%
Crは焼入性を高め、歯車の芯部硬さや硬化層深さを高め、歯車の静的強度および疲労強度を確保する上で重要な元素である。こうした作用を発揮させるため、Cr量を0.5%以上と定めた。Cr量は好ましくは0.7%以上、より好ましくは1%以上である。一方、Cr量が過剰になると被削性および鍛造性の劣化を招く。そこでCr量を2%以下と定めた。Cr量は好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.2%以下である。
Al:0.1%以下(0%を含まない)
Alは脱酸剤として作用し、酸化物系介在物を低減して鋼材の内部品質を高める作用を有するため、0.01%程度(より好ましくは0.02%程度)含有させることが好ましい。一方、Al量が過剰になると粗大で硬いAl23が生成し、疲労特性を低下させる。そこでAl量を0.1%以下と定めた。Al量は好ましくは0.07%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。
N:0.03%以下(0%を含まない)
Nは鋼材に不可避的に含まれる元素であるが、NはTi等と結合してTiN介在物等を生成し、切削性や転動疲労強度を低下させるとともに、鋼材の硬さ、変形抵抗を増大させ鍛造性を低下させる。そこでN量を0.03%以下と定めた。N量は好ましくは0.02%以下であり、より好ましくは0.015%以下である。
本発明に用いる鋼の基本成分は上記の通りであり、残部は実質的に鉄である。但し、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不可避不純物(例えば、O、Cu、Ni、Sn、As、Sb、Ca、Mg等)が鋼中に含まれることは、当然に許容される。さらに本発明に用いる鋼は、必要に応じて、以下の任意元素を含有していても良い。
Mo:0.08〜0.8%
Moは鋼材の焼入れ性を向上させる作用を有し、さらに耐衝撃強度の向上に有効な元素である。こうした作用を発揮させるため、Mo量を0.08%以上と定めた。Mo量は好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.15%以上である。一方、Mo量が過剰になると母材の硬さが硬くなり被削性が低下する。また、Moは高価な元素であるためコストアップの原因ともなる。そこでMo量を0.8%以下と定めた。Mo量は好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.3%以下(特に0.25%以下)である。
B:0.0005〜0.005%、Nb:0.01〜0.1%、Ti:0.01〜0.1%よりなる群から選ばれる少なくとも一種以上
Bは微量で鋼材の焼入れ性を著しく向上させる作用を有し、さらに結晶粒界を強化して衝撃強度を高める作用を有する元素である。そこでB量を0.0005%以上と定めた。B量は好ましくは0.001%以上である。一方、B量が過剰になるとBN等のほう化物が析出し、疲労破壊の起点となって寿命を低下させる。そこでB量を0.005%以下と定めた。B量は好ましくは0.003%以下である。
NbおよびTiは窒化物や炭化物を形成し結晶粒の微細化に寄与する元素である。従ってNb量を0.01%以上、Ti量を0.01%以上とした。Nb量は好ましくは0.03%以上であり、Ti量は好ましくは0.03%以上である。一方、Nb量およびTiが過剰となると窒化物、炭化物等の介在物が増加し介在物が起点となって剥離し寿命を低下させる。そこでNb量を0.1%以下、Ti量を0.1%以下とした。Nb量は好ましくは0.09%以下、Ti量は好ましくは0.09%以下である。
本発明の歯車は、上記成分の鋼を必要に応じて調質など適宜熱処理した後、所定の歯車形状に加工し、炭化物を生成させることなく高C濃度で浸炭焼入れ・焼戻しし、所定以上のアークハイト量でショットピーニングすることによって製造する。この製造工程は、高C濃度浸炭と所定以上のアークハイト量のショットピーニングを組み合わせた点に第1の特徴を有し、高C濃度浸炭時に炭化物を生成させない条件を選択する点に第2の特徴を有する。炭化物の生成を防止しながら浸炭濃度を高くすることで、C濃度の高い残留オーステナイトを多量に生成できる。このC濃度の高い残留オーステナイトを所定以上のアークハイト量のショットピーニングで多量に加工誘起変態させることで、硬さの極めて高いマルテンサイトを多量に生成でき、歯面の初期硬さを著しく向上でき、耐高面圧性を高めることができる。以下、順を追ってより詳細に説明する。
(1)浸炭
浸炭では、炭化物を生じない範囲で、表面C濃度を0.80%以上にする。
炭化物が生成すると、炭化物が起点となって剥離が生じ、剥離寿命が低下するため、本発明では炭化物が生じないように浸炭することとした。浸炭時の炭化物の生成を防止するためには、表面C濃度を高くし過ぎないことが重要である。すなわち表面C濃度の上限は、事実上、炭化物の生成防止の観点から制限され、その値は鋼の成分組成により異なるが、状態図のAcm線を参照しつつ適宜設定できる。なお、前記炭化物とはセメンタイトを意味する。
表面C濃度を0.80%以上としたのは、第一にショットピーニングにより加工誘起マルテンサイト変態する残留オーステナイト量(以下、「変態残留オーステナイト量」と呼ぶ場合がある)を一定以上確保するためであり、第二に加工誘起変態マルテンサイト中のC濃度を高くして、マルテンサイト組織自体の硬さを向上させるためである。
表面C濃度が0.80%未満になって、焼入れ・焼戻し後の残留オーステナイト量が不足すると、ショットピーニングを行っても、途中まで加工誘起マルテンサイト変態が進行したところで残留オーステナイトが安定化してしまい、それ以上はマルテンサイト変態しない。したがって加工誘起マルテンサイト量が不足し、初期硬さを十分に上昇させることができない。表面C濃度を0.80%以上とすることで、加工誘起マルテンサイト量を確保できる。
また、表面C濃度が0.80%未満であると、所定量以上の残留オーステナイトを加工誘起マルテンサイト変態させたとしても、該マルテンサイト自体の硬さが低いため、十分な硬さを確保することができない。表面C濃度を0.80%以上にすることで、残留オーステナイト中のC濃度を高くでき、その結果、上述した様に、加工誘起マルテンサイト中のC濃度を高くすることができる。そして、加工誘起マルテンサイトの硬さは、該マルテンサイトのC濃度に比例して硬くなる。従って浸炭後の表面硬さを飛躍的に向上できる。
表面C濃度はより好ましくは0.88%以上、特に0.93%以上である。
本発明における浸炭は、ガス浸炭や真空浸炭などによって表面C濃度を適宜調整して行えばよい。本発明において、有効硬化層深さは、浸炭による効果を有効に発揮させるために、例えば0.7mm以上、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは0.9mm以上にすることが推奨される。一方、有効硬化層深さが、2.0mmを超えると、長時間の浸炭が必要となりコストアップを招く。従って、有効硬化層深さの上限は2.0mm程度とするのが好ましい。なお、有効硬化層深さとは、JIS G0557で定義されるものを意味し、歯車の表面のビッカース硬さを測定したときに、硬さが550Hv以上となる領域の厚みを指す。
浸炭焼入れ・焼戻しのヒートパターンは特に限定されず、通常の条件が採用できる。例えば上記浸炭焼入れの後、焼戻ししても良いし、浸炭の後歪みを考慮して所定温度まで降温してから直接焼入れ・焼戻ししてもよい。
(2)ショットピーニング
ショットピーニングは、アークハイト値が0.5mmA以上となるようにする。所定以上のアークハイト量のショットピーニングを行うことによって変態残留オーステナイト量を十分に確保することができ、その結果加工誘起変態マルテンサイト量が多量に生成し、歯車の初期硬さを向上させることができる。好ましいアークハイト値は0.50mmA以上である。アークハイト値の上限は特に限定されないが1.0mmA程度であってもよい。
加工誘起マルテンサイト量は、ショットピーニング前後の残留オーステナイト量(変態残留オーステナイト量)によって評価できる。変態残留オーステナイト量は、例えば10面積%以上、好ましくは12面積%以上、さらに好ましくは13面積%以上である。変態残留オーステナイト量の上限は、特に限定されないが、例えば25面積%以下、特に20面積%以下程度であってもよい。
上記のようにして製造される本発明の歯車は、上述したように表面C濃度が0.80%以上(より好ましくは0.88%以上、特に0.93%以上)であり、表面に炭化物が生じていない(具体的には表面の炭化物が0面積%)ものである。さらに、焼入れ・焼戻し後の残留オーステナイトを所定量以上加工誘起マルテンサイト変態させているため、表面のビッカース硬さが880HV以上(好ましくは890HV以上、特に900〜940HV)となっている。なお本発明において「表面」とは厳密には表層から深さ50μmの位置のことをいう。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1に示す化学組成の鋼を通常の溶製方法に従って溶解し、鋳造、分塊した後、熱間圧延し、その後φ32mmに熱間鍛造した。得られた棒状材を所定の形状に加工し、表2、3に示す表面C濃度となるように浸炭した(以下、浸炭後の試験片を「試験片a」と呼ぶ。)。浸炭温度は930℃、浸炭時間は240分である。その後、図1に示すように、油冷し(油温:50℃)、続いて170℃で120分の焼戻しを行った。
次いで、表2、3に示すアークハイト値でショットピーニングを行い(以下、ショットピーニング後の試験片を「試験片b」と呼ぶ。)、図2において「試験面」と表した部分の表層を10μm研磨、その他の部分を150μm研磨する仕上げ加工を施し、図2に示す形状および寸法の試験片(以下、「試験片c」と呼ぶ)を作成した。
Figure 0005258458
(1)ショットピーニング条件
ショット方式:空気式
ショット粒:直径:0.6〜0.8mm、硬さ:600〜800HV
(2)表面C濃度の測定
表面C濃度の測定は、前記熱間鍛造後の棒状材を、φ26.02mm×130mmの形状に加工した後、上記同様に浸炭焼入れ・焼戻しし、表面を10μm研磨した試験片を用いた。前記試験片の、表面〜深さ50μmと、表面からの深さが50〜100μmからそれぞれ切粉サンプルを採取し、CS600型炭素硫黄分析装置(LECO社製)によってC濃度を測定した。表面〜深さ50μmのC濃度と、表面からの深さが50〜100μmのC濃度の平均値を、表面C濃度とした。
(3)炭化物面積率の測定
炭化物面積率は、前記試験片cの長手方向の中央部を横断で切断し、表面から深さ50μmの位置を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した。任意の9μm×12μmの視野を、倍率8000倍で観察し、画像解析ソフトで炭化物の部分を識別し面積率を求めた。測定は3視野行い、それら3視野の算術平均を炭化物の面積率とした。
(4)残留オーステナイト量の測定
残留オーステナイト量の面積率は、ショットピーニング前(浸炭焼入れ焼き戻し後)と、ショットピーニング後の試験片についてそれぞれ測定した。ショットピーニング前の試験片については、前記試験片aの中央部を電解研磨によって表面から60μm研磨し、微小部X線測定装置(リガク製)を用いて、残留オーステナイトの面積率を測定した。ショットピーニング後の試験片の残留オーステナイト面積率については、前記試験片bの中央部を電解研磨によって表面から60μm研磨し、前記微小部X線測定装置を用いて測定した。ショットピーニング前、後ともに、測定は3箇所について行った。ショットピーニング前、後それぞれについて前記3箇所の測定値の算術平均を求め、それぞれショットピーニング前、後の残留オーステナイト量(面積率)とした。
(5)表面粗さの測定
表面粗さは、表面粗さ測定機(小坂研究所製、SE3300)を用い、前記試験片bの長手方向中央部を、軸芯に対して90°毎に4ヶ所測定し、それぞれ算術平均粗さを求めた。それら4箇所の算術平均粗さの平均値を表面平均粗さとした。表面平均粗さが2.0μm以下を合格とした。
(6)剥離寿命の測定
剥離寿命の測定は、前記試験片cを用い、二円筒試験機(コマツエンジニアリング製、RP201型)によって行った。試験条件は、面圧:3.0GPa、回転速度:1500rpm、相対すべり率:60%、油温:90℃で行った。寿命は、一般的な肌焼鋼であるSCr420Hの0.75%浸炭品(ショットピーニング無し)の寿命を1とした場合の寿命比で評価した。
結果を表2、3に示す。
Figure 0005258458
Figure 0005258458
No.1〜22は成分組成、表面C濃度、アークハイト値の全てにおいて本発明要件を満たしているため、残留オーステナイトの変態量を10面積%以上とすることができ、また炭化物面積率も本発明要件を満たすため、剥離寿命がSCr420Hの0.75%浸炭品(ショットピーニング無し)に対する寿命比(以下、単に「寿命比」と呼ぶ)で10倍以上となった例である。一方、No.23〜34は前記のいずれかの要件を満足しなかったため、寿命比の向上がNo.1〜22に比較して不十分だった例である。
No.23は、表面C濃度が少なかったため、浸炭焼入れ・焼戻し後の残留オーステナイト量(表2、3中、「ショットピーニング前の残留γ量」で表す)が少なく、残留オーステナイトの変態量を10面積%以上確保することができず、硬さが低かった例である。硬さが低いことによってショットピーニングによる凹凸を生じ、表面平均粗さが上昇したため、二円筒試験が行わなかった例である。
No.24、25は、表面C濃度が低かったため焼入れ・焼戻し後の残留オーステナイト量が少なく、変態残留オーステナイト量が確保できず、硬さが低いものとなり、寿命比の向上が不十分だった例である。
No.26、27は表面C濃度が高く、炭化物が生成してしまい炭化物を起点として剥離が発生したため、変態残留オーステナイト量、硬さ、および表面粗さを全て満足するにも関わらず、寿命比の向上が不十分だった例である。
No.28、29は、Si量が少なかったため表面粗さが上昇したため、二円筒試験を行わなかった例である。
No.30、31は、ショットピーニングのアークハイト値が低かったため、変態残留オーステナイト量が少なく、硬さが低いものとなり、寿命比の向上が不十分だった例である。
No.32、33はそれぞれ、JISのSCr420H、SCM420Hに相当する成分組成であるが、Si量が少ないため、ショットピーニングにより表面粗さが上昇し、二円筒試験が行わなかった例である。
No.34はJISのSCr420Hに相当する成分組成であるが、Si量が少なかったためショットピーニングによる表面粗さが上昇したとともに、表面C濃度が低かったため焼入れ・焼戻し後の残留オーステナイト量が少なく、変態残留オーステナイト量が確保できず、寿命比の向上が不十分だった例である。
実施例の欄の浸炭焼入れ・焼戻しのヒートパターンを示す概略図である。 二円筒試験に用いた試験片の形状を示す概略図である。

Claims (4)

  1. C :0.15〜0.25%(質量%の意味。以下、化学成分組成について同じ。)、
    Si:0.50〜1.6%、
    Mn:0.3〜2%、
    P :0.02%以下(0%を含まない)、
    S :0.03%以下(0%を含まない)、
    Cr:0.5〜2%、
    Al:0.1%以下(0%を含まない)、
    N :0.03%以下(0%を含まない)
    を含有し、残部は鉄および不可避不純物である鋼で形成された歯車を、
    炭化物を生じることなく浸炭して表面C濃度を0.80%以上とし、焼入れ・焼戻しした後、
    アークハイト値が0.5mmA以上のショットピーニングをし、
    前記ショットピーニングにより、表面組織に占める割合で10面積%以上の残留オーステナイトを加工誘起マルテンサイト変態させたことを特徴とする耐高面圧性に優れた歯車の製造方法。
  2. 前記鋼は、更に
    Mo:0.08〜0.8%を含有する請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記鋼は、更に
    B :0.0005〜0.005%、
    Nb:0.01〜0.1%、
    Ti:0.01〜0.1%
    よりなる群から選ばれる少なくとも一種以上を含有する請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の成分の鋼からなり、浸炭されている歯車であって、
    表面C濃度が0.80%以上であり、
    表面の炭化物が0面積%であるとともに、
    表面のビッカース硬さが880Hv以上であることを特徴とする耐高面圧性に優れた歯車。
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