JP5354912B2 - アルミニウム製熱交換器及びその製造方法 - Google Patents
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図3、図4に示すように、フィン材91とチューブ材92とを組み付けて加熱することにより、心材921の表面にクラッドされたろう材922が溶融し、それらがフィン材91とチューブ材92との間隙を充填したり、フィレット923を形成することにより、フィン材91とチューブ材92のろう付け接合が行われる。
この板状や針状の単体Siは、ろう材マトリックスより貴であるため、局部カソードとなり局部腐食を誘発する。図5(a)に示すように、フィレット923に局部腐食が発生した場合、図5(b)に示すように、チューブ92からフィン91が脱落する。そして、フィンの犠牲陽極効果が失われ、チューブに早期の貫通腐食が生じる。また、図6(a)に示すように、チューブ92平坦部のろう材922に局部腐食が発生した場合は、図6(b)に示すように、フィン91の犠牲陽極が十分に作用せず、チューブ92に早期の貫通腐食が生じる。
しかしながら、板状や針状の粗大な単体Siの生成を抑制するための効果は得られるが十分ではなかった。
このような問題は、上述のようなクラッド材よりなるチューブ材とフィン材とろう付け接合した場合のみに限らず、クラッド材よりなる板状のプレート材や、表面にろう材粉末や、ろう付け時にろう材を生成するフラックス等のろう材成分を塗布した押出形材からなるチューブ材又はプレート材とフィン材とをろう付け接合した場合にも同様に問題となる。
上記コア部は、Siを含有するろう材成分を用いて管状のチューブ材とベアフィン材とをろう付け接合することにより構成されており、
上記ベアフィン材は、Sr:0.01〜1.0%(質量%、以下同様)、Na:0.01〜0.02%、Sb:0.01〜1.0%のうち1種又は2種以上と、Si:0.1〜3.0%とを含有し、残部がAlと不可避的不純物からなることを特徴とするアルミニウム製熱交換器にある(請求項1)。
しかしながら、本発明者の多数の実験の結果、ろう付け加熱時にろう材成分に接するベアフィン材の一部が溶融することが判明した。そして、本発明では、このベアフィン材のろう付け時の溶融を積極的に利用し、ろう材成分組織の改良を実現したのである。
すなわち、上記ベアフィン材とチューブ材との間にSiを含有するろう材成分を介在させて行うろう付け加熱により、本発明の上記組成を有する上記ベアフィン材の一部が溶融し、その中のSr、Na、又はSbが、ベアフィン材の他の成分と共に溶融したろう材成分中へ溶け出す。
Siは、固溶するとともに、Siを生成し、ベアフィン材強度を向上させる。そのため、得られるコア部は、高い強度を有することができる。
このように、本発明によれば、耐食性、及び強度に優れたアルミニウム製熱交換器を得ることができる。
Sr:0.01〜1.0%(質量%、以下同様)、Na:0.01〜0.02%、Sb:0.01〜0.02%のうち1種又は2種以上と、Si:0.1〜3.0%とを含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるベアフィン材と、管状のチューブ材とをSiを含有するろう材成分を介在させて組み合わせた後、上記ろう材成分の融点(固相線温度)よりも高く、上記ベアフィン材の融点(固相線温度)よりも低い温度で加熱することにより上記チューブ材と上記ベアフィン材とをろう付け接合し、上記コア部を形成することを特徴とするアルミニウム製熱交換器の製造方法にある(請求項6)。
すなわち、本発明によれば、耐食性、及び強度に優れたアルミニウム製熱交換器を製造することができる。
上記チューブ材としては、成形時にチューブ形状(管状)とした押出形材、板状の素材を成形してチューブ形状としたもの等がある。
また、上記ろう材成分は、Sr、Na、Sbのうち1種または2種以上が含有されていることが好ましい。また、上記ろう材成分は、Sr、Na、Sbのうち、上記ベアフィン材が含有している元素と同じ元素を含有していることがより好ましい。
Srの含有量が0.001%未満である場合には、上述の効果が十分に得られない。一方、上記含有量が5.0%を超える場合には、ベアフィン材の製造が難しくなるおそれがある。そのため、Srの含有量は、0.01〜1.0%とする。
Naの含有量が0.001%未満である場合には、上述の効果が十分に得られない。一方、上記含有量が5.0%を超える場合には、ベアフィン材の製造が難しくなるおそれがある。そのため、Naの含有量は、0.01〜0.02%である。
Sbの含有量が0.001%未満である場合には、上述の効果が十分に得られない。一方、上記含有量が5.0%を超える場合には、ベアフィン材の製造が難しくなるおそれがある。そのため、Sbの含有量は、0.01〜1.0%とする。
Tiは、ベアフィン材の板厚方向に濃度の高い領域と低い領域とに分かれ、それらが交互に分布する層状となり、ベアフィン材の防食寿命を高める。
Cr、Zr、V、Bは、ろう付け加熱中の再結晶温度を高め、ベアフィン材の結晶粒度を粗大化させることでろう付け加熱中のエロージョンを抑制する。
Cuは、固溶することでベアフィン材の強度を向上させる。
なお、上記Zn、In、Snが不可避的不純物として含有されている場合にも、上記範囲を満たす場合には、後述の効果を得ることができる。
Znを含有する場合には、その含有量は、0.1〜5.0%である必要がある。
Znの含有量が0.15%未満の場合には、上述の効果が十分に得られず、一方、上記含有量が5.0%を超える場合には、ベアフィン材自体の自己耐食性が悪くなるおそれがある。
In、Snを含有する場合には、その含有量は、それぞれ0.001〜0.3%である必要がある。
上記In、Snの含有量が0.001%未満である場合には、上述の効果が十分に得られず、一方、上記含有量が0.3%を超える場合には、ベアフィン材自体の自己耐食性が悪くなるおそれがある。
なお、上記Mn、Feが不可避的不純物として含有されている場合にも、上記範囲を満たす場合には、後述の効果を得ることができる。
そして、Mnを含有する場合には、その含有量は、3.0%未満(Siの含有量を超えない範囲)である必要がある。
Mnの含有量が3.0%以上である場合には、鋳造時に粗大な晶出物が生成して圧延加工性が害される結果、健全な板材が得難くなる恐れがある。また、Mnの含有量がSiの含有量を超える場合には、導電率が低下するおそれがある。Mnの含有量は、好ましくは1.5%以下(Siの含有量を超えない範囲)である。
そして、Feを含有する場合には、その含有量は、3.0%未満(Siの含有量を超えない範囲)である必要がある。
上記クラッド材よりなるチューブ材は、少なくとも上記ベアフィン材と接合する側の面にろう材成分が配されていればよく、例えば、心材の片面にろう材をクラッドした2層のクラッド材、あるいは、心材の片面にろう材、もう一方の面にろう材又はAl−Zn系合金からなる犠牲陽極材をクラッドした3層のクラッド材を曲成し溶接して扁平チューブ形状としたもの、クラッド材を曲げ加工するだけで溶接することなくチューブ形状としたもの等を使用することができる。
2層のクラッド材を用いる場合には、クラッド材の全体の板厚をT、ろう材の厚みをt1とすると、上記クラッド材の板厚Tは0.2〜1.0mmであることが好ましく、上記ろう材のクラッド率(t1/T)は5〜20%であることが好ましい。
また、上記ろう材は、上記心材、ベアフィン材よりも低い融点を有していればいずれの合金を用いてもよく、例えば、Al−Si系合金、Al−Si−Mg系合金、Al−Si−Mg−Bi系合金、Al−Si−Zn系合金、Al−Si−Cu系合金等を用いることができる。
また、上記クラッド材のろう材は、Sr、Na、Sbのうち1種または2種以上が含有されていることが好ましい。また、上記ろう材は、Sr、Na、Sbのうち、上記ベアフィン材が含有している元素と同じ元素を含有していることがより好ましい。
そして、上記ベアフィン材と上記プレート材とをろう付け接合してなる部分は、上記ベアフィンと、管状でない板状形状を呈するプレート材とを、Siを含有するろう材成分を介在させて組み合わせた後、上記加熱によるろう付け接合を行うことにより形成することができる(請求項10)。
そして、上述したSi含有のフラックスであっても、通常のフラックスであっても、これらのフラックスは、フィン材やチューブ材やプレート材等の素材を、所望の形状に成形し、熱交換器として組み付けた後に、その熱交換器に塗布することができ、また、あらかじめフィン材やチューブ材やプレート材等の素材に塗布しておくこともできる。前者の場合には、熱交換器にフラックスを塗布した後にろう付け加熱を行い、後者の場合には、上記各素材を所望の形状に成形し、熱交換器として組み付けた後、ろう付け加熱を行う。
本例は、本発明のアルミニウム製熱交換器にかかる実施例及び比較例として、複数種類のアルミニウム製熱交換器のミニコアを作製し、それらの耐食性を評価した例である。
本例では、実施例として、表2に示すアルミニウム製熱交換器のミニコア(試料E1〜試料E26)、及び比較例として、表2に示すアルミニウム製熱交換器のミニコア(試料C1、試料C2)を作製した。
まず、チューブ材2として、JIS A 3003合金を心材とし、JIS A 4047合金(Al−12Si)にSrを0.02%添加した合金をろう材(ろう材成分)として、厚さ0.25mmのクラッド材(クラッド率10%)を準備した。なお、実際の製品としてのアルミニウム合金製熱交換器においては、クラッド材を曲成し溶接して扁平チューブ形状とすることにより、心材21の表面にSiを含有するろう材22を配してなるクラッド構造を有するチューブ材を得るが、本実施例では、板状のまま用いた。なお、この板状のものを説明の都合上、チューブ材2という。また、上記ろう材の融点(固相線温度)は570℃以上590℃以下である。
フィン1〜フィン25、フィン27、及びフィン28は、連続鋳造により、表1に示す組成を有する鋳塊を準備し、その後、均質化処理を行った。次いで、熱間圧延を行って所定の厚さとし、その後、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を行って、厚さ0.1mmの板材(質別H14)とし、ベアフィン材3(フィン1〜フィン25、フィン27、及びフィン28)を得た。
なお、組成は、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延の前後でほとんど変化がない。
その後、図1に示すように、上記ベアフィン材3と、上記チューブ材2とを組み付けて、濃度3.0%のフッ化物系フラックスを塗布した後、窒素ガス雰囲気中600℃(上記ろう材成分の融点よりも高く、上記フィン1〜フィン28の融点(固相線温度)よりも低い温度)で3分間加熱して、ろう付け接合を行い、アルミニウム製熱交換器のミニコア8(試料E1〜試料E26、試料C1、試料C2)を作製した。
<腐食試験>
腐食試験は、ミニコア8について、チューブ材2の端面と心材面をシリコン樹脂でマスキングした後、SWAAT試験をASTM G85に基づいて1か月間実施し、チューブ2の腐食状況とフィン3の脱落の有無を観察することによって耐食性の評価を行った。耐食性の良否は、腐食深さが0.15mmで、フィン3の脱落もないものを良好、腐食深さが0.15mmを超えたり、フィン3の脱落が生じたものを不良と判断した。
このように、本発明によれば、耐食性、及び強度に優れたアルミニウム製熱交換器を形成することができることがわかる。
また、表2より知られるごとく、比較例としての試料C1、及び試料C2は、Sr、Na、Sbのいずれも含有していないため、耐食性が不良であった。
本例では、実施例1に示したコア部(ミニコア)を利用したアルミニウム製熱交換器の構成例について、図2を用いて説明する。この実施例は、一実施態様を示すものであり、本発明はこれに限定されるものではなく、アルミニウム製熱交換器として公知の種々の構成を採用可能である。
上記コア部4は、チューブ材2とベアフィン材3とをSiを含有するろう材成分を用いてろう付け接合することにより構成される。
上記ベアフィン材3は、Sr:0.001〜5.0%、Na:0.001〜5.0%、Sb:0.001〜5.0%のうち1種又は2種以上と、Si:0.1〜3.0%とを含有し、残部がAlと不可避的不純物からなる。
まず、上記コア部4を構成するチューブ材2として、実施例1において、チューブ材として作製したクラッド材を曲成し溶接して扁平チューブ形状とすることにより、心材の表面にSiを含有するろう材を配してなるクラッド構造を有するチューブ材2を準備する。
本例のアルミニウム製熱交換器1は、上述した実施例1から知られるように、チューブ2からのフィン3が脱落や、チューブ2の早期の貫通腐食が生じない、優れた耐食性を有するものとなる。
2 チューブ(チューブ材)
3 フィン(ベアフィン材)
4 コア部
Claims (10)
- 作動流体が流通するチューブと、該チューブの外表面に接合されたフィンとよりなるコア部を有するアルミニウム製熱交換器であって、
上記コア部は、Siを含有するろう材成分を用いて管状のチューブ材とベアフィン材とをろう付け接合することにより構成されており、
上記ベアフィン材は、Sr:0.01〜1.0%(質量%、以下同様)、Na:0.01〜0.02%、Sb:0.01〜1.0%のうち1種又は2種以上と、Si:0.1〜3.0%とを含有し、残部がAlと不可避的不純物からなることを特徴とするアルミニウム製熱交換器。 - 請求項1において、上記ベアフィン材は、さらに、Zn:0.1〜5.0%、In:0.001〜0.3%、Sn:0.001〜0.3%のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とするアルミニウム製熱交換器。
- 請求項1又は2において、上記ベアフィン材は、さらに、Mn:3.0%未満(Siの含有量を超えない範囲)、Fe:3.0%未満(Siの含有量を超えない範囲)の少なくとも一方を含有することを特徴とするアルミニウム製熱交換器。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、上記チューブ材は、心材の表面に上記ろう材成分を含有するろう材をクラッド接合により配設してなるクラッド材よりなることを特徴とするアルミニウム製熱交換器。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、上記コア部は、上記ベアフィン材と、板状のプレート材とを、Siを含有するろう材成分を用いてろう付け接合してなる部位をさらに有することを特徴とするアルミニウム製熱交換器。
- 作動流体が流通するチューブと、該チューブの外表面に接合されたフィンとよりなるコア部を有するアルミニウム製熱交換器を製造する方法であって、
Sr:0.01〜1.0%(質量%、以下同様)、Na:0.01〜0.02%、Sb:0.01〜0.02%のうち1種又は2種以上と、Si:0.1〜3.0%とを含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるベアフィン材と、管状のチューブ材とをSiを含有するろう材成分を介在させて組み合わせた後、上記ろう材成分の融点(固相線温度)よりも高く、上記ベアフィン材の融点(固相線温度)よりも低い温度で加熱することにより上記チューブ材と上記ベアフィン材とをろう付け接合し、上記コア部を形成することを特徴とするアルミニウム製熱交換器の製造方法。 - 請求項6において、上記ベアフィン材は、さらに、Zn:0.1〜5.0%、In:0.001〜0.3%、Sn:0.001〜0.3%のうち1種又は2種以上を含有することを特徴とするアルミニウム製熱交換器の製造方法。
- 請求項6又は7において、上記ベアフィン材は、さらに、Mn:3.0%未満(Siの含有量を超えない範囲)、Fe:3.0%未満(Siの含有量を超えない範囲)の少なくとも一方を含有することを特徴とするアルミニウム製熱交換器の製造方法。
- 請求項6〜8のいずれか1項において、上記チューブ材は、心材の表面に上記ろう材成分を含有するろう材をクラッド接合により配設してなるクラッド材よりなることを特徴とするアルミニウム製熱交換器の製造方法。
- 請求項6〜9のいずれか1項において、上記コア部は、さらに、上記ベアフィンと、板状のプレート材とをSiを含有するろう材成分を介在させて組み合わせた後、上記加熱によるろう付け接合を行うことにより形成することを特徴とするアルミニウム製熱交換器の製造方法。
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