JP4236185B2 - 自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents
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Description
(犠牲陽極材)
Si:1.5%を越え6.0%未満
Siは、犠牲陽極材の融点を低下させ、ろう付け中に極わずか液相を生じさせることにより、ろうとして作用する。Siの好ましい含有量は1.5%を越え6.0%未満の範囲であり、1.5%以下ではろうとして有効に作用し難く、6.0%以上では、ろう付け加熱時に流動し易くなり、犠牲陽極材としての機能が損なわれる。Siのさらに好ましい含有範囲は2.0%を越え4.0%以下である。
Niは、Al−Si−Ni系、Al−Zn−Ni系、Al−Si−Zn−Ni系化合物を形成し、SiやZnの固溶度を低下させることにより液相率が低下し、ろうの流動が抑制される。また、これら化合物が腐食の起点となって、孔食が分散し耐食性が向上する。Niの好ましい含有量は0.05〜2.0%の範囲であり、0.05%未満ではその効果が小さく、2.0%を越えると、犠牲陽極材の自己腐食が増大する。Niのさらに好ましい含有範囲は0.5〜1.2%である。
Znは、犠牲陽極材の融点を低下させ、ろう付け中に極わずか液相を生じさせることにより、ろうとして作用する。また、犠牲陽極材の電位を卑にし、芯材に対する犠牲陽極効果を発揮させ、芯材の孔食や隙間腐食の発生を防止する。電位を貴化するSiを犠牲陽極材中に含有させるため、Znも相当量含有させることが必要である。Znの好ましい含有量は3.0〜10.0%の範囲であり、Znの含有量が3.0%未満ではその効果が小さく、10.0%を越えて含有すると犠牲陽極材の自己耐食性が低下する。Znのさらに好ましい含有範囲は4.0〜6.0%である。
Inは、微量の添加によって犠牲陽極材の電位を卑にし、芯材に対する犠牲陽極効果を確実に発揮させ、芯材の孔食や隙間腐食の発生を防止する。Inの好ましい含有量は0.001〜0.05%の範囲であり、0.001%未満ではその効果が十分でなく、0.05%を越えると、自己耐食性および圧延加工性が低下する。Inのさらに好ましい含有範囲は0.01〜0.03%である。
Snは、微量の添加によって犠牲陽極材の電位を卑にし、芯材に対する犠牲陽極効果を確実に発揮させ、芯材の孔食や隙間腐食の発生を防止する。Snの好ましい含有量は0.001〜0.05%の範囲であり、0.001%未満ではその効果が十分でなく、0.05%を越えると、自己耐食性および圧延加工性が低下する。Snのさらに好ましい含有範囲は0.01〜0.03%である。
Mgは、熱交換器などのろう付け組み立て時、ろう付け加熱中に芯材へ拡散し、芯材中のSiやCuとともに強度を高めるよう機能する。犠牲陽極材に残存したMgはSiとともに犠牲陽極材の強度を高め、これらの効果によってクラッド材の強度を改善する。Mgの好ましい含有量は4.0%以下の範囲であり、4.0%を越えると圧延加工性が低下する。Mgのさらに好ましい含有範囲は2.5%以下である。
Cuは、犠牲陽極材の電位を貴にし、犠牲陽極材へのZnの添加による自己耐食性の低下を抑制する。Cuの好ましい含有量は0.05%以下の範囲であり、0.05%を越えると、犠牲陽極材と芯材との間の電位差を十分に確保することができず、芯材に対する犠牲陽極効果が低下する。
CrおよびZrは、犠牲陽極材の結晶粒度を粗大にして、ろう付け加熱中の芯材のCuの粒界拡散を抑制する。CrおよびZrがそれぞれ0.2%および0.3%を越えると、鋳造時に巨大な晶出物が生成し、健全な板材の製造が困難となる。
Tiは、材料の板厚方向に濃度の高い領域と低い領域に分かれ、これらの領域が層状となって交互に分布し、Ti濃度の低い領域が高い領域に比べ優先的に腐食することにより、腐食形態を層状にする効果を有し、この効果により板厚方向への粒界腐食の進行が妨げられ材料の耐孔食性が向上する。Tiの好ましい含有量は0.3%以下の範囲であり、0.3%を越えると、鋳造が困難となり、また加工性が低下して健全な材料の製造が困難となる。
Feは、Al−Fe−Si系化合物を形成し、Siの固溶度を低下することにより液相率を低下させ、ろうの流動を抑制する。また、Feは、Al−Fe系やAl−Fe−Si系の化合物を形成し、これらの加工物が腐食の起点となって孔食が分散されることにより耐食性を向上させる。Feの好ましい含有量は0.15〜2.0%の範囲であり、0.15%未満ではその効果が小さく、2.0%を越えると犠牲陽極材の自己耐食性が低下する。Feのさらに好ましい含有範囲は0.7%を越え1.2%以下である。
Srは、犠牲陽極材中におけるSi粒子の存在形態をより微細且つ均一にするよう機能し、その結果ろう付け性を向上させる。Srの好ましい含有量は0.005〜0.1%の範囲であり、0.005%未満ではその効果が十分でなく、0.1%を越えて含有してもその効果が飽和する。なお、本発明においては、犠牲陽極材中にNa:1〜100ppm、Sb:0.001〜0.5%が添加されていてもその効果に影響を与えることはない。
Mn:0.3〜2.0%
Mnは、芯材の強度を向上させるとともに、芯材の電位を貴にして犠牲陽極材との電位差を大きくして耐食性を高めるよう機能する。Mnの好ましい含有量は0.3〜2.0%の範囲であり、0.3%未満ではその効果が小さく、2.0%を越えると、鋳造時に粗大な化合物が生成し圧延加工性が低下して健全な板材(芯材)が得難くなる。Mnのさらに好ましい含有範囲は0.8〜1.5%である。
Cuは、芯材の強度を向上させるとともに、芯材の電位を貴にし、犠牲陽極材のとの電位差およびろう材との電位差を大きくして耐食性を向上させるよう機能する。また、ろう付け時に犠牲陽極材およびろう材に拡散して、犠牲陽極材およびろう材の厚さ方向になだらかなCuの濃度勾配を形成させ、この結果、芯材側の電位は貴となり、犠牲陽極材の表面側およびろう材の表面側の電位は卑となって、犠牲陽極材およびろう材の厚さ方向になだらかな電位勾配が形成されるため、腐食形態が全面腐食型となる。Cuの好ましい含有量は0.1〜1.0%の範囲であり、0.1%未満ではその効果が小さく、1.0%を越えると芯材の耐食性が低下し、また融点が低下してろう付け時に局部的な溶融が生じ易くなる。Cuのさらに好ましい含有範囲は0.4〜0.7%である。
Siは、芯材の強度を向上させる効果を有する。とくに、犠牲陽極材にMgが含有する場合、Siはろう付け中に犠牲陽極材から拡散してくるMgと共存してMgと結合してMg2 Siを生成することにより、ろう付け後に時効硬化が生じ、強度がさらに向上する。Siの好ましい含有量は0.1〜1.5%の範囲であり、0.1%未満ではその効果が小さく、1.5%を越えると、芯材の耐食性が低下するとともに、芯材の融点を下げ、ろう付け時に局部溶融が生じ易くなる。Siのさらに好ましい含有範囲は0.3〜1.0%である。
Mgは、芯材の強度を向上させる。0.5%を越えて含有すると、フッ化物系フラックスを用いて不活性ガス雰囲気中でろう付けを行う場合、ろう付け時にMgがフッ化物系フラックスと反応してMgのフッ化物が生成し、ろう付け性を低下させるとともに、ろう付け部の外観が悪くなる。Mgのさらに好ましい含有範囲は0.15%以下である。
CrおよびZrは、芯材の結晶粒度を粗大にし、ろう付け加熱中のろう材中のSiの粒界拡散を抑制する。CrおよびZrがそれぞれ0.5%および0.3%を越えると、鋳造時に巨大晶出物が生成し、加工性が低下して健全な板材の製造が困難となる。
ろう材としては、通常用いられているAl−Si系合金、好ましくはSi:6〜13%を含む合金が使用される。Siが6%未満では流動性が低下してろう材としての作用が不十分となり、Siが13%を越えると、健全な材料の製造が困難となる。
Feは、Al−Fe系、Al−Fe−Si系化合物を形成し、これらの化合物が腐食の起点となるため孔食が分散し、外面の耐食性が向上する。Feの好ましい含有範囲は0.8〜2.0%であり、0.8%未満ではその効果が小さく、2.0%を越えると、外面の耐食性が低下する。
Znは、上記の範囲で含有されても本発明の効果を損なうことはない。5.0%を越えて含有すると、自己耐食性が低下する。
Srは、ろう材中のSi粒子を微細かつ均一に分散させる効果がある。Si粒子が微細かつ均一に分散することにより、ろうの溶融が均一になり、ろう付け性が改善される。Srの好ましい含有量は0.005〜0.1%の範囲であり、0.005%未満ではその効果が小さく、0.1%を越えると、その効果が飽和する。
BiおよびBeは、上記の範囲で含有されても本発明の効果を損なうことはない。BiおよびBeが0.2%および0.1%を越えるとろう付け性が低下する。
InおよびSnは、上記の範囲で含有されても本発明の効果を損なうことはない。InおよびSnが0.05%を越えると、ろう材の自己耐食性および圧延加工性が低下する。なお、本発明においては、Na:1〜100ppm、Sb:0.001〜0.5%が含有されていても、本発明の効果に影響することはない。
連続鋳造によって表1に示す組成を有する芯材用合金、表2に示す組成を有する犠牲陽極材用合金、および表3に示す組成を有するろう材用合金を造塊し、得られた鋳塊のうち、芯材用合金および犠牲陽極材用合金の鋳塊については均質化処理を行った。
腐食液:Cl- :195ppm、SO4 2- :60ppm、Cu2+:1pm、Fe3+:30ppm
比液量:5mL/cm2
シール:ろう材面と端面をシリコン樹脂でシールした。
試験方法:88℃に加熱した腐食液中に8時間浸漬した後、冷却して25℃で16時間保持するサイクルを4か月間繰り返し、最大腐食深さを測定した。
連続鋳造によって表7に示す組成を有する芯材用合金、表8に示す組成を有する犠牲陽極材用合金、および表9に示す組成を有するろう材用合金を造塊し、芯材用合金および犠牲陽極材用合金の鋳塊を均質化処理した。
2 B型のチューブ形状
3 クラッドフィン材
4 芯材
5 犠牲陽極材
6 ろう材
7 2層クラッド材
Claims (22)
- 芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドし、他方の面にAl−Si系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材がSi:1.5%(質量%、以下同じ)を越え6.0%未満、Ni:0.05〜2.0%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドし、他方の面にAl−Si系合金ろう材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材がSi:1.5%を越え6.0%未満、Ni:0.05〜2.0%を含有するAl−Zn系合金であることを特徴とする自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記ろう材がSi:6〜13%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記ろう材がSi:6〜13%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする請求項2記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記ろう材がさらにFe:0.8〜2.0%、Zn:0.5〜5.0%、Sr:0.005〜0.1%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または3記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記ろう材がさらにFe:0.8〜2.0%、Zn:0.5〜5.0%、Sr:0.005〜0.1%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項2または4記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記ろう材がさらにBi:0.2%以下、Be:0.1%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1、3、5のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記ろう材がさらにBi:0.2%以下、Be:0.1%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項2、4、6のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記ろう材がさらにIn:0.001〜0.05%、Sn:0.001〜0.05%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1、3、5、7のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記ろう材がさらにIn:0.001〜0.05%、Sn:0.001〜0.05%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項2、4、6、8のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材がSi:1.5%を越え6.0%未満、Ni:0.05〜2.0%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 芯材の一方の面に犠牲陽極材をクラッドしたアルミニウム合金クラッド材で、犠牲陽極材がろう付け面となるものにおいて、芯材がAl−Mn系合金であり、犠牲陽極材がSi:1.5%を越え6.0%未満、Ni:0.05〜2.0%を含有するAl−Zn系合金であることを特徴とする自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記犠牲陽極材がSi:1.5%を越え6.0%未満、Ni:0.05〜2.0%、Zn:3.0〜10.0%を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする請求項2、4、6、8,10、12のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記犠牲陽極材がさらにIn:0.001〜0.05%、Sn:0.001〜0.05%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記犠牲陽極材がさらにMg:4.0%以下を含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記犠牲陽極材がさらにCu:0.05%以下、Ti:0.3%以下、Cr:0.2%以下、Zr:0.3%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記犠牲陽極材がさらにFe:0.15〜2.0%を含有することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記犠牲陽極材がさらにSr:0.005〜0.1%を含有することを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記芯材がMn:0.3%を越え2.0%以下を含有し、残部Alおよび不純物からなるアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記芯材がさらにCu:0.1〜1.0%、Si:0.1〜1.5%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記芯材がさらにMg:0.5%以下を含有することを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
- 前記芯材がさらにCr:0.5%以下、Zr:0.3%以下のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の自動車熱交換器用アルミニウム合金クラッド材。
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