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JP5234537B2 - 耐久性を向上させた調光ミラー - Google Patents

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Description

本発明は、透明な状態と鏡の状態にスイッチングすることのできる光反射型調光ミラーに関するものであり、更に詳しくは、本発明は、窓ガラスから入射する太陽光をブラインドやカーテンなしで自動的にコントロールする調光ガラスに用いる新規調光ミラー薄膜材料及び該調光ミラー部材に関するものである。本発明は、建物や乗り物における太陽光の透過率を制御するための窓材料技術等として有用である耐久性を向上させた調光ミラーを提供するものである。
一般に、建物において窓(開口部)は大きな熱の出入り場所になっている。例えば、冬の暖房時の熱が窓から流失する割合は48%程度であり、夏の冷房時に窓から熱が入る割合は71%程度にも達する。したがって、窓における光・熱をうまくコントロールすることにより、膨大な省エネルギー効果を得ることができる。調光ガラスは、このような目的で開発されたものであり、光・熱の流入・流出をコントロールする機能を有している。
このような調光ガラスの調光を行う方式には、いくつかの種類があるが、その中でも、1)電流・電圧の印加により可逆的に透過率の変化する材料を、エレクトロクロミック材料といい、また、2)雰囲気ガスの制御により透過率が変化する材料を、ガスクロミック(ガソクロミック)材料という。この中でも、調光層に酸化タングステン薄膜を用いたエレクトロクロミック調光ガラスの研究が最も進んでおり、現在、ほぼ実用化段階に達しており、市販品も出されている。
この酸化タングステンを初めとして、これまで知られているエレクトロクロミック調光ガラスは、すべて調光層で光を吸収することにより調光を行うことをその原理としている。この場合、この種の調光ガラスは、調光層が光を吸収することにより熱を持ち、それがまた室内に再放射されるため、省エネルギー効果が低くなってしまうという欠点を持っている。これをなくすためには、光を吸収することにより調光を行うのではなく、光を反射することにより調光を行う光反射型にする必要がある。つまり、鏡の状態と透明な状態が可逆的に変化するような特性を有する材料が望まれていた。
このような、鏡の状態と透明な状態で変化する材料は長らく見つかっていなかったが、1996年にオランダの研究グループにより、イットリウムやランタンなどの希土類の水素化物が、水素により鏡の状態と透明な状態に変化することが発見され、このような材料が「調光ミラー」と命名された(非特許文献1)。これらの希土類水素化物は、透過率の変化が大きく、調光ミラー特性に優れている。しかし、この調光ミラーは、材料として希土類元素を用いるため、窓のコーティングなどに用いる場合、資源やコストに問題があった。
その後、希土類金属とマグネシウムの合金薄膜の水素化物(非特許文献2)や、マグネシウム・ニッケル合金の水素化物(非特許文献3)も調光ミラー特性を持つことが発見された。本発明者らのグループでは、マグネシウム・ニッケル合金の中でも、マグネシウム成分の多い、MgNix(0.1<x<0.3)が優れた光学特性を示すことを見出した(非特許文献4)。また、マグネシウム・チタン合金を用いると、透明時にほとんど完全に無色にできることを見出した。
このように、これまで報告されている調光ミラー材料としては、イットリウムやランタン等の希土類金属の水素化物、希土類金属とマグネシウム合金薄膜の水素化物、及びマグネシウム・遷移金属合金の水素化物等があるが、この中で、資源やコストの観点から、窓ガラスのコーティングに適しているのはマグネシウム・ニッケル合金やマグネシウム・チタン合金を用いたものである。
これらの調光ミラー薄膜材料は、いずれも水素を含む雰囲気に晒すと水素化によって透明化し、酸素を含む雰囲気に晒すと脱水素化によって金属状態に戻る。ただ、いずれの材料についても、はじめのうちは良好なスイッチング特性を示すものの、繰り返しに伴い、だんだんスイッチングしなくなるという劣化を示す。この調光ミラー材料の劣化は早く、どの材料を用いても、100回程度で劣化してしまうものがほとんどで、どのような応用に用いるにしても、繰り返しに対する耐久性が不十分であり、このことが実用化を阻む最大の障害になっていた。
J.N.Huiberts,R.Griessen,J.H.Rector,R.J.Wijngaarden,J.P.Dekker,D.G.de Groot,N.J.Koeman,Nature,380(1996)231 Nagengast D.G,van Gogh A.T.M,Kooij E.S,Dam B,Griessen R.Appl.Phys.Lett.,75(1999)2050 T.J.Richardson,J.L.Slack,R.D.Armitage,R.Kostecki,B.Farangis,and M.D.Rubin,Appl.Phys.Lett.,78(2001)3047 K.Yoshimura,Y.Yamada and M.Okada:Appl.Phys.Lett.,81(2002)4709
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、スイッチングの繰り返しに対する耐久性を向上させ調光ミラー材料を開発することを目標として、その耐久性の向上に取り組み、研究を重ねた結果、調光ミラー薄膜の表面に、保護膜を形成することで、スイッチングの繰り返しに対する耐久性を飛躍的に高めることができることを見出し、更に、この保護膜の形成により、透明状態における可視光の透過率を向上させることができることも見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、調光ミラー薄膜材料の表面に簡便な方法により保護膜を形成することで、スイッチングの繰り返しに対する耐久性を向上させた調光ミラーを提供することを目的としている。また、本発明は、この保護膜の形成により、透明化した状態での可視光の透過率を高めた調光ミラーを提供することも目的としている。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)水素を含む雰囲気に晒すことにより透明化し、酸素を含む雰囲気に晒すことにより金属状態になる光反射型調光ミラーにおいて、透明な基材の上に形成された反射調光層と、その上に形成された触媒層とを有し、それらの反射調光層と触媒層の間に、金属膜のバッファ層を有し、更にその触媒層の上に形成された保護膜を有している、上記保護膜として、上記触媒層の上に、金属アルコキシドもしくはテフロンが塗布されていることを特徴とする調光ミラー薄膜材料。
(2)反射調光層が、希土類金属、希土類金属とマグネシウムの合金、マグネシウムと遷移金属の合金のいずれかの薄膜である、前記(1)に記載の調光ミラー薄膜材料。
(3)上記反射調光層の表面に、触媒層として、0.5nm−100nmのパラジウムがコートされている、前記(1)に記載の調光ミラー薄膜材料。
)上記保護膜として、上記触媒層の上に、金属アルコキシドもしくはテフロンが塗布されている、前記(1)に記載の調光ミラー薄膜材料。
)上記保護膜により、透明状態における可視光透過率を向上させた、前記(1)に記載の調光ミラー薄膜材料。
)上記保護膜により、透明状態において光の拡散性を持たせた、前記(1)に記載の調光ミラー薄膜材料。
)前記(1)から()のいずれか一項に記載の調光ミラー薄膜材料を構成要素として含むことを特徴とする調光ミラー部材。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、調光ミラー薄膜材料であって、水素を含む雰囲気に晒すことにより透明化し、酸素を含む雰囲気に晒すことにより金属状態になる調光ミラーであって、透明な基材の上に反射調光層、その上に触媒層が形成されており、更にその上に保護膜が塗布、形成されていることを特徴とするものである。
本発明では、反射調光層が、希土類金属、希土類金属とマグネシウムの合金、マグネシウムと遷移金属の合金のいずれかの薄膜であること、上記薄膜の表面に、触媒層として、0.5nm−100nmのパラジウムもしくは白金がコートされていること、上記保護膜として、触媒層の上に、金属アルコキシドもしくはテフロン(登録商標)が塗布されていること、を好ましい実施の態様としている。
また、本発明では、反射調光層と触媒層の間に、薄い金属膜のバッファ層を有すること、上記保護膜により、透明状態における可視光透過率を向上させたこと、上記保護膜により、透明状態において光の拡散性を持たせたこと、が好ましく、更に、本発明は、上記の調光ミラー薄膜材料を構成要素として含む調光ミラー部材の点に特徴を有するものである。
本発明は、調光ミラー(Switchable Mirror)の保護膜コーティングに関するものである。調光ミラーは、透明な状態と鏡の状態(金属状態)、もしくはその中間状態に、スイッチングすることのできる材料であり、透明な基材の上に、イットリウムやランタン等の希土類薄膜(特表平10―503858号公報)、希土類金属とマグネシウム合金薄膜(特表平11―514759号公報)、マグネシウムと遷移金属の合金薄膜(米国特許第2002/0044717A1)、もしくはマグネシウム薄膜(特開2003−261356号公報、特開2003−335553号公報)を蒸着したものである。
これらの材料の中でも、材料コストの安さや、優れた光学特性などから、MgNix(0.1<x<0.3)が調光ミラーに適した材料である。これらの調光薄膜層は、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相蒸着法(CVD)、めっき法等により作製することができる。しかし、これらの方法に制限されない。調光薄膜層の厚さは、10nmから300nmである。
この調光薄膜層の上に触媒層が形成される。上記触媒層として、好適には、パラジウムもしくは白金が用いられる。しかし、これらに限定されるものではなく、これらと同効のものであれば同様に使用することができる。この触媒層は、好適には、上記マグネシウム薄膜の表面に0.5nm−10nmのパラジウムもしくは白金をコートして形成される。しかし、触媒層の形成方法及びその形態は特に制限されない。
上記触媒層は、スパッタリング法、真空蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相蒸着法(CVD)、めっき法等により作製することができる。しかし、これらの方法に制限されない。上記調光ミラー材料からなる調光層を基板の透明部材ないしガラス表面に形成することにより調光ミラー部材ないし調光ミラーガラスが得られる。この場合、基板としては、好適には、アクリル、プラスチック、透明シート、ガラスが例示される。しかし、これらに限らず、これらと同効のものであれば同様に使用することができる。
この調光ミラーは、水素を含んだ雰囲気に晒すことで水素化が起こり、金属状態から透明状態に変化する。また、水素を含まず酸素を含む雰囲気に晒すことで脱水素化が起こり、透明状態から金属状態に変化する。いずれの調光ミラー薄膜材料を用いた場合も、最初のうちは、良好なスイッチングを示し、大きな透過率変化を示すが、これを繰り返していくと劣化が起こり、だんだんと変化しなくなってしまう。その劣化の原因を調べた結果、ひとつは、スイッチングの繰り返しによりパラジウム層の下のマグネシウムが表面に析出してくることと、もう一つは、水素化・脱水素化の繰り返しに伴う薄膜の膨張・収縮の繰り返しにより薄膜が壊れてくることの二つの要因があることが分かった。
前者のマグネシウムの表面への析出に関しては、パラジウム層とマグネシウム合金層の間に、バッファ層としてチタン等の薄い金属膜を挿入することが有効であることを見出した(特願2006−130939号)。ただし、バッファ層を挿入しても、膨張・収縮の影響でやはり劣化は起こるが、本発明者らは、パラジウムの表面に保護膜を塗布することで、その影響を抑え、スイッチングの繰り返しに対する耐久性を飛躍的に高めることができることを見出し、本発明に至った。
調光ミラーの触媒層の上に、保護膜として金属アルコキシドもしくはテフロン(登録商標)を塗布すると、劣化を大幅に抑え、スイッチングに対する繰り返し寿命を延ばすことができる。これらの保護膜の塗布は、好適にはスピンコーティング法やディップコーティング法もしくはスパッタリングを用いて行うが、特にその手法には制約されない。金属アルコキシドとしては、チタン・アルコキシド、バナジウム・アルコキシド、アルミ・アルコキシド等が好適なものとして例示される。
調光ミラーでは、透明時の可視光透過率は高い方が望ましいが、水素化状態になった薄膜も若干の吸収を持つため、比較的可視光透過率の高いMgNiを用いた場合でも、可視光の透過率は50%程度である。
これに対して、保護膜として金属アルコキシドもしくはテフロン(登録商標)を塗布すると、透明状態における可視光の透過率が10%程度向上することが分かった。これは、多層薄膜の干渉効果により可視光領域における透過率が向上したものと考えられる。したがって、これらの保護膜の塗布により、耐久性が向上すると共に、透明状態における透過率が向上するという、二重のメリットが得られることになる。
ただ、建築物にこの調光ミラーを用いようとする場合、あまりにクリアな鏡状態になると、太陽等が反射してまぶしくなってしまうという問題点がある。これを解決するためには、反射状態において、光を散乱するようにすれば良い。このような拡散性の反射面を作ることで、反射状態のガラスは白っぽく見えるようになり、太陽光なども散乱されて、まぶしいという現象が抑えられる。本発明で保護膜として用いた材料の一つである金属アルコキシドを塗布すると、表面が光を拡散するようになり、より白みがかった拡散性になることが分かった。
本発明の調光ミラーガラスは、上記窓材料だけでなく、あらゆる種類の部材ないし物品にも広く用いることができる。それにより、例えば、プライバシー保護を目的とした遮蔽物や、鏡状態と透明状態に変わることを利用した装飾物及び玩具等に調光ミラー機能を付加することができる。本発明において、調光ミラー機能を有する物品とは、上記調光ミラーガラスを装着したあらゆる種類の物品を包含するものとして定義される。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)調光ミラーに保護膜を塗布することで、スイッチングに対する耐久性を大幅に向上させることができる。
(2)また、上記保護膜を塗布することで、調光ミラーの透明状態における透過率を高くすることができる。
(3)スイッチングの繰り返しに対する耐久性を飛躍的に高めると共に、透過率を高めた高耐久性調光ミラーを提供することができる。
(4)本発明により、保護膜の塗布により、耐久性の向上と、透明状態における透過率の向上という、二重の利点が得られる。
(5)また、上記保護膜の塗布により、透明状態において、光の拡散性を持たせることができる。
次に、本発明を実施例に基づいて具休的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では、調光ミラー薄膜材料の作製を行った。参照試料として、ガラス基板上に、バッファ層無しのものと、バッファ層を挿入したマグネシウム・ニッケル合金系調光ミラー薄膜を作製した。これらの成膜は、ターゲットとして、それぞれ、金属マグネシウム、金属ニッケル、金属チタン、それに金属パラジウムをセットした4連のマグネトロンスパッタ装置で行った。基板としては、大きさ30mm×30mm、厚さ1mmのガラス板を用い、これを洗浄後、真空装置の中にセットして真空排気を行った。
成膜にあたっては、まず、マグネシウムとニッケルのターゲットを同時スパッタしてマグネシウム・ニッケル薄膜を作製した。スパッタ中のアルゴンガス圧は、0.8Paであり、直流スパッタ法によりマグネシウムに30W、ニッケルに11Wのパワーを加えてスパッタを行い、ほぼMgNiに近い組成を持つ合金薄膜を作製した。
一つの試料は、同じ真空条件下で、6Wのパワーを加えて、パラジウム薄膜の蒸着を行った。MgNi層の膜厚は約40nm、パラジウム層の厚さは約4nmである。もう一つの試料は、MgNiの成膜後、45Wのパワーを加えて、チタン薄膜の蒸着を行い、引き続き6Wのパワーを加えて、パラジウム薄膜の蒸着を行った。MgNi層の膜厚は約40nm、チタン層の厚さは約2nm、パラジウム層の厚さは約4nmである。
これらの試料のスイッチング特性を図1(a)に示したような装置で評価を行った。ガラス上に作製したPd/MgNi薄膜が内側になるように、もう一枚のガラスとシリコンゴムのスペーサーを用いて張り合わせ、その間の空間にアルゴンで4%に希釈した水素ガスを流したり、止めたりすることによりスイッチングを行った。
蒸着直後のPd/MgNi薄膜(保護膜無し)は、金属光沢を用い、鏡の状態になっているが、水素ガスを流すと、数秒で透明な状態に変わる。水素ガスを止めると端面から空気が入ってきて2−3分で鏡の状態に戻る。このときの波長670nmにおける透過率の変化を、半導体レーザーとシリコンフォトダイオードを用いて測定した。図1(b)に、測定装置の写真を示す。
図2(a)と(b)に、この評価装置で測定した、バッファ層の無いPd/MgNi薄膜と、バッファ層を付けたPd/Ti/MgNi薄膜のスイッチングに関する耐久性をそれぞれ示す。バッファ層が無い場合には劣化が早く、スイッチングの繰り返しと共に変化幅がだんだんと小さくなり、170回程度で変化幅が非常に小さくなってしまう。これに対して、チタンのバッファ層を挿入したサンプルでは、300回程度までは全く劣化を示さないが、その後急激に劣化してしまう。
本実施例では、実施例1で作製した調光ミラー試料に保護膜を塗布した試料を作製した。すなわち、劣化を抑えるために、実施例1で作製した試料Pd/Ti/MgNiの表面にアルコキシドを塗布した試料を作製した。アルコキシド溶液として、Titanium tetraisopropoxideを1.5ml取り、50mlのベンゼンとトルエンの混合溶液(1:1)中に溶かし、体積濃度が3.0%になるようにしたものを用いた。
この溶液を実施例1と同じ条件で作製したバッファ層を挿入したマグネシウム・ニッケル調光ミラー薄膜(Pd/Ti/MgNi)上にディップコーティング法により塗布した。試料を溶液中で2cm/minの速度で引き上げて空気中でゲル膜化した。このゲル膜を室温で2時間自然乾燥して後、更に、60℃で1時間乾燥して有機物などを除去した。
図2(c)に、この試料をスイッチングした場合の透過率の変化を示す。実施例1の保護膜が無い場合と比べ、スイッチングに対する耐久性が大幅に向上し、1700回あたりまでほとんど劣化が起こっていない。
図3に示したのは、時間に対する光学透過率の変化を示したものであり、保護膜をつけた試料は、保護膜をつけていない試料と比べて、金属状態から透明状態への変化及び透明状態から金属状態への反応時間には大きな違いはなく、透明になった際の透過率は10%程度大きくなっていることが分かる。
このように、金属アルコキシドを用いた保護膜の塗布により、耐久性が向上すると共に、透明時の透過率が高くなる。図4は、保護膜をつけていない試料と、金属アルコキシドの保護膜をつけた試料の、金属状態における反射の様子を示したものである。保護膜の無い試料は、鏡に近い状態であり、手前のものをよく反射しているのに対し、保護膜を付けた試料では、表面の拡散により白っぽい状態になっていることが分かる。
劣化を抑える材料として、テフロン(登録商標)をコーティングした例を示す。元になる試料は、実施例1で作製した試料Pd/Ti/MgNiと同じものを用い、その表面に、スパッタ装置を用いて、テフロン(登録商標)の薄膜をコーティングした。直径50mm、厚さ1mmのテフロン(登録商標)板を接着剤で銅基板上に固定して、ターゲットとして、アルゴンガスとCFガスを流量の比率10:1で0.73Paの圧力になるように導入し、約30Wでスパッタを行った。
40分間のスパッタで、約1μmの厚さのテフロン(登録商標)膜が得られた。図5に、このテフロン(登録商標)保護膜をコーティングした試料のスイッチングに関する耐久性を示す。保護膜の無い場合と比較して(図2の(a)と(b))、耐久性は、大幅に向上し、1500回程度までスイッチングできていることが分かる。
以上詳述したように、本発明は、耐久性を向上させた調光ミラーに係るものであり、本発明により、調光ミラーに保護膜を塗布することで、その耐久性を大幅に改善すると共に、透明状態における透過率を向上させた調光ミラーを提供することができる。本発明により、上記保護膜の塗布により、透明状態における可視光透過率を向上させ、しかも光の拡散性を持たせた調光ミラーを提供することができる。本発明は、スイッチングの繰り返しに対する耐久性を飛躍的に向上させた調光ミラーを実現可能にした新技術、新製品を提供するものとして有用である。
図1は、調光ミラー特性評価装置の概略図を示す。(a)は模式図、(b)は写真、である。 図2は、Mg−Ni調光ミラーのスイッチングに対する耐久性を示す。(a)はバッファ層無し、保護膜無し、(b)はバッファ層有り、保護膜無し、(c)はバッファ層有り、保護膜有り、である。 図3は、保護膜の無い試料とアルコキシドの保護膜を塗布した試料のスイッチング特性を示す。 図4は、保護膜の無い試料(左)と、アルコキシドを保護膜として塗布した試料(右)の外観を示す。 図5は、テフロン(登録商標)の保護膜をつけた試料のスイッチングに対する耐久性を示す。

Claims (7)

  1. 水素を含む雰囲気に晒すことにより透明化し、酸素を含む雰囲気に晒すことにより金属状態になる光反射型調光ミラーにおいて、透明な基材の上に形成された反射調光層と、その上に形成された触媒層とを有し、それらの反射調光層と触媒層の間に、金属膜のバッファ層を有し、更にその触媒層の上に形成された保護膜を有している、上記保護膜として、上記触媒層の上に、金属アルコキシドもしくはテフロンが塗布されていることを特徴とする調光ミラー薄膜材料。
  2. 反射調光層が、希土類金属、希土類金属とマグネシウムの合金、マグネシウムと遷移金属の合金のいずれかの薄膜である、請求項1に記載の調光ミラー薄膜材料。
  3. 上記反射調光層の表面に、触媒層として、0.5nm−100nmのパラジウムがコートされている、請求項1に記載の調光ミラー薄膜材料。
  4. 上記保護膜として、上記触媒層の上に、金属アルコキシドもしくはテフロンが塗布されている、請求項1に記載の調光ミラー薄膜材料。
  5. 上記保護膜により、透明状態における可視光透過率を向上させた、請求項1に記載の調光ミラー薄膜材料。
  6. 上記保護膜により、透明状態において光の拡散性を持たせた、請求項1に記載の調光ミラー薄膜材料。
  7. 請求項1からのいずれか一項に記載の調光ミラー薄膜材料を構成要素として含むことを特徴とする調光ミラー部材。
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