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JP5225109B2 - ヒトhmgb−1に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する治療剤 - Google Patents

ヒトhmgb−1に特異的に結合する抗体を有効成分として含有する治療剤 Download PDF

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Description

本発明は、抗HMGB-1抗体を有効成分として含有するアミロイドシス治療剤に関する。
ハイモビリティーグループボックスプロテイン(High Mobility Group Box Protein; HMGB又はHigh Mobility Group Protein; HMG)は、クロマチン構造に含まれる大量の非ヒストンタンパク質として1964年に発見された。ハイモビリティーグループボックスプロテインはすべての高等動植物に普遍的に含まれるタンパク質であり、種族間における一次構造の保存性は極めて高い。また、核内ばかりではなく、細胞質内にも豊富に存在することが分かっている。HMGの生理作用は明らかにされていない部分も多いが、HMGはDNAと結合する際に二重螺旋構造を緩めることから、転写反応の際にDNAの高次構造を最適構造に変化させて転写活性を高めるという、極めて広範囲の転写促進因子及びヌクレオソーム弛緩因子として機能すると考えられている。
何種類かのHMGBの存在が明らかにされている。例えば、ハイモビリティーグループボックスプロテイン-1(HMGB-1又はHMG-1)、ハイモビリティーグループボックスプロテイン-2 (HMGB-2又はHMG-2)、ハイモビリティーグループプロテイン-3(HMG-3)、ハイモビリティーグループプロテイン-8(HMG-8)、ハイモビリティーグループプロテイン-17(HMG-17)、ハイモビリティーグループプロテイン-I(HMG-I)、ハイモビリティーグループプロテイン-Y(HMG-Y)、ハイモビリティーグループプロテイン-I(Y)(HMG-I(Y))、ハイモビリティーグループプロテイン I-C(HMG I-C)等が知られている。
なお、本発明者らが、遺伝情報処理ソフトウェア「GENETYX」(SOFTWARE DEVELOPMENT社)を使用してアミノ酸配列の相同性の解析を行ったところ、ヒトのHMGB-1に対して、ウシHMGB-1の相同性は98.6%であり、ブタHMGB-1の相同性は99.1%であった。また、ヒトのHMGB-1に対して、ヒトのHMGB-2の相同性は81.2%であり、ウシHMGB-2の相同性は72.3%であり、ブタのHMGB-2の相同性は79.4%であった。
ワングらは1999年に、HMGB-1自体を免疫原として調製したポリクローナル抗体を使用したウエスタンブロット法により、初めて血清中(血液中)のHMGB-1の定量測定を行った。その結果、ワングらは、HMGB-1が敗血症のマーカーとなりうることを示した。そしてさらに、敗血症の患者において、血液中のHMGB-1を精密に測定することによって、生き残る患者と死に至る患者を判別することが可能であることを示した。つまりワングらは、このHMGB-1に対する抗体を敗血症モデルマウスに投与した場合に、抗体を投与しなかった敗血症モデルマウスに比較して生存率が大きく改善されることを述べている。これは、HMGB-1が、単なる敗血症のマーカーではなく原因物質として関わっていること、つまりHMGB-1のmediatorとしての可能性を示唆するものである。今日、敗血症において決め手となる治療がないだけに、この発見は非常に重要である(非特許文献1)。
またHMGB-1は炎症でも誘導され、各種サイトカインの大量分泌の原因と考えられるという文献も発表されるなど、HMGB-1が治療のターゲットとなりえることを支持する多くのデータが報告されている(非特許文献2〜4)。このことは、ただ単に血液中のHMGB-1の存在を確認するだけではなく、HMGB-1の存在量を精密に測定し、かつHMGB-1の機能を阻害することが有益である可能性が十分にあることを示す。
さらに本発明者らは、生体試料中にHMGB-1が検出される場合、その多くは同時にHMGB-2も検出されることを見出している(非特許文献5)。また、HMGB-1とHMGB-2は相同性が高い(81.2%)にもかかわらず、HMGB-2にはHMGB-1のような疾患のmediatorとしての作用がないことも見出だされている(非特許文献6)。よって、HMGB-2の影響を受けることなくHMGB-1を特異的に測定或いは阻害することは、とても重要である。
血液中のHMGB-1濃度を測定する場合において、また、治療のターゲットとしてHMGB-1の活性を阻害する場合において、抗体は非常に有用なツールである。しかしながら、HMGB-2に結合することなくHMGB-1に特異的に結合し、かつHMGB-1に親和性の高い抗体を得ることは容易ではない。
その理由は、単にHMGB-1がHMGB-2と非常に相同性が高いということだけではない。目的抗原に対する抗体を調製する場合、目的の抗原を飼育し易い動物(ブタ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラットなど)に免疫を行う。通常、免疫の際には、親和性のよい抗体を誘導する為にいろいろと工夫(アジュバントなど)がなされる。しかし、このことによって炎症反応が誘導され、さらにそれにより動物体内にHMGB-1が誘導される。このことは、免疫を受ける動物にとっては非常に大きな負荷である。
また、HMGB-1が種を越えてホモロジーが非常に高いことも、抗ヒトHMGB-1抗体を得ることを困難にしている。つまり、ヒトを中心に考えた場合、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラットのHMGB-1の一次構造がアミノ酸レベルで2-3残基しか異ならない(非特許文献7)。そのため、ヒトHMGB-1をこれらの動物に免疫した場合、誘導された親和性の高い抗体が、免疫を受けた動物で誘導されたHMGB-1によって吸収されてしまう。その結果、実際に得られた抗体は親和性の低い、質の悪い抗体となってしまう。
また、免疫する動物の個体差も、よい抗体を得るための大きなポイントとなる。本発明者らの経験では、実際にHMGB-1で検討したところ、個体差のためにウサギ5兎のうち1兎からしか有用な抗体を得られなかった。そしてこの現象はよく再現する。
以下に本発明の先行技術文献を示す。
H. Wangら,SCIENCE,285;248〜251:1999 Andersson, Uら, J. Exp. Med, 192, 565-570, 2000 Scaffidiら, Nature, 418, 191-195, 2002 Parkら, The Journal of Biological Chemistry, 279;27:2004 Shingo. Y. Clini Chem, 9, 1535-37, 2003 Ueno. H. Am J Respir Crit Car Med 2004 L. Wen. Nucleic Acids Research. 17, 1197-1214, 1989 H. J. Lachmann and P. N. Hawkins, Curr Opin Pharmacol., 6, 214-20, 2006
本発明の課題は、抗HMGB-1抗体を有効成分として含有するアミロイドシスの新しい治療剤を提供することである。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、抗HMGB-1抗体が特定の疾患に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)抗ハイモビリティーグループボックスプロテイン1(HMGB-1)抗体を有効成分として含有する、アミロイドシス治療剤。
(2)アミロイドシスが全身性アミロイドシスである、上記(1)に記載の治療剤。
(3)全身性アミロイドシスが二次性全身性アミロイドシスである、上記(2)に記載の治療剤。
(4)抗HMGB-1抗体が、ハイモビリティーグループボックスプロテイン2 (HMGB-2)よりもHMGB-1に強く結合することを特徴とする、上記(1)から(3)のいずれかに記載の治療剤。
(5)抗HMGB-1抗体が、HMGB-2に結合しないことを特徴とする、上記(1)から(3)のいずれかに記載の治療剤。
(6)抗HMGB-1抗体が、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識することを特徴とする、上記(1)から(5)のいずれかに記載の治療剤。
(7)抗ハイモビリティーグループボックスプロテイン1(HMGB-1)抗体を被検者に投与する工程を含む、アミロイドシスの治療方法。
(8)アミロイドシスが全身性アミロイドシスである、(7)に記載の方法。
(9)全身性アミロイドシスが二次性全身性アミロイドシスである、(8)に記載の方法。
(10)抗HMGB-1抗体がハイモビリティーグループボックスプロテイン2 (HMGB-2)よりもHMGB-1に強く結合することを特徴とする(7)から(9)のいずれかに記載の方法。
(11)抗HMGB-1抗体がHMGB-2に結合しないことを特徴とする、(7)から(9)のいずれかに記載の方法。
(12)抗HMGB-1抗体が配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識することを特徴とする、(7)から(11)のいずれかに記載の方法。
(13)アミロイドシス治療剤の製造における、抗ハイモビリティーグループボックスプロテイン1(HMGB-1)抗体の使用。
(14)アミロイドシスが全身性アミロイドシスである、(13)に記載の使用。
(15)全身性アミロイドシスが二次性全身性アミロイドシスである、(14)に記載の使用。
(16)抗HMGB-1抗体がハイモビリティーグループボックスプロテイン2 (HMGB-2)よりもHMGB-1に強く結合することを特徴とする、(13)から(15)のいずれかに記載の使用。
(17)抗HMGB-1抗体がHMGB-2に結合しないことを特徴とする、(13)から(15)のいずれかに記載の使用。
(18)抗HMGB-1抗体が配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識することを特徴とする、(13)から(17)のいずれかに記載の使用。
(19)アミロイドシスを治療するための、抗ハイモビリティーグループボックスプロテイン1(HMGB-1)抗体。
(20)アミロイドシスが全身性アミロイドシスである、(19)に記載の抗体。
(21)全身性アミロイドシスが二次性全身性アミロイドシスである、(20)に記載の抗体。
(22)抗HMGB-1抗体がハイモビリティーグループボックスプロテイン2 (HMGB-2)よりもHMGB-1に強く結合することを特徴とする、(19)から(21)のいずれかに記載の抗体。
(23)抗HMGB-1抗体がHMGB-2に結合しないことを特徴とする、(19)から(21)のいずれかに記載の抗体。
(24)抗HMGB-1抗体が配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識することを特徴とする、(19)から(23)のいずれかに記載の抗体。
ブタ胸腺よりHMGB-1及びHMGB-2をサンダースらの方法に従って調製する際に行った陽イオン交換クロマトグラフィーにおいて、溶出された画分を280nmの吸光度でモニタリングした結果を示す図である。溶出された画分について15%SDS-PAGEを行い、図中A及びBの画分がHMGB-1を含み、C及びDの画分がHMGB-2を含むことを確認した。 ヒトHMGB-1の167番目のアミノ酸残基(リシン)より180番目のアミノ酸残基(リシン)までの配列に対する、抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体の反応性をELISAにて測定した結果を示す図である。固相化抗原には、該配列のN末端にシステインを付加し、担体としてスカシガイのヘモシアニン(KLH)又はウシ血清アルブミン(BSA)を結合させた抗原を用いた。横軸は、該ELISA系に添加した抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体の濃度を示す。また、縦軸は、該ELISA系において、該抗原に結合した抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体量を、パーオキシダーゼ(POD)標識抗ニワトリIgY抗体及びパーオキシダーゼ反応液を用い、吸光度として検出した値を示す。いずれの担体が付いたぺプチド抗原に対しても、抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体は、濃度依存的に反応した。方法の詳細は実施例8に記載した。 ヒトHMGB-1の167番目のアミノ酸残基(リシン)より180番目のアミノ酸残基(リシン)までの配列のN末端にシステインを付加し、担体としてスカシガイのヘモシアニン(KLH)又はウシ血清アルブミン(BSA)を結合させた抗原を用い取得したポリクローナル抗体のヒトHMGB-1及びヒトHMGB-2に対する反応性をウエスタンブロッティングにて検討した結果を示す写真である。「1」はポリクローナル抗体(実施例9で調製したポリクローナル抗体)における結果である。「2」はパーオキシダーゼ標識抗ニワトリIgY抗体(Up-Data社製)のみを反応させたもの。「3」は実施例6で得られた抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体を反応させ、ヒトHMGB-1,2の位置を明らかにしたものである。 クローンR06G7E10が産生するモノクローナル抗体の、ヒトHMGB-1及びHMGB-2に対する反応性を、ウエスタンブロット法により検討した結果を示す写真である。「1」はパーオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(ダコ社製)のみを反応させたもの。「2」はR06G7E10(実施例11で調製したモノクローナル抗体)における結果である。「3」は実施例6で得られた抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体を反応させ、ヒトHMGB-1,2の位置を明らかにしたものである。 アミロイドシスモデルマウスの脾臓におけるアミロイドの沈着具合を示す写真である。同モデルは、6週齢のC3H/HeNCrj系統♂に対して、2%AgNO3 400μLを皮下注射するとともに、二次性アミロイドシスマウス脾臓からのホモジネート液(amyloid enhancing factor; AEF) 400μLを腹腔内投与することにより作製した。AgNO3 及びAEF 400μLを腹腔内投与した後、4日後(B)及び7日後(C)に、アミロイドの沈着が認められた(アミロイドはCongo redにより赤く染色されている)。一方、2%AgNo3 400μL皮下注射のみの場合(A)には、投与7日後においても、Congo red染色の程度は弱いことが確認された。 アミロイドシスモデルマウスにおける血清アミロイド(SAA)の推移を示す図である。同モデルは、6週齢のC3H/HeNCrj系統♂に対して、2%AgNO3 400μLを皮下注射するとともに、二次性アミロイドシスマウス脾臓からのホモジネート液(amyloid enhancing factor; AEF) 400μLを腹腔内投与することにより作製した。2%AgNO3 400μL皮下注射+AEF 400μLを腹腔内投与した後、翌日をピークにSAAの上昇が認められた。 アミロイドシスモデルマウスの脾臓におけるアミロイド沈着に対する、抗HMGB-1抗体の抑制効果を示す写真である。6週齢のC3H/HeNCrj系統♂に対して、2%AgNO3 400μLを皮下注射するとともに、前もって抗HMGB-1抗体(実施例で調製した抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体)で処理した二次性アミロイドシスマウス脾臓からのホモジネート液(amyloid enhancing factor; AEF)(B)又は何も処理していないAEF(A)400μLを腹腔内に投与した。投与6日後に、脾臓におけるアミロイド沈着を比較検討した。前もって抗HMGB-1抗体で処理したAEFを投与したマウスにおいては、脾臓におけるアミロイド沈着が抑制されていることが認められた(アミロイドはCongo redにより赤く染色されている)。
〔発明の実施の形態〕
本発明によって、アミロイドシスの新たな治療剤が提供される。HMGB-1に対する抗体の投与により、アミロイドシスの予防又は治療が可能であることが本願発明により見出された。
本発明で使用される抗HMGB-1抗体はHMGB-1に結合し、かつアミロイドシスの治療に効果を有するものであれば特に限定されず、その由来(ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、等)、種類(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体)、形状(改変抗体、修飾抗体、抗体断片、低分子化抗体、等)、アイソタイプ(IgG、IgMなど)等を問わない。
本発明で使用される抗体の好ましい態様の一つとして、HMGB-2よりもHMGB-1に強く結合する抗体を挙げることができる。特に好ましい抗体として、ヒトHMGB-2よりもヒトHMGB-1に強く結合する抗体を挙げることができる。本発明において、HMGB-2よりもHMGB-1に強く結合するとは、抗体のHMGB-1に対する結合活性がHMGB-2に対する結合活性より大きいことを意味する。HMGB-1に対する結合活性がHMGB-2に対する結合活性より大きい限り結合活性の差は特に限定されないが、好ましくはHMGB-1に対する結合活性がHMGB-2に対する結合活性より2倍以上大きく、より好ましくはHMGB-1に対する結合活性がHMGB-2に対する結合活性より5倍以上大きく、さらに好ましくはHMGB-1に対する結合活性がHMGB-2に対する結合活性より10倍以上大きい。
抗体のHMGB-1又はHMGB-2への結合は当業者に公知の方法、例えばELISA、BIACORE、ウエスタンブロット、フローサイトメトリー等により検出することが可能である。又、抗体の結合活性はELISA、BIACORE等の当業者に公知の方法により測定することが可能である。
本発明で使用される抗体の好ましい態様の一つとして、HMGB-1に結合するがHMGB-2には結合しない抗体を挙げることができる。特に好ましい抗体として、ヒトHMGB-1に結合するがヒトHMGB-2には結合しない抗体を挙げることができる。本発明においてHMGB-2に結合しないとは、抗HMGB-1抗体とHMGB-2との結合が実質的に検出されないことを意味する。抗HMGB-1抗体がHMGB-2に結合するか否かは、ウエスタンブロット、ELISA等の通常の方法により確認することが可能である。
本発明で使用される抗体の好ましい態様の一つとして、HMGB-1に対する中和活性を有する抗体を挙げることができる。HMGB-1に対する中和活性を有する抗体はHMGB-1とその受容体との結合を阻害することが可能である。抗体の中和活性は当業者に公知の方法で確認することが可能であり、例えば、ELISA、BIACORE等で確認することが可能である。
本発明で使用される抗HMGB-1抗体は、公知の手段を用いてポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体として得ることができる。例えば、動物に対して抗原を免疫することにより調製することができる。
免疫原とするHMGB-1は特に限定されず、HMGB-1を構成する蛋白質全体、もしくは該蛋白質の部分ペプチド等を用いることができる。また、HMGB-1蛋白質又はその部分ペプチドを他の分子に結合させてもよいし、HMGB-1の部分配列(ペプチド)を適当な担体に結合させて免疫原としてもよい。また、必要に応じ、該抗原を細胞表面上に発現する細胞を免疫原とすることもできる。このような細胞は、天然(腫瘍セルライン等)由来の細胞、又は、組換え技術により抗原分子を発現するように構成された細胞であってもよい。
動物を免疫する抗原としては、免疫原性を有する完全抗原と、免疫原性を有さない不完全抗原(ハプテンを含む)が挙げられる。本発明で使用される抗体の取得にあたっては、そのどちらを用いてもよい。
HMGB-1蛋白質又はその部分ペプチドは公知の方法により取得することが可能であり、例えば、HMGB-1をヒト胸腺、ブタ胸腺、ウシ胸腺、ヒト胎盤、好中球、HL-60細胞株等から取得する方法が公知である(Goodwin H et al., Biochem Biophy Acta (1975) 405: 280-91; Yoshida M et al., J Biochem (1980) 95: 117-24; Adachi Y et al., J Chromatogr (1992) 530: 39-46)。また、ウシHMGB-1及びウシHMGB-2の混合物が、和光純薬工業社より販売されているので、これよりウシHMGB-1のみを精製し取得することもできる。
また、ヒト、ウシ、ブタ、ウサギ、マウス、ラット等のHMGB-1をコードする遺伝子が公知であり、それらの遺伝子情報に基づき、遺伝子工学的な手法により抗原となるHMGB-1を取得することもできる。例えば、ヒトHMGB-1のアミノ酸配列は、GenBank Accession No. NP_002119、それをコードするヌクレオチド配列は、GenBank Accession No. NM_002128として公開されている。このようにして取得された種々の動物由来のHMGB-1を本発明で使用される抗体を得るための抗原(免疫原)として使用することができる。
本発明で使用される抗体を作製するために用いられる免疫原の好ましい例として、HMGB-1とHMGB-2との間で相同性の低いHMGB-1由来のアミノ酸配列を含むペプチドを挙げることができる。又、免疫原となるペプチドは、親水性が高いアミノ酸配列を含むことが好ましい。何故なら、親水性が高い程、そのアミノ酸配列がHMGB-1分子の表面に存在する可能性が高いため、これを免疫原として産生された抗体がHMGB-1に結合できる可能性も高いからである。本発明における免疫原を構成する各アミノ酸残基の親水性の高さの推定は、ホップらの方法(T.P.Hoppら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,78巻,3824〜3828頁,1981年発行)又はパーカーらの方法(Parkerら,Biochemistry,25巻,5425〜5432頁,1986年発行)等により行うことができる。
従って、本発明で使用される抗体を作製するために用いられる免疫原の特に好ましい例として、HMGB-1とHMGB-2との間で相同性が低く、かつ親水性が高いHMGB-1由来のアミノ酸配列を含むペプチドを挙げることができる。HMGB-1とHMGB-2との間で相同性が低く、かつ親水性が高いHMGB-1由来のアミノ酸配列を含むペプチドは、例えば、実施例1に記載の方法などにより決定することが可能である。
HMGB-1とHMGB-2との間で相同性が低く、かつ親水性が高いHMGB-1由来のアミノ酸配列を含むペプチドの具体例としては、ヒトHMGB-1の167番目のアミノ酸残基(リシン)より180番目のアミノ酸残基(リシン)までの、「Lys Pro Asp Ala Ala Lys Lys Gly Val Val Lys Ala Glu Lys」(配列番号:1)を挙げることができる。
感作抗原による動物の免疫は、公知の方法に従って行われる。一般的な方法として、感作抗原を動物の腹腔内又は皮下に注射することが挙げられる。具体的には、感作抗原をPBS、生理食塩水等の適当量に希釈、懸濁したものに、所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合、乳化した後、動物に4〜21日毎に数回投与する。また、感作抗原免疫時に、適当な担体を使用してもよい。このように動物を免疫し、血清中に所望の上昇した抗体レベルが確認された後、モノクローナル抗体の取得を目的とする場合、ハイブリドーマを作製するために該動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に付す。免疫する動物として、例えば、マウス、ラット、ハムスター、ニワトリ、又はアカゲザル等を用いることができる。
HMGB-1に結合するポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体は、例えば、以下に記載の方法により取得することができる。
ポリクローナル抗体・抗血清
HMGB-1に対するポリクローナル抗体又は抗血清の取得は、以下の操作により取得することができる。
まず、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を哺乳動物(マウス、ウサギ、ラット、ヒツジ、ヤギ、ウマ等)又は鳥類等に免疫する。HMGB-1の場合、1)動物を免疫すること自体が、免疫動物において強い炎症を引き起こし、血液中にHMGB-1を誘導すること、及び、2)HMGB-1の種間のホモロジーが非常に高く、誘導された抗HMGB-1抗体が炎症で誘導されてきたHMGB-1に吸収されてしまい、最終的に得られる抗血清中の目的とするHMGB-1との親和性が高い抗体が減り、親和性の弱い抗体ばかりが残ってしまうこと、等を考慮すると、ニワトリ等の鳥類を免疫動物として用いることが好ましい。ニワトリHMBG-1は、ヒトHMGB-1とのホモロジーが低いため(アミノ酸配列において76%の相同性)、ヒトHMGB-1に対する抗体の取得を目的とする場合、上記現象を回避することができる。
この前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物の免疫量は、免疫動物の種類、免疫注射部位等により決められるものであるが、マウスの場合には約5〜10週齢のマウス一匹当り一回につき0.1μg〜数mg、好ましくは5μg〜1mgの前記免疫原、又は前記免疫原と担体の結合物を注射する。また、ウサギの場合はウサギ一匹当り一回につき10μg〜数十mg、ニワトリの場合はニワトリ一羽当り一回につき0.1μg〜数十mgの前記免疫原又は前記免疫原と担体の結合物を注射する。なお、この前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物は、アジュバントと添加混合して注射することが好ましい。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント又は百日咳菌アジュバント等の公知のものを用いることができる。注射は、皮下(腹部皮下、背部皮下、フットパット等)、静脈内、腹腔内等に行えばよい。
初回免疫後、2〜3週間間隔で皮下(腹部皮下、背部皮下、フットパット等)、静脈内、腹腔内等に、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を追加注射する。この場合も、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物は、アジュバントを添加混合して追加注射することが好ましい。初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA法等により繰り返し行い、一般には抗体価がプラトーに達したら全採血を行い、血清を分離して本発明で使用される抗体を含む抗血清を得る。
この抗血清から、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム等による塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過法又はアフィニティークロマトグラフィー等の方法、あるいはこれらの方法を組み合わせて抗体の精製を行い、ポリクローナル抗体を得る。
ここで得られたポリクローナル抗体は、HMGB-1には結合するがHMGB-2には結合しないポリクローナル抗体と、HMGB-1及びHMGB-2のいずれにも結合するポリクローナル抗体の両方よりなるものである。これらを、HMGB-2をリガンドとして固相に固定化したアフィニティークロマトグラフィーのカラムに通すことにより、HMGB-1には結合するがHMGB-2には結合しないポリクローナル抗体とHMGB-1及びHMGB-2のいずれにも結合するポリクローナル抗体に分離することができる。HMGB-1及びHMGB-2のいずれにも結合するポリクローナル抗体は、このカラムのリガンド(HMGB-2)を介して固相に結合し、捕集される。一方、HMGB-1には結合するが、HMGB-2には結合しないポリクローナル抗体は、このカラムのリガンド(HMGB-2)に結合することなく、このカラムを素通りするので、素通りした画分を得ることにより、ヒトHMGB-1には結合するが、ヒトHMGB-2には結合しないポリクローナル抗体を取得することができる。
また免疫原と担体の結合物を用いて動物に免疫した場合には、得られた抗血清又はポリクローナル抗体中に、この担体に対する抗体が存在するので、このような担体に対する抗体の除去処理を行うことが好ましい。この除去処理方法としては、担体を、得られたポリクローナル抗体又は抗血清の溶液中に添加して生成した凝集物を取り除くか、担体を不溶化固相に固定化してアフィニティークロマトグラフィーにより除去する方法等を用いることができる。
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、ケーラーらの細胞融合法(Koehler G et al., Nature (1975) 256: 495-7)によるハイブリドーマ、又はエプスタン−バーウイルス等のウイルスによる腫瘍化細胞等の抗体産生細胞により得ることができる。
例えば、細胞融合法によるモノクローナル抗体の調製は、以下の操作により行うことができる。まず、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を、哺乳動物(マウス、ヌードマウス、ラットなど、例えば近交系マウスのBALB/c)又は鳥類(ニワトリなど)等に免疫する。この前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物の免疫量は、免疫動物の種類、免疫注射部位等により適宜決められるものであるが、例えば、マウスの場合には一匹当り一回につき0.1μg〜5mg、ニワトリの場合は一羽当り一回につき0.1μg〜数十mgの前記の免疫原又は前記の免疫原と担体の結合物を注射するのが好ましい。なお、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物は、アジュバントを添加混合して注射することが好ましい。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、水酸化アルミニウムアジュバント又は百日咳菌アジュバント等の公知なものを用いることができる。注射は、皮下(腹部皮下、背部皮下、フットパット等)、静脈内、腹腔内等に行えばよい。
初回免疫後、1〜2週間間隔で皮下(腹部皮下、背部皮下、フットパット等)、静脈内、腹腔内等に、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を追加注射する。この追加注射の回数としては2〜6回が一般的である。この場合も前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物は、アジュバントを添加混合して追加注射することが好ましい。
初回免疫の後、免疫動物の血清中の抗体価の測定をELISA法等により繰り返し行い、一般には抗体価がプラトーに達したら、前記の免疫原、又は前記の免疫原と担体の結合物を、例えばPBSあるいは生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)に溶解したものを静脈内又は腹腔内に注射し、最終免疫とする。この最終免疫の3〜5日後に、免疫動物の脾細胞、リンパ節細胞又は末梢リンパ球等の抗体産生能を有する細胞を取得する。
この免疫動物より得られた抗体産生能を有する細胞と哺乳動物等(マウス、ヌードマウス、ラットなど)の骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)とを細胞融合させる。前記免疫細胞とミエローマ細胞との融合は、基本的には公知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインらの方法(Kohler及びMilstein, Methods Enzymol (1981) 73: 3-46)等に準じて行うことができる。
より具体的には、例えば、細胞融合は、細胞融合促進剤を用いて実施され得る。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され得、さらに所望により融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加することもできる。免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は、任意に設定することができる。例えば、一般には、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。これら細胞に用いる培養液としては、ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液等が例示されるが、その他、この種の細胞培養に通常用いられる培養液を適宜使用することができる。さらに、ウシ胎児血清(FCS)等の血液補液を培養液に加えてもよい。免疫細胞を所定量のミエローマ細胞とよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば、平均分子量1000-6000程度)を通常30-60%(w/v)の濃度で添加し、混合することによって細胞融合を行い、目的とする融合細胞(ハイブリドーマ)を形成させる。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことにより、ハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。形成されたハイブリドーマは、通常の選択培養液、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む培養液)で培養することにより選択することができる。上記HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日から数週間)継続する。ついで、通常の限界希釈法あるいはメチルセルロース含有半流動培地を用いるコロニー法等を実施することにより、目的とする抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニング及び単一クローニングを行う。
細胞融合に用いられる好ましい免疫細胞としては、特に脾臓細胞が挙げられる。一方、免疫細胞と融合する親細胞としては、通常、哺乳動物のミエローマ細胞が用いられる。種々のミエローマ細胞株が公知であり、いずれのものを用いることもできる。例えば、P3(P3×63Ag8.653)(J Immunol (1979) 123: 1548-50)、P3×63Ag8U.1(Curr Topics Microbiol Immunol (1978) 81: 1-7)、NS-1(Kohler及びMilstein, Eur J Immunol (1976) 6: 511-9)、MPC-11(Margulies et al., Cell (1976) 8: 405-15)、SP2/0(Shulman et al., Nature (1978) 276: 269-70)、F0(deSt.Groth et al., J Immunol Methods (1980) 35: 1-21)、S194(Trowbridge, J Exp Med (1978) 148: 313-23)、R210(Galfre et al., Nature (1979) 277: 131-3)等が好適に使用され得る。
このようにして得られたハイブリドーマの培養上清を、前記の免疫原、前記の免疫原と担体の結合物、又はヒトHMGB-1等を用いてELISA法やウエスタンブロット法等の免疫学的測定法によりアッセイすることにより、ヒトHMGB-1等に結合する抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。また、前記のハイブリドーマの培養上清を、ヒトHMGB-2等を用いてELISA法やウエスタンブロット法等の免疫学的測定法によりアッセイすることにより、ヒトHMGB-2よりヒトHMGB-1により強く結合する抗体や、ヒトHMGB-1には結合するがヒトHMGB-2等には結合しない抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。この2種類のハイブリドーマ選択方法と、限界希釈法あるいはメチルセルロース含有半流動培地を用いるコロニー法等の公知のクローニングの方法を組み合わせて行うことにより、本発明で使用される特に好ましい抗体(モノクローナル抗体)、即ちヒトHMGB-1には結合するが、ヒトHMGB-2には結合しない抗体(モノクローナル抗体)の産生細胞株を単離して得ることができる。このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。
ハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法に従い培養し、その培養上清としてモノクローナル抗体を得る方法が挙げられる。又は、ハイブリドーマと適合性がある動物の腹腔内に、ハイブリドーマを投与して増殖させ、該動物に生じる腹水よりモノクローナル抗体を得る方法を採用してもよい。この際、動物の腹腔内に、予めプリスタンを投与し、刺激しておくとよい。前者の方法は、高純度の抗体を得るのに適しており、後者は、抗体を簡易に大量生産するのに適している。
モノクローナル抗体産生細胞株を培養して抗体を得る場合、無血清培地、低濃度血清培地、又は抗体除去処理を施した血清を含む培地等を培地として用いることができる。抗体の精製がより容易となるDMEM、RPMI1640培地又はASF培地103等の培地を、好適には用いることができる。
また、上述のようにヒト以外の動物に抗原を免疫してハイブリドーマを得る代わりに、ヒトリンパ球をin vitroで抗原に感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させ、所望のヒト抗体を産生するハイブリドーマを得ることもできる(特公平1-59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全て又は一部のレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原を投与して抗体産生細胞を取得して、これを不死化させ、所望のヒト抗体を産生するハイブリドーマを取得してもよい(WO94/25585号; WO93/12227号; WO92/03918号; WO94/02602号等参照)。
抗体断片
本発明で使用される抗HMGB-1抗体は、HMGB-1に結合し、アミロイドシスに対して治療効果を有するものである限り、抗体断片又は抗体修飾物であってもよい。抗体断片としては、Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、ダイアボディ(diabody;Db)、線状抗体、一本鎖抗体(以下、scFvとも記載する)分子等が含まれる。「Fv」断片は、最小の抗体断片であり、完全な抗原認識部位と結合部位を含む。「Fv」断片は、1つの重(H)鎖可変領域(VH)及び軽(L)鎖可変領域(VL)が、非共有結合により強く連結されたダイマー(VH-VLダイマー)である。各可変領域の3つの相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)が相互作用し、VH-VLダイマーの表面に抗原結合部位が形成される。6つのCDRにより、抗体の抗原結合部位が形成されている。しかしながら、1つの可変領域(又は、抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、全結合部位よりも親和性は低くなるが、抗原を認識し、結合する能力を有する。従って、そのような1つの可変領域若しくはCDRのみを含む断片、3つのCDRのみを含むFvの半分も、HMGB-1に結合し、アミロイドシスに対して治療効果を有するものである限り、本発明において使用することができる。
また、Fab断片(F(ab)とも呼ばれる)はさらに、L鎖の定常領域及びH鎖の定常領域(CH1)を含む。Fab'断片(F(ab’)とも呼ばれる)は、抗体のヒンジ領域の1又はそれ以上のシステインを含むH鎖CH1領域のカルボキシ末端由来の数残基を付加的に有する点でFab断片と異なっている。Fab'-SH断片(F(ab’)-SHとも呼ばれる)は、定常領域の1又はそれ以上のシステイン残基が遊離チオール基を有する形態のFab'断片を示すものである。F(ab')2断片は、2分子のFab'-SH断片がジスルフィド結合した抗体断片である。これらの抗体断片を作製する方法としては、具体的には、完全分子の抗体を、酵素、例えばパパイン、ペプシンで処理し抗体断片を生成させる方法や、抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後に、適当な宿主細胞で発現させる方法が挙げられる(例えば、Co MS et al., J Immunol (1994)152: 2968-76)。その他の抗体断片として、化学的結合を含有する抗体断片も当業者には知られており、これらの抗体も本発明において使用することが可能である。
ダイアボディは、遺伝子組換え手法により構築された二価(bivalent)の抗体断片を指す(Holliger P et al. (1993) Proc Natl Acad Sci USA 1993, 90: 6444-8; EP404,097号; WO93/11161号等)。ダイアボディは、2本のポリペプチド鎖から構成されるダイマーであり、ポリペプチド鎖は各々、同じ鎖中で、抗体由来のL鎖可変領域(VL)及びH鎖可変領域(VH)が、互いに結合できない位に短い、例えば、5残基程度のリンカーにより結合されている。同一ポリペプチド鎖上にコードされるVLとVHとは、その間のリンカーが短いため単鎖可変領域フラグメントを形成することが出来ず二量体を形成するため、ダイアボディは2つの抗原結合部位を有することとなる。
一本鎖抗体又はscFv抗体断片には、抗体のVH及びVL領域が含まれ、これらの領域は、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、FvポリペプチドはさらにVH及びVL領域の間にポリペプチドリンカーを含んでおり、これによりscFvは、抗原結合のために必要な構造を形成することができる(Huston JS et al., Proc Natl Acad Sci USA (1988) 85: 5879-83;scFvの総説については、Pluckthun『The Pharmacology of Monoclonal Antibodies』Vol.113(Rosenburg and Moore ed (Springer Verlag, New York) pp.269-315, 1994)を参照)。本発明におけるリンカーは、その両端に連結された抗体可変領域の発現、及び活性を完全に阻害するものでなければ特に限定されない。
scFvをコードするDNAは、例えば、以下のように得られる。
(1) 前記抗体のH鎖又は、H鎖V領域をコードするDNA、およびL鎖又は、L鎖V領域をコードするDNAを鋳型とし、それらの配列のうちの所望のアミノ酸配列をコードするDNA部分を、その両端を規定するプライマー対を用いてPCR法により増幅する。
(2) 次いで、ペプチドリンカー部分をコードするDNAおよびその両端を各々H鎖、L鎖と連結させるように規定するプライマー対を組み合わせて増幅する。
また一旦scFvをコードするDNAが作製されれば、それらを含有する発現ベクター、および該発現ベクターにより形質転換された宿主を常法に従って得ることができ、また、その宿主を用いて常法に従って、scFvを得ることができる。
さらに必要に応じ、本発明で使用される抗体は、二種特異性抗体であってもよい。IgGタイプ二種特異性抗体はIgG抗体を産生するハイブリドーマ二種を融合することによって生じるhybrid hybridoma (quadroma)によって分泌させることが出来る(Milstein C et al. (1983) Nature 305: 537-40)。また、二種のIgGそれぞれを構成するL鎖及びH鎖の遺伝子、合計4種の遺伝子を細胞に導入することによって共発現させることによって分泌させることが出来る。この際H鎖のCH3領域に適当なアミノ酸置換を施すことによって、H鎖についてヘテロな組合せのIgGを優先的に分泌させることも出来る(Ridgway JB et al. (1996) Protein Engineering 9: 617-21; Merchant AM et al. (1998) Nat Biotech 16: 677-81)。
Fab’を化学的に架橋することによっても二種特異性抗体を作製し得る。例えば、一方の抗体から調製したFab’をo-PDM(ortho-phenylenedi-maleimide)にてマレイミド化し、これともう一方の抗体から調製したFab’を反応させることにより、異なる抗体由来Fab’同士を架橋させ二種特異性 F(ab’)2を作製することが出来る(Keler T et al. (1997) Cancer Res 57: 4008-14)。また、Fab’-チオニトロ安息香酸(TNB)誘導体とFab’-チオール(SH)等の抗体断片を化学的に結合する方法も知られている(Brennan M et al. (1985) Science 229: 81-3)。
化学架橋の代りに、Fos、Jun等に由来するロイシンジッパーを用いることも出来る。Fos、 Junはホモダイマーも形成するが、ヘテロダイマーを優先的に形成することを利用する。Fosロイシンジッパーを付加したFab’とJunのそれを付加したもう一方のFab’を発現調製する。温和な条件で還元した単量体Fab’-Fos、 Fab’-Junを混合し反応させることによって二種特異性 F(ab’)2が形成できる(Kostelny SA et al. (1992) J Immunol 148: 1547-53)。この方法は、Fab’に限定されるものでなく、scFv、 Fv等を連結する際にも応用可能である。
ダイアボディも、二種特異性を有するように作製し得る。二種特異性ダイアボディは、二つのcross-over scFv断片のヘテロダイマーである。つまり、二種の抗体A,B由来のVHとVLを5残基前後の比較的短いリンカーで結ぶことによって作製されたVH(A)-VL(B), VH(B)-VL(A)を、ヘテロダイマーとして構成することにより、作製することが出来る(Holliger P et al. (1993) Proc Natl Acad Sci USA 90: 6444-8)。
この際、二種のscFvを15残基程度の柔軟な比較的長いリンカーで結び(一本鎖ダイアボディ:Kipriyanov SM et al. (1999) J Mol Biol 293: 41-56)、適当なアミノ酸置換(knobs-into-holes: Zhu Z et al. (1997) Protein Sci 6: 781-8)を行うことによって目的の構成を促進させることも出来る。二種のscFvを15残基程度の柔軟な比較的長いリンカーで結ぶことによって作製できるsc(Fv)2も二種特異性抗体となり得る(Mallender WD et al. (1994) J Biol Chem 269: 199-206)。
組換え抗体
抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込み作製された発現ベクターを宿主に導入する遺伝子組み換え技術により、本発明で使用される抗体を組換え型の抗体として作製することも可能である(例えば、Vandamme et al., Eur J Biochem (1990) 192: 767-75参照)。具体的には、最初に、所望の抗体を産生するハイブリドーマから、mRNAを調製する。公知の方法、例えば、グアニジン超遠心法(Chirgwin et al., Biochemistry (1979) 18: 5294-9)、AGPC法(Chomczynski et al., Anal Biochem (1987)162: 156-9)等により、抗体を産生する脾臓細胞から全RNAを調製した後、mRNA Purification Kit (Pharmacia)等を使用して、mRNAを調製することができる。また、QuickPrep mRNA Purification Kit (Pharmacia)を用いることにより、全RNAを調製することなしに、mRNAのみを直接調製することもできる。次に、得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを合成する。cDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (生化学工業)等を用いて行うことができる。また、cDNAの合成及び増幅は、5’-Ampli FINDER RACE Kit (Clontech)を用い、PCRを利用した5’-RACE法(Frohman et al., Proc Natl Acad Sci USA (1988) 85: 8998-9002; Belyavsky et al., Nucleic Acids Res (1989) 17: 2919-32)等により行うことができる。例えば、可変領域付近に対応するプライマーを用いて、RT-PCRにてL鎖、H鎖可変領域(VL、VH)のcDNAを増幅し、回収する。プライマーとしては、CDRに対応するプライマー、CDRよりも多様性の低いフレームワークに対応するプライマー、あるいはシグナル配列とCH1若しくはL鎖定常領域(CL)に対応するプライマーを用いることができる。続いて、得られたPCR産物から目的とするDNA断片を精製し、ベクターDNAに連結することにより組換えベクターを作製する。該組換えベクターを大腸菌等の宿主細胞に導入し、形質転換された細胞のコロニーを選択する。得られた細胞を培養することにより、所望の組換え抗体を作製することができる。必要に応じ、目的とする抗体をコードする遺伝子の塩基配列を公知の方法、例えば、ジデオキシヌクレオチド法等により確認する。
また、上記で得られた抗体V領域をコードするDNAを、所望の抗体定常領域 (C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込むこともできる。発現ベクターは、発現制御領域、例えば、エンハンサー及びプロモーターを含み得る。本発明の治療剤において使用される抗体のDNAは、該発現制御領域の制御により発現されるように組み込まれる。この発現ベクターを用い、適当な宿主細胞を形質転換することにより、所望の分子型の抗体を発現させ、これを得ることができる。
抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)又は軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時に形質転換させてもよいし、或いは、H鎖及びL鎖をコードするDNAが組み込まれた単一の発現ベクターにより宿主細胞を形質転換してもよい(WO94/11523等参照)。
ヒト抗体及びヒト化抗体
本発明で使用される抗体は、ニワトリ抗体、マウス抗体、ラット抗体等、その由来は限定されないが、ヒトへの投与を目的とした場合、ヒト化抗体又はヒト抗体が好ましい。ヒト抗体の取得方法は既に知られており、例えば、ヒト抗体遺伝子の全て又は一部のレパートリーを有するトランスジェニック動物を目的の抗原で免疫することで、目的のヒト抗体を取得することができる(WO93/12227, WO92/03918,WO94/02602, WO94/25585,WO96/34096, WO96/33735参照)。
本発明で使用される組換え型抗体には、ヒトにおける異種抗原性を低下させること等を目的に、遺伝子工学的手法を用いて作製した改変抗体を使用することができる。改変抗体にはヒト抗体定常領域を有するキメラ抗体、ヒト化抗体などが含まれる。このような遺伝子改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。具体的には、例えば、キメラ抗体は、免疫動物の抗体のH鎖、及びL鎖の可変領域と、ヒト抗体のH鎖及びL鎖の定常領域からなる抗体である。免疫動物由来の抗体の可変領域をコードするDNAを、ヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることによって、キメラ抗体を得ることができる。
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称される改変抗体である。ヒト化抗体は、免疫動物由来の抗体のCDRを、ヒト抗体のCDRへ移植することによって構築される。その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、まず、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)とを連結するように、DNA配列を設計する。このDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように数個に分ける。それぞれのオリゴヌクレオチドを合成し、PCR法により、設計したDNA配列に組み立てる。組み立てられたDNAを、ヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させる(EP 239400; WO 96/02576参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のFRとしては、結果として作製されるヒト化抗体のCDRが、良好な抗原結合部位を形成できるようなFRが選択される。必要に応じ、ヒト化抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するように、ヒト化抗体の可変領域におけるFRのアミノ酸を置換してもよい(Sato K et al., (1993) Cancer Res 53: 851-6)。また、他の様々なヒト抗体由来のFRに置換してもよい(WO 99/51743参照)。
アミノ酸改変抗体
本発明で使用される抗体は、上述のようにして得られた抗体のアミノ酸配列を置換、欠失、付加及び/又は挿入等により改変されたものも含まれる。アミノ酸配列の改変は、公知の方法により行うことができる。アミノ酸の置換、欠失、付加及び/又は挿入等により改変された抗体は改変前の抗体と同様の活性を有していることが好ましい。
ここで、「同様の活性」とは、改変前の抗体と同様の生物学的又は生化学的活性を意味する。生物学的又は生化学的活性の具体的な例としては、結合活性、中和活性等を挙げることができる。
通常、改変前の抗体と同様の活性を有する抗体は、改変前の抗体と高い相同性を有する。本発明において高い相同性とは、アミノ酸レベルにおいて、通常、少なくとも50%以上の同一性、好ましくは75%以上の同一性、さらに好ましくは85%以上の同一性、さらに好ましくは95%以上の同一性を指す。ポリペプチドの相同性を決定するためには、例えば、文献(Wilbur及びLipman, Proc Natl Acad Sci USA (1983) 80: 726-30)等に記載のアルゴリズムを用いることができる。
本発明で使用される抗体は、このようにアミノ酸の置換、欠失、付加及び/又は挿入等により改変された抗体であってもよい。
抗体修飾物
さらに、本発明で使用される抗体には、抗体修飾物が含まれる。抗体修飾物としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)等の各種分子と結合した抗体を挙げることができる。本発明の治療剤において使用される抗体修飾物においては、結合される物質は限定されない。抗体を安定化するため、その結合能を高めるため等、様々な目的で抗体の修飾を行うことができる。このような抗体修飾物は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。
抗体発現・産生
構築された抗体遺伝子を公知の方法により発現させ、抗体を取得することができる。哺乳類細胞の場合、常用される有用なプロモーター/エンハンサー、発現させる抗体遺伝子、及びその3’側下流にポリAシグナルを機能的に結合させたDNAを含む発現ベクターにて、抗体遺伝子を発現させることができる。例えば、プロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウイルス前期プロモーター/エンハンサーが挙げられる。また、それ以外にも、レトロウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40(SV40)などのウイルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター−1αなどの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いることができる。例えば、SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合には、Mullingらの方法 (Mulling RC et al., Nature (1979) 277: 108-14)に従えば、容易に抗体遺伝子を発現することができる。ヒトエロンゲーションファクター−1αを用いる場合には、Mizushimaの方法 (Mizushima, Nucleic Acids Res (1990) 18: 5322) に従えば、容易に抗体遺伝子を発現することができる。大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させたDNAを含む発現ベクターにて、抗体遺伝子を発現させることができる。例えば、プロモーターとしてLacZプロモーター、araBプロモーターが挙げられる。
LacZプロモーターを使用する場合、例えば、Wardらの方法 (Ward ES et al., Nature (1989) 341: 544-6)に従えばよい。araBプロモーターを用いる場合、例えば、Betterらの方法 (Bette M et al., Science (1988) 240: 1041-3)に従えばよい。抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、例えば、pelBシグナル配列 (Lei SP et al., J Bacteriol (1987) 169: 4379-83)を使用すればよい。ペリプラズムに産生させた抗体を分離した後、抗体の構造を適切に組み直して使用することができる (WO 96/30394)。
複製起源としては、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、シミアンウイルス40(SV40)などから由来する複製起源を用いることができる。さらに、アミノグリコシドトランスフェラーゼ遺伝子、チミジンキナーゼ遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子などを含むことができ、これらは、宿主細胞系において遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターにおいて選択マーカーとして使用される。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、in vitro及びin vivoの産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(a) 哺乳類細胞、例えばCHO、COS、 (b) 両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞、 (c) 昆虫細胞、例えばsf9、sf21が知られている。植物細胞としては、例えばニコティアナ属由来の細胞が知られている。これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、(a) 酵母、例えばサッカロミセス属、(b) 糸状菌、例えばアスペルギルス属が知られている。原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌、枯草菌が知られている。これらの細胞に、目的の抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitro で培養することによって抗体が得られる。培養は公知の方法に従う。例えば哺乳類細胞の場合、培養液としてはDMEM、MEM、RPMI1640などを使用することができる。その際牛胎児血清などの血清補液を併用することもできるし、無血清培養でもよい。また抗体遺伝子を導入した細胞を動物細胞の腹腔等へ移植して、in vivoにて抗体を産生してもよい。in vivoの産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用した産生系が挙げられる。動物を使用する場合、例えば、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系がある。哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる。
また、哺乳類動物を用いる場合、トランスジェニック動物を用いることができる。例えば、ヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に抗体遺伝子を挿入して、融合遺伝子を調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギに注入する。胚を受容したヤギから産まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から目的の抗体を得る。トランスジェニックヤギにおいて目的の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適時ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい。また昆虫としては、カイコを用いることができる。カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウイルスをカイコに感染させて、このカイコの体液より目的の抗体を得る。(Maeda S et al., Nature (1985) 315: 592-4)。 さらに、植物を抗体産生に使用する場合、例えばタバコを用いることができる。タバコを用いる場合、目的とする抗体をコードするポリヌクレオチドを植物発現用ベクター、例えばpMON530に挿入し、このベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばニコチアナ・タバカム (Nicotiana tabacum)に感染させ、タバコの葉より所望の抗体を得ることができる (Ma et al., Eur J Immunol (1994) 24:131-8)。
抗体精製
上述のように、ハイブリドーマ培養・増殖又は遺伝子組換えにより得られた抗体は、均一になるまで精製することができる。抗体の分離、精製は、通常の蛋白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えば、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、硫酸アンモニウム又は硫酸ナトリウム等による塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組合せれば、抗体を分離、精製することができる(Antibodies : A Laboratory Manual. Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)が、これらに限定されるものではない。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラム、プロテインLカラム等が挙げられる。
本発明で使用される抗HMGB-1抗体の選択は、例えば、ELISA法等により、ヒトHMGB-1との反応性を調べることにより行うことができる。
アミロイドシスの治療剤/予防剤
本発明は、抗HMGB-1抗体を有効成分として含有するアミロイドシス治療剤を提供する。本発明においてアミロイドシスとは、アミロイドが種々の組織に沈着する疾患を意味する。結核、骨髄腫などに続発するもの、原因不明のもの、遺伝性のものなどに分類され、沈着の分布・部位などにより多彩な症状を呈する。抗HMGB-1抗体を含む本発明の治療剤は、特に、全身性アミロイドシスにおけるアミロイドの沈着の治療及び/又は予防に好適である。さらに本発明の治療剤は、二次性の全身性アミロイドシスにおけるアミロイドの沈着の治療及び/又は予防に好適である。
本発明の抗HMGB-1抗体を有効成分として含む治療剤は、必要に応じて、それらに対して不活性な、適当な薬学的に許容される担体、媒体等と混和して製剤化することができる。例えば、滅菌水や生理食塩水、安定剤、賦形剤、酸化防止剤(アスコルビン酸等)、緩衝剤(リン酸、クエン酸、他の有機酸等)、防腐剤、界面活性剤(PEG、Tween等)、キレート剤(EDTA等)、結合剤等を挙げることができる。また、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンや免疫グロブリン等の蛋白質、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン及びリシン等のアミノ酸、多糖及び単糖等の糖類や炭水化物、マンニトールやソルビトール等の糖アルコールを含んでいてもよい。注射用の水溶液とする場合には、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えば、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、HCO-50)等と併用してもよい。
本発明における治療剤は、抗HMGB-1抗体を、互いの機能が阻害されない限り、二種類以上含んでいても良い。さらに、必要に応じ、本発明における治療剤は、その他のアミロイドシス治療のための治療剤と組み合わせて使用してもよい。
また、必要に応じ本発明における治療剤をマイクロカプセル (ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリ[メチルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入することができる。また、必要に応じ本発明の治療剤をコロイドドラッグデリバリーシステム (リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル等)とすることもできる ("Remington's Pharmaceutical Science 16th edition", Oslo Ed. (1980)等参照)。さらに、薬剤を徐放性の薬剤とする方法も公知であり、本発明の治療剤に適用し得る(Langer et al. (1981) J Biomed Mater Res 15: 267-77 ; Langer (1982) Chemtech 12: 98-105; 米国特許第3,773,919号; EP58,481号; Sidman et al. (1983) Biopolymers 22: 547-56; EP133,988号)。
本発明の治療剤の投与量は、剤型の種類、投与方法、患者の年齢や体重、患者の症状、疾患の種類や進行の程度等を考慮して、最終的には医師の判断により適宜決定されるものである。一般に大人では、1日当たり含有抗体量として、0.1〜10000 mgを1〜数回に分けて、投与することができる。より好ましくは5〜5000mg/日、最も好ましくは50〜2000mg/日である。これらの投与量は患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。投与期間も、患者の治癒経過等に応じて適宜決定することが好ましい。投与経路としては、特に限定するものではないが、静脈内投与、皮下投与などが行われる。
また、本発明の治療剤において使用される抗体をコードする遺伝子を遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。抗体をコードする遺伝子の投与方法としては、nakedプラスミドにより直接投与する方法、リポソーム等にパッケージングして投与する方法、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、アデノウイルス関連ベクター、HVJベクター等の各種ウイルスベクターとして形成し投与する方法(Adolph『ウィルスゲノム法』, CRC Press, Florid (1996)参照)、又は、コロイド金粒子等のビーズ担体に被覆(WO93/17706等)して投与する方法が挙げられる。しかしながら、生体内において抗体が発現され、その作用を発揮できる限りいかなる方法で投与してもよい。好ましくは、適当な非経口経路 (静脈内、腹腔内、皮下、皮内、脂肪組織内、乳腺組織内、吸入又は筋肉内の経路を介して注射、注入する方法、又はガス誘導性粒子衝撃法(電子銃等による)、点鼻薬等粘膜経路を介する方法等)により十分な量が投与される。ex vivoにおいて、リポソームトランスフェクション、粒子衝撃法(米国特許第4,945,050号)又はウイルス感染を利用して、血液細胞及び骨髄由来細胞等に抗体をコードする遺伝子を導入して、該細胞を患者に注入してもよい。
また本発明は、本発明の治療剤を投与する工程を含む、アミロイドシスを治療するための方法を提供する。抗体もしくはその治療剤の投与は、例えば、前記の方法により実施することができる。また本発明は、抗HMGB-1抗体の、本発明の治療剤の製造のための使用に関する。さらに本発明は、少なくとも本発明の治療剤を含む、上記方法に用いるためのキットを提供する。該キットには、注射筒、注射針、薬学的に許容される媒体、アルコール綿布、絆創膏、又は使用方法を記載した指示書等をパッケージしておくこともできる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、実施例により本発明をより具体的に詳述するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
〔実施例1〕ヒトHMGB-1のアミノ酸配列における、親水性が高く、ヒトHMGB-2との間で相同性の低いアミノ酸配列の選択
親水性が高く、ヒトHMGB-2との間で相同性の低いアミノ酸配列を、ヒトHMGB-1のアミノ酸配列より選択した。
(1)ヒトHMGB-1のアミノ酸配列(配列番号:6)は、前記のウエンらのデータの通りである〔Wenら,Nucleic Acids Res.,17巻,1197〜1214頁,1989年発行〕。
(2)このヒトHMGB-1のアミノ酸配列の各アミノ酸残基の親水性の高さの推定を、前記のホップらの方法〔T.P.Hoppら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,78巻,3824〜3828頁,1981年発行〕により行った。
(3)次に、このヒトHMGB-1のアミノ酸配列のうち親水性の高い配列を、ヒトHMGB-2のアミノ酸配列〔M.Yoshidaら,J.Biol.Chem.,267巻,6641〜6645頁,1992年発行〕と比較した。そして、この親水性の高いアミノ酸配列の中から、ヒトHMGB-1とヒトHMGB-2との間で相同性の低いヒトHMGB-1のアミノ酸配列を選択した。
(4)ここで本発明者らが選択したアミノ酸配列の第1番目は、ヒトHMGB-1の167番目のアミノ酸残基(リシン)より180番目のアミノ酸残基(リシン)までの、「Lys Pro Asp Ala Ala Lys Lys Gly Val Val Lys Ala Glu Lys」(配列番号:1)である。なお、このヒトHMGB-1のアミノ酸配列「Lys Pro Asp Ala Ala Lys Lys Gly Val Val Lys Ala Glu Lys」(配列番号:1)は、これに相当するヒトHMGB-2のアミノ酸配列「Lys Ser Glu Ala Gly Lys Lys Gly Pro Gly Arg Pro Thr Gly」(配列番号:2)とは9個のアミノ酸残基が異なっている。
〔実施例2〕ペプチドの合成
実施例1で選択したアミノ酸配列の各々のN末端に、担体に結合させるためにシステインを結合させたアミノ酸配列「Cys Lys Pro Asp Ala Ala Lys Lys Gly Val Val Lys Ala Glu Lys」(配列番号:3)のペプチドをそれぞれ合成した。
まず、アプライドバイオシステムズ社(Applied Biosystems)のモデル430Aペプチド自動合成装置(Model 430A peptide synthesizer)により、取扱説明書に従って、t−ブトキシカルボニルアミノ酸固相法でアミノ酸配列「Cys Lys Pro Asp Ala Ala Lys Lys Gly Val Val Lys Ala Glu Lys」(配列番号:3)のペプチドの合成を行った。
副反応を抑制するためにスカベンジャーとして、ジメチルスルファイド、p−チオクレゾール、m−クレゾール及びアニソールの存在下でフッ化水素法により樹脂から合成したペプチドの脱離を行った。
その後、ジメチルエーテルによりスカベンジャーを抽出し、そして2N酢酸により合成したペプチドの抽出を行った。
陰イオン交換樹脂であるダウエックス1−X2(DOWEX 1−X2)により陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを行い、精製をして、オクタデシル(ODS)カラムでの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、メインピークのパターンの確認を行った。
そして、エバポレーターにより凍結乾燥をして濃縮を行った後、HPLCにより精製を行い分取した。なお、このHPLC精製時の装置及び条件は、山村化学研究所社の逆相ODSカラムYMC−D−ODS−5(20mm×300mm)を用い、日本分光工業社のTWINCLEポンプ及び日本分光工業社のGP−A40型グラジエンターで0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中アセトニトリルの0%から70%のグラジエントを流速7.0mL/分で行い、日本分光工業社製UVIDEC−100V型検出器(210nm、1.28AUFS)で検出を行った。
ここで精製分取した合成ペプチドを、エバポレーターで凍結乾燥して濃縮した。得られた合成ペプチドの純度をHPLCで分析した。装置及び条件は、山村化学研究所社の逆相ODSカラムYMC−R−ODS−5(4.9mm×300mm)を用い、日本分光工業社のTWINCLEポンプ及び日本分光工業社のGP−A40型グラジエンターで0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中アセトニトリルの0%から70%のグラジエントを流速1.0mL/分、25分間で行い、日本分光工業社製UVIDEC−100V型検出器(210nm、1.28AUFS)で検出を行った。これより得られた合成ペプチドの純度がほぼ100%であることが分かった。
〔実施例3〕免疫原の調製
担体であるスカシガイのヘモシアニン(KLH)〔カルビオケム社製〕又はウシ血清アルブミン(BSA)〔生化学工業社製〕の10mgを10mMリン酸二水素カリウム−リン酸水素二カリウム緩衝液(pH7.0)に溶解し、これにN,N−ジメチルホルムアミドに溶解している2.5%マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシサクシニミドエステル(MBS)〔ピアース社製〕溶液150μLを加え室温で撹拌しながら30分間反応させた。
これを、4℃下で、10mMリン酸二水素カリウム−リン酸水素二カリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化しておいたゲル濾過カラム(セファデックスG−25(Sephadex G−25)カラム〔ファルマシア−エルケービー社製〕)に通し、280nmにおける吸光度でモニターして、MBS−担体結合成分を分取した。
このMBS−担体結合成分をリン酸三ナトリウムでpH7.0に調整し、これに実施例2で合成したペプチド「Cys Lys Pro Asp Ala Ala Lys Lys Gly Val Val Lys Ala Glu Lys」(配列番号:3)を添加混合して150分間反応させた。
反応後、水に対して3回透析した後、凍結乾燥を行って前記ペプチドと結合した担体よりなる免疫原を得た。
〔実施例4〕ブタHMGB-1とHMGB-2の調製
ブタの胸腺より、ブタHMGB-1(配列番号:4)及びブタHMGB-2(配列番号:5)をサンダースらの方法〔C.Sandersら,B.B.R.C.,78巻,1034〜1042頁,1977年発行〕に従って調製した。
(1)ブタの胸腺500gを、140mMの塩化ナトリウム及び0.5mMのPMS Fを含む600mLの緩衝液中で破砕を行った。
(2)次に、この破砕物を遠心分離機で遠心分離を行い、その上澄み液を除去した。
(3)これに、140mMの塩化ナトリウム及び0.5mMのPMSFを含む緩衝液を加えて撹拌した後、遠心分離機で遠心分離を行い、その上澄み液を除去した。この洗浄操作を2回繰り返して行った。
(4)次に、得られた沈殿物に、0.75Mの過塩素酸300mLを加えた。そして、遠心分離機で遠心分離した後、上澄み液を分取した。残った沈殿物に0.75Mの過塩素酸400mLを加えた。これについても、遠心分離機で遠心分離した後、上澄み液を分取した。この上澄み液と先に分取した上澄み液とを合わせた。なお、沈殿物は廃棄した。
(5)前記の合わせた上澄み液に0.75Mの過塩素酸を加えて、全体の容量を1,000mLとした。次に、遠心分離機で遠心分離した後、上澄み液をグラスフィルター(グレード4)で濾過した。
(6)前記の濾過の濾液に、3,500mLのアセトンと21mLの濃塩酸の混合液を加えた。濁りが生じてくるので、遠心分離機で遠心分離して、上澄み液を分取した。この上澄み液に、アセトン2,500mLを加えた。そして、再度、濁りが生じてくるので、これを遠心分離機で遠心分離して、上澄み液を分離し、残った沈殿物を集めた。
(7)この集めた沈殿物を室温で自然乾燥させた。
以上の操作により、HMGB-1及びHMGB-2を含むタンパク質画分が、およそ20mg得られた。
(8)前記のHMGB-1及びHMGB-2を含むタンパク質画分を、200mM塩化ナトリウム を含む7.5mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)の10mLに溶解した後、 この200mM塩化ナトリウムを含む7.5mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)で充分に透析を行った。
(9)この透析の後、7.5mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)で平衡化しておいたCM−セファデックスC25のカラムに添加した。そしてその後、200mM塩化ナトリウムを含む7.5mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)により溶出させて、陽イオン交換クロマトグラフィーを行った。
(10)そして、15%SDS−ポリアクリルアミド電気泳動の結果、その移動度より、図1において「A」で示した溶出画分及び「B」で示した溶出画分はブタHMGB-1を含む画分であり、更に「C」で示した溶出画分及び「D」で示した溶出画分はブタHMGB-2を含む画分であることが確かめられた。
(11)よって、図1において「A」で示した溶出画分及び「B」で示した溶出画分を混合して集め、更に「C」で示した溶出画分及び「D」で示した溶出画分を混合して集めた。
〔実施例5〕ヒトHMGB-1とHMGB-2の調製
ヒトHMGB-1(配列番号:6)及びHMGB-2(配列番号:7)を文献(P. Cabart et al., Cell Biochemistry and Function 13; 125-133: 1995)に従ってHL60細胞から精製した。
(1)HL60 cellを、10%の非動化したFCS(牛胎児血清:ギブコ)を含んだRPMI1640(ギブコ) 300mLにて一週間ほど培養した。
(2)培養したHL60細胞を回収し、RPMI1640にて洗浄後、3LのPFHM-II(インビトロゲン)にて二週間ほど培養を行った。
(3)次にこの培養上清を、PBSにて平衡化されたHeparin-Sepharose(シグマ社)に通した。
(4)PBSにてよく洗浄後、0.5 Mの塩化ナトリウムを含んだPBSにて溶出を行った。この溶出を280nmの吸収にてモニタリングし、吸収のある部分をプールした。このプールを5mM ホウ酸緩衝液(pH9.0) 0.2M 塩化ナトリウムにてよく透析を行った。
この透析したプールを7.5mM ホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化されたCM-SehadexC25 (Pharmacia)に添加した。そしてその後、200mM塩化ナトリウムを含む7.5mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH9.0)により溶出させた。結果は実施例4で示したものと同様である。
〔実施例6〕ポリクローナル抗体の調製
実施例4で調製した免疫原ブタHMGB-1を用いてポリクローナル抗体の調製を下記のようにして行った。
[1]動物への免疫
(1)前記の実施例4で得た免疫原ブタHMGB-1を100μg/mLになるように生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)で溶解し、これをフロイント完全アジュバントと等量ずつ混合してエマルジョンとして、ニワトリ(旭テクノグラス社)の羽の付け根に0.5mLを注射した。
(2)初回免疫から2週間後に、前記の免疫原を100μg/mLになるように生理食塩水で溶解し、これをフロイント不完全アジュバントと等量ずつ混合してエマルジョンとして、その0.5mLを追加注射を行った。この追加注射は2週間おきに行った。
(3)免疫動物であるこのニワトリの血清中及び卵黄中の抗体価を、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)にて、初回免疫から6週間目より1週間ごとに測定した。このELISA法の操作を以下に示した。
(3−1)ブタHMGB-1を1μg/mLになるように生理食塩水に溶解し、これを96ウェル−マイクロプレート(ヌンク社製)に1ウェル当り100μLずつ加え、37℃で2時間静置してこのブタHMGB-1の固相化を行った。
(3−2)このマイクロプレートを洗浄液(0.05%ツイーン20(Tween20)を含むリン酸緩衝生理食塩水(5.59mMリン酸水素二ナトリウム、1.47mMリン酸二水素カリウム、137mM塩化ナトリウム及び2.68mM塩化カリウムを含む水溶液(pH7.2)))で洗浄した後、1%BSAを含む10mMリン酸二水素カリウム−リン酸水素二カリウム緩衝液(pH7.2)を1ウェル当り300μLずつ加えて、37℃で2時間静置してブロッキングを行い、その後再び洗浄液で洗浄した。
(3−3)抗体の産生を検査すべき前記ニワトリ卵黄100μLを生理食塩水900μLに溶解し、さらにそれを生理食塩水で1000倍、10000倍、そして100000倍と希釈し、これらをマイクロプレートのウェルに100μLずつ加え、37℃で2時間静置して反応を行わせた。その後洗浄液で洗浄した。
(3−4)また対照として、前記(3−2)のマイクロプレートのウェルに、1%BSAを含む0.1Mリン酸緩衝生理食塩水を100μLずつ加え、37℃で2時間静置して、その後洗浄液で洗浄した。
(3−5)パーオキシダーゼ(POD)標識抗ニワトリIgY抗体(Up-Data社製)を3%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水で5000倍に希釈した後、(3−3)及び(3−4)のマイクロプレートに1ウェル当り100μLずつ加え、37℃で2時間静置して反応を行わせた。
(3−6)これを洗浄液で洗浄した後、パーオキシダーゼ反応液(3mM 2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)〔ABTS〕を含む50mMリン酸水素二ナトリウム−24mMクエン酸緩衝液の1mLに対して2μLの1.7%過酸化水素を使用直前に添加したもの)を1ウェル当り100μLずつ加え、室温で反応させた。15分後に1ウェル当り150μLの6N硫酸を加えて反応を停止させた。
(3−6)これをEIAプレートリーダー(バイオラッド社製)にて415nmにおける吸光度の測定を行った。
(4)初回免疫から12週間目以降、抗体価がプラトーに達したと認められたので、この免疫動物であるニワトリの卵黄より抗体(IgY)を得た。
(5)卵黄10mLにTBS(0.14M NaCl, 0.01M Tris/HCl, pH7.4, 0.01%NaN3)40mLを加え、よく攪拌後、遠心分離を行い上清を得た。
(6)次にこの上清に7.5mL CaCl2, 3mL デキストラン硫酸(10%(W/V)デキストラン硫酸 in TBS)を加え30分間ほど攪拌後、遠心分離を行い上清と沈殿を得た。上清を回収し、沈殿を再度TBSにて抽出した。遠心分離後再度得られた上清を前回の上清と合わせてTBSにて100mLにした。
(7)これに無水硫酸ナトリウムを20g添加し、30分間攪拌後、遠心分離を行い、上清を除去した。その後、沈殿を10mL TBSに溶解し、PBSを加え、さらにPBSにて透析を行いグロブリン分画を得た。
(8)次にこれを実施例4で調製したブタHMGB-1を固定化したカラムに通して、アフィニティークロマトグラフィーを行った。この操作を以下に示した。
(8−1)実施例4で調製したブタHMGB-1 4mgに対して2gのCNBr−セファロース(ファルマシアバイオテック社製)をその取扱説明書に従って反応させ、前記のペプチドを固定化したアフィニティークロマトグラフィー用のカラムを調製した。
(8−2)このカラムをリン酸緩衝生理食塩水で平衡化しておき、その後、前記(7)にて濃縮した成分(ポリクローナル抗体)を通した。
(8−3)これにリン酸緩衝生理食塩水を充分に通して洗浄した後、0.1Mの酢酸緩衝液(pH3.0)を通した。
(8−4)これにより溶出した画分を集め、リン酸緩衝生理食塩水で透析を行い、その後、濃縮を行った。
以上のアフィニティークロマトグラフィーの操作により、ブタHMGB-1に結合するポリクローナル抗体を分取した。
(9)以上の操作により得られたニワトリの抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体は、ヒトHMGB-1,2に結合することができるものである。今回の場合はアフィニティー精製を行った抗体を調製したが、アフィニティー精製をしなくてもよい。
〔実施例7〕ヒトハイモビリティーグループ1に結合するが、ヒトハイモビリティーグループ2に結合しない抗体
ヒトHMGB-1に結合するがヒトHMGB-2には結合しないポリクローナル抗体の調製を下記のように行なった。
実施例6で調製したポリクローナル抗体を実施例4で調製したブタHMGB-2を固定化したカラムに通して、HMGB-2に反応する抗体の吸収を行った。この操作を以下に示した。
(1)実施例4で調製したブタHMGB-2 4mgに対して2gのCNBr−セファロース(ファルマシアバイオテック社製)をその取扱説明書に従って反応させ、前記のHMGB-2を固定化したHMGB-2吸収用のカラムを調製した。
(2)このカラムをリン酸緩衝生理食塩水で平衡化しておき、その後、実施例6にて濃縮した成分(ポリクローナル抗体)を通した。
(3)素通りした画分を集め、リン酸緩衝生理食塩水で透析を行い、その後、濃縮を行った。
以上のアフィニティークロマトグラフィーの操作により、ブタHMGB-1に結合するがブタHMGB-2には結合しないポリクローナル抗体を分取した。
以上の操作により得られたニワトリの抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体は、ヒトHMGB-1に結合するがヒトHMGB-2には結合しないものである。
〔実施例8〕抗HMGB-1ポリクローナル抗体のペプチドへの反応性
実施例3で調製されたペプチド抗原に対する実施例6で調製された抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体の反応性を確認をした。
(1)実施例3で得たペプチド抗原を1μg/mLになるように生理食塩水に溶解し、これを96ウェル−マイクロプレート(ヌンク社製)に1ウェル当り100μLずつ加え、37℃で2時間静置してこのペプチド抗原の固相化を行った。
(2)このマイクロプレートを洗浄液(0.05%ツイーン20(Tween20)を含むリン酸緩衝生理食塩水(5.59mMリン酸水素二ナトリウム、1.47mMリン酸二水素カリウム、137mM塩化ナトリウム及び2.68mM塩化カリウムを含む水溶液(pH7.2)))で洗浄した後、1%BSAを含む10mMリン酸二水素カリウム−リン酸水素二カリウム緩衝液(pH7.2)を1ウェル当り300μLずつ加えて、37℃で2時間静置してブロッキングを行い、その後再び洗浄液で洗浄した。
(3)抗体の産生を検査すべき前記ニワトリ卵黄100μLを生理食塩水900μLに溶解し、さらにそれを生理食塩水で1000倍、10000倍、そして100000倍と希釈し、これらをマイクロプレートのウェルに100μLずつ加え、37℃で2時間静置して反応を行わせ、その後洗浄液で洗浄した。
(4)また対照として、前記(2)のマイクロプレートのウェルに、1%BSAを含む0.1Mリン酸緩衝生理食塩水を100μLずつ加え、37℃で2時間静置して、その後洗浄液で洗浄した。
(5)パーオキシダーゼ(POD)標識抗ニワトリIgY抗体(Up-Data社製)を3%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水で5000倍に希釈した後、(3)及び(4)のマイクロプレートに1ウェル当り100μLずつ加え、37℃で2時間静置して反応を行わせた。
(6)これを洗浄液で洗浄した後、パーオキシダーゼ反応液(3mM 2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)〔ABTS〕を含む50mMリン酸水素二ナトリウム−24mMクエン酸緩衝液の1mLに対して2μLの1.7%過酸化水素を使用直前に添加したもの)を1ウェル当り100μLずつ加え、室温で反応させた。15分後に1ウェル当り50μLの6N硫酸を加えて反応を停止させた。
(7)これをEIAプレートリーダー(バイオラッド社製)にて415nmにおける吸光度の測定を行った。
その結果を図2に示す。希釈倍率が高いほどシグナルが高かった。このことから明らかにHMGB-1で得たポリクローナル抗体の中にはペプチド抗原に対する抗体が含まれていることがわかった。
〔実施例9〕ポリクローナル抗体の調製
実施例3で調製した免疫原ペプチド抗原を用いてポリクローナル抗体の調製を下記のようにして行った。
[1]動物への免疫
(1)前記の実施例で得た免疫原(「Cys Lys Pro Asp Ala Ala Lys Lys Gly Val Val Lys Ala Glu Lys」(配列番号:3)で表されるペプチドにBSAを結合させたものを100μg/mLになるように生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)で溶解し、これをフロイント完全アジュバントと等量ずつ混合してエマルジョンとして、ニワトリ(旭テクノグラス社)の羽の付け根に0.5mLを注射した。
(2)初回免疫から2週間後に、前記の免疫原を100μg/mLになるように生理食塩水で溶解し、これをフロイント不完全アジュバントと等量ずつ混合してエマルジョンとして、その0.5mLにより追加免疫注射を行った。この追加免疫注射は2週間おきに行った。
(3)免疫動物であるこのニワトリの血清中及び卵黄中の抗体価を、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)にて、初回免疫から6週間目より1週間ごとに測定した。このELISA法の操作を以下に示した。
(3−1)実施例3で得たペプチドにKLHを結合させたものを1μg/mLになるように生理食塩水に溶解し、これを96ウェル−マイクロプレート(ヌンク社製)に1ウェル当り100μLずつ加え、37℃で2時間静置してこのペプチド-KLHの固相化を行った。
(3−2)このマイクロプレートを洗浄液(0.05%ツイーン20(Tween20)を含むリン酸緩衝生理食塩水(5.59mMリン酸水素二ナトリウム、1.47mMリン酸二水素カリウム、137mM塩化ナトリウム及び2.68mM塩化カリウムを含む水溶液(pH7.2)))で洗浄した後、1%BSAを含む10mMリン酸二水素カリウム−リン酸水素二カリウム緩衝液(pH7.2)を1ウェル当り300μLずつ加えて、37℃で2時間静置してブロッキングを行い、その後再び洗浄液で洗浄した。
(3−3)抗体の産生を検査すべき前記ニワトリ卵黄100μLを生理食塩水900μLに溶解し、さらにそれを生理食塩水で1000倍、10000倍、そして100000倍と希釈し、これらをマイクロプレートのウェルに100μLずつ加え、37℃で2時間静置して反応を行わせ、その後洗浄液で洗浄した。
(3−4)また対照として、前記(3−2)のマイクロプレートのウェルに、1%BSAを含む0.1Mリン酸緩衝生理食塩水を100μLずつ加え、37℃で2時間静置して、その後洗浄液で洗浄した。
(3−5)パーオキシダーゼ(POD)標識抗ニワトリIgY抗体(Up-Data社製)を3%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水で5000倍に希釈した後、(3−3)及び(3−4)のマイクロプレートに1ウェル当り100μLずつ加え、37℃で2時間静置して反応を行わせた。
(3−6)これを洗浄液で洗浄した後、パーオキシダーゼ反応液(3mM 2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)〔ABTS〕を含む50mMリン酸水素二ナトリウム−24mMクエン酸緩衝液の1mLに対して2μLの1.7%過酸化水素を使用直前に添加したもの)を1ウェル当り100μLずつ加え、室温で反応させた。15分後に1ウェル当り150μLの6N硫酸を加えて反応を停止させた。
(3−7)これをEIAプレートリーダー(バイオラッド社製)にて415nmにおける吸光度の測定を行った。
(4)初回免疫から12週間目以降、抗体価がプラトーに達したと認められたので、この免疫動物であるニワトリの卵黄より抗体(IgY)を得た。
(5)卵黄10mLにTBS(0.14M NaCl, 0.01M Tris/HCl, pH7.4, 0.01%NaN3)40mLを加え、よく攪拌後、遠心分離を行い上清を得た。
(6)次にこの上清に7.5mL CaCl2, 3mL デキストラン硫酸(10%(W/V)デキストラン硫酸 in TBS)を加え30分間ほど攪拌後、遠心分離を行い上清と沈殿を得た。上清を回収し、沈殿を再度TBSにて抽出した。遠心分離後再度得られた上清を前回の上清と合わせてTBSにて100mLにした。
(7)これに無水硫酸ナトリウムを20g添加し、30分間攪拌後、遠心分離を行い、上清を除去した。その後、沈殿を10mL TBSに溶解し、PBSを加え、さらにPBSにて透析を行いグロブリン分画を得た。
(8)次に、これを実施例2で調製したペプチドを固定化したカラムに通して、アフィニティークロマトグラフィーを行った。この操作を以下に示した。
(8−1)実施例2で調製したペプチド10mgに対して2gのCNBr−セファロース(ファルマシアバイオテック社製)をその取扱説明書に従って反応させ、前記のペプチドを固定化したアフィニティークロマトグラフィー用のカラムを調製した。
(8−2)このカラムをリン酸緩衝生理食塩水で平衡化しておき、その後、前記(7)にて濃縮した成分(ポリクローナル抗体)を通した。
(8−3)これにリン酸緩衝生理食塩水を充分に通して洗浄した後、0.1Mの酢酸緩衝液(pH3.0)を通した。
(8−4)これにより溶出した画分を集め、リン酸緩衝生理食塩水で透析を行い、その後、濃縮を行った。
以上のアフィニティークロマトグラフィーの操作により、ペプチドに結合するポリクローナル抗体を分取した。
(9)以上の操作により得られたニワトリのポリクローナル抗体は、ヒトHMGB-1に結合することができるものである。また、ヒトHMGB-1と相同性の高いヒトHMGB-2とは結合できないものであった。
今回の場合はアフィニティー精製を行った抗体を調製したが、アフィニティー精製を行わなかった抗体でも適切な量を使用すれば同様の効果が期待できた。
〔実施例10〕抗ペプチドポリクローナル抗体のヒトHMGB-1及びヒトHMGB-2との反応性の確認
実施例9で調製した抗ペプチドポリクローナル抗体のヒトHMGB-1,2に対する反応性をウエスタンブロット法により確かめた。
1.ウエスタンブロット法
実施例9で調製した抗ペプチドポリクローナル抗体の反応性
(1)実施例5で得られたヒトHMGB-1(1mg/mL)及びHMGB-2(1mg/mL)を1:1に混合し、さらにサンプルバッファーと1:1で混合した。
(2)このサンプルを15% SDS-ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行った。
そして、泳動緩衝液としてバルビタール緩衝液(pH8.8)を使用して、電流20mAで180分間通電して電気泳動を行った。
(3)前記(2)の電気泳動の後の転写は、ノバ・ブロット・エレクトロフォレティック・トランスファー・キット(ファルマシア−エルケービー社製)を用いて、その使用説明書に従い、ドライ方式で行った。まず、前記(2)において電気泳動を行ったゲルを転写用装置上に置いた。次に、このゲルの上に、9cm×9cmのニトロセルロース膜(バイオラッド社製)を重ね、48mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、39mMグリシン、0.0357%(W/V)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び20%(V/V)メタノールよりなる転写用緩衝液を用いて、電流60mAで2時間転写を行った。
(4)この転写を行ったニトロセルロース膜を、1%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(5.59mMリン酸水素二ナトリウム、1.47mMリン酸二水素カリウム、137mM塩化ナトリウム及び2.68mM塩化カリウムを含む水溶液(pH7.2))の20mLに4℃で1晩浸漬して、ブロッキングを行った。
(5)次に、これを洗浄液(0.05%ツイーン20(Tween20)を含むリン酸緩衝生理食塩水)の20mL中で10分間振とう洗浄を行った。この操作を3回行った。
(6)実施例9で調製したポリクローナル抗体80μgを20mLの1%BSAを含んだリン酸緩衝生理食塩水に溶解し、この溶液に前記(5)の操作を行ったニトロセルロース膜を室温で2時間浸漬して反応させた。
(7)前記(6)の操作を行ったニトロセルロース膜を、20mLの洗浄液中で10分間振とう洗浄を行った。これを3回行った。
(8)次に、パーオキシダーゼ標識抗ニワトリIgY抗体(Up-Data社製)を、3%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水で500倍希釈をして、20mLの溶液を調製し、これに前記(7)のニトロセルロース膜を室温で2時間浸漬して反応させた。
(9)このニトロセルロース膜を、20mLの洗浄液中で10分間振とう洗浄を行った。この操作を3回行った。
(10)0.025%の3,3'−ジアミノベンジジン四塩酸塩及び0.01%過酸化水素を含むリン酸緩衝生理食塩水の20mLに、前記(9)のニトロセルロース膜を室温で15分間浸漬して発色させた。
以上の操作により、実施例9で調製したポリクローナル抗体におけるウエスタンブロット法の結果を得た。
2.実験結果
(1)ウエスタンブロット法の結果
前記のポリクローナル抗体のウエスタンブロット法の結果を図3に示した。なお、この図において、「1」はポリクローナル抗体(実施例9で調製したポリクローナル抗体)のみを反応させた結果である。そして「2」はパーオキシダーゼ標識抗ニワトリIgY抗体(Up-Data社製)のみを反応させた結果である。「3」は実施例6で得られた抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体を反応させることにより、ヒトHMGB-1,2の位置を明らかにしたことを示す。
図3より、「2」のポリクローナル抗体を作用させていないパーオキシダーゼ標識抗ニワトリIgY抗体のみを作用させた対照(コントロール)においては、ヒトHMGB-1のバンドが現れる位置及びヒトHMGB-2のバンドが現れる位置のいずれにおいても何ら発色は認められなかった。このことより、前記の各ウエスタンブロット法においては、非特異的な発色が起きていないことが確かめられた。
「1」の実施例9で調製したポリクローナル抗体では、ヒトHMGB-1が泳動される位置には発色が見られるものの、ヒトHMGB-2が泳動される位置には発色が見られないことが分かる。このことから実施例9で調製された抗ペプチドポリクローナル抗体はヒトHMGB-1には反応するがヒトHMGB-2には反応しないことが明らかになった。
〔実施例11〕モノクローナル抗体の調製
本発明において使用可能なモノクローナル抗体は、以下の操作により取得することができる。実施例5で調製した免疫原ヒトHMGB-1を用いてモノクローナル抗体の作製を下記のようにして行った。
1.動物への免疫
前記の実施例5で得た免疫原ヒトHMGB-1を100μg/mLになるように生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)で溶解し、これをフロイント完全アジュバントと等量ずつ混合してエマルジョンとして、8週齢のメスのBALB/cマウス(日本チャールズリバー社)の腹部皮下に0.5mLを注射した。初回免疫から2週間後に、前記の免疫原を100μg/mLになるように生理食塩水で溶解し、これをフロイント不完全アジュバントと等量ずつ混合してエマルジョンとして、その0.5mLにより追加注射を行った。この追加注射は2週間おきに行った。免疫動物であるこれらマウスの抗体価を、酵素免疫測定法(ELISA、EIA)にて、初回免疫から6週間目より1週間ごとに測定した。ELISA法の具体的操作については、下記(1)において詳述する。初回免疫から18週間目以降、抗体価がプラトーに達したと認められたので、免疫動物であるこれらマウスの腹部皮下に、生理食塩水で800μg/mLとした実施例5で得たヒトHMGB-1の0.5mLを注射した。その後3日目に、これらマウスより脾臓を取得した。
(1)ELISA法
ヒトHMGB-1を1μg/mLになるように生理食塩水に溶解し、これを96ウェル−マイクロプレート(ヌンク社製)に1ウェル当り100μLずつ加え、37℃で2時間静置してこのヒトHMGB-1の固相化を行った。このマイクロプレートを洗浄液(0.05%ツイーン20(Tween20)を含むリン酸緩衝生理食塩水(5.59mMリン酸水素二ナトリウム、1.47mMリン酸二水素カリウム、137mM塩化ナトリウム及び2.68mM塩化カリウムを含む水溶液(pH7.2)))で洗浄した後、1%BSAを含む10mMリン酸二水素カリウム−リン酸水素二カリウム緩衝液(pH7.2)を1ウェル当り300μLずつ加えて、37℃で2時間静置してブロッキングを行い、その後再び洗浄液で洗浄した。抗体の産生を検査すべき前記マウスの血清を試料として100μLを生理食塩水900μLに溶解し、さらにそれを、生理食塩水で1000倍、10000倍、そして100000倍と希釈し、これらをマイクロプレートのウェルに100μLずつ加え、37℃で2時間静置して反応を行わせ、その後洗浄液で洗浄した。また対照として、マイクロプレートのウェルに、マウス血清に代えて1%BSAを含む0.1Mリン酸緩衝生理食塩水を100μLずつ加え、37℃で2時間静置して、その後洗浄液で洗浄した。パーオキシダーゼ(POD)標識抗マウスIgG抗体(アマシャム社製)を3%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水で5000倍に希釈した後、各マイクロプレートに1ウェル当り100μLずつ加え、37℃で2時間静置して反応を行わせた。これを洗浄液で洗浄した後、パーオキシダーゼ反応液(3mM 2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンズチアゾリン-6-スルホン酸)〔ABTS〕を含む50mMリン酸水素二ナトリウム−24mMクエン酸緩衝液の1mLに対して2μLの1.7%過酸化水素を使用直前に添加したもの)を1ウェル当り100μLずつ加え、室温で反応させた。15分後に1ウェル当り150μLの6N硫酸を加えて反応を停止させた。これをEIAプレートリーダー(バイオラッド社製)にて415nmにおける吸光度の測定を行った。
2.骨髄腫細胞の増殖
BALB/cマウス由来のヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシル・トランスフェラーゼ欠損の骨髄腫細胞株であるP3-X63-Ag8-U1株(癌研究リサーチソースバンク 9085)を、胎生ウシ血清を10%含有しグルタミン、ペニシリン及びストレプトマイシンを補ったRPMI1640組織培養培地(バイオセル社製)で増殖を行った。より詳細には、この骨髄腫細胞を細胞培養用中型ボトル(ヌンク社製、200mL容)内で、ボトルの底面の約8割を細胞が占めるまで増殖させた。なお、細胞数は、トリパン青染料排除法及び血球計で計数した。
3.細胞融合
前記1.で免疫動物のマウスより取得した脾臓を、ステンレススチールメッシュ#200を使用して充分にほぐし、血清を含まないRPMI1640培地で洗浄しながら濾過した。その後、200gで遠心分離を行い、脾臓細胞を分離した。更に、再度血清を含まないP3-X63-Ag8-U1株骨髄腫細胞を5対1の割合で混合した後、遠心分離を行った。混合した細胞を、ポリエチレングリコール1500(PEG1500、ロシュ・ダイアグノスティック社製)を50%含むRPMI1640培地にゆっくりと懸濁した。そして、最終的にポリエチレングリコール濃度が5%となるように、これをRPMI1640培地で徐々に希釈した。これより細胞を遠心分離で分離し、5%のハイブリドーマクローニングファクター(オリゲン社製)を含んだS-クローン培地(三光純薬社製)よりなる増殖培地に徐々に分散させた。そして、平底の96穴マイクロプレート(ヌンク社製)のウェルに、1ウェル当り106個/100μLの細胞数の細胞を植え、5%の二酸化炭素中37℃で培養した。細胞融合後1日目に、各ウェルに100μLのHAT培地(前記の増殖培地に0.01mMヒポキサンチン、1.6μMチミジン及び0.04μMアミノプテリンとなるようにそれぞれを補充したもの、いずれも東京化成社製)を加えた。その後3日間は、毎日、約半分のHAT培地を新しいHAT培地と交換し、更にその後は、2〜3日ごとに同様の交換を行った。
細胞を顕微鏡観察したところ、ハイブリドーマ(融合細胞)のクローンは10日以降より出現した。細胞融合後14日以降にヒトHMGB-1を認識する抗体の産生を検査するため、ウェル内の培養液をELISA法でスクリーニングした。なお、このELISA法の操作は、前記1.(1)と同じであった。スクリーニングにより、ヒトHMGB-1を認識する抗体を産生していることが判明したウェルのハイブリドーマを、24ウェルプレートに拡大して培養し、細胞密度が高くなるに従い、小型ボトル、中型ボトルとスケールを大きくして培養した。ハイブリドーマは、HT培地(アミノプテリン及びハイブリドーマクローニングファクターを含まないHAT培地)で培養、保持した。ヒトHMGB-1を認識する抗体の産生を1.(1)と同様のELISA法により調べたところ、かかるハイブリドーマを40個確認することができた。
4.ハイブリドーマサブクローニング
ヒトHMGB-1に対する抗体を産生する前記ハイブリドーマの各々を、限界希釈法にてサブクローニングした。これらのハイブリドーマの細胞数を、トリパン青染料排除及び血球計により計数した。次に、これらのハイブリドーマを、100μLのHT培地当り、0.5個の生育細胞数の割合と1個の生育細胞数の割合の2種類の割合で懸濁し、96穴の平底マイクロプレートの1ウェル当り100μLずつ分注した。これを2〜3日ごとに培地を交換して、ハイブリドーマを増殖させた。2週間後、顕微鏡下で各ウェルのコロニー数を調べ、そして、ブタHMGB-1に対する抗体を産生するハイブリドーマについて前記と同様にしてELISA法で調べた。1ウェル中に1コロニーが存在し、そしてこのような抗体を産生するハイブリドーマ(ウェル)を2個得ることができた。
得られたハイブリドーマを24穴のプレートに移し、細胞生育が良好となるまで2週間培養した。次に、これらのハイブリドーマが産生する抗体の、実施例5で調製したヒトHMGB-1との反応性をELISA法により調べた。なお、このELISA法の操作は、96ウェル−マイクロプレートに固相化するタンパク質を実施例5で調製したヒトHMGB-1に代え、試料を各ハイブリドーマ(各ウェル)の培養上清に代えた以外は、前記の1.(1)と同様にして行った。
この結果、前記のハイブリドーマのうち、20個のハイブリドーマが、前記ヒトHMGB-1に結合する抗体を産生する細胞株であることが判明した。
次に、このハイブリドーマが産生する抗体の、実施例5で調製したヒトHMGB-1、ヒトHMGB-2の各々との反応性をELISA法で調べた。なお、このELISA法の操作は、96ウェル−マイクロプレートに固相化するタンパク質を実施例5で調製したヒトHMGB-1又はヒトHMGB-2に代え、試料をこのハイブリドーマ(このウェルの培養上清)に代えた以外は、前記の1.(1)と同様にして行った。
この検討の結果、このハイブリドーマが産生する抗体として、ヒトHMGB-1には結合するが、ヒトHMGB-2には結合しないクローンも確かめられた。このハイブリドーマは、R08G12G2, R06G7E10と命名された。
5.モノクローナル抗体の産生
前記4.で得た各々のモノクローナル抗体産生細胞株(ハイブリドーマ)を、それぞれ中型ボトル(ヌンク社製)の中に1つずつ入れ、底面の約8割を細胞が占めるまでHT培地中で培養を行った。その後、これらのハイブリドーマをハーベストし、200g、5分間の遠心分離にて回収した。次に、これを血清を含まないRPMI1640培地液で3回洗浄した後、2mLのRPMI1640培地液に懸濁した。このハイブリドーマ懸濁液1mLを、予め2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン処置したオスのBALB/cマウス(日本チャールズリバー社)の腹腔に注射した。注射から2週間以内に腹部の膨張が認められなかった場合には、再度この操作を繰り返した。腹部の膨張が認められたマウス腹水を採取した。これを200g、5分間の遠心分離にかけ、ハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体を含む上澄み液を、ハイブリドーマから分離して取得した。
6.モノクローナル抗体の精製
(1) モノクローナル抗体がIgGの場合
前記5.で得た、ハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体を含む上澄み液の各々の10mLに、22℃で硫酸ナトリウム1.8gを撹拌しながら加え、硫酸ナトリウムが完全に溶けてから更に1時間撹拌を続けて塩析を行った。これを22℃で遠心分離(7000g、15分間)を行い、上澄み液と分離して得た沈殿を、30mM塩化ナトリウムを含む40mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)2mLに溶解した。次に、これを30mM塩化ナトリウムを含む40mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に対して充分に透析した後、1000gで20分間遠心分離し不溶性のものを除去した。これを30mM塩化ナトリウムを含む40mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)で平衡化しておいたDEAE−セルロースイオン交換カラム(セルバ社製)〔1×10cm〕に流速0.4mL/分で通して、溶出液を2mLずつ集めた。免疫グロブリンG(IgG)が溶出液の素通り画分に含まれていることを280nmの吸光度より確認し、これを集めて2mLに濃縮した。更に、これをプロテインA−セファロースCL-4Bアフィニティークロマトグラフィー(ファルマシア−エルケービー社製)にかけて精製を行い、精製したモノクローナル抗体を得た。
(2)モノクローナル抗体がIgMの場合
前記5.で得た、ハイブリドーマから産生されたモノクローナル抗体を含む上澄み液の各々の10mLを20mM リン酸緩衝液(pH7.5) 0.8M 硫酸アンモニウムで十分に透析した。透析の終了した上澄み液を20mM リン酸緩衝液(pH7.5) 0.8M 硫酸アンモニウムにて平衡化されたHiTrap IgM purification HP 1mL(アマシャムバイオサイエンス)にかけた。十分に20mM リン酸緩衝液(pH7.5) 0.8M 硫酸アンモニウムにて洗浄後、20mM リン酸緩衝液(pH7.5)にて溶出した。これで精製されたIgMタイプのモノクローナル抗体を得た。
〔実施例12〕モノクローナル抗体のヒトHMGB-1,2への反応性の検討
実施例5で調製したヒトHMGB-1,2に対する、モノクローナル抗体の反応性をウエスタンブロット法により確かめた。この場合クローンR06G7E10を例として述べる。他のクローンについても同様に検討を行った。
(1) 実施例11で調製したモノクローナル抗体の反応性(ウエスタンブロット法)
実施例5で得られたヒトHMGB-1(1mg/mL)及びHMGB-2(1mg/mL)を1:1に混合し、さらにサンプルバッファーと1:1で混合した。このサンプルを15% SDS-ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動を行った。そして、泳動緩衝液としてバルビタール緩衝液(pH8.8)を使用して、電流20mAで180分間通電して電気泳動を行った。電気泳動の後の転写は、ノバ・ブロット・エレクトロフォレティック・トランスファー・キット(ファルマシア−エルケービー社製)を用いて、その使用説明書に従い、ドライ方式で行った。具体的には、まず、電気泳動を行ったゲルを転写用装置上に置いた。次に、このゲルの上に、9cm×9cmのニトロセルロース膜(バイオラッド社製)を重ね、48mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、39mMグリシン、0.0357%(W/V)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)及び20%(V/V)メタノールよりなる転写用緩衝液を用いて、電流60mAで2時間転写を行った。
転写を行ったニトロセルロース膜を、1%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水(5.59mMリン酸水素二ナトリウム、1.47mMリン酸二水素カリウム、137mM塩化ナトリウム及び2.68mM塩化カリウムを含む水溶液(pH7.2))の20mLに4℃で1晩浸漬して、ブロッキングを行った。次に、これを洗浄液(0.05%ツイーン20(Tween20)を含むリン酸緩衝生理食塩水)の20mL中で10分間振とう洗浄を行った。この操作を3回行った。実施例11で調製したモノクローナル抗体を20mLの1%BSAを含んだリン酸緩衝生理食塩水に80μg溶解し、前記洗浄したニトロセルロース膜を室温で2時間浸漬して反応させた。続いて膜を20mLの洗浄液中で10分間振とう洗浄を行った。これを3回行った。
次に、パーオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(ダコ社製)を、3%BSAを含むリン酸緩衝生理食塩水で500倍希釈をして、20mLの溶液を調製し、これに前記ニトロセルロース膜を室温で2時間浸漬して反応させた。このニトロセルロース膜を、20mLの洗浄液中で10分間振とう洗浄を行った。この操作を3回行った。0.025%の3,3’−ジアミノベンジジン四塩酸塩及び0.01%過酸化水素を含むリン酸緩衝生理食塩水の20mLに、前記ニトロセルロース膜を室温で15分間浸漬して発色させた。
以上の操作により、実施例11で調製したモノクローナル抗体におけるウエスタンブロット法の結果を得た。
前記1のR06G7E10におけるウエスタンブロット法の結果を図4に示す。なお、この図において、「1」はパーオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体(ダコ社製)のみを反応させたもので、「2」はR06G7E10(実施例11で調製したモノクローナル抗体)を反応させたもので、「3」は実施例6で得られた抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体を反応させたものである。
図4より、「1」のモノクローナル抗体を作用させていないパーオキシダーゼ標識抗マウスIgG抗体のみを作用させた対照(コントロール)においては、ヒトHMGB-1のバンドが現れる位置及びヒトHMGB-2のバンドが現れる位置のいずれにおいても何ら発色は認められなかった。このことより、前記の各ウエスタンブロット法においては、非特異的な発色が起きていないことが確かめられた。「2」の実施例11で調製したモノローナル抗体では、ヒトHMGB-1が泳動される位置には発色が見られるものの、ヒトHMGB-2が泳動される位置には発色が見られないことが分かる。
〔実施例13〕アミロイドシスに対する中和抗体の治療効果
アミロイドシスモデルマウスにてAgNO3のみを投与した場合には炎症を起こし、14-21日経過して初めてアミロイド沈着が認められた。それに対してAgNO3(又は何らかの方法で炎症を誘導)かつamyloid enhancing factor(AEF)として二次性アミロイドシスマウス脾臓からのホモジネート液を打つと、2-3日程度でアミロイドの沈着が認められ、AEFによるアミロイドシスの発症時期が早まるという現象が認められた。同時に、この効果は投与後120日以上にわたって持続した。本発明者らは、このAEFとして使っている二次性アミロイドシスマウス脾臓から得たホモジネート液の中にはたくさんのHMGB-1が含まれている事を確認している。そこで本発明者らは抗HMGB-1抗体がこの現象に対してどのような効果を認めるのか、確認した。
6週齢のC3H/HeNCrj系統♂に対して2%AgNO3 400μL皮下注射+AEF 400μL腹腔内投与した際のアミロイドの沈着具合を図5に示す。合わせて図6にSAA(血清アミロイド蛋白)の変化を示す。
また前もって抗HMGB-1抗体(実施例で調製した抗ブタHMGB-1ポリクローナル抗体)で処理したAEF(二次性アミロイドシスマウス脾臓からのホモジネート液)又は何も処理していないAEFをAgNO3と一緒にマウスに投与し、6日後のアミロイドの沈着を比較検討した結果を図7に示す。明らかに、前もって抗HMGB-1抗体で処理した方が、アミロイドの沈着が抑制されていることが認められた。
本発明によって、アミロイドシスの新たな治療剤が提供された。本発明によって提供された治療剤は、その有効成分として、HMGB-1に結合する抗HMGB-1抗体を含有する。

Claims (6)

  1. 抗ハイモビリティーグループボックスプロテイン1(HMGB-1)抗体を有効成分として含有する、全身性アミロイドシス治療剤。
  2. 全身性アミロイドシスが二次性全身性アミロイドシスである、請求項1に記載の治療剤。
  3. 抗HMGB-1抗体が、ハイモビリティーグループボックスプロテイン2 (HMGB-2)よりもHMGB-1に強く結合することを特徴とする、請求項1または2に記載の治療剤。
  4. 抗HMGB-1抗体が、HMGB-2に結合しないことを特徴とする、請求項1または2に記載の治療剤。
  5. 抗HMGB-1抗体が、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を有する部分ペプチドを認識することを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の治療剤。
  6. 全身性アミロイドシス治療剤の製造における、抗ハイモビリティーグループボックスプロテイン1(HMGB-1)抗体の使用。
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