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JP5207114B2 - 燃料電池システム及び移動体 - Google Patents

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JP5207114B2 JP2007320161A JP2007320161A JP5207114B2 JP 5207114 B2 JP5207114 B2 JP 5207114B2 JP 2007320161 A JP2007320161 A JP 2007320161A JP 2007320161 A JP2007320161 A JP 2007320161A JP 5207114 B2 JP5207114 B2 JP 5207114B2
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Description

本発明は、燃料電池システム及び移動体に関し、特に、燃料電池システムへ供給する酸化ガスの制御に関するものである。
近年、固体高分子電解質膜(以下、電解質膜)の両側にアノードとカソードとを備え、アノード側に例えば水素ガス等の燃料ガスを供給する一方で、カソード側に例えば空気等の酸化ガスを供給し、燃料ガス及び酸化ガス(以下、反応ガスともいう)の酸化還元反応による化学エネルギーを電気エネルギーとして直接取り出すことのできる燃料電池を備えた燃料電池システムの開発が進められている。
このような燃料電池システムにおいては、システム停止中にアノード側に移動してきた窒素等の不純物を、システムの起動処理時に燃料ガスで置換するようになっている。そして、このとき、排出される不純物を含む燃料ガスを酸化ガスで希釈する必要がある。
この酸化ガスによる希釈につき、特許文献1には、始動時などの排気処理において、燃料ガスの希釈に必要な酸化ガスと外部出力に必要な酸化ガスとを比較して、大きいほうを用いる燃料電池の制御装置が提案されている。
特開2005−353360号公報
しかしながら、このような従来の燃料電池システムにおいては、酸化ガスの供給に起因するコンプレッサ等の音に関しての考慮がされていなかった。すなわち、上記した燃料電池の制御装置においては、通常運転移行時に酸化ガスの供給量は急減してしまうので、その際の音の変化がユーザに不快感や違和感を生じさせるおそれがある。また、
そこで、本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、希釈に用いる酸化ガスの供給に起因する音による聴感を改善する燃料電池システムを提供することを目的とする。
本発明においては、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。すなわち、本発明は、アノード及びカソードを有する燃料電池と、前記アノードに燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、前記カソードに酸化ガスを供給する酸化ガス供給手段と、前記アノードから排出される燃料ガスを、前記カソードから排出される酸化ガスによって希釈する希釈手段と、を備えた燃料電池システムであって、前記燃料電池システム内の燃料ガスを前記燃料ガス供給手段から供給される新たな燃料ガスにて置換する燃料ガスの置換開始時に、前記酸化ガス供給手段から供給する酸化ガスの供給量を通常運転時に比べて増大させ、該供給量を前記燃料ガスの置換終了時までに漸減させていくようになっている。
この構成によれば、酸化ガスの供給量が通常運転時に比べて増加しているので、希釈手段に排出される酸化ガス、すなわち希釈に用いられる酸化ガスの流量を増加させることができ、燃料ガスの置換スピードを上げることができる。これにより、不純物の排出時間が短縮できる。そしてこの際、燃料ガス置換開始時に酸化ガスの供給量を通常運転時に比べて増大させつつ燃料ガスの置換終了時までに漸減させていくので、音が突然途切れたり、小さくなったりするようなことがなく、ユーザにとって聴感が改善される。また、燃料ガスの置換開始時から置換終了時までに、酸化ガスの供給に起因する音が漸減していくので、ユーザにとっては、この音の変化から燃料ガス置換の進捗状態(例えば、終了に近いのか否か等)を推測することができる。
尚、本発明において、「燃料電池システム内の・・・燃料ガスの置換」とは、典型的には、燃料電池内に存在する燃料ガスを新たに供給された燃料ガスにて置換することを示すが、燃料ガス供給手段や希釈手段への排出手段等の燃料ガス配管系に存在する燃料ガスを新たに供給された燃料ガスで置換することも含む。また、燃料ガスの置換により燃料電池システム内の不純物を掃気することができるので「掃気処理」と呼ばれることもある。また、「通常運転」とは、燃料電池が所定の出力要請(例えば、最大の出力要請)に応じて所定の発電をすることが可能な状態を示す。
また、上記構成において、前記燃料電池のアノード側の不純物濃度に応じて、前記燃料ガスの置換開始時における酸化ガスの供給量が決定されるようにしてもよい。
この構成によれば、燃料電池のアノード側の不純物濃度に応じて酸化ガスの供給量が増減できるので、酸化ガスの供給に起因する音を必要限度に抑えることができる。例えば、アノード側の不純物濃度が低いときは、酸化ガスの供給量を少なくすることができる。この場合、酸化ガスの供給に起因する音を小さくすることができる。
また、上記構成において、前記アノードから前記希釈手段にパージバルブを介して燃料ガスが排出され、前記酸化ガスの供給量に応じて、前記パージバルブの開閉時間及び開閉の周期が決定されるようにしてもよい。
この構成によれば、酸化ガスの供給量に応じてパージバルブの開閉及び開閉の周期を調整することによって、希釈可能な最大の燃料ガスを希釈手段に容易に排出することができる。これにより燃料ガスの置換終了までの時間を短縮することができる。
また、上記構成において、前記燃料電池システムの起動処理中に、前記燃料ガスの置換が行われるようにしてもよい。
燃料電池システムの起動処理時においては、比較的音が小さい状態であり特に酸化ガス供給による音がユーザにとって感知されやすいが、上記したとおり、音が突然途切れたり、小さくなったりするようなことがないため、ユーザにとって聴感が改善されるメリットはとりわけ大きい。また、上記したとおり酸化ガスの供給音の変化から燃料ガス置換の進捗状態(例えば、終了に近いのか否か等)を推測することができるから、起動処理の終了ないし通常運転の開始のタイミングをユーザが予測可能となる。さらには、上記したとおり燃料ガスの置換スピードが上がり、不純物の排出時間が短縮できるので、起動処理を短縮することができる。
尚、本発明において、「燃料電池システムの起動処理」とは、一定期間以上停止されていた燃料電池システムの運転が開始され通常運転に移行されるまでの一連の工程を示す。
また、上記構成において、前記酸化ガス供給手段は、大気中の空気を取り込んで圧送するコンプレッサを有するようにしてもよい。
コンプレッサは、大気中の空気を取り込んで圧送する際に大きな音をたてやすく、ユーザにとって感知されやすいが、上記構成により酸化ガスの供給量が適宜制御されるので、コンプレッサから発生する音を好適に制御、抑制することができる。
また、本発明の移動体は、上記燃料電池システムを備える。
移動体を利用するユーザにとって、ユーザの指令(たとえば移動体が車両の場合はアクセルを踏む等)に関与しない燃料電池の駆動音はノイズとして感知されやすいので、上記したとおり、燃料電池において酸化ガス供給の音が突然途切れたり小さくなったりするようなことがないメリットはとりわけ大きい。また、上記したとおり酸化ガスの供給音の変化から燃料ガス置換の進捗状態(例えば、終了に近いのか否か等)を推測することができ、そして燃料ガスの置換終了と移動体が通常運転可能になるタイミングとは通常同期しているから、移動体を利用するユーザは、酸化ガスの供給音の変化から移動体が通常運転が可能となるタイミングを予測することができるようになる。さらには、上記したとおり燃料ガスの置換スピードが上がり、不純物の排出時間が短縮できるので、移動体が通常運転可能となるまでの時間を短縮することができる。
本発明によれば、希釈に用いる酸化ガスの供給に起因する音による聴感を改善する燃料電池システムを提供することができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る燃料電池システムについて、以下の順番で説明する。尚、各図面において、同一の部品には同一の符号を付している。
1.本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの全体構成
2.同燃料電池システムの起動処理時における酸化ガスの供給制御
3.同燃料電池システムの変形例
1.本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの全体構成
まず、図1を用いて、本発明の実施形態に係る燃料電池システム1の全体構成について説明する。本実施形態においては、本発明を燃料電池車両(移動体)の車載発電システムに適用した例について説明する。
本実施形態に係る燃料電池システム1は、図1に示すように、反応ガス(酸化ガス及び燃料ガス)の供給を受けて電力を発生する燃料電池10を備えるとともに、燃料電池10に酸化ガスとしての空気を供給する酸化ガス配管系2、燃料電池10に燃料ガスとしての水素を供給する水素ガス配管系3、システム全体を統合制御する制御装置4等を備えている。
燃料電池10は、反応ガスの供給を受けて発電する単セルを所要数積層して構成したスタック構造を有している。単セルはいずれも図示省略したが、イオン交換膜からなる電解質膜と、電解質膜を両面から挟んだ一対のアノードおよびカソードとで構成されている。
カソードには、酸化ガス配管系2により所定の圧力の酸化ガス(空気)が供給され、アノードには水素ガス配管系3により所定の圧力の水素ガスが供給される。この両ガスの電気化学反応により各単セルの起電力が得られる。
燃料電池10により発生した電力は、PCU(Power Control Unit)11に供給される。PCU11は、燃料電池10とトラクションモータ12との間に配置されるインバータやDC‐DCコンバータ等を備えている。また、燃料電池10には、発電中の電流を検出する電流センサ13が取り付けられている。
酸化ガス配管系2は、加湿器20により加湿された酸化ガス(空気)を燃料電池10に供給する酸化ガス供給手段としての酸化ガス供給流路21と、燃料電池10から排出された酸化オフガスを加湿器20に導く酸化ガス排出流路22と、加湿器20から希釈器40を介して外部に酸化オフガスを導くための排気流路23と、を備えている。酸化ガス供給流路21には、大気中の空気を取り込んで加湿器20に圧送するコンプレッサ24が設けられている。酸化ガス排出流路22には、燃料電池10内の酸化ガスの圧力を検出するためのカソード側圧力センサ25と、一次圧の変化に応じて酸化オフガスの流量を調整することにより、燃料電池10内の酸化ガスの圧力を調整する背圧弁26が配置されている。背圧弁26は、例えばバタフライ弁で構成される。
水素ガス配管系3は、高圧の水素ガスを貯留した燃料供給源としての水素タンク30と、水素タンク30の水素ガスを燃料電池10に供給するための燃料ガス供給手段としての水素供給流路31と、燃料電池10から排出された水素オフガスを水素供給流路31に戻すための循環流路32と、を備えている。なお、水素タンク30に代えて、炭化水素系の燃料から水素リッチな改質ガスを生成する改質器と、この改質器で生成した改質ガスを高圧状態にして蓄圧する高圧ガスタンクと、を燃料供給源として採用することもできる。また、水素吸蔵合金を有するタンクを燃料供給源として採用してもよい。
水素供給流路31には、水素タンク30からの水素ガスの供給を遮断又は許容する遮断弁33と、水素ガスの圧力を調整するレギュレータ34と、インジェクタ35と、が設けられている。また、インジェクタ35の上流側には、水素供給流路31内の水素ガスの圧力及び温度を検出するインジェクタ上流側圧力センサ41及び温度センサ42が設けられている。また、インジェクタ35の下流側であって水素供給流路31と循環流路32との合流部A1の上流側には、燃料電池10内の水素ガスの圧力を検出するためのアノード側圧力センサ43が設けられている。
レギュレータ34は、その上流側圧力(一次圧)を、予め設定した二次圧に調圧する装置である。本実施形態においては、一次圧を減圧する機械式の減圧弁をレギュレータ34として採用している。機械式の減圧弁の構成としては、背圧室と調圧室とがダイアフラムを隔てて形成された筺体を有し、背圧室内の背圧により調圧室内で一次圧を所定の圧力に減圧して二次圧とする公知の構成を採用することができる。本実施形態においては、図1に示すように、インジェクタ35の上流側にレギュレータ34を2個配置することにより、インジェクタ35の上流側圧力を低減させている。
インジェクタ35は、弁体を電磁駆動力で直接的に所定の駆動周期で駆動して弁座から離隔させることによりガス流量やガス圧を調整することが可能な電磁駆動式の開閉弁である。インジェクタ35は、水素ガス等の気体燃料を噴射する噴射孔を有する弁座を備えるとともに、その気体燃料を噴射孔まで供給案内するノズルボディと、このノズルボディに対して軸線方向(気体流れ方向)に移動可能に収容保持され噴射孔を開閉する弁体と、を備えている。本実施形態においては、インジェクタ35の弁体は電磁駆動装置であるソレノイドにより駆動され、このソレノイドに給電されるパルス状励磁電流のオン・オフにより、噴射孔の開口面積を2段階又は多段階に切り替えることができるようになっている。制御装置4から出力される制御信号によってインジェクタ35のガス噴射時間及びガス噴射時期が制御されることにより、水素ガスの流量及び圧力が高精度に制御される。インジェクタ35は、弁体及び弁座を電磁駆動力で直接開閉駆動するものであり、その駆動周期が高応答の領域まで制御可能であるため、高い応答性を有する。
インジェクタ35は、その下流に要求されるガス流量を供給するために、インジェクタ35のガス流路に設けられた弁体の開口面積(開度)及び開放時間の少なくとも一方を変更することにより、下流側(燃料電池10側)に供給されるガス流量(又は水素モル濃度)を調整する。なお、インジェクタ35の弁体の開閉によりガス流量が調整されるとともに、ガス要求に応じて所定の圧力範囲の中で要求圧力に一致するようにインジェクタ35の上流ガス圧の調圧量(減圧量)を変化させることが可能になっている。
なお、本実施形態においては、図1に示すように、水素供給流路31と循環流路32との合流部A1より上流側にインジェクタ35を配置している。また、図1に破線で示すように、燃料供給源として複数の水素タンク30を採用する場合には、各水素タンク30から供給される水素ガスが合流する部分(水素ガス合流部A2)よりも下流側にインジェクタ35を配置するようにする。
循環流路32には、気液分離器36及びパージバルブ37を介して、排出流路38が接続されている。気液分離器36は、水素オフガスから水分を回収するものである。パージバルブ37は、制御装置4からの指令によって作動することにより、気液分離器36で回収した水分と、循環流路32内の不純物を含む水素オフガス(燃料オフガス)と、を外部に排出(パージ)するものである。また、循環流路32には、循環流路32内の水素オフガスを加圧して水素供給流路31側へ送り出す水素ポンプ39が設けられている。
希釈手段としての希釈器40は、パージバルブ37及び排出流路38を介して排出される水素オフガスを、排気流路23を介して排出される酸化オフガスによって希釈し、外部に排出するようになっている。
制御装置4は、車両に設けられた加速操作部材(アクセル等)の操作量を検出し、加速要求値(例えばトラクションモータ12等の負荷装置からの要求発電量)等の制御情報を受けて、システム内の各種機器の動作を制御する。なお、負荷装置とは、トラクションモータ12のほかに、燃料電池10を作動させるために必要な補機装置(例えばコンプレッサ24、水素ポンプ39、冷却ポンプのモータ等)、車両の走行に関与する各種装置(変速機、車輪制御装置、操舵装置、懸架装置等)で使用されるアクチュエータ、乗員空間の空調装置(エアコン)、照明、オーディオ等を含む電力消費装置を総称したものである。
制御装置4は、図示していないコンピュータシステムによって構成されている。かかるコンピュータシステムは、CPU、ROM、RAM、HDD、入出力インタフェース及びディスプレイ等を備えるものであり、ROMに記録された各種制御プログラムをCPUが読み込んで実行することにより、各種制御動作が実現されるようになっている。
具体的には、制御装置4は、燃料電池10の運転状態(電流センサ13で検出した燃料電池10の発電時の電流値等)に基づいて、燃料電池10で必要とされる酸化ガス及び水素ガスの供給量を算出する。そして、制御装置4は、背圧弁26およびインジェクタ35を制御することで所望の流量、圧力の酸化ガス、水素ガスを燃料電池10に供給する。
2.燃料電池システムの起動処理時における酸化ガスの供給制御
燃料電池システム1は、システム停止中に燃料電池システム1のアノード側(ここでは、燃料電池10のアノード及び水素ガス配管系3)に移動してきた窒素等の不純物を含む水素ガスを、システムの起動処理時において、新たに燃料電池10に水素ガスを供給することによって置換(掃気)する。このとき、不純物を含む水素オフガスは、パージバルブ37から排出流路38を介して希釈器40に排出される。そして、希釈器40において、当該不純物を含む水素オフガスは、排気流路23を介して排出される酸化オフガスによって希釈され、燃料電池システム1の外部(本実施の形態においては、車両の外すなわち大気中)に排出される。このとき、外部に排出する水素濃度は一定値(例えば4%)以下に抑える必要があるので、希釈に用いる酸化オフガスを一定流量希釈器40に流す必要がある。そのため、制御装置4は、背圧弁26を制御して燃料電池10に供給する酸化ガス(空気)の流量を増大させることで、希釈に必要な酸化オフガスを希釈器40にて確保するようにしている。
以下、この起動処理時における酸化ガスの流量制御につき図2乃至図4を用いて説明する。ここで、図2及び図3は、本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの起動処理時における各種物理量及びパージバルブの制御を示すタイムチャート、図4は、比較例に係る従来の燃料電池システムの起動処理時における各種物理量及びパージバルブの制御を示すタイムチャートである。
図2、図3において、(A)は、燃料電池10へ供給される酸化ガス(空気)流量(以下、エア流量ともいう)についてのタイムチャート、(B)は、パージバルブ37の開閉についてのタイムチャート、(C)は、燃料電池10のアノード側の窒素等の不純物濃度を示すNH(Non-Hydrogen)分圧のタイムチャート、(D)は、希釈器40を介して外部に排出される水素濃度である。ここで、Q0は、燃料電池10が最大出力で発電を行うために必要十分なエア流量である。またP0は、燃料電池10が最大出力で発電が可能なNH分圧の上限値であり、すなわちNH分圧がP0以下の場合において、燃料電池が最大出力で発電可能となる。またDHは、許容される排気水素濃度の最大値(例えば、4%)である。尚、これらの意義については、図4(A)乃至(D)も、従来の燃料電池システムについてのものである点を除き、図2、図3の(A)乃至(D)と同様である。
以下、(1)アノード側不純物濃度が高い場合、(2)アノード側不純物濃度が低い場合および(3)比較例に分けて説明する。
(1)アノード側不純物濃度が高い場合
制御装置4は、図2(C)に示すシステムの起動処理の開始時点(t0)におけるNH分圧P1に基づいて、NH分圧をP0まで減少させるために必要なエア流量を計算する。より具体的には、エア流量の最大値Q1及びその減少スピード(図2(A)におけるt1t2間の傾き)を決定する。ただし、エア流量の最大値およびそのスピードは、エアの供給により発生する音や振動を加味してあらかじめ限界値が定められており、すなわちQ1及び減少スピードは過度に大きくならないようにして決定される。尚、NH分圧は、燃料電池10内部にセンサを設けて直接測定してもよいし、システムの前回終了時からの経過時間と、窒素の透過係数を決定する温度とを考慮して推定してもよい。
次に、制御装置4は、上記計算値に基づいて、背圧弁26を制御して、図2(A)に示すように、エア流量をQ1まで増大させ(t1)、その後エア流量をQ0まで徐々に減少させていく(t2)。
このとき、制御装置4は、図2(B)に示すように、パージバルブ37を開閉して、水素オフガスを希釈器40に排出する。これにより、図2(C)に示すように、NH分圧が段階的に減少し、NH分圧P0まで減少する(t2)。この時点において、燃料電池10が最大出力での発電が可能となり、燃料電池システム1は、水素ガスの置換(掃気)を終了させて起動処理を完了し、以降通常運転に移行する。
尚、制御装置4は、エア流量に応じてパージバルブ37の開閉、すなわち開周期(T1、T2)及び開時間(L1、L2、L3)を制御する。より具体的には、図2(D)に示すように、排気水素濃度を排気水素濃度の限界値DHに近い値で維持できるようにパージバルブ37の開閉を制御する。例えば、エア流量が大きいときは、開時間を長くし、エア流量が小さいときは開時間を短くする。これにより、燃料電池10に供給される酸化ガス(空気)流量(結果的に希釈用の酸化オフガス流量)に応じて、常に最大限の水素オフガスを希釈器40に排出できる。これにより、NH分圧を可能な限り速いスピードでP0まで減少させることができ、起動処理時間を短縮できる。また制御装置4は、開周期及び開時間を徐々に短くし(Tn+1<Tn及びLn+1<Ln:nは自然数)、閉時間を徐々に長くする(Tn+1−Ln+1>Tn−Ln:nは自然数)ようになっている。これにより、ユーザに知覚される音に変化をつけ、通常運転移行のタイミングをユーザに認知しやすくしている。
(2)アノード側不純物濃度が低い場合
制御装置4は、起動処理開始時におけるNH分圧(P2)が図2の場合(P1)に比べて小さいので、図3(A)に示すように、エア流量の減少スピードは図2の場合と同様にしつつもエア流量の最大値をQ2としてQ1よりも小さく設定している。そして、このエア流量にあわせ、制御装置4は、パージバルブ37の開周期(T3、T4)及び開時間(L4、L5)を、図2の場合に比べて短くしている。このようにしても、アノード側不純物濃度が低いので、通常運転に移行する時間(t3)が図2の場合(t2)と比べて短くなっている。また制御装置4は、開周期及び開時間を徐々に短くし(Tn+1<Tn及びLn+1<Ln:nは自然数)、閉時間を徐々に長くする(Tn+1−Ln+1>Tn−Ln:nは自然数)ようになっている。これにより、ユーザに知覚される音に変化をつけ、通常運転移行のタイミングをユーザに認知しやすくしている。
(3)比較例
図4(A)に示すように、従来の燃料電池システムは、エア流量は、起動処理時において一定値QPに固定され、NH分圧がP0に下がった段階(t4)で、エア流量をQ0に急減させている。またパージバルブの開周期及び開時間も一定値(TP、LP)に固定されている。
以上(1)乃至(3)より、次のようなことがいえる。すなわち、本発明の実施の形態(1)(2)においては、起動処理時において、酸化ガスの供給量を通常運転時に比べて一旦増大させ、その後漸減させていくので、(3)の比較例の場合と比べて、酸化ガスの供給に起因する音や振動(具体的には、コンプレッサ24の駆動音等)が突然途切れたり、小さくなったりするようなことがなく、ユーザにとって聴感が改善される。また、(3)の比較例においては、エア流量が常に一定であり起動処理の終了は予測しにくいという問題があるが、本発明の実施の形態(1)(2)においては、起動処理の間に酸化ガスの供給に起因する音や振動が漸減していくので、起動処理の終了ないし通常運転の開始のタイミングをユーザが予測可能となる。
また、本発明の実施の形態(1)(2)においては、エア流量に応じてパージバルブ37の開周期および開時間を制御し酸化ガスの供給量に応じて希釈可能な最大量の燃料ガスが希釈手段に排出されるので、常に一定量のパージを行う(3)の比較例に比べて、通常運転開始までの時間を短縮することができる。
また本発明の実施の形態の(1)(2)においては、燃料電池のアノード側の不純物濃度に応じて酸化ガスの供給量が増減できるので、酸化ガスの供給に起因する音や振動を必要限度に抑えることができる。例えば、(2)のようにアノード側の不純物濃度が低いときは、最大エア流量Q2を(1)の最大エア流量Q1に比べて小さくすることができるので、酸化ガスの供給に起因する音や振動を(1)の場合に比べて小さくすることができる。
3.本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの変形例
以上本発明の実施形態を示したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な態様での実施が可能である。例えば以下のような変形例が可能である。
上記実施の形態では、アノード側不純物濃度が低い場合に、高い場合に比べてエア流量の最大値を小さくしていたが、これに限られず、例えば、エア流量の最大値は同じとしつつもエア流量の減少スピードを大きくするようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、エア流量の減少スピードをほぼ一定に保つようにしてエア流量を漸減させているが、これに限られず、例えば、小刻みに階段状に減少するようにしてエア流量を漸減させてもよい。
また、上記実施の形態においては、システムの起動処理時におけるエア流量の制御について説明したが、これに限られず、燃料ガスを置換する際のエア流量の制御に適宜適用可能である。例えば、当該制御を燃料電池システムの終了時の燃料ガスの掃気処理等にも用いることもできる。
また、上記実施の形態においては、循環流路32に、水素ポンプ39を設けて、循環流路32内の水素オフガスを加圧して水素供給流路31側へ循環させているが、水素ポンプ39を設けず、水素を水素供給流路31へ循環させないようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、本発明に係る燃料電池システムを燃料電池車両に搭載した例を示したが、燃料電池車両以外の各種移動体(ロボット、船舶、航空機等)に本発明に係る燃料電池システムを搭載することもできる。また、本発明に係る燃料電池システムを、建物(住宅、ビル等)用の発電設備として用いられる定置用発電システムに適用してもよい。
本発明の実施の形態に係る燃料電池システムの構成図。 同燃料電池システムの起動処理時における各種物理量及びパージバルブの制御を示すタイムチャート。 同燃料電池システムの起動処理時における各種物理量及びパージバルブの制御を示すタイムチャート。 比較例に係る従来の燃料電池システムの起動処理時における各種物理量及びパージバルブの制御を示すタイムチャート。
符号の説明
1 ……燃料電池システム
2 ……酸化ガス配管系
3 ……水素ガス配管系
4 ……制御装置
10……燃料電池
11……PCU
12……トランクションモータ
13……電流センサ
20……加湿器
21……酸化ガス供給流路(酸化ガス供給手段)
22……酸化ガス排出流路
23……排気流路
24……コンプレッサ
25……カソード側圧力センサ
26……背圧弁
27……ステップモータ
30……水素タンク
31……水素供給流路(燃料ガス供給手段)
32……循環流路
33……遮断弁
34……レギュレータ
35……インジェクタ
36……気液分離器
37……パージバルブ
38……排出流路
39……水素ポンプ
40……希釈器(希釈手段)
41……インジェクタ上流側圧力センサ
42……温度センサ
43……アノード側圧力センサ

Claims (5)

  1. アノード及びカソードを有する燃料電池と、
    前記アノードに燃料ガスを供給する燃料ガス供給手段と、
    大気中の空気を取り込んで圧送するコンプレッサを有し、前記カソードに酸化ガスを供給する酸化ガス供給手段と、
    前記アノードから排出される燃料ガスを、前記カソードから排出される酸化ガスによって希釈する希釈手段と、を備えた燃料電池システムであって、
    前記燃料電池システム内の燃料ガスを前記燃料ガス供給手段から供給される新たな燃料ガスにて置換する燃料ガスの置換開始時に、前記酸化ガス供給手段から供給する酸化ガスの供給量を通常運転時に比べて増大させ、該供給量を前記燃料ガスの置換終了時までに漸減させていくものであり、
    前記燃料ガスの置換を行なっている間は、
    前記希釈手段によって希釈された後における前記燃料ガスの濃度を所定の上限値に近い値で維持できるように、
    前記酸化ガスの供給量に応じて、前記アノードから前記希釈手段に排出される燃料ガスの排出量が決定されることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記燃料電池のアノード側の不純物濃度に応じて、前記燃料ガスの置換開始時における酸化ガスの供給量が決定される請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記アノードから前記希釈手段にパージバルブを介して燃料ガスが排出され、前記酸化ガスの供給量に応じて、前記パージバルブの開閉時間及び開閉の周期が決定される請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
  4. 前記燃料電池システムの起動処理中に、前記燃料ガスの置換が行われる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池システムを備えた移動体。
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