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JP5266925B2 - 金属化ポリイミドフィルムとその製造方法 - Google Patents

金属化ポリイミドフィルムとその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属化ポリイミドフィルムとその製造方法に関し、さらに詳しくは、フレキシブルプリント配線板用、特にファインピッチ化されたフレキシブルプリント配線板用として好適な、エッチング寸法変化率及び加熱寸法変化率が小さく、寸法安定性に優れた金属化ポリイミドフィルムとその製造方法に関する。
従来、金属化ポリイミドフィルムとしては、銅箔とポリイミドフィルムの間に接着剤を用いて両者を張り合わせたものが主流であり、このような金属化ポリイミドフィルムが、フレキシブルプリント配線板として、電子機器内の配線材料として広く採用されていた。
近年、電子部品の軽薄短小化に伴い、電子機器内の配線材料として用いる、プリント配線板(PWB)、フレキシブルプリント配線板(FPC)、テープ自動ボンディング用テープ(TAB)、チップオンフィルム(COF)等のフレキシブルプリント配線板において、その配線を狭ピッチ化するという要求が高まっている。このため、その材料として使用する金属化ポリイミドフィルムに対しても、微細配線が描けることが要求され、その際、エッチング工程及び加熱工程に際して、寸法安定性の改善とともに、接着剤層の排除が要求されている。すなわち、金属化ポリイミドフィルムから接着剤層を排除することにより、接着剤層の特性による影響を受けない、ポリイミド本来の安定性を利用した材料が得られるためである。
ところで、上記金属化ポリイミドフィルムの寸法安定性を改善する方策として、従来から、使用するポリイミドフィルムについての種々の改良がなされてきた。例えば、芳香族ポリイミドフィルムの片面又は両面に、金属層が直接又は接着剤を介して積層されてなる積層板であって、該芳香族ポリイミドフィルムの吸光係数が、波長500nmで15×10−3/μm以下、波長600nmで5×10−3/μm以下であり、その線膨張係数が、50〜200℃の温度で0.5×10−2〜2.5×10−5cm/cm/℃であり、及びその吸水率(ASTM・D570−63に従って、23℃で24時間の条件で測定したもの。)が、2.5%以下である金属張積層板(例えば、特許文献1参照。)、ポリイミドフィルムの少なくとも片面に、ICチップが搭載可能なように配線を形成してなるチップオンフィルムであって、ジアミン成分として、3、4’−ジアミノジフェニルエーテル及び4、4’−ジアミノジフェニルエーテルを、及び酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物を、主成分として用いてなるポリイミドフィルムに接着剤を介することなく配線が形成されるチップオンフィルム(例えば、特許文献2参照。)等が提案されていた。これらの技術では、ポリイミドフィルム単体での線膨張、寸法安定性などの熱特性、並びに生産性の点では改良されるものの、例えば、湿式法により銅被膜を形成させた金属化ポリイミドフィルムを製造する場合、良好な寸法安定性を有する金属化ポリイミドフィルムを得ることができなかった。
さらに、別の方策として、金属化ポリイミドフィルムを製造した後に、矯正によって寸法安定性を改善する方法が提案されている。例えば、長尺状の金属箔上に接着剤を介さず直接形成した芳香族ポリイミド薄膜を有する長尺状のフレキシブル金属箔積層板を、特定の角度で複数のバー上を滑らせる方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。この方法では、バー上を滑らせるために、金属化ポリイミドフィルムに疵が発生する可能性が高いばかりか、矯正を別工程で行なうために生産性の点でも問題がある。
一方、接着剤層を用いない金属化ポリイミドフィルムを得る方法として、ポリイミドフィルムの表面に下地金属層を形成する工程(1)、及び得られたポリイミドフィルムの下地金属層上に銅層を形成する工程(2)を含む金属化ポリイミドフィルムの製造方法が知られている。ここで、ポリイミドフィルム表面に直接的にスパッタ法又は蒸着法で下地金属層を形成させた後に、さらにその上に電気めっき法又は無電解めっき法を用いて銅層等の金属層を厚付けする方法が行なわれている。この方法により製造される金属化ポリイミドフィルムとしては、銅層等の金属層を薄くすることが可能であるので、ファインピッチ化したフレキシブルプリント配線板に対応した材料として好適である。しかしながら、このような金属化ポリイミドフィルムでは、未だ、寸法安定性を十分に向上させたものが得られていない。
以上のように、従来技術では、接着剤層を用いない金属化ポリイミドフィルムにおいて、寸法安定性が十分に向上し、ファインピッチ化対応に適した金属化ポリイミドフィルムを得ることができなかった。
特開2006−130925号公報(第1頁、第2頁) 特開2007−180179号公報(第1頁、第2頁) 特公平6−39143号公報(第1頁、第2頁)
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、フレキシブルプリント配線板用、特にファインピッチ化されたフレキシブルプリント配線板用として好適な、エッチング寸法変化率及び加熱寸法変化率が小さく、寸法安定性に優れた金属化ポリイミドフィルムとその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、ポリイミドフィルムの表面に下地金属層を形成する工程(1)、及び得られたポリイミドフィルムの下地金属層上に銅層を形成する工程(2)を含む金属化ポリイミドフィルムの製造方法について、鋭意研究を重ねた結果、前記ポリイミドフィルムとして、特定の範囲に酸素透過度を有するものを使用して金属化ポリイミドフィルムを製造したところ、フレキシブルプリント配線板用、特にファインピッチ化されたフレキシブルプリント配線板用として好適な、エッチング寸法変化率及び加熱寸法変化率が小さく、寸法安定性に優れた金属化ポリイミドフィルムができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリイミドフィルムの表面に、蒸着法又はスパッタ法で下地金属層を形成する工程(1)、及び得られたポリイミドフィルムの下地金属層上に、電気めっき法又は無電解めっき法、若しくはその両者を組み合わせた方法で銅層を形成する工程(2)を含む金属化ポリイミドフィルムの製造方法において、
前記ポリイミドフィルムは、酸素透過度が300〜600cm/(m・24h・atm)であることを特徴とする金属化ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記ポリイミドフィルムの組成は、ビフェニルテトラカルボン酸を主成分とすることを特徴とする金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記ポリイミドフィルムの厚さは、25〜50μmであることを特徴とする金属化ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記ポリイミドフィルムの吸水率は、1〜3%であることを特徴とする金属化ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、前記工程(1)において、下地金属層は、ニッケル、クロム、又は銅から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする金属化ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、前記工程(1)において、下地金属層の厚さは、5〜50nmであることを特徴とする金属化ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、前記工程(2)において、銅層の厚さは、1.0〜20μmであることを特徴とする金属化ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第1の発明において、前記工程(2)において、銅層は、硫酸浴を用いた電気めっき法により形成されることを特徴とする金属化ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1の発明において、前記工程(2)で得られる銅層の内部応力は、ポリイミドフィルムが乾燥される前の状態で、5〜30MPaの引張り応力となるように制御することを特徴とする金属化ポリイミドフィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜9いずれかの発明において、前記工程(1)及び(2)において、下地金属層と銅層のそれぞれが、ポリイミドフィルムの搬送を連続的に行いながら形成されることを特徴とする金属化ポリイミドフィルムの製造方法、が提供される。
また、本発明の第11の発明によれば、第10の発明の製造方法で得られる金属化ポリイミドフィルムであって、
IPC−TM−650、2、2、4(Dimensional Stability、Flexible Dielectric Materials)に定めるエッチング寸法変化率(Method B)及び加熱寸法変化率(Method C)が、前記ポリイミドフィルムの搬送の方向と直角方向において0.000±0.005%であることを特徴とする金属化ポリイミドフィルムが提供される。
本発明の金属化ポリイミドフィルムの製造方法によれば、エッチング寸法変化率及び加熱寸法変化率が小さく、寸法安定性に優れた金属化ポリイミドフィルムが得られ、また、得られた金属化ポリイミドフィルムは、フレキシブルプリント配線板用、特にファインピッチ化されたフレキシブルプリント配線板用として好適に用いることができ、その工業的価値は極めて大きい。
以下、本発明の金属化ポリイミドフィルムとその製造方法を詳細に説明する。
1.金属化ポリイミドフィルムの製造方法
本発明の金属化ポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミドフィルムの表面に、蒸着法又はスパッタ法で下地金属層を形成する工程(1)、及び得られたポリイミドフィルムの下地金属層上に、電気めっき法又は無電解めっき法、若しくはその両者を組み合わせた方法で銅層を形成する工程(2)を含む金属化ポリイミドフィルムの製造方法において、
前記ポリイミドフィルムは、酸素透過度が300〜600cm/(m・24h・atm)であることを特徴とする。
本発明の製造方法において、原材料として、酸素透過度が300〜600cm/(m・24h・atm)であるポリイミドフィルムを使用することが重要である。これによって、得られる金属化ポリイミドフィルムの寸法変化率が極めて小さいものとすることができる。以下に、金属化ポリイミドフィルムの寸法変化の機構、及びポリイミドフィルムの酸素透過度と作用効果の関係について説明する。
すなわち、上記工程(1)及び工程(2)を含む金属化ポリイミドフィルムの製造方法において、下地金属層上に銅層を形成する工程(2)に際し、該銅層は、電気めっき法又は無電解めっき法、若しくはその両者を組み合わせた方法で形成される。ここで、下地金属層を形成したポリイミドフィルム上に、電気めっき法又は無電解めっき法でめっき層を形成すると、形成されためっき層は、通常、内部応力として引張り応力を持つ。したがって、前記銅層により被覆されたポリイミドフィルムは、内部応力として圧縮応力を持つこととなる。このような大きな内部応力を持った状態のままの金属化ポリイミドフィルムを切断する際、或いはその銅層及び下地金属層をエッチングする際、該内部応力が解放されるので、該金属化ポリイミドフィルムの寸法変化が生じる。また、このような金属化ポリイミドフィルムが加熱された場合にも、ポリイミドフィルムの剛性が低下して寸法変化を生じる。このような傾向は、ファインピッチ化に対応した微細加工工程において、特に顕著に出現する。
ところで、電気めっき法及び無電解めっき法は、めっき浴に浸漬され、湿式で行なわれるので、ポリイミドフィルムは、めっき処理中に、吸水して膨張する。そして、めっき後の金属化ポリイミドフィルムを乾燥する際に、収縮し、めっき処理前の状態に戻る。したがって、ポリイミドフィルムの吸水による膨張が十分速ければ、めっき処理中にめっき層が所望の厚さに成長するまでの間に十分に膨張し、その後の乾燥により、ポリイミドフィルムがめっき層を圧縮することとなる。すなわち、乾燥後のポリイミドフィルムのめっき層への圧縮により、めっき層が本来有している引張り応力が、相殺され緩和されることで、寸法安定性に極めて優れた金属化ポリイミドフィルムが形成されることになるものと推察される。したがって、エッチングや加熱での寸法変化の要因が極めて少なく、ファインピッチ化に最も優れた特性を有するものが得られる。
ここで、ポリイミドフィルムの酸素透過度は、ポリイミドフィルムの吸水による膨張を制御する要因として作用する。すなわち、酸素透過度は、液中での吸水速度と同等に扱われる特性値であり、酸素透過度が大きいものは吸水速度が大きくなる。したがって、所定の酸素透過度を有するポリイミドフィルムでは、めっき処理中にめっき層が所望の厚さに成長するまでの間に十分に膨張し、乾燥後のポリイミドフィルムのめっき層への圧縮による引張り応力の緩和効果が得られる。
これに対し、ポリイミドフィルムの吸水度による特定(例えば、特許文献1参照。)では、吸水速度の違いがある場合、めっき処理中にめっき層が所望の厚さに成長するまでの間に十分な膨張が得られることを保証することができない。
上記酸素透過度としては、300〜600cm/(m・24h・atm)であり、好ましくは350〜500cm/(m・24h・atm)であり、より好ましくは400〜500cm/(m・24h・atm)である。なお、上記酸素透過度は、23℃の温度下でJIS K7126の差圧法に準拠して測定したものであり、膜厚35μmとした場合のものである。また、(m・24h・atm)は、単位面積(m)当たり、単位圧力(atm)下で24時間での測定値を表すものである。
すなわち、酸素透過度が、300cm/(m・24h・atm)未満では、吸水速度が小さく、ポリイミドフィルムの吸水による膨張が十分でないので、乾燥後のポリイミドフィルムのめっき層への圧縮による引張り応力の緩和効果が減少し、十分な寸法安定性が得られない。一方、酸素透過度が、600cm/(m・24h・atm)を超えても、ポリイミドフィルムの吸水による膨張がより速くなるのみで、引張り応力緩和効果はそれ以上向上せず、しかも電子部品として用いた場合に銅層の耐食性に問題が生じる。
本発明の金属化ポリイミドフィルムの製造方法は、特定のポリイミドフィルムの表面に、蒸着法又はスパッタ法で下地金属層を形成する工程(1)、及び得られたポリイミドフィルムの下地金属層上に、電気めっき法又は無電解めっき法、若しくはその両者を組み合わせた方法で銅層を形成する工程(2)を含む方法であるが、特定のポリイミドフィルム表面に極めて薄い金属被膜からなる下地金属層を形成し、次いでその上に所定の厚みまで銅層を厚付けして、金属化ポリイミドフィルムを得るものである。
(1)工程(1)
上記工程(1)は、ポリイミドフィルムの表面に、蒸着法又はスパッタ法からなる乾式めっき法で下地金属層を形成する工程である。前記乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、ポリイミドフィルムの表面に所望の厚さに金属層を形成することができる通常の条件が用いられる。
上記工程(1)に用いるポリイミドフィルムとしては、前述したように、酸素透過度が300〜600cm/(m・24h・atm)のものが用いられるが、その他の特性については、特に限定されない。
例えば、上記ポリイミドフィルムの厚さとしては、特に限定されるものではないが、屈曲げ性の確保を考慮すると、25〜50μmであることが好ましい。
上記ポリイミドフィルムの吸水率としては、特に限定されるものではなく、前述したように、吸水速度による効果が重要な要因であることから、金属化ポリイミドフィルムに通常に用いられるポリイミドフィルムと同等の吸水率のものが用いられる。その中で、例えば、吸水率が1〜3%であるものが好ましい。すなわち、吸水率が1%未満では、ポリイミドフィルムの吸水による膨張が十分でないため十分な寸法安定性が得られない場合がある。一方、吸水率が3%を超えると、ポリイミドフィルムの吸水による膨張が大きくなり過ぎて、ポリイミドフィルムのめっき層への圧縮による引張り応力とのバランスが崩れ、十分な寸法安定性が得られない場合がある。なお、前記吸水率は、ASTM D570に準拠して測定したものであり、20℃で24時間の浸漬による。
上記ポリイミドフィルムの組成としては、特に限定されるものではないが、ビフェニルテトラカルボン酸を主成分とするものを用いることが好ましい。すなわち、ビフェニルテトラカルボン酸を主成分とするポリイミドフィルムは、耐熱性、寸法安定性等に優れるため好ましい。このようなポリイミドフィルムとしては、市販されているものを用いることができるが、例えば、株式会社カネカから市販されているアピカル35FP(登録商標)等が挙げられる。
上記下地金属層としては、特に限定されるものではなく、ポリイミドとの密着力とその耐熱性等の信頼性を確保するための金属シード層として、ニッケル、クロム、又は銅から選ばれる少なくとも1種で構成されることが好ましく、特に、クロム−ニッケル合金であることがより好ましい。すなわち、下地金属層をこれらの金属又は合金で構成することにより、得られる金属化ポリイミドフィルムの耐食性、耐マイグレーション性等が向上する。
上記下地金属層の厚さとしては、特に限定されるものではないが、5〜50nmが好ましい。すなわち、下地金属層の膜厚が5nm未満では、金属化ポリイミドフィルムを用いて配線加工を行う際に、エッチング液がフィルムと下地金属層の間に染み込み、配線部が浮いてしまう場合がある。一方、下地金属層の膜厚が50nmを超えると、配線形成のエッチング時に下地金属層の残渣が残る場合がある。
上記工程(1)において、前記乾式めっき法を行なう前に、ポリイミドフィルムと下地金属層の密着性を改善するため、ポリイミドフィルムの乾式表面処理を行なってもよい。
上記式表面処理としては、例えば、酸素ガス雰囲気下に、紫外線照射処理に付すことができる。また、これらの処理の前に、コロナ放電やイオン照射処理などを行うことがより好ましい。これら乾式表面処理の条件としては、特に限定されるものではなく、通常の金属化ポリイミドフィルムの製造方法に用いられる条件で行われる。
上記工程(1)で乾式めっき法に用いる装置としては、特に限定されるものではなく、例えば、下地金属層を構成する元素を含む所定の組成からなるターゲットを備えたマグネトロンスパッタ装置等が使用される。
また、効率的に行なうためには、上記乾式めっき装置として、ロール状に巻いたポリイミドフィルムを、乾式めっき装置の内部に設置した巻出機から巻出し、乾式めっき処理部を通過させて、巻取機で巻取ながら、連続的に搬送して乾式めっきを行うことが好ましい。
(2)工程(2)
上記工程(2)は、上記工程(1)で得られたポリイミドフィルムの下地金属層上に、電気めっき法又は無電解めっき法、若しくはその両者を組み合わせた方法からなる湿式めっき法で銅層を形成する工程である。ここで、前記湿式めっき法による銅層は、通常、引張り応力を持っているので、前記ポリイミドフィルムの銅層への圧縮との作用により、内部応力が緩和され、寸法変化率の極めて低い金属化ポリイミドフィルムが得られる。
上記工程(2)で用いる銅層の湿式めっき法としては、電気めっき法又は無電解めっき法、若しくはその両者を組み合わせた方法であるが、この中で、硫酸浴を用いた電気めっき法が好ましい。すなわち、硫酸浴を用いた電気めっき法による銅層は、適度な引張り応力を持っており、前記ポリイミドフィルムの銅層への圧縮と該銅層の引張り応力とのバランスを取ることが容易であり好ましい。
上記硫酸浴による電気めっき法としては、通常の条件で行なえばよい。ここで、めっき浴としては、一般的な電気めっきに使用される市販の硫酸銅めっき浴を用いることができる。また、陰極電流密度は、めっき槽の平均陰極電流密度を1〜3A/dmとすることが好ましい。すなわち、陰極電流密度の平均陰極電流密度が1A/dm未満では、折れ曲げ性を確保することが困難となる。一方、平均陰極電流密度が3A/dmを超えると、残留応力のばらつきを抑制することが困難になる。
上記硫酸浴を用いた電気めっき法により得られる銅層の内部応力としては、特に限定されるものではないが、ポリイミドフィルムが乾燥される前の状態で、5〜30MPaの引張り応力となるように制御することが好ましい。これによって、寸法変化率がより小さい金属化ポリイミドフィルムが得られる。すなわち、銅層の内部応力が5MPa未満の引張り応力であると、ポリイミドフィルムのめっき層への圧縮が大きくなり過ぎ、銅層が大きな圧縮応力を持つために、十分な寸法安定性が得られない場合がある。一方、銅層の内部応力が30MPaを越えるの引張り応力であると、ポリイミドフィルムのめっき層への圧縮によっても、銅層に大きな引張り応力が残留するために、十分な寸法安定性が得られない場合がある。ここで、内部応力の制御方法としては、浴温、浴濃度、添加物、電流密度等で容易に制御することができる。
上記硫酸浴を用いた電気めっき法に用いる装置としては、ロール状に巻いた下地金属層が形成されたポリイミドフィルムを、電気めっき装置の入口側に設置した巻出機から巻出し、搬送しながら銅めっき槽を順次通過させ、巻取機で巻取りながら、電気銅めっきすることが好ましい。
ここで、フィルムの搬送速度としては、例えば、50〜150m/hに調整することが好ましい。すなわち、搬送速度が、50m/h未満では、生産性が低くなり過ぎる。一方、搬送速度が、150m/hを超えると、電流密度が大きくなり内部応力が大きくなりすぎる場合がある。
上記銅層の厚さとしては、特に限定されるものではないが、1.0〜20μmとすることが好ましい。すなわち、1.0μm未満では、配線を形成したときに十分な導電性が得られない場合があり、一方、20μmを超えると、銅めっき層の内部応力が大きく寸法変化率が大きくなる場合がある。
2.金属化ポリイミドフィルム
本発明の金属化ポリイミドフィルムは、上記製造方法で、前記工程(1)及び(2)において、下地金属層と銅層のそれぞれが、ポリイミドフィルムの搬送を連続的に行いながら形成することにより得られる金属化ポリイミドフィルムであって、
IPC−TM−650、2、2、4(Dimensional Stability、Flexible Dielectric Materials)に定めるエッチング寸法変化率(Method B)及び加熱寸法変化率(Method C)が、前記ポリイミドフィルムの搬送の方向と直角方向において0.000±0.005%であることを特徴とする。
すなわち、エッチング寸法変化率及び加熱寸法変化率が、ポリイミドフィルムの搬送の方向と直角方向において0.000±0.005%の範囲を外れると、ファインピッチ対応の20〜25μmピッチにおける配線パターンの寸法安定性が低下して、ICチップと接合させた場合、金属化ポリイミドフィルムを用いて形成したリードとICチップ上のパッドとの接合不良が多くなる場合がある。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いた金属の分析方法は、蛍光X線法及びICP発光分析法で行なった。
(実施例1)
酸素透過度が450cm/(m・24h・atm)のビフェニルテトラカルボン酸を主成分とする、厚さが35μmのポリイミドフィルム((株)カネカ製、アピカル35FPI)を用いて、下記の条件で下地金属層と銅層を形成して、金属化ポリイミドフィルムを得た。
[下地金属層の形成]
上記ポリイミドフィルムを巻出機と巻取機により連続的に搬送しながら、直流スパッタリング法により、20質量%クロムのクロム−ニッケル合金層を厚さ230Åで形成した後、さらにその上に、銅を厚さ1000Åで形成した。なお、銅は、電気めっきの導電体として作用するものである。
[銅層の形成]
下地金属層上に通常の条件による電気めっき法により、厚さ8μmの銅層を厚付けした。ここで、電気めっき浴としては、銅濃度23g/Lの硫酸銅浴を用い、浴温を25℃とした。また、めっき槽は連続めっき槽とし、巻出機と巻取機により連続的に各槽を搬送しながら電気めっきを行なった。また、搬送速度は、75m/hとし、めっき槽の平均陰極電流密度を1〜2.5A/dmに調整して、めっき被膜の内部応力を制御した。
まず、得られた金属化ポリイミドフィルムについて、IPC−TM−650、2、2、4(Dimensional Stability、Flexible Dielectric Materials)に定めるエッチング寸法変化率(Method B)及び加熱寸法変化率(Method C)を評価したところ、ポリイミドフィルムの搬送の方向と直角方向において、いずれも0.000±0.005%の範囲内であった。
次に、得られた金属化ポリイミドフィルムを用いて、通常のエッチング法によりリードピッチ35μm及びトータルピッチ15000μmのCOF(Chip on film)に加工し、続いて、400℃にて0.5秒間のボンディング処理でICチップと接合させた。このとき、リードとICチップ上のパッドとの接合不良が生じた割合としては、0.0001%であり、リードピッチを25μmとした場合においても、接合不良が生じた割合は0.005%であった。これより、ファインピッチにおいても十分な寸法信頼性が達成されることが分かる。
(比較例1)
ポリイミドフィルムとして、酸素透過度が44cm/(m・24h・atm)のビフェニルテトラカルボン酸を主成分とする、厚さが38μmのポリイミドフィルム((株)東レデュポン製、カプトン150EN )を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、金属化ポリイミドフィルムを得た。
まず、得られた金属化ポリイミドフィルムについて、実施例1と同様にして評価したところ、寸法変化率は、いずれも0.045±0.005%であった。
次に、得られた金属化ポリイミドフィルムを用いて、実施例1と同様にしてICチップと接合させた。このとき、リードとICチップ上のパッドとの接合不良が生じた割合としては、0.001%であり、リードピッチを25μmとした場合においても、接合不良が生じた割合は0.1%であった。これより、ファインピッチでは、十分な信頼性が得られないことが分かる。
(比較例2)
ポリイミドフィルムとして、酸素透過度が8cm/(m・24h・atm)のビフェニルテトラカルボン酸を主成分とする、厚さが35μmポリイミドフィルム(宇部興産製 ユーピレックス35SGA )を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、金属化ポリイミドフィルムを得た。
まず、得られた金属化ポリイミドフィルムについて、実施例1と同様にして評価したところ、寸法変化率は、いずれも0.040±0.005%であった。
次に、得られた金属化ポリイミドフィルムを用いて、実施例1と同様にしてICチップと接合させた。このとき、リードとICチップ上のパッドとの接合不良が生じた割合としては、0.001%であり、リードピッチを25μmとした場合においても、接合不良が生じた割合は0.1%であった。これより、ファインピッチでは、十分な信頼性が得られないことが分かる。
以上より、実施例1では、その酸素透過度が300〜600cm/(m・24h・atm)であるポリイミドフィルムを用いて、本発明の製造方法に従っておこなわれたので、寸法変化率が極めて低く、ファインピッチの基板として用いても十分な寸法信頼性を有する金属化ポリイミドフィルムが得られることが分かる。一方、比較例1、2では、寸法変化率が大きく、ファインピッチの基板として十分な寸法信頼性が有する金属化ポリイミドフィルムが得られないことが分かる。
以上より明らかなように、本発明の金属化ポリイミドフィルムは、エッチング寸法変化率及び加熱寸法変化率に優れているので、ファインピッチ化対応において、COF以外の他のPWB、FPC、TAB等のフレキシブルプリント配線板へも好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. ポリイミドフィルムの表面に、蒸着法又はスパッタ法で下地金属層を形成する工程(1)、及び得られたポリイミドフィルムの下地金属層上に、電気めっき法又は無電解めっき法、若しくはその両者を組み合わせた方法で銅層を形成する工程(2)を含む金属化ポリイミドフィルムの製造方法において、
    前記ポリイミドフィルムは、酸素透過度が300〜600cm/(m・24h・atm)であることを特徴とする金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
  2. 前記ポリイミドフィルムの組成は、ビフェニルテトラカルボン酸を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
  3. 前記ポリイミドフィルムの厚さは、25〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
  4. 前記ポリイミドフィルムの吸水率は、1〜3%であることを特徴とする請求項1に記載の金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
  5. 前記工程(1)において、下地金属層は、ニッケル、クロム、又は銅から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
  6. 前記工程(1)において、下地金属層の厚さは、5〜50nmであることを特徴とする請求項1に記載の金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
  7. 前記工程(2)において、銅層の厚さは、1.0〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載の金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
  8. 前記工程(2)において、銅層は、硫酸浴を用いた電気めっき法により形成されることを特徴とする請求項1に記載の金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
  9. 前記工程(2)で得られる銅層の内部応力は、ポリイミドフィルムが乾燥される前の状態で、5〜30MPaの引張り応力となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
  10. 前記工程(1)及び(2)において、下地金属層と銅層のそれぞれが、ポリイミドフィルムの搬送を連続的に行いながら形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の金属化ポリイミドフィルムの製造方法。
  11. 請求項10の製造方法で得られる金属化ポリイミドフィルムであって、
    IPC−TM−650、2、2、4(Dimensional Stability、Flexible Dielectric Materials)に定めるエッチング寸法変化率(Method B)及び加熱寸法変化率(Method C)が、前記ポリイミドフィルムの搬送の方向と直角方向において0.000±0.005%であることを特徴とする金属化ポリイミドフィルム。
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