JP5266902B2 - 含フッ素オレフィン化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1ではブタン、ブテン、ブタジエンなどの炭素数4の炭化水素を原料に、気相中で塩素、及びフッ化水素を同時に供給しながら触媒存在下に反応させて、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンを得ている。また、特許文献2においてはクロロフルオロブタンを非プロトン性極性溶媒中に、アルカリ金属フッ化物と反応させることにより、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンを製造する方法が開示されている。さらに、特許文献3においては冷媒、発泡剤用途で専ら使用されている、2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン(HCFC−123)を銅粉と高温下に接触させて1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンを得ている。
したがって、本発明者らはさまざまな用途で有用であると考えられる含フッ素オレフィン類、RfCH=CHRfを工業的規模で短工程、且つ、収率良く温和な条件下で製造可能な方法を見出す必要に迫られた。
かかる知見に基づき、化学式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物に亜鉛を接触させて得られる反応液をろ過精製した後に、これにハロゲン化銅を接触させると、収率良く化学式(3)で示される化合物を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
RfCHXY ・・・式(1)
RfCH=CHRf ・・・式(2)
(式(1)及び式(2)中、Rfは炭素数1〜3であるパーフルオロアルキル基、又は含水素フルオロアルキル基であり、X及びYは塩素、臭素、ヨウ素から選択されるハロゲン原子で、X、Yはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。)
前記式(1)及び(2)中、Rfがトリフルオロメチル基、X=Br、Y=Clであることが好ましい。
また、前記式(2)で表される化合物がヘキサフルオロ−2−ブテンであることが好ましい。
更に、ハロゲン化銅が臭化銅(I)であることが好ましい。
上記に示した含フッ素ハロゲン化炭化水素化合物として、例えば、ブロモクロロトリフルオロエタンは、麻酔剤として使用、認知されている化合物であり、試薬として入手することが可能である。また、トリクロロエチレンをフッ化水素処理して合成されるトリフルオロクロロエタンを臭素で処理して製造することも可能である。
ジクロロトリフルオロエタンは冷媒、発泡剤として使用されている化合物であり、容易に入手可能であるが、テトラクロロエチレンのフッ化水素によるフッ素化法で製造することも可能である。
亜鉛の酸化的付加反応を促進するために、少量のヨウ素や、ジブロモエタン等の活性化剤を添加しても構わない。
ろ過工程を挟むことによって、未反応の亜鉛や副反応で生成する塩化亜鉛、臭化亜鉛等の不純物を除去でき、300nmにおける吸光度を小さくすることができる。
ここで吸光度は、実施例に記載の方法で測定される値である。
ハロゲン化銅を懸濁又は溶解させるための有機溶媒やカップリング反応を行う際に使用される溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が挙げられ、これらの中でもテトラヒドロフランが最も好ましい。
カップリングさせる際の温度は、−20℃〜50℃が好ましく、−10℃〜20℃がより好ましい。
(1)ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)
装置:GC−2010(島津製作所社製)
カラム:Neutrabond−1(GLサイエンス社製)
60m×I.D0.25μm、1.5μmdf
カラム温度:40℃(10分)→[40℃/分で昇温]→250℃(14.7分)
インジェクション温度:150℃
キャリヤーガス:窒素ガス
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
GC部分:HP−6890(アジレント社製)
カラム:Neutrabond−1(GLサイエンス社製)
60m×I.D0.25μm、1.5μmdf
カラム温度:40℃(10分)→[20℃/分で昇温]→240℃(10分)
インジェクション温度:200℃
キャリヤーガス:窒素ガス
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
MS部分:5973 NETWORK(アジレント社製)
検出器:EI型
加速電圧70eV
装置:19F−NMR JNM−ECA−500(日本電子社製)
(4)IR分析
装置:IR−8700(島津製作所製)
光路長10cmセル(NaCl)
(5)吸光度
ろ液を、スクリューキャップ付きセル(光路長:1mm、光路幅:10mm、高さ:58mm、材質:石英、GLサイセンス社製)に素早く入れ、UVスペクトルは波長190nm〜900nmの範囲で測定した。波長300nmにおける吸光度を以下の表に示す。
尚、同様のろ過操作を行った乾燥ジエチレングリコールジメチルエーテルを対象サンプルとした。
[実施例1]
滴下ロートを備えた底バルブ付きガラス反応器をよく乾燥させ、窒素雰囲気下に置いた。この反応器に粉末状亜鉛74部、乾燥させたジエチレングリコールジメチルエーテル470部を仕込み、攪拌させて懸濁状態にした。反応器を0℃に冷却し、ヨウ素7部を添加した。滴下ロートから2−ブロモ−2−クロロ−1,1,1−トリフルオロエタン197部をゆっくりと5時間かけて滴下した。反応はバス温を0℃に維持しながら継続した。滴下終了後に原料の消失をガスクロマトグラフィーにて確認し、底バルブから反応液を孔径0.2μmのPTFEメンブレンフィルターを付けたステンレスホルダー(アドバッテック社製、製品名「KST−47型」)に移送した。このステンレスホルダーに乾燥窒素0.4MPaの圧力をかけてろ過を開始した。ろ液はテフロン(登録商標)PFA製チューブを介して、臭化銅73部を乾燥テトラヒドロフランに懸濁させた、別の精留塔を具備したガラス製反応器内に8時間かけて添加した。その際、反応器内は窒素雰囲気下に置き、反応は0℃に保持して行った。尚、ろ液の一部について、300nmの吸光度を測定したところ、吸光度は0.1961であった。
その後、反応器を100℃まで徐々に加温し、精留塔の登頂部が約8℃になった時点で、留分の抜き出しを行った。留分はドライアイス−エタノール浴に浸した受器に捕集した。内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、目的物である、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンが112部(収率68%)得られた。
19F−NMR(CFCl3,CDCl3)δ−66.47(s,3F×2)
1H−NMR(TMS,CDCl3)δ6.40(s、CH=)、IR(gas)1323、1266、1175cm−1
13C−NMR(TMS、CDCl3)GC−MS(EI−MS):m/z 164、145、93、69
ハロゲン化銅を0.1mol/L CuLi2Cl4テトラヒドロフラン溶液500mlに変更した以外は実施例1と同様に反応を行った。その結果、目的物である、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンが87部(収率54%)で得られた。
ハロゲン化銅を塩化銅(II)67部、塩化リチウム21部の混合物に変更した以外は実施例1と同様に反応を行った。その結果、目的物である、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンが68部(収率42%)で得られた。
PTFEメンブレンフィルターとして孔径が0.45μmのものを用いた以外は実施例1と同様にして1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンを得た。ろ液の吸光度は0.1965であり、得られた1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの量は97部(収率59%)であった。
亜鉛付加反応後のろ過操作を省略して臭化銅の懸濁液に直接添加して反応を行った以外は実施例1と同様に反応を行ったところ、反応液は真っ黒になり、目的物である、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンは全く得られなかった。
PTFEメンブレンフィルターとして孔径が0.8μmのものを用いた以外は実施例1と同様にして1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンを得た。ろ液の吸光度は0.3401であり、得られた1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの量は13部(収率8%)であった。
Claims (5)
- 下式(1)で示される含フッ素ハロゲン化合物と亜鉛の接触により得られる反応液をろ過することで、前記反応液の、300nmにおける吸光度を0.2以下にした後、ハロゲン化銅を接触させて、下式(2)で示されるオレフィン化合物を得ることを特徴とするオレフィン化合物の製造方法。
RfCHXY・・・式(1)
RfCH=CHRf・・・式(2)
(式(1)及び式(2)中、Rfは炭素数1〜3であるパーフルオロアルキル基、又は含水素フルオロアルキル基であり、X及びYは塩素、臭素、ヨウ素から選択されるハロゲン原子で、X、Yはそれぞれ同一でもよく、異なっていてもよい。) - ろ過に用いるフィルタの孔径が、0.1〜0.5μmであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- Rfがトリフルオロメチル基、X=Br、Y=Clである化合物を原料に用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
- 化学式(2)で表される化合物がヘキサフルオロ−2−ブテンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- ハロゲン化銅が臭化銅(I)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
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