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JP5262658B2 - 力学量センサおよびその製造方法 - Google Patents

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JP5262658B2 JP2008314104A JP2008314104A JP5262658B2 JP 5262658 B2 JP5262658 B2 JP 5262658B2 JP 2008314104 A JP2008314104 A JP 2008314104A JP 2008314104 A JP2008314104 A JP 2008314104A JP 5262658 B2 JP5262658 B2 JP 5262658B2
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Description

本発明は,力学量を検出する力学量センサおよびその製造方法に関する。
半導体からなるトランデューサ構造体を一対のガラス基板で挟み込むようにそれぞれ接合して構成され,加速度および角速度を検出する力学量センサの技術が開示されている(特許文献1参照)。半導体とガラス基板との接合には陽極接合を用いるが,その際静電引力により可動な錘部(重量部)がガラス基板側へ引き寄せられてガラス基板あるいはガラス基板に設けられた固定電極に付着する(いわゆるスティッキング)という問題があった。
そこで従来,上ガラス基板の凹部にCrからなるスティッキング防止膜が形成された慣性力センサの技術が開示されている(特許文献2参照)。さらに,固定電極がCrで構成される静電容量型加速度センサの技術が開示されている(特許文献3参照)。
特開2002−350138号公報 特開2003−344445号公報,段落番号0020,0024 特開2005−91030号公報,段落番号0051,0052
力学量センサのトランスデューサ構造体の可動な錘部(重量部)をガラス基板上の電極によって振動させたり,その変位を検出したりする場合,電極を構成する材料が,(1)電気的特性(低抵抗,半導体とのコンタクト性)が良好であること,(2)トランデューサ構造体とガラス基板との陽極接合時に,重量部と付着し難いことが望まれる。しかしながら,特許文献2および特許文献3に開示された発明では,スティッキング防止の機能はあっても,電気的特性が良好とは言い難い。電気的特性の優れない電極や配線を用いると力学量センサの特性や製造歩留まりの低下を招くおそれがある。
上記に鑑み,本発明は,錘部(重量部)との付着防止および電気的特性の双方を満たすことが可能な力学量センサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係る力学量センサは,開口を有する固定部と,この開口内に配置され,かつ前記固定部に対して変位する変位部と,前記固定部と前記変位部とを接続する接続部と,を有し,かつ第1の半導体材料から構成される第1の構造体と,前記変位部に接合され,かつ底面を有する重量部と,前記重量部を囲んで配置され,かつ前記固定部に接合される台座と,を有し,導電性を有する第2の半導体材料から構成され,かつ前記第1の構造体に積層して配置される第2の構造体と,絶縁材料から構成され,前記第1,第2の構造体を接合する接合部と,前記固定部に接続されて前記第1の構造体に積層配置されるとともに,前記変位部と対向する第1の電極を備えた第1の基体と,前記台座に接続されて前記第2の構造体に積層配置されるとともに,前記重量部の底面と対向する第2の電極を備えた第2の基体と,を具備し,前記第2の電極が,前記第2の基体上に配置され,かつ第1の導電性材料を含む第1の導電層と,前記第1の導電層上に前記重量部の底面と対向して配置され,かつ前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2の導電層と,を有することを特徴とする。
本発明の一態様に係る力学量センサの製造方法は,第1の半導体材料からなる第1の層,絶縁性材料からなる第2の層,および導電性を有する第2の半導体材料からなる第3の層が順に積層されてなる半導体基板の前記第1の層から,開口を有する固定部と,この開口内に配置され,かつ前記固定部に対して変位する変位部と,前記固定部と前記変位部とを接続する接続部と,を有する第1の構造体を形成するステップと, 第1の電極を有し,かつ絶縁性材料から構成される第1の基体を,前記第1の電極が前記変位部と対向するように,前記固定部に接合して前記第1の構造体に積層配置するステップと,前記第3の層から,前記変位部に接合され,かつ底面を有する重量部と,前記重量部を囲んで配置され,かつ前記固定部に接合される台座と,を有する第2の構造体を形成するステップと,前記第2の層から,前記第1,第2の構造体を接合する接合部を形成するステップと,第2の電極を有し,かつガラス材料から構成される第2の基体を,前記第2の電極が前記重量部の底面と対向するように,前記台座に陽極接合して前記第2の構造体に積層配置するステップと,を具備し,前記第2の電極が,前記第2の基体上に配置され,かつ第1の導電性材料を含む第1の導電層と,前記第1の導電層上に前記重量部の底面と対向して配置され,かつ前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2の導電層と,を有することを特徴とする。
本発明によれば,錘部(重量部)との付着防止および電気的特性の双方を満たすことが可能な力学量センサおよびその製造方法を提供できる。
以下,図面を参照して,本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は,本発明の一実施形態に係る力学量センサ100を分解した状態を表す分解斜視図である。力学量センサ100は,互いに積層して配置される第1の構造体110,接合部120,第2の構造体130,及び第1の基体140,第2の基体150を有する。
図2は,力学量センサ100の一部(第一の構造体110,第2の構造体130)をさらに分解した状態を表す分解斜視図である。図3,4,5はそれぞれ,第1の構造体110,接合部120,第2の構造体130の上面図である。図6,図7,図8はそれぞれ,第1の基体140の下面図,第2の基体150の上面図,および第2の基体150の下面図である。図9,図10はそれぞれ,力学量センサ100を図1のB−B及びC−Cに沿って切断した状態を表す断面図である。なお,図6,図7では,後述のブロック上層部114,ブロック下層部134をそれぞれ破線で示している。
力学量センサ100は,それ単体,あるいは回路基板と組み合わされて(例えば,基板への搭載),電子部品として機能する。電子部品としての力学量センサ100は,ゲーム機やモバイル端末機(例えば,携帯電話)等への搭載が可能である。なお,力学量センサ100と回路基板(回路基板上のIC等の能動素子,配線用端子)は,ワイヤボンディング,フリップチップ等によって電気的に接続される。
力学量センサ100は,加速度α,角速度ωの一方,または双方を測定できる。即ち,力学量は加速度α,角速度ωの一方,または双方を意味する。X,Y,Z軸方向それぞれでの力F0x,F0y,F0zによる変位部112(後述する)の変位を検出することで,加速度αx,αy,αzを測定できる。また,変位部112をZ軸方向に振動させ,Y,X軸方向それぞれでのコリオリ力Fy,Fxによる変位部112の変位を検出することで,X,Y軸方向それぞれの角速度ωx,ωyを測定できる。このように,力学量センサ100は,3軸の加速度αx,αy,αzおよび2軸の角速度ωx,ωyを測定できる。なお,この詳細は後述する。
第1の構造体110,接合部120,第2の構造体130,第1の基体140,第2の基体150は,その外周が例えば,5mmの辺の略正方形状であり,これらの高さはそれぞれ,例えば,20μm,2μm,600μm,500μm,500μmである。
第1の構造体110,接合部120,第2の構造体130はそれぞれ,シリコン,酸化シリコン,シリコンから構成可能であり,力学量センサ100は,シリコン/酸化シリコン/シリコンの3層構造をなすSOI(Silicon On Insulator)基板を用いて製造可能である。第1の構造体110,第2の構造体130を構成するシリコンには,全体に例えばボロン等の不純物が含まれる導電性材料を使用することが好ましい。後述するように,第1の構造体110,第2の構造体130を不純物が含まれるシリコンで構成することにより,力学量センサ100の配線を簡略化できる。本実施の形態では,第1の構造体110及び第2の構造体130に不純物が含まれるシリコンを使用している。
また,第1の基体140,第2の基体150はそれぞれ,ガラス材料から構成できる。
第1の構造体110は,外形が略正方形であり,固定部111(111a〜111c),変位部112(112a〜112e),接続部113(113a〜113d),ブロック上層部114(114a〜114j)から構成される。第1の構造体110は,半導体材料の膜をエッチングして開口115a〜115d及びブロック上層部114a〜114jを形成することで作成できる。
固定部111は,枠部111aと突出部111b,111cとに区分できる。枠部111aは,外周,内周が共に略正方形の枠形状の基板である。突出部111bは,枠部111aの内周のコーナー部に配置され,変位部112bに向かって(X−Y平面のX方向を0°としたとき,0°方向に)突出する略正方形の基板である。突出部111cは,枠部111aの内周のコーナー部に配置され,変位部112dに向かって(X−Y平面のX方向を0°としたとき,180°方向に)突出する略正方形の基板である。枠部111aと突出部111b,111cは,一体的に構成されている。
変位部112は,変位部112a〜112eから構成される。変位部112aは,外周が略正方形の基板であり,固定部111の開口の中央近傍に配置される。変位部112b〜112eは,外周が略正方形の基板であり,変位部112aを4方向(X軸正方向,X軸負方向,Y軸正方向,Y軸負方向)から囲むように接続,配置される。変位部112a〜112eはそれぞれ,接合部120によって後述の重量部132a〜132eと接合され,固定部111に対して一体的に変位する。
変位部112aの上面は,駆動用電極E1(後述する)として機能する。この変位部112aの上面の駆動用電極E1は,第1の基体140の下面に設置された後述する駆動用電極144aと容量性結合し,この間に印加された電圧によって変位部112をZ軸方向に振動させる。なお,この駆動の詳細は後述する。
変位部112b〜112eの上面は,変位部112のX軸およびY軸方向の変位を検出する検出用電極E1(後述する)としてそれぞれ機能する。この変位部112b〜112eの上面の検出用電極は,第1の基体140の下面に設置された後述する検出用電極144b〜144eとそれぞれ容量性結合する(変位部112のb〜eのアルファベットと,検出用電極144のb〜eのアルファベットは,それぞれ順に対応している)。なお,この検出の詳細は後述する。
接続部113a〜113dは略長方形の基板であり,固定部111と変位部112aとを4方向(X−Y平面のX方向を0°としたとき,45°,135°,225°,315°方向)で接続する。
接続部113a〜113dは,枠部111aに近い側の領域では,台座131の突出部131c(後述する)と接合部120によって接合されている。接続部113a〜113dのその他の領域,すなわち変位部112aに近い側の領域では,対応する領域に突出部131cが形成されておらず,厚みが薄いため,可撓性を有している。接続部113a〜113dの枠部111aに近い側の領域が,突出部131cと接合されているのは,大きな撓みにより接続部113a〜113dが損傷することを防止するためである。
接続部113a〜113dは,撓みが可能な梁として機能する。接続部113a〜113dが撓むことで,変位部112が固定部111に対して変位可能である。具体的には,変位部112が固定部111に対して,Z正方向,Z負方向に直線的に変位する。また,変位部112は,固定部111に対してX軸およびY軸を回転軸とする正負の回転が可能である。即ち,ここでいう「変位」には,移動および回転(Z軸方向での移動,X,Y軸での回転)の双方を含めることができる。
ブロック上層部114は,ブロック上層部114a〜114jから構成される。ブロック上層部114a〜114jは,略正方形の基板であり,固定部111の内周に沿い,かつ変位部112を周囲から囲むように配置される。
ブロック上層部114h,114aは,変位部112eの端面と対向する端面を有し,ブロック上層部114b,114cは,変位部112bの端面と対向する端面を有し,ブロック上層部114d,114eは,変位部112cの端面と対向する端面を有し,ブロック上層部114f,114gは,変位部112dの端面と対向する端面を有している。図1に示すように,ブロック上層部114a〜114hはそれぞれ,変位部112の8つの端面のうちの1つと対向する端面を有して,アルファベット順に右回りで配置されている。ブロック上層部114i,ブロック上層部114jは,X−Y平面のX方向を0°としたとき,それぞれ90°,270°の方向に配置される。
ブロック上層部114a〜114hはそれぞれ,接合部120によって後述するブロック下層部134a〜134hと接合される(ブロック上層部114のa〜hのアルファベットと,ブロック下層部134のa〜hのアルファベットは,それぞれ順に対応している)。
ブロック上層部114i,114jは,接合部120によって後述するブロック下層部134i,134jとそれぞれ接合され,変位部112をZ軸方向に振動させるための配線の用途で用いられる。なお,この詳細は後述する。
第2の構造体130は,外形が略正方形であり,台座131(131a〜131d),重量部132(132a〜132e),及びブロック下層部134(134a〜134j)から構成される。第2の構造体130は,半導体材料の基板をエッチングして開口133,ブロック下層部134a〜134j,及びポケット135(後述する)を形成することで,作成可能である。なお,台座131と,ブロック下層部134a〜134jは,互いに高さがほぼ等しく,重量部132は,台座131及びブロック下層部134a〜134jよりも高さが低い。重量部132と第2の基体150との間に間隙(ギャップ)を確保し,重量部132の変位を可能にするためである。台座131と,ブロック下層部134a〜134jと,重量部132は,それぞれ離間して配置される。
台座131は,枠部131aと突出部131b〜131dとに区分できる。
枠部131aは,外周,内周が共に略正方形の枠形状の基板であり,固定部111の枠部111aと対応した形状を有する。
突出部131bは,枠部131aの内周のコーナー部に配置され,重量部132bに向かって(X−Y平面のX方向を0°としたとき,0°方向に)突出する略正方形の基板であり,固定部111の突出部111bと対応した形状を有する。
突出部131cは,4つの略長方形の基板であり,X−Y平面のX方向を0°としたとき,45°,135°,225°,315°方向に枠部131aから重量部132aに向かってそれぞれ突出し,一端が台座131の枠部131aと接続され,他端は重量部132aと離間して配置されている。突出部131cは,接続部113a〜113dと対応する領域のうち,枠部131a側の略半分の領域に形成されており,他の領域,すなわち,重量部132側の略半分の領域には形成されていない。
突出部131dは,枠部131aの内周のコーナー部に配置され,重量部132dに向かって(X−Y平面のX方向を0°としたとき,180°方向に)突出する略正方形の基板内に,この基板の表面と裏面とを貫通するポケット135(開口)が形成されたもので,固定部111の突出部111cと接合されている。
ポケット135は,高真空を維持するためのゲッター材料を入れる,例えば直方体形状の空間である。ポケット135の一方の開口端は接合部120によって蓋がされている。ポケット135の他方の開口端は第2の基体150によって大部分に蓋がされているが,重量部132寄りの一部は蓋がされておらず,この他方の開口端と重量部132等が形成されている開口133とは一部で通じている(図示せず)。ゲッター材料は,真空封入された力学量センサ100内の真空度を高める目的で残留気体を吸着するもので,例えば,ジルコニウムを主成分とする合金等で構成することができる。
枠部131aと突出部131b〜131dは,一体的に構成されている。
台座131は,接合部120によって固定部111,及び接続部113a〜113dの所定の領域と接続される。
重量部132は,質量を有し,加速度α,角速度ωそれぞれに起因する力F0,コリオリ力Fを受ける重錘,あるいは作用体として機能する。即ち,加速度α,角速度ωが印加されると,重量部132の重心に力F0,コリオリ力Fが作用する。
重量部132は,略直方体形状の重量部132a〜132eに区分される。中心に配置された重量部132aに4方向から重量部132b〜132eが接続され,全体として一体的に変位(移動,回転)が可能となっている。即ち,重量部132aは,重量部132b〜132eを接続する接続部として機能する。
重量部132a〜132eはそれぞれ,変位部112a〜112eと対応する略正方形の断面形状を有し,接合部120によって変位部112a〜112eと接合される。重量部132に加わった力F0,コリオリ力Fに応じて変位部112が変位し,その結果,加速度α,角速度ωの測定が可能となる。
重量部132aの裏面は,駆動用電極E1(後述する)として機能する。この重量部132aの裏面の駆動用電極E1は,第2の基体150の上面に設置された後述する駆動用電極154aと容量性結合し,この間に印加された電圧によって変位部112をZ軸方向に振動させる。なお,この駆動の詳細は後述する。
重量部132b〜132eの裏面は,変位部112のX軸およびY軸方向の変位を検出する検出用電極E1(後述する)としてそれぞれ機能する。この重量部132b〜132eの裏面の検出用電極E1は,第2の基体150の上面に設置された後述する検出用電極154b〜154eとそれぞれ容量性結合する(重量部132のb〜eのアルファベットと,検出用電極154のb〜eのアルファベットは,それぞれ順に対応している)。なお,この検出の詳細は後述する。
ブロック下層部134a〜134jは,それぞれブロック上層部114a〜114jと対応する略正方形の断面形状を有し,接合部120によってブロック上層部114a〜114jと接合される。ブロック上層部114a〜114h及びブロック下層部134a〜134hを接合したブロックを,以下,それぞれ「ブロックa〜h」と称する。ブロックa〜hは,それぞれ駆動用電極144b〜144e,154b〜154eに電源を供給するための配線の用途で用いられる。ブロック上層部114i,114j及びブロック下層部134i,134jをそれぞれ接合したブロック(以下,それぞれ「ブロックi,j」と称する)は,変位部112をZ軸方向に振動させるための配線の用途で用いられる。なお,これらの詳細は後述する。
接合部120は,既述のように,第1,第2の構造体110,130を接続するものである。接合部120は,接続部113の所定の領域及び固定部111と,台座131とを接続する接合部121と,変位部112a〜112eと重量部132a〜133eを接続する接合部122(122a〜122e)と,ブロック上層部114a〜114jとブロック下層部134a〜134jを接続する接合部123(123a〜123j)と,に区分される。接合部120は,これ以外の部分では,第1,第2の構造体110,130を接続していない。接続部113a〜113dの撓み,および重量部132の変位を可能とするためである。
なお,接合部121,122,123は,シリコン酸化膜をエッチングすることで構成可能である。
第1の構造体110と第2の構造体130とを必要な部分で導通させるため,導通部160〜162を形成している。
導通部160は,固定部111と台座131とを導通するものであり,固定部111の突出部111b及び接合部121を貫通している。
導通部161は,変位部112と重量部132とを導通するものであり,変位部112a及び接合部122を貫通している。
導通部162は,ブロック上層部114a,114b,114e,114f,114iとブロック下層部134a,134b,134e,134f,134iとをそれぞれ導通するものであり,ブロック上層部114a,114b,114e,114f,114i及び接合部123をそれぞれ貫通している。
導通部160〜162は,例えば,貫通孔の縁,壁面及び底部にAlのような金属層が形成されたものである。なお,貫通孔の形状は特に制限されないが,Al等のスパッタ等により金属層を効果的に形成できるため,導通部160〜162の貫通孔を上広の錐状の形状にすることが好ましい。
第1の基体140は,例えばガラスなどの絶縁性材料,略直方体の外形を有し,枠部141と底板部142とを有する。枠部141及び底板部142は,基板に変位部が変位可能なように,略直方体状(例えば,縦横2.5mm,深さ5μm)の凹部143を形成することで作成できる。
枠部141は,外周,内周が共に略正方形の枠形状の基板形状である。枠部141の外周は,固定部111の外周と一致し,枠部141の内周は,固定部111の内周よりも小さい。
底板部142は,外周が枠部141と略同一の略正方形の基板形状である。
第1の基体140に凹部143が形成されているのは,変位部112が変位するための空間を確保するためである。変位部112以外の第1の構造体110,すなわち固定部111及びブロック上層部114a〜114jは,第1の基体140と,例えば陽極接合によって接合される。陽極接合のために第1の基体140の材料として,パイレックス(登録商標)ガラスなどの可動イオンを含むガラス材料を用いる。
なお,第1の基体140は絶縁性材料を共晶接合などの方法により接合することも可能である。
底板部142上(第1の基体140の裏面上)には,変位部112と対向するように第1の電極(駆動用電極144a,検出用電極144b〜144e)が配置されている。駆動用電極144a,検出用電極144b〜144eは,いずれも導電性材料で構成することができる。駆動用電極144aは,例えば十字形状で,変位部112aに対向するように凹部143の中央近傍に形成されている。検出用電極144b〜144eは,それぞれ略正方形で,駆動用電極144aを4方向(X軸正方向,X軸負方向,Y軸正方向,Y軸負方向)から囲み,それぞれ順に変位部112b〜112eと対向して配置される。駆動用電極144a,検出用電極144b〜144eは,それぞれ離間している。
駆動用電極144aには,ブロック上層部114iの上面と電気的に接続される配線層L1が接続されている。検出用電極144bには,ブロック上層部114bの上面と電気的に接続される配線層L4,検出用電極144cには,ブロック上層部114eの上面と電気的に接続される配線層L5,検出用電極144dには,ブロック上層部114fの上面と電気的に接続される配線層L6,検出用電極144eには,ブロック上層部114aの上面と電気的に接続される配線層L7がそれぞれ接続されている。
駆動用電極144a,検出用電極144b〜144eには,例えば,第1の導電性材料を含む第1の導電層を上層(第1の基体140側)とし,第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2の導電層を下層(第1の構造体110側)とする2層構造を用いることができる。配線層L1,L4〜L7の構成材料には,例えば,第1の導電性材料を用いることができる。なお,この詳細は後述する。
第2の基体150は,パイレックス(登録商標)ガラスなどの可動イオンを含むガラス材料からなり,略正方形の基板形状である。
重量部132以外の第2の構造体130,すなわち台座131及びブロック下層部134a〜134jは,第2の基体150と,陽極接合によって接合される。重量部132は,台座131及びブロック下層部134a〜134jよりも高さが低いため,第2の基体150と接合されない。重量部132と第2の基体150との間に間隙(ギャップ)を確保し,重量部132の変位を可能にするためである。
第2の基体150の上面上には,重量部132と対向するように第2の電極(駆動用電極154a,検出用電極154b〜154e)が配置されている。駆動用電極154a,検出用電極154b〜154eは,いずれも導電性材料で構成することができる。駆動用電極154aは,例えば十字形状で,重量部132aに対向するように第2の基体150の上面の中央近傍に形成されている。検出用電極154b〜154eは,それぞれ略正方形で,駆動用電極154aを4方向(X軸正方向,X軸負方向,Y軸正方向,Y軸負方向)から囲み,それぞれ順に重量部132b〜132eに対向して配置される。駆動用電極154a,検出用電極154b〜154eは,それぞれ離間している。
駆動用電極154aには,ブロック下層部134jの裏面と電気的に接続される配線層L2が接続されている。
検出用電極154bには,ブロック下層部134cの裏面と電気的に接続される配線層L8,検出用電極154cには,ブロック下層部134dの裏面と電気的に接続される配線層L9,検出用電極154dには,ブロック下層部134gの裏面と電気的に接続される配線層L10,検出用電極154eには,ブロック下層部134hの裏面と電気的に接続される配線層L11がそれぞれ接続されている。
駆動用電極154a,検出用電極154b〜154eには,例えば,第1の導電性材料を含む第1の導電層を下層(第2の基体150側)とし,第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料を含む第2の導電層を上層(第2の構造体130側)とする2層構造を用いることができる。配線層L2,L8〜L11の構成材料には,例えば,第1の導電性材料を用いることができる。なお,この詳細は後述する。
第2の基体150には,第2の基体150を貫通する配線用端子T(T1〜T11)が設けられており,力学量センサ100の外部から駆動用電極144a,154a,検出用電極144b〜144e,154b〜154eへの電気的接続を可能としている。
配線用端子T1の上端は,台座131の突出部131bの裏面に接続されている。配線用端子T2〜T9は,それぞれブロック下層部134a〜134hの裏面に接続されている(配線用端子T2〜T9のT2〜T9の番号順と,ブロック下層部134a〜134hの134a〜134hのアルファベット順とは,それぞれ対応している)。配線用端子T10,T11は,それぞれブロック下層部134i,134jの裏面に接続されている。
配線用端子Tは,図9,図10に示すように,例えば上広の錐状貫通孔の縁,壁面及び底部にAl等の金属膜が形成されたものであり,導通部160〜162と同様の構造をしている。配線用端子Tは,外部回路と,例えばワイヤボンディングで接続するための接続端子として使用できる。
なお,図1〜図10では,第1の構造体110,接合部120,第2の構造体130の見やすさを考慮して,第2の基体150が下に配置されるように図示している。配線用端子Tと外部回路とを,例えばワイヤボンディングで接続する場合には,力学量センサ100の第2の基体150を例えば上になるように配置して容易に接続することができる。
(力学量センサ100の動作,配線)
力学量センサ100の配線,及び電極について説明する。
図11は,図9に示す力学量センサ100における6組の容量素子を示す断面図である。図11では,電極として機能する部分をハッチングで示している。なお,図11では6組の容量素子を図示しているが,前述したように力学量センサ100には,10組の容量素子が形成される。
10組の容量素子の一方の電極は,第1の基体140に形成された駆動用電極144a,検出用電極144b〜144e,及び第2の基体150に形成された駆動電極154a,検出用電極154b〜154eである。
もう一方の電極は,変位部112aの上面の駆動用電極E1,変位部112b〜112eの上面にそれぞれ形成された検出用電極E1,重量部132aの下面の駆動用電極E1,及び重量部132b〜132eの下面にそれぞれ形成された検出用電極E1である。すなわち,変位部112及び重量部132を接合した構造体は,10組の容量性結合の共通電極として機能する。第1の構造体110及び第2の構造体130は,導電性材料(不純物が含まれるシリコン)から構成されているため,変位部112及び重量部132を接合した構造体は,電極として機能することができる。
コンデンサーの容量は,電極間の距離に反比例するため,変位部112の上面及び重量部132の下面に駆動用電極E1や検出用電極E1があるものと仮定している。すなわち,駆動用電極E1や検出用電極E1は,変位部112の上面や,重量部132の下面の表層に別体として形成されているわけではない。変位部112の上面や,重量部132の下面が駆動用電極E1や検出用電極E1として機能すると捉えている。
第1の基体140に形成された駆動用電極144a,検出用電極144b〜144eは,それぞれ順に,配線層L1,L4〜L7を介してブロック上層部114i,114b,114e,114f,114aと電気的に接続されている。また,ブロック上層部114i,114b,114e,114f,114aとブロック下層部134i,134b,134e,134f,134aとはそれぞれ導通部162で導通されている。
図6に示すように,この配線層L1,L4〜L7は,ブロック上層部114と第1の基体140との間(ブロック上層部114と接触する領域)に挟まれて配置される第1の部材(踏みつけ部)と,この第1の部材と駆動用電極154a等を接続する第2の部材に区分して考えることができる。第1の部材は,ブロック上層部114の上面が第1の基体140に接触する領域に配置される。図12は,図6の検出用電極144b,配線層L4,およびブロック上層部114bを拡大した状態を表す平面図である。配線層L4が,第1の部材L4a,第2の部材L4bに区分されている。第1,第2の部材L4a,L4bの境界は,ブロック上層部114bの上面の外に配置され,第1の部材L4aとブロック上層部114bとの電気的接続が良好になるようにしている。第1の部材L4aはブロック上層部114bとの接続のために,第1の導電層のみからなる。一方,第2の部材L4bは第1の導電層のみ,あるいは第1の導電層上に第2の導電層を備えていてもよい。配線層L1,L5〜L7も配線層L4と同様の構成を採用できる。
第2の基体150に形成された駆動用電極154a,検出用電極154b〜154eは,それぞれ順に,配線層L2,L8〜L11を介してブロック下層部134j,134c,134d,134g,134hと電気的に接続されている。
図7に示すように,この配線層L2,L8〜L11は,ブロック下層部134と第2の基体150との間(ブロック下層部134と接触する領域)に挟まれて配置される第1の部材(踏みつけ部)と,この第1の部材と駆動用電極154a等を接続する第2の部材に区分して考えることができる。第1の部材は,ブロック下層部134の下面が第2の基体150に接触する領域に配置される。図13は,図7の検出用電極154d,配線層L10,およびブロック下層部134gを拡大した状態を表す平面図である。配線層L10が,第1の部材L10a,第2の部材L10bに区分されている。第1,第2の部材L10a,L10bの境界は,ブロック下層部134gの底面の外に配置され,第1の部材L10aとブロック上層部134gとの電気的接続が良好になるようにしている。第1の部材L10aはブロック下層部134gとの接続のために,第1の導電層のみからなる。一方,第2の部材L10bは第1の導電層のみ,あるいは第1の導電層上に第2の導電層を備えていてもよい。配線層L2,L8,L9,L11も配線層L10と同様の構成を採用できる。
したがって,これらの駆動用電極144a,154a,検出用電極144b〜144e,154b〜154eに対する配線は,ブロック下層部134a〜134jの下面に接続すればよい。配線用端子T2〜T9は,それぞれブロック下層部134a〜134hの下面に配置され,配線用端子T10,T11は,それぞれブロック下層部134i,134jの下面に配置されている。
以上より,配線用端子T2〜T11は,それぞれ順に,検出用電極144e,144b,154b,154c,144c,144d,154d,154e,駆動用電極144a,154aと電気的に接続されている。
駆動用電極E1,検出用電極E1は,変位部112の上面及び重量部132の下面からそれぞれなっている。変位部112及び重量部132は,導通部161で導通されており,いずれも導電性材料で構成されている。台座131及び固定部111は,導通部160で導通されており,いずれも導電性材料で構成されている。変位部112と接続部113と固定部111は,導電性材料により一体的に構成されている。したがって,駆動用電極E1,検出用電極E1に対する配線は,台座131の下面に接続すればよい。配線用端子T1は,台座131の突出部131bの下面に配置されて,配線用端子T1は,駆動用電極E1,検出用電極E1と電気的に接続されている。
以上のように,第1の構造体110,及び第2の構造体130を導電性材料(不純物が含まれるシリコン)で構成しているので,ブロック上層部114a〜114j,及びブロック下層部134a〜134jが接合されたブロックa〜jに配線としての機能をもたせることができ,容量素子に対する配線を簡略にすることが可能である。
力学量センサ100による加速度および角速度の検出の原理を説明する。
(1)変位部112の振動
駆動用電極144a,E1間に電圧を印加すると,クーロン力によって駆動用電極144a,E1が互いに引き合い,変位部112(重量部132も)はZ軸正方向に変位する。また,駆動用電極154a,E1間に電圧を印加すると,クーロン力によって駆動用電極154a,E1が互いに引き合い,変位部112(重量部132も)はZ軸負方向に変位する。即ち,駆動用電極144a,E1間,駆動用電極154a,E1間への電圧印加を交互に行うことで,変位部112(重量部132も)はZ軸方向に振動する。この電圧の印加は正又は負の直流波形(非印加時も考慮するとパルス波形),半波波形等を用いることができる。
なお,駆動用電極144a,E1(変位部112aの上面),駆動用電極154a,E1(重量部132aの下面)は振動付与部として,検出用電極144b〜144e,154b〜154e,E1(変位部112b〜112eの上面,重量部132b〜132eの下面)は変位検出部として機能する。
変位部112の振動の周期は電圧を切り換える周期で決まってくる。この切換の周期は変位部112の固有振動数にある程度近接していることが好ましい。変位部112の固有振動数は,接続部113の弾性力や重量部132の質量等で決定される。変位部112に加えられる振動の周期が固有振動数に対応しないと,変位部112に加えられた振動のエネルギーが発散されてエネルギー効率が低下する。
なお,駆動用電極144a,E1間,又は駆動用電極154a,E1間のいずれか一方のみに,変位部212の固有振動数の1/2の周波数の交流電圧を印加してもよい。
(2)加速度に起因する力の発生
重量部132(変位部112)に加速度αが印加されると重量部132に力F0が作用する。具体的には,X,Y,Z軸方向それぞれの加速度αx,αy,αzに応じて,X,Y,Z軸方向の力F0x(=m・αx),F0y(=m・αy),F0z(=m・αz)が重量部132に作用する(mは,重量部132の質量)。その結果,変位部112にX,Y方向への傾き,およびZ方向への変位が生じる。このように,加速度αx,αy,αzによって変位部112にX,Y,Z方向の傾き(変位)が生じる。
(3)角速度に起因するコリオリ力の発生
重量部132(変位部112)がZ軸方向に速度vzで移動しているときに角速度ωが印加されると重量部132にコリオリ力Fが作用する。具体的には,X軸方向の角速度ωxおよびY軸方向の角速度ωyそれぞれに応じて,Y軸方向のコリオリ力Fy(=2・m・vz・ωx)およびX軸方向のコリオリ力Fx(=2・m・vz・ωy)が重量部132に作用する(mは,重量部132の質量)。
X軸方向の角速度ωxによるコリオリ力Fyが印加されると,変位部112にY方向への傾きが生じる。このように,角速度ωx,ωyに起因するコリオリ力Fy,Fxによって変位部112にY方向,X方向の傾き(変位)が生じる。
(4)変位部112の変位の検出
以上のように,加速度αおよび角速度ωによって,変位部112の変位(傾き)が生じる。検出用電極144b〜144e,154b〜154eによって,変位部112の変位を検出することができる。
変位部112にZ正方向の力F0zが印加されると,検出用電極E1(変位部112cの上面),144c間および検出用電極E1(変位部112eの上面),144e間の距離は共に小さくなる。この結果,検出用電極E1(変位部112cの上面),144c間および検出用電極E1(変位部112eの上面),144e間の容量は共に大きくなる。即ち,検出用電極E1と検出用電極144b〜144e間の容量の和(あるいは,検出用電極E1と検出用電極154b〜154e間の容量の和)に基づいて,変位部112のZ方向の変位を検出し,検出信号として取り出すことができる。
一方,変位部112にY正方向の力F0yまたはコリオリ力Fyが印加されると,駆動用電極E1(変位部112cの上面),144c間,検出用電極E1(重量部132eの下面),154e間の距離は小さくなり,検出用電極E1(変位部112eの上面),144e間,検出用電極E1(重量部132cの下面),154c間の距離は大きくなる。この結果,検出用電極E1(変位部112cの上面),144c間,検出用電極E1(重量部132eの下面),154e間の容量は大きくなり,検出用電極E1(変位部112eの上面),144e間,検出用電極E1(重量部132cの下面),154c間の容量は小さくなる。即ち,検出用電極E1と検出用電極144b〜144e,154b〜154eとの間の容量の差に基づいて,変位部112のX,Y方向の傾きの変化を検出し,検出信号として取り出すことができる。
以上のように,検出用電極E1,144b〜144e,154b〜154eによって変位部112のX方向,Y方向への傾きおよびZ方向への変位を検出する。
(5)検出信号からの加速度,角速度の抽出
検出用電極144b〜144e,154b〜154e,E1から出力される信号には,加速度αx,αy,αz,角速度ωx,ωyに起因する成分の双方が含まれる。これらの成分の相違を利用して,加速度および角速度を抽出できる。
重量部132(質量m)に加速度αが印加されたときの力Fα(=m・α)は重量部132の振動には依存しない。即ち,検出信号中の加速度成分は,重量部132の振動に対応しない一種のバイアス成分である。一方,重量部132(質量m)に角速度ωが印加されたときの力Fω(=2・m・vz・ω)は重量部132のZ軸方向の速度vzに依存する。即ち,検出信号中の角速度成分は,重量部132の振動に対応して周期的に変化する一種の振幅成分である。
具体的には,検出信号の周波数分析によって,変位部112の振動数より低周波のバイアス成分(加速度),変位部112の振動数と同様の振動成分(角速度)を抽出する。この結果,力学量センサ100によるX,Y,Z方向(3軸)の加速度αx,αy,αz,およびX,Y方向(2軸)の角速度ωx,ωyの測定が可能となる。
(力学量センサ100の作成)
力学量センサ100の作成工程につき説明する。
図14は,力学量センサ100の作成手順の一例を表すフロー図である。また,図15A〜図15Jは,図14の作成手順における力学量センサ100の状態を表す断面図である(図1に示す力学量センサ100をC−Cで切断した断面に相当する)。図15A〜図15Jは,図10の力学量センサ100を上下逆に配置したものに対応する。
(1)半導体基板Wの用意(ステップS10,および図15A)
図15Aに示すように,第1,第2,第3の層11,12,13の3層を積層してなる半導体基板Wを用意する。なお,半導体基板Wは直径が150〜200mm程度であり,一枚の半導体基板Wから複数の力学量センサ100が形成される。
第1,第2,第3の層11,12,13はそれぞれ,第1の構造体110,接合部120,第2の構造体130を構成するための層であり,ここでは,不純物が含まれるシリコン,酸化シリコン,不純物が含まれるシリコンからなる層とする。
不純物が含まれるシリコン/酸化シリコン/不純物が含まれるシリコンという3層の積層構造をもった半導体基板Wは,不純物が含まれるシリコン基板上にシリコン酸化膜を積層した基板と,不純物が含まれるシリコン基板とを接合後,後者の不純物が含まれるシリコン基板を薄く研磨することで作成できる(いわゆるSOI基板)。
ここで,不純物が含まれるシリコン基板は,例えば,チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造において,不純物をドープすることにより製造できる。
シリコンに含まれる不純物としては,例えばボロンを挙げることができる。ボロンが含まれるシリコンとしては,例えば,高濃度のボロンを含み,抵抗率が0.001〜0.01Ω・cmのものを使用できる。
なお,ここでは第1の層11と第3の層13とを同一材料(不純物が含まれるシリコン)によって構成するものとするが,第1,第2,第3の層11,12,13のすべてを異なる材料によって構成してもよい。
(2)第1の構造体110の作成(第1の層11のエッチング,ステップS11,および図15B)
第1の層11をエッチングすることにより,開口115を形成し,第1の構造体110を形成する。即ち,第1の層11に対して浸食性を有し,第2の層12に対して浸食性を有しないエッチング方法を用いて,第1の層11の所定領域(開口115a〜115d)に対して,第2の層12の上面が露出するまで厚み方向にエッチングする。
第1の層11の上面に,第1の構造体110に対応するパターンをもったレジスト層を形成し,このレジスト層で覆われていない露出部分を垂直下方に侵食する。このエッチング工程では,第2の層12に対する浸食は行われないので,第1の層11の所定領域(開口115a〜115d)のみが除去される。
図15Bは,第1の層11に対して,上述のようなエッチングを行い,第1の構造体110を形成した状態を示す。このとき,ブロック上層部114が画定される。
(3)接合部120の作成(第2の層12のエッチング,ステップS12,および図15C)
第2の層12をエッチングすることにより,接合部120を形成する。即ち,第2の層12に対しては浸食性を有し,第1の層11および第3の層13に対しては浸食性を有しないエッチング方法により,第2の層12に対して,その露出部分から厚み方向および層方向にエッチングする。
このエッチング工程では,別途,レジスト層を形成する必要はない。即ち,第1の層11の残存部分である第1の構造体110が,第2の層12に対するレジスト層として機能する。エッチングは,第2の層12の露出部分に対してなされる。
第2の層12に対するエッチング工程(ステップS12)では,次の2つの条件を満たすエッチング法を行う必要がある。第1の条件は,厚み方向とともに層方向への方向性をもつことであり,第2の条件は,酸化シリコン層に対しては浸食性を有するが,シリコン層に対しては浸食性を有しないことである。
第1の条件は,不要な部分に酸化シリコン層が残存して重量部132の変位の自由度を妨げることがないようにするために必要な条件である。第2の条件は,既に所定形状への加工が完了しているシリコンからなる第1の構造体110や第3の層13に浸食が及ばないようにするために必要な条件である。
第1,第2の条件を満たすエッチング方法として,バッファド弗酸(例えば,HF=5.5wt%,NHF=20wt%の混合水溶液)をエッチング液として用いるウェットエッチングを挙げることができる。また,CFガスとOガスとの混合ガスを用いたRIE法によるドライエッチングも適用可能である。
(4)導通部160〜162の形成(ステップS13,および図15D)
導通部160〜162の形成は,次のa,bのようにして行われる。
a.錐状貫通孔の形成
第1の構造体110及び第2の層12の所定の箇所をウエットエッチングし,第2の層12まで貫通するような錘状貫通孔を形成する。エッチング液としては,第1の構造体110のエッチングでは,例えば,20%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用いることができ,第2の層12のエッチングでは,例えば,バッファド弗酸(例えば,HF=5.5wt%,NHF=20wt%の混合水溶液)を用いることができる。
b.金属層の形成
第1の構造体110の上面及び錐状貫通孔内に,例えばAlを蒸着法やスパッタ法等により堆積させて,導通部160〜162を形成する。第1の構造体110の上面に堆積した不要な金属層(導通部160〜162の上端の縁(図示せず)の外側の金属層)はエッチングで除去する。
(5)第1の基体140の接合(ステップS14,および図15E)
1)第1の基体140の作成
絶縁性材料からなる基板(Naイオンなどの可動イオンを含むガラス基板,例えば,パイレックス(登録商標)ガラス)をエッチングして凹部143を形成し,駆動用電極144a,検出用電極144b〜244e,及び配線層L1,L4〜L7を,例えばNdを含むAlからなるパターンによって所定の位置に形成する。なお,ガラスが可動イオンを含むのは,後の陽極接合のためである。
既述のように,駆動用電極144a,検出用電極144b〜144eは2層構造(第1の基体140側の第1の導電層,第1の構造体110側の第2の導電層)を用いることができる。配線層L1,L4〜L7は,L4a〜L7a部につき第1の導電層を用いた単層構造であればよく,L4b〜L7b部については第1の導電層を用いた単層構造あるいはその上に第2の導電層を有する2層構造でもよい。駆動用電極144a,検出用電極144b〜144e,配線層L4b〜L7b部を上述のような2層構造とすることで,DRIE(後述する)の際に,駆動用電極144a,検出用電極144b〜144eがエッチングガスにより劣化することを抑制できる。
これら第1,第2の導電層はいずれもスパッタ法を用いて形成できる。
なお,第1の導電層として,Au,Pt等を使用する場合には,第1の基体140(ガラス基板)の下面やブロック上層部114の上面との間に密着膜(Auの場合はCr,Ptの場合はTi)を付加することが好ましい。
2)半導体基板Wと第1の基体140の接合
半導体基板Wと第1の基体140とを,陽極接合により接合する。
第2の構造体130の作成前に第1の基体140を陽極接合している。重量部132を形成する前に,第1の基体140を陽極接合しているので,接続部113a〜113dには厚みの薄い領域が存在せず可撓性を有していないため,半導体基板Wと第1の基体140の接合時には静電引力が生じても変位部112は第1の基体140に引き寄せられることはない。しかし,後述する第2の基体150との陽極接合時には変位部112は接続部113により可動支持されており,第1の基体140側に引き寄せられる可能性がある。
図15Eは,半導体基板Wと第1の基体140とを接合した状態を示す。
(6)第2の構造体130の作成(第3の層13のエッチング,ステップS15,および図15F,図15G)
第2の構造体130の形成は,次のa,bのようにして行われる。
a.ギャップ10の形成(図15F)
第3の層13の上面に,重量部132の形成領域及びその近傍を除いてレジスト層を形成し,このレジスト層で覆われていない露出部分(重量部132の形成領域及びその近傍)を垂直下方へと侵食させる。この結果,重量部の形成される領域の上部に重量部132の変位を可能とするためのギャップ10が形成される。
b.第2の構造体130の形成(図15G)
ギャップ10が形成された第3の層13をエッチングすることにより,開口133,ブロック下層部134a〜134j,及びポケット135を形成し,第2の構造体130を形成する。即ち,第3の層13に対して浸食性を有し,第2の層12に対して浸食性を有しないエッチング方法により,第3の層13の所定領域(開口133)に対して,厚み方向へのエッチングを行う。
第3の層13の上面に,第2の構造体130に対応するパターンをもったレジスト層を形成し,このレジスト層で覆われていない露出部分を垂直下方に侵食する。
図15Gは,第3の層13に対して,上述のようなエッチングを行い,第2の構造体130を形成した状態を示す。このとき,ブロック下層部134が画定されるとともに,ブロックa〜iが形成される。
以上の製造プロセスにおいて,第1の構造体110を形成する工程(ステップS11)と,第2の構造体130を形成する工程(ステップS15)では,以下のようなエッチング法を行う必要がある。
第1の条件は,各層の厚み方向への方向性を持つことである,第2の条件は,シリコン層に対しては浸食性を有するが,酸化シリコン層に対しては浸食性を有しないことである。
第1の条件を満たすエッチング方法として,誘導結合型プラズマエッチング法(ICPエッチング法:Inductively Coupled Plasma Etching Method )を挙げることができる。このエッチング法は,垂直方向に深い溝を掘る際に効果的な方法であり,一般に,DRIE(Deep Reactive Ion Etching )と呼ばれているエッチング方法の一種である。
この方法では,材料層を厚み方向に浸食しながら掘り進むエッチング段階と,掘った穴の側面にポリマーの壁を形成するデポジション段階と,を交互に繰り返す。掘り進んだ穴の側面は,順次ポリマーの壁が形成されて保護されるため,ほぼ厚み方向にのみ浸食を進ませることが可能になる。
一方,第2の条件を満たすエッチングを行うには,酸化シリコンとシリコンとでエッチング選択性を有するエッチング材料を用いればよい。例えば,エッチング段階では,SFガス,およびOガスの混合ガスを,デポジション段階では,Cガスを用いることが考えられる。
(7)第2の基体150の接合(ステップS16,および図15H)
a.第2の基体150の作成
絶縁性材料からなる基板(Naイオンなどの可動イオンを含むガラス基板,例えば,パイレックス(登録商標)ガラス)に,駆動用電極154a,検出用電極154b〜154e,及び配線層L2,L8〜L11を,例えばNdを含むAlからなるパターンによって所定の位置に形成する。また,第2の基体150をエッチングすることにより,配線用端子T1〜T11を形成するための上広の錐状貫通孔10を所定の箇所に11個形成する。なお,ガラスが可動イオンを含むのは,後の陽極接合のためである。
既述のように,駆動用電極154a,検出用電極154b〜154eは2層構造(第2の基体150側の第1の導電層,第2の構造体130側の第2の導電層)を用いることができる。配線層L2,L8〜L11は,第1の導電層を用いた単層構造とすることができる。
これら第1,第2の導電層はいずれもスパッタ法を用いて形成できる。
なお,第1の導電層として,Au,Pt等を使用する場合には,第2の基体150(ガラス基板)の下面やブロック下層部134の下面との間に密着膜(Auの場合はCr,Ptの場合はTi)を付加することが好ましい。
なお,第1の基体140と同様,駆動用電極154a等の形成に先立ち,エッチング等により第2の基体150に凹部を形成しても良い。この場合,第2の構造体130へのギャップ10の形成が不要となる。即ち,重量部132と第2の基体150間のギャップは,第2の構造体130,第2の基体150の何れか,または双方に設けに設けることができる。
b.半導体基板Wと第2の基体150の接合
ポケット135にゲッター材料(サエスゲッターズジャパン社製,商品名 非蒸発ゲッター)を入れて,第2の基体150と半導体基板Wとを,陽極接合により接合する。
図15Hは,半導体基板Wと第2の基体150とを接合した状態を示す。
(8)配線用端子T1〜T11の形成(ステップS17,および図15I)
第2の基体150の上面及び錐状貫通孔10内に,例えばCr層,Au層の順に金属層を蒸着法やスパッタ法等により形成する。不要な金属層(配線用端子Tの上端の縁の外側の金属層)をエッチングにより除去し,配線用端子T1〜T11を形成する。
(9)半導体基板W,第1の基体140,第2の基体150のダイシング(ステップS18および図15J)
例えば,450℃の熱処理によってポケット135中のゲッター材料を活性化した後,互いに接合された半導体基板W,第1の基体140,及び第2の基体150にダイシングソー等で切れ込みを入れて,個々の力学量センサ100に分離する。
ここで,重量部駆動用電極154a,検出用電極154b〜154e,配線層L2,L8〜L11,重量部132の下面の構成材料がステップS16での陽極接合の良否等に大きな影響を与えることが判った。
図9,図11に示すように,ここでは駆動用電極154a,検出用電極154b〜154eが上部電極層(上層:第2の構造体130側),下部電極層(下層:第2の基体150側)の2層構造をなし,下部電極層が配線層L2,L8〜L11と共通(一体的構成)である。このとき,次のような組み合わせが好ましい。
(1)下部電極層: Al(あるいはAl合金(例えば,Nd含有)含む),Pt,Auなど
・低抵抗であることが好ましい(力学量センサ100の感度に影響)。
・配線層L2,L8〜L11と,ブロック下層部134j,134c,134d,134g,134hの裏面との電気的接続が良好であることが好ましい。具体的には,陽極接合の温度(〜500℃)でブロック下層部134j等の裏面(シリコン等の半導体)とオーミック接続(あるいはオーミック接続とみなせる低抵抗接続)されることが好ましい。
・陽極接合の温度下において,接合圧力により潰れる程度の柔軟性を有することが好ましい。配線層L2,L8〜L11は,ブロック下層部134j等の裏面,第2の基体150間に挟まれて,ブロック下層部134j等の裏面と接続される。このとき,配線層L2,L8〜L11が変形して,ブロック下層部134j等の裏面と配線層L2,L8〜L11の接続箇所の全体が均一に接触することが好ましい。下部電極層が変形することで,配線層Lとブロック下層部134の電気的接続の信頼性が高くなる。
仮に,陽極接合時に変形し難い材料を下部電極層に用いると,接合後での電極154と電極E1の平行度が損なわれ,力学量センサ100の特性にばらつきが生じる。
(2)上部電極層: Cr,W,TiN,Mo,Taなど
・上部電極層に用いる材料よりも高融点であることが望ましい。陽極接合の温度(〜500℃)で軟化せず,硬いことが望ましい。重量部132の下面との融合が制限される。
・陽極接合の温度で重量部132の下面の材料と化合物(例えば,シリサイド)を形成しないことが望ましい。
・下部電極層で生じるヒロック(後述)などを抑制することが好ましい。
・低抵抗であることが望ましい。但し,下部電極層に比べ,この要請は低い。
・下部電極層との密着性が良好なことが好ましい。
(3)重量部132の下面: シリコンなどの半導体材料
・陽極接合の温度で上部電極層の材料と化合物を作らないことが望ましい。
図16は,下部電極層,上部電極層,重量部132の下面の構成材料の組み合わせと,評価結果の対応関係を表す表である。構成材料の欄の「−」はその層が存在しないことを意味する。なお,下部電極層,上部電極層それぞれの厚さを0.3μm,50nmとし,陽極接合は,400℃で60分とした。上部電極層が下部電極層よりも薄いのは,電極の抵抗が必要以上に大きくならないようにするためである。
ここで,(1)スティッキング抑制,(2)電気的接続,および(3)ヒロック抑制それぞれについて評価した。
「スティッキング」とは,陽極接合の際に重量部132が第2の基体150に付着することを言う。力学量センサ100の製造時の歩留まりの低下をもたらす。スティッキングの発生確率に応じて,スティッキングの抑制を3段階(○,△,×)で評価した。具体的には,(スティッキングが発生した力学量センサ100の個数/力学量センサ100の総数(半導体基板W1枚当たり))が次の値のときに○,△,×とした。○:0%〜20%未満,△:20%〜50%未満,×:50%以上。
なお,スティッキングの有無は,重量部132と駆動用電極154a等間の導通により確認した。スティッキングしていればショート(導通),スティッキングしていなければオープン(絶縁)となる。
「電気的接続」は,検出用電極154b等とブロック下層部134j等間の電気抵抗およびそのコンタクトの安定性で評価した。配線層L1,L4〜L7の第1の部材によって,検出用電極154b等とブロック下層部134j等が接続される。電気的接続はその良否を2段階(○,×)で評価した。具体的には,直線的なI(電流)−V(電圧)特性が得られた(オーミックコンタクトが取れた)場合を「○」,直線的なI−V特性が得られない場合を「×」とした。
「ヒロック」は,陽極接合する際に,検出用電極154b等に発生する例えば,半球状の突起物であり,製品間での特性のばらつきおよび電極間のショートの原因となる。ヒロックは,光学顕微鏡でヒロックの有無を観察し,無い場合,有る場合それぞれについて,2段階(○,×)で評価した。なお,「−」は,下部電極層の構成材料自体がヒロックを生じにくく,上部電極層によるヒロック抑制効果が発揮されない場合である。
試料1〜6は,本発明の実施例に相当する。
試料1〜6はそれぞれ,重量部132の下面,上部電極層,下部電極層それぞれを「Si,Cr,Al」,「Si,Cr,Au」,「Si,W,Al」,「Si,TiN,Al」,「Si,Mo,Al」,「Si,Ta,Al」とした。その結果,試料1〜6それぞれでのスティッキング抑制,電気的接続,ヒロック抑制の評価は「○,○,○」,「○,○,−」,「○,○,○」,「○,○,○」,「○,○,○」,「○,○,○」,であった。
なお,下部電極層としてAu,Ptを用いた場合にはガラス基板(第2の基体150)との間に,50nmのCr,またはTiの膜(密着膜)を配置した。
試料7〜11は,本発明の比較例に相当する。
試料7〜11はそれぞれ,重量部132の下面,上部電極層,下部電極層それぞれを「Al,Al,Al」,「Cr,Al,Al」,「Cr,Cr,Al」,「Si,−,Al」,「Si,−,Cr」とした。その結果,試料7〜11それぞれでのスティッキング抑制,電気的接続,ヒロック抑制の評価は「×,○,×」,「△,○,×」,「×,○,○」,「×,○,×」,「○,×,−」であった。
なお,下部電極層としてAu,Ptを用いた場合にはガラス基板(第2の基体150)との間に,50nmのCr,またはTiの膜(密着膜)を配置した。
以上に示されるように,重量部132の下面と上部電極層それぞれが,半導体(Si)および下部電極層の材料よりも高融点の導電性材料(Cr,W,TiN)のときに,スティッキングが少なかった。金属材料同士の組み合わせでは,高融点の導電性材料を用いても必ずしも良好な結果が得られなかった。
電気的接続に関しては,下部電極層がCrの場合以外は概ね良好であった。Crがブロック下層部134jの構成材料(シリコン)に拡散し難く,接続が不安定であった。また,Crは陽極接合時の押圧によって変形し難く,ブロック下層部134と第2の基体150とが連結されなかった。
ヒロック抑制に関しては,Alの下部電極層を高融点の金属含有材料の上部電極層で覆うことで,下部電極層でのヒロックを抑制できた。下部電極層がAu,やCrの場合,ヒロックが発生しないので,上部電極層の材料はヒロックの抑制には寄与しない。
以上,第2の基体150上に形成される駆動用電極154a,検出用電極154b〜154e,配線層L2,L8〜L11の構成材料の組み合わせにつき説明した。ステップS16の陽極接合時での重量部132との付着防止および電気的特性の双方を満足することが可能となる。
また,第1の基体140上に形成される駆動用電極144a,検出用電極144b〜144e,配線層L1,L4〜L7の構成材料にも同様の組み合わせを採用しても良い。その場合,ステップS16の陽極接合時での変位部112との付着防止および電気的特性の双方を満足することが可能となる。
ステップS16の陽極接合時に,第1の基体140側に変位部112が引き寄せられる理由について述べる。第1の基体140が例えば可動イオンを含むガラス材である場合に,第1の基板140はステップS14の陽極接合後は絶縁体としてみなせる。このため,第2の基体150の陽極接合時に,第1の基板140を通じて半導体基板Wへ電圧を印加することが困難となる。そのため従来,半導体基板Wの側面(あるいは半導体基板Wの表面を一部露出して)から第2の基体150の陽極接合時の電圧を印加している。
しかしながら,ブロック部(ブロックa〜i)は力学量センサ100のフレーム(固定部111及び台座131)から離隔して存在している。このため,ブロック部には電気的接続がなく,ブロック部と接続する電極(駆動用電極144a,154a,検出用電極144b〜144e,154b〜154e)の電位が定まらなくなる。その結果,変位部112が第2の基体150側のみではなく,第1の基体140側に引き寄せられ,スティッキング(付着)する可能性がある。
上記実施形態では,第2の基体150と第1の構造体110の陽極接合時に,重量部132が第1の基体140,第2の基体150側のいずれかの方向に引き寄せられたとしても,重量部132のスティッキングを防ぐことができる。
以下,電極(駆動用電極154a,検出用電極154b〜154e等)の構成材料と,(1)ガス放出,および(2)抵抗値との関係を説明する。ここでは,アニール等により電極が高温に晒される可能性を考慮している。
(1)ガス放出について
電極(上部電極層,下部電極層)の構成材料と,電極からのガス放出との関係を説明する。
電極がガスを含み,そのガスが力学量センサ100内に放出される可能性がある。力学量センサ100では,その内部を減圧することで(真空封止),重量部132の可動性を高めていることから,電極からのガスの放出によって,力学量センサ100の感度が低下する可能性がある。例えば,スパッタリング法により電極が形成される場合,スパッタ用の希ガス(例えば,Ar)が,例えば,0.01〜1[at%]のオーダで電極内部に混入する。このため,力学量センサ100の減圧後にこのスパッタガスが放出される可能性がある。
図17は,温度とガス放出強度との関係を表すグラフである。横軸,縦軸がそれぞれ,温度およびArガス放出強度に対応する。ここでは,電極の下部電極層をAl−Ndとし,上部電極層を付加しない場合,上部電極層の構成材料がTiN,Crの場合について,調べた。
上部電極層を付加しない場合には,465℃程度以上でArガスが放出される。これに対して,上部電極層の構成材料がTiNの場合には,600℃程度以上,上部電極層の構成材料がCrの場合には,415℃程度以上でArガスが放出される。即ち,上部電極層の構成材料をTiN,Crとするとガス放出が抑制あるいは促進される。
この理由は,電極(上部電極層,下部電極層)内での熱拡散(原子の移動)により説明することができる。上部電極層が無い場合,温度が上昇し,電極(下部電極層)内での拡散(自己拡散)が盛んになると,電極内に含まれるガスが電極から放出され易くなると考えられる。上部電極層を付加した場合,下部電極層と上部電極層間での拡散(相互拡散)が生じ,この相互拡散が盛んになると,電極からのガスの放出が起こり易くなると考えられる。
上部電極層,下部電極層の構成材料の組み合わせにより,この相互拡散の大きさが変化し,ガスの放出特性が変化する。Cr/Al−Ndの組み合わせでは,層内での自己拡散よりも層間での相互拡散が優勢になり,上部電極層を付加しない場合よりも,ガスが放出される温度が低下する。一方,TiN/Al−Ndの組み合わせでは,層内での自己拡散よりも層間での相互拡散が劣勢になり,Cr/Al−Ndの組み合わせと比べてガスが放出される温度が上昇する。さらに,上部電極層(TiN)において,自己拡散が起こりにくいこと(自己拡散の起こる温度が高いこと)により,上部電極層を付加しない場合よりも,ガスが放出される温度が上昇する。
このように,相互拡散が生じにくい材料を組み合わせることで,電極を例えばアニールした場合に,ガスの放出が低減される。これは,力学量センサ100の製造プロセス条件の柔軟化をもたらす。さらに,力学量センサ100の長期信頼性の確保にも繋がる。
(2)抵抗値について
電極(上部電極層,下部電極層)の構成材料と,電極の抵抗との関係を説明する。
上部電極層,下部電極層の材料の組み合わせをCr/Al−Nd,TiN/Al−Ndとし,上部電極層,下部電極層の形成後に420℃程度でアニールした場合での抵抗を測定した。Cr/Al−Nd,TiN/Al−Ndそれぞれでのシート抵抗は3.1および0.1[Ω]であった。即ち,Cr/Al−Ndの組み合わせでは,アニールにより高抵抗化し,TiN/Al−Ndの組み合わせでは,アニールにより高抵抗化しなかった。
この原因は,上部電極層,下部電極層間での相互拡散の結果,CrとAlの金属間化合物が形成され,その抵抗率がAl,Cr単体の抵抗率より大きいためと考えられる。TiN/Al−Ndの組み合わせでは,相互拡散自体が起こり難いので,アニールすることによる抵抗値の変化は無いと考えられる。
以上から判るように,アニールによる温度の上昇等を考慮すると,上部電極層,下部電極層として,層間での相互拡散が生じにくい(相互拡散係数の小さい)材料を組み合わせることが好ましい。この組み合わせの一例として,Al系材料とTiNを挙げることができる。
なお,これら(1)ガス放出,および(2)抵抗値の実験では,下部電極層をAl−Nd(Alに2.0[at.%]のNdを付加)としているが,Al−Nd以外でも,Al系の材料(例えば,Al,Al−Si,Al−Cu,Al−Si−Cu等のAlを主成分とする材料)であれば,ほぼ同様の結果が得られると考えられる。
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の第1の実施形態に係る力学量センサを分解した状態を表す分解斜視図である。 図1の力学量センサを分解した状態を表す分解斜視図である。 第1の構造体の上面図である。 接合部の上面図である。 第2の構造体の上面図である。 第1の基体の下面図である。 第2の基体の上面図である。 第2の基体の下面図である。 図1のB−Bに沿って切断した状態を表す断面図である。 図1のC−Cに沿って切断した状態を表す断面図である。 図9に示す力学量センサにおける6組の容量素子を示す断面図である。 図6の一部を拡大した下面図である。 図7の一部を拡大した上面図である。 本発明の第1の実施形態に係る力学量センサの作成手順の一例を表すフロー図である。 図14の作成手順における力学量センサの状態を表す断面図である。 図14の作成手順における力学量センサの状態を表す断面図である。 図14の作成手順における力学量センサの状態を表す断面図である。 図14の作成手順における力学量センサの状態を表す断面図である。 図14の作成手順における力学量センサの状態を表す断面図である。 図14の作成手順における力学量センサの状態を表す断面図である。 図14の作成手順における力学量センサの状態を表す断面図である。 図14の作成手順における力学量センサの状態を表す断面図である。 図14の作成手順における力学量センサの状態を表す断面図である。 図14の作成手順における力学量センサの状態を表す断面図である。 下部電極層,上部電極層,重量部の下面の構成材料の組み合わせと,評価結果の対応関係を表す表である。 温度とガス放出強度との関係を表すグラフである。
符号の説明
100 力学量センサ
110 第1の構造体
111 固定部
111a 枠部
111b,111c 突出部
112(112a-112e) 変位部
113(113a-113d) 接続部
114(114a-114j) ブロック上層部
115(115a-115d) 開口
120,121,122,123 接合部
130 第2の構造体
131 台座
131a 枠部
131b〜131d 突出部
132(132a-133e) 重量部
133 開口
134(134a-134j) ブロック下層部
135 ポケット
140 第1の基体
141 枠部
142 底板部
143 凹部
144a 駆動用電極
144b-144e 検出用電極
150 第2の基体
154a 駆動用電極
154b-154e 検出用電極
160-162 導通部
10 ギャップ
11 錘状貫通孔
L1,L2,L4-L11 配線層
T1-T11 配線用端子
E1 駆動用電極,検出用電極

Claims (10)

  1. 開口を有する固定部と,この開口内に配置され,かつ前記固定部に対して変位する変位部と,前記固定部と前記変位部とを接続する接続部と,を有し,かつ第1の半導体材料から構成される第1の構造体と,
    前記変位部に接合され,かつ底面を有する重量部と,前記重量部を囲んで配置され,かつ前記固定部に接合される台座と,を有し,導電性を有する第2の半導体材料から構成され,かつ前記第1の構造体に積層して配置される第2の構造体と,
    絶縁材料から構成され,前記第1,第2の構造体を接合する接合部と,
    前記固定部に接続されて前記第1の構造体に積層配置されるとともに,前記変位部と対向する第1の電極を備えた第1の基体と,
    前記台座に接続されて前記第2の構造体に積層配置されるとともに,前記重量部の底面と対向する第2の電極を備えた第2の基体と,
    前記開口内に配置され,前記第1の基体と前記第2の基体とを連結するブロック部と,
    前記第2の電極を延長して構成され,前記第2の電極と前記ブロック部とを接続する配線層と,を具備し,
    前記第2の電極が,
    前記第2の基体上に配置され,かつ第1の導電性材料からなる第1の導電層と,
    前記第1の導電層上に前記重量部の底面と対向して配置され,かつ前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料からなる第2の導電層と,を有し,
    前記配線層が,
    前記ブロック部の下端が前記第2の基体と接触する領域に配置され,前記第1の導電性材料からなり,前記第1の導電層と同一層をなす第3の導電層のみからなる第1の部材と,
    前記第1の部材と前記第2の電極を接続し,前記第1の導電性材料からなり,前記第1の導電層と同一層をなす第4の導電層と,前記第2の導電性材料からなり,前記第2の導電層と同一層をなす第5の導電層と,を備える第2の部材と,を有する,
    ことを特徴とする力学量センサ。
  2. 前記第2の導電層が,前記第1の導電層より薄い,ことを特徴とする請求項1に記載の力学量センサ。
  3. 前記重量部の底面の構成材料がシリコンを主成分とし,前記第2の導電性材料がCr,W,Mo,Ta,およびTiNの少なくとも何れかを主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の力学量センサ。
  4. 前記第1の導電性材料が,Al,Au,またはPtの少なくとも何れかを主成分とする
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の力学量センサ。
  5. 前記第1の導電性材料がAlを主成分とし,前記第2の導電性材料がTiNを主成分とする,
    ことを特徴とする請求項4記載の力学量センサ。
  6. 第1の半導体材料からなる第1の層,絶縁性材料からなる第2の層,および導電性を有する第2の半導体材料からなる第3の層が順に積層されてなる半導体基板の前記第1の層から,開口を有する固定部と,この開口内に配置され,かつ前記固定部に対して変位する変位部と,前記固定部と前記変位部とを接続する接続部と,を有する第1の構造体を形成するステップと,
    第1の電極を有し,かつ絶縁性材料から構成される第1の基体を,前記第1の電極が前記変位部と対向するように,前記固定部に接合して前記第1の構造体に積層配置するステップと,
    前記第3の層から,前記変位部に接合され,かつ底面を有する重量部と,前記重量部を囲んで配置され,かつ前記固定部に接合される台座と,を有する第2の構造体を形成するステップと,
    前記第2の層から,前記第1,第2の構造体を接合する接合部を形成するステップと,
    第2の電極を有し,かつガラス材料から構成される第2の基体を,前記第2の電極が前記重量部の底面と対向するように,前記台座に陽極接合して前記第2の構造体に積層配置するステップと,を具備し,
    前記第1の構造体を形成するステップにおいて,前記開口内に配置されるブロック上層部が画定され,
    前記第2の構造体を形成するステップにおいて,前記重量部の周囲に配置され,前記ブロック上層部と接合されたブロック下層部が画定されるとともに,前記第1の基体と前記第2の基体とを連結するブロック部が形成され,
    前記第2の構造体に積層配置するステップにおいて,前記第2の基体が,前記第2の電極に接続され,かつ前記第1の導電層と一体的に構成される配線層を備え,前記配線層の一部が前記ブロック部の下端に接触することになる領域に配置され,陽極接合により前記ブロック部と前記第2の電極が前記配線層を介して電気的に接続され,
    前記第2の電極が,
    前記第2の基体上に配置され,かつ第1の導電性材料からなる第1の導電層と,
    前記第1の導電層上に前記重量部の底面と対向して配置され,かつ前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料からなる第2の導電層と,を有し,
    前記配線層が,
    前記ブロック部の下端が前記第2の基体と接触する領域に配置され,前記第1の導電性材料からなり,前記第1の導電層と同一層をなす第3の導電層のみからなる第1の部材と,
    前記第1の部材と前記第2の電極を接続し,前記第1の導電性材料からなり,前記第1の導電層と同一層をなす第4の導電層と,前記第2の導電性材料からなり,前記第2の導電層と同一層をなす第5の導電層と,を備える第2の部材と,を有する,
    ことを特徴とする力学量センサの製造方法。
  7. 前記第2の導電層が,前記第1の導電層より薄い,ことを特徴とする請求項6に記載の力学量センサの製造方法。
  8. 前記重量部の底面の構成材料がシリコンを主成分とし,前記第2の導電性材料がCr,
    W,Mo,Ta,およびTiNの少なくとも何れかを主成分とすることを特徴とする請求項6または7に記載の力学量センサの製造方法。
  9. 前記第1の導電性材料が,Al,Au,またはPtの少なくとも何れかを主成分とする
    ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の力学量センサの製造方法。
  10. 前記第1の導電性材料がAlを主成分とし,前記第2の導電性材料がTiNを主成分とする,
    ことを特徴とする請求項9記載の力学量センサの製造方法。
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