JP5262658B2 - 力学量センサおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
そこで従来,上ガラス基板の凹部にCrからなるスティッキング防止膜が形成された慣性力センサの技術が開示されている(特許文献2参照)。さらに,固定電極がCrで構成される静電容量型加速度センサの技術が開示されている(特許文献3参照)。
図1は,本発明の一実施形態に係る力学量センサ100を分解した状態を表す分解斜視図である。力学量センサ100は,互いに積層して配置される第1の構造体110,接合部120,第2の構造体130,及び第1の基体140,第2の基体150を有する。
第1の構造体110,接合部120,第2の構造体130はそれぞれ,シリコン,酸化シリコン,シリコンから構成可能であり,力学量センサ100は,シリコン/酸化シリコン/シリコンの3層構造をなすSOI(Silicon On Insulator)基板を用いて製造可能である。第1の構造体110,第2の構造体130を構成するシリコンには,全体に例えばボロン等の不純物が含まれる導電性材料を使用することが好ましい。後述するように,第1の構造体110,第2の構造体130を不純物が含まれるシリコンで構成することにより,力学量センサ100の配線を簡略化できる。本実施の形態では,第1の構造体110及び第2の構造体130に不純物が含まれるシリコンを使用している。
また,第1の基体140,第2の基体150はそれぞれ,ガラス材料から構成できる。
枠部131aは,外周,内周が共に略正方形の枠形状の基板であり,固定部111の枠部111aと対応した形状を有する。
突出部131bは,枠部131aの内周のコーナー部に配置され,重量部132bに向かって(X−Y平面のX方向を0°としたとき,0°方向に)突出する略正方形の基板であり,固定部111の突出部111bと対応した形状を有する。
台座131は,接合部120によって固定部111,及び接続部113a〜113dの所定の領域と接続される。
なお,接合部121,122,123は,シリコン酸化膜をエッチングすることで構成可能である。
導通部160は,固定部111と台座131とを導通するものであり,固定部111の突出部111b及び接合部121を貫通している。
導通部161は,変位部112と重量部132とを導通するものであり,変位部112a及び接合部122を貫通している。
導通部162は,ブロック上層部114a,114b,114e,114f,114iとブロック下層部134a,134b,134e,134f,134iとをそれぞれ導通するものであり,ブロック上層部114a,114b,114e,114f,114i及び接合部123をそれぞれ貫通している。
導通部160〜162は,例えば,貫通孔の縁,壁面及び底部にAlのような金属層が形成されたものである。なお,貫通孔の形状は特に制限されないが,Al等のスパッタ等により金属層を効果的に形成できるため,導通部160〜162の貫通孔を上広の錐状の形状にすることが好ましい。
底板部142は,外周が枠部141と略同一の略正方形の基板形状である。
第1の基体140に凹部143が形成されているのは,変位部112が変位するための空間を確保するためである。変位部112以外の第1の構造体110,すなわち固定部111及びブロック上層部114a〜114jは,第1の基体140と,例えば陽極接合によって接合される。陽極接合のために第1の基体140の材料として,パイレックス(登録商標)ガラスなどの可動イオンを含むガラス材料を用いる。
なお,第1の基体140は絶縁性材料を共晶接合などの方法により接合することも可能である。
重量部132以外の第2の構造体130,すなわち台座131及びブロック下層部134a〜134jは,第2の基体150と,陽極接合によって接合される。重量部132は,台座131及びブロック下層部134a〜134jよりも高さが低いため,第2の基体150と接合されない。重量部132と第2の基体150との間に間隙(ギャップ)を確保し,重量部132の変位を可能にするためである。
検出用電極154bには,ブロック下層部134cの裏面と電気的に接続される配線層L8,検出用電極154cには,ブロック下層部134dの裏面と電気的に接続される配線層L9,検出用電極154dには,ブロック下層部134gの裏面と電気的に接続される配線層L10,検出用電極154eには,ブロック下層部134hの裏面と電気的に接続される配線層L11がそれぞれ接続されている。
なお,図1〜図10では,第1の構造体110,接合部120,第2の構造体130の見やすさを考慮して,第2の基体150が下に配置されるように図示している。配線用端子Tと外部回路とを,例えばワイヤボンディングで接続する場合には,力学量センサ100の第2の基体150を例えば上になるように配置して容易に接続することができる。
力学量センサ100の配線,及び電極について説明する。
図11は,図9に示す力学量センサ100における6組の容量素子を示す断面図である。図11では,電極として機能する部分をハッチングで示している。なお,図11では6組の容量素子を図示しているが,前述したように力学量センサ100には,10組の容量素子が形成される。
10組の容量素子の一方の電極は,第1の基体140に形成された駆動用電極144a,検出用電極144b〜144e,及び第2の基体150に形成された駆動電極154a,検出用電極154b〜154eである。
もう一方の電極は,変位部112aの上面の駆動用電極E1,変位部112b〜112eの上面にそれぞれ形成された検出用電極E1,重量部132aの下面の駆動用電極E1,及び重量部132b〜132eの下面にそれぞれ形成された検出用電極E1である。すなわち,変位部112及び重量部132を接合した構造体は,10組の容量性結合の共通電極として機能する。第1の構造体110及び第2の構造体130は,導電性材料(不純物が含まれるシリコン)から構成されているため,変位部112及び重量部132を接合した構造体は,電極として機能することができる。
(1)変位部112の振動
駆動用電極144a,E1間に電圧を印加すると,クーロン力によって駆動用電極144a,E1が互いに引き合い,変位部112(重量部132も)はZ軸正方向に変位する。また,駆動用電極154a,E1間に電圧を印加すると,クーロン力によって駆動用電極154a,E1が互いに引き合い,変位部112(重量部132も)はZ軸負方向に変位する。即ち,駆動用電極144a,E1間,駆動用電極154a,E1間への電圧印加を交互に行うことで,変位部112(重量部132も)はZ軸方向に振動する。この電圧の印加は正又は負の直流波形(非印加時も考慮するとパルス波形),半波波形等を用いることができる。
重量部132(変位部112)に加速度αが印加されると重量部132に力F0が作用する。具体的には,X,Y,Z軸方向それぞれの加速度αx,αy,αzに応じて,X,Y,Z軸方向の力F0x(=m・αx),F0y(=m・αy),F0z(=m・αz)が重量部132に作用する(mは,重量部132の質量)。その結果,変位部112にX,Y方向への傾き,およびZ方向への変位が生じる。このように,加速度αx,αy,αzによって変位部112にX,Y,Z方向の傾き(変位)が生じる。
重量部132(変位部112)がZ軸方向に速度vzで移動しているときに角速度ωが印加されると重量部132にコリオリ力Fが作用する。具体的には,X軸方向の角速度ωxおよびY軸方向の角速度ωyそれぞれに応じて,Y軸方向のコリオリ力Fy(=2・m・vz・ωx)およびX軸方向のコリオリ力Fx(=2・m・vz・ωy)が重量部132に作用する(mは,重量部132の質量)。
以上のように,加速度αおよび角速度ωによって,変位部112の変位(傾き)が生じる。検出用電極144b〜144e,154b〜154eによって,変位部112の変位を検出することができる。
検出用電極144b〜144e,154b〜154e,E1から出力される信号には,加速度αx,αy,αz,角速度ωx,ωyに起因する成分の双方が含まれる。これらの成分の相違を利用して,加速度および角速度を抽出できる。
力学量センサ100の作成工程につき説明する。
図14は,力学量センサ100の作成手順の一例を表すフロー図である。また,図15A〜図15Jは,図14の作成手順における力学量センサ100の状態を表す断面図である(図1に示す力学量センサ100をC−Cで切断した断面に相当する)。図15A〜図15Jは,図10の力学量センサ100を上下逆に配置したものに対応する。
図15Aに示すように,第1,第2,第3の層11,12,13の3層を積層してなる半導体基板Wを用意する。なお,半導体基板Wは直径が150〜200mm程度であり,一枚の半導体基板Wから複数の力学量センサ100が形成される。
不純物が含まれるシリコン/酸化シリコン/不純物が含まれるシリコンという3層の積層構造をもった半導体基板Wは,不純物が含まれるシリコン基板上にシリコン酸化膜を積層した基板と,不純物が含まれるシリコン基板とを接合後,後者の不純物が含まれるシリコン基板を薄く研磨することで作成できる(いわゆるSOI基板)。
シリコンに含まれる不純物としては,例えばボロンを挙げることができる。ボロンが含まれるシリコンとしては,例えば,高濃度のボロンを含み,抵抗率が0.001〜0.01Ω・cmのものを使用できる。
第1の層11をエッチングすることにより,開口115を形成し,第1の構造体110を形成する。即ち,第1の層11に対して浸食性を有し,第2の層12に対して浸食性を有しないエッチング方法を用いて,第1の層11の所定領域(開口115a〜115d)に対して,第2の層12の上面が露出するまで厚み方向にエッチングする。
図15Bは,第1の層11に対して,上述のようなエッチングを行い,第1の構造体110を形成した状態を示す。このとき,ブロック上層部114が画定される。
第2の層12をエッチングすることにより,接合部120を形成する。即ち,第2の層12に対しては浸食性を有し,第1の層11および第3の層13に対しては浸食性を有しないエッチング方法により,第2の層12に対して,その露出部分から厚み方向および層方向にエッチングする。
第1の条件は,不要な部分に酸化シリコン層が残存して重量部132の変位の自由度を妨げることがないようにするために必要な条件である。第2の条件は,既に所定形状への加工が完了しているシリコンからなる第1の構造体110や第3の層13に浸食が及ばないようにするために必要な条件である。
導通部160〜162の形成は,次のa,bのようにして行われる。
a.錐状貫通孔の形成
第1の構造体110及び第2の層12の所定の箇所をウエットエッチングし,第2の層12まで貫通するような錘状貫通孔を形成する。エッチング液としては,第1の構造体110のエッチングでは,例えば,20%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用いることができ,第2の層12のエッチングでは,例えば,バッファド弗酸(例えば,HF=5.5wt%,NH4F=20wt%の混合水溶液)を用いることができる。
第1の構造体110の上面及び錐状貫通孔内に,例えばAlを蒸着法やスパッタ法等により堆積させて,導通部160〜162を形成する。第1の構造体110の上面に堆積した不要な金属層(導通部160〜162の上端の縁(図示せず)の外側の金属層)はエッチングで除去する。
1)第1の基体140の作成
絶縁性材料からなる基板(Naイオンなどの可動イオンを含むガラス基板,例えば,パイレックス(登録商標)ガラス)をエッチングして凹部143を形成し,駆動用電極144a,検出用電極144b〜244e,及び配線層L1,L4〜L7を,例えばNdを含むAlからなるパターンによって所定の位置に形成する。なお,ガラスが可動イオンを含むのは,後の陽極接合のためである。
これら第1,第2の導電層はいずれもスパッタ法を用いて形成できる。
なお,第1の導電層として,Au,Pt等を使用する場合には,第1の基体140(ガラス基板)の下面やブロック上層部114の上面との間に密着膜(Auの場合はCr,Ptの場合はTi)を付加することが好ましい。
半導体基板Wと第1の基体140とを,陽極接合により接合する。
第2の構造体130の作成前に第1の基体140を陽極接合している。重量部132を形成する前に,第1の基体140を陽極接合しているので,接続部113a〜113dには厚みの薄い領域が存在せず可撓性を有していないため,半導体基板Wと第1の基体140の接合時には静電引力が生じても変位部112は第1の基体140に引き寄せられることはない。しかし,後述する第2の基体150との陽極接合時には変位部112は接続部113により可動支持されており,第1の基体140側に引き寄せられる可能性がある。
図15Eは,半導体基板Wと第1の基体140とを接合した状態を示す。
第2の構造体130の形成は,次のa,bのようにして行われる。
a.ギャップ10の形成(図15F)
第3の層13の上面に,重量部132の形成領域及びその近傍を除いてレジスト層を形成し,このレジスト層で覆われていない露出部分(重量部132の形成領域及びその近傍)を垂直下方へと侵食させる。この結果,重量部の形成される領域の上部に重量部132の変位を可能とするためのギャップ10が形成される。
ギャップ10が形成された第3の層13をエッチングすることにより,開口133,ブロック下層部134a〜134j,及びポケット135を形成し,第2の構造体130を形成する。即ち,第3の層13に対して浸食性を有し,第2の層12に対して浸食性を有しないエッチング方法により,第3の層13の所定領域(開口133)に対して,厚み方向へのエッチングを行う。
図15Gは,第3の層13に対して,上述のようなエッチングを行い,第2の構造体130を形成した状態を示す。このとき,ブロック下層部134が画定されるとともに,ブロックa〜iが形成される。
第1の条件は,各層の厚み方向への方向性を持つことである,第2の条件は,シリコン層に対しては浸食性を有するが,酸化シリコン層に対しては浸食性を有しないことである。
この方法では,材料層を厚み方向に浸食しながら掘り進むエッチング段階と,掘った穴の側面にポリマーの壁を形成するデポジション段階と,を交互に繰り返す。掘り進んだ穴の側面は,順次ポリマーの壁が形成されて保護されるため,ほぼ厚み方向にのみ浸食を進ませることが可能になる。
a.第2の基体150の作成
絶縁性材料からなる基板(Naイオンなどの可動イオンを含むガラス基板,例えば,パイレックス(登録商標)ガラス)に,駆動用電極154a,検出用電極154b〜154e,及び配線層L2,L8〜L11を,例えばNdを含むAlからなるパターンによって所定の位置に形成する。また,第2の基体150をエッチングすることにより,配線用端子T1〜T11を形成するための上広の錐状貫通孔10を所定の箇所に11個形成する。なお,ガラスが可動イオンを含むのは,後の陽極接合のためである。
これら第1,第2の導電層はいずれもスパッタ法を用いて形成できる。
なお,第1の導電層として,Au,Pt等を使用する場合には,第2の基体150(ガラス基板)の下面やブロック下層部134の下面との間に密着膜(Auの場合はCr,Ptの場合はTi)を付加することが好ましい。
ポケット135にゲッター材料(サエスゲッターズジャパン社製,商品名 非蒸発ゲッター)を入れて,第2の基体150と半導体基板Wとを,陽極接合により接合する。
図15Hは,半導体基板Wと第2の基体150とを接合した状態を示す。
第2の基体150の上面及び錐状貫通孔10内に,例えばCr層,Au層の順に金属層を蒸着法やスパッタ法等により形成する。不要な金属層(配線用端子Tの上端の縁の外側の金属層)をエッチングにより除去し,配線用端子T1〜T11を形成する。
例えば,450℃の熱処理によってポケット135中のゲッター材料を活性化した後,互いに接合された半導体基板W,第1の基体140,及び第2の基体150にダイシングソー等で切れ込みを入れて,個々の力学量センサ100に分離する。
・低抵抗であることが好ましい(力学量センサ100の感度に影響)。
・配線層L2,L8〜L11と,ブロック下層部134j,134c,134d,134g,134hの裏面との電気的接続が良好であることが好ましい。具体的には,陽極接合の温度(〜500℃)でブロック下層部134j等の裏面(シリコン等の半導体)とオーミック接続(あるいはオーミック接続とみなせる低抵抗接続)されることが好ましい。
・陽極接合の温度下において,接合圧力により潰れる程度の柔軟性を有することが好ましい。配線層L2,L8〜L11は,ブロック下層部134j等の裏面,第2の基体150間に挟まれて,ブロック下層部134j等の裏面と接続される。このとき,配線層L2,L8〜L11が変形して,ブロック下層部134j等の裏面と配線層L2,L8〜L11の接続箇所の全体が均一に接触することが好ましい。下部電極層が変形することで,配線層Lとブロック下層部134の電気的接続の信頼性が高くなる。
仮に,陽極接合時に変形し難い材料を下部電極層に用いると,接合後での電極154と電極E1の平行度が損なわれ,力学量センサ100の特性にばらつきが生じる。
・上部電極層に用いる材料よりも高融点であることが望ましい。陽極接合の温度(〜500℃)で軟化せず,硬いことが望ましい。重量部132の下面との融合が制限される。
・陽極接合の温度で重量部132の下面の材料と化合物(例えば,シリサイド)を形成しないことが望ましい。
・下部電極層で生じるヒロック(後述)などを抑制することが好ましい。
・低抵抗であることが望ましい。但し,下部電極層に比べ,この要請は低い。
・下部電極層との密着性が良好なことが好ましい。
・陽極接合の温度で上部電極層の材料と化合物を作らないことが望ましい。
なお,スティッキングの有無は,重量部132と駆動用電極154a等間の導通により確認した。スティッキングしていればショート(導通),スティッキングしていなければオープン(絶縁)となる。
試料1〜6はそれぞれ,重量部132の下面,上部電極層,下部電極層それぞれを「Si,Cr,Al」,「Si,Cr,Au」,「Si,W,Al」,「Si,TiN,Al」,「Si,Mo,Al」,「Si,Ta,Al」とした。その結果,試料1〜6それぞれでのスティッキング抑制,電気的接続,ヒロック抑制の評価は「○,○,○」,「○,○,−」,「○,○,○」,「○,○,○」,「○,○,○」,「○,○,○」,であった。
なお,下部電極層としてAu,Ptを用いた場合にはガラス基板(第2の基体150)との間に,50nmのCr,またはTiの膜(密着膜)を配置した。
試料7〜11はそれぞれ,重量部132の下面,上部電極層,下部電極層それぞれを「Al,Al,Al」,「Cr,Al,Al」,「Cr,Cr,Al」,「Si,−,Al」,「Si,−,Cr」とした。その結果,試料7〜11それぞれでのスティッキング抑制,電気的接続,ヒロック抑制の評価は「×,○,×」,「△,○,×」,「×,○,○」,「×,○,×」,「○,×,−」であった。
なお,下部電極層としてAu,Ptを用いた場合にはガラス基板(第2の基体150)との間に,50nmのCr,またはTiの膜(密着膜)を配置した。
また,第1の基体140上に形成される駆動用電極144a,検出用電極144b〜144e,配線層L1,L4〜L7の構成材料にも同様の組み合わせを採用しても良い。その場合,ステップS16の陽極接合時での変位部112との付着防止および電気的特性の双方を満足することが可能となる。
電極(上部電極層,下部電極層)の構成材料と,電極からのガス放出との関係を説明する。
電極がガスを含み,そのガスが力学量センサ100内に放出される可能性がある。力学量センサ100では,その内部を減圧することで(真空封止),重量部132の可動性を高めていることから,電極からのガスの放出によって,力学量センサ100の感度が低下する可能性がある。例えば,スパッタリング法により電極が形成される場合,スパッタ用の希ガス(例えば,Ar)が,例えば,0.01〜1[at%]のオーダで電極内部に混入する。このため,力学量センサ100の減圧後にこのスパッタガスが放出される可能性がある。
上部電極層を付加しない場合には,465℃程度以上でArガスが放出される。これに対して,上部電極層の構成材料がTiNの場合には,600℃程度以上,上部電極層の構成材料がCrの場合には,415℃程度以上でArガスが放出される。即ち,上部電極層の構成材料をTiN,Crとするとガス放出が抑制あるいは促進される。
電極(上部電極層,下部電極層)の構成材料と,電極の抵抗との関係を説明する。
上部電極層,下部電極層の材料の組み合わせをCr/Al−Nd,TiN/Al−Ndとし,上部電極層,下部電極層の形成後に420℃程度でアニールした場合での抵抗を測定した。Cr/Al−Nd,TiN/Al−Ndそれぞれでのシート抵抗は3.1および0.1[Ω]であった。即ち,Cr/Al−Ndの組み合わせでは,アニールにより高抵抗化し,TiN/Al−Ndの組み合わせでは,アニールにより高抵抗化しなかった。
なお,これら(1)ガス放出,および(2)抵抗値の実験では,下部電極層をAl−Nd(Alに2.0[at.%]のNdを付加)としているが,Al−Nd以外でも,Al系の材料(例えば,Al,Al−Si,Al−Cu,Al−Si−Cu等のAlを主成分とする材料)であれば,ほぼ同様の結果が得られると考えられる。
本発明の実施形態は上記の実施形態に限られず拡張,変更可能であり,拡張,変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
110 第1の構造体
111 固定部
111a 枠部
111b,111c 突出部
112(112a-112e) 変位部
113(113a-113d) 接続部
114(114a-114j) ブロック上層部
115(115a-115d) 開口
120,121,122,123 接合部
130 第2の構造体
131 台座
131a 枠部
131b〜131d 突出部
132(132a-133e) 重量部
133 開口
134(134a-134j) ブロック下層部
135 ポケット
140 第1の基体
141 枠部
142 底板部
143 凹部
144a 駆動用電極
144b-144e 検出用電極
150 第2の基体
154a 駆動用電極
154b-154e 検出用電極
160-162 導通部
10 ギャップ
11 錘状貫通孔
L1,L2,L4-L11 配線層
T1-T11 配線用端子
E1 駆動用電極,検出用電極
Claims (10)
- 開口を有する固定部と,この開口内に配置され,かつ前記固定部に対して変位する変位部と,前記固定部と前記変位部とを接続する接続部と,を有し,かつ第1の半導体材料から構成される第1の構造体と,
前記変位部に接合され,かつ底面を有する重量部と,前記重量部を囲んで配置され,かつ前記固定部に接合される台座と,を有し,導電性を有する第2の半導体材料から構成され,かつ前記第1の構造体に積層して配置される第2の構造体と,
絶縁材料から構成され,前記第1,第2の構造体を接合する接合部と,
前記固定部に接続されて前記第1の構造体に積層配置されるとともに,前記変位部と対向する第1の電極を備えた第1の基体と,
前記台座に接続されて前記第2の構造体に積層配置されるとともに,前記重量部の底面と対向する第2の電極を備えた第2の基体と,
前記開口内に配置され,前記第1の基体と前記第2の基体とを連結するブロック部と,
前記第2の電極を延長して構成され,前記第2の電極と前記ブロック部とを接続する配線層と,を具備し,
前記第2の電極が,
前記第2の基体上に配置され,かつ第1の導電性材料からなる第1の導電層と,
前記第1の導電層上に前記重量部の底面と対向して配置され,かつ前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料からなる第2の導電層と,を有し,
前記配線層が,
前記ブロック部の下端が前記第2の基体と接触する領域に配置され,前記第1の導電性材料からなり,前記第1の導電層と同一層をなす第3の導電層のみからなる第1の部材と,
前記第1の部材と前記第2の電極を接続し,前記第1の導電性材料からなり,前記第1の導電層と同一層をなす第4の導電層と,前記第2の導電性材料からなり,前記第2の導電層と同一層をなす第5の導電層と,を備える第2の部材と,を有する,
ことを特徴とする力学量センサ。 - 前記第2の導電層が,前記第1の導電層より薄い,ことを特徴とする請求項1に記載の力学量センサ。
- 前記重量部の底面の構成材料がシリコンを主成分とし,前記第2の導電性材料がCr,W,Mo,Ta,およびTiNの少なくとも何れかを主成分とすることを特徴とする請求項1または2に記載の力学量センサ。
- 前記第1の導電性材料が,Al,Au,またはPtの少なくとも何れかを主成分とする
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の力学量センサ。 - 前記第1の導電性材料がAlを主成分とし,前記第2の導電性材料がTiNを主成分とする,
ことを特徴とする請求項4記載の力学量センサ。 - 第1の半導体材料からなる第1の層,絶縁性材料からなる第2の層,および導電性を有する第2の半導体材料からなる第3の層が順に積層されてなる半導体基板の前記第1の層から,開口を有する固定部と,この開口内に配置され,かつ前記固定部に対して変位する変位部と,前記固定部と前記変位部とを接続する接続部と,を有する第1の構造体を形成するステップと,
第1の電極を有し,かつ絶縁性材料から構成される第1の基体を,前記第1の電極が前記変位部と対向するように,前記固定部に接合して前記第1の構造体に積層配置するステップと,
前記第3の層から,前記変位部に接合され,かつ底面を有する重量部と,前記重量部を囲んで配置され,かつ前記固定部に接合される台座と,を有する第2の構造体を形成するステップと,
前記第2の層から,前記第1,第2の構造体を接合する接合部を形成するステップと,
第2の電極を有し,かつガラス材料から構成される第2の基体を,前記第2の電極が前記重量部の底面と対向するように,前記台座に陽極接合して前記第2の構造体に積層配置するステップと,を具備し,
前記第1の構造体を形成するステップにおいて,前記開口内に配置されるブロック上層部が画定され,
前記第2の構造体を形成するステップにおいて,前記重量部の周囲に配置され,前記ブロック上層部と接合されたブロック下層部が画定されるとともに,前記第1の基体と前記第2の基体とを連結するブロック部が形成され,
前記第2の構造体に積層配置するステップにおいて,前記第2の基体が,前記第2の電極に接続され,かつ前記第1の導電層と一体的に構成される配線層を備え,前記配線層の一部が前記ブロック部の下端に接触することになる領域に配置され,陽極接合により前記ブロック部と前記第2の電極が前記配線層を介して電気的に接続され,
前記第2の電極が,
前記第2の基体上に配置され,かつ第1の導電性材料からなる第1の導電層と,
前記第1の導電層上に前記重量部の底面と対向して配置され,かつ前記第1の導電性材料より高融点の第2の導電性材料からなる第2の導電層と,を有し,
前記配線層が,
前記ブロック部の下端が前記第2の基体と接触する領域に配置され,前記第1の導電性材料からなり,前記第1の導電層と同一層をなす第3の導電層のみからなる第1の部材と,
前記第1の部材と前記第2の電極を接続し,前記第1の導電性材料からなり,前記第1の導電層と同一層をなす第4の導電層と,前記第2の導電性材料からなり,前記第2の導電層と同一層をなす第5の導電層と,を備える第2の部材と,を有する,
ことを特徴とする力学量センサの製造方法。 - 前記第2の導電層が,前記第1の導電層より薄い,ことを特徴とする請求項6に記載の力学量センサの製造方法。
- 前記重量部の底面の構成材料がシリコンを主成分とし,前記第2の導電性材料がCr,
W,Mo,Ta,およびTiNの少なくとも何れかを主成分とすることを特徴とする請求項6または7に記載の力学量センサの製造方法。 - 前記第1の導電性材料が,Al,Au,またはPtの少なくとも何れかを主成分とする
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の力学量センサの製造方法。 - 前記第1の導電性材料がAlを主成分とし,前記第2の導電性材料がTiNを主成分とする,
ことを特徴とする請求項9記載の力学量センサの製造方法。
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