JP5241462B2 - 義歯の製造方法 - Google Patents
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Description
有床義歯の製作過程において、患者の口腔内で蝋義歯を型取りして作成した後、蝋義歯の義歯床部分をレジンに置換するための埋没、流蝋、レジン填入、重合の一連の操作は、完成義歯の口腔内での適合精度と咬合構成の精度に大きく影響を及ぼす要素である。
アメリカ法は、人工歯、維持装置、連結装置などすべての構成要素をフラスコの上部に固定する方法であり、ワックスの除去、分離剤の塗布、レジン填入などの操作が容易で、各構成要素の位置的誤差が少ない利点がある。しかし、レジン填入時にバリが生じるとこれらの義歯構成要素と床粘膜面との位置関係に誤差が生じやすく、バリの部分だけ全体が浮きあがった義歯になる大きな欠点がある。
加圧填入法は、埋没、流蝋後、上下フラスコに餅状のレジンを圧入し、数回の試圧を繰り返し約30kgf加圧下で填入する方法である。レジンが餅状のタイミングで注入することが望ましく、その見極めが重要である。この加圧填入法は現在最も広く臨床応用されている。
この填入法は均一に圧が加わるため気泡の発生がほとんどなく、適度な流動性を保った状態で低加圧注入するので、維持装置や連結装置、人工歯の位置に狂いが極めて生じにくいという利点がある。また、バリがほとんど発生しないため、この点からも人工歯をはじめとする義歯構成要素の位置的栗が極めて生じにくく、咬合高径の誤差が少ないことも利点である。
湿式による加熱重合法は、従来一般に広く臨床応用されてきた方法であり、反応熱の情報を見越して65〜70度の温湯中に40〜90分間浸漬して予備重合を行い、ほぼ重合を完了させた後に100度の温湯中に30〜40分浸漬して本重合を行い重合を完了させる。
マイクロ波による加熱重合法は、電場を与えたときのエネルギーが熱として失われる現象を利用したもので、電子レンジにより数分間で重合を完了することができる。
常温重合レジンを用いて重合する方法には、前述のフラスコを使わずに石膏やシリコンでコアを作成し、流動性の高い液状レジンの陰型に注入して成形重合する流し込みレジン法と専用のフラスコに埋没し、混和後適度な流動性を示す状態のレジンを低加圧注入して重合する方法がある。
また、分離材を塗布すると人工歯基底面に分離材が付着し、人工歯と義歯床との結合が不十分となり、人工歯が脱落しやすくなる問題もある。
すなわち、フラスコを用いた重合システムによる義歯の製造方法であって、次の各工程を有することを特徴とする。
(S1)人工歯を配列した咬合床模型を上面に載置した口腔内模型の底面側を、下部フラスコの埋没用石膏に埋没させる1次埋没工程
(S2)その咬合床模型の上部を、粘弾性材料中に埋没させて該咬合床模型を被覆する2次埋没工程
(S3)その粘弾性材料の上面側を、上部フラスコの埋没用石膏に埋没させる3次埋没工程
(S4)埋没用石膏及び粘弾性材料の硬化後に、咬合床模型だけを除去する咬合床模型除去工程
(S5)咬合床模型が除去された空間にレジンを填入するレジン填入工程
(S6)レジンの固化後に、該埋没用石膏を除去して義歯を取り出す取り出し工程
また、上記粘弾性材料に、シリコン印象材を用いてもよい。
上記のレジンに常温重合レジンを用い、本発明の重合システムが、レジンを加圧しながら填入する方式であってもよい。
すなわち、シリコン印象材等の粘弾性材料を2次埋没工程で用いることにより、義歯の掘り出しが極めて容易になり、操作の簡便化と作業時間の短縮を図ることができる。特に、レジン床部への埋没用石膏の強固な付着が生じず、石膏溶解剤を使用する必要もない。
また、分離材を塗布刷る必要がないため、人工歯と義歯床との確実な化学結合を得ることができる。
また、従来のように上下のフラスコの開輪時にフラスコを温湯に浸して加熱し、蝋を軟化させる必要もなく、3次埋没用石膏が硬化した直後に開輪することができる。
また、流蝋時に人工歯の全てを一旦取り外すことができるため、いかなる症例でも細部まで確実に蝋の除去が行える効果も奏する。
有床義歯を作成する工程は公知(例えば特許文献2)のように、歯科医師により精密印象材を用いて口腔内の印象(陰型)を採取することから始まる。そして、印象材に水と練和した石膏を流し込み、口腔内模型を製作する。この口腔内模型(101)の断面図を図7(a)に示す。
本発明では、咬合床模型から義歯を製造する方法を提供するものであり、咬合床模型の製作方法や態様は上記に限られない。
まず、図2(a)と図5(a)に示すように、咬合床模型(104)の底面側(口腔内と接する粘膜面側)が下になるように口腔内模型(101)を下部のフラスコ(105)内に充填されている石膏(106)に埋没させる。(1次埋没工程:S1)
この1次埋没用石膏は普通石膏で足りる。
図示のフラスコは1床用であるが、2床用のデュオフラスコで上下2床を同時に製造してもよい。
すなわち、図2(b)と図5(b)に示すように、パテタイプのシリコン印象材(109)に咬合床模型(104)の上部(人工歯側)を埋没させる。パテ状の印象材(109)を用いているので、咬合床模型(104)に密着するように手で被覆していくことは容易である。
埋没させる範囲は、咬合床(102)及び人工歯(103)全体が覆われるようにするのが望ましいが、特に人工歯(103)とその歯肉周辺は精密に表面形状が再現されることが必要なので確実に埋没させる。
また、シリコン印象材(109)の辺縁部(109a)は漸次厚みが薄くなるように移行形に形成する。これにより、シリコン印象材が上下の石膏に強固に固定するようにする。
本発明の実施には上記に限らず、いかなる印象材を用いてもよい。その際の条件としては、咬合床(102)と人工歯(103)の形状を確実に写し取る粘性と、義歯床を取り出す際に形状が復元する弾性が必要である。また、蝋材を溶解して除去する場合には、蝋材の融点よりも印象材の融点が高いことが必要である。
本工程により、上部の埋没用石膏(111)とシリコン印象材(109)、下部の埋没用石膏(106)に、咬合床模型(104)がサンドイッチ状に挟み込んで固定され、シリコン印象材(109)も上部の石膏(111)に密着して変位することがなくなる。
図3(a)はフラスコ開輪時の断面図、図6(a)は開輪時の下部フラスコの状態を示す説明図である。すなわち、シリコン印象材(109)は咬合床模型(104)からの剥離性が極めてよく、蝋材を簡単に除去することができる。(咬合床模型除去工程:S4)
従来のようにフラスコの開輪時に蝋材を軟化する必要がなく、石膏(111)が硬化したら直後にそのまま開輪することができる。その分、手間が省け短時間で迅速に作業を行うことができるようになる。
図6(c)は上記と同時の上部フラスコ(110)の状態を示す。上部フラスコ(110)内の3次埋没した石膏(111)と、シリコン印象材(109)は密着している。
上下のフラスコ(105)(106)を図示しないパラジェットシステムに装着し、管路(107)を下方、ベント(108)を斜め上方に向ける。このような向きにセットすることで、フラスコ基底からレジンを注入したときにフラスコ内の空気が抜けやすく、ベントからレジンが溢出したことで隅々まで填入されたことが目視できるようになる。
攪拌したレジンは、プラスチックシリンダー内に糸状に垂らして気泡を抜きながら移し、それを金属シリンダーにセットしてシステムに装着する。
極端な高圧ではないため、維持装置の移動が生じにくい。また、糸引き状後半期で填入することで、重合後の歪みを最小限に抑制することができる。
本発明の構成では、シリコン印象材(109)の周囲を石膏に3次埋没させている。このため、加圧して内圧を高く維持しても重合時に人工歯の変位が生じることがなく、精密重合システムの利点がそのまま反映される。
図3(c)はレジン(113)を填入した状態を示している。
常温重合レジンが最も重合収縮する初期重合時に加圧保持し、シリンダーよりレジンを補充することにより、重合収縮を最小限に抑えることができる。
さらに、図示しない重合釜(商品名パラマートエリート)を用いて55℃2気圧下で30分間の重合を行う。この重合釜を用いることで、レジン内部の温度分布を均一化することができ、歪みの起こりにくい重合を実現できる。重合完了後、室温まで放冷する。
そして、本発明によればシリコン印象材(109)を用いることで、レジンで構成した義歯床(113)と人工歯(103)からごく簡便に印象材を剥離することができる。(図4(d))
最後に口腔内模型(101)から義歯(14)を取り外す。(取り出し工程:S6)
一般的には取り出し後に義歯(14)を研磨して完成する。
また、総義歯に限らず、部分義歯の製造方法として提供することもできる。
義歯の材料はプラスチックの他、任意の材料を使用することができる。
S2 咬合床模型の上部を、粘弾性材料中に埋没させて咬合床模型を被覆する2次埋没工程
S3 粘弾性材料の上面側を、上部フラスコの埋没用石膏に埋没させる3次埋没工程
S4 咬合床模型だけを除去する咬合床模型除去工程
S5 咬合床模型が除去された空間にレジンを填入するレジン填入工程
S6 埋没用石膏を除去して義歯を取り出す取り出し工程
Claims (5)
- フラスコを用いた重合システムによる義歯の製造方法であって、
人工歯を配列した咬合床模型を上面に載置した口腔内模型の底面側を、下部フラスコの埋没用石膏に埋没させる1次埋没工程、
該咬合床模型の上部を、粘弾性材料中に埋没させて該咬合床模型を被覆する2次埋没工程、
該粘弾性材料の上面側を、上部フラスコの埋没用石膏に埋没させる3次埋没工程、
埋没用石膏及び粘弾性材料の硬化後に、該咬合床模型だけを除去する咬合床模型除去工程、
該咬合床模型が除去された空間にレジンを填入するレジン填入工程、
レジンの固化後に、該埋没用石膏を除去して義歯を取り出す取り出し工程
からなることを特徴とする義歯の製造方法。 - 前記咬合床模型を低温溶融性材料で構成すると共に、融点がそれよりも高い前記粘弾性材料を用いる構成において、前記咬合床模型除去工程では、該咬合床模型を融解して除去する
請求項1に記載の義歯の製造方法。 - 前記2次埋没工程において、
前記粘弾性材料の辺縁を厚みが漸次薄くなる移行部を設ける
請求項1又は2に記載の義歯の製造方法。 - 前記粘弾性材料が、シリコン印象材である
請求項1ないし3のいずれかに記載の義歯の製造方法。 - 前記レジンに常温重合レジンを用い、前記重合システムが、該レジンを加圧しながら填入する方式である
請求項1ないし4のいずれかに記載の義歯の製造方法。
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