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JP2017524448A - 歯科補綴物の製造方法 - Google Patents

歯科補綴物の製造方法 Download PDF

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JP2017524448A JP2017501042A JP2017501042A JP2017524448A JP 2017524448 A JP2017524448 A JP 2017524448A JP 2017501042 A JP2017501042 A JP 2017501042A JP 2017501042 A JP2017501042 A JP 2017501042A JP 2017524448 A JP2017524448 A JP 2017524448A
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Abstract

本発明は以下の時系列工程による歯科用補綴物の製造方法に関する。A)人工歯を義歯床(1)に挿入し結合する工程であって、義歯床(1)に挿入後、人工歯は義歯床(1)内で制限された可動性を有するように行われる工程。B)義歯床(1)内で少なくとも1つの人工歯の位置および/または向きを変更する工程。C)キーの歯冠側に人工歯を固定し、変更された位置および/または向きにおける人工歯の相互の向きおよび位置を確保する工程。D)人工歯を義歯床(1)から分離する工程。F)人工歯をセメントまたは接着剤で義歯床(1)に固定する工程であって、人工歯の固定用に提供される義歯床(1)と人工歯の表面(2)間のギャップがセメントまたは接着剤で充填される工程。G)セメントまたは接着剤を硬化させる工程であって、人工歯は義歯床(1)に固く結合されているので、人工歯の相互の向きおよび位置並びに人工歯の義歯床(1)に対する向きおよび位置が固定される工程、およびキーを人工歯から分離する工程。本発明は、斯かる方法を用いて製造される歯科用補綴物並びに斯かる方法を実行するためのキットにも関する。

Description

本発明は、義歯床および複数の人工歯から歯科補綴物を製造する方法に関する。更に本発明は、斯かる方法を用いて製造される歯科補綴物および斯かる方法を実施するためのキットにも関する。
歯科補綴物は一般的にアナログ方式を用いて製造される。すなわち義歯床は現在アナログ方式を用いて製造され、該アナログ方式では、歯の無い患者の顎の印象が通常まず製造される。印象は型を作製するのに使用され、型は歯茎色のプラスチックで充填される。プラスチックが硬化した後、それを望ましい形状に仕上げる。次に、人工歯が中空の型に挿入され、成形工程中に義歯床に結合される。
歯科補綴物を製造するため、歯の無い顎のギプス型上のワックス基剤に、人工歯が手で一つ一つ配置される。次の工程で、斯かるワックス補綴物はセルに置かれ、(後の処理技術次第であるが)ギプス、シリコーンまたはジェルに埋め込まれ、埋封材料が硬化した後ワックス基剤を熱水で洗い流すことにより、補綴物用のプラスチックのための中空空間が作製される。斯かる処理中、人工歯は埋封材料中に残ったままである。適切なプラスチックが中空空間内に注入され、または注がれ、プラスチックが硬化した後、歯科補綴物が得られる。人工歯が設置されると、歯科技師が、あるいは場合によっては歯科医も、各患者の口の状態に該人工歯を適合させ、研磨する。
(特許文献1)は歯科補綴物の製造方法を開示しており、この方法には、印象に基づいてプラスチック製ブロックから義歯床を切削加工する工程が含まれる。
歯科分野においては、手動による技術に加えてデジタル製造方法も益々重要になりつつある。ここ何年間か、歯冠やブリッジなどの置換歯が、CAD−CAM(CAM:コンピュータ支援製造、CAD:コンピュータ支援設計)技術を用いるサブトラクティブ切削加工法により製造されている。
加えて、SLM(選択的レーザー融解)等の創成法が歯冠、ブリッジおよび模型を製造するのに益々重要になりつつあり、並びに光造形法およびDLP(デジタル光処理法)がポリマー系の歯科製品、例えば暫定義歯、補綴物、矯正装置、マウスガード、ドリリングテンプレート、歯科用模型等用に益々重要になりつつある。現時点では、ラピッドプロトタイピング(RP)技術によるアクリル系義歯の製造には未だかなりの限界がある。複数色または複数のポリマー素材製の高品質な審美義歯は、複数の素材チャンバを用いる高価なRP機械によってのみ、あるいは精密なセメンティング/結合技術によってのみ、現時点では製造可能である。
同様に、RP技術による複合材料(例えばコバルト/クロムとポリマー)の製造は極めて高価であり、現時点では商業的に成り立たない。
第一の方法は既に存在しており、例えば、部分義歯および総義歯のデジタル設定およびCAD−CAM法による製造に関する(特許文献2または3)に開示された方法等がそれである。(特許文献4)は、歯が仮想模型により仮想的に設定され、義歯床が仮想模型に基づいて製造される、義歯の製造方法を開示している。
国際公開第91/07141号 独国特許出願公開第102009056752号明細書 国際公開第2013/124452号 独国特許発明第10304757号明細書
斯かる方法は、歯科医または歯科技師が義歯床の人工歯の位置および向きを僅かに矯正するのでさえ膨大な努力を払わなければならないという欠点を有している。斯かる位置や向きを調整には、人工歯の咬合面を機械加工する必要がある、あるいは人工歯を除去して義歯床を研磨、あるいは人工歯の基部面を研磨する必要がある。従って、本発明の目標は従来技術の欠点を乗り越えることである。特に本発明の目標は、歯科医またはユーザーが義歯床の人工歯の位置および向きを簡単に矯正できる方法、歯科用補綴物を患者のニーズに簡単に合わせられる方法を提供することである。加えて、義歯床の製造、従って歯科用補綴物の製造は、可能な限り簡単であり、完全であり、しかも経済的であるべきである。
本発明の目標は、以下の時系列工程に従って、義歯床と複数の人工歯から歯科用補綴物を製造する方法によっても達成される。
A)人工歯を義歯床に挿入し、それを義歯床に結合する工程であって、それは人工歯を義歯床に挿入後、人工歯が義歯床内で制限された可動性を有するように行われ、人工歯固定用に提供される義歯床の表面は人工歯の対応する基部面より大きいので、人工歯は義歯床内で制限された範囲で移動可能である工程と、
B)義歯床内で少なくとも1つの人工歯の位置および/または向きを変更する工程と、
C)キーの歯冠側に人工歯を固定し、変更された位置および/または向きにおける人工歯の相互の向きおよび位置を確保する工程と、
D)人工歯を義歯床から分離する工程と、
F)人工歯をセメントまたは接着剤で義歯床に固定する工程であって、人工歯の固定用に提供される義歯床と人工歯の表面間のギャップがセメントまたは接着剤で充填される工程と、
G)セメントまたは接着剤が硬化する工程、あるいは硬化しつつある工程であって、人工歯は義歯床に固く結合されているので、人工歯の相互の向きおよび位置並びに人工歯の義歯床に対する向きおよび位置が固定される工程、およびキーを人工歯から分離する工程。
本発明において、キーとは人工歯の相互の位置および向きを固定する素材または装置であり、その場合、義歯床内における位置および/または向きが変更された後も人工歯相互の位置および向きは変わらない。斯かる目的のため、シリコーン塊がキーとして使用できるのが好ましい。
歯冠(ラテン語の「冠」に由来)と言う用語は、歯の位置および方向に関する用語として歯の冠および歯の冠方向を意味し、咬合面および咬合面を取り囲む人工歯の周辺領域を含む。それとの関連において、制限された可動性とは、人工歯は義歯床内で移動できるがその移動は完全に自由なものではないことを意味する。挿入された人工歯は、人工歯固定用に提供される義歯床の表面において義歯床に対して角度を数度回転または傾斜できる、あるいは1mmの数十分の一変位できる。
セメントまたは接着剤は、十分長い間放置することにより硬化できる。硬化中、化学反応が生じ、それによりセメントまたは接着剤が硬化する。硬化は乾燥、例えば温度の上昇により積極的にサポート可能である。
人工歯および/または義歯床は、好ましくはプラスチック、特に好ましくはポリメチルメタクリレート(PMMA)から成る。
人工歯は個別であってもよいし、複数のグループに結合してもよいし、完全な歯列弓に結合してもよい。
本発明の方法においては、好ましくは、工程A)の前に、濃厚な液体、好ましくはワックスまたは模型用粘土が人工歯固定用に提供される義歯床表面および/または人工歯の基部面に適用され、工程A)で人工歯が挿入された後、それは人工歯と人工歯固定用に提供される義歯床表面の間に配置されるので、義歯床内の人工歯の位置および/または向きは、濃厚な液体、好ましくはワックスまたは模型用粘土を変形させることにより変更可能である。
濃厚な液体すなわちワックス、好ましくはスティッキーワックスまたは模型用粘土は、室温(またはそれよりも少し上)で十分柔軟なので人工歯の位置および向きを変更するのが可能であるが、それと同時に、義歯床内の人工歯の位置および向きがその重みで変更するようなものであってはならない。加えて、液体はある程度の粘着力を有しているのが好ましい。粘着力または粘着性は、人工歯が濃厚な液体から外れることができない程、人工歯を保持するのに十分なものでなければならない。
これを達成するには、該濃厚な液体は10Pa・sと10Pa・sの間の粘性を有しているのが好ましい。濃厚な液体、特にワックスまたは模型用粘土は、人工歯と義歯床の間に配置され、手で成形可能である。すなわち、これは、人工歯は義歯床内で移動可能であるが、他の力が加えられない限りその位置を保持できることを意味する。従って、歯科医またはユーザーは、義歯床内の人工歯の位置および向きを手で容易に変更できる。
この手段により、義歯床内の人工歯の位置決めおよび向きが特に簡単になる。
濃厚な液体、特にワックスまたは模型用粘土の使用後、すなわち義歯床内の人工歯の位置および/または向きが補正された後、義歯床からの人工歯の除去は、人工歯および義歯床からの残留物を残すことなく行える程、可能な限り容易であるべきである。
工程D)の後、工程F)の前に、濃厚な液体、好ましくはワックスまたは模型用粘土は、人工歯および/または人工歯固定用に提供される義歯床の表面から除去される、好ましくは熱水で洗い流される、あるいは蒸気で除去される。
濃厚な液体、好ましくはワックスまたは模型用粘土が義歯床全体および/または全人工歯から洗浄されるのが好ましい。
人工歯および/または義歯床の表面から濃厚な液体、好ましくはワックスまたは模型用粘土を洗浄することにより、その後の人工歯を義歯床に固定する最終工程において、安定した結合が達成できる。その結果、歯科用補綴物は長期間安定する。
本発明の更なる改良によれば、義歯床および/または人工歯はCAM法またはラピッドプロトタイピング処理により製造される、および/または切削加工される。
本発明は、ラピッドプロトタイピングに一般的に使用される製造方法で義歯床および/または人工歯を製造する製造方法に関して、ラピッドプロトタイピング処理という一般的に知られた用語を使用する。義歯床および/または人工歯はプロトタイプ(試作品)ではなくむしろ半完成構成要素であるので、斯かる関連性において時々使用される「ラピッドマニュファクチャリング」、「3D印刷」、「迅速な製品開発」、「最先端デジタルマニュファクチャリング」または「電子マニュファクチャリング」と言う用語も「ラピッドプロトタイピング」と言う用語の代わりに使用できる。義歯床はバラ色またはピンクのプラスチック製であり、人工歯は歯の色のプラスチック製であるのが好ましい。
義歯床および/または人工歯の製造または切削加工に関して、製造方法とCAMまたはRP処理と組み合わせは、人工歯固定用の義歯床の表面と人工歯の基部支持面との間の遊び、すなわち工程B)における義歯床内の人工歯の可動性に必要な遊びをCAD法の枠組み内の計算により即座に考慮に入れることができ、製造中にはCAM法またはRP処理によりそれを自動的に考慮に入れることができるという特徴を有している。
工程B)における、義歯床内の少なくとも1つの人工歯の位置および/または向きの変更は、患者への直接の適合により行われるのが好ましい。
すなわち、人工歯の位置および/またはアラインメントまたは向きの変更は、患者の口腔内の解剖学的状態に合わせて行われるべきであるのは明白である。
本発明の更なる改良によれば、工程D)と工程F)の間の工程E)において、人工歯の露出面の少なくともある領域は溶媒により膨潤され、および/または人工歯固定用に提供される義歯床の表面の少なくともある領域は溶媒により膨潤される。
その結果、人工歯と義歯床との間に特に安定した結合が達成される。膨潤により表面が液体または流体となるので、その後のセメンティング工程中に斯かる領域が再硬化され、その結果、補綴材料の厚みの増大を通して更に安定した結合が達成される。
本方法の特に好ましい更なる改良においては、工程E)において、人工歯の露出表面の少なくともある領域は溶媒で粗くされ膨潤し、および/または人工歯固定用に提供される義歯床の表面の少なくともある領域は溶媒で粗くされ膨潤する。
表面を追加的に粗くすることにより、あるいは僅かに粗くすることにより、表面は溶媒によりさらに迅速に溶媒化される。表面を粗くする、または僅かに粗くするのは、溶媒を用いて行える。加えて、セメントまたは接着剤による結合の有効表面が拡大するので、人工歯は義歯床に更に良好に保持されるようになり、その結果、歯科用補綴物の耐久性が改善される。更に、本発明の人工歯と義歯床は熱水または蒸気で洗浄できる。
人工歯固定用に提供される義歯床の表面は人工歯の対応する基部表面よりも大きい(すなわち、義歯床の表面に位置するはずの人工歯の対応する基部面よりも大きい)ので、人工歯は義歯床内で制限された可動性を有しており、従って本発明の方法の使用は特に有利である。人工歯は5度まで傾斜可能および/または回転可能、および/またはその位置は義歯床内で1mmまで変位可能であるのが好ましい。この場合、回転とは人工歯の長軸の周りの回転を意味し、傾斜とは長軸に垂直な軸の周りの回転を意味する。
その結果、人工歯が義歯床内で移動可能となるのに必要なギャップが生まれる。本発明によれば、そのギャップは、人工歯の位置および向きを安定化させるため、少なくともある領域を濃厚な液体、特にワックスまたは模型用粘土で充填されるのが好ましい。
更に、工程C)で使用されるキーはシリコーンキーである。
シリコーンキー例えばシリコーン塊は、人工歯を望ましい新しい位置に保持するのに適した機械的特性を有している。
本発明の方法によれば、過剰な量のセメントまたは接着剤が硬化後除去されるのが好ましい。
更なる改良は、セメントとして、自硬性のセメントペースト、好ましくは粉末と液体から作られるセメントペースト、特に好ましくはポリメチルメタクリレートのセメントドウの使用が提案される。
斯かる方法により、人工歯と義歯床との間に特に安定したしかも簡単な結合が達成できる。セメントは膨潤時間が短く泡を発生しないで硬化するのが特に好ましい。セメントは室温で、しかも圧力を加えずに硬化するのが好ましい。特に、Heraeus Kulzer GmbH社のセメントPaladur(登録)が好ましいことが証明されている。
義歯床内の人工歯の最終固定用セメントまたは接着剤は、非毒性、体積充填性、色安定性、配合耐久性、耐加水分解性、硬化の際の体積安定性を示すべきであり、長期間安定した適切な色を有しているべきである。Heraeus Kulzer GmbH社のPaladur(登録)等のPMMAセメントに加え、本目的に可能なセメントは、Heraeus Kulzer GmbH社のVersyo(登録)、Heraeus Kulzer GmbH社のSignum composit Flow(登録)、あるいはその他のPMMA系セメントである。
接着剤として、例えば、強力瞬間接着剤、または同様に義歯床と人工歯との間のギャップの体積を充填するのに適した接着剤が使用できる。
更に、本発明によれば、工程A)の前に、部分義歯または総義歯がCAD法を用いてデジタル的に設計され、ファイル分割により義歯床の仮想モデルおよび人工歯の仮想モデルに分解され、義歯床および/または人工歯は該仮想モデルに基づいてCAM法により製造される。
その結果、処理の自動化か可能となり、それはCAD−CAM法により達成できる。
メチルメタクリレート含有液が溶媒として使用されるのが好ましい。
あるいは、アセトン等のケトンまたはアルコールを溶媒として使用するのも可能である。しかし、PMMA製の人工歯および義歯床内のPMMAを膨潤させるには、メチルメタクリレート含有液が実質的に更に適している。
斯かる溶媒は、義歯床および人工歯の製造に使用するのが特に好ましい材料を膨潤させるのに特に適している。
本発明の目標は、斯かる方法により製造される歯科用補綴物によっても達成される。
更に、本発明の目標は、斯かる方法を実行するためのキットによっても達成され、該キットは、義歯床内で向きしている人工歯を固定するためのキーと、人工歯および/または義歯床を膨潤させるための溶媒、好ましくはMMP含有液とを含む。
キットは、義歯床内の人工歯に可動配置を提供する濃厚な液体、特にワックスまたは模型用粘土を含む。
更に、キットは、義歯床に人工歯を固定するためのセメントまたは接着剤を含む。
更に、最後に、キットは、複数のプレハブ式の人工歯および/または少なくとも1つの義歯床半製品を含む。
人工歯はグループの形態でもよいし、相互に固く連結している完全な補綴物歯列弓であってもよい。後者の場合、補綴物歯列弓の位置および向きは義歯床に対してのみ調整可能、あるいは補綴物歯列弓間で相互に調整可能であるにすぎない。
本発明は、本方法が人工歯の位置および向きを僅かに変更可能とし、しかも歯科用補綴物の製造の最終工程を簡略化し得るという驚くべき発見に基づいている。これを実現する決定的な工程はキーの使用である。キーは人工歯または人工歯のグループの向きおよび位置を相互に固定できるので、後にそれを義歯床に挿入する際に、その前に補正された人工歯あるいは人工歯のグループの望ましい相互の向きおよび位置が保存される。本方法を実行するにあたり、義歯床に人工歯を固定する際の表面間のギャップが遊びとして提供されること、並びに人工歯を一時的に安定な状態で自由に義歯床に位置決めするため、上記ギャップに濃厚な液体を充填することが重要であり特に有利である。
人工歯の表面および/または人工歯固定用に提供される義歯床の表面の膨潤により、人工歯と義歯床との間に特に安定した結合が達成できる。人工歯および/または義歯床は、メチルメタクリレート(MMA)またはMMAを含む溶液で膨潤させるのが好ましい。人工歯は架橋度の高いPMMAから成っているのが好ましい。PMMA材料の溶媒化においては、MMAがPMMAを溶媒化しそれに貫通することにより、材料が柔軟となる。その結果、好ましい例としてPMMAセメントまたは接着剤を用いて人工歯と義歯床の最終結合を行う際に、その結合を安定化させる溶媒和層が生まれる。本発明によれば、その結果、人工歯と義歯床との間に特に安定した結合が達成される。
本発明の例示的実施形態を以下に2つの概略図を基に説明するが、本発明が斯かる実施形態により制限されることはない。図面は以下の通りである。
図1は、本発明の方法を実行するための、下顎用の義歯床の斜視図である。 図2は、本発明の方法を実行するための、図1の義歯床に挿入される人工歯の斜視図である。
図1は、本発明の方法を実行するための、下顎用の義歯床1の斜視図を示す。義歯床はバラ色のプラスチックから成っている。歯茎の様相を与えるため、色および透明性が適切に選択される。義歯床1の上部には、人工歯(図1には図示しない)固定用の複数の表面2が存在する。
図2は、本発明の方法を実行するための、図1の義歯床1に挿入される人工歯4の斜視図を示す。特に、図2に示すように、人工歯4は互いに離れており、相互連結していないのが好ましい。しかし、相互に連結している人工歯4の歯列弓(すなわち歯列弓またはそのグループの全てが相互連結している)を用いて、本方法を実行してもよい。
人工歯4は、患者の歯に適した、またはマッチした色および透明性を有する硬い白色プラスチックから成っている。人工歯4はいずれも歯冠面6(咀嚼面)と基部面8を有している。基部面8は人工歯4固定用の義歯床1の表面2に固定される。表面2はインデキシングを有しているので、人工歯4は義歯床内の特定の1つの向きにしか挿入できないし、各人工歯4は1つの表面2にしか適合しない。
表面2は、人工歯4の基部側8の基部対応部よりも多少大き目である。人工歯41を義歯床1の表面2に挿入する前に、規定の薄いワックス層(図示しない)が人工歯4の基部側8および/または人工歯4固定用の義歯床1の表面2に適用される。人工歯の挿入後、該ワックス層が義歯床1と人工歯4の間に配置される。その結果、挿入された人工歯4は義歯床1内で僅かに移動可能となり、従って、歯科医またはユーザーは、義歯床1内の人工歯4の位置および向きを最小限補正できるようになる。その結果、製造された歯科用補綴物を使用する患者のニーズに、義歯床1内の人工歯4の位置および向きを合わせることができる。人工歯4の向きおよび位置付けに必要なデータは、患者から直接取得される、あるいはCAD法および/または写真(3D走査)の助けを得て、あるいは咬合器および印象の助けを得て取得される。最も簡単な可能性は、挿入された人工歯4を有する義歯床1を患者の口腔内に挿入し、位置合わせをすることである。
義歯床1内の人工歯4の位置および向きを適合させた後、人工歯4をシリコーン塊に埋め込むことにより、人工歯4をシリコーンキー(図示しない)で固定する。向きや位置が変更するような機械的応力を人工歯4に加えてはならない。次に、人工歯4を義歯床1から除去する。
人工歯4と義歯床1からワックス層を除去する。これは、例えば、熱水または蒸気で洗い流すことにより達成できる。人工歯4の基部側8を(例えば、サンドジェットを用いて機械的に、あるいは適切な溶媒を用いて化学的に)粗くし、メチルメタクリレート(MMA)を含む液体で膨潤させる。同様に、人工歯4固定用の義歯床1の表面2も粗くし、MMA含有液で膨潤させる。使用可能なMMA含有液は、例えば、Heraeus Kulzer GmbH社のPalabond(登録)である。
上記の方法で結合表面を事前に準備した後、シリコーンキーに固定したままの状態で、最終的に人工歯4を義歯床1内にセメンティングする。セメンティングは過剰量のセメントを用いて行われるので、人工歯4固定用の義歯床1の表面2と人工歯4との間にある、以前ワックスで充填されていたギャップがセメントで充填されるが、基部の中空空間にはギャップは残らないし、製造された歯科用補綴物の歯の歯肉/首部領域にも末端ギャップは残らない。加えて、過剰な量は接触表面を最適に湿らせる。押し出された過剰なセメントペーストの残留物は、硬化前および/または硬化後に除去できる。
人工歯4を義歯床1に最終セメンティングするには、自硬性粉末/液体系のセメントが使用される。光は人工歯4と義歯床1の間のギャップの末端領域にしか貫通しないので、光硬化セメントまたは接着剤は通常は十分な接着力を示さない。
室温で硬化する粉末/液体系の補綴材料、例えばHeraeus Kulzer GmbH社のPaladur(登録)は、膨潤が迅速であり、しかもオートクレーブを使用しなくても(すなわち過剰な圧力なしに)室温で発泡せずに硬化するので、特に適している。
しかし、他の硬化用組み合わせ、例えば二重硬化セメント等も考え得る。この場合、光で歯を短期間固定しておき、酸化還元反応により最終硬化を行う。
本発明の方法は、手動またはラピッドプロトタイピング法で製造される義歯床1を用いて実行できる。同様に、本方法は、印刷人工歯または補綴物歯列弓にも適用できる。
上述の説明、特許請求項の範囲、図面および例示的実施形態で開示した本発明の特徴は、種々の実施形態で本発明を実現するにあたり、個別的特徴または特徴のあらゆる組み合わせにおいて非常に重要であり得る。
1 義歯床
2 人工歯固定用の表面
4 人工歯
6 人工歯の歯冠面
8 人工歯の基底面

Claims (17)

  1. 義歯床(1)と複数の人工歯(4)から歯科用補綴物を製造する方法であって、以下の時系列工程、すなわち、
    A)前記人工歯(4)を前記義歯床(1)に挿入し、それを前記義歯床(1)に結合する工程であって、それは前記人工歯(4)を前記義歯床(1)に挿入後、前記人工歯(4)が前記義歯床(1)内で制限された可動性を有するように行われ、前記人工歯(4)固定用に提供される前記義歯床(1)の表面(2)は前記人工歯(4)の対応する基部面(8)より大きいので、前記人工歯(4)は前記義歯床(1)内で制限された範囲で移動可能である工程と、
    B)前記義歯床(1)内で少なくとも1つの前記人工歯(4)の位置および/または向きを変更する工程と、
    C)キーの歯冠側(6)に前記人工歯(4)を固定し、前記変更された位置および/または向きにおける前記人工歯(4)の相互の向きおよび位置を確保する工程と、
    D)前記人工歯(4)を前記義歯床(1)から分離する工程と、
    F)前記人工歯(4)をセメントまたは接着剤で前記義歯床(1)に固定する工程であって、前記人工歯(4)の固定用に提供される前記義歯床(1)と前記人工歯(4)の表面(2)間のギャップが前記セメントまたは接着剤で充填される工程と、
    G)前記セメントまたは接着剤を硬化させる工程であって、前記人工歯(4)は前記義歯床(1)に固く結合されているので、前記人工歯(4)の相互の向きおよび位置並びに前記人工歯(4)の前記義歯床(1)に対する向きおよび位置が固定される工程、およびキーを前記人工歯(4)から分離する工程と、を備える方法。
  2. 請求項1記載の方法において、工程A)の前に、濃厚な液体、好ましくはワックスまたは模型用粘土が前記人工歯(4)固定用に提供される前記義歯床表面(2)および/または人工歯(4)の基部面に適用され、工程A)で前記人工歯(4)が挿入された後、それは前記人工歯(4)と人工歯(4)固定用に提供される前記義歯床の表面(2)の間に配置されるので、前記義歯床(1)内の前記人工歯(4)の位置および/または向きは、前記濃厚な液体、好ましくはワックスまたは模型用粘土を変形させることにより変更可能である方法。
  3. 請求項2記載の方法において、工程D)の後、工程F)の前に、前記濃厚な液体、好ましくはワックスまたは模型用粘土は、前記人工歯(4)および/または前記人工歯(4)固定用に提供される前記義歯床(1)の表面(2)から除去される、好ましくは熱水で洗い流される、あるいは蒸気で除去される方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項記載の方法において、前記義歯床(1)および/または前記人工歯(4)はCAM法またはラピッドプロトタイピング処理により製造される、および/または切削加工される方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項記載の方法において、工程B)における、前記義歯床(1)内の少なくとも1つの人工歯(4)の位置および/または向きの前記変更は、患者への直接の適合により行われる方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項記載の方法において、工程D)と工程F)の間の工程E)において、前記人工歯(4)の露出面の少なくともある領域は溶媒により膨潤され、および/または前記人工歯(4)固定用に提供される前記義歯床(1)の表面(2)の少なくともある領域は溶媒により膨潤される方法。
  7. 請求項6記載の方法において、工程E)において、前記人工歯(4)の露出表面の少なくともある領域は溶媒で粗くされ膨潤し、および/または前記人工歯(4)固定用に提供される前記義歯床(1)の表面(2)の少なくともある領域は溶媒で粗くされ膨潤する方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項記載の方法において、前記人工歯(4)固定用に提供される前記義歯床(1)の表面(2)は前記人工歯(4)の対応する基部表面(8)よりも大きいので、前記人工歯(4)は5度まで傾斜可能および/または回転可能、および/またはその位置は前記義歯床(1)内で1mmまで変位可能である方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項記載の方法において、工程C)で使用される前記キーはシリコーンキーである方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項記載の方法において、セメントとして、自硬性のセメントペースト、好ましくは粉末と液体から作られるセメントペースト、特に好ましくはポリメチルメタクリレートのセメントドウが使用される方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項記載の方法において、工程A)の前に、部分義歯または総義歯がCAD法を用いてデジタル的に設計され、ファイル分割により前記義歯床(1)の仮想モデルおよび前記人工歯(4)の仮想モデルに分解され、前記義歯床(1)および/または前記人工歯(4)は前記仮想モデルに基づいてCAM法により製造される方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項記載の方法において、メチルメタクリレート含有液が溶媒として使用される方法。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項記載の方法により製造される歯科用補綴物(1)。
  14. 請求項1〜12のいずれか一項記載の方法を実行するためのキットであって、義歯床(1)内で向きしている前記人工歯(4)を固定するためのキーと、前記人工歯(4)および/または前記義歯床(1)を膨潤させるための溶媒、好ましくはMMP含有液とを備えるキット。
  15. 請求項14記載のキットにおいて、前記義歯床(1)内の前記人工歯(4)に可動配置を提供する、濃厚な液体、特にワックスまたは模型用粘土を有するキット。
  16. 請求項14または15記載のキットにおいて、前記義歯床(1)に前記人工歯(4)を固定するためのセメントまたは接着剤を有するキット。
  17. 請求項14〜16のいずれか一項記載のキットにおいて、複数のプレハブ式の人工歯(4)および/または少なくとも1つの義歯床(1)または少なくとも1つの義歯床半製品を有するキット。
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