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JP5136004B2 - 電解二酸化マンガン及びその製造方法並びにその用途 - Google Patents

電解二酸化マンガン及びその製造方法並びにその用途 Download PDF

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Description

本発明は、マンガン乾電池、特にアルカリマンガン乾電池において、正極活物質として使用される電解二酸化マンガン及びその製造方法並びにその用途に関する。
二酸化マンガンは、マンガン乾電池またはアルカリマンガン乾電池の正極活物質として知られており、保存性に優れ、且つ安価であるという利点を有する。特に、二酸化マンガンを正極活物質として用いるアルカリマンガン乾電池は、重負荷での放電特性に優れていることから電子カメラ、携帯用テープレコーダー、携帯情報機器、さらにはゲーム機や玩具にまで幅広く使用され、近年急速にその需要が伸びてきている。
しかし、アルカリマンガン乾電池は、放電電流が大きくなるに従い正極活物質である二酸化マンガンの利用率が低下し、また放電電圧が低下した状態では使用できないため、実質的な放電容量が大きく損なわれるという課題があった。すなわち、大電流を使用(ハイレート放電)する機器にアルカリマンガン乾電池を用いると、充填されている正極活物質である二酸化マンガンが十分に活用されず、使用可能な時間が短いという欠点を有していた。
そこで短時間に大電流を取り出すハイレート間欠放電条件においても、高容量、長寿命の優れた二酸化マンガン、所謂ハイレート特性に優れた二酸化マンガンが望まれている。
ハイレート特性が要求される用途では、電池が放電される際の電圧を高くするために、40%KOH水溶液中で水銀/酸化水銀参照電極を基準として測定したときの電位(以下、アルカリ電位)が高い電解二酸化マンガンを正極活物質として用いることが有効である。
また、アルカリマンガン電池における電解二酸化マンガンの放電は、水(HO)からプロトン(H)を得る(1)式によって進行することが知られている。
MnO+HO+e → MnOOH + OH (1)
特にハイレート放電では、電解二酸化マンガン中のHの速やかな拡散が必要であり、そのため、構造中に多くのHを有することが有効である。電解二酸化マンガン中のHは水酸基(−OH)や結晶水(HO)の形で構造内に存在しており、この様な水酸基や結晶水(付着水は除く)の中で一定の加熱条件で脱離する水分(HO)は構造水と呼ばれている。
従来、アルカリ電位の高い電解二酸化マンガンを得る方法として、電解二酸化マンガンを硫酸溶液で処理する方法が報告されている(特許文献1)。しかし、従来の硫酸処理で得られた二酸化マンガンはアルカリ電位が充分に高いものではなかった。
また、ハイレート特性に優れた電解二酸化マンガンとして、電位が250mV以上で、構造中のHがMnとのモル比で0.30以上0.40以下の組成を有する電解二酸化マンガンで、電解二酸化マンガン中のマンガンに対する構造水のモル比で表すと0.15以上0.20以下のものが知られている。(特許文献2)。しかし、その様な方法で得られた電解二酸化マンガンのアルカリ電位は300mV以下であり、ハイレート特性を充たすものではなかった。
さらに、放電特性の優れる電解二酸化マンガンとして、(110)/(021)のピーク強度比が0.50より大きく0.70未満であり、かつ(221)/(021)のピーク強度比が0.70未満である電解二酸化マンガンが報告されている(特許文献3)。しかし、そこに開示されている二酸化マンガンの放電特性は、30mAの低い負荷時の放電容量では効果が見られたが、500mAの定電流放電に至っては従来品とほとんど変わらない特性を示すものであった。
特開昭63−21224号 特開2006−108083 特開2007−141643
本発明の目的は、特にハイレート特性に優れるアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用される二酸化マンガンを提供するものである。
本発明は、特にアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用される二酸化マンガンについて鋭意検討を重ねた結果、構造水の含有モル比(HO/MnO)が0.20以上、なおかつX線回折(CuKα線光源)の(110)/(021)のピーク強度比が0.50以上0.80以下である二酸化マンガンでは、アルカリ電位が350mV以上400mV以下を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の二酸化マンガンは、アルカリ電位が350mV以上400mV以下、構造水の含有モル比(HO/MnO)が0.20以上、なおかつX線回折(CuKα線光源)の(110)/(021)のピーク強度比が0.50以上0.80以下である。
アルカリ電位が350mV以上であると、アルカリマンガン乾電池の正極材料に用いた場合、電池の開回路電圧が上昇し、使用可能な放電電圧下限までの放電時間を長くすることができる。しかし、アルカリ電位が400mVを超えると安定性が低下する。
本発明の二酸化マンガンの構造水量はマンガンに対するモル比で0.20より大きいものである。構造水量が0.20以下であると充分なハイレート特性を発揮できない。
本発明における構造水とは、熱重量分析における110℃〜320℃でのHO脱離量で定量されるものをさす。熱重量分析の温度範囲を110℃以上とすることにより低い温度で脱離する物理吸着のHO(付着水)を除外し、上限を320℃とすることでMnOが還元されて放出されるOとも区別される。
構造水のモル比の上限は特に制限はないが、0.20を超え0.22までで十分なハイレート特性が得られる。
本発明の二酸化マンガンはCuKα線を光源とするXRD測定におけるX線回折の(110)/(021)のピーク強度比が0.50以上0.80以下である。さらに0.64以上0.78以下であることが好ましい。
本発明の二酸化マンガンは、さらにX線回折(CuKα線光源)の(221)/(021)のピーク強度比が0.65以上、特に0.70を超え、さらに0.9以上であることが好ましい。(221)/(021)のピーク強度比の上限は特に制限はないが、1.0を超え1.2までで高いハイレート特性が得られる。
本発明の二酸化マンガンは、X線回折(CuKα線光源)の(110)面の半価全幅(FWHM)が2.2°以上3.0°以下、さらに2.2°以上2.9°以下であることが好ましい。
本発明の二酸化マンガンが(110)/(021)のピーク強度比、(221)/(021)のピーク強度比、及び(110)面の半価全幅(FWHM)が上記範囲でハイレート特性が優れる理由については明確ではないが、例えばその様な特定の結晶状態において構造水に起因するHの拡散が有利な状態になることが考えられる。
次に本発明の二酸化マンガンの製造法について説明する。
本発明では、電解終了時の電解液中の硫酸濃度が、電解開始時の電解液中の硫酸濃度より高い濃度の硫酸マンガン浴で電解析出した電解二酸化マンガンを、さらに2モル/L以上15モル/L以下の硫酸で処理することにより製造することができる。
電解終了時の電解液中の硫酸濃度が、電解開始時の電解液中の硫酸濃度より高い濃度で製造した場合、硫酸濃度が低濃度で一定の電解法により合成した電解二酸化マンガンよりもアルカリ電位の高い電解二酸化マンガンが得られるが、それだけでは350mV以上のアルカリ電位を安定的に得ることが困難である。また従来の電解法により合成した電解二酸化マンガンを硫酸処理した場合、原料とする電解二酸化マンガンの特性が不十分なため、本発明の特徴を満足する電解二酸化マンガンは得られない。本発明では、電解開始時の電解液中の硫酸濃度より高い濃度の硫酸マンガン浴で電解析出する条件で得られた電解二酸化マンガンをさらに2モル/L以上15モル/L以下の硫酸溶液で処理することにより、350mV以上の高いアルカリ電位で、従来にないハイレート特性を発揮する電解二酸化マンガンを安定的に製造することができる。
本発明の方法における電解液中の硫酸濃度は、電解開始時に25〜40g/L、後半、硫酸濃度を高くし、電解終了時に40g/Lを越えて75g/Lまでとすることが好ましい。電解開始時の電解液中の硫酸濃度は、29〜40g/L、後半、電解終了時に44〜75g/Lとすることがさらに好ましい。
本発明における硫酸濃度は、硫酸マンガンの塩に対応する二価の対陰イオンに相当する濃度は含まれないものである。
本発明における電解液中のマンガン濃度は特に限定はないが、例えば40〜60g/Lが例示できる。また、電解の温度には特に限定はなく、例えば温度は94〜98℃の範囲が適用できる。また、電流密度としては、例えば0.4〜0.6A/dmが適用できる。また、前期の電解と後半の電解の比率に制限はないが、例えば低硫酸濃度と高硫酸濃度での電解時間の比で1:9〜9:1、特に3:7〜8:2の範囲が好ましい。
硫酸処理の方法は、硫酸溶液に電解二酸化マンガンを所定量添加し、撹拌、ろ過、水洗することにより行なうことができる。電解二酸化マンガンの形態は粉体または塊状、何れの形態でも良く、特に粉末の状態で処理を行なうことが好ましい。また、電解二酸化マンガンに対する硫酸溶液の量は、経済性および操作性の観点から、電解二酸化マンガン1kgに対して2L〜10Lの範囲で行なうのが好ましい。また、撹拌時間および温度は操作性および経済性の観点から、10分〜12時間、温度は室温〜60℃の範囲で行なうことができ、特に1時間〜6時間で20℃〜40℃の範囲で行なうことが好ましい。
本発明の電解二酸化マンガンは、特にアルカリマンガン乾電池の正極活物質として使用することができる。アルカリマンガン電池の正極活物質として使用する方法には特に制限はなく、周知の方法で添加物と混合して用いることができる。例えば、電解二酸化マンガンに導電性を付与するためにカーボン等を加えた混合粉末を調製し、これを円盤状またはリング状に加圧成型した粉末成型体として電池正極とすることができる。
また、本発明の電池用正極活物質は、電解二酸化マンガンに対してオキシ水酸化ニッケルを0.1wt%以上含有して使用することが好ましい。オキシ水酸化ニッケルを含有することにより、電解二酸化マンガンの安定性が向上し、アルカリ乾電池の電解液である水酸化カリウム水溶液中で、電解二酸化マンガンの安定性が向上する。また、オキシ水酸化ニッケルの添加量は、経済性および電解二酸化マンガンの電池特性を損なわないために、10wt%以下とすることが好ましい。
本発明の二酸化マンガンを正極材料として用いることにより、特にハイレート放電特性に優れた性能を有するアルカリ電池を提供することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(アルカリ電位の測定)
電解二酸化マンガンのアルカリ電位は、40%KOH水溶液中で測定した。
電解二酸化マンガン3gに導電剤としてカーボンを0.9g加えて混合粉体とし、この混合粉体に40%KOH水溶液4mlを加え、電解二酸化マンガンとカーボンとKOH水溶液の混合物スラリーとした。この混合物スラリーの電位を水銀/酸化水銀参照電極を基準として電解二酸化マンガンのアルカリ電位を測定した。
(構造水量の測定)
電解二酸化マンガンの構造水量は、熱重量分析装置(セイコーインスツルメンツ社製TG/DTA6300)により測定した。
電解二酸化マンガンを熱重量分析装置内において窒素流通下、110℃まで昇温して16時間保持することで吸着水を除去した。次に240℃まで昇温し12時間保持、さらに320℃まで昇温し12時間保持し、110℃〜320℃までの重量減少を構造水の含有量とした。
測定における昇温速度は10℃/分とした。240℃から320℃までの脱離物がHOであることは、脱離物の質量分析により確認した。また、サンプルに含まれるマンガン量は、試料を溶解処理して電位差滴定法により求めた。これにより、電解二酸化マンガン中のマンガンに対する構造水のモル比を求めた。
(XRD測定)
電解二酸化マンガンのXRD測定は、X線回折装置(マックサイエンス社製MXP−3)により測定した。
X線源にはCuKα線を用い、測定モードはステップスキャン、スキャン条件は0.04°/秒、計測時間は3秒、および測定範囲は2θとして5°〜80°の範囲で測定した。
(単三電池によるハイレート特性評価)
電解二酸化マンガン85.8%、グラファイト7.3%及び40%水酸化カリウム電解液6.9%で構成される混合粉5gを2トンの成形圧でリング状に成形した成形体3個を組み合わせて正極とし、亜鉛を含む負極材を負極にして、単三型の電池を構成した。当該単三型電池を常温で24時間放放置後、放電試験を行った。放電条件は1000mAで10秒放電の後50秒休止するサイクルを1パルスとして行い、終止電圧0.9Vに達するまでの放電時間を測定した。
ハイレート特性は、従来品(比較例4)を100%とし、それに対する相対放電時間を%で表した。
実施例1
電流密度を0.5A/dm、電解温度を96℃、硫酸マンガンのマンガン濃度を50.0g/Lとし、電解初期と電解後半の硫酸濃度を29.2g/L、74.8g/Lとし、前半濃度で13日間、後半濃度で3日間、合計16日間電解を行った。得られた電解二酸化マンガン100gを5モル/Lの硫酸水溶液200mLに浸漬し、25℃で4時間撹拌した後、ろ過、水洗、乾燥を行い、二酸化マンガンを得た。
得られた二酸化マンガンの物性を表1に示した。
実施例2
10モル/Lの硫酸水溶液で硫酸処理を行なったこと以外は、実施例1と同様の条件で合成を行った。結果を表1に示した。
実施例3
電流密度を0.5A/dm、電解温度を96℃、硫酸マンガンのマンガン濃度を40.0g/Lとし、電解初期と電解後半の硫酸濃度を33.0g/L、65.0g/Lとし、前半濃度で12日間、後半濃度で5日間、合計17日間電解を行った。
得られた電解二酸化マンガン100gを7モル/Lの硫酸水溶液200mLに浸漬し、25℃で4時間撹拌した後、ろ過、水洗、乾燥を行い、二酸化マンガンを得た。
結果を表1に示した。
比較例1
硫酸処理を行なわなかったこと以外は、実施例1と同様の条件で合成を行った。
結果を表1に示した。
比較例2
1モル/Lの硫酸水溶液で硫酸処理を行なったこと以外は、実施例1と同様の条件で合成を行った。
比較例3
硫酸処理を行なわなかったこと以外は、実施例3と同様の条件で合成を行った。
比較例4
電流密度を0.5A/dm、電解温度を96℃、硫酸マンガンのマンガン濃度を47.0g/Lとし、硫酸濃度を39.0g/Lに調整し、電解期間を通して硫酸濃度を一定にして17日間電解を行った。
比較例5
比較例4で得られた電解二酸化マンガン100gを10モル/Lの硫酸水溶液200mLに浸漬し、25℃で4時間撹拌した後、ろ過、水洗、乾燥を行った。結果を表1に示した。
アルカリ電位は高いものが得られたが、二酸化マンガンの結晶性が異なり、ハイレート特性の向上は十分ではなかった。
比較例6
電流密度を0.6A/dm、電解温度を98℃、硫酸マンガンのマンガン濃度を50.0g/Lとし、硫酸濃度を32.0g/Lとし、15日間電解を行った。結果を表1に示した。
比較例7
比較例6で得られた電解二酸化マンガンの粉末100gを10モル/Lの硫酸水溶液200mLに浸漬し、25℃で4時間撹拌した後、ろ過、水洗、乾燥を行った。結果を表1に示した。
ハイレート特性評価
実施例1〜3、比較例1〜7で得られた電解二酸化マンガンを用いて、単三型の電池を組み立て、ハイレート特性評価を行なった。その結果を、比較例4の放電時間を100%として表1に示した。
正極合材の安定性評価
実施例1の電解二酸化マンガンにオキシ水酸化ニッケルを0wt%、1wt%、5wt%添加した。この粉末を85.8%、グラファイト7.3%、40%水酸化カリウム電解液6.9%で構成される正極合材粉末とし、この正極合材粉末6gを40%水酸化カリウム電解液20mlに投入し、60℃で3日間保存した後、電解液中に溶出したMn量を測定した。
結果を表2に示した。
Figure 0005136004
Figure 0005136004

Claims (8)

  1. アルカリ電位が350mV以上400mV以下、構造水の含有モル比(HO/MnO)が0.20以上、なおかつX線回折(CuKα線光源)の(110)/(021)のピーク強度比が0.50以上0.80以下である電解二酸化マンガン。
  2. X線回折(CuKα線光源)の(221)/(021)のピーク強度比が0.65以上であることを特徴とする請求項1に記載の二酸化マンガン。
  3. X線回折(CuKα線光源)の(110)面の半価全幅(FWHM)が2.2°以上3.0°以下である請求項1〜2に記載の二酸化マンガン。
  4. 電解終了時の電解液中の硫酸濃度が、電解開始時の電解液中の硫酸濃度より高い濃度の硫酸−硫酸マンガン浴で電解析出した電解二酸化マンガンを、2モル/L以上15モル/L以下の硫酸で処理することを特徴とする請求項1〜3に記載の電解二酸化マンガンの製造方法。
  5. 電解開始時の硫酸濃度が25〜40g/L、電解終了時の硫酸濃度が40g/Lを越えて75g/L以下であることを特徴とする請求項4に記載の電解二酸化マンガンの製造方法。
  6. 請求項1〜3に記載の電解二酸化マンガンを含んで成る電池用正極活物質。
  7. 0.1wt%以上10wt%以下のオキシ水酸化ニッケルをさらに含んで成る請求項6記載の電池用正極用活物質。
  8. 請求項6〜7に記載の電池用正極活物質を含んで成る電池。
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