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JP5130094B2 - 圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置 - Google Patents

圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置 Download PDF

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JP5130094B2 JP2008091324A JP2008091324A JP5130094B2 JP 5130094 B2 JP5130094 B2 JP 5130094B2 JP 2008091324 A JP2008091324 A JP 2008091324A JP 2008091324 A JP2008091324 A JP 2008091324A JP 5130094 B2 JP5130094 B2 JP 5130094B2
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Description

本発明は、内部に封入された流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に係り、特に、圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置に関するものである。
従来から、振動伝達系を構成する部材間には防振支持装置や防振連結装置が配設されている。例えば、自動車のパワーユニットは、車両ボデーに対して複数の防振装置としてのエンジンマウントによって防振支持されている。
ところで、自動車用エンジンマウントでは、乗り心地の向上のために高度な防振性能が要求される。かかる要求に対応するために、非圧縮性流体の共振作用等の流動作用を利用した流体封入式防振装置が提案されている。この流体封入式防振装置は、良く知られているように、振動が入力される受圧室と容積可変の平衡室をオリフィス通路で連通せしめて非圧縮性流体を封入した構造とされており、振動入力時にオリフィス通路を流動せしめられる非圧縮性流体の共振作用等に基づいて防振効果を得るようになっている。
また、自動車用エンジンマウントにおいては、エンジン回転数や車両走行状態等に応じて異なる周波数や振幅等の複数種類の振動に対して防振性能が要求される。しかし、オリフィス通路は、チューニング周波数域を超えた高周波数域では、反共振作用によって著しい高動ばね化を惹起せしめて、防振性能が大幅に低下する。
そこで、従来では、特許文献1(特開2005−172173号公報)等に記載されているように、互いに異なるチューニングが施された複数のオリフィス通路を設けると共に、外部アクチュエータで切換作動せしめられる弁体を用いて、それら複数のオリフィス通路を選択的に遮断/連通させるようにした外部制御型の流体封入式マウントが提案されている。
しかし、弁体を切換作動させるためのアクチュエータが必要となると共に、切換制御信号を生成する制御装置も必要となることから、構造が複雑でマウント自体も大型化して高コスト化も避けられず、採用し難いという問題がある。
かかる問題に鑑み、特許文献2(再公表特許公報WO2004−081408号公報)には、振動入力に際して受圧室に惹起される圧力変動を利用して、この受圧室圧力を蓄える圧力室を形成すると共に、かかる圧力室に蓄えた圧力でオリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換える切換弁を作動させるようにした圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置が提案されている。この特許文献2に開示された構造によれば、外部から電力や負圧等のエネルギー供給を必要とすることなく、入力振動に応じてオリフィス通路を選択的に機能させることが可能となる。
ところが、本発明者が検討したところ、かかる特許文献2に開示された従来構造の圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置では、大きな衝撃などの大振幅振動が入力された際に、異音や振動が発生し易いという問題を内在していることが明らかとなった。
かかる問題について更なる実験及び検討を行ったところ、振動入力時において受圧室から圧力室に正圧が及ぼされることから、受圧室の圧力がその分だけ低下して、受圧室に負圧が発生し易いこととなり、これが原因となって、大振幅振動が入力する際に受圧室にキャビテーションが発生し、かかるキャビテーションに起因する異音や振動が発生し易いであろうとの、新たな知見を得るに至った。
特開2005−172173号公報 再公表特許公報WO2004−081408号公報
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、大振幅振動の入力時に問題となり易い異音の発生や防振性能の低下を低減乃至は回避せしめ得る、新規な構造の圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明は、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、本体ゴム弾性体によって壁部の一部が構成されて振動入力時に圧力変動が惹起される受圧室と、可撓性膜によって壁部の一部が構成されて容積変化が許容される平衡室とを設けて、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を接続せしめて流体流動を許容するオリフィス通路を形成する一方、受圧室に対して圧力伝達通路を通じて連通された圧力室を設けると共に、圧力伝達通路を通じての受圧室から圧力室への流体流動を許容するが逆向きの流体流動を阻止する逆止弁を配設し、圧力室に及ぼされる圧力を利用してオリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換える通路開閉部材を変位させることによりオリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換えるようにした圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置において、圧力室と受圧室を連通させる圧力開放孔を形成して、圧力開放孔を開閉する開閉弁を設けると共に、開閉弁を付勢して閉状態に保持せしめる付勢手段を設け、更に、第一の取付部材と第二の取付部材との間への振動入力時に受圧室に惹起される圧力室に対する相対的な負圧の作用に基づいて開閉弁を付勢手段による付勢力に抗して開作動せしめる圧力室の圧力開放機構を設けたことを、特徴とする。
このような本発明に従う構造とされた圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置においては、第一の取付部材と第二の取付部材との間への振動入力時に受圧室に惹起される圧力室に対する相対的な負圧の作用に基づいて、圧力室と受圧室を連通させる圧力開放孔を開閉する開閉弁が、かかる開閉弁を付勢して閉状態に保持せしめる付勢手段による付勢力に抗して、開作動せしめられるようになっていることから、大きな振動荷重が入力される際に、圧力室に蓄えられた圧力を受圧室に供給するかの如く、圧力室から受圧室への流体流動を生ぜしめることが可能となる。これにより、大きな振動荷重の入力に際して、受圧室に過大な負圧が生ぜしめられることを未然に防いだり、発生した過大な負圧を速やかに解消することが出来る。その結果、大振幅振動の入力時に問題となり易い、キャビテーションの発生に起因する異音の発生や防振性能の低下を低減乃至は回避することが可能となる。
また、本発明においては、圧力開放孔における受圧室側への開口部に対して開閉弁が受圧室側から蓋をするように重ね合わされることによって、開閉弁の一方の面に対して受圧室の圧力が及ぼされる一方、開閉弁の他方の面に対して圧力室の圧力が及ぼされるようになっていることが望ましい。これにより、受圧室に惹起される圧力室に対する相対的な負圧が開閉弁に対して直接に作用することとなる。その結果、開閉弁がより速やかに開作動せしめられ得ることとなり、キャビテーションの発生を一層効果的に防止することが可能となる。
そこにおいて、上述の如き構成を採用する場合には、付勢手段として板ばねが採用されており、かかる板ばねに対して開閉弁が取り付けられて圧力開放孔の受圧室側への開口部に対して押し付けられていることが望ましい。これにより、付勢手段の配設スペースを有利に確保することが可能となる。また、付勢手段による付勢力の大きさを調節することが容易に可能となる。
さらに、本発明においては、オリフィス通路よりも低周波数域にチューニングされた低周波用オリフィス通路が形成されており、かかる低周波用オリフィス通路によって受圧室と平衡室が常時連通されていても良い。
そこにおいて、このような構成を採用する場合には、低周波用オリフィス通路の通路途中において低周波数用オリフィス通路を平衡室に連通せしめる短絡状連通孔が形成されていることにより、低周波数用オリフィス通路における受圧室側開口部と短絡状連通孔を通じての平衡室との連通路部分によってオリフィス通路が形成されていることが望ましい。これにより、オリフィス通路の形成スペースを有利に確保することが可能となる。
更にまた、本発明においては、受圧室と平衡室を仕切る仕切部材が設けられており、仕切部材の内部に圧力室が形成されていると共に、圧力室の受圧室側の壁部に対して変位量が制限された可動ゴム板が配設されて逆止弁が構成されている一方、圧力室の平衡室側の壁部の一部が可動構造とされて通路開閉部材が構成されていることが望ましい。これにより、圧力室の形成スペースを有利に確保することが出来る。また、逆止弁や通路開閉部材の配設スペースも有利に確保することが可能となる。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
図1には、本発明に係る圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置の一実施形態としての自動車用のエンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付部材としての第一の取付金具12と、第二の取付部材としての第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で連結された構造とされている。そして、第一の取付金具12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付金具14が図示しない車両ボデーに取り付けられることにより、パワーユニットが車両ボデーに対して防振支持せしめられている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、図1中の上下方向をいうものとする。
より詳細には、第一の取付金具12は、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成されており、全体として逆円錐台形状を呈している。また、第一の取付金具12の大径側端面には、軸方向上方に突出するようにして取付ボルト18が一体形成されている。
一方、第二の取付金具14は、筒金具20と底金具22によって構成されており、全体として深底の有底円筒形状を呈している。
筒金具20は、第一の取付金具12と同様な金属材で形成されており、全体として大径の円筒形状を呈している。また、筒金具20の軸方向中間部分には、径方向外方に広がる円環板形状の段差部24が形成されており、かかる段差部24を挟んで、軸方向上側が小径部26とされている一方、軸方向下側が大径部28とされている。
底金具22は、第一の取付金具12と同様な金属材で形成されており、全体として浅底の有底円筒形状を呈している。また、底金具22の開口周縁部には、径方向外方に広がるフランジ部30が設けられている。更にまた、底金具22の底壁部には、下方に向かって突出する取付ボルト32,32が固設されている。
そして、筒金具20が底金具22の開口部側において同一中心軸線上に重ね合わされた状態で、筒金具20の大径部28が底金具22のフランジ部30に対してかしめ固定されることにより、第二の取付金具14が構成されている。
このような構造とされた第二の取付金具14は、その軸方向上方の開口部側に離隔して、第一の取付金具12が略同一中心軸線上に配されている。そして、これら第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に本体ゴム弾性体16が配設されており、この本体ゴム弾性体16によって第一の取付金具12と第二の取付金具14が弾性的に連結されている。
本体ゴム弾性体16は、全体として円錐台形状とされており、その大径側端面には、下方に向かって開口する逆すり鉢状の大径凹所34が形成されている。そして、本体ゴム弾性体16の小径側端部には、第一の取付金具12が挿し込まれるようにして埋設されて加硫接着されていると共に、本体ゴム弾性体16の大径側端部外周面には、第二の取付金具14を構成する筒金具20の小径部26が加硫接着されている。このことから明らかなように、本実施形態では、本体ゴム弾性体16が、第一の取付金具12と筒金具20を備えた一体加硫成形品36とされている。
また、このように筒金具20の小径部26が本体ゴム弾性体16の外周面に加硫接着されることにより、筒金具20の小径部26側の開口部が本体ゴム弾性体16によって流体密に覆蓋されている。
更にまた、筒金具20の内周面には、シールゴム層38が被着形成されている。このシールゴム層38は、本体ゴム弾性体16と一体形成されており、大径凹所34の開口周縁部から下方に向かって延びる薄肉円筒形状を呈している。特に、本実施形態では、シールゴム層38は、小径部26の下側開口端まで延び出している。
また、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品36に対して、可撓性膜としてのダイヤフラム40が組み付けられている。ダイヤフラム40は、薄肉のゴム膜によって形成されており、全体として円板形状を呈している。更に、ダイヤフラム40の外周縁部には、全体として円環形状を呈する固定金具42が加硫接着されている。
このような構造とされたダイヤフラム40は、固定金具42が第二の取付金具14を構成する筒金具20の大径部28に嵌め入れられて、筒金具20の段差部24と底金具22のフランジ部30に重ね合わされた状態で、筒金具20の大径部28によって、底金具22のフランジ部30と共にかしめ固定されることにより、第二の取付金具14に対して組み付けられている。なお、本実施形態では、ダイヤフラム40の外周縁部において固定金具42の上面に固着された部分が筒金具20の段差部24に重ね合わせられていることにより、筒金具20の大径部28によるかしめ固定部位が流体密にシールされている。
これにより、筒金具20の軸方向下側の開口部(大径部28側の開口部)が、ダイヤフラム40によって流体密に閉塞されている。その結果、筒金具20の内部で対向位置せしめられた本体ゴム弾性体16とダイヤフラム40の間には、外部から流体密に仕切られた流体室44が形成されている。この流体室44には、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等の非圧縮性流体が封入されている。なお、流体室44への非圧縮性流体の封入は、第一の取付金具12と筒金具20を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品36に対するダイヤフラム40や後述する仕切部材46の組付を非圧縮性流体中で行うこと等によって有利に為され得る。
また、流体室44には、仕切部材46が収容配置されている。仕切部材46は、上側仕切金具48と下側仕切金具50と蓋金具52によって構成されており、全体として円形ブロック形状を呈している。
上側仕切金具48は、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成されており、全体として中心孔54を有する大径の円環ブロック形状を呈している。また、上側仕切金具48の下端外周縁部には、外周面と下端面に開口して周方向に所定長さに亘って延びる切欠部56が形成されている。更に、上側仕切金具48において切欠部56を画成する壁部には、軸直角方向に貫通する短絡状連通孔58が形成されている。更にまた、上側仕切金具48の外周面には、軸方向中間部分において、円環状の外側段差面60が形成されている。また、上側仕切金具48の内周面には、軸方向中間部分において、円環状の内側段差面62が形成されている。更に、上側仕切金具48には、一端側が中心孔54の内周面に開口すると共に、他端側が上端面に開口する圧力開放孔64が形成されている。
下側仕切金具50は、上側仕切金具48と同様な材料で形成されており、全体として厚肉の円板形状を呈している。特に本実施形態では、下側仕切金具50の外径寸法と上側仕切金具48の外径寸法が略同じとされている。また、下側仕切金具50の外周部分には、外周面に開口して周方向に所定長さに亘って延びる下側凹溝66が形成されている。更に、下側仕切金具50の径方向中間部分には、下端面に開口する中央凹所68が形成されている。更にまた、下側仕切金具50に形成された中央凹所68の上底壁には、中央部分において、中央孔70が形成されていると共に、径方向中間部分において、複数の貫通孔72が、周方向に適当な間隔をあけて形成されている。また、下側仕切金具50に形成された中央凹所68の上底壁には、中央孔70よりも径方向外方の位置において、中央孔70を取り囲むようにして周方向に連続して延びる環状の位置決め突起74が設けられている。
蓋金具52は、上側仕切金具48と同様な材料で形成されており、全体として、筒壁部76と上底壁部78を備えた逆向きの有底円筒形状を呈している。特に本実施形態では、蓋金具52の外径寸法は、上側仕切金具48の外径寸法と略同じとされている。また、蓋金具52の上底壁部78の中央部分には、位置決め孔80が形成されている。更に、蓋金具52の上底壁部78には、径方向中間部分において、厚さ方向に貫通する圧力伝達通路としての圧力伝達孔82が周方向に適当な間隔をあけて複数形成されている。更にまた、蓋金具52には、圧力伝達孔82よりも径方向外側の位置において、開口窓84が形成されている。また、蓋金具52には、開口窓84の開口周縁部において下方に向かって突出する突出片86が設けられている。
このような構造とされた上側仕切金具48と下側仕切金具50と蓋金具52は、上側仕切金具48の軸方向上端部分が蓋金具52の筒壁部76に内挿されて、上側仕切金具48の上端面が蓋金具52の上底壁部78に重ね合わせられると共に、上側仕切金具48の外側段差面60が蓋金具52の筒壁部76の下端面に重ね合わせられ、更に、上側仕切金具48の下端面に下側仕切金具50の上端面が重ね合わせられることにより、全体として円形ブロック形状を呈する仕切部材46を形成している。
そこにおいて、このように上側仕切金具48と下側仕切金具50と蓋金具52が組み合わせられた状態では、上側仕切金具48に形成された切欠部56の下側開口が、下側仕切金具50によって覆われている。これにより、切欠部56を利用して外周面に向かって開口する上側凹溝88が形成されている。その結果、仕切部材46の外周部分には、外周面に開口してそれぞれ周方向に一周弱の長さで延びる上側凹溝88と下側凹溝66が、軸方向で互いに独立して形成されている。そして、上側凹溝88と下側凹溝66は、周方向両端部が周方向で位置合わせされており、周方向一方の端部において、上側の下側壁部に貫通形成された接続孔(図示せず)を通じて相互に連通されている。これにより、仕切部材46には、上側凹溝88と下側凹溝66によって構成されて、外周面に開口して周方向に二周弱の長さで延びる周溝90が形成されている。
また、上述の如く上側仕切金具48と下側仕切金具50と蓋金具52が組み合わせられた状態で、蓋金具52に設けられた突出片86が上側仕切金具48の圧力開放孔64の内周面に沿って重ね合わせられており、上側仕切金具48の圧力開放孔64が蓋金具52の開口窓84を通じて仕切部材46の上端面に開口されている。
このような構造とされた仕切部材46は、第二の取付金具14を構成する筒金具20の内周側において、本体ゴム弾性体16とダイヤフラム40の軸方向対向面間に配設される。即ち、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品36に対してダイヤフラム40が組み付けられる前に、筒金具20の軸方向下側開口部から仕切部材46が挿し入れられて、筒金具20の内周側に配置される。この状態で、軸方向下方からダイヤフラム40が挿し入れられて、仕切部材46に対して下方から重ね合わせられる。その際、ダイヤフラム40の外周縁部において固定金具42の上面に固着されている部分が仕切部材46の下端面(下側仕切金具50の下端面)に当接せしめられていると共に、仕切部材46の外周縁部の上端面(仕切部材46を構成する蓋金具52の外周縁部の上端面)が本体ゴム弾性体16における大径凹所34の開口周縁部に当接せしめられる。これにより、仕切部材46とダイヤフラム40が第二の取付金具14に対して軸方向で位置決めされている。そして、仕切部材46とダイヤフラム40が内挿された状態で、筒金具20の小径部26に対して八方絞り等の縮径加工が施されると共に、ダイヤフラム40の固定金具42と底金具22のフランジ部30が筒金具20の大径部28でかしめ固定されることにより、第二の取付金具14に対して仕切部材46とダイヤフラム40が固定されるようになっている。
なお、本実施形態では、上述の如く仕切部材46が第二の取付金具14に固定された状態で、仕切部材46の外周面がシールゴム層38を介して第二の取付金具14の内周面に重ね合わせられており、第二の取付金具14と仕切部材46の間が流体密にシールされている。
このような仕切部材46の組付状態においては、流体室44が仕切部材46を挟んで上下に二分されている。これにより、仕切部材46を挟んで軸方向一方の側には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に内圧変動が生ぜしめられる受圧室92が形成されていると共に、仕切部材46を挟んで軸方向他方の側には、壁部の一部がダイヤフラム40で構成されて、容積変化が容易に許容される平衡室94が形成されている。
また、仕切部材46に形成された周溝90の外周側開口がシールゴム層38を介して第二の取付金具14によって覆蓋されており、周溝90を利用して周方向に所定の長さで延びるトンネル状の流路が形成されている。そして、かかるトンネル状の流路の一方の端部が、上側仕切金具48と蓋金具52に形成された連通孔(図示せず)を通じて、受圧室92に接続されていると共に、他方の端部が、下側仕切金具50に形成された連通孔96を通じて、平衡室94に接続されている。これにより、周溝90を利用して、周方向に所定の長さで延びて、受圧室92と平衡室94を相互に連通する低周波用オリフィス通路98が形成されている。なお、本実施形態では、低周波用オリフィス通路98を通じて流動せしめられる流体の共振周波数(チューニング周波数)が、自動車のエンジンシェイクに相当する10Hz前後の低周波数域にチューニングされている。
また、上側仕切金具48に形成された短絡状連通孔58は、低周波用オリフィス通路98の通路方向の中間部分において、低周波用オリフィス通路98を形成するために利用される周溝90の底壁に相当する部分に形成されていることになる。これにより、低周波用オリフィス通路98が、その途中において、短絡状連通孔58を通じて平衡室94に連通されている。その結果、低周波用オリフィス通路98における受圧室92側の開口部と短絡状連通孔58の間が、受圧室92と平衡室94の間での流体流動を許容するオリフィス通路100とされている。即ち、低周波用オリフィス通路98の一部を利用して、オリフィス通路100が形成されているのである。なお、本実施形態では、低周波用オリフィス通路98を通じて流動せしめられる流体の共振周波数(チューニング周波数)が、自動車のアイドリング振動に相当する15〜30Hzの中周波数域にチューニングされている。
また、仕切部材46には、隔壁部材102が組み付けられている。この隔壁部材102は、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成されており、全体として、底壁部104と筒状部106を備えた浅底の有底円筒形状を呈している。また、隔壁部材102の筒状部106の開口周縁部には、径方向外方に突出するフランジ状部108が設けられている。更に、隔壁部材102の底壁部104の中央部分には、底壁部104の下面から突出するガイドロッド110が設けられている。更にまた、隔壁部材102の底壁部104の中央部分には、上方に向かって開口する位置決め凹所112が形成されている。なお、本実施形態では、隔壁部材102の底壁部104には、位置決め凹所112が形成された部分において、下方に向かって突出する中央突部114が形成されている。これにより、隔壁部材102の底壁部104の厚さ寸法が、底壁部104の全体に亘って、略一定とされている。また、隔壁部材102の底壁部104の外周部分には、複数の連通窓116が周方向に適当な間隔をあけて形成されている。
このような構造とされた隔壁部材102は、筒状部106が上側仕切金具48の中心孔54に挿通されて、筒状部106の開口端に設けられたフランジ状部108が上側仕切金具48の内周面に形成された内側段差面62と蓋金具52の上底壁部78の間に挟まれた状態で、仕切部材46に組み付けられている。
そして、このように隔壁部材102が仕切部材46に組み付けられた状態で、隔壁部材102に設けられたガイドロッド110は、下側仕切金具50の中央孔70に挿通位置せしめられている。なお、本実施形態では、ガイドロッド110の突出端面は、下側仕切金具50の中央孔70の下側開口端面と略同じ高さ位置にあり、ガイドロッド110が中央孔70の下側開口端面から下方に突出していないようになっている。
また、上述の如く隔壁部材102が仕切部材46に組み付けられた状態で、隔壁部材102の底壁部104と蓋金具52の上底壁部78の間、即ち、隔壁部材102の底壁部104よりも受圧室92側には、逆止弁としての可動ゴム板118が配設されている。この可動ゴム板118は、従来から公知のゴム材料によって形成されており、全体として厚肉の円板形状を呈している。また、可動ゴム板118の中央部分には、厚さ方向両側に突出する位置決め突部120が設けられている。更にまた、可動ゴム板118の外径寸法は、隔壁部材102の筒状部106の内径寸法よりも小さくされている。
このような構造とされた可動ゴム板118は、位置決め突部120の軸方向上側部分が蓋金具52の位置決め孔80に嵌め入れられると共に、位置決め突部120の軸方向下側部分が隔壁部材102の位置決め凹所112に嵌め入れられた状態で、隔壁部材102の底壁部104と蓋金具52の上底壁部78の間に配設されている。
そして、このように可動ゴム板118が配設された状態で、可動ゴム板118の上面は蓋金具52の上底壁部78に重ね合わせられている。これにより、蓋金具52の上底壁部78に形成された複数の圧力伝達孔82のそれぞれが可動ゴム板118によって閉塞されている。
また、上述の如く可動ゴム板118が配設された状態では、可動ゴム板118の外周部分は、蓋金具52側(受圧室92側)への弾性変形が阻止されており、隔壁部材102側への弾性変形のみが許容されている。
そこにおいて、蓋金具52の上底壁部78に対する可動ゴム板118の重ね合わせは、可動ゴム板118そのものが有する弾性に基づいて行われていても良い。この場合には、可動ゴム板118を蓋金具52の上底壁部78に対して密着状態で重ね合わせることが可能となる。これにより、蓋金具52の上底壁部78に形成された圧力伝達孔82の閉塞状態の安定化を図ることが可能となる。なお、可動ゴム板118が有する弾性によって、可動ゴム板118を蓋金具52の上底壁部78に重ね合わせる場合には、可動ゴム板118単体での形状が、上方に反るような形状が好適に採用される。
また、上述の如く仕切部材46に組み付けられた隔壁部材102と下側仕切金具50の間には、通路開閉部材としてのスライド部材122が配設されている。このスライド部材122は、ポリアセタール等の高い摺動性を有する材料で形成されており、全体として円形ブロック形状を呈している。特に本実施形態では、スライド部材122の外径寸法は、上側仕切金具48の中心孔54の内径寸法よりも僅かに小さくされている。
また、スライド部材122には、下面に開口する凹溝124が形成されている。これにより、スライド部材122の中央部分には、ボス部126が形成されている。そこにおいて、本実施形態では、ボス部126の突出端面から下方に向かって突出する挿通軸部128が形成されている。
さらに、スライド部材122には、中央部分において、隔壁部材102に形成された中央突部114に対応した形状で開口する中央凹部130が形成されている。これにより、スライド部材122と隔壁部材102の軸方向での重ね合わせが許容されている。
更にまた、スライド部材122には、中央部分を軸方向に貫通するガイド孔132が形成されており、本実施形態では、中央凹部130の底面と挿通軸部128の下端面の両方に開口するようにして、ガイド孔132が形成されている。
また、スライド部材122には、径方向中間部分において厚さ方向に貫通する圧抜孔134が周方向に適当な間隔をあけて複数形成されている。
このような構造とされたスライド部材122は、そのガイド孔132に対して隔壁部材102のガイドロッド110が挿通された状態で、上側仕切金具48の中心孔54に内挿されて、隔壁部材102と下側仕切金具50の間に配設されている。これにより、スライド部材122と隔壁部材102の間には、隔壁部材102との対向方向に変位可能な状態で隔壁部材102よりも平衡室94側に配設されたスライド部材122によって壁部の一部が構成されて容積が可変とされており、圧力伝達孔82及び連通窓116を通じて受圧室92に接続されていると共に、圧力開放孔64を通じて受圧室92に接続されている圧力室136が形成されている。即ち、仕切部材46の内部に圧力室136が形成されているのである。
特に本実施形態では、スライド部材122は、図1に示されているように、その上面が隔壁部材102の下面に重ね合わせられて、圧力室136が実質的に消失せしめられた状態から、図2に示されているように、その外周縁部の下端面が下側仕切金具50の上面に重ね合わせられて、圧力室136の容積が最大となる状態まで、ガイド孔132とガイドロッド110による案内作用によって軸方向に変位可能に配設されている。即ち、スライド部材122は、隔壁部材102に対して接近/離隔する方向に変位可能な状態で配設されているのである。
また、ガイド孔132とガイドロッド110の案内作用によって、スライド部材122が軸方向に変位する際には、スライド部材122の外周面が上側仕切金具48の内周面に摺動せしめられるようになっている。
そして、スライド部材122が隔壁部材102に重ね合わせられた状態では、隔壁部材102の底壁部104に形成された複数の連通窓116や、上側仕切金具48に形成された圧力開放孔64の圧力室136側の開口部は、スライド部材122によって閉塞されているが、上側仕切金具48に形成された短絡状連通孔58は開放されている。即ち、スライド部材122が隔壁部材102に重ね合わせられた状態では、オリフィス通路100が連通状態とされているのである。
また、スライド部材122の外周縁部の下端面が下側仕切金具50に重ね合わされた状態では、隔壁部材102の底壁部104に形成された複数の連通窓116や、上側仕切金具48に形成された圧力開放孔64の圧力室136側の開口部は、開放されているが、上側仕切金具48に形成された短絡状連通孔58はスライド部材122によって閉塞されている。即ち、スライド部材122の外周縁部の下端面が下側仕切金具50に重ね合わされた状態では、オリフィス通路100が遮断状態とされているのである。
更にまた、上述の如く配設されたスライド部材122と下側仕切金具50の対向面間には、復帰力付与手段としてのコイルスプリング138が配設されている。なお、本実施形態では、コイルスプリング138は、その上端がスライド部材122のボス部126に外挿されていると共に、その下端が下側仕切金具50の位置決め突起74の内側に位置せしめられている。そして、スライド部材122と下側仕切金具50の対向面間にコイルスプリング138が配設されることにより、コイルスプリング138の復帰力が、スライド部材122を隔壁部材102に接近せしめる方向に向かって、常時、及ぼされるようになっている。なお、本実施形態では、スライド部材122に対して受圧室92側から圧力が及ぼされていない場合、スライド部材122は、コイルスプリング138の復帰力によって、隔壁部材102の下面に当接せしめられるようになっている。即ち、本実施形態では、スライド部材122に対して受圧室92側から圧力が及ぼされていない状態では、圧力室136は実質的に消失せしめられているのである。
また、蓋金具52の上面には、圧力開放孔64における受圧室92側の開口部を構成する開口窓84を閉塞する開閉弁としてのゴム弁体140が配設されている。このゴム弁体140は、従来から公知のゴム材料で形成されており、全体として厚肉の円板形状を呈している。特に本実施形態では、ゴム弁体140の外径寸法が開口窓84の内径寸法よりも大きくされている。
このようなゴム弁体140には、付勢手段としての板ばね142が組み付けられている。この板ばね142は、ばね鋼等の従来から公知の金属ばね材料で形成されており、全体として長手平板形状乃至は帯板形状を呈している。そして、板ばね142の長手方向一端に形成された取付孔144に対して、ゴム弁体140の上面に設けられた取付突起146が挿通せしめられると共に、取付突起146に対して、金属製の抜止リング148が圧入状態で外嵌固定されることにより、板ばね142の長手方向一端にゴム弁体140が組み付けられている。
また、このように長手方向一端にゴム弁体140が組み付けられた板ばね142の長手方向他端は、蓋金具52の上面に設けられた支持台150に固定されている。これにより、ゴム弁体140が、開口窓84を受圧室92側から閉塞するようにして蓋金具52の上面に重ね合わせられた状態で、板ばね142の付勢力によって蓋金具52の開口窓84の開口周縁部に押え付けられている。
更にまた、上述の如くゴム弁体140が配設されることにより、ゴム弁体140の下面には、圧力開放孔64を通じて圧力室136の圧力が及ぼされるようになっている一方、ゴム弁体140の上面には、受圧室92の圧力が及ぼされるようになっている。
因みに、上述の如きエンジンマウント10において、スライド部材122が隔壁部材102に重ね合わせられた状態(図1の状態)をモデル図で示すと、図3のようになる。
上述の如き構造とされたエンジンマウント10は、第一の取付金具12が、取付ボルト18によって、パワーユニット側の取付部材に螺着固定されることにより、パワーユニットに取り付けられるようになっている。一方、第二の取付金具14が、底金具22に突設された取付ボルト32,32によって、車両ボデーに螺着固定されることにより、車両ボデーに取り付けられるようになっている。これにより、エンジンマウント10が、防振連結すべき一方の部材である自動車のパワーユニットと防振連結すべき他方の部材である自動車のボデーの間に介装されて、パワーユニットを車両ボデーに対して防振支持せしめるようになっている。
なお、このようなエンジンマウント10の自動車への装着状態下では、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に、パワーユニットの分担支持荷重が略軸方向に及ぼされることにより、本体ゴム弾性体16が所定量だけ弾性変形せしめられて、第一の取付金具12と第二の取付金具14が軸方向に所定量だけ接近変位せしめられた状態となる。
そして、上述の如き構造とされたエンジンマウント10においては、走行時に問題となるエンジンシェイク振動が入力されることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が接近変位せしめられて、受圧室92に正圧が生ぜしめられた場合には、可動ゴム板118の外周部分が蓋金具52における上底壁部78から捲れて離隔するように弾性変形せしめられる。これにより、圧力伝達孔82が連通状態となって、受圧室92の圧力が、複数の連通窓116を通じて、スライド部材122に及ぼされるようになっている。その結果、スライド部材122がコイルスプリング138の付勢力に抗して隔壁部材102から離隔する方向に変位せしめられることとなり、隔壁部材102とスライド部材122の対向面間に圧力室136が出現すると共に、かかる圧力室136の容積が増加する。
なお、スライド部材122に形成されている圧抜孔134は、十分に小径とされている。これにより、スライド部材122が隔壁部材102から離隔変位する際に、圧抜孔134を通じての圧力室136から平衡室94への圧抜孔134を通じての流体流動が生じ難くなっている。
また、エンジンシェイク振動の入力時に第一の取付金具12と第二の取付金具14が離隔変位せしめられて、受圧室92に負圧が発生した場合には、受圧室92と圧力室136の相対的な圧力差により、可動ゴム板118の外周部分が蓋金具52における上底壁部78に密着せしめられる。これにより、圧力伝達孔82が遮断状態となって、圧力伝達孔82を通じての圧力室136から受圧室92への流体流動が阻止されることとなる。その結果、圧力室136が蓄圧された状態に維持されて、スライド部材122がコイルスプリング138の付勢力に抗して隔壁部材102から離隔せしめられた状態、即ち、隔壁部材102とスライド部材122の間に圧力室136が出現した状態が維持されるようになっている。
そして、上述の如き可動ゴム板118の外周縁部の弾性変形に基づく圧力伝達孔82の連通/遮断が繰り返されて、スライド部材122が隔壁部材102から十分に離隔変位せしめられると、図2に示されているように、短絡状連通孔58がスライド部材122で閉塞された状態となる。因みに、この状態をモデル図で示すと、図4のようになる。
すなわち、この状態では、オリフィス通路100が遮断されているのである。これにより、受圧室92と平衡室94の間に生ぜしめられる相対的な圧力変動により、低周波用オリフィス通路98を通じての流体流動量を効果的に確保することが出来る。その結果、低周波用オリフィス通路98を流動せしめられる流体の共振作用に基づいて、エンジンシェイク振動に対して、有効な防振効果が発揮されるようになっている。
なお、このことから明らかなように、本実施形態では、オリフィス通路100は、連通状態と遮断状態に切り換えられるが、低周波用オリフィス通路98は、常時連通状態とされている。
そこにおいて、低周波用オリフィス通路98を流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果が発揮されている状態では、圧力室136と受圧室92の圧力差によって、ゴム弁体140が板ばね142の付勢力に抗して蓋金具52から離隔変位することがないように、板ばね142の付勢力が設定されている。
また、スライド部材122が隔壁部材102から離隔変位せしめられた状態で、エンジンシェイク振動が入力されない場合には、コイルスプリング138の付勢力によって、スライド部材122が隔壁部材102に接近変位せしめられる。その際、圧力室136内の非圧縮性流体は、圧抜孔134を通じて、平衡室94に流れ込むようになっている。これにより、スライド部材122の隔壁部材102側への接近変位が生ぜしめられる。そして、スライド部材122は、最終的には、コイルスプリング138の付勢力によって隔壁部材102に押し付けられた状態となる。その結果、オリフィス通路100が連通状態となる。
また、停車時に問題となるアイドリング振動が入力される場合には、可動ゴム板118の外周部分が蓋金具52の上底壁部78から捲れるように弾性変形することがない。この状態では、図1に示されているように、短絡状連通孔58が開放されており、オリフィス通路100が連通状態とされている。これにより、受圧室92と平衡室94の間に生ぜしめられる相対的な圧力変動により、オリフィス通路100を通じての流体流動量を効果的に確保することが出来る。その結果、オリフィス通路100を流動せしめられる流体の共振作用に基づいて、アイドリング振動に対して、有効な防振効果が発揮されるようになっている。
ところで、自動車の走行時には、自動車が段差を乗り越える等して、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に衝撃的な大荷重の振動が入力されると、受圧室92の圧力変動が著しく大きくなって、大きな圧力低下も生ずることとなる。受圧室92の圧力が大きく低下すると、受圧室92の圧力は圧力室136の圧力に比して負圧となる。
そして、受圧室92と圧力室136の圧力差が大きくなって、ゴム弁体140の下面に及ぼされる圧力室136の圧力が、ゴム弁体140の上面に及ぼされる受圧室92の圧力とゴム弁体140に及ぼされる板ばね142の付勢力の合計よりも大きくなった場合には、ゴム弁体140が、板ばね142の付勢力に抗して、蓋金具52から離隔変位せしめられる。因みに、この状態のエンジンマウント10をモデル図で示すと、図5のようになる。
すなわち、この状態では、圧力開放孔64の受圧室92側の開口部(蓋金具52の開口窓84)が開放されており、受圧室92と圧力室136が圧力開放孔64を通じて連通せしめられた状態となる。これにより、圧力室136から受圧室92への流体流動が生ぜしめられることとなる。その結果、受圧室92の著しい圧力低下が速やかに解消され得るようになっている。
なお、このことから明らかなように、本実施形態では、ゴム弁体140と板ばね142を含んで圧力室136の圧力開放機構が構成されている。
また、本実施形態では、圧力開放孔64を通じての圧力室136から受圧室92への流体流動に際して、スライド部材122が隔壁部材102に接近変位せしめられるようになっている(図5参照)。
従って、上述の如き構造とされたエンジンマウント10においては、大振幅振動の入力時におけるキャビテーションの発生を抑えて、かかるキャビテーションの発生に起因する異音の発生を抑えることが出来る。
また、本実施形態のエンジンマウント10においては、圧力開放孔64の受圧室92側の開口部(蓋金具52の開口窓84)が、受圧室92側から蓋をするようにして蓋金具52に重ね合わされたゴム弁体140で閉塞されて、受圧室92の圧力がゴム弁体140の上面に及ぼされるようになっている一方、圧力室136の圧力がゴム弁体140の下面に及ぼされるようになっていることから、受圧室92と圧力室136の圧力差がゴム弁体140に対して直接に及ぼされることとなる。その結果、ゴム弁体140がより速やかに蓋金具52から離隔変位せしめられて、受圧室92に生ぜしめられる過大な負圧を一層速やかに解消することが可能となる。
特に本実施形態では、付勢手段としての板ばね142が採用されていることから、付勢手段の配設スペースを有利に確保することが可能となる。
また、本実施形態では、仕切部材46の内部に圧力室136が形成されていることから、圧力室136の形成スペースを有利に確保することが可能となる。
さらに、本実施形態では、受圧室92側への変位量が制限された可動ゴム板118によって逆止弁が構成されていることから、逆止弁の構造を簡単にすることが出来る。
更にまた、本実施形態では、圧力室136の平衡室94側の壁部がスライド部材122で構成されていることから、スライド部材122の配設スペースを有利に確保することが可能となる。
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、前記実施形態では、付勢手段として板ばね142が採用されており、かかる板ばね142の弾性を付勢力として利用していたが、磁力を付勢力として利用することも可能である。
具体的には、図7にモデル図として示すように、開閉弁152をマグネットゴムやマグネットエラストマーで形成すると共に、仕切部材46において圧力開放孔64が形成された開放孔形成壁部154を鉄等の強磁性材で形成することで、磁力を付勢力として利用する付勢手段を採用することが出来る。なお、開閉弁152の磁極部分が、強磁性材で形成された圧力開放孔64の開口周縁部に対して対向配置されている。また、この開閉弁152は、仕切部材46に固設されたガイドロッド159により、圧力開放孔64に対する接近/離隔方向に相対変位可能に案内されている。そこにおいて、ガイドロッド159の外周面と開閉弁152においてガイドロッド159が内挿される挿通孔の内周面との間には、開閉弁152が圧力開放孔64の開口を塞いでいる状態(弁閉作動状態)で、液密性が問題とならない程度に隙間が確保されている。なお、開閉弁152はガイドロッド159によって案内される必要はなく、例えば、ガイドロッド159を設ける代わりに、開閉弁152の外周面と開閉弁152が収容配置される弁体収容空間を画成する壁面との間に液密性が問題とならない程度の隙間が形成されている状態で、開閉弁152が弁体収容空間内に配設されており、開閉弁152の外周面と弁体収容空間を画成する壁面との案内作用によって、開閉弁152が圧力開放孔64に対して接近/離隔方向に変位されるようになっていても良い。これにより、開閉弁152による圧力開放孔64の閉塞状態の信頼性を確保することが容易になる。
また、開放孔形成壁部154の全体が鉄等の強磁性材で形成されている必要はなく、例えば、圧力開放孔64における受圧室92側の開口部を形成している部分のみが鉄等の強磁性材で形成されていてもよい。
ここにおいて、仕切部材46には、圧力開放孔64の受圧室92側の開口部から離隔した開閉弁152が当接するストッパ部156を設けておくが望ましい。これにより、図8に示されているように、受圧室92と圧力室136の相対的な圧力差が大きくなって、開閉弁152が、開放孔形成壁部154との間での磁力に抗して、開放孔形成壁部154から離隔変位せしめられた際に、開閉弁152の開放孔形成壁部154からの離隔距離を制限することが可能となる。その結果、受圧室92と圧力室136の相対的な負圧が解消した場合に、開閉弁152と開放孔形成壁部154の間での磁力の作用を利用して、開閉弁152を再び開放孔形成壁部154に接近変位させて吸着保持せしめる作動が、高い信頼性をもって発現され得る。
また、開閉弁152には、ストッパ部156と当接する部分に緩衝ゴム158が設けられていることが望ましい。これにより、開閉弁152のストッパ部156への打ち当たりに起因する異音を抑えることが出来る。
なお、理解を容易にするために、図7及び図8では、前記実施形態と同様な構造とされた部材及び部位については、前記実施形態と同一の符号を付してある。
また、付勢手段は、前記実施形態の板ばね142や図7及び図8の磁力を利用したものの他にも、コイルスプリングやゴム弾性体等の弾性部材や、永久磁石の磁力を利用したものを、採用することが出来、これらの二つ以上を併せて採用することも、勿論、可能である。
更にまた、本発明は、フロントエンジン・フロントドライブの自動車用エンジンマウント等として従来から多く採用されている円筒型の流体封入式防振装置などに対しても、適用可能である。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車のエンジンマウントに適用したものの具体例が示されていたが、本発明は、自動車のボデーマウントやデフマウント,サスペンションメンバマウントの他、各種振動体の防振装置に対しても、勿論、適用可能である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
本発明の一実施形態としてのエンジンマウントを示す縦断面図。 同エンジンマウントにおいて圧力室が形成されている状態を示す縦断面図。 図1の状態のエンジンマウントを示すモデル図。 図2の状態のエンジンマウントを示すモデル図。 図1のエンジンマウントにおいてゴム弁体が開作動せしめられた状態を示す縦断面図。 図5の状態のエンジンマウントを示すモデル図。 本発明に係る他のエンジンマウントを説明するためのモデル図。 図7のエンジンマウントにおいて開閉弁が開作動した状態を示す縦断面図。
符号の説明
10:エンジンマウント,12:第一の取付金具,14:第二の取付金具,16:本体ゴム弾性体,40:ダイヤフラム,64:圧力開放孔,82:圧力伝達孔,92:受圧室,94:平衡室,100:オリフィス通路,118:可動ゴム板,122:スライド部材,136:圧力室,140:ゴム弁体,142:板ばね

Claims (7)

  1. 第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、該本体ゴム弾性体によって壁部の一部が構成されて振動入力時に圧力変動が惹起される受圧室と、可撓性膜によって壁部の一部が構成されて容積変化が許容される平衡室とを設けて、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を接続せしめて流体流動を許容するオリフィス通路を形成する一方、該受圧室に対して圧力伝達通路を通じて連通された圧力室を設けると共に、該圧力伝達通路を通じての該受圧室から該圧力室への流体流動を許容するが逆向きの流体流動を阻止する逆止弁を配設し、該圧力室に及ぼされる圧力を利用して該オリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換える通路開閉部材を変位させることにより該オリフィス通路を連通状態と遮断状態に切り換えるようにした圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置において、
    前記圧力室と前記受圧室を連通させる圧力開放孔を形成して、該圧力開放孔を開閉する開閉弁を設けると共に、該開閉弁を付勢して閉状態に保持せしめる付勢手段を設け、更に、前記第一の取付部材と前記第二の取付部材との間への振動入力時に該受圧室に惹起される該圧力室に対する相対的な負圧の作用に基づいて該開閉弁を該付勢手段による付勢力に抗して開作動せしめる該圧力室の圧力開放機構を設けたことを特徴とする圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置。
  2. 前記圧力開放孔における前記受圧室側への開口部に対して前記開閉弁が該受圧室側から蓋をするように重ね合わされることによって、該開閉弁の一方の面に対して該受圧室の圧力が及ぼされる一方、該開閉弁の他方の面に対して前記圧力室の圧力が及ぼされるようになっている請求項1に記載の圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置。
  3. 前記付勢手段として板ばねが採用されており、該板ばねに対して前記開閉弁が取り付けられて前記圧力開放孔の前記受圧室側への開口部に対して押し付けられている請求項2に記載の圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置。
  4. 前記オリフィス通路よりも低周波数域にチューニングされた低周波用オリフィス通路が形成されて、該低周波用オリフィス通路によって前記受圧室と前記平衡室が常時連通されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置。
  5. 前記低周波用オリフィス通路の通路途中において該低周波数用オリフィス通路を前記平衡室に連通せしめる短絡状連通孔が形成されていることにより、該低周波数用オリフィス通路における前記受圧室側開口部と該短絡状連通孔を通じての該平衡室との連通路部分によって前記オリフィス通路が形成されている請求項4に記載の圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置。
  6. 前記低周波用オリフィス通路がチューニングされた低周波数域の振動入力時において前記開閉弁が閉状態に保持されるように前記付勢手段の付勢力が設定されている請求項4又は5に記載の圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置。
  7. 前記受圧室と前記平衡室を仕切る仕切部材が設けられており、該仕切部材の内部に前記圧力室が形成されていると共に、該圧力室の該受圧室側の壁部に対して変位量が制限された可動ゴム板が配設されて前記逆止弁が構成されている一方、該圧力室の該平衡室側の壁部の一部が可動構造とされて前記通路開閉部材が構成されている請求項1乃至の何れか1項に記載の圧力感応切換式オリフィス通路を備えた流体封入式防振装置。
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