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JP5194812B2 - 真空断熱材および真空断熱材を適用した建築部材 - Google Patents

真空断熱材および真空断熱材を適用した建築部材 Download PDF

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Description

本発明は、複数の芯材と吸着材とを外被材内に減圧密封した真空断熱材、および、その真空断熱材を適用した建築部材に関するものである。
近年、高真空を必要とする工業技術への期待が高まりつつある。例えば、地球温暖化防止の観点から省エネルギーが強く望まれており、家庭用電化製品についても省エネルギー化は緊急の課題となっている。
特に、冷蔵庫、冷凍庫、自動販売機等の保温保冷機器では熱を効率的に利用するという観点から、優れた断熱性能を有する断熱材が求められている。
一般的な断熱材として、グラスウールなどの繊維材やウレタンフォームなどの発泡体が用いられている。しかし、これらの断熱材の断熱性能を向上するためには断熱材の厚さを増す必要があり、断熱材を充填できる空間に制限があって省スペースや空間の有効利用が必要な場合には適用することができない。
そこで、高性能な断熱材として、真空断熱材が提案されている。これは、スペーサーの役割を持つ芯材を、ガスバリア性を有する外被材中に挿入し内部を減圧して封止した断熱体である。
ここで、真空断熱材が、複数の芯材を有する構成であって、かつ各芯材が独立した真空空間内に位置するように芯材の間に熱溶着部が設けられている構成であると、(1)外被材端面から離れた芯材部分は端面からの侵入ガスの影響が小さいために、真空断熱材全体としての経時断熱性能が維持しやすい、(2)一箇所で真空ブレークが生じてもそれが他の芯材部分に与える影響が小さいために断熱性能の悪化を最小限で抑えることができる、(3)芯材および真空断熱材形状の自由度が高く、アプリケーションに応じた形状設計が可能である、など、1枚の芯材を有する真空断熱材に比べて、様々なメリットを有している。このため、幅広い用途への展開が見込める。
一方で、真空断熱材には、外部から水蒸気や空気が侵入することで、真空度が悪化し、真空度の悪化に伴い、断熱性能が悪化してしまうという問題があるために、建物のように、長期に渡って断熱性能が要求される用途への適用は難しかった。
そこで、真空断熱材において真空度の劣化を防止し、長期に渡って優れた断熱性能を維持するために吸着材を適用する技術がある。
吸着材の一例として、低温で窒素を除去するBa−Li合金がある(例えば、特許文献1参照)。
Ba−Li合金は、乾燥材と一緒に、断熱ジャケット内の真空を維持するためのデバイスとして使用され、室温においても窒素などのガスを吸着することができた。
また、真空断熱材を断熱材として使用すると薄型で高い断熱性能が見込めることから、建物へ適用する技術がある(例えば、特許文献2、3参照)。
真空断熱材を建物に適用することで、非常に高い断熱性が得られた。
特表平9−512088号公報 特開2006−90070号公報 特開2007−198004号公報
しかしながら、上記特許文献1の構成では、窒素等活性の低い気体も吸着が可能であるが、BaはPRTR指定物質であるため、工業的に使用するには環境や人体に対して問題のないものが望まれる。
また、活性化のための熱処理を必要とせず、常温下でも窒素吸着可能であり、数分間は空気雰囲気で取扱い可能、と記載されているが、気体吸着材を用いる製品を工業的に製造する場合、取扱い上、より長い許容時間が望まれる。
また、気体吸着材を、建築部材のように長期に渡って性能を確保しなければならない用途に使用する場合には、できるだけ製造工程での吸着材の失活を抑制し、建築部材として使用される時に気体吸着材が有する特性を十分に発揮する構成であることが望まれる。
また、気体吸着材の水分による劣化を抑制するため、気体吸着材を乾燥材(水分吸着材)で被う構成となっているため、この結果、気体吸着材および気体吸着材の機能保持及び発現を補助する機器(気体吸着デバイス)の厚さは、気体吸着材と水分吸着材の厚さの和より大きくなる。
真空断熱材の特長の一つは他の断熱材に比較してより薄い厚さで断熱性能を得ることができるという点であることから、真空断熱材に上記従来の構成の気体吸着材を適用すると、真空断熱材の厚さの下限は気体吸着デバイスの厚さとなるため、断熱材の薄肉化を妨げてしまう。
上記特許文献2、3の構成は、施工性の向上を目的としたものであり、経時断熱性能の維持という面では詳細な記載がない。しかし、建物は、求められる耐久性が、家電製品が数年から十数年に対して、数十年と非常に長く、真空断熱材を構成する材料の適正化なしには、長期に渡ってその断熱性能を維持するのは困難である。
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、気体吸着材を、大気中で長時間保存可能な気体吸着デバイスにすることで、初期断熱性能、経時断熱性能ともに優れた真空断熱材を提供すること、また、断熱性能に優れた真空断熱材を適用することで断熱性能に優れた建築部材を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の真空断熱材は、少なくとも、複数の芯材と、片面に熱溶着層を有するガスバリア性の外被材と、吸着材とを有し、前記熱溶着層同士が対向する前記外被材の間に前記芯材が2つ以上の独立した真空空間内に位置するように減圧密封され、かつ、前記吸着材が、一箇所以上の芯材部分に配置された真空断熱材であって、前記吸着材が、気体吸着材と、水分吸着材と、気体難透過性素材からなる容器とからなり、前記容器は内部が通気性を制御可能な仕切りにより少なくとも2つ以上の空間に仕切られており、前記気体吸着材と前記水分吸着材はそれぞれ前記容器の異なる空間に収容されているのである。
気体吸着材と水分吸着材は、気体難透過性容器内に収容されているため、高活性であっても大気中に長時間保存することが可能であり、製造中に気体や水分を吸着することによる気体吸着材の劣化を抑制でき、気体吸着材が有する特性を十分に発揮できる。このため、真空断熱材の経時断熱性能がより向上し、建築部材に真空断熱材を適用した場合にも、経時断熱性能が向上する。
気体吸着材は、水分に対しても高活性であるため、水分を吸着すると失活してしまい、特性を十分に発揮できなくなる。そこで、水分吸着材で水分を吸着し、その後乾燥した気体成分を気体吸着材が吸着する構成とすれば、気体吸着材の水分による失活が抑制でき、気体吸着材が有する特性を十分に発揮することが可能になる。このため、真空断熱材の経時断熱性能の向上が図れ、建築部材として使用した場合にも、長期に渡って高い省エネ効果が図れる。
気体吸着材と水分吸着材は複数の空間に並列的に収容することにより、気体吸着デバイスの厚さは、これらの吸着材の一方の厚さにほぼ等しくなる。このため、真空断熱材の薄肉化が図れ、建築部材として適用した場合においても、薄く、高性能の建築部材を得ることができる。
本発明の真空断熱材は、吸着材をデバイス化した気体吸着デバイスが、気体吸着材が有する特性を十分に発揮できる構成であるため、長期に渡って真空断熱材の断熱性能を維持することができ、建築部材として使用した場合にも経時断熱性能に優れるため、長期に渡って高い省エネ効果を得ることができる。
請求項1に記載の発明は、少なくとも、複数の芯材と、片面に熱溶着層を有するガスバリア性の外被材と、吸着材とを有し、前記熱溶着層同士が対向する前記外被材の間に前記芯材が2つ以上の独立した真空空間内に位置するように減圧密封され、かつ、前記吸着材が、一箇所以上の芯材部分に配置された真空断熱材であって、前記吸着材が、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着できる気体吸着材と、水分吸着材と、気体難透過性素材からなる容器とからなり、前記容器は内部が通気性を制御可能な仕切りにより少なくとも2つ以上の空間に仕切られており、前記気体吸着材と前記水分吸着材はそれぞれ前記容器の異なる空間に収容されていることを特徴とする。
一般に、気体吸着材は水分を吸着し易い性質を有しているため、気体吸着デバイスの周辺の気体が水分を含む場合は、水分を吸着することにより、気体の吸着容量が低減してしまう。
このような場合、気体吸着デバイスに収容する気体吸着材を増量することにより、必要な空気吸着量を得ることは可能であるが、一般に、気体吸着材は水分吸着材に比較して高価であり、水分吸着材で吸着が可能な水分を空気吸着材で吸着することは、コストの観点から得策ではない。よって、水分を水分吸着材で吸着し、気体を気体吸着材で吸着させることが望ましい。
しかしながら、気体吸着材は水分吸着材に比較して水分を吸着する速度が大きいため、水分吸着材と気体吸着材を混在させる構成であると、気体吸着材の方が水分を吸着し、その分気体吸着能力を十分に発揮できなくなる。すなわち、吸着材を収容する容器と、容器内の吸着材の配置を適正化することが必要である。
まず、気体吸着デバイスの構成を、気体吸着材と水分吸着材をそれぞれ独立した空間に収容し、独立した両者の空間の間に適切な通気性を確保した構成とする。さらに、気体吸着デバイス外の気体が、水分吸着材を収容した空間を通り、その後、気体吸着材を収容した空間へ到達するような構成とする。これによって、水分吸着材が水分を吸着するため、気体吸着材を収容した空間に到達する気体は水分が少ない気体となり、気体吸着材が有する特性を十分に発揮できる。
なお、仕切りの通気性が大きすぎる場合は、水分吸着材が水分を吸着しきれず、空気吸着材に水分が到達し、水分吸着材が劣化してしまう。逆に、気体吸着材を収容する空間と水分吸着材を収容する空間の仕切りの通気性が小さすぎる場合は、気体吸着材に気体が到達せず、気体吸着材の吸着特性を発揮することが困難になる。よって、仕切りの通気性が重要となる。仕切りの通気性は、気体透過度、断面積、長さに依存するものであり、これを適正化することにより、上記機構を達成する。
また、気体吸着材と水分吸着材の両空間を並列化することによって、気体吸着デバイスの最大厚さは、気体吸着材または水分吸着材の最大厚さに依存することとなるため、気体吸着デバイスの薄肉化が可能となる。しいては、アプリケーションの薄型化が可能となる。
また、本発明で用いる気体吸着デバイス(吸着材)は、薄肉化が図れるとともに形状自由度が高いことから、真空断熱材特有の薄型で高断熱性能という特徴を生かすことができ、かつ形状自由度を阻害することがないため、建築部材としても薄肉化が図れるとともに施工性が向上する。
使用する気体吸着材が高活性であるほど、また、比表面積が大きくなるほど取り扱いの条件が厳しくなる。つまり、気体吸着材の活性を維持するために、空気に接触可能な時間が短くなり、また、接触可能な圧力も小さくなる。これらの要求は、気体吸着材を、気体難透過性素材からなる容器に収容することで達成される。
ここで、容器とは、例えば、球殻のように空間を内外に分断するものであり、気体難透過性素材とは、ガス透過度が10[cm/(m・day・atm)]以下の素材であり、より望ましくは10[cm/(m・day・atm)]以下となるものである。
また、このような気体吸着材は、保存時に加えて、アプリケーションに適用する際の劣化も問題となる。真空断熱材を例にとり、説明する。
真空断熱材は、気体難透過性の外被材中に芯材と気体吸着材を挿入したものをチャンバーに設置後、チャンバーを減圧し、外被材内部を減圧後、外被材の開口部を封止して作製する。
この際、チャンバー内の減圧は真空ポンプにて行われる。常圧領域、つまり真空封止前ではポンプ、吸着材いずれによっても減圧することが可能である。
一方、低圧領域、つまり真空封止後の外被材内部には、真空ポンプで減圧しきれなかった気体、真空封止後に外被材を通して侵入する気体、芯材から発生する気体が存在し、これらは気体吸着材のみで吸着が可能である。
従って、真空封止後の外被材内部において気体吸着材の能力を十分に発揮するためには、真空封止後に外部に連通することが必要である。
ここで、連通とは、気体吸着デバイスの容器に貫通孔が生じることにより、容器内部の空間と、容器外部の空間に気体の通過が可能になることを指す。
さらに、真空断熱材の封止後に連通を行うため、気体吸着デバイス内に、気体吸着材で吸着困難な気体が存在すると、その気体が真空断熱材の内圧を上昇させ、断熱性能を悪化させる原因となるため、気体吸着デバイス内部は予め真空にしておく必要がある。その圧力は100Pa以下が望ましい。
また、真空断熱材など、軟包材で覆われた真空機器に気体吸着デバイスを用いた場合、大気圧が気体吸着デバイスに加わる。このとき、気体吸着デバイスの容器が軟包材の場合、両空間をつなぐ仕切り部分に大気圧が加わることで、気体の透過性が小さくなるため、大気圧に抗して空間の断面積を維持するためのスペーサーが必要となる。
そこで、仕切りとして連続多孔体を用いる。これにより、連続多孔体のバルク部はスペーサーとして、空隙部は気体が通過する仕切りとして作用するため、これらの条件を満足することができる。
本発明において、仕切りとは、空間と空間の間の通気性を制御するものであり、管状の部材、連続気泡の多孔体、不織布、紙等があるが、大気圧に抗して空隙の体積を維持でき、空隙が連通しているものであれば、特に指定するものではない。
ここで、不織布や紙を使用すると、適切な素材、製法を選択することにより圧力が加わった際の圧縮率を制御することができる。よって、大気圧下でも気体吸着デバイスの空間をつなぐ仕切りの空隙を適切に保持することができる。従って、より活性が高い空気吸着材を用いた場合でも、吸着特性を十分に発揮しつつ、水分による劣化を抑制することができる。
さらに、不織布や紙は折り曲げる力に対する形状自由度が大きいため、気体吸着デバイスの容器が軟包材であれば、気体吸着デバイスの折り曲げ自由度も大きくなり、より汎用的な用途に用いることが可能になる。
なお、軟包材とは外力により容易に変形し、収容されている部材の形状に追従するものであり、プラスチックラミネートフィルム等がこれに相当する。プラスチックラミネートフィルムは軟包材であり、折り曲げ力に対する形状自由度が大きい。従って、プラスチックラミネートフィルムを容器として用いることにより、気体吸着デバイスの折り曲げ力に対する形状自由度が大きくなる。さらに、アルミ箔をラミネートすることにより、優れたバリア性を得ることができ、気体吸着材を長期間保存することが可能となる。
また、真空断熱材そのものの構成においては、真空断熱材の大きさが同じ場合、複数の芯材で構成すると、一つの芯材部分の容積が小さくなるため、少しのガス侵入により内圧が上昇しやすくなってしまう。
しかし、本発明における吸着材は気体吸着材の特性を十分に発揮できる構成であるため、経時的な内圧上昇を抑制、真空断熱材の経時断熱性能を確保し、建材としての経時断熱性能を確保する。
なお、本発明における芯材および真空断熱材の形状は、断熱を必要とする箇所に応じて三角形、四角形、多角形、円形、L型あるいはそれらの組み合わせからなる任意形状が使用できる。
また、真空断熱材の作製において、独立した空間の形成方法は、減圧下において芯材のある部分を含めて外被材を加熱加圧して溶着する方法や、減圧下において外被材の外周部のみを熱溶着して芯材を減圧密封した後に大気圧によって押圧されている熱溶着層同士を高温雰囲気において熱溶着層の融点まで加熱して溶着する方法など特に指定するものではない。
本発明における芯材とは、大気圧による圧縮から真空断熱材の形状を保持するものであり、高い空隙率を有するものであれば、繊維、粉末、発泡樹脂、多孔質体、薄膜積層体等、特に指定するものではない。
例えば、繊維系では、グラスウール、グラスファイバー、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール、炭化ケイ素繊維等、粉末系では、シリカ、パーライト、カーボンブラック、発泡樹脂ではウレタンフォーム、フェノールフォーム、スチレンフォーム等がある。また、これらの混合体や成形体を使用することも可能である。
本発明における外被材とは、真空断熱材内部の空間と外部の空間とを遮断するものであり、バリア性を有するラミネートフィルムが使用でき、その構成は特に指定するものではない。
最内層の熱溶着層には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、無延伸ポリエチレンテレフタレート、無延伸ナイロン、無延伸エチレン−ポリビニルアルコール共重合体樹脂等が使用可能であり、特に指定するものではない。
また、外部からのガス侵入を抑制するために、金属箔や、蒸着フィルム、コーティングフィルム等が使用可能である。その種類や積層数は特に指定するものではない。金属箔は、アルミニウム、ステンレス、鉄やその混合物など、特に指定するものではない。また、蒸着やコーティングの基材となるプラスチックフィルムの材料は、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミドなど特に指定するものではない。また、蒸着の材料としては、アルミニウム、コバルト、ニッケル、亜鉛、銅、銀、シリカ、アルミナ、ダイヤモンドライクカーボンやそれらの混合物など、特に指定するものではない。また、コーティングの材料としては、PVA、ポリアクリル酸系樹脂やその混合物など特に指定するものではない。
また、耐ピンホール性や耐摩耗性の向上、難燃性の付与、さらなるバリア性の向上などを目的としてさらに外層や中間層にフィルムを設けることも可能である。
ここで、外層や中間層に設けるフィルムは、ナイロン、エチレン・4フッ化エチレン共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体樹脂など、その種類や積層数は、特に指定するものではない。
本発明における水分吸着材とは、気体中に含まれる水分を吸着するものであり、活性炭、シリカゲル、酸化カルシウム等があるが、特に指定するものではない。
本発明における気体吸着材とは、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着するものであり、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物や、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等、例えば、酸化リチウム、水酸化リチウム、酸化バリウム、水酸化バリウム等があるが、特に指定するものではない。
ここで、水分吸着材の形状は顆粒状、ペレット状等、特に指定するものではないが、粉末状であることが望ましい。
水分吸着材が粉末状であると、単位重量あたりの表面積が大きくなるため、周囲の水分をより早く吸着することが可能になる。従って、気体吸着材と水分吸着材を収容する空間をつなぐ仕切りの設計が容易になる。
これは、次に示す理由による。水分吸着材による水分の吸着漏れを少なくするため気体吸着材が収容された空間と水分吸着材が収容された空間をつなぐ仕切りの通気性は、ある値より小さくなければならない。
これは、水分を含む気体が、水分吸着材を収容した空間に留まる時間を確保するためであり、この時間は、水分吸着材が水分を吸着する速度が大きいほど短くすることが可能である。これは、気体吸着材が収容された空間と水分吸着材が収容された空間をつなぐ仕切りの通気性を大きくすることができることを意味する。
従って、気体吸着デバイス外の気体を単位時間当たりにより多く吸着することができ、気体の吸着速度を速める必要がある用途に用いることができる。
ここで、粉末状とは、平均粒子径が50μm以下のものであり、望ましくは平均粒子径が10μm以下のものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記吸着材が、少なくとも前記外被材の外周部に隣接した芯材部分に配置されたことを特徴とする。
金属箔などの使用により外被材のラミネート面のバリア性を強化しても、外被材の端部はガス透過度の高い熱溶着層が露出しているため、外被材端部に隣接した芯材部分ほど真空度が悪化しやすくなり、断熱性能が悪化しやすい。
そこで、この部分に空気吸着材を適用することによって、端部からの侵入ガスを効率的に吸着し、断熱性能の悪化を抑制する。
また、このように吸着材を配置すると、外被材端部に隣接しない芯材部分においても、端部に隣接する芯材部分で侵入ガスが吸着されるために、ガスが一層侵入しにくくなることで内圧変化が生じにくくなる。
なお、吸着材は、よりガスが侵入しやすい部分である2辺以上の端部と隣接する芯材部分に配置することがより望ましい。
また、吸着材を外周部に隣接した芯材部分以外に配置してもよい。全ての芯材部分に配置されていると、建物への適用時などに一部の芯材部分に釘打ちを行っても、その部分からの侵入ガスを、隣接する芯材部に配置された吸着材によって吸着することができる。
この場合、侵入ガスの量は隣接しない芯材部分に比べて、隣接する芯材部分のほうが多い。よって、侵入ガス量にあわせて吸着材の使用量を変更することが可能である。
なお、外周部に隣接した芯材部分の中でも、よりガスが侵入しやすい部分である2辺以上の端部と隣接する芯材部分への使用量を多くすることがより望ましい。吸着材の使用量が、外被材の外周部に隣接した芯材部分のほうが、隣接しない芯材部分よりも多いことによって、使用量を抑制できるために、低コスト化になる。
また、あらかじめ釘打ちする部位がわかっている場合には、釘打ち部に隣接する部分に隣接した芯材部分に配置してもよい。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記気体吸着材が、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなることを特徴とする。
銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、高い気体吸着能力を有するため、経時断熱性能を少ない使用量で維持できる。
銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、気体と水分のいずれに対しても非常に高活性である。このため水分吸着材で水分を吸着しきった気体を気体吸着材に到達させることが必要である。
気体吸着材と水分吸着材を収容する空間をつなぐ仕切りの通気性を適正化することにより、気体が水分吸着材付近に留まる時間を長くすることで、水分を含む量が少ない気体が気体吸着材に到達することが達成される。
銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは、窒素吸着に対する活性が高いことで知られており、おそらくは、細孔径と窒素の分子径の相対関係に起因する形状選択性、および、その三次元構造の特異性によると考える。さらに、窒素以外の気体種、すなわち、酸素、水分、一酸化炭素、二酸化炭素、水素などへの吸着活性をも有している。
銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトの作製は、市販されているZSM−5型ゼオライトの銅イオン交換と、水洗と、乾燥、熱処理のプロセスを経て行う。
銅イオン交換は、既知の方法にて行うことができるが、塩化銅水溶液やアンミン酸銅水溶液など銅の可溶性塩の水溶液に浸漬する方法が一般的であり、中でもプロピオン酸銅(II)や酢酸銅(II)などカルボキシラトを含むCu2+溶液を用いた方法で調整されたものは、窒素吸着活性が高い。
水洗は、イオン交換後に十分に行う。次いで、加熱乾燥または減圧下乾燥を行い、表面付着水を除去する。その後、低圧下にて適切な熱処理を行う。これは、イオン交換により導入されたCu2+をCuへと還元し、窒素吸着能を発現させるために必要である。熱処理時の圧力は、10mPa以下、好ましくは1mPa以下であり、温度はCuへの還元を進行させるため、300℃以上、好ましくは500℃〜600℃程度である。
以上のプロセスを経ることにより、窒素、水分、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素などの気体吸着活性を発現する。
銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトにおいては、銅がまずCu2+としてイオン交換される。次いで、低圧下にて適切な熱処理を行うことによりCu2+はCuへ還元され、気体吸着活性を発揮するものである。
よって、ZSM−5型ゼオライトのシリカ対アルミナ比に関しては、シリカ対アルミナ比が低い場合、すなわち−1価のアルミニウムが多数存在する場合、銅はCu2+の方が安定となり、熱処理によってCuへ還元されるサイトが低減するため、窒素吸着活性もまた低減する。
一方、シリカ対アルミナ比が大きい場合、すなわち−1価のアルミニウムが少ない場合、イオン交換により導入される銅が少なく、よってCuサイトが少なくなるため、これもまた窒素吸着活性が低減する。よって、窒素吸着活性を発現するためには、シリカ対アルミナ比が適正な範囲であることが望ましく、8以上25以下の範囲が望ましい。
また、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトは有害性情報がなく、環境負荷も低いと考える。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記芯材が、繊維の配向方向が伝熱方向に対して垂直なガラス繊維の集合体をボード状に成形した成形体であることを特徴とする。
ガラス繊維が伝熱方向に垂直に配向していることにより、繊維による伝熱が抑制されることで、配向方向がランダムな場合に比べて断熱性能が高くなる。また、ガラス繊維集合体を加熱プレスなどによって成形すると、繊維が延伸する効果も期待できるため、ガラス繊維の積層配列が改善されるために、より断熱性能が向上する。よって、建築部材に使用する際には、優れた断熱性能を発現する。
さらに、芯材が成形体であると、製造時の取り扱い性や真空断熱材の表面性・寸法精度が向上する。真空断熱材の表面性や寸法精度が向上することによって、建材としても設計しやすくなる。
一般に繊維系芯材を使用すると、初期断熱性能には優れるものの、長期に渡って使用する場合においては、空隙径が大きいために、断熱性能が内圧変化の影響を受けやすく、断熱性能の悪化が大きくなってしまうという問題がある。そこで、気体吸着材で侵入ガスを吸着することによって内圧変化を少なくし、断熱性能の悪化を抑制する。
なお、このときの成形体の密度は特に指定するものではないが、成形体としての形状を維持できるという観点から100kg/m以上、良好な断熱性能が得られるという観点から300kg/m以下の範囲が望ましい。
また、使用するガラス繊維は特に指定するものではないが、ガラス状態になり得るガラス形成酸化物が望ましく、熱変形温度が低く、厚み方向に積層配列されたものが望ましく、汎用的な工業製品としてはグラスウールが安価、かつ取り扱い性の観点からもより望ましい。
また、繊維径は、特に指定するものではないが、繊維径が微細なものほど優れた断熱性能が得られるため、10μm以下がより望ましい。
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、前記吸着材が、遠隔操作により、水分吸着材が収容されている空間を形成している容器を開封する開封手段を備えたものである。
高活性の気体吸着材の劣化を少なくするため、気体吸着デバイスは、真空断熱材封止後に開封することが望ましいが、真空断熱材は、外被材により内部空間と外部とが隔絶された構成である。このため、外部から直接的に気体吸着デバイスを開封するのは困難である。従って、気体吸着デバイスは遠隔操作により気体の吸着が可能になることが望ましい。
遠隔操作の方法としては、例えば気体吸着デバイス容器と真空断熱材の両方が軟包材の場合は、真空断熱材に予め突起物を内包しておき、減圧後に加わる大気圧により気体吸着デバイスの容器に押し付けられることで開封する方法、大気圧以上の力が必要な場合にはプレスする方法等があるが、真空断熱材封止後に遠隔操作によって開封する方法であれば、特に指定するものではない。
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の真空断熱材を適用した建築部材である。
気体吸着材を上記のような気体吸着デバイスとすることによって、製造時や真空断熱材適用時に、水分による失活を低減させることが可能であるため、気体吸着材の能力を十分に発揮することができる。すなわち、建築部材に適用した場合においても、長期に渡って省エネ効果が維持できる。
なお、本発明における建築部材とは、建物等の断熱を目的として、壁面、床面、屋根等に取り付け可能な部材であり、少なくとも真空断熱材を適用したものであればよく、真空断熱材そのものであっても、真空断熱材と断熱材との組み合わせ、真空断熱材と他の材料との組み合わせであってもよい。
組合せる材料としては、例えば、スチレンフォーム、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、グラスウール、セッコウ等が考えられるが、特に指定するものではない。なお、真空断熱材そのものの場合には、芯材部分とそれ以外の部分の違いが目視で判別しやすいため、真空ブレークを起こさないように釘打ちを行うことが容易である。
また、この場合、複数の芯材を有する真空断熱材であると、施工においても、一枚の芯材を有する真空断熱材を複数枚貼り付けるのに比べて、作業の効率が向上する。また、他の材料と組合せる場合には、真空断熱材が露出しない構成とすると、傷つきや突刺しによる真空ブレークのリスクが減るため、建物への施工時に取り扱いが非常に容易になる。
また、気体吸着デバイスの薄肉化が図れることから、真空断熱材特有の薄型で高断熱性能という特徴を生かすことができるため、建築部材としても薄肉化が図れる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における真空断熱材の平面図である。図1において、真空断熱材1は、複数の芯材2と、片面に熱溶着層を有するガスバリア性の外被材3と、吸着材4とを有し、熱溶着層同士が対向する外被材3の間に芯材2が2つ以上の独立した真空空間内に位置するように減圧密封され、かつ、吸着材4が、一箇所の芯材部分に配置されたものである。
まず、真空断熱材1の構成について説明する。真空断熱材1は、芯材2がそれぞれ所定の間隔で配置され、また、吸着材4は所定の芯材2部分に配置され、外被材3により減圧密封されている。また、芯材2はそれぞれが独立した真空空間内に位置するように芯材2の周囲には熱溶着部5が設けられている。
なお、吸着材4は、外被材の外周に隣接した芯材部分2aへの釘打ちを想定して、外被材の外周に隣接しない芯材部分2bに配置した。
また、図2は、本発明の実施の形態1における真空断熱材に使用した吸着材の断面図である。吸着材4は、気体吸着デバイスとして、真空断熱材1内に配置されており、気体難透過性の容器6内に、気体吸着材7と水分吸着材8を有し、気体吸着材7と水分吸着材8は、仕切り9により別々の真空空間に収容される構造となっている。さらに、容器6の水分吸着材8が収容された空間の表面には、突起物10が取り付けられており、真空断熱材1の封止後に、容器6に貫通孔が生じることで、水分吸着材8が配置された空間と真空断熱材1内部の空間が練通可能になっている。
本実施の形態の吸着材(気体吸着デバイス)は、気体吸着材7と、水分吸着材8と、例えば、アルミ箔を含むプラスチックラミネートフィルム(気体難透過性素材)からなる軟包材で構成された容器6とからなり、容器6は内部が通気性を調節可能な、例えば不織布からなる仕切り9により2つの空間に仕切られており、気体吸着材7と水分吸着材8はそれぞれ容器6の異なる空間に収容されている。なお、仕切り9により仕切られた2つの空間が、気体吸着材7または水分吸着材8を収容する空間の厚み方向に対して略垂直な方向に並んでいる。また、遠隔操作により、水分吸着材8が収容されている空間を形成している容器6を開封する突起(開封手段)10が、水分吸着材8が収容されている空間を形成している容器6に接触している。
突起物(開封手段)10は、例えば、プラスチック成型品からなり、一方の面が凸で他方の面が凹で、凸の面を押す外力が加わっていない状態で凹の面の凹んだ部分に凹みの深さと同じ高さか若干低い高さの突起部を有し、凸の面を押す外力が加わると突起物(開封手段)10の凹凸が小さくなり突起部の高さが凹みの深さより高くなるように変形可能に構成され、突起部のある凹の面側に水分吸着材8が収容されている空間を形成している容器6が配置され、大気圧程度の力で凸の面が押されると、突起物(開封手段)10の突起部が、水分吸着材8が収容されている空間を形成している容器6に接触して、やがて水分吸着材8が収容されている空間を形成している容器6を貫通するように構成している。
なお、気体吸着材7は、気体難透過性素材からなる容器6内部に真空封止されているため、気体吸着デバイスを長時間大気中に放置しても、気体吸着材7は気体に触れないため、失活が抑制可能であり、長時間大気中で保存することができる。同様の理由で、製造時の失活も抑制できる。
次に、真空断熱材1の作製方法について説明する。まず、外被材3の熱溶着層を上に向け、複数の芯材2(外被材3の外周に隣接した芯材2aと、外被材3の外周に隣接しない芯材2b)と、外被材3の端部に隣接しない芯材2b部分に吸着材4を配置する。次に、これを熱溶着層同士が対向するようにもう1枚の外被材3で覆う。さらにこれを減圧下で外被材3の外周部分を溶着し、大気圧下で高温環境に置くなどの方法により芯材2間を溶着し、熱溶着部5を設ける。
なお、芯材2b部分に吸着材4を配置する時は、一方の表面部分に気体吸着デバイス1を突起物(開封手段)10が露出する程度に内部に埋め込んだ状態の芯材2bを、突起物(開封手段)10の凸の面が外被材3に接触し、突起物(開封手段)10の突起部のある凹の面が水分吸着材8の収容されている空間を形成している容器6に接触するようにする。
気体吸着デバイスの真空断熱材内部での開封は、次のように行われる。
真空断熱材1の外被材3はプラスチックラミネートフィルムであるため、真空封止後に加わる大気圧により変形し、気体吸着デバイスに圧縮力を加える。この結果、突起物10は軟包材からなる容器6に突き刺し力を加えるため、容器6には貫通孔が生じて外被材3中の気体が吸着可能になる。
この貫通孔により、真空断熱材1内の気体は、まず水分吸着材8を収容した空間に侵入する。ここで気体は、水分吸着材8により水分が除去される。次に、水分が少なくなった気体は、仕切り9を通過して、気体吸着材7を収容した空間に移動する。従って、気体吸着材7はその吸着能力の大部分を気体の吸着に発揮できるため、効率的に気体を吸着する。
また、突起物10により生じた貫通孔の通気性は、仕切り9の通気性に比較して大きくされているため、水分吸着材8を収容した空間に侵入した気体は内部で淀むことになる。この間に気体に含まれる水分は、水分吸着材8により除去されるため、仕切り9を経て気体吸着材7に到達する気体は水分を含む量が非常に低減されている。
従って、気体吸着材7はその吸着能力の大部分を気体の吸着に発揮できるため効率的に気体を吸着することができる。
吸着材4を、上記構成の気体吸着デバイスとしたことによって、気体吸着材7の有する特性を十分に発揮できるために、真空断熱材1の経時的な断熱性能の変化が抑制できた。
なお、図3は、本実施の形態における芯材の配置を変更した真空断熱材の平面図である。図1同様に、外周に隣接した芯材2a部分への釘打ちを想定したものであるが、芯材の数に応じて吸着材を複数配置してもよい。また、このときの配置箇所は特に指定するものではなく、図3のように釘打ちする芯材部に隣接した芯材部分のみでもよく、全体でもよく、釘打ちなどを行う芯材部分には配置しなくてもよく、必要に応じて配置できる。また、あらかじめ釘打ちする場所がわかっている場合は、その周囲の芯材部分に配置することが望ましい。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における真空断熱材の平面図である。図4において、真空断熱材11は、複数の芯材12と、ガスバリア性の外被材13と、吸着材14とから構成されている。
まず、真空断熱材11の構成について説明する。真空断熱材11は、芯材12がそれぞれ所定の間隔で碁盤目状に配置され、また、吸着材14は所定の芯材12部分に配置され、外被材13により減圧密封されている。また、芯材12はそれぞれが独立した真空空間内に位置するように芯材12の周囲には熱溶着部15が設けられている。なお、吸着材14は、外被材13端部からの侵入ガスの吸着を狙って、外被材13の外周部に隣接した芯材12a部分に配置されている。
吸着材14の構成および機構は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
また、真空断熱材11の作製方法も、実施の形態1の真空断熱材1と同様であるため、説明を省略する。
吸着材14を、気体吸着デバイスとしたことによって、気体吸着材の有する特性を十分に発揮できるために、真空断熱材11の経時的な断熱性能の変化が抑制できた。
なお、外被材13の外周部に隣接した20個の芯材12aの空間には、大気圧と芯材12a部分の圧力の差に応じて空気や水蒸気などのガスが侵入するが、吸着材14が、侵入ガスを吸着することで内圧変化が抑制される。
また、外被材13の外周部に隣接しない16個の芯材12bは、芯材12a部分に配置した吸着材13が端部からのガスを効率的に吸着することと、外被材13の外周部に隣接した芯材12aとは熱溶着部15を介して別の独立空間にあることにより、外被材13の外周部に隣接した芯材12aよりも断熱性能の悪化が抑制される。よって、真空断熱材全体の断熱性能を長期に渡って維持することができる。
なお、吸着材の配置箇所は外被材の外周部に隣接した芯材12a部分のみに限定するものではなく、あらかじめ釘打ちする場所がわかっている場合は、その周囲の芯材部分にも吸着材を配置することがより望ましい。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における真空断熱材を適用した建物の断面図である。
本発明の実施の形態3における建物16には、外壁17と内壁18との間や、床板19に接する床下や、屋根材20に接した屋根裏に、実施の形態2の真空断熱材を適用した建築部材21が配置されている。このように構成された建物16は、優れた断熱性能を有する建築部材21を適用したことにより、優れた保温、および、省エネルギー効果を示した。また、断熱性能の変動が少なかったため、長期に渡って省エネ効果が維持できた。
なお本実施の形態では実施の形態2の真空断熱材を使用したが、実施の形態1の真空断熱材でも優れた省エネ効果が得られる。
実施の形態2の真空断熱材において、吸着材の仕様を種々変更して、経時断熱性能を比較した。
(実施例1)
芯材として繊維の配向方向が伝熱方向に対して垂直なガラス繊維の集合体をボード状に成形した成形体を、気体吸着材としてZSM−5型ゼオライトを、水分吸着材として水酸化カルシウムを使用した。
真空断熱材の温度加速試験により50年後の断熱性能を予測し、さらにこの真空断熱材を建築部材として使用した建物の省エネ効果を予測した。
芯材として、上記構成の芯材を使用したことによって、非常に高い初期断熱性能0.0020W/mKが得られた。経時断熱性能については、一般に繊維系材料は、内部圧力の変化量に対する断熱性能の変化量が大きいため、経時的な断熱性能が悪化しやすいが、本構成の気体吸着材を使用することにより、0.0050W/mKまで悪化が抑制され、高い省エネ効果を維持することができると予測した。
(比較例1)
実施例1において、気体吸着材を適用せず、水分吸着材のみを適用した。
初期は0.0020W/mKと実施例1と同等であったが、経時断熱性能については、0.0250W/mKを超えるまでに悪化してしまい、建築部材として適用した場合にも省エネ効果は維持できないと予測した。水分吸着材では、真空断熱材に侵入する窒素や酸素等の気体を吸着することができないために、経時断熱性能が悪化してしまったと考える。
(比較例2)
実施例1において、吸着材をデバイス化せずに、気体吸着材と水分吸着材を併用した。
初期は0.0020W/mKと実施例1と同等であったが、経時断熱性能は0.0200W/mKまで悪化してしまった。気体吸着材の方が水分吸着材に比べて水分に対する活性が高いために、真空断熱材に侵入する水分を気体吸着材が吸着することによって失活してしまい、気体吸着能力を十分に発揮できなかったと考える。
以上のように本発明にかかる真空断熱材は、長期に渡って断熱性能を維持できる。このため、非常に長い間断熱性能が要求される建物への使用が可能である。また、建物以外にも電車、自動車等の乗り物等、断熱を必要とする空間を形成する壁面等への適用も可能である。また、冷蔵庫のような保冷機器や、電気湯沸かし器、炊飯器、保温調理器、給湯器等の保温機器に使用すれば長期に渡って優れた省エネ効果を示す。また、省スペースで高い断熱性能が要求されるようなノート型コンピューター、コピー機、プリンター、プロジェクター等の事務機器への適用も可能である。また、コンテナボックスやクーラーボックス等の保冷が必要な用途への適用も可能である。
本発明の実施の形態1における真空断熱材の平面図 同実施の形態の真空断熱材に使用した吸着材の断面図 同実施の形態の真空断熱材の変形例を示す平面図 本発明の実施の形態2における真空断熱材の平面図 本発明の実施の形態3における真空断熱材を適用した建物の断面図
符号の説明
1 真空断熱材
2 芯材
3 外被材
4 吸着材
6 容器
7 気体吸着材
8 水分吸着材
9 仕切り
10 突起物(開封手段)
11 真空断熱材
12 芯材
13 外被材
14 吸着材
21 建築部材

Claims (6)

  1. 少なくとも、複数の芯材と、片面に熱溶着層を有するガスバリア性の外被材と、吸着材とを有し、前記熱溶着層同士が対向する前記外被材の間に前記芯材が2つ以上の独立した真空空間内に位置するように減圧密封され、かつ、前記吸着材が、一箇所以上の芯材部分に配置された真空断熱材であって、前記吸着材が、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着できる気体吸着材と、水分吸着材と、気体難透過性素材からなる容器とからなり、前記容器は内部が通気性を制御可能な仕切りにより少なくとも2つ以上の空間に仕切られており、前記気体吸着材と前記水分吸着材はそれぞれ前記容器の異なる空間に収容されていることを特徴とする真空断熱材。
  2. 前記吸着材が、少なくとも前記外被材の外周部に隣接した芯材部分に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材。
  3. 前記気体吸着材が、銅イオン交換されたZSM−5型ゼオライトからなることを特徴とする請求項1または2に記載の真空断熱材。
  4. 前記芯材が、繊維の配向方向が伝熱方向に対して垂直なガラス繊維の集合体をボード状に成形した成形体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の真空断熱材。
  5. 前記吸着材が、遠隔操作により、水分吸着材が収容されている空間を形成している容器を開封する開封手段を備えた請求項1から4のいずれか一項に記載の真空断熱材。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の真空断熱材を適用した建築部材。
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