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JP5178228B2 - ゴム組成物及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ゴム組成物及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、充填補強材である繊維の分散性を高め、耐久性及び剛性に優れた補強ゴム及びそれを用いたタイヤ等のゴム製品を提供することのできるゴム組成物及びその製造方法に関するものである。
タイヤ製品等のゴムは一般に、カーボンブラック、シリカ等の粒状無機補強材を添加して、その強度及び剛性を高めている。しかし、このような粒状無機補強材はその形状に起因する理由でその補強性能に限界が見られる。そこで、ゴムの補強材として短繊維を選択して硬度やモジュラスなどを向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、0.5〜1000μmのアラミド短繊維を含むマスターバッチをタイヤゴムに利用することが提案されている(例えば、特許文献2)。更に、ゴムにセルロース繊維を複合化させたゴム組成物が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
特開平10−7811号公報 特開2001−164052号公報 特開2006−206864号公報
ところで、繊維、例えばセルロース系繊維をゴム補強材とした場合、親水性のセルロースと疎水性のゴムを複合化させたものでは、補強材のゴムへの分散性が悪く十分な耐久性及び剛性を発揮できない。また繊維/ゴム界面の接着性或いは粘着性も十分ではない。このため、ゴムが機械的応力を受けた場合に、繊維の離脱、或いは剥離が起こり、十分な強度及び耐久性が得られない。
従って、本発明は、セルロース系繊維からなる補強材のゴム成分への分散性及び接着性を高めて十分な耐久性及び剛性を発揮するゴム組成物及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、セルロース系繊維として、平均繊維径がナノオーダのセルロースナノ繊維をゴムの補強材とすると共に、かかる補強材にシランカップリング剤を配合することにより、ゴム成分への分散性を高め、更に、カップリング剤をポリスルフィド構造を持ったスルフィド系シランカップリング剤とすることにより、ゴム成分との界面での接着性及び粘着性を高めることが期待できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係るゴム組成物及びその製造方法は、以下の(1)乃至(7)に記載される構成或いは手段を特徴とするものである。
(1)ゴム成分中に、セルロースナノ繊維をゴム成分100質量部に対して、1〜50の範囲、及び硫黄数が2〜10のポリスルフィド構造を有するスルフィド系シランカップリング剤を、セルロースナノ繊維に対して、0.05〜20質量%の範囲で含み、ゴムラテックスと、水に分散させた上記繊維のスラリーに上記シランカップリング剤を添加したものとを、混合した後、混合液を乾燥して水を除去して、得ることを特徴とする、ゴム組成物。
2)上記セルロースナノ繊維は、平均繊維径が1〜1000nmの範囲にあり、平均繊維長さが0.1〜100μmの範囲にある(1)記載のゴム組成物。
(3)水に分散させた、セルロースナノ繊維のスラリーに、シランカップリング剤を添加したものと、ゴムラテックスとを混合した後、混合液を乾燥して水を除去することを特徴とする、(1)又は(2)に記載のゴム組成物の製造方法。
(6).上記(1)〜(5)に記載のゴム組成物の製造方法において、ゴムラテックスと、水に分散させた上記繊維のスラリーとを混合した後、混合液を乾燥して水を除去して得ることを特徴とするゴム組成物の製造方法。
(7).上記スラリーに上記シランカップリング剤を添加する上記(6)記載のゴム組成物の製造方法。
本発明のゴム組成物は、親水性であるセルロースナノ繊維と疎水性であるゴム成分とをシランカップリング剤を介することで分散性を良好にすることが可能となるため、補強性が向上する。また、シランカップリング剤が硫黄を含有すると、カップリング剤内の硫黄部分でも架橋することが可能となるため、繊維とゴムの接着性が向上し、強度を増大させることができる。
以下、本発明に係る好ましい実施するための最良形態を詳述する。尚、本発明は以下の実施形態及び実施例に限るものではない。
本発明に係るゴム組成物は、ゴム成分に、平均繊維径がナノオーダのセルロースナノ繊維及びシランカップリング剤を含む。
本発明に係るゴム組成物のゴム成分は特に限定されないが、タイヤ製品等に使用することができるものとしては、例えば、以下のゴム成分を挙げることができる。
ゴム組成物のゴム成分は大別して、天然ゴム、及び合成ゴムから選択され、両者を混合使用しても良い。合成ゴムは、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、ジエン系ゴムが好ましく、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及びブチルゴム等がある。
本発明に係るゴム組成物に配合されるセルロースナノ繊維は、平均繊維径が1〜1000nmの範囲で、平均繊維長さが0.1〜100μmの範囲であることが好ましい。特に、セルロースナノ繊維の平均繊維径が1〜500nmの範囲で、平均繊維長さが5〜50μmの範囲であることが更に好ましい。平均繊維粒径及び平均繊維長さが上記範囲未満の場合はその分散性が低下し、また上記範囲を超えると補強性能が低下する。
ここで、平均繊維径及び平均繊維長さは、繊維をエチレングリコール溶液中に分散させ、細孔電気抵抗法(コールター原理法)により計測する。
また、上記セルロースナノ繊維はゴム成分100質量部に対して、1〜50質量部の範囲、特に、3〜20質量部の範囲で含まれることが好ましい。繊維の量が少ないと補強効果が十分でなく、逆に多いとゴムの加工性が悪くなってくる。
本発明のゴム組成物に配合されるシランカップリング剤は、それ自体公知なものが挙げられ、例えばビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。
上記シランカップリング剤は、セルロースナノ繊維に対して0.05〜50質量%の範囲、特に、1〜20質量%の範囲で含まれることが好ましい。シランカップリング剤の量が少ないと、配合効果が十分でなくなる。また、過剰量では、大幅な性能向上は認められず、コストが上昇する。
本発明にあっては、特に、上述のシランカップリング剤の中では、硫黄数Xが2〜10のポリスルフィド構造を有するスルフィド系シランカップリング剤が好ましい。
例えば、ビス−トリエトキシシリルアルキルポリスルフィドにあっては、ポリスルフィドの硫黄数Xは、2〜10個、更に好ましいは3〜7個である。また、アルキル鎖は、2〜4の範囲が好ましい。例えば、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピルポリスルフィドを一般式(1)で表すと、以下のように表される。
Figure 0005178228
このような以下のポリスルフィド構造を有するスルフィド系シランカップリング剤を配合すると、図1で示すセルロース構造分子の−OHが図2に示すようにシランカップリング結合すると共に、カップリング剤内の硫黄部分でもゴム成分と架橋することが可能となるため、繊維とゴムの接着性、密着性が向上し、強度を増大させることができる。
次に、本発明においてゴム組成物を製造するには、先ず、上記繊維を水に分散させた後に、叩解させ、オリフィスを通過させ、適宜機械的せん断を加えて、高圧ホモジナイザーなどで分散させてスラリー化する。実際には各種繊維径の繊維が市販されており、本発明ではこれらを水中にスラリー化して用いる。かかる場合のスラリーにおける上記繊維の濃度は製造操作上、水100質量部に対して、0.1〜3質量部の範囲であることが好ましい。また本発明のシランカップリング剤、特に、スルフィド系シランカップリング剤は、上記スラリーを固化させた後にインテグラルブレンド法により、ゴム混練時に直接添加することが好ましく、混練のせん断混合によりカップリング剤のシリル基部分をセルロースの−OH基と反応させ、更にゴム−セルロース界面の化学結合を促進させる方法が望ましい。
本発明に従ってゴムラテックス及び繊維、シランカップリング剤のスラリーを混合する方法には特に限定はなく、例えばホモジナイザー、ロータリー撹拌装置、電磁撹拌装置、プロペラ式撹拌装置等の一般的方法によることができる。
本発明において、混合液から水を除去するのには、例えば、オーブン乾燥、凍結乾燥、噴露乾燥などの一般的方法によることができる。
本発明における上記混合液の固形分濃度には特に限定はないが、40質量%以下であるのが好ましく、更に5〜15質量部の範囲にあるのが好ましい。この固形分濃度が40質量%を超えると、混合液の粘度が高くなり過ぎ、繊維の分散性が低下する。
本発明のゴム組成物は、上記の配合成分の他に、ゴム工業で通常使用されている種々の成分を含むことができる。例えば、種々の成分として、充填剤(例えば、シリカ等の補強性充填剤;並びに炭酸カルシウム及び炭酸カルシウムなどの無機充填剤);加硫促進剤;老化防止剤;酸化亜鉛;ステアリン酸;軟化剤;及びオゾン劣化防止剤等の添加剤を挙げることができる。なお、加硫促進剤として、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)及びCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系加硫促進剤;TT(テトラメチルチウラムスルフィド)等のチウラム系加硫促進剤;並びにDPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤等を挙げることができる。
具体的には、ゴム組成物はゴム成分100質量部に対して硫黄を7.0質量部以下に配合することができる。特に、3.0〜7.0質量部の範囲、更に好ましくは4.0〜6.0質量部の範囲である。ゴム組成物はゴム成分100質量部に対して有機酸コバルト塩を1.0質量部以下に配合することができる。特に、0.05〜1.0質量部の範囲、更に好ましくは0.3〜〜0.8質量部の範囲である。上記コバルト有機酸塩としては、ナフテン酸コバルト、ロジン酸コバルト、或いは炭素数が5乃至20程度の直鎖状或いは分岐鎖のモノカルボン酸コバルト塩等を挙げることができる。
またゴム組成物に、上記ゴム成分100質量部に対してカーボンブラックが40質量部以上、更には40乃至100質量部、特に、50乃至100質量部配合させることが好ましい。カーボンブラックは、通常ゴム業界で用いられるものから適宜選択することができ、例えば、SRF、GPF、FER、HAF、ISAF等を挙げることができるが、中でもGPF、HAFが物性とコストのバランスの面から好ましい。
以上の如く構成されるゴム組成物にあっては、セルロースナノ繊維の配合により、スラリーでの分散性が均一となり、シランカップリング剤の配合によって、ゴムへの分散性が高まる。特にポリスルフィド構造を含むシランカップリング剤の配合では分散性及びゴムへの親和性、接着性が高まり、補強性が一層向上することができる。
次に、実施例、比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに制約されるものではない。
天然ゴムラテックス(固形分濃度:60質量%)200g、セルロース繊維スラリー(ダイセル化学社製「セリッシュ」:平均繊維径100nm、平均繊維長45μm、固形分濃度:5質量%)300g、水1000g、及び下記表1のポリスルフィドシランを、高速混合ホモジナイザー中で毎秒3000回転で5分間混合し、セルロース・天然ゴム混合溶液を得た。
これをバットに展開し、温度100℃オーブン中にて乾燥固化させ、セルロース繊維複合天然ゴムを得た(繊維複合ゴム)。
繊維複合ゴムのゴム成分100質量部に対して、下記の表1に示す構成により、ラボ混練機により通常の混練を行い、得られた混合物を加圧プレス加硫し、厚さ2mmのゴムシートを得た。
評価試験
ゴムシートを所定のダンベルを打ち抜いき、ASTM D412に準じた加硫ゴムの引張り試験を行い、300%モジュラスと破断強度を測定した。測定値は、比較例1の値を100として、それぞれの実施例の値をそのインデックス表示としたものである。
Figure 0005178228
表中の注1;ダイセル化学社製のセリッシュ KY100G、注2;旭カーボン社製のファーネスブラックHAF、注3;大内新興化学社製のノクセラーDM、注4;大内新興化学社製のノクセラーNS、注5:デグザ社製のSi−69。
本発明のゴム組成物は、セルロース系繊維からなる補強材のゴム成分への分散性及び接着性を高めて十分な耐久性及び剛性を発揮する産業上の利用可能性の高いものである。
図1は、一般的なセルロース分子構造を示す図である。 図2は、セルロースナノ繊維とシランカップリング剤とゴムとの反応結合関係図である。

Claims (3)

  1. ゴム成分中に、セルロースナノ繊維をゴム成分100質量部に対して、1〜50の範囲、及び硫黄数が2〜10のポリスルフィド構造を有するスルフィド系シランカップリング剤を、セルロースナノ繊維に対して、0.05〜20質量%の範囲で含み、ゴムラテックスと、水に分散させた上記繊維のスラリーに上記シランカップリング剤を添加したものとを、混合した後、混合液を乾燥して水を除去して、得ることを特徴とする、ゴム組成物。
  2. 上記セルロースナノ繊維は、平均繊維径が1〜1000nmの範囲にあり、平均繊維長さが0.1〜100μmの範囲にある請求項1記載のゴム組成物。
  3. 水に分散させた、セルロースナノ繊維のスラリーに、シランカップリング剤を添加したものと、ゴムラテックスとを混合した後、混合液を乾燥して水を除去することを特徴とする、請求項1又は2に記載のゴム組成物の製造方法。
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