JP5164541B2 - 研磨液および研磨方法 - Google Patents
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Description
LSIなどの半導体デバイスを製造する際には、微細な配線を多層に形成することが行われており、その各層においてCuなどの金属配線を形成する際には層間絶縁膜への配線材料の拡散を防止することや、配線材料の密着性を向上させることを目的として、TaやTaN、Ti、TiNなどのバリアメタルを前もって形成することが行われている。
このディッシングを軽減するため、金属膜CMPの次に行うバリアメタルCMPでは、金属配線部の研磨速度とバリアメタル部の研磨速度とを調整して、最終的にディッシングやエロージョンなどの段差が少ない配線層を形成することが求められている。即ち、バリアメタルCMPでは、金属配線材に比較してバリアメタルや層間絶縁膜の研磨速度が相対的に小さい場合は、配線部が早く研磨されるなどディッシングや、その結果としてのエロージョンが発生してしまうため、バリアメタルや絶縁膜層の研磨速度は適度に大きい方が望ましい。これはバリアメタルCMPのスループットを上げるメリットがあることに加え、実際的には金属膜CMPによってディッシングが発生していることが多く、前述の理由からバリアメタルや絶縁膜層の研磨速度を相対的に高くすることが求められている点においても望ましいからである。
しかしながら、このような固体砥粒を含む研磨液を用いてCMPを行うと、研磨傷(スクラッチ)、研磨面全体が必要以上に研磨される現象(シニング)、研磨金属面の中央のみがより深く研磨されて皿状のくぼみを生ずる現象(ディッシング)、金属配線間の絶縁体が必要以上に研磨された上、複数の配線金属面表面が皿状の凹部を形成する現象(エロージョン)などが発生することがある。
また、固体砥粒を含有する研磨液を用いることによって、研磨後に、半導体面に残留する研磨液を除去するために通常行なわれる洗浄工程が複雑となり、更に、その洗浄後の液(廃液)を処理するには、固体砥粒を沈降分離する必要があるなどコスト面での問題点が存在する。
例えば、研磨傷をほとんど発生させずに高速研磨することを目的としたCMP研磨剤及び研磨方法(例えば、特許文献1参照。)、CMPにおける洗浄性を向上させた研磨組成物及び研磨方法(例えば、特許文献2参照。)、及び、研磨砥粒の凝集防止を図った研磨用組成物(例えば、特許文献3参照。)がそれぞれ提案されている。
しかしながら、上記のような研磨液においても、バリア層を研磨する際に高研磨速度を実現し、且つ、固体砥粒の凝集に起因して発生するスクラッチを抑制しうる技術は、未だ得られていないのが現状である。
本発明の研磨液は、半導体集積回路のバリア層を研磨するための研磨液であって、(A)イミダゾリウム塩、(B)コロイダルシリカ、及び(C)腐食抑制剤を含むことを特徴とする。
また、前記(A)イミダゾリウム塩は、下記一般式(1)で表される化合物である。
本発明の研磨液は、研磨定盤上の研磨パッドに供給され、被研磨体の被研磨面と接触させて、前記被研磨面と前記研磨パッドを相対運動させる研磨方法に用いられる。
即ち、研磨液中のイミダゾリウム塩のカチオン部位が研磨粒子(コロイダルシリカ)表面に吸着することで、研磨粒子と被研磨面間での相互作用が強くなると考えられる。より具体的には、表面がマイナスに帯電した研磨粒子、表面がマイナスに帯電した被研磨面の間での斥力をオニウムカチオンが緩和すると考えられる。結果として、研磨粒子−被研磨面間での物理作用(物理的な引っ掻き除去作用)が強くなり、各膜種に対する研磨速度が向上したと考えられる。また、イミダゾリウム塩の融点が低いことにより、研磨時の摩擦力が低減し、スクラッチを低減したと考えられる。また、スクラッチは研磨粒子の凝集や、粗大な研磨屑が生成することにより、物理作用が局部的に大きくなる事が要因の一つとして考えられるが、本発明におけるイミダゾリウム塩の添加ではそのような現象が起こり難い事がスクラッチを少なくしたと考えられる。
本発明の研磨液は、半導体デバイスの製造工程における主としてバリア層の化学的機械的研磨に使用するための研磨液であって、(A)イミダゾリウム塩、(B)コロイダルシリカ、及び(C)腐食抑制剤を含み、pHが2.5〜5.0であることが好ましく、更に必要に応じて、任意の成分を含んでいてもよい。
本発明の研磨液が含有する各成分は1種を単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
以下、本発明の研磨液を構成する各成分について詳細に説明する。
本発明の研磨液は、(A)イミダゾリウム塩を含有する。
本発明における(A)イミダゾリウム塩は、分子内に少なくとも1つの四級窒素を含む構造であれば、特に限定されない。中でも、十分な研磨速度の向上を達成する観点から、分子構造中に2つ以上のカチオンを含む構造であることが好ましい。また、同様の観点から、(A)イミダゾリウム塩の融点は、200℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、更に25℃以下であることがより好ましい。
さらに、本発明における(A)イミダゾリウム塩は、25℃の水溶液中で中性であることが好ましい。そのような観点からは、イミダゾリウム塩の対アニオンは強酸の解離体であることが好ましく、例えば、ハロゲンイオン(例えば、F−、Cl−、Br−、I−)、BF4 −、PF6 −、(CF3SO2)2N−、(CF3CF2SO2)2N−、CF3SO3 −、CH3SO3 −、CH3PhSO3 −、SO4 2−などが挙げられる。なお、Phはフェニル基を示す。
以下に一般式(1)で表される化合物について詳細を記す。
直鎖、分岐のアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、トリフルオロメチル基、2−メトキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基、および2−エチルヘキシル基を挙げることができる。
シクロアルキル基としては、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましい。例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基を挙げることができる。
ビシクロアルキル基としては、炭素数5〜30のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基を挙げることができる。例として、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル基を挙げることができる。本発明におけるビシクロアルキル基は、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中の「アルキル基」は、本発明では直鎖アルキル基、分岐アルキル基に加えて、単環および多環の脂環式炭化水素基を含むものとする。
直鎖、または分岐のアルケニル基としては、炭素数2〜30のアルケニル基が好ましい。例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基を挙げることができる。
シクロアルケニル基としては、炭素数3〜30のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例としては、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基が挙げられる。
ビシクロアルケニル基としては、炭素数5〜30のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基が好ましい。例として、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル基を挙げることができる。
前記炭素数1〜30のアルケニレン基としては、具体的には、ビニレン基、プロピニレン基、ブテニレン基等が挙げられ、中でも、プロピニレン基が好ましい。
前記炭素数1〜30のシクロアルキレン基としては、具体的には、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基等が挙げられ、中でも、シクロヘキシレン基が好ましい。
前記炭素数1〜30のアリーレン基としては、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられ、中でも、フェニレン基が好ましい。
一般式(1)中、R1、R2、L、およびX−のより好ましい組み合わせは、R1およびR2が、それぞれ独立に、無置換の炭素数1〜4のアルキル基であり、Lが、無置換の炭素数が5または6のアルキレン基であり、X−が、Br−、(CF3SO2)2N−、CF3SO3 −、またはp−CH3PhSO3 −である組み合わせである。
本発明において、好適に用いられるイミダゾリウム塩である前記例示化合物(1−1)、(1−3)、および(1−5)の合成例を下に示す。前記イミダゾリウム塩の合成方法は下記合成例に限られるものではなく、また、前記例示化合物(1−1)、(1−3)、および(1−5)以外の例示化合物も下記合成例と同様にして合成することができる。
300mlの三口フラスコに1-メチルイミダゾール(8.2g、0.1mol、東京化成工業社製)を秤量し、トルエン(100ml)を添加した。概溶液に、1,6、−ジブロモヘキサン(12.1g、0.05mol、東京化成工業社製)を添加し、110℃で4時間加熱還流した。二層に分離した反応系の下層を分離し、酢酸エチル(100ml)で繰り返し分液操作を行い、下層を減圧濃縮することで、オイル状の例示化合物(1−1)(19.5g)を得た。得られた例示化合物(1−1)の構造は1H−NMRにより決定した。
300mlの三口フラスコに1,5−ジヒドロキシペンタン(6.7g、0.064mol、和光純薬社製)を添加し、ピリジン(100ml)に溶解した。概溶液を氷冷下、p−トルエンスルホニルクロライド(24.8g、0.13mol、関東化学社製)をゆっくりと添加した。反応液を40℃で6時間加熱し、酢酸エチル(300ml)を添加、希塩酸、水で分液洗浄後、酢酸エチル層を濃縮した。濃縮後析出した結晶を酢酸エチルで再結晶し、1,5−ビス(p−トルエンスルホキシ)ペンタン(16.9g、0.041mol)を得た。得られた化合物をトルエン(100ml)に溶解後、1-メチルイミダゾール(6.7g、0.082mol、東京化成工業社製)を添加し、110℃で6時間加熱還流した。反応液を10℃に冷却後析出した結晶をろ過し、例示化合物(1−3)(22.8g)を得た。得られた例示化合物(1−3)の構造は1H−NMRにより決定した。
300mlの三口フラスコに1,5−ジヒドロキシペンタン(10.4g、0.1mol、和光純薬社製)を添加し、ピリジン(100ml)に溶解した。概溶液を氷冷下、メタンスルホニルクロライド(23g、0.2mol、和光純薬社製)のアセトニトリル溶液をゆっくりと滴下した。反応液を40℃で4時間加熱し、酢酸エチル(300ml)を添加、希塩酸、水で分液洗浄後、酢酸エチル層を濃縮した。濃縮後析出した結晶を酢酸エチルで再結晶し、1,5−ビス(メタンスルホキシ)ペンタン(20.8g、0.08mol)を得た。得られた化合物をトルエン(100ml)に溶解後、1-メチルイミダゾール(13.1g、0.16mol、東京化成工業社製)を添加し、110℃で6時間加熱還流した。反応液を10℃に冷却後析出した結晶をろ過し、例示化合物(1−5)(29.2g)を得た。得られた例示化合物(1−5)の構造は1H−NMRにより決定した。
本発明の研磨液は、砥粒の少なくとも一部として、コロイダルシリカを含有する。
このコロイダルシリカとしては、粒子内部にアルカリ金属などの不純物を含有しない、アルコキシシランの加水分解により得たコロイダルシリカであることが好ましい。一方、ケイ酸アルカリ水溶液からアルカリを除去する方法で製造したコロイダルシリカも用いることができるものの、この場合、粒子の内部に残留するアルカリ金属が徐々に溶出し、研磨性能に影響を及ぼす懸念がある。このような観点からは、アルコキシシランの加水分解により得られたものが原料としてはより好ましい。
コロイダルシリカの粒径は、砥粒の使用目的に応じて適宜選択され、一般的には10〜200nm程度であるが、研磨傷を発生させない観点から、一次平均粒径が20〜50nmの範囲であることが好ましい。
コロイダルシリカの一次平均粒径は、表面積粒子径や電子顕微鏡写真から測定する事ができる。
本発明の研磨液に対し、(B)コロイダルシリカと併用しうる砥粒としては、ヒュームドシリカ、セリア、アルミナ、チタニア等が挙げられる。これら併用砥粒のサイズは、(B)コロイダルシリカと同等か、それ以上、また、2倍以下であることが好ましい。
本発明の研磨液は、被研磨表面に吸着して皮膜を形成し、金属表面の腐食を制御する腐食抑制剤を含有する。本発明における腐食抑制剤としては、分子内に3以上の窒素原子を有し、且つ、縮環構造を有する複素芳香環化合物を含有することが好ましい。ここで、「3以上の窒素原子」は、縮環を構成する原子であることが好ましく、このような複素芳香環化合物としては、ベンゾトリアゾール、及び該ベンゾトリアゾールに種々の置換基が導入されてなる誘導体であることが好ましい。
本発明の研磨液には、(D)カルボキシル基を有する化合物(以下、適宜「有機酸」と称する。)を含有することが好ましい。カルボキシル基を有する化合物としては、分子内に少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物であれば特に制限はない。
カルボキシル基を有する化合物としては、水溶性のものが望ましく、以下に例示する。 ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、アセドアミドイミノ二酢酸、ニトリロ三プロパン酸、ニトリロ三メチルホスホン酸などが挙げられる。
なお、分子内に存在するカルボキシル基は、1〜4個であることが好ましく、安価に使用できる観点からは、1〜2個であることがより好ましい。
R3は、1価の炭化水素基である、例えば、炭素数1〜10のアルキル基(例えば、メチル基、シクロアルキル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、アルコキシ基、アリールオキシ基などが好ましい。
R4は、2価の炭化水素基である、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基(例えば、メチレン基、シクロアルキレン基等)、アリーレン基(例えば、フェニレン基等)、アルキレンオキシ基などが好ましい。
R3及びR4で表される炭化水素基は更に置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、例えば、炭素数1〜3のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、などが挙げられ、置換基としてカルボキシル基を有する場合、この化合物は複数のカルボキシル基を有することになる。
また、R3とR4は互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。
本発明の研磨液は、(E)界面活性剤を含有することが好ましい。
本発明の研磨液において、界面活性剤の種類、量を調整することで、研磨速度を向上させることや、絶縁層の研磨速度を制御することができる。界面活性剤としては、陰イオン系界面活性剤、又は陽イオン界面活性剤が好ましく用いられる。
中でも、絶縁層の研磨速度を向上させる観点から、下記一般式(3)で表される化合物が好ましい。
具体的には、例えば、炭素数6〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)などが好ましく、このアルキル基やアリール基は、更にアルキル基等の置換基を有していてもよい。
より具体的には、カルボン酸塩としては、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;
硫酸エステル塩としては、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩;
リン酸エステル塩としては、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩を好ましく用いることができる。
(酸化剤)
本発明の研磨液は、研磨対象の金属を酸化できる化合物(酸化剤)を含有することが好ましい。
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酸化物、硝酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、過硫酸塩、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、オゾン水、及び銀(II)塩、鉄(III)塩が挙げられ、中でも、過酸化水素が好ましく用いられる。
鉄(III)塩としては、例えば、硝酸鉄(III)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、臭化鉄(III)など無機の鉄(III)塩の他、鉄(III)の有機錯塩が好ましく用いられる。
本発明の研磨液は、pH2.5〜5.0であることが好ましく、pH3.0〜4.5の範囲であることがより好ましい。研磨液のpHをこの範囲に制御することで、層間絶縁膜の研磨速度調整がより顕著に行うことが可能にある。
pHを上記好ましい範囲に調整するために、アルカリ/酸又は緩衝剤が用いられる。本発明の研磨液は、pHがこの範囲において優れた効果を発揮する。
アルカリ/酸又は緩衝剤としては、アンモニア、水酸化アンモニウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドなどの有機水酸化アンモニウム、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのようなアルカノールアミン類などの非金属アルカリ剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、硝酸、硫酸、りん酸などの無機酸、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、リン酸三ナトリウムなどのリン酸塩、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩等を好ましく挙げることができる。特に好ましいアルカリ剤として水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及びテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドである。
本発明の研磨液は、混入する多価金属イオンなどの悪影響を低減させるために、必要に応じてキレート剤(すなわち硬水軟化剤)を含有することが好ましい。
キレート剤としては、カルシウムやマグネシウムの沈澱防止剤である汎用の硬水軟化剤やその類縁化合物であり、例えば、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸、N,N,N−トリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラメチレンスルホン酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンオルトヒドロキシフェニル酢酸、エチレンジアミンジ琥珀酸(SS体)、N−(2−カルボキシラートエチル)−L−アスパラギン酸、β−アラニンジ酢酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、N,N’−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン−N,N’−ジ酢酸、1,2−ジヒドロキシベンゼン−4,6−ジスルホン酸等が挙げられる。
キレート剤の添加量は混入する多価金属イオンなどの金属イオンを封鎖するのに充分な量であれば良く、例えば、研磨に使用する際の研磨液の1L中、0.0003mol〜0.07molになるように添加する。
本発明の研磨液の研磨対象のバリア層を構成する材料としては、一般に低抵抗のメタル材料がよく、特に、TiN、TiW、Ta、TaN、W、WNが好ましく、中でも、Ta、TaNが特に好ましい。
本発明の研磨液の研磨対象の層間絶縁膜(絶縁層)としては、TEOS等の通常用いられる層間絶縁膜の他、例えば、比誘電率が3.5〜2.0程度の低誘電率の材料(例えば、有機ポリマー系、SiOC系、SiOF系、等が挙げられ、通常、Low−k膜と略称される)を含む層間絶縁膜が挙げられる。
具体的には、低誘電率の層間絶縁膜の形成に用いる材料として、SiOC系ではHSG−R7(日立化成工業)、BLACKDIAMOND(Applied Materials, Inc)などがある。
本発明の研磨液は、ジ四級アンモニウムカチオンとコロイダルシリカとの併用により、層間絶縁膜(絶縁層)の研磨速度も向上させることができる。
本発明においては、研磨対象である被研磨体は、例えば、LSI等の半導体デバイスに適用されるような、銅金属及び/又は銅合金からなる配線を有することが好ましい。特にこの配線の原材料としては、銅合金が好ましい。更に、銅合金の中でも銀を含有する銅合金が好ましい。
なお、銅合金に含有される銀含量は、40質量%以下が好ましく、特には10質量%以下、更には1質量%以下が好ましく、0.00001〜0.1質量%の範囲である銅合金において最も優れた効果を発揮する。
本発明においては、研磨対象である被研磨体が、例えば、DRAMデバイス系に適用される場合、ハーフピッチで0.15μm以下である配線を有することが好ましく、より好ましくは0.10μm以下、更に好ましくは0.08μm以下である。
一方、被研磨体が、例えば、MPUデバイス系に適用される場合、0.12μm以下である配線を有することが好ましく、より好ましくは0.09μm以下、更に好ましくは0.07μm以下である。
このような配線を有する被研磨体に対して、上述の本発明における研磨液は特に優れた効果を発揮する。
本発明の研磨液は、1.濃縮液であって、使用する際に水又は水溶液を加えて希釈して使用液とする場合、2.各成分が次項に述べる水溶液の形態で準備され、これらを混合し、必要により水を加え希釈して使用液とする場合、3.使用液として調製されている場合がある。
本発明の研磨液を用いた研磨方法にはいずれの場合の研磨液も適用可能である。
この研磨方法は、研磨液を研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨体の被研磨面と接触させて、被研磨面と研磨パッドを相対運動させる方法である。
研磨終了後の被研磨体は、流水中でよく洗浄された後、スピンドライヤ等を用いて被研磨体上に付着した水滴を払い落としてから乾燥させる。
このように、濃縮液を水溶液で希釈して使用する場合には、溶解しにくい成分を水溶液の形で後から配合することができることから、より濃縮した濃縮液を調製することができる。
例えば、酸化剤を構成成分(a)とし、有機酸、添加剤、界面活性剤、及び水を構成成分(b)とし、それらを使用する際に水又は水溶液で、構成成分(a)及び構成成分(b)を希釈して使用することができる。
また、溶解度の低い添加剤を2つの構成成分(a)と(b)に分け、例えば、酸化剤、添加剤、及び界面活性剤を構成成分(a)とし、有機酸、添加剤、界面活性剤、及び水を構成成分(b)とし、それらを使用する際に水又は水溶液を加え、構成成分(a)及び構成成分(b)を希釈して使用する。
その他の混合方法は、上記したように直接に3つの配管をそれぞれ研磨パッドに導き、研磨パッドと被研磨面の相対運動により混合する方法や、1つの容器に3つの構成成分を混合して、そこから研磨パッドに希釈された研磨液を供給する方法がある。
本発明において、本発明においては、研磨液の成分を二分割以上に分割して、被研磨面に供給する方法を適用する場合、その供給量は、各配管からの供給量の合計を表すものである。
本発明の研磨方法に適用しうる研磨用の研磨パッドは、無発泡構造パッドでも発泡構造パッドでもよい。前者はプラスチック板のように硬質の合成樹脂バルク材をパッドに用いるものである。また、後者は更に独立発泡体(乾式発泡系)、連続発泡体(湿式発泡系)、2層複合体(積層系)の3つがあり、特には2層複合体(積層系)が好ましい。発泡は、均一でも不均一でもよい。
更に、一般的に研磨に用いる砥粒(例えば、セリア、シリカ、アルミナ、樹脂など)を含有したものでもよい。また、それぞれに硬さは軟質のものと硬質のものがあり、どちらでもよく、積層系ではそれぞれの層に異なる硬さのものを用いることが好ましい。材質としては、不織布、人工皮革、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート等が好ましい。また、被研磨面と接触する面には、格子溝/穴/同心溝/らせん状溝などの加工を施してもよい。
本発明における研磨液でCMPを行なう対象の被研磨体としてのウエハは、径が200mm以上であることが好ましく、特には300mm以上が好ましい。300mm以上である時に顕著に本発明の効果を発揮する。
本発明の研磨液を用いて研磨を実施できる装置は、特に限定されないが、Mirra Mesa CMP、Reflexion CMP(アプライドマテリアルズ)、FREX200、FREX300 (荏原製作所)、NPS3301、NPS2301(ニコン)、A−FP−310A、A−FP−210A(東京精密)、2300 TERES(ラムリサーチ)、Momentum(Speedfam IPEC)などを挙げることができる。
〔実施例1〕
下記に示す組成の研磨液を調製し、研磨実験を行った。
<組成(1)>
・オニウム塩:〔(A)イミダゾリウム塩;例示化合物1−1〕 0.2g/L
・(B)コロイダルシリカ 200g/L
(二次粒径:65nm、PL3スラリー、扶桑化学工業社製)
・(C)腐食抑制剤:1,2,3−ベンゾトリアゾール(BTA) 0.5g/L
・(D)有機酸(カルボキシル基を有する化合物):ジグリコール酸 1g/L
(和光純薬工業(株)製)
・(E)界面活性剤:ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS) 0.5g/L
・酸化剤:過酸化水素 10mL
・純水を加えて全量 1000mL
pH(アンモニア水と硝酸で調整) 3.5
研磨装置としてラップマスター社製装置「LGP−612」を使用し、下記の条件で、スラリーを供給しながら、下記に示す各ウエハ膜を研磨した。
・テーブル回転数:90rpm
・ヘッド回転数:85rpm
・研磨圧力:13.79kPa
・研磨パッド:ロデール・ニッタ株式会社製 Polotexpad
・研磨液供給速度:200ml/min
研磨対象物として、Si基板上に、Ta膜、TEOS膜を成膜した8インチウエハを使用した。
研磨対象物として、フォトリソグラフィー工程と反応性イオンエッチング工程によりTEOS(テトラエトキシシラン)基板をパターニングして、幅0.09〜100μm、深さ600nmの配線用溝と接続孔を形成、更に、スッパタリング法により厚さ20nmのTa膜を形成し、続いてスッパタリング法により厚さ50nmの銅膜を形成後、メッキ法により合計厚さ1000nmの銅膜を形成した8inchウエハを使用した。
研磨速度は、CMP前後におけるTa膜(バリア層)、TEOS膜(絶縁膜)の膜厚をそれぞれ測定し、以下の式から換算することで求めた。得られた結果を表1に示す。
研磨速度(Å/分)=(研磨前の膜厚−研磨後の膜厚)/研磨時間
上記スクラッチ評価用の研磨対象物を、上記ウエハにてTEOSまで研磨(TEOS膜を50nm研磨)した後、研磨面を純水洗浄して乾燥した。乾燥した研磨面を光学顕微鏡にて観察し、下記の評価基準に基づいてスクラッチの評価を行った。なお、○及び△は、実用上問題の無いレベルと判断する。得られた結果を表1に示す。
−評価基準−
○:問題となるスクラッチは観測されず
△:ウエハ面内に問題となるスクラッチを1〜2個観測
×:ウエハ面内に問題となるスクラッチを多数観測
実施例1における組成(1)中、オニウム塩を、下記表1および表2に記載の化合物1−3、1−5、1−8、1−21、1−22、または1−25(実施例2〜17、参考例1〜3)、比較化合物1(比較例2)に各々代え、またはオニウム塩を用いず(比較例1)、さらに、(B)〜(E)の各成分を下記表1および表2に記載の組成に変更して、実施例2〜20、及び比較例1〜2の研磨液を調製した。この実施例2〜17、参考例1〜3、及び比較例1〜2の研磨液について、実施例1と同様の研磨条件で、研磨実験を行った。結果を表1および表2に示す。
また、比較例2に使用した比較化合物1は、下記構造で表される。
(C)腐食抑制剤
BTA:1,2,3−ベンゾトリアゾール
DCEBTA:1−(1,2−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール
HEABTA:1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール
DBS:ドデシルベンゼンスルホン酸
LTM:硝酸ラウリルトリメチルアンモニウム
DP:硝酸ドデシルピリジニウム
更に、高融点のオニウム塩であるアンモニウム塩化合物を添加した比較例2に比較しても、実施例1〜20の研磨液を用いた場合の方が、スクラッチ評価が良好であり、融点の高い他のオニウム塩を用いてもスクラッチ抑制効果がみられないこともわかる。
Claims (8)
- 半導体デバイスの製造工程におけるバリア層の化学的機械的研磨に使用するための研磨液であって、(A)イミダゾリウム塩、(B)コロイダルシリカ、及び(C)腐食抑制剤を含み、 前記(A)イミダゾリウム塩が下記一般式(1)で表されるイミダゾリウム塩である研磨液。
〔一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、脂肪族炭化水素基、または、アリール基を表し、Lは、二価の連結基を表す。Xは、一価のアニオンとなりうる基を表す。〕 - 前記(A)イミダゾリウム塩の融点が25℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の研磨液。
- 前記(B)コロイダルシリカの濃度が、研磨液の全質量に対して0.5〜15質量%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研磨液。
- 前記(B)コロイダルシリカの一次平均粒径が、20〜50nmの範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の研磨液。
- 前記(C)腐食抑制剤が、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5,6−ジメチル−1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−(1,2−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、及び1−(ヒドロキシメチル)ベンゾトリアゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の研磨液。
- (D)カルボキシル基を有する化合物を更に含有し、該(D)カルボキシル基を有する化合物が下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の研磨液。
〔一般式(2)中、R3及びR4はそれぞれ独立に炭化水素基を表す。R3とR4とは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。〕 - 陰イオン系界面活性剤、又は陽イオン界面活性剤を更に含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の研磨液。
- 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の研磨液を研磨定盤上の研磨パッドに供給し、被研磨体の被研磨面と接触させて、前記被研磨面と前記研磨パッドを相対運動させる研磨方法。
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