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JP5077450B2 - 車両用混成差動装置 - Google Patents

車両用混成差動装置 Download PDF

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JP5077450B2 JP2011007024A JP2011007024A JP5077450B2 JP 5077450 B2 JP5077450 B2 JP 5077450B2 JP 2011007024 A JP2011007024 A JP 2011007024A JP 2011007024 A JP2011007024 A JP 2011007024A JP 5077450 B2 JP5077450 B2 JP 5077450B2
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Description

本発明は、ドライブ側から回転駆動力を受ける複数のピニオンギヤ及びこれら複数のピニオンギヤに噛合する1対のサイドギヤとを備えた車両用混成差動装置に関する。
従来、車両用差動装置には、図46に示すようなものが知られている(例えば特許文献1)。この車両用差動装置につき、図46を用いて説明すると、図46において、符号461で示す車両用差動装置は、エンジントルクを受けて回転するデフケース462と、このデフケース462の回転軸線に沿って互いに並列するサイドギャ463L,463Rと、これらサイドギヤ463L,463Rに噛合するピニオンギヤ464とを備えている。
デフケース462には、各軸線が互いに直交するピニオンギヤ挿入孔465及び車軸挿入孔466L,466Rが設けられている。また、デフケース462には、ピニオンギヤ挿入孔465の内面に開口し、かつスナップリング467を取り付けるための凹溝468が設けられている。
サイドギヤ463L,463Rは、ボス部469L,469R及びギヤ部470L,470Rを有する無底筒状のかさ歯車からなり、デフケース462の回転軸線方向に移動可能に配置され、かつボス部469L,469Rをそれぞれ車軸挿入孔466L,466R内に臨ませてデフケース462内に回転自在に支持されている。サイドギヤ463L,463R内には、車軸471L,471Rがその一部を車軸挿入孔466L,466R内に位置付けてスプライン嵌合されている。サイドギヤ463L,463Rのギヤ部470L,470R(背面)と車軸挿入孔466L,466Rの内側開口周縁との間には、ボス部469L,469Rの周囲に位置する環状の摺動部材472L,472Rが介装されている。
ピニオンギヤ464は、無底筒状の歯車からなり、スナップリング467とピニオンギヤ464との間に介在するピニオンギヤ保持板473によって抜け止めされ、かつピニオン挿入孔465内に回転自在に支持されている。ピニオンギヤ464の軸芯部にはギヤ倒れ込み防止用のピニオンギヤシャフト474が取り付けられている。
このように構成された車両用差動装置461を組み立てるには、先ず摺動部材472L,472R及びサイドギヤ463L,463Rをピニオンギヤ挿入孔465に挿通させてデフケース462内に組み込み、次にデフケース462外からピニオンギヤ464をピニオンギヤ挿入孔465内に組み込んでサイドギヤ463L,463Rに噛み合わせるとともに、予めデフケース462内に配置されたピニオンギヤシャフト474に取り付けた後、ピニオンギヤ保持板473をピニオンギヤ3464の背面側に配置してからスナップリング467を凹溝468に取り付けることにより行う。
実用新案登録第2520728号公報(図1)
しかし、特許文献1によると、次の(1)〜(4)に示す問題があった。
(1)ピニオンギヤの軸芯部にピニオンギヤシャフトが取り付けられているため、ピニオンギヤの外径を比較的大きい寸法に設定する必要が生じていた。この結果、サイドギヤの外径が小さくなり、これに伴いピニオンギヤ・サイドギヤ間のバックラッシbとサイドギヤの半径rとで決まる回転バックラッシtan-1(b/r)が大きくなり、良好な駆動力伝達を行うことができない。
(2)ピニオンギヤの外径が大きくなると、それだけ両サイドギヤ間の寸法が大きくなり、デフケースが軸線方向に大型化する。
(3)ピニオンギヤの外径が大きくなることは、ピニオンギヤ摺動径も大きくなり、ピニオンギヤの摺動による膨張によってデフケース収容孔との適正なクリアランスが確保できず、焼き付きが発生する虞がある。
(4)ピニオンギヤが大きくなると、ピニオンギヤの質量増大によってピニオンギヤが遠心力の影響を受け易くなる。この結果、ピニオンギヤ外側のピニオンギヤ受部に発生する力が変化するため、差動制限力が変動し、安定した性能を得ることができない。
従って、本発明の目的は、良好な駆動力伝達を行うこと,軸線方向の小型化を図ること,ピニオンギヤの耐焼き付き性を高めること及び安定した性能を得ることを可能とした車両用混成差動装置を提供することにある。
(1)本発明は、上記目的を達成するために、回転駆動される第1入力部材,及び前記第1入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される前輪用及び後輪用の第1及び第2出力部材を有する第1差動装置と、前記第1あるいは第2出力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される第2入力部材,及び前記第2入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される前輪用あるいは後輪用の左右の車輪用の第3及び第4出力部材を有する第2差動装置と、前記第1及び第2差動装置を収容し、前記第1入力部材を回転駆動するケーシングとを備え、前記第1差動装置は、デフケースに形成され、同デフケースの内部へ延出した延出部を有する複数のピニオンギヤ挿入孔内に回転自在に支持されたシャフトレス型の複数のピニオンギヤを前記入力部材として備え、前記複数のピニオンギヤの外径より大なる外径を有し、前記デフケースに形成されたサイドギヤ通過孔から前記デフケースの内部へ組み込まれることにより前記複数のピニオンギヤと噛合して前記デフケースの内部で回転自在に支持された1対のサイドギヤを前記第1及び第2出力部材として備え、前記延出部は、前記ピニオンギヤ挿入孔の内側開口周縁に円周方向に等間隔をもって並列し、同延出部には、前記ピニオンギヤの前記1対のサイドギヤとの噛み合い部の少なくとも一部を支持するピニオンギヤ支持面が設けられたことを特徴とする車両用混成差動装置を提供する。
(2)本発明は、上記目的を達成するために、回転駆動される第1入力部材,及び前記第1入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される前輪用及び後輪用の第1及び第2出力部材を有する第1差動装置と、前記第1あるいは第2出力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される第2入力部材,及び前記第2入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される前輪用あるいは後輪用の左右の車輪用の第3及び第4出力部材を有する第2差動装置と、前記第1及び第2差動装置を収容し、前記第1入力部材を回転駆動するケーシングとを備え、前記第2差動装置は、デフケースに形成され、同デフケースの内部へ延出した延出部を有する複数のピニオンギヤ挿入孔内に回転自在に支持されたシャフトレス型のピニオンギヤを前記第2入力部材として備え、前記複数のピニオンギヤの外径より大なる外径を有し、前記デフケースに形成されたサイドギヤ通過孔から前記デフケースの内部へ組み込まれることにより前記複数のピニオンギヤと噛合して前記デフケースの内部で回転自在に支持された1対のサイドギヤを前記第3及び第4出力部材として備え、前記延出部は、前記ピニオンギヤ挿入孔の内側開口周縁に円周方向に等間隔をもって並列し、同延出部には、前記ピニオンギヤの前記1対のサイドギヤとの噛み合い部の少なくとも一部を支持するピニオンギヤ支持面が設けられたことを特徴とする車両用混成差動装置を提供する。
(3)本発明は、上記目的を達成するために、回転駆動される第1入力部材,及び前記第1入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される前輪用及び後輪用の第1及び第2出力部材を有する第1差動装置と、前記第1あるいは第2出力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される第2入力部材,及び前記第2入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動力される前輪用あるいは後輪用の左右の車輪用の第3及び第4出力部材を有する第2差動装置と、前記第1及び第2差動装置を収容し、前記第1入力部材を回転駆動するケーシングとを備え、前記第1及び第2の差動装置は、第1及び第2デフケースにそれぞれ形成され、同デフケースの内部へ延出した延出部を有する複数のピニオンギヤ挿入孔内に回転自在に支持されたシャフトレス型の複数のピニオンギヤを前記第1及び第2入力部材として備え、前記複数のピニオンギヤの外径より大なる外径を有し、前記第1及び第2デフケースにそれぞれ形成されたサイドギヤ通過孔から前記第1及び第2デフケースの内部へ組み込まれることにより前記複数のピニオンギヤと噛合して前記第1及び第2デフケースの内部で回転自在に支持された1対のサイドギヤを前記第1及び第2出力部材ならびに前記第3及び第4出力部材として備え、前記延出部は、前記ピニオンギヤ挿入孔の内側開口周縁に円周方向に等間隔をもって並列し、同延出部には、前記ピニオンギヤの前記1対のサイドギヤとの噛み合い部の少なくとも一部を支持するピニオンギヤ支持面が設けられたことを特徴とする車両用混成差動装置を提供する。
本発明によると、良好な駆動力伝達を行うこと,軸線方向の小型化を図ること,ギヤの焼き付き発生を防止すること及び安定した性能を得ることが可能となる。
本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す分解斜視図。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するためにその一部を省略して示す正面図。 図2のA−A断面図。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す側面図。 図4のB−B断面図。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す背面図。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置のデフケースを説明するために示す正面図。 図7のC−C断面図。 (a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤを説明するために示す正面図。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤ抜け止め用リングの変形例を説明するために示す断面図。 本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤ抜け止め用リングとピニオンギヤとの間にスラストワッシャを介装した場合について説明するために示す断面図。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す分解斜視図。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために一部を破断して示す斜視図。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置のデフケースを説明するために示す斜視図。 (a)及び(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤをそれぞれ上と下から見た斜視図。 (a)及び(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤの下面図と正面図。 (a)及び(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤの正面図(2)と平面図。 図18(b)のB−B断面図。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置の組立方法(ピニオンギヤの組み込み)を説明するために示す断面図。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置の組立方法(サイドギヤの組み込み)を説明するために示す断面図。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置におけるデフケース(ピニオンギヤ挿入孔)の変形例を説明するために示す断面図。 本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置におけるデフケースのサイドギヤ受部の変形例を説明するために示す断面図。 本発明の第3の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図。 本発明の第4の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す第1の断面図。 本発明の第4の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す第1の断面図。 本発明の第4の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤの他の配置例を説明するために示す断面図。 本発明の第5実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す第1の断面図。 本発明の第5の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す第2の断面図。 本発明の第5の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤの変形例を説明するために示す断面図。 本発明の第5の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤの他の支持例を説明するために示す断面図。 本発明の第5の実施の形態に係る車両用差動装置におけるサイドギヤの変形例を説明するために示す断面図。 図32の要部を拡大して示す断面図。 本発明の第6の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図。 本発明の第6の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤの他の支持例を説明するために示す断面図。 (a)及び(b)は、図5におけるピニオンギヤの組立手順を説明するために示す断面図。 本発明の第6の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤ抜け止め用リングの変形例を説明するために示す断面図。 本発明の第7の実施の形態に係る車両用混成差動装置を説明するために示す断面図。 本発明の第7の実施の形態に係る車両用混成差動装置におけるトルクバイアス比の掛け合わせ効果を説明するために示す図である。 本発明の第7の実施の形態に係る車両用混成差動装置の変形例(1)を説明するために示す断面図。 本発明の第7の実施の形態に係る車両用混成差動装置の変形例(2)を説明するために示す断面図。 本発明の第8の実施の形態に係る車両用混成差動装置を説明するために示す断面図。 本発明の第8の実施の形態に係る車両用混成差動装置の変形例(1)を説明するために示す断面図。 本発明の第8の実施の形態に係る車両用混成差動装置の変形例(2)を説明するために示す断面図。 本発明の第8の実施の形態に係る車両用混成差動装置の変形例(3)を説明するために示す断面図。 従来の車両差動装置を説明するために示す断面図。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す分解斜視図である。図2は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するためにその一部を省略して示す正面図(図3のL矢視図)である。図3は、図2のA−A断面図である。図4は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す側面図である。図5は、図4のB−B断面図である。図6は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す背面図(図3のR矢視図)である。図7は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置のデフケースを説明するために示す正面図である。図8は、図7のC−C断面図である。図9(a)及び(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る車両用差動装置におけるピニオンギヤを説明するために示す正面図である。
〔車両差動装置の全体構成〕
図1及び図3において、符号1で示す車両用差動装置は、エンジントルクを受けて回転するデフケース2と、このデフケース2の回転軸線Oと直角な軸線方向に沿って互いに並列する上下2つのピニオンギヤ3,4と、これら上下2つのピニオンギヤ3,4に噛合する左右2つのサイドギヤ5L,5Rと、これら左右2つのサイドギヤ5L,5Rの背面側に位置するスラストワッシャ6L,6Rとから大略構成されている。
(デフケース2の構成)
デフケース2は、図3に示すように、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5R・スラストワッシャ6L,6Rを収容するための空間部7(図8に示す)及びこの空間部7に連通する膨出部8L,8R(図8に示す)を有するケース本体2aと、ピニオンギヤ3,4のデフケース外への抜け止め機能を有するピニオンギヤ抜け止め用リング2bとを備えている。
ケース本体2aには、図3及び図8に示すように、回転軸線Oに沿って開口する左右2つの車軸挿入孔9L,9R及びこれら車軸挿入孔9L,9Rの軸線と直角な方向に軸線をもつ上下2つのピニオンギヤ挿入孔10,11が設けられている。また、ケース本体2aには、回転軸線Oに関して対称な領域であって、ピニオンギヤ挿入孔10,11から円周方向に等間隔をもって離間する部位に位置するサイドギヤ通過孔12L,12R(図5及び図6に示す)が設けられている。ケース本体2aの左方車軸側部には、図1〜図8に示すように、回転軸線Oと直角な平面内で円周方向に沿う円環状の取付用フランジ13が一体に設けられている。
車軸挿入孔9L,9Rは、図3及び図8に示すように、各内径が互いに異なる大径部9La,9Ra及び小径部9Lb,9Rbからなる段状の貫通孔によって形成されている。車軸挿入孔9L,9Rには、それぞれ左右の車軸(図示せず)が挿通されている。車軸挿入孔9L,9Rの内側開口周縁には、図3及び図8に示すように、スラストワッシャ6L,6Rを受けるスラストワッシャ受部9Lc,9Rcが設けられている。
ピニオンギヤ挿入孔10,11は、平面円形状の開口部を有する貫通孔によって形成されている。そして、その開口サイズは、ピニオンギヤ3,4の外径と略同一の内径(サイドギヤ5L,5Rの外径より小さい内径)をもつサイズに設定されている。ピニオンギヤ挿入孔10,11の内面は、図8に示すように、それぞれピニオンギヤ3,4の第1被保持部(サイドギヤ噛み合い部を除く部位)3a,4aを回転自在に支持する第1ピニオンギヤ支持面10a,11aで形成されている。ピニオンギヤ挿入孔10,11の内側開口周縁には、円周方向に等間隔をもって並列し、かつデフケース2の回転軸線側(ケース内部)に延出する延出部14,15が一体に設けられている。延出部14,15としては、デフケース2の外部あるいはその内部及び外部に延出してもよい。延出部14,15には、前記第1ピニオンギヤ支持面10a,11aに連接し、かつピニオンギヤ3,4の第2被保持部(サイドギヤ噛み合い部の少なくとも一部)3b,4bを支持する第2ピニオンギヤ支持面14a,15aが設けられている。
サイドギヤ通過孔12L,12Rは、図1及び図5・図6に示すように、平面非円形状の開口部を有する貫通孔によって形成されている。そして、その開口サイズは、ピニオンギヤ3,4の外径より大きい外径をもつサイドギヤ5L,5Rをデフケース2内に挿入し得るように、ピニオンギヤ挿入孔10,11の開口サイズより大きいサイズに設定されている。即ち、ピニオンギヤ3,4は、サイドギヤ5L,5Rとの噛み合い部の外周部、又は、デフケース2の外部もしくは内部あるいはデフケース2の内部及び外部に延出された延出部14及びサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い部の外周部で、前記複数のピニオンギヤ挿入孔で保持される。
取付用フランジ13は、ドライブピニオン(図示せず)からの駆動トルクを受けるリングギヤ(図示せず)を取り付けるように構成されている。
一方、ピニオンギヤ抜け止め用リング2bは、図3に示すように、ケース本体2aの外側面にピニオンギヤ挿入孔10,11の開口部を覆うように装着されている。ピニオンギヤ抜け止め用リング2bに内面には、遠心力が作用するピニオンギヤ3,4を受け止め、かつ所定の曲率をもつ球面で形成されたピニオンギヤ受部16,17が設けられている。
なお、本実施の形態では、ピニオンギヤ抜け止め用リング2bの内面が円周方向全体にわたって球面で形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図10に示すようにピニオンギヤ受部16,17(ピニオンギヤ受部17のみ図示)における内面の円周方向一部を球面で形成してもよい。
(ピニオンギヤ3,4の構成)
ピニオンギヤ3,4は、図9(a)及び(b)に示すように円周方向に交互に並列する凸歯A1と歯溝A2を有するギヤ部Aがその外周部全体に形成された略円柱状のシャフトレス型の歯車からなり、図3に示すようにピニオンギヤ挿入孔10,11及び延出部14,15に回転自在に支持されている。ピニオンギヤ3,4の背面(ピニオンギヤ抜け止め用リング側面)には、図3に示すように、ピニオンギヤ抜け止め用リング2bのピニオンギヤ受部16,17に適合する球面で形成された摺動部3A,4Aが設けられている。
ギヤ部Aは、図9(a)及び(b)に示すように、第1被保持部3a,4a及び第2保持部3b,4bを含むストレート部18及びこのストレート部18に連接するテーパ部19からなり、デフケース2の回転軸線側でサイドギヤ5L,5Rに噛合するように構成されている。ストレート部18における凸歯A1の歯先面a1は、(サイドギヤ5L,5Rと噛合するサイドギヤ噛み合い部を除く歯先面及びこの歯先面に連続するサイドギヤ噛み合い部の歯先面一部)は、所定の外径をもつ周面で形成されている。テーパ部19における凸歯A1の歯先面a1は、ギヤ基端部からギヤ先端部に向かって小さくなる周面で形成されている。
(サイドギヤ5L,5Rの構成)
サイドギヤ5L,5Rは、図3に示すように、各外径が互いに異なるボス部5La,5Ra及びギヤ部5Lb,5Rbを有する略環状の歯車(単一の歯先円錐角をもつかさ歯車)からなり、デフケース2の回転軸線方向に移動可能に配置され、かつボス部5La,5Raをそれぞれ車軸挿入孔9L,9R内に臨ませてデフケース2内に回転自在に支持されている。サイドギヤ5L,5Rの歯数は、ピニオンギヤ3,4の歯数の2.4倍以上の歯数(例えばピニオンギヤ3,4の歯数6に対しサイドギヤ5L,5Rの歯数20)に設定されている。サイドギヤ5L,5R内には、それぞれ車軸を車軸挿入孔9L,9Rに挿通させてスプライン嵌合されている。サイドギヤ5L,5Rの外径は、ピニオンギヤ3,4の外径及び延出部14,15間の寸法より大きい寸法に設定されている。サイドギヤ5L,5Rの組み付けは、これらの一方をサイドギヤ通過孔12L又は12Rからデフケース2内に挿入し、ボス部を車軸挿入孔9L,9Rの一方に差し入れた後、他方のサイドギヤをデフケース2内に挿入し、そのボス部を他方の車軸挿入孔に差し入れることにより行う。
(スラストワッシャ6L,6Rの構成)
スラストワッシャ6L,6Rは、図1に示すような環状のワッシャからなり、図3に示すようにボス部5La,5Raの周囲に配置され、かつサイドギヤ5L,5Rのギヤ部5Lb,5Rb(背面)とスラストワッシャ受部9Lc,9Rcとの間に介装されている。そして、サイドギヤ5L,5Rとピニオンギヤ3,4との噛み合いを調整するように構成されている。
なお、本実施の形態では、サイドギヤ5L,5Rとピニオンギヤ3,4との噛み合いを調整するために、サイドギヤ5L,5Rとスラストワッシャ受部9Lc,9Rcとの間にスラストワッシャ6L,6Rが介装されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図11に示すようにピニオンギヤ抜け止め用リング2bとピニオンギヤ3,4との間にのみスラストワッシャ20を介装してもよい。また、サイドギヤ5L,5Rとスラストワッシャ受部9Lc,9Rcとの間及びピニオンギヤ抜け止め用リング2bとピニオンギヤ3,4(ピニオンギヤ3のみ図示)との間にそれぞれスラストワッシャを介装しても勿論よい。この場合、各ワッシャ厚さが互いに異なる複数種のスラストワッシャを用意し、これらスラストワッシャのうちピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5Rの加工誤差に応じて使用するスラストワッシャを選択する。
〔車両用差動装置1の動作〕
先ず、車両のエンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤを介してデフケース2に入力されると、デフケース2が回転軸線Oの回りに回転される。次に、デフケース2が回転されると、この回転力がピニオンギヤ3,4に伝達され、さらにピニオンギヤ3,4からサイドギヤ5L,5Rに伝達される。この場合、左右のサイドギヤ5L,5Rにはそれぞれ車軸がスプライン嵌合されているため、エンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤ・デフケース2・ピニオンギヤ3,4・サイドギヤ5L,5Rを介して左右の車軸に伝達される。
ここで、左右の車軸上における各車輪に加わる負荷が等しい場合には、エンジン側からのトルクがデフケース2に伝達されると、ピニオンギヤ3,4がサイドギヤ5L,5R上を公転し、ピニオンギヤ3,4及びサイドギヤ5L,5Rがデフケース2と共に一体に回転されるため、エンジン側からのトルクが左右両車軸に等分に伝達され、左右各車輪が等しい回転数で回転される。
一方、走行中に車両が例えば左方に旋回したり、あるいは右側の車輪がぬかるみに落ち込んだりした場合には、ピニオンギヤ3,4がサイドギヤ5L,5R上で自転し、エンジン側からのトルクが左右の車軸(車輪)間で差動分配される。すなわち、左側の車輪がデフケース2の回転速度より低い速度で回転され、右側の車輪がデフケース2の回転速度より高い速度で回転される。
また、ピニオンギヤ3,4が回転されると、第1ピニオンギヤ支持面10a,11a及び第2ピニオンギヤ支持面14a,15aで摺動するため、これら第1ピニオンギヤ支持面10a,11a及び第2ピニオンギヤ支持面14a,15aとの間に摩擦抵抗を発生し、これら摩擦抵抗によってサイドギヤ5L,5Rの差動回転が制限される。
この場合、ピニオンギヤ3,4の回転によってサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い面でスラスト力が発生し、これらスラスト力によりサイドギヤ5L,5Rが互いに離間する方向に移動してスラストワッシャ6L,6Rをスラストワッシャ受部9Lc,9Rcに圧接するため、スラストワッシャ6L,6Rとスラストワッシャ受部9Lc,9Rcとの間に摩擦抵抗を発生し、これら摩擦抵抗によってもサイドギヤ5L,5Rの差動回転が制限される。
次に、本実施の形態に係る車両差動装置の組立方法について説明する。本実施の形態に示す車両用差動装置の組立方法は、「サイドギヤ・スラストワッシャの組み込み」及び「ピニオンギヤ・サイドギヤの噛み合わせ」・「ピニオンギヤ抜け止め用リングの取り付け」の各工程が順次実施されるため、これら各工程を順次説明する。
「サイドギヤ・スラストワッシャの組み込み」
先ず、予めスラストワッシャ6L,6Rにボス部5La,5Raを挿通させたサイドギヤ5L,5Rをその軸線が傾斜した状態でサイドギヤ通過孔12L,12Rからデフケース2の空間部7に挿入する。次いで、サイドギヤ5L,5Rを傾斜させながら上下の膨出部8L,8Rのうち一方の例えば下方の膨出部8L,8Rに向かってそれぞれ移動させる。この際、サイドギヤ5L,5Rの移動は、次手順(サイドギヤ5L,5Rの回動時)においてサイドギヤ5L,5Rと延出部14,15との干渉を回避するために、サイドギヤ5L,5Rの一部が膨出部8L,8Rに当接するまで行う。しかる後、サイドギヤ5L,5Rの当接部を回動枢支点としてサイドギヤ5L,5Rをその各反当接部が互いに離間する方向に回動させることにより、サイドギヤ5L,5Rの各軸線をデフケース2の回転軸線Oに合致させる。この場合、サイドギヤ5L,5Rの各軸線がデフケース2の回転軸線Oに合致すると、サイドギヤ5L,5R及びスラストワッシャ6L,6Rがデフケース2内の所定の位置に組み込まれる。
「ピニオンギヤ・サイドギヤの噛み合わせ」
ピニオンギヤ挿入孔10,11内にピニオンギヤ3,4を挿入してサイドギヤ5L,5Rに噛み合わせる。この場合、ピニオンギヤ3,4は、サイドギヤ5L,5Rに噛み合うと、ピニオンギヤ挿入孔10,11及び延出部14,15によって回転自在に保持される。
「ピニオンギヤ抜け止め用リングの取り付け」
予め加熱膨張させたピニオンギヤ抜け止め用リング2bに対し、デフケース2のピニオンギヤ挿入孔10,11がそれぞれピニオンギヤ受部16,17で閉塞されるようにしてケース本体2aを挿通させた後、ピニオンギヤ抜け止め用リング2bを冷却する。この場合、ピニオンギヤ抜け止め用リング2bが冷却されると、ピニオンギヤ抜け止め用リング2bが収縮して摺動部3A,4Aをそれぞれピニオンギヤ受部16,17に適合させた状態でケース本体2aの外側面に取り付けられる。
[第1の実施の形態の効果]
以上説明した第1の実施の形態によれば、次に示す効果が得られる。
(1)ピニオンギヤ3,4がシャフトレス型の歯車であるため、ピニオンギヤ3,4の外径を比較的小さい寸法に設定することができる。これにより、サイドギヤ5L,5Rの外径を大きい寸法に設定することができるため、ピニオンギヤ・サイドギヤ間のバックラッシbとサイドギヤの半径rとで決まる回転バックラッシtan-1(b/r)が小さくなり、良好な駆動力伝達を行うことができる。
(2)ピニオンギヤ3,4の外径が小さくなると、それだけ両サイドギヤ5L,5R間の寸法が小さくなり、デフケース2の軸線方向における小型化を図ることができる。
(3)ピニオンギヤ3,4の外径が小さくなることは、ピニオンギヤ摺動径も小さくなり、ピニオンギヤ3,4の摺動による耐焼き付け性を高めることができる。
(4)ピニオンギヤ3,4が小さくなると、ピニオンギヤ3,4の質量減少によってピニオンギヤ3,4が遠心力の影響を受け難くなる。この結果、差動制限力の変動が少なくなり、安定した性能を得ることができる。
(5)ピニオンギヤ挿入孔10,11の第1ピニオンギヤ支持面10a,11aのみならず延出部14,15の第2ピニオンギヤ支持面14a,15aによってピニオンギヤ3,4が支持されるため、ピニオンギヤ3,4に外力が作用した場合でもその傾きを低減することができ、ピニオンギヤ3,4の偏磨耗を抑制することができる。
(6)ピニオンギヤ3,4の傾きを低減できることは、ピニオンギヤ3,4とサイドギヤ3,4との良好な噛み合いが得られる。このため、差動回転時の回転駆動力を高速側から低速側に円滑に移動させることができ、全体としての駆動特性を高めることができる。
(7)ピニオンギヤ3,4の摺動部3A,4Aは、ピニオンギヤ抜け止め用リング2bのピニオンギヤ受部16,17に適合する球面で形成されているため、ピニオンギヤ3,4に外力が作用した場合でもその中心間距離が不変であり、ピニオンギヤ3,4とサイドギヤ5L,5Rとの噛み合い位置のずれを低減することができる。
[第2の実施の形態]
図12は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す分解斜視図である。図13は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図(図3に相当する断面図)である。図14は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために一部を破断して示す斜視図である。図15は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置のデフケースを説明するために示す斜視図である。図16〜図19は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置のピニオンギヤを説明するために示す図である。図16(a)及び(b)はそれぞれ上と下から見た斜視図である。図17(a)及び(b)はそれぞれ正面図(1)と下面図である。図18は(a)及び(b)は下面図と正面図(2)である。図19は図17(b)のB−B断面図である。図12〜図19において、図1〜図9と同一又は同等の部材については同一の符号を付し(ピニオンギヤ及びデフケースを除く)、詳細な説明は省略する。
図12〜図14に示すように、第2の実施の形態に示す車両用差動装置21は、ピニオンギヤ抜け止め用リング2b(図1及び図3に示す)を用いない1ピースのデフケース22を備えた点に特徴がある。
このため、デフケース22には、図13に示すように、回転軸線Oに沿って開口する左右2つの車軸挿入孔23L,23R及びこれら車軸挿入孔23L,23Rの軸線と直角な方向に軸線をもつ上下2つのピニオンギヤ挿入孔24,25が設けられている。また、デフケース22には、図15に示すように、回転軸線Oに関して対称な領域であって、ピニオンギヤ挿入孔24,25から円周方向に等間隔をもって離間する部位に位置するサイドギヤ通過孔26L,26Rが設けられている。
車軸挿入孔23L,23Rは、図13に示すように、均一な内径をもつ貫通孔によって形成されている。車軸挿入孔23L,23Rには、それぞれ左右の車軸(図示せず)が挿通されている。車軸挿入孔23L,23Rの内側開口周縁には、図13に示すように、環状のスラストワッシャ27L,27Rを受ける球面からなるスラストワッシャ受部23La,23Raが設けられている。
ピニオンギヤ挿入孔24,25は、図13及び図15に示すように、平面円形状の開口部を有する段状の貫通孔によって形成されている。そして、その開口サイズは、ピニオンギヤ28,29及びサイドギヤ5L,5Rの外径より小さい内径をもつサイズに設定されている。ピニオンギヤ挿入孔24,25の段状面には、遠心力が作用するピニオンギヤ28,29を受け止め、かつ所定の曲率をもつ球面で形成されたピニオンギヤ受部(頂部)10A,11Aが設けられている。ピニオンギヤ挿入孔24,25の内側開口周縁には、円周方向に等間隔をもって並列し、かつデフケース2の回転軸線側(ケース内部)に延出する延出部14,15が一体に設けられている。延出部14,15としては、デフケース2の外部あるいはその内部及び外部に延出してもよい。
ピニオンギヤ28,29は、同一の構成であるため、例えばピニオンギヤ28のみについて説明すると、ピニオンギヤ28は、図16〜図19に示すように所定の外径をもつ周面を有する基端部B及び円周方向に交互に並列する凸歯C1と歯溝C2を有するギヤ部Cがその外周部に形成された略円柱状のシャフトレス型の歯車からなり、図13に示すようにピニオンギヤ挿入孔24,25及び延出部14,15(図5に示す)に回転自在に支持されている。ピニオンギヤ28,29には、図19に示すように、ギヤ軸線方向に開口する貫通孔28A,29Aが設けられている。これにより、ピニオンギヤ28,29の外面のみならず貫通孔28A,29Aの内面にも熱処理を施すことができ、ピニオンギヤ28,29の機械的強度を一層高めることができる。また、貫通孔28A,29Aは、ピニオンギヤ形成時の芯出し用孔及び差動装置使用時の潤滑油供給孔・ピニオンギヤ保管時のギヤ支持棒挿入孔として機能し得るように構成されている。
基端部Bは、ピニオンギヤ28,29のサイドギヤ側端部と反対側の端部であって、サイドギヤ5L,5Rに噛合するサイドギヤ噛み合い部を除く部位に配設され、ピニオンギヤ挿入孔24,25内で支持される被支持面として機能するように構成されている。ピニオンギヤ28,29の背面には、図13に示すように、ピニオンギヤ挿入孔24,25のピニオンギヤ受部24A,25Aに適合する球面で形成された摺動部28B,29Bが設けられている。
ギヤ部Cは、図17(a)及び18(b)に示すように、第1被保持部28a,29a及び第2保持部28b,29bを含むストレート部Cs及びこのストレート部Csに連接するテーパ部Ctからなり、デフケース22の回転軸線側でサイドギヤ5L,5Rに噛合するように構成されている。ストレート部Csにおける凸歯C1の歯先面cは、(サイドギヤ5L,5Rと噛合するサイドギヤ噛み合い部を除く基端部Bの周面及びこの周面に連続するサイドギヤ噛み合い部の歯先面一部)は、所定の外径をもつ周面で形成されている。テーパ部Ctにおける凸歯C1の歯先面cは、ギヤ基端部からギヤ先端部に向かって小さくなる周面で形成されている。
サイドギヤ通過孔26L,26Rは、図12に示すように、平面非円形状の開口部を有する貫通孔によって形成されている。そして、その開口サイズは、ピニオンギヤ28,29及びサイドギヤ5L,5Rをデフケース2内に挿入し得るようなサイズに設定されている。
サイドギヤ5L,5Rは、図13に示すようにピニオンギヤ28,29の外径より大きい外径を有する略環状の歯車(単一の歯先円錐角をもつかさ歯車)からなり、デフケース22内に回転自在に支持され、ピニオンギヤ28,29に噛合するように構成されている。サイドギヤ5L,5Rの背面には、スラストワッシャ23La,23Raにスラストワッシャ27L,27Rを介して適合する球面からなる摺動部5La,5Raが設けられている。
次に、本実施の形態に係る車両差動装置の組立方法につき、図20及び図21を用いて説明する。図20は、本発明の第2の実施の形態に係る車両用差動装置の組立方法(ピニオンギヤの組み込み)を説明するために示す断面図であり、図21は、同じくサイドギヤの組み込みを説明するために示す断面図である。本実施の形態に示す車両用差動装置の組立方法は、「ピニオンギヤの組み込み」及び「サイドギヤの組み込み」・「ピニオンギヤ・サイドギヤの噛み合わせ」の各工程が順次実施されるため、これら各工程を順次説明する。
「ピニオンギヤの組み込み」
サイドギヤ通過孔26L,26Rからピニオンギヤ24,25をデフケース22内に挿入した後、その摺動部28B,29Bがピニオンギヤ受部10A,11Aに当接するまでピニオンギヤ挿入孔24,25内に挿入して保持する。この場合、ピニオンギヤ28,29は、ピニオンギヤ挿入孔24,25内に保持されると、デフケース22内の所定の位置に組み込まれる。
「サイドギヤの組み込み」
サイドギヤ5L,5Rをスラストワッシャ受部23La,23Raに沿って互いに異なる方向(図21に矢印で示す方向)からそれぞれ摺動させながらサイドギヤ通過孔26L,26Rからデフケース22内に挿入し、そのギヤ軸線を回転軸線Oに合致させる。この場合、サイドギヤ5L,5Rは、回転軸線Oに合致すると、デフケース22内に組み込まれる。
なお、サイドギヤ5L,5Rのデフケース22への挿入は、サイドギヤ通過孔26L,26Rの開口サイズを図21に示す開口サイズより大きいサイズに設定し、かつ、スラストワッシャ受部23La,23Raの距離を図21に示す距離より広げ、その分、ワッシャ27L、27Rを厚くすれば、サイドギヤ5L,5Rをスラストワッシャ受部23La,23Raに沿って互いに同一の方向からそれぞれ摺動させながら実行することができる。しかし、上記のようにサイドギヤ5L,5Rを互いに異なる方向から組み込む方法によれば、サイドギヤ5L,5Rがピニオンギヤ24,25に噛合した状態で、ピニオンギヤ24,25を回転させつつ双方向からサイドギヤ5L,5Rの組み込みが可能になるので、サイドギヤ通過孔26L,26Rの開口サイズを大きくする必要がなく、デフケース22の剛性を確保することができるという利点がある。
「ピニオンギヤ・サイドギヤの噛み合わせ」
スラストワッシャ受部23La,23Raとサイドギヤ5L,5Rとの間の軸線方向寸法を調整しながら、サイドギヤ5L,5Rの摺動部5La,5Raと車軸挿入孔23L,23Rのスラストワッシャ受部23La,23Raとの間にスラストワッシャ27L,27Rを介装する。この場合、スラストワッシャ27L,27Rは、サイドギヤ5L,5Rとスラストワッシャ受部23La,23Raとの間に介装されると、ピニオンギヤ28,29に噛み合わされる。なお、サイドギヤ5L,5Rと車軸(図示せず)との連結(スプライン嵌合)を円滑かつ確実に実行するために、ピニオンギヤ24,25とサイドギヤ5L,5Rとの噛み合わせにあたり、左右両サイドギヤ5L,5R間に車軸移動規制部材としてのストッパ(図示せず)を介装することが望ましい。
[第2の実施の形態の効果]
以上説明した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果(1)〜(7)に加え、次に示す効果が得られる。
(1)基端部Bがピニオンギヤ挿入孔24,25の支持面に対する被支持面として常時機能するため、ピニオンギヤ挿入孔10,11によるピニオンギヤ28,29が自転する際の支持位置が異なる場合にも被支持面の一定面積を確保することができ、ギヤとしての機械的強度を高めることができる。また、ピニオンギヤ28,29とサイドギヤ5L,5Rとの良好な噛み合い状態を得ることができ、ギヤ回転時のノイズを低減することができる。
(2)基端部Bが被支持面として機能することは、ピニオンギヤ28,29全体における被支持面の面積が広くなるため、ギヤ回転時にピニオンギヤ28,29がピニオンギヤ挿入孔24,25及び延出部14,15から受ける面圧を分散することができ、ピニオンギヤ28,29の耐焼き付け性を高めることができる。
(3)サイドギヤ5L,5Rをスラストワッシャ受部23La,23Raに沿って互いに異なる方向(図20に矢印で示す方向)からそれぞれ摺動させながらサイドギヤ通過孔26L,26Rからデフケース22内に挿入することにより、サイドギヤ5L,5Rの組み込みが行われるため、サイドギヤ通過孔26L,26Rの開口サイズを比較的小さい寸法に設定することができ、デフケース22の機械的強度を高めることができる。
なお、本実施の形態においては、ピニオンギヤ抜け止め用リングを用いない構造である場合について説明したが、図22に示すようにピニオンギヤ28,29の外径と略同一の寸法に設定された内径をもつピニオンギヤ挿入孔10,11をデフケース22に設けることにより、ピニオンギヤ抜け止め用リング2bを用いた構造に変更することができる。
また、本実施の形態においては、サイドギヤ5L,5Rの背面及びスラストワッシャ27L,27Rの両面(スラストワッシャ受部23La,23Ra)が球面である場合について説明したが、本発明は図23に示すように平面であってもよい。
[第3の実施の形態]
図24は、本発明の第3の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図(図5に相当する断面図)である。図24において、図5と同一又は同等の部材については同一の符号を付し(ピニオンギヤ及びピニオンギヤ挿入孔を除く)、詳細な説明は省略する。
図24に示すように、第3の実施の形態に示す車両用差動装置31は、デフケース2内でサイドギヤ5L,5Rに噛合する3個のピニオンギヤ(第1ピニオンギヤ32a〜第3ピニオンギヤ32c)を用いた点に特徴がある。
このため、デフケース2には、図24に示すように、貫通孔としての第1ピニオンギヤ挿入孔33a〜第3ピニオンギヤ挿入孔33cが円周方向に等間隔をもって配設されている。
第1ピニオンギヤ32a〜第3ピニオンギヤ32cは、第1ピニオンギヤ挿入孔33a〜第3ピニオンギヤ挿入孔33c及び延出部14,15内に回転自在にそれぞれ支持されている。
[第3の実施の形態の効果]
以上説明した第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果(1)〜(7)に加え、次に示す効果が得られる。
第1ピニオンギヤ32a〜第3ピニオンギヤ32cがサイドギヤ5L,5Rに噛合する構造であるため、第1の実施の形態と比較して歯車機構としての機械的強度を高めることができるとともに、ギヤ噛合時の自動調芯機能を発揮することができる。
[第4の実施の形態]
図25は、本発明の第4の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す第1の断面図(図3に相当する断面図)である。図26は、本発明の第4の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す第2の断面図(図5に相当する断面図)である。図25及び図26において、図3及び図5と同一又は同等の部材については同一の符号を付し(デフケース及びピニオンギヤ・ピニオンギヤ挿入孔・ピニオンギヤ抜け止め用リングを除く)、詳細な説明は省略する。
図26に示すように、第4の実施の形態に示す車両用差動装置41は、デフケース2内でサイドギヤ5L,5Rに噛合する4つのピニオンギヤ(第1ピニオンギヤ42a〜第4ピニオンギヤ42d)を用いた点に特徴がある。
このため、デフケース2は、図25に示すように、車軸挿入孔9Lを有する第1ケースエレメント2Aと、第1ピニオンギヤ挿入孔43a〜第4ピニオンギヤ挿入孔43d(第2ピニオンギヤ挿入孔43b及び第3ピニオンギヤ挿入孔43dは図26に示す)及び延出部(図示せず)・車軸挿入孔9R・空間部7を有する第2ケースエレメント2Bと、ピニオンギヤ受部16,17を有する第3ケースエレメント2C(ピニオンギヤ抜け止め用リング2b)とからなる3ピースによって形成され、第1ピニオンギヤ42a〜第4ピニオンギヤ42d及びサイドギヤ5L,5Rを収容し得るように構成されている。
第1ピニオンギヤ挿入孔43a〜第4ピニオンギヤ挿入孔43dは、図26に示すように、第1ピニオンギヤ挿入孔43aと第2ピニオンギヤ挿入孔43bとを互いに接近させて第1ピニオンギヤ挿入孔群を構成するとともに、第3ピニオンギヤ挿入孔43cと第4ピニオンギヤ挿入孔43dとを互いに接近させて第2ピニオンギヤ挿入孔群を構成し、これら第1ピニオンギヤ挿入孔群と第2ピニオンギヤ挿入孔群とがデフケース2の回転軸線Oに関し対称な位置に配置されている。
ピニオンギヤ42a〜第4ピニオンギヤ42dは、図26に示すように、第1ピニオンギヤ挿入孔43a〜第4ピニオンギヤ挿入孔43d及び延出部(図示せず)内に回転自在にそれぞれ支持されている。
[第4の実施の形態の効果]
以上説明した第4の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果(1)〜(7)に加え、次に示す効果が得られる。
ピニオンシャフト付きの4ピニオンギヤタイプと比較した場合、部品点数を削減することができ、コストの低廉化を図ることができる。
なお、本実施の形態においては、第1ピニオンギヤ挿入孔群(第1ピニオンギヤ挿入孔43aと第2ピニオンギヤ挿入孔43b)と第2ピニオンギヤ挿入孔群(第3ピニオンギヤ挿入孔43cと第4ピニオンギヤ挿入孔43d)とをデフケース2の回転軸線Oに関し対称な位置に配置し、これら第1ピニオンギヤ挿入孔43a〜第4ピニオンギヤ挿入孔43d内にそれぞれ第1ピニオンギヤ42a〜第4ピニオンギヤ42dを支持する構造について説明したが、本発明はこれに限定されず、図27に示すように第1ピニオンギヤ挿入孔群(第1ピニオンギヤ挿入孔430a及び第2ピニオンギヤ挿入孔430b)と第2ピニオンギヤ挿入孔群(第3ピニオンギヤ挿入孔430c及び第4ピニオンギヤ挿入孔430d)とをデフケース200の回転軸線Oに関し対称でない位置に配置し、これら第1ピニオンギヤ挿入孔430a〜第4ピニオンギヤ挿入孔430d内にそれぞれ第1ピニオンギヤ420a〜第4ピニオンギヤ420dを支持する構造としてもよい。この場合、デフケース200における第1ピニオンギヤ挿入孔群と第2ピニオンギヤ挿入群との間の領域は、一方の領域が他方の領域より周方向に広く形成されている。この広い領域においてサイドギヤ通過孔12Lが配置されている。
また、本発明は、円周方向に等間隔に並列する第1ピニオンギヤ挿入孔〜第4ピニオンギヤ挿入孔をデフケースに配設し、これら第1ピニオンギヤ挿入孔〜第4ピニオンギヤ挿入孔に第1ピニオンギヤ〜第4ピニオンギヤを支持する構造としてもよい。
[第5の実施の形態]
図28は、本発明の第5実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す第1の断面図(図3に相当する断面図)である。図29は、本発明の第5の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す第2の断面図(図5に相当する断面図)である。図28及び図29において、図3及び図5と同一又は同等の部材については同一の符号を付し(ピニオンギヤ及びピニオンギヤ挿入孔・ピニオンギヤ抜け止め用リングを除く)、詳細な説明は省略する。
図29に示すように、第5の実施の形態に示す車両用差動装置51は、デフケース2内でサイドギヤ5L,5Rに噛合する6つのピニオンギヤ(第1ピニオンギヤ52a〜第5ピニオンギヤ52f)を用いた点に特徴がある。
このため、デフケース2は、図28に示すように、車軸挿入孔9Lを有する第1ケースエレメント2Aと、第1ピニオンギヤ挿入孔53a〜第6ピニオンギヤ挿入孔53f(図29に示す)及び延出部14,15を有する第2ケースエレメント2Bと、車軸挿入孔9Rを有する第3ケースエレメント2Cと、ピニオンギヤ受部16,17を有する第4ケースエレメント2D(ピニオンギヤ抜け止め用リング2b)とからなる4ピースによって形成され、第1ピニオンギヤ52a〜第6ピニオンギヤ52f及びサイドギヤ5L,5Rを収容し得るように構成されている。
第1ピニオンギヤ挿入孔53a〜第6ピニオンギヤ挿入孔53fは、図29に示すように、円周方向に等間隔をもってデフケース2(第2ケースエレメント2B)に配設されている。
第1ピニオンギヤ52a〜第6ピニオンギヤ52fは、図29に示すように、第1ピニオンギヤ挿入孔53a〜第6ピニオンギヤ挿入孔53f及び延出部(図示せず)内に回転自在にそれぞれ支持されている。
[第5の実施の形態の効果]
以上説明した第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果(1)〜(7)に加え、次に示す効果が得られる。
ピニオンシャフト付きの6ピニオンギヤタイプと比較した場合、部品点数を削減することができ、コストの低廉化を図ることができる。
なお、本実施の形態においては、第1ピニオンギヤ52a〜第6ピニオンギヤ52fとして貫通孔の無いピニオンギヤを用いたが、図30に示すように貫通孔付きの第1ピニオンギヤ520a〜第6ピニオンギヤ520fを用いてもよい。この場合、図31に示すように、第1ピニオンギヤ520a〜第6ピニオンギヤ520fのテーパ部Ct(一部)及びストレート部Csを第1ピニオンギヤ挿入孔53a〜第6ピニオンギヤ挿入孔53f及び延出部14,15内に回転自在に支持する構造としてもよい。これにより、第1ピニオンギヤ挿入孔53a〜第6ピニオンギヤ挿入孔53f及び延出部14,15に対する第1ピニオンギヤ520a〜第6ピニオンギヤ520fの被支持面の面積が広くなるため、第1ピニオンギヤ520a〜第6ピニオンギヤ520fが第1ピニオンギヤ挿入孔53a〜第6ピニオンギヤ挿入孔53f及び延出部14,15から受ける面圧を分散することができ、第1ピニオンギヤ520a〜第6ピニオンギヤ520fの耐焼き付き性を高めることができる。また、第1ピニオンギヤ520a〜第6ピニオンギヤ520fのテーパ部Ct(一部)及びストレート部Csを第1ピニオンギヤ挿入孔53a〜第6ピニオンギヤ挿入孔53f及び延出部14,15内に支持することにより、第1ピニオンギヤ520a〜第6ピニオンギヤ520fの傾倒を防止することができ、第1ピニオンギヤ520a〜第6ピニオンギヤ520fとサイドギヤ5L,5Rとの良好な噛み合い状態を得ることもできる。
また、本実施の形態においては、単一の歯先円錐角をもつサイドギヤ5L,5Rを用いる場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図32に示すように各歯先円錐角が互いに異なるギヤ内周部500La,500Ra及びギヤ外周部500Lb,500Rbを有するサイドギヤ500L,500Rを用いてもよい。この場合、ギヤ外周部500Lb,500Rbの歯先円錐角αはギヤ内周部500La,500Raの歯先円錐角βより大きい寸法に設定されている。また、図33に示すように、延出部14,15(延出部15のみ図示)のピニオンギヤ支持面のうちデフケース2の回転軸線側に延出する部位がサイドギヤ500L,500Rのギヤ外周部500Lb,500Rbに適合する形状(幅寸法W)をもつ延出部で形成されている。これにより、延出部14,15のギヤ支持面全体の面積を広くすることができ、これに伴い第1ピニオンギヤ挿入孔53a〜第6ピニオンギヤ挿入孔53f及び延出部14,15に対する第1ピニオンギヤ52a〜第6ピニオンギヤ52fの被支持面の面積が広くなるため、第1ピニオンギヤ52a〜第6ピニオンギヤ52f(第1ピニオンギヤ52a及び第3ピニオンギヤ52cのみ示す)が第1ピニオンギヤ挿入孔53a〜第6ピニオンギヤ挿入孔53f(第1ピニオンギヤ挿入孔53a及び第3ピニオンギヤ挿入孔53cのみ示す)及び延出部14,15から受ける面圧を分散することができ、第1ピニオンギヤ52a〜第6ピニオンギヤ52fの耐焼き付き性を高めることができる。
[第6の実施の形態]
図34は、本発明の第6の実施の形態に係る車両用差動装置を説明するために示す断面図(図5に相当する断面図)である。図34において、図5と同一又は同等の部材については同一の符号を付し(ピニオンギヤ及びピニオンギヤ挿入孔を除く)、詳細な説明は省略する。
図34に示すように、第6の実施の形態に示す車両用差動装置61は、デフケース2内でサイドギヤ5L,5R(サイドギヤ5Lのみ図示)に噛合する8個のピニオンギヤ(第1ピニオンギヤ62a〜第8ピニオンギヤ62h)を用いた点に特徴がある。
このため、デフケース2には、図34に示すように、第1ピニオンギヤ挿入孔63a〜第8ピニオンギヤ挿入孔63hが円周方向に等間隔をもって配設されている。
第1ピニオンギヤ62a〜第8ピニオンギヤ62hは、第1ピニオンギヤ挿入孔63a〜第8ピニオンギヤ挿入孔63h及び延出部(図示せず内に回転自在にそれぞれ支持されている。
[第6の実施の形態の効果]
以上説明した第6の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果(1)〜(7)と同様の効果が得られる。
以上、本発明の車両用差動装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
(1)各実施の形態(ピニオンギヤ抜け止め用リング2bを用いたもの)では、ピニオンギヤ28,29等がデフケース220(ピニオンギヤ挿入孔と延出部の各支持面)に支持されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図35に示すようにピニオンギヤ28,29とデフケース220(ギヤ取付孔)との間に無底円筒状のピニオンギヤ支持部材221を介在させてもよい。この場合、デフケース220には、ピニオンギヤ支持部材221を取り付けるための貫通孔220aが設けられている。貫通孔220aの内径は、ピニオンギヤ支持部材221の外径と略同一の寸法に設定されている。ピニオンギヤ支持部材221の内径は、ピニオンギヤ28,29の外径と略同一の寸法に設定されている。ピニオンギヤ支持部材221の内面は、ピニオンギヤ28,29のギヤ部C(サイドギヤ噛み合い部)の少なくとも一部及び基端部Bを支持するギヤ支持面で形成されている。これにより、デフケース220内の空間部7が比較的大きくなるため、デフケース220の内部に膨出部8(図8参照)を設ける必要がなくなり、ケース設計上の自由度を高めることができる。また、機械的強度を高めるための表面処理をピニオンギヤ支持部材221のみに施すことにより、所期の目的を達成することができ、コストの低廉化を図ることができる。
上記の変形例において、ピニオンギヤ支持部材72及びピニオンギヤ28,29をデフケース71に組み付けるには、図36(a)に示すようにサイドギヤ(図示せず)が組み込まれたデフケース71の貫通孔71a内に一部が回転軸線O側に延出してピニオンギヤ支持部材72を取り付けた後、図36(b)にようにピニオンギヤ支持部材72内に矢印方向にピニオンギヤ28,29を挿入することにより行う。
(2)本実施の形態(ピニオンギヤ抜け止め用リング2bを用いたもの)では、ピニオンギヤ抜け止め用リング2bを加熱膨張させることによりケース本体2aに取り付ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図37に示すようにピニオンギヤ3,4の摺動部3A,4Aの一部を逃がす切り欠き2C1,2C2が設けられた第3ケースエレメント2C(ピニオンギヤ抜け止め用リング2b)を用いると、ピニオンギヤ抜け止め用リング2bの取付時における加熱処理を省略することができ、コストの低廉化を図ることができる。なお、ピニオンギヤは、この他にも5個あるいは7個でもよい。また、ピニオンギヤの円筒径をさらに小さくし、9個以上設置してもよい。
[第7の実施の形態]
図38は、本発明の第7の実施の形態に係る車両用混成差動装置を説明するために示す断面図である。図38において、図1〜図37と同一又は同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図38に示すように、第7の実施の形態に示す車両用混成差動装置71は、第1差動装置72及び第2差動装置73にベベルギヤ式差動装置(シャフトレス型のピニオンギヤを備えた車両用差動装置)を用い、これら差動装置72,73をケーシング74の回転軸線Oに沿って並設した点に特徴がある。
このため、ケーシング74は、車軸挿入孔75Lを有する第1ケーシングエレメント75と、ピニオンギヤ挿入孔76a,76b及びサイドギヤ筒部挿通孔76cを有する第2ケーシングエレメント76とからなり、第1差動装置72及び第2差動装置73を収容するように構成されている。
ピニオンギヤ挿入孔76a,76bは、平面円形状の開口部を有する段状の貫通孔によって形成されている。ピニオンギヤ挿入孔76a,76bの内側開口周縁には、遠心力が作用するピニオンギヤ280,281(後述)を受け止め、かつ所定の曲率をもつ球面で形成されたピニオンギヤ受部(頂部)76a1,76b1が設けられている。
第1差動装置72は、ケーシング74の回転軸線Oと直角な軸線方向に沿って互いに並列する2個のピニオンギヤ280,281(ピニオンギヤ281のみ図示)と、これらピニオンギヤ280,281に噛合する左右2個のサイドギヤ77L,77Rとを有し、センターデフとして機能するように構成されている。
ピニオンギヤ280,281は、第1入力部材として機能し、ピニオンギヤ挿入孔76a,76b及び延出部(図示せず)に回転自在に支持されている。そして、車両(4輪車)の何れか1輪の回転駆動力が低下したとき、サイドギヤ77L,77Rのトルクバイアス比と、サイドギヤ79L,79Rのトルクバイアス比との掛け合わせによって定まるエンジン側の回転駆動力をケーシング74から受けてサイドギヤ77L,77Rに入力するように構成されている。
サイドギヤ77L,77Rは、ピニオンギヤ280,281に噛合する環状の傘歯車からなり、第2ケーシングエレメント76内に回転自在に支持されている。そして、サイドギヤ77Lは第1出力部材として、またサイドギヤ77Rは第2出力部材としてそれぞれ機能するように構成されている。サイドギヤ77Lの背面には、ピニオンギヤ挿入孔78a,78bを有するケース78が取り付けられている。サイドギヤ77Lの背面とサイドギヤ79R(後述)の背面との間には、スラストワッシャ710が介装されている。サイドギヤ77Rの背面には、サイドギヤ筒部挿通孔76cに回転自在に挿通する車軸挿通用のサイドギヤ筒部77Raが一体に設けられている。サイドギヤ77Rの背面とサイドギヤ筒部挿通孔76cの内側開口周縁との間には、スラストワッシャ711が介装されている。サイドギヤ筒部77Raには、プロペラシャフト(図示せず)等を介してリア車軸(図示せず)が連結されている。
第2差動装置73は、ケーシング74の回転軸線Oと直角な軸線方向に沿って互いに並列する2個のピニオンギヤ282,283(ピニオンギヤ283のみ図示)と、これらピニオンギヤ282,283に噛合する左右2つのサイドギヤ79L,79Rとを有し、フロントデフとして機能するように構成されている。
ピニオンギヤ282,283は、第2入力部材として機能し、ピニオンギヤ挿入孔78a,78b及び延出部(図示せず)に回転自在に支持されている。そして、車両(4輪車)の何れか1輪の回転駆動力が低下したとき、サイドギヤ79L,79Rのトルクバイアス比によって定まるエンジン側の回転駆動力を第1差動装置72(ケース78)から受けてサイドギヤ79L,79Lに入力するように構成されている。
サイドギヤ79L,79Rは、各外径が互いに異なるボス部79La,79Ra及びギヤ部79Lb,79Rbを有する略環状の歯車からなり、ピニオンギヤ282,283に噛合し、ボス部79La,79Raをそれぞれ車軸挿入孔75L,サイドギヤ77L内に臨ませてケーシング74内に回転自在に支持されている。サイドギヤ79L,79Rには、左右のフロント車軸(図示せず)がそれぞれスプライン嵌合されている。そして、サイドギヤ79Lは第3出力部材として、またサイドギヤ79Rは第4出力部材としてそれぞれ機能するように構成されている。サイドギヤ79Lの背面と車軸挿入孔75Lの内側開口周縁との間には、スラストワッシャ712が介装されている。
〔車両用混成差動装置71の動作〕
先ず、車両のエンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤを介してケーシング74に入力されると、ケーシング74が回転軸線Oの回りに回転される。次に、ケーシング74が回転されると、この回転力がピニオンギヤ280,281に伝達され、さらにピニオンギヤ280,281からサイドギヤ77L,77Rに伝達される。これにより、サイドギヤ77L,77Rが回転され、サイドギヤ77Lの回転力がケース78を介してピニオンギヤ282,283に伝達される。そして、ピニオンギヤ282,283が回転され、この回転力がサイドギヤ79L,79Rに伝達される。
この場合、サイドギヤ77R(サイドギヤ筒部77Ra)にはリア車軸が連結され、かつサイドギヤ79L,79Rにはそれぞれ左右のフロント車軸がスプライン嵌合されているため、エンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤ・ケーシング74・第1差動装置72(ピニオンギヤ280,281及びサイドギヤ77R)を介してリア車軸に伝達されるとともに、ケーシング74・第1差動装置72(ピニオンギヤ281,282及びサイドギヤ77L,77R)・ケース78・第2差動装置73(ピニオンギヤ282,283及びサイドギヤ79L,79R)を介して左右のフロント車軸に伝達される。
ここで、前後の左右両車軸上における各車輪に加わる負荷が等しい場合には、エンジン側からのトルクがケーシング74に伝達されると、ピニオンギヤ280,281がサイドギヤ77L,77R上を公転するとともに、ピニオンギヤ282,283がサイドギヤ79L,79R上を公転し、ピニオンギヤ280〜283及びサイドギヤ77L,77R,79L,79Rがケーシング74と共に一体に回転されるため、エンジン側からのトルクが前後の左右両車軸に等分に伝達され、前後の左右各車輪が等しい回転数で回転される。
一方、走行中に車両が例えば左方に旋回したり、あるいは前方の右車輪がぬかるみに落ち込んだりした場合には、ピニオンギヤ280,281がサイドギヤ77L,77R上で自転し、エンジン側からの回転駆動力が第1差動装置72を介して第2差動装置73とリア軸間で差動分配される。さらに、第2差動装置73では、ピニオンギヤ282,283がサイドギヤ79L,79R上で自転し、回転駆動力がフロント軸の左右車輪間で差動分配される。このため、前方の左車輪及びリア軸(左右車輪)がデフケース2の回転速度より低い速度で回転され、前方の右車輪がデフケース2の回転速度より高い速度で回転される。
この場合、第1差動装置72のピニオンギヤ280,281がサイドギヤ77L,77Rのトルクバイアス比とサイドギヤ79L,79Rのトルクバイアス比との掛け合わせによって定まるエンジン側からの回転駆動力をサイドギヤ77L,77Rに入力し、第2差動装置73のピニオンギヤ282,283がサイドギヤ79L,79Rのトルクバイアス比によって定まるサイドギヤ77Rからの回転駆動力をサイドギヤ79L,79Rに入力する。
このため、トルクバイアス比の掛け合わせ効果によって差動回転時に高速(低負荷)側から低速(高負荷)側に大きな回転駆動力を移動させることができ、全体としての回転駆動力を高めることができる。例えば、サイドギヤ77L,77Rのトルクバイアス比a及びサイドギヤ79L,79Rのトルクバイアス比bを共にa,b=2とし、前方の右車輪のトルクT1がT1=10に低下したとする。この場合、図39に示すように、前方の左車輪のトルクT2がT2=T1×b=20になるため、第2差動装置73に入力されるトルクT3がT3=T1+T2=30となる。また、第1差動装置72に入力されるトルクT4がT4=T3×a=60となる。これにより、エンジン側からのトルクT5がT5=T3+T4=90となり、エンジン側からのトルクが高められる。
[第7の実施の形態の効果]
以上説明した第7の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果(1)〜(7)に加え、次に示す効果が得られる。
(1)ピニオンギヤ280,281がサイドギヤ77L,77Rのトルクバイアス比とサイドギヤ79L,79Rのトルクバイアス比との掛け合わせによって定まるエンジン側からの回転駆動力をサイドギヤ77L,77Rに入力し、第2差動装置73のピニオンギヤ282,283がサイドギヤ79L,79Rのトルクバイアス比によって定まるサイドギヤ77Rからの回転駆動力をサイドギヤ79L,79Rに入力するため、トルクバイアス比の掛け合わせ効果によって差動回転時に低負荷側から高負荷側に大きな回転駆動力を移動させることができ、全体としての回転駆動力を高めることができる。
(2)第1差動装置72及び第2差動装置73がトルクバイアス機能を備えているため、別途に差動制限装置を付加する必要がなくなり、コストの低廉化を図ることができる。
以上、本発明の車両用混成差動装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
(1)本実施の形態においては、第1差動装置72及び第2差動装置73として共にベベルギヤ式差動装置(シャフトレス型のピニオンギヤを備えた車両用差動装置)である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図40に示すように第1差動装置401としてシャフトレス型ピニオンギヤ付きの車両用差動装置を用い、第2差動装置402として他のベベルギヤ式差動装置を用いてもよい。また、図41に示すように第1差動装置403としてシャフト付きのピニオンギヤを備えた車両用差動装置(ベベルギヤ式差動装置)を用いるとともに、第2差動装置404としてシャフトレス型ピニオンギヤ付きの車両用差動装置を用いてもよい。
(2)本実施の形態においては、第1差動装置72をセンターデフとして、また第2差動装置73をフロントデフとしてそれぞれ機能する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、第1差動装置をセンターデフとして、また第2差動装置をリアデフとしてそれぞれ機能するものであってもよい。
[第8の実施の形態]
図42は、本発明の第8の実施の形態に係る車両用混成差動装置を説明するために示す断面図である。図42において、図1〜図37と同一又は同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
図42に示すように、第8の実施の形態に示す車両用混成差動装置81は、第1差動装置82としてプラネタリギヤ式差動装置と用いるとともに、第2差動装置83にベベルギヤ式差動装置(シャフトレス型のピニオンギヤを備えた車両用差動装置)を用い、これら差動装置82,83をケーシング84の回転軸線Oと直角な方向に沿って並設した点に特徴がある。
このため、ケーシング84は、車軸挿入孔85Lを有する第1ケーシングエレメント85と、サンギヤ筒部挿通孔86cを有する第2ケーシングエレメント86とからなり、第1差動装置82及び第2差動装置83を収容するように構成されている。
第1差動装置82は、回転軸線O上に位置する遊星歯車290と、この遊星歯車290の外側に位置する内歯車付きの第1ケース291と、この第1ケース291に対向する太陽歯車付きの第2ケース292とを有し、センターデフとして機能するように構成されている。
遊星歯車290は、ケーシング84と共に回転する第1入力部材として機能し、ケーシング84(第2ケーシングエレメント86)内に回転自在に配設されている。そして、車両の何れか1輪の回転駆動力が低下したとき、第1ケース291(内歯車291a)及び第2ケース292(太陽歯車292a)のトルクバイアス比と、サイドギヤ295L,295R(後述)のトルクバイアス比との掛け合わせによって定まる回転駆動力を第2差動装置83(ピニオンギヤ293,294)に入力するように構成されている。
第1ケース291は、遊星歯車290に噛合する内歯車291aを有し、第1出力部材として遊星歯車290からの回転力を受けて第2差動装置83に出力するように構成されている。第1ケース291には、回転軸線Oと直角な方向に開口するピニオンギヤ挿入孔291b,291cが設けられている。また、第1ケース291には、回転軸線O方向に開口するサイドギヤ挿入孔291d,291eが設けられている。
第2ケース292は、遊星歯車290bに噛合する太陽歯車292aを外面に有し、第2出力部材として遊星歯車290からの回転力を受けてリア軸に出力するように構成されている。第2ケース292の内面には、遠心力が作用するピニオンギヤ293,294(後述)を受け止め、かつ所定の曲率をもつ球面で形成されたピニオンギヤ受部(頂部)292b,292cが設けられている。また、第2ケース292には、サンギヤ筒部挿通孔86cを挿通するサンギヤ筒部292dが設けられている。
第2差動装置83は、ケーシング84の回転軸線Oと直角な軸線方向に沿って互いに並列する2個のピニオンギヤ293,294と、これらピニオンギヤ293,294に噛合する左右2つのサイドギヤ295L,295Rとを有し、フロントデフとして機能するように構成されている。
ピニオンギヤ293,294は、第2入力部材として機能し、ピニオンギヤ挿入孔291b,291c及び延出部(図示せず)に回転自在に支持されている。そして、車両(4輪車)の何れか1輪の回転駆動力が低下したとき、サイドギヤ295L,295Rのトルクバイアス比によって定まるエンジン側の回転駆動力を第1差動装置82(第1ケース291)から受けてサイドギヤ295L,295Rに入力するように構成されている。
サイドギヤ295L,295Rは、各外径が互いに異なるボス部295La,295Ra及びギヤ部295Lb,295Rbを有する略環状のかさ歯車からなり、ピニオンギヤ293,294に噛合し、ボス部295La,295Raをそれぞれ車軸挿入孔85L,サンギヤ筒部292d内に臨ませてケーシング84内に回転自在に支持されている。サイドギヤ295L,295Rには、左右のフロント車軸(図示せず)がそれぞれスプライン嵌合されている。そして、サイドギヤ295Lは第3出力部材として、またサイドギヤ295Rは第4出力部材としてそれぞれ機能するように構成されている。サイドギヤ295Lの背面と車軸挿入孔85Lの内側開口周縁との間にはスラストワッシャ296が、またサイドギヤ295Lの背面と第2ケース292の内面との間にはスラストワッシャ297がそれぞれ介装されている。
〔車両用混成差動装置81の動作〕
先ず、車両のエンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤを介してケーシング84に入力されると、ケーシング84が回転軸線Oの回りに回転される。次に、ケーシング84が回転されると、この回転力が遊星歯車290に伝達され、さらに遊星歯車290を介して第1ケース291の内歯車291aと第2ケース292の太陽歯車292aに伝達される。これにより、内歯車291a及び太陽歯車292aが回転され、この回転力が第1ケース291を介してピニオンギヤ293,294に伝達される。この後、ピニオンギヤ293,294が回転され、この回転力がサイドギヤ295L,295Rに伝達される。
この場合、第2ケース292(サンギヤ筒部292d)にはリア車軸が連結され、かつサイドギヤ295L,295Rにはそれぞれ左右のフロント車軸がスプライン嵌合されているため、エンジン側からのトルクがドライブピニオン及びリングギヤ・ケーシング84・第1差動装置82(遊星歯車290及び第1ケース291・第ケース292)を介してリア車軸に伝達されるとともに、ケーシング84・第1差動装置72(遊星歯車290及び第1ケース291・第ケース292)・第2差動装置73(ピニオンギヤ293,294及びサイドギヤ295L,295R)を介して左右のフロント車軸に伝達される。
ここで、前後の左右両車軸上における各車輪に加わる負荷が等しい場合には、エンジン側からのトルクがケーシング84に伝達されると、この回転駆動力を遊星歯車290が受けて第1ケース291及び第2ケース292と共に回転される。これら回転駆動力のうち第2ケース292からの回転駆動力をそのまま受けてリア軸が回転される。また、第1ケース291からの回転駆動力をピニオンギヤ293,294が受けてサイドギヤ295L,295R上を公転し、ピニオンギヤ293,294及びサイドギヤ295L,295Rがケーシング84と共に一体に回転される。このため、エンジン側からのトルクが前後の左右両車軸に等分に伝達され、前後の左右各車輪が等しい回転数で回転される。
一方、走行中に車両が例えば左方に旋回したり、あるいは前方の右車輪がぬかるみに落ち込んだりした場合には、エンジン側からのトルクが第1差動装置82を介して第2差動装置83とリア軸に差動分配される。さらに、第2差動装置83では、ピニオンギヤ293,294がサイドギヤ295L,295R上で自転し、回転駆動力がフロント軸の左右車輪間で差動分配される。このため、前方の左車輪及びリア軸(左右車輪)がケーシング84の回転速度より低い速度で回転され、前方の右車輪がケーシング84の回転速度より高い速度で回転される。
この場合、第1差動装置82の遊星歯車290が内歯車291a,太陽歯車292aのトルクバイアス比とサイドギヤ295L,295Rのトルクバイアス比との掛け合わせによって定まるエンジン側からの回転駆動力をピニオンギヤ293,294に入力し、第2差動装置83のピニオンギヤ293,294がサイドギヤ295L,295Rのトルクバイアス比によって定まる内歯車291aからの回転駆動力をサイドギヤ295L,295Rに入力する。
このため、第7の実施の形態と同様に、トルクバイアス比の掛け合わせ効果によって差動回転時に高速(低負荷)側から低速(高負荷)側に大きな回転駆動力を移動させることができ、全体としての回転駆動力を高めることができる。
[第8の実施の形態の効果]
以上説明した第8の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果(1)〜(7)に加え、次に示す効果が得られる。
(1)遊星歯車290aが内歯車291a,太陽歯車292aのトルクバイアス比とサイドギヤ295L,295Rのトルクバイアス比との掛け合わせによって定まるエンジン側からの回転駆動力をピニオンギヤ293,294に入力し、第2差動装置83のピニオンギヤ293,294がサイドギヤ295L,295Rのトルクバイアス比によって定まるピニオンギヤ293,294からの回転駆動力をサイドギヤ295L,295Rに入力するため、トルクバイアス比の掛け合わせ効果によって差動回転時に低負荷側から高負荷側に大きな回転駆動力を移動させることができ、全体としての回転駆動力を高めることができる。
(2)第1差動装置82及び第2差動装置83がトルクバイアス機能を備えているため、別途に差動制限装置を付加する必要がなくなり、コストの低廉化を図ることができる。
以上、本発明の車両用混成差動装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
(1)本実施の形態においては、第1出力部材として内歯車付きの第1ケース291であるとともに、第2出力部材として太陽歯車付きの第2ケース292である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、図43に示すように第1出力部材として太陽歯車付きの第1ケース391であるとともに、第2出力部材として内歯車付きの第2ケース392であってもよい。
(2)本実施の形態においては、第1差動装置82及び第2差動装置83を回転軸線Oと直角な方向に並設する場合(ラジアル型)について説明したが、本発明はこれに限定されず、図44及び図45に示すように第1差動装置82及び第2差動装置83を回転軸線O方向に並設する場合(アキシャル型)であってもよい。この場合、図44において、第1出力部材が内歯車付きの第1ケース393で、第2出力部材が太陽歯車付きの第2ケース394でそれぞれ構成される。また、図45において、第1出力部材が太陽歯車付きの第1ケース395で、第2出力部材が内歯車付きの第2ケース396でそれぞれ構成される。
(3)本実施の形態においては、第1差動装置82をセンターデフとして、また第2差動装置83をフロントデフとしてそれぞれ機能する場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、第1差動装置をセンターデフとして、また第2差動装置をリアデフとしてそれぞれ機能するものであってもよい。
本発明の好ましい実施態様を図示し説明したが、このような実施態様は例として示されたものであることは明らかであろう。当業者には本発明の範囲内で種々の変形、変更及び置換をなし得よう。従って、本発明は請求の範囲に記載の精神及び範囲によって定められるべきである。
1,21,31,41,51,61…車両用差動装置
2,22,72,200,220…デフケース
2A…第1ケースエレメント
2B…第2ケースエレメント
2C…第3ケースエレメント
2D…第4ケースエレメント
2a…ケース本体
2b…ピニオンギヤ抜け止め用リング、
3,4,28,29,281,283,293,293,294…ピニオンギヤ
3A,4A,28B,29B…摺動部
3a,4a,28a,29a…第1被保持部
3b,4b,28b,29b…第2被保持部
5L,5R,77L,77R,79L,79R,295L,295R…500L,500R…サイドギヤ
5La,5Ra,79La,79Ra,295La,295Ra…ボス部
5Lb,5Rb、79Lb,79Rb,295Lb,295Rb…ギヤ部
6L,6R,20,27L,27R,296,297,710,711,712…スラストワッシャ
7…空間部
8L,8R…膨出部
9L,9R,23L,23R,75L,85L…車軸挿入孔
9La,9Rb…大径部
9Lb,9Rb…小径部
9Lc,9Rc,23La,23Ra…スラストワッシャ受部
10,11,24,25,76a,76b,78a,78b,291b,291c…ピニオンギヤ挿入孔
10a,11a…第1ピニオンギヤ支持面
12L,12R,26L,26R…サイドギヤ通過孔
13…取付用フランジ
14,15…延出部
14a,15a…第2ピニオンギヤ支持面
16,17,10A,11A,76a1,76b1,292b,292c…ピニオンギヤ受部
18,Cs…ストレート部
19,Ct…テーパ部
A,C…ギヤ部
B…基端部
28A,29A,71a…貫通孔
32a,42a,52a,62a,420a,520a…第1ピニオンギヤ
32b、42b,52b,62b,420b,520b…第2ピニオンギヤ
32c,42c,52c,62c,420c,520c…第3ピニオンギヤ
32d,42d,52d,62d,420d,520d…第4ピニオンギヤ
32e,42e,52e,62e,520e…第5ピニオンギヤ
32f,42f,52f,62f,520f…第6ピニオンギヤ
33a,43a,53a,63a,430a,530a…第1ピニオンギヤ挿入孔
33b、43b,53b,63b,430b,530b…第2ピニオンギヤ挿入孔
33c,43c,53c,63c,430c,530c…第3ピニオンギヤ挿入孔
33d,43d,53d,63d,430d,530d…第4ピニオンギヤ挿入孔
33e,43e,53e,63e,530e…第5ピニオンギヤ挿入孔
33f,43f,53f,63f,530f…第6ピニオンギヤ挿入孔
62g…第7ピニオンギヤ
62h…第8ピニオンギヤ
63g…第7ピニオンギヤ挿入孔
63h…第8ピニオンギヤ挿入孔
71,81…車両用混成差動装置
72,82…第1差動装置
73,83…第2差動装置
74,84…ケーシング
75,85…第1ケーシングエレメント
76,86…第2ケーシングエレメント
76c…サイドギヤ筒部挿通孔
77Ra…サイドギヤ筒部
78…ケース
220a…貫通孔
221…ピニオンギヤ支持部材
290…遊星歯車
291,391,393,395…第1ケース
291a…内歯車
291d,291e…サイドギヤ挿入孔
292,392,394,396…第2ケース
292a…太陽歯車
292d…サンギヤ筒部
500La,500Ra…ギヤ内周部
500Lb,500Rb…ギヤ外周部
2C1,2C2…切り欠き
A1,C2…凸歯
A2,C1…歯溝
a1,c…歯先面
O…回転軸線

Claims (6)

  1. 回転駆動される第1入力部材,及び前記第1入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される前輪用及び後輪用の第1及び第2出力部材を有する第1差動装置と、
    前記第1あるいは第2出力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される第2入力部材,及び前記第2入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される前輪用あるいは後輪用の左右の車輪用の第3及び第4出力部材を有する第2差動装置と、
    前記第1及び第2差動装置を収容し、前記第1入力部材を回転駆動するケーシングとを備え、
    前記第1差動装置は、
    デフケースに形成され、同デフケースの内部へ延出した延出部を有する複数のピニオンギヤ挿入孔内に回転自在に支持されたシャフトレス型の複数のピニオンギヤを前記入力部材として備え、
    前記複数のピニオンギヤの外径より大なる外径を有し、前記デフケースに形成されたサイドギヤ通過孔から前記デフケースの内部へ組み込まれることにより前記複数のピニオンギヤと噛合して前記デフケースの内部で回転自在に支持された1対のサイドギヤを前記第1及び第2出力部材として備え
    前記延出部は、前記ピニオンギヤ挿入孔の内側開口周縁に円周方向に等間隔をもって並列し、同延出部には、前記ピニオンギヤの前記1対のサイドギヤとの噛み合い部の少なくとも一部を支持するピニオンギヤ支持面が設けられたことを特徴とする車両用混成差動装置。
  2. 前記第1差動装置の前記第1入力部材は、何れか1輪の回転駆動力が低下したとき、前記第1及び第2出力部材のトルクバイアス比と、前記第3及び第4の出力部材のトルクバイアス比との掛け合わせによって定まる回転駆動力を入力し、
    前記第2差動装置の前記第2入力部材は、前記第3及び第4出力部材のトルクバイアス比によって定まる回転駆動力を入力することを特徴とする請求項1の車両用混成差動装置。
  3. 回転駆動される第1入力部材,及び前記第1入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される前輪用及び後輪用の第1及び第2出力部材を有する第1差動装置と、
    前記第1あるいは第2出力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される第2入力部材,及び前記第2入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される前輪用あるいは後輪用の左右の車輪用の第3及び第4出力部材を有する第2差動装置と、
    前記第1及び第2差動装置を収容し、前記第1入力部材を回転駆動するケーシングとを備え、
    前記第2差動装置は、
    デフケースに形成され、同デフケースの内部へ延出した延出部を有する複数のピニオンギヤ挿入孔内に回転自在に支持されたシャフトレス型のピニオンギヤを前記第2入力部材として備え、
    前記複数のピニオンギヤの外径より大なる外径を有し、前記デフケースに形成されたサイドギヤ通過孔から前記デフケースの内部へ組み込まれることにより前記複数のピニオンギヤと噛合して前記デフケースの内部で回転自在に支持された1対のサイドギヤを前記第3及び第4出力部材として備え
    前記延出部は、前記ピニオンギヤ挿入孔の内側開口周縁に円周方向に等間隔をもって並列し、同延出部には、前記ピニオンギヤの前記1対のサイドギヤとの噛み合い部の少なくとも一部を支持するピニオンギヤ支持面が設けられたことを特徴とする車両用混成差動装置。
  4. 前記第1差動装置の前記第1入力部材は、何れか1輪の回転駆動力が低下したとき、前記第1及び第2出力部材のトルクバイアス比と、前記第3及び第4の出力部材のトルクバイアス比との掛け合わせによって定まる回転駆動力を入力し、
    前記第2差動装置の前記第2入力部材は、前記第3及び第4出力部材のトルクバイアス比によって定まる回転駆動力を入力することを特徴とする請求項3の車両用混成差動装置。
  5. 回転駆動される第1入力部材,及び前記第1入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される前輪用及び後輪用の第1及び第2出力部材を有する第1差動装置と、
    前記第1あるいは第2出力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動される第2入力部材,及び前記第2入力部材からの回転駆動力を受けて回転駆動力される前輪用あるいは後輪用の左右の車輪用の第3及び第4出力部材を有する第2差動装置と、
    前記第1及び第2差動装置を収容し、前記第1入力部材を回転駆動するケーシングとを備え、
    前記第1及び第2の差動装置は、
    第1及び第2デフケースにそれぞれ形成され、同デフケースの内部へ延出した延出部を有する複数のピニオンギヤ挿入孔内に回転自在に支持されたシャフトレス型の複数のピニオンギヤを前記第1及び第2入力部材として備え、
    前記複数のピニオンギヤの外径より大なる外径を有し、前記第1及び第2デフケースにそれぞれ形成されたサイドギヤ通過孔から前記第1及び第2デフケースの内部へ組み込まれることにより前記複数のピニオンギヤと噛合して前記第1及び第2デフケースの内部で回転自在に支持された1対のサイドギヤを前記第1及び第2出力部材ならびに前記第3及び第4出力部材として備え
    前記延出部は、前記ピニオンギヤ挿入孔の内側開口周縁に円周方向に等間隔をもって並列し、同延出部には、前記ピニオンギヤの前記1対のサイドギヤとの噛み合い部の少なくとも一部を支持するピニオンギヤ支持面が設けられたことを特徴とする車両用混成差動装置。
  6. 前記第1差動装置の前記第1入力部材は、何れか1輪の回転駆動力が低下したとき、前記第1及び第2出力部材のトルクバイアス比と、前記第3及び第4の出力部材のトルクバイアス比との掛け合わせによって定まる回転駆動力を入力し、
    前記第2差動装置の前記第2入力部材は、前記第3及び第4出力部材のトルクバイアス比によって定まる回転駆動力を入力することを特徴とする請求項5の車両用混成差動装置。
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