シリーズレギュレータをなす定電圧電源回路の過電流保護としては、出力電流が所定の電流値以上になることを防止する電流制限回路と、出力短絡時の出力電流を制限する過電流保護回路から構成されるフの字特性を有するものが知られている。
近年、電子機器の消費電力化が求められ、低電圧回路をなす電源回路においても低消費電流化の要求が強く、保護回路の消費電流も小さくすることが求められている。フの字特性を示す過電流保護回路において消費電流を小さくする技術が、例えば、特許文献1,2に記載されている。この特許文献1,2に記載の技術を図5〜図8を用いて説明する。
図5は、従来の出力電圧と出力電流をそれぞれ段階的に交互に減少させるフの字特性に近似した特性(ステップ上のフの字特性)を有する過電流保護回路を備えた定電圧回路の構成例を示す回路図であり、図6〜図8は、図5における定電圧回路の出力電圧と出力電流との第1〜第3の関係を示す説明図である。
図5に示す定電圧回路1bは、出力端子Voutから出力される出力電流ioを制御して、出力端子Voutから出力される出力電圧Voが所定の電圧で一定になるようにするものであり、出力電流ioに対する過電流保護回路2bを備えている。
特に、この過電流保護回路2bは、出力電圧Voと出力電流ioとの関係がフの字特性に近似した特性(ステップ上のフの字特性)をなすように、すなわち、出力電圧と出力電流をそれぞれ複数の段階に交互に減少させるように動作する。
定電圧回路1bは、過電流保護回路2bと、所定の基準電圧Vrを生成して出力する基準電圧発生回路Vsと、出力電圧Voを抵抗R1およびR2で分圧して出力する出力電圧検出回路3bと、この出力電圧検出回路3bから出力された分圧電圧Vfbと基準電圧Vrとの差電圧を増幅して出力する誤差増幅器(図中「AMP1」と記載)4bと、この誤差増幅器4bからの出力信号に応じて出力電流ioの制御を行って出力電圧Voを一定電圧になるように制御するドライバトランジスタをなすPMOSトランジスタM1とを備えている。また、過電流保護回路2bは、PMOSトランジスタM2〜M6、NMOSトランジスタM7〜M11および抵抗R3〜R6で構成されている。
尚、PMOSトランジスタM1は出力制御用トランジスタを、抵抗R1およびR2は出力電圧検出回路をそれぞれなし、PMOSトランジスタM2は比例電流生成回路部を、PMOSトランジスタM4およびM5は電流分割回路部をそれぞれなす。また、抵抗R3〜R5は電流−電圧変換回路部を、PMOSトランジスタM3、NMOSトランジスタM9および抵抗R6は出力電流制御回路部を、NMOSトランジスタM10,M11は変換比率変更回路部およびスイッチ素子をそれぞれなす。また、PMOSトランジスタM5,M6とNMOSトランジスタM10,M11は分割比率制御回路をなす。
正側電源電圧Vddと出力端子Voutとの間には、出力制御トランジスタとしてのPMOSトランジスタM1が接続され、出力端子Voutと負側電源電圧Vssとの間には出力電圧検出回路としての抵抗R1とR2との直列回路が接続されている。
この抵抗R1と抵抗R2との接続部は、誤差増幅器4bの非反転入力端に接続され、誤差増幅器4bの反転入力端には基準電圧Vrが入力されている。誤差増幅器4bの出力端は、PMOSトランジスタM1のゲートに接続されている。
誤差増幅器4bは、出力電圧Voが抵抗R1とR2で分圧された分圧電圧Vfbが基準電圧VrになるようにPMOSトランジスタM1の動作制御を行い、出力電流ioの制御を行って出力電圧Voを一定電圧になるように制御する。
PMOSトランジスタM2のソースはPMOSトランジスタM1のソースに、PMOSトランジスタM2のゲートはPMOSトランジスタM1のゲートにそれぞれ接続されているため、PMOSトランジスタM1のドレイン電流に比例した電流がPMOSトランジスタM2のドレインから流れる。
このPMOSトランジスタM2のドレイン電流は、PMOSトランジスタM4〜M6で構成されたカレントミラー回路におけるPMOSトランジスタM4およびM5の各ソースに供給され、PMOSトランジスタM4およびM5のトランジスタサイズに比例した電流に分割され、PMOSトランジスタM4およびM5のドレイン電流となってそれぞれ出力される。
PMOSトランジスタM5のドレインと負側電源電圧Vssとの間にはNMOSトランジスタM7が接続され、PMOSトランジスタM6のドレインと負側電源電圧Vssとの間にはNMOSトランジスタM8が接続されている。
NMOSトランジスタM7とM8の各ゲートは接続され、この接続部はNMOSトランジスタM7のドレインに接続されている。NMOSトランジスタM7およびM8はカレントミラー回路を形成している。
分割された一方の電流であるPMOSトランジスタM4のドレイン電流は、直列に接続された抵抗R3〜R5に供給される。抵抗R3とPMOSトランジスタM4のドレインとの接続部は、NMOSトランジスタM9のゲートに接続されている。この抵抗R3とPMOSトランジスタM4との接続部の電圧が、NMOSトランジスタM9のしきい値電圧になるとNMOSトランジスタM9がオンする。
PMOSトランジスタM3のゲートは抵抗R6を介して正側電源電圧Vddに接続されており、NMOSトランジスタM9のドレインにはPMOSトランジスタM3のゲートが接続されているため、NMOSトランジスタM9がオンするとPMOSトランジスタM3もオンする。
PMOSトランジスタM3のソースはPMOSトランジスタM1のソースに、PMOSトランジスタM3のドレインはPMOSトランジスタM1のゲートにそれぞれ接続されているため、PMOSトランジスタM3がオンすると、PMOSトランジスタM1のゲート電圧が上昇し、PMOSトランジスタM1からの出力電流ioの増加を抑制し、出力電圧Voを低下させるようにする。
これは、出力電圧Voと出力電流ioとの関係を示した図6における(a),(b)点の状態を示している。すなわち、出力電流ioが第1制限電流値iaになると、過電流保護回路2bにおいては、PMOSトランジスタM2からの比例電流×R3の電圧に応じたPMOSトランジスタM3によるPMOSトランジスタM1の出力電流の制御が行われ、出力電流ioが第1制限電流値iaに制限された状態で、出力電圧Voのみが低下する。
一方、抵抗R4とR5の直列回路に並列にNMOSトランジスタM11が接続され、このNMOSトランジスタM11のゲートには分圧電圧Vfbが入力されている。また、抵抗R5と並列にNMOSトランジスタM10が接続され、このNMOSトランジスタM10のゲートには出力電圧Voが入力されている。
定電圧回路1bが正常に作動している間は、分圧電圧Vfbと基準電圧Vrは同電圧になるように制御されているため、この状態では、NMOSトランジスタM10およびM11はそれぞれオンしている。
図6の(a)点からの出力電圧Voの低下に伴って分圧電圧Vfbが低下し、出力電圧Voが図6の(b)点の電圧Vbまで低下すると、NMOSトランジスタM11はオフする。すなわち、NMOSトランジスタM11は、第1制限電圧Vbを検出するためのトランジスタをなす。
このようにNMOSトランジスタM11がオフすると、NMOSトランジスタM9のゲートと接地電圧との間に抵抗R3およびR4が直列に接続され、NMOSトランジスタM9のゲート電圧が上昇し、NMOSトランジスタM9のドレイン電流が増加してPMOSトランジスタM3のゲート電圧が低下し、PMOSトランジスタM1のゲート電圧が上昇し、PMOSトランジスタM1の出力電流ioが減少する。
これは、図6の(b)→(c)点の状態を示している。すなわち、出力電圧Voが図6の(b)点の電圧Vbまで低下すると、過電流保護回路2bにおいては、それまでのPMOSトランジスタM2からの比例電流×R3の電圧に応じたPMOSトランジスタM3によるPMOSトランジスタM1の出力電流の制御が、PMOSトランジスタM2からの比例電流×(R3+R4)の電圧に応じて行われるようになり、第2制限電流値icでの出力電流に対する制限制御に移る(図6の(c)点)。
そして、図6の(c)点、すなわち、出力電ioの制限が電流値icの状態となると、過電流保護回路2bにおいては、PMOSトランジスタM2からの比例電流×(R3+R4)の電圧に応じたPMOSトランジスタM9とPMOSトランジスタM3によるPMOSトランジスタM1の出力電流の制御が行われ、出力電流ioが第2制限電流値icに制限された状態で、出力電圧Voが低下する。これは、図6の(c)→(d)点までの状態を示している。
このようにして、出力電圧Voが、図6の(c)点の電圧Vbから図6の(d)点の電圧Vdまで低下すると、NMOSトランジスタM10はオフする。すなわち、NMOSトランジスタM10は、第2制限電圧Vdを検出するためのトランジスタをなす。
尚、NMOSトランジスタM10には、NMOSトランジスタM11よりもトランジスタサイズが大きなもの又はしきい値電圧が小さいものを使用している。定電圧回路1bが正常に作動している間は、NMOSトランジスタM11と同様、NMOSトランジスタM10はオンしている。
図6の(d)点においてNMOSトランジスタM10がオフすると、NMOSトランジスタM9のゲートと接地電圧との間に抵抗R3〜R5が直列に接続され、NMOSトランジスタM9のゲート電圧が上昇し、NMOSトランジスタM9のドレイン電流が増加してPMOSトランジスタM3のゲート電圧が低下し、PMOSトランジスタM1のゲート電圧が上昇し、PMOSトランジスタM1の出力電流ioが減少する。これは、図6の(d)→(e)点の状態を示している。
すなわち、出力電圧Voが図6の(d)点の電圧Vdまで低下すると、過電流保護回路2bにおいては、それまでのPMOSトランジスタM2からの比例電流×(R3+R4)の電圧に応じたPMOSトランジスタM3によるPMOSトランジスタM1の出力電流の制御が、PMOSトランジスタM2からの比例電流×(R3+R4+R5)の電圧に応じて行われるようになり、第3制限電流値ieでの出力電流に対する制限制御に移る(図6の(e)点)。
そして、図6の(e)点における出力電ioの制限が電流値ieの状態となると、過電流保護回路2bにおいては、PMOSトランジスタM2からの比例電流×(R3+R4+R5)の電圧に応じたPMOSトランジスタM9とPMOSトランジスタM3によるPMOSトランジスタM1の出力電流の制御が行われ、出力電流ioが第3制限電流値ieに制限された状態で、出力電圧Voが低下する。
このように、図5における定電圧回路1bでは、過電流保護回路2bによって、出力電流ioが第1制限電流値iaに達すると、PMOSトランジスタM1から出力される電流の増加を抑制して出力電圧Voのみを低下させるようにPMOSトランジスタM1を制御し、出力電圧Voが所定の第1制限電圧値Vbまで低下すると、NMOSトランジスタM11がオフし、NMOSトランジスタM9のゲート電圧が上昇し、PMOSトランジスタM1のゲート電圧を上昇させて出力電流ioが第2制限電流値icで制限された状態で出力電圧Voが低下し、さらに、この出力電圧Voが所定の第2制限電圧値Vdまで低下すると、NMOSトランジスタM10がオフとなり、NMOSトランジスタM9のゲート電圧がさらに上昇し、PMOSトランジスタM1のゲート電圧をさらに上昇させて出力電流ioが第3制限電流値ieで制限された状態で出力電圧Voが更に低下する。
この結果、図6に示すように、定電圧回路1bの出力電流ioが第1制限電流iaまで大きくなると、出力電圧Voと出力電流ioが概略フの字になるように階段状に低下する。このように、出力電流ioに対する制限電流値をステップ状に変化させ、制限電流値と出力電圧Voの組み合わせを階段状に変化させることができ、発振等の発生を防止できると共に消費電流の低減を図ることができる。
尚、図6に示すステップ状のフの字特性において、通常時の出力電圧Voの所定の電圧値Vxと第1制限電圧値Vbとの電圧差は小さい方がよい。すなわち第1制限電圧値Vbは大きい方がよい。このようにする理由は、第1制限電流値iaのまま出力電圧Voが低下すると多大な熱が発生するため、第1制限電圧値Vbを大きく設定することで該発熱を小さくするという効果を得ることにある。
また、図6において、発熱を小さくするために、第2制限電圧値Vdは、周囲温度およびプロセスのばらつきを含めた最小値が0Vにならない程度に小さくするのがよい。従って、図6は、図7および図8で示すような特性をなすようにするとよい。
ここで、図7,図8において、破線で示した特性は、定電圧回路1の仕様上の出力電流ioの最大値と出力電圧Voの設定値Vxの交点と、出力電圧Voが0Vで出力電流ioが0Aである点とをつないだ線であり、これを負荷罫線L1と呼ぶ。
第3制限電流値ieは、出力短絡時の発熱を低減させるために小さくする方がよいが、電源投入時の立ち上がり時間は、第3制限電流値ieを小さくすると遅くなる。このため、パッケージの許容損失を含めて第3制限電流値ieを最適値に設定するようにする。
図8において、第2制限電圧値Vdと第3制限電流値ieとの交点Pは、負荷罫線L1による斜線部に入らないようにしなくてはならない。これは、仕様の出力電流ioの最大値を抵抗負荷で使用すると、電源投入時の出力はステップ状のフの字特性に沿って立ち上がるため、交点Pが図8の斜線部に入っていると、過電流保護回路2によって出力が立ち上がらなくなるためである。
従って、図8で示すように、負荷罫線L1と第3制限電流値ieとの交点Pが、周囲温度およびプロセスのばらつきを含む第2制限電圧値Vdのばらつきを含めた最小値となるように、第2制限電圧値Vdを設定すれば発熱を最小限に抑えることができる。
このように第2制限電圧値Vdを設定することにより、出力電圧Voが0Vになる短絡時の発熱を低減するためには第3制限電流値ieが小さいことが望ましいが、第2制限電圧値Vdを小さく設定することで、図8で示した斜線部分に交点Pが入らない範囲で第3制限電流値ieをより小さくすることができる。
また、出力電流ioに急峻な変動があった場合に、出力電圧Voが変動して一時的に第2制限電圧値Vd以下となり、かつ、その時の交点Pが図8の斜線部に入ると、出力電圧Voは製品の設定出力電圧へ復帰しない。このため、第2制限電圧値Vdを小さく設定することができればこのような状態になりにくく、より急峻に出力電流ioが変動する場合でも使用することができると共に、出力電圧Voを安定させるための外付けのコンデンサの容量を小さくすることができ小型化および軽量化を図ることができる。
特許第4050671号公報
特許第4125774号公報
以下、図を用いて(従来技術の説明において用いた図6〜図8を含む)本発明を実施するための最良の形態例を説明する。図1は、本発明に係る定電圧回路の第1の構成例を示すブロック図であり、図2は、図1における定電圧回路の出力電圧と出力電流との関連を示す説明図、図3は、本発明に係る定電圧回路の第2の構成例を示すブロック図、図4は、本発明に係る定電圧回路の特性の優位性を示す説明図である。
図1に示す定電圧回路1は、図5に示した従来の定電圧回路1bに、出力端子Voutからの出力が第1,第2の制限電圧になった際に、対応する第1,第2のNMOSトランジスタM11,M10をオフにする電圧を生成して対応する第1,第2のNMOSトランジスタM11,M10のゲートに入力する制限電圧設定回路5を設けたものであり、この制限電圧設定回路5を設けたこと以外は、図5に示す定電圧回路1bと同じ構成である。
すなわち、本例の定電圧回路1は、出力端子Voutから出力される出力電流ioを制御して、出力端子Voutから出力される出力電圧Voが所定の電圧で一定になるようにするものであり、出力電流ioに対する過電流保護回路2を備えている。
特に、この過電流保護回路2は、出力電圧Voと出力電流ioとの関係がフの字特性に近似した特性(ステップ上のフの字特性)をなすように、すなわち、出力電圧と出力電流をそれぞれ複数の段階に交互に減少させるように動作する。
定電圧回路1は、過電流保護回路2と、所定の基準電圧Vrを生成して出力する基準電圧発生回路Vsと、出力電圧Voを抵抗R1およびR2で分圧して出力する出力電圧検出回路3と、この出力電圧検出回路3から出力された分圧電圧Vfbと基準電圧Vrとの差電圧を増幅して出力する誤差増幅器(図中「AMP1」と記載)4と、この誤差増幅器4からの出力信号に応じて出力電流ioの制御を行って出力電圧Voを一定電圧になるように制御するドライバトランジスタをなすPMOSトランジスタM1とを備えている。また、過電流保護回路2は、PMOSトランジスタM2〜M6、NMOSトランジスタM7〜M11および抵抗R3〜R6を有している。
尚、PMOSトランジスタM1は出力制御用トランジスタを、抵抗R1およびR2は出力電圧検出回路をそれぞれなし、PMOSトランジスタM2は比例電流生成回路部を、PMOSトランジスタM4およびM5は電流分割回路部をそれぞれなす。また、抵抗R3〜R5は電流−電圧変換回路部を、PMOSトランジスタM3、NMOSトランジスタM9および抵抗R6は出力電流制御回路部を、NMOSトランジスタM10,M11は変換比率変更回路部およびスイッチ素子をそれぞれなす。また、PMOSトランジスタM5,M6とNMOSトランジスタM10,M11は分割比率制御回路をなす。
正側電源電圧Vddと出力端子Voutとの間には、出力制御トランジスタとしてのPMOSトランジスタM1が接続され、出力端子Voutと負側電源電圧Vssとの間には出力電圧検出回路としての抵抗R1とR2との直列回路が接続されている。
この抵抗R1と抵抗R2との接続部は、誤差増幅器4の非反転入力端に接続され、誤差増幅器4の反転入力端には基準電圧Vrが入力されている。誤差増幅器4の出力端は、PMOSトランジスタM1のゲートに接続されている。
誤差増幅器4は、出力電圧Voが抵抗R1とR2で分圧された分圧電圧Vfbが基準電圧VrになるようにPMOSトランジスタM1の動作制御を行い、出力電流ioの制御を行って出力電圧Voを一定電圧になるように制御する。
PMOSトランジスタM2のソースはPMOSトランジスタM1のソースに、PMOSトランジスタM2のゲートはPMOSトランジスタM1のゲートにそれぞれ接続されているため、PMOSトランジスタM1のドレイン電流に比例した電流がPMOSトランジスタM2のドレインから流れる。
このPMOSトランジスタM2のドレイン電流は、PMOSトランジスタM4〜M6で構成されたカレントミラー回路におけるPMOSトランジスタM4およびM5の各ソースに供給され、PMOSトランジスタM4およびM5のトランジスタサイズに比例した電流に分割され、PMOSトランジスタM4およびM5のドレイン電流となってそれぞれ出力される。
PMOSトランジスタM5のドレインと負側電源電圧Vssとの間にはNMOSトランジスタM7が接続され、PMOSトランジスタM6のドレインと負側電源電圧Vssとの間にはNMOSトランジスタM8が接続されている。
NMOSトランジスタM7とM8の各ゲートは接続され、この接続部はNMOSトランジスタM7のドレインに接続されている。NMOSトランジスタM7およびM8はカレントミラー回路を形成している。
分割された一方の電流であるPMOSトランジスタM4のドレイン電流は、直列に接続された抵抗R3〜R5に供給される。抵抗R3とPMOSトランジスタM4のドレインとの接続部は、NMOSトランジスタM9のゲートに接続されている。この抵抗R3とPMOSトランジスタM4との接続部の電圧が、NMOSトランジスタM9のしきい値電圧になるとNMOSトランジスタM9がオンする。
PMOSトランジスタM3のゲートは抵抗R6を介して正側電源電圧Vddに接続されており、NMOSトランジスタM9のドレインにはPMOSトランジスタM3のゲートが接続されているため、NMOSトランジスタM9がオンするとPMOSトランジスタM3もオンする。
PMOSトランジスタM3のソースはPMOSトランジスタM1のソースに、PMOSトランジスタM3のドレインはPMOSトランジスタM1のゲートにそれぞれ接続されているため、PMOSトランジスタM3がオンすると、PMOSトランジスタM1のゲート電圧が上昇し、PMOSトランジスタM1からの出力電流ioの増加を抑制し、出力電圧Voを低下させるようにする。
すなわち、出力電圧Voと出力電流ioとの関係を示した従来技術に関連して前述した図6における(a),(b)点の状態を示しており、出力電流ioが第1制限電流値iaになると、過電流保護回路2においては、PMOSトランジスタM2からの比例電流×R3の電圧に応じたPMOSトランジスタM3によるPMOSトランジスタM1の出力電流の制御が行われ、出力電流ioが第1制限電流値iaに制限された状態で、出力電圧Voのみが低下する。
ここまでの動作は、図5における従来の定電圧回路1bと同様であるが、以下、本例の定電圧回路1に特徴的な動作となる。
例えば、抵抗R4とR5の直列回路に並列にNMOSトランジスタM11が接続され、また、抵抗R5と並列にNMOSトランジスタM10が接続され、図5の定電圧回路1bでは、NMOSトランジスタM11のゲートには分圧電圧Vfbが入力され、NMOSトランジスタM10のゲートには出力電圧Voが入力されているが、本例の定電圧回路1では、NMOSトランジスタM10のゲートには、制限電圧設定回路5で設定される電圧が入力される。
この制限電圧設定回路5は、入力電圧Vddにソースが接続されゲートとドレインが接続された第1のPMOSトランジスタM22と、この第1のPMOSトランジスタM22のドレインにドレインが接続されゲートとソースが接地された第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24と、ソースが第1のPMOSトランジスタM22のソースに、ゲートが第1のPMOSトランジスタM22のゲートに接続されて第1のPMOSトランジスタM22とカレントミラー回路を構成する第2のPMOSトランジスタM23と、この第2のPMOSトランジスタM23のドレインにドレインが接続されてソースが接地されゲートが出力端子に接続された第2のディプレッション型NMOSトランジスタM25と、第2のディプレッション型NMOSトランジスタM25のドレインと第2のNMOSトランジスタM10のゲート間に接続されたインバータINV1とを備え、第1,第2の制限電圧の値を、制限電圧設定回路における、第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24に対する第2のディプレッション型NMOSトランジスタM25のトランジスタサイズによるオフセット、もしくは、第1のPMOSトランジスタM22に対する第2のPMOSトランジスタM23のトランジスタサイズによるオフセットで設定する。
例えば、制限電圧設定回路5における、第1のPMOSトランジスタM22と第2のPMOSトランジスタM23のトランジスタサイズが同じで、第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24のトランジスタサイズが第2のディプレッション型NMOSトランジスタM25のトランジスタサイズより大きくなるようにトランジスタサイズにオフセットをつけることで第2の制限電圧を調整する。
あるいは、制限電圧設定回路5における、第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24と第2のディプレッション型NMOSトランジスタM25のトランジスタサイズが同じで、第1のPMOSトランジスタM22のトランジスタサイズが第2のPMOSトランジスタM23のトランジスタサイズより小さくなるようにトランジスタサイズにオフセットをつけることで第2の制限電圧を調整する。
また、制限電圧設定回路5には、制限電圧設定回路5の起動を制御するためのスイッチ手段としてのPMOSトランジスタM21を、入力電圧Vddと第1のPMOSトランジスタM22のソース間に設けている。
PMOSトランジスタM21のゲートは、PMOSトランジスタM3のゲートに接続されており、このPMOSトランジスタM3がNMOSトランジスタM9のON動作に伴いONする際に、PMOSトランジスタM21もONとなり、第1のPMOSトランジスタM22と第2のPMOSトランジスタM23に入力電圧Vddが接続され、制限電圧設定回路5が起動する。
尚、PMOSトランジスタM21のゲートを、出力制御用トランジスタであるPMOSトランジスタM1のゲートに接続した構成とすることでも良い。この構成とした場合、予め定められた負荷の値に応じて、第1のPMOSトランジスタM22のソースを入力電圧Vddに接続することができ、例えば、制限電圧設定回路5を、軽負荷時にはOFFし、重負荷時のみにON(起動)することができる。
以下、このような構成からなる制限電圧設定回路5を用いた本例の定電圧回路1における過電流保護回路2の、前述した図6における(a)〜(e)点における動作を説明する。
定電圧回路1が正常に作動している間は、制限電圧設定回路5における第2のディプレッション型NMOSトランジスタM25のゲートには出力電圧Voが入力されてONとなり、インバータINV1の出力はハイレベルとなり、NMOSトランジスタM10はオンとなる。また、分圧電圧Vfbと基準電圧Vrは同電圧になるように制御されているため、この状態では、NMOSトランジスタM11もオンしている。
図6における(a)点において、出力電流ioが第1制限電流値iaになると、過電流保護回路2においては、PMOSトランジスタM2からの比例電流×R3の電圧に応じたPMOSトランジスタM3によるPMOSトランジスタM1の出力電流の制御が行われ、出力電流ioが第1制限電流値iaに制限された状態で、出力電圧Voのみが低下する。
このようにして図6の(a)点からの出力電圧Voの低下に伴って分圧電圧Vfbが低下し、出力電圧Voが図6の(b)点の電圧Vbまで低下すると、NMOSトランジスタM11がオフする。すなわち、NMOSトランジスタM11は、第1制限電圧Vbを検出するためのトランジスタをなす。
このようにNMOSトランジスタM11がオフすると、NMOSトランジスタM9のゲートと接地電圧との間に抵抗R3およびR4が直列に接続され、NMOSトランジスタM9のゲート電圧が上昇し、NMOSトランジスタM9のドレイン電流が増加してPMOSトランジスタM3のゲート電圧が低下し、PMOSトランジスタM1のゲート電圧が上昇し、PMOSトランジスタM1の出力電流ioが減少する。
これは、図6の(b)→(c)点の状態を示している。すなわち、出力電圧Voが図6の(b)点の電圧Vbまで低下すると、過電流保護回路2においては、それまでのPMOSトランジスタM2からの比例電流×R3の電圧に応じたPMOSトランジスタM3によるPMOSトランジスタM1の出力電流の制御が、PMOSトランジスタM2からの比例電流×(R3+R4)の電圧に応じて行われるようになり、第2制限電流値icでの出力電流に対する制限制御に移る(図6の(c)点)。
そして、図6の(c)点、すなわち、出力電ioの制限が電流値icの状態となると、過電流保護回路2においては、PMOSトランジスタM2からの比例電流×(R3+R4)の電圧に応じたPMOSトランジスタM9とPMOSトランジスタM3によるPMOSトランジスタM1の出力電流の制御が行われ、出力電流ioが第2制限電流値icに制限された状態で、出力電圧Voが低下する。これは、図6の(c)→(d)点までの状態を示している。
このようにして、出力電圧Voが、図6の(c)点の電圧Vbから図6の(d)点の電圧Vdまで低下すると、過電流保護回路2においては、本例の特徴である制限電圧設定回路5が起動して、NMOSトランジスタM10はオフする。
すなわち、出力電圧Voが電圧Vbから電圧Vdまで低下すると、第2のディプレッション型NMOSトランジスタM25がオフとなり、第1のインバータINV1の出力がロー(Low)となり、第1のNMOSトランジスタM10はオフする。このように、本例では、第2のディプレッション型NMOSトランジスタM25が、第2制限電圧Vdを検出するためのトランジスタとなる。
このようにして図6の(d)点においてNMOSトランジスタM10がオフすると、NMOSトランジスタM9のゲートと接地電圧との間に抵抗R3〜R5が直列に接続され、NMOSトランジスタM9のゲート電圧が上昇し、NMOSトランジスタM9のドレイン電流が増加してPMOSトランジスタM3のゲート電圧が低下し、PMOSトランジスタM1のゲート電圧が上昇し、PMOSトランジスタM1の出力電流ioが減少する。これは、図6の(d)→(e)点の状態を示している。
すなわち、出力電圧Voが図6の(d)点の電圧Vdまで低下すると、過電流保護回路2においては、それまでのPMOSトランジスタM2からの比例電流×(R3+R4)の電圧に応じたPMOSトランジスタM3によるPMOSトランジスタM1の出力電流の制御が、PMOSトランジスタM2からの比例電流×(R3+R4+R5)の電圧に応じて行われるようになり、第3制限電流値ieでの出力電流に対する制限制御に移る(図6の(e)点)。
そして、図6の(e)点における出力電ioの制限が電流値ieの状態となると、過電流保護回路2においては、PMOSトランジスタM2からの比例電流×(R3+R4+R5)の電圧に応じたPMOSトランジスタM9とPMOSトランジスタM3によるPMOSトランジスタM1の出力電流の制御が行われ、出力電流ioが第3制限電流値ieに制限された状態で、出力電圧Voが低下する。
このように、本例の定電圧回路1では、過電流保護回路2によって、出力電流ioが第1制限電流値iaに達すると、PMOSトランジスタM1から出力される電流の増加を抑制して出力電圧Voのみを低下させるようにPMOSトランジスタM1を制御し、出力電圧Voが所定の第1制限電圧値Vbまで低下すると、NMOSトランジスタM11がオフし、NMOSトランジスタM9のゲート電圧が上昇し、PMOSトランジスタM1のゲート電圧を上昇させて出力電流ioが第2制限電流値icで制限された状態で出力電圧Voが低下し、さらに、この出力電圧Voが所定の第2制限電圧値Vdまで低下すると、制限電圧設定回路5が起動して、NMOSトランジスタM10がオフとなり、NMOSトランジスタM9のゲート電圧がさらに上昇し、PMOSトランジスタM1のゲート電圧をさらに上昇させて出力電流ioが第3制限電流値ieで制限された状態で出力電圧Voが更に低下する。
この結果、図6に示すように、定電圧回路1の出力電流ioが第1制限電流iaまで大きくなると、出力電圧Voと出力電流ioが概略フの字になるように階段状に低下する。このように、出力電流ioに対する制限電流値をステップ状に変化させ、制限電流値と出力電圧Voの組み合わせを階段状に変化させることができ、発振等の発生を防止できると共に消費電流の低減を図ることができる。
尚、図2および従来技術に関連した前述の図7,図8に示すように、ステップ状のフの字特性において、通常時の出力電圧Voの所定の電圧値Vxと第1制限電圧値Vbとの電圧差は小さい方がよい。すなわち第1制限電圧値Vbは大きい方がよい。このようにする理由は、第1制限電流値iaのまま出力電圧Voが低下すると多大な熱が発生するため、第1制限電圧値Vbを大きく設定することで該発熱を小さくするという効果を得ることにある。
また、図2,図7,図8に示すように、発熱を小さくするために、第2制限電圧値Vdは、周囲温度およびプロセスのばらつきを含めた最小値が0Vにならない程度に小さくするのがよい。
ここで、図2,図7,図8において、負荷罫線(L1)は、定電圧回路1の仕様上の出力電流ioの最大値と出力電圧Voの設定値の交点と、出力電圧Voが0Vで出力電流ioが0Aである点とをつないだ線である。
第3制限電流値ieは、出力短絡時の発熱を低減させるために小さくする方がよいが、電源投入時の立ち上がり時間は、第3制限電流値ieを小さくすると遅くなる。このため、パッケージの許容損失を含めて第3制限電流値ieを最適値に設定するようにする。
図8において、第2制限電圧値Vdと第3制限電流値ieとの交点Pは、負荷罫線L1より左側に入らないようにしなくてはならない。これは、仕様の出力電流ioの最大値を抵抗負荷で使用すると、電源投入時の出力は負荷罫線L1上を立ち上がるため、交点Pが図8における斜線部分(図2における負荷罫線の左側)に入っていると、過電流保護回路2によって出力が立ち上がらなくなるためである。
従って、図8の破線で示すように、負荷罫線L1と第3制限電流値ieとの交点が、周囲温度およびプロセスのばらつきを含む第2制限電圧値Vdのばらつきを含めた最小値となるように、第2制限電圧値Vdを設定すれば発熱を最小限に抑えることができる。
このように第2制限電圧値Vdを設定することにより、出力電圧Voが0Vになる短絡時の発熱を低減するためには第3制限電流値ieが小さいことが望ましいが、第2制限電圧値Vdを小さく設定することで、図8で示した負荷罫線L1の斜線部分(図2における負荷罫線の左側)に交点Pが入らない範囲で第3制限電流値ieをより小さくすることができる。
また、出力電流ioに急峻な変動があった場合に、出力電圧Voが変動して一時的に第2制限電圧値Vd以下となり、かつ、その時の出力電流ioが第3制限電流値ieよりも大きければ、出力電圧Voは製品の設定出力電圧へ復帰しない。このため、第2制限電圧値Vdを小さく設定することができればこのような状態になりにくく、より急峻に出力電流ioが変動する場合でも使用することができると共に、出力電圧Voを安定させるための外付けのコンデンサの容量を小さくすることができ小型化および軽量化を図ることができる。
図5に示した構成の従来の、ステップ状のフの字特性を有する過電流保護回路2bを具備した定電圧回路1bでは、出力電圧VoをNMOSトランジスタM10のゲートに入力しているため、図6における(d)点から(e)点の状態に推移する際の出力電圧Vdの値は、NMOSトランジスタM10の閾値電圧によって決まっていた。
そのため、NMOSトランジスタM10の閾値電圧を下げなければ、負荷罫線とステップ状のフの字特性が交わることになってしまう。しかし、閾値電圧は、トランジスタ特性によって決まるので、回路設計による解決はできない。
すなわち、図5に示す構成(出力電圧の低下の検出をトランジスタの閾値電圧によって行う構成)で、出力電圧と出力電流を交互に段階的に減少させてフの字特性に近似した特性(ステップ状のフの字特性)の過電流保護回路2bを備えた、従来の定電圧回路1bでは、低出力電圧でフの字特性が負荷罫線と交わらないようにして、出力の立ち上がり時に、低抵抗負荷状態で立ち上がらないとの問題、および、過渡的に負荷が変化して出力電圧が立ち下がった場合に、復帰しないという問題を、回路設計により解決することができないとの問題点があった。
これに対して、本例の定電圧回路1では、過電流保護回路2に制限電圧設定回路5を設けることにより、負荷罫線に交わることがないステップ状のフの字特性の実現を簡素な回路の追加で可能とし、定電圧回路の性能の向上を効率的に図ることができる。
以下、図2に示す特性例における各動作領域での図1の定電圧回路1の動作について説明する。
図2における動作領域(1)(図中では「1」を丸で囲んでいる)においては、Vfbがゲートに与えられているNMOSトランジスタM11と、Voutが入力された制限電圧設定回路5における電流コンパレータの出力がゲートに与えられているNMOSトランジスタM10は、共にONしている。
ここで、電流コンパレータとは、定電流を発生させる第1のディプレッション型トランジスタM24の電流を、第1のPMOSトランジスタM22と第2のPMOSトランジスタM23でカレントミラーし、第2のPMOSトランジスタM23のドライブ能力と第2のディプレッション型トランジスタM25のドライブ能力とによって、電流コンパレータの出力である第2のディプレッション型トランジスタM25のドレイン電圧が決まるという回路である。この第2のディプレッション型トランジスタM25のドライブ能力は、ゲートに与えられるVoutの電圧値で決まる。
このようにNMOSトランジスタM11とNMOSトランジスタM10が共にONしている場合、出力制御用のMMOSトランジスタM1をPMOSトランジスタM2でカレントミラーした電流を抵抗R3によって電流電圧変換した電圧が、NMOSトランジスタM9のゲートに与えられる。
動作領域(1)でNMOSトランジスタM9のゲートに与えられる電圧は闘直電圧以下のため、NMOSトランジスタM9のトランジスタはOFFし、抵抗R6のみによって電圧降下した電圧がゲートに与えられるPMOSトランジスタM3はOFFしており、過電流保護は働かない。
図2における動作領域(2)(図中では「2」を丸で囲んでいる)においては、分圧電圧(帰還電圧)Vfbがゲートに与えられているNMOSトランジスタM11と、出力端子Voutの出力電圧Voが入力された電流コンパレータ(制限電圧設定回路5)の出力がゲートに与えているNMOSトランジスタM10は共にONしているので、出力制御用のPMOSトランジスタM1を、PMOSトランジスタM2でカレントミラーした電流を、抵抗R3によって電流電圧変換した電圧がNMOSトランジスタM9のゲートに与えられる。
このNMOSトランジスタM9のゲートに与えられる電圧は闘直電圧以上であるため、NMOSトランジスタM9はONし、抵抗R6によって電圧降下した電圧がゲートに与えられるNMOSトランジスタM3はONし、出力制御用のPMOSトランジスタM1のゲート電圧が高くなることで電流制限を行う。
図2における動作領域(3)(図中では「3」を丸で囲んでいる)においては、分圧電圧(帰還電圧)Vfbがゲートに与えられているNMOSトランジスタM11はOFF、出力端子Voutの出力電圧Voが入力された電流コンパレータ(制限電圧設定回路5)の出力がゲートに与えられているNMOSトランジスタM10はONしている。
そのため、出力制御用のPMOSトランジスタM1に流れる電流を、PMOSトランジスタM2でカレントミラーした電流が、抵抗R3+R4によって電流電圧変換され、その電圧がNMOSトランジスタM9のゲートに与えられる。
NMOSトランジスタM9のゲートに与えられる電圧は闘直電圧以上であるため、NMOSトランジスタM9はONし、抵抗R6によって電圧降下した電圧がゲートに与えられるPMOSトランジスタM3はONし、出力制御用のPMOSトランジスタM1のゲート電圧が高くなることで電流制限を行う。
図2における動作領域(4)(図中では「4」を丸で囲んでいる)においては、分圧電圧(帰還電圧)Vfbがゲートに与えられているNMOSトランジスタM11と、出力端子Voutの出力電圧が入力された電流コンパレータ(制限電圧設定回路5)の出力がゲートに与えているNMOSトランジスタM10は共にOFFしている。
そのため、出力制御用トランジスタM1に流れる電流を、PMOSトランジスタM2でカレントミラーした電流が、抵抗R3+R4+R5によって電流電圧変換され、その電圧がNMOSトランジスタM9のゲートに与えられる。
NMOSトランジスタM9のゲー卜に与えられる電圧は閾値電圧以上であるため、NMOSトランジスタM9はONし、抵抗R6によって電圧降下した電圧がゲートに与えられるPMOSトランジスタM3はONし、出力制御用のPMOSトランジスタM1のゲート電圧が高くなることで電流制限を行う。
動作領域(3)と動作領域(4)は出力電圧Voの値によって各領域に遷移する。従来回路の場合、各領域に遷移する出力電圧Vd1の値は、出力端子Voutの出力電圧VoをNMOSトランジスタM10のゲートに入力しているので、NMOSトランジスタM10の閾値電圧によって決まる。そのため、閔値電圧を下げなければ、負荷罫線とステップ状のフの字特性とが交わることになってしまう。しかし、閾値電圧はトランジスタ特性によって決まるもので、回路設計では解決できない。
本例の定電圧回路1においては、過電流保護回路2に制限電圧設定回路5を設けており、この制限電圧設定回路5において、トランジスタサイズを、PMOSトランジスタM22=PMOSトランジスタM23とした場合、NMOSトランジスタM24とNMOSトランジスタM25に、NMOSトランジスタM4>NMOSトランジスタM25となるようにサイズにオフセットを付けている。このオフセットによって、図2に示すVdの電圧を調整することが可能である。
他にも、トランジスタサイズを、NMOSトランジスタM24=NMOSトランジスタM25とした場合、PMOSトランジスタM22とPMOSトランジスタM23に、PMOSトランジスタM2<PMOSトランジスタM23となるようにサイズにオフセットを付けることで、Vdを調整することもできる。
尚、動作領域(1)の動作時における制限電圧設定回路5の消費電流を削減するために、電流制限が効いたときにのみ、制限電圧設定回路5の消費電流が流れるように、PMOSトランジスタM21によるスイッチを設けている。
また、次の図3に示す構成とすることにより、動作領域(2)と動作領域(3)の各領域に遷移する際のVfb電圧値も同様に調整することができる。
例えば、図3に示す定電圧回路1aにおいては、過電流保護回路2a内に設けた制限電圧設定回路5aとして、図1における制限電圧設定回路5にPMOSトランジスタ26とNMOSトランジスタM27およびインバータINV2を設けている。
すなわち、出力端子Voutからの出力電圧Voが第1の制限電圧になった際にも、対応する第1のNMOSトランジスタであるNMOSトランジスタM11をオフにする電圧を生成して対応する第1のNMOSトランジスタM11のゲートに入力する構成となっている。
具体的には、図3における制限電圧設定回路5aは、入力電圧にソースが接続されゲートとドレインが接続された第1のPMOSトランジスタM22と、この第1のPMOSトランジスタM22のドレインにドレインが接続されゲートとソースが接地された第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24と、それぞれ、ソースが第1のPMOSトランジスタM22のソースに、ゲートが第1のPMOSトランジスタM22のゲートに接続されて第1のPMOSトランジスタM22とカレントミラー回路を構成する第2,第3のPMOSトランジスタM23,M26と、それぞれ、第2,第3のPMOSトランジスタM23,M26のドレインにドレインが接続されてソースが接地され、ゲートが出力端子Voutに接続された第2のディプレッション型NMOSトランジスタM25およびゲートが分圧電圧(帰還電圧)Vfbに接続された第3のディプレッション型NMOSトランジスタM27と、それぞれ、第2,第3のディプレッション型NMOSトランジスタM25,M27のドレインと第1,第2のNMOSトランジスタM11,M10のゲート間に接続された第1,第2のインバータINV1,INV2とを備えている。
そして、第1,第2の制限電圧の値を、制限電圧設定回路5aにおける、第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24に対する第2,第3のディプレッション型NMOSトランジスタM25,M27のトランジスタサイズによるオフセット、もしくは、第1のPMOSトランジスタM22に対する第2,第3のPMOSトランジスタM23,M26のトランジスタサイズによるオフセットで設定する。
例えば、制限電圧設定回路5aにおける、第1のPMOSトランジスタM22と第2,第3のPMOSトランジスタM23,M26のトランジスタサイズが同じで、第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24のトランジスタサイズが第2,第3のディプレッション型NMOSトランジスタM25,M27のトランジスタサイズより大きくなるようにトランジスタサイズにオフセットをつけることで第1〜第2の制限電圧を調整する。
あるいは、制限電圧設定回路5aにおける、第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24と第2,第3のディプレッション型NMOSトランジスタM25,M27のトランジスタサイズが同じで、第1のPMOSトランジスタM22のトランジスタサイズが第2,第3のPMOSトランジスタM23,M26のトランジスタサイズより小さくなるようにトランジスタサイズにオフセットをつけることで第1,第2の制限電圧を調整する。
さらに、図3に示す制限電圧設定回路5aにおける、PMOSトランジスタ26とNMOSトランジスタM27およびインバータINV2からなる回路を複数(n個)設けることにより、多段にステップ状に変化するフの字特性を実現することができる。
すなわち、制限電圧設定回路として、出力端子Voutからの出力電圧Voが第1〜第nの制限電圧になった際に、対応する第1〜第nのNMOSトランジスタ(M11,10,・・・、n)をオフにする電圧を生成して対応する第1〜第nのNMOSトランジスタ(M11,10,・・・、n)のゲートに入力する構成とする。
具体的には、このような制限電圧設定回路では、入力電圧にソースが接続されゲートとドレインが接続された第1のPMOSトランジスタM22と、第1のPMOSトランジスタM22のドレインにドレインが接続されゲートとソースが接地された第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24と、それぞれ、ソースが第1のPMOSトランジスタM22のソースに、ゲートが第1のPMOSトランジスタM22のゲートに接続されて第1のPMOSトランジスタM22とカレントミラー回路を構成する第2〜第nのPMOSトランジスタM23,M26,・・・と、それぞれ、第2〜第nのPMOSトランジスタM23,M26,・・・のドレインにドレインが接続されてソースが接地されゲートが出力端子Voutに接続された第2〜第nのディプレッション型NMOSトランジスタM25,M27,・・・と、それぞれ、第2〜第nのディプレッション型NMOSトランジスタM25,M27,・・・のドレインと第1〜第nのNMOSトランジスタM1,M10,・・・のゲート間に接続された第1〜第nのインバータINV1,INV2,・・・とを備えている。
そして、第1〜第nの制限電圧の値を、制限電圧設定回路における、第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24に対する第2〜第nのディプレッション型NMOSトランジスタM25,M27,・・・のトランジスタサイズによるオフセット、もしくは、第1のPMOSトランジスタM22に対する第2〜第nのPMOSトランジスタM23,M26,・・・のトランジスタサイズによるオフセットで設定する。
例えば、制限電圧設定回路における、第1のPMOSトランジスタM22と第2〜第nのPMOSトランジスタM23,M26,・・・のトランジスタサイズが同じで第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24のトランジスタサイズが第2〜第nのディプレッション型NMOSトランジスタM25,M27,・・・のトランジスタサイズより大きくなるようにトランジスタサイズにオフセットをつけることで第1〜第2の制限電圧を調整する。
あるいは、制限電圧設定回路における、第1のディプレッション型NMOSトランジスタM24と第2〜第nのディプレッション型NMOSトランジスタM25,M27,・・・のトランジスタサイズが同じで、第1のPMOSトランジスタM22のトランジスタサイズが第2〜第nのPMOSトランジスタM23,M26,・・・のトランジスタサイズより小さくなるようにトランジスタサイズにオフセットをつけることで第1〜第nの制限電圧を調整する。
このように、第1〜第nの制限電圧の値をトランジスタサイズによるオフセットで設定することにより、図4に示す、従来の回路に対する本例の定電圧回路の優位性が得られる。
例えば、図5に示した従来の定電圧回路においては、VfbがNMOSトランジスタM10,M11の閾値電圧に比べて十分大きくなければ、トランジスタのON抵抗が影響する。
図4に示すリミット電流I1の場合、トランジスタのON抵抗が影響しなければ、出力制御用のPMOSトランジスタM1の電流をカレントミラーしているPMOSトランジスタM2の電流×抵抗R1の電圧がNMOSトランジスタM9のゲートに与えられるが、トランジスタのON抵抗が影響すると、PMOSトランジスタM2の電流×(抵抗R1+トランジスタのON抵抗)の電圧がNMOSトランジスタM9のゲートに与えられることとなり、トランジスタ特性のバラツキや温度によってステップ状のフの字特性のI1やI2といった電流値にも大きく影響する。
例えば、図4に示すように、ステップ状のフの字特性の変化点が鈍ってしまう。このようにステップ状のフの字特性の変化点が鈍ると、出力電圧Voが変化点に止まる可能性があり、変化点は過電流保護回路が不安定な状態であるため、発振してしまう懸念がある。
図1,図3に示す本例の定電圧回路1,1a等においては、このようなトランジスタのON抵抗の影響による変化点の鈍りの発生を防ぐことができ、安定した過電流保護動作を行うことができる。
このように、本例の定電圧回路1,1a等では、負荷罫線に交わることがないフの字特性を実現することで、出力の立ち上がり時に低抵抗負荷状態で立ち上がらない、過渡的に負荷が変化して出力電圧が立ち下がった場合に復帰しないといった問題を解決できる。すなわち、フの字特性が低抵抗時の負荷罫線と交わっていたのは、フの字特性が、トランジスタの閾値というデバイスの特性に依存していたためであり、本例では、このトランジスタの闘直というデバイスの特性に依存していた箇所をトランジスタサイズのオフセットといった回路定数によって変更ができるようにした。
尚、本発明は、図を用いて説明した例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
例えば、上述の図1,図3を用いた説明では、NMOSトランジスタM10のゲートが出力電圧Vo側に、NMOSトランジスタM11のゲートが分圧電圧(帰還電圧)Vfb側にそれぞれ接続される構成としているが、NMOSトランジスタM10,M11の各ゲートが共に出力電圧Vo側もしくは分圧電圧(帰還電圧)Vfb側に接続されるようにしても良いし、また、NMOSトランジスタM10のゲートには出力電圧Vo側が、NMOSトランジスタM11のゲートには分圧電圧Vfb側がそれぞれ接続されるようにしても良い。
また、図1,図3における抵抗R3〜R5に関しても、トランジスタの組み合わせ回路からなる抵抗手段を用いた構成とすることでも良い。
さらに、図1と図3で示した定電圧回路1,1aにおける過電流保護回路2,2aのそれぞれでは、制限電圧設定回路5,5aにより、変換比率偏向回路部を構成するNMOSトランジスタM10,M11のオン・オフを制御することで、ステップ状のフの字特性における出力電流の減少を開始する際の出力電圧値である第1(および第2)の制限電圧の値を設定しているが、本発明の制限電圧設定回路は、このような構成の定電圧回路1,1aにおける過電流保護回路2,2aの構成への適用に制限されるものではない。
すなわち、出力制御用トランジスタから出力端子に出力される出力電圧と出力電流をそれぞれ段階的に交互に減少させたステップ状のフの字特性で過電流の保護を行う過電流保護回路を有する定電圧回路に、ステップ状のフの字特性における出力電流の減少を開始する際の出力電圧値である第1〜第nの制限電圧の値を設定する制限電圧設定回路を設け、この制限電圧設定回路の構成として、入力電圧にソースが接続されゲートとドレインが接続された第1のPMOSトランジスタ(M22)と、この第1のPMOSトランジスタ(M22)のドレインにドレインが接続されゲートとソースが接地された第1のディプレッション型NMOSトランジスタ(M24)と、それぞれ、ソースが第1のPMOSトランジスタ(M22)のソースに、ゲートが第1のPMOSトランジスタ(M22)のゲートに接続されて、この第1のPMOSトランジスタ(M22)とカレントミラー回路を構成する第2〜第nのPMOSトランジスタ(M23,…)と、それぞれ、第2〜第nのPMOSトランジスタ(M23,…)のドレインにドレインが接続されてソースが接地されゲートが出力端子側(出力端子Vout、もしくは、出力電圧の分圧点である出力電圧検出回路3における抵抗R1とR2の接続点)に接続された第2〜第nのディプレッション型NMOSトランジスタ(M25,…)と、それぞれ、第2〜第nのディプレッション型NMOSトランジスタ(M25,…)のドレインに接続され、第1〜第nの制限電圧値を出力する第1〜第nのインバータ(INV1,…)とを備え、第1〜第nの制限電圧の値を、制限電圧設定回路における、第1のディプレッション型NMOSトランジスタ(M24)に対する第2〜第nのディプレッション型NMOSトランジスタ(M25,…)のトランジスタサイズによるオフセット、もしくは、第1のPMOSトランジスタ(M22)に対する第2〜第nのPMOSトランジスタ(M23,…)のトランジスタサイズによるオフセットで設定することでも良い。
1,1a、1b:定電圧回路、2,2a、2b:過電流保護回路、3,3a,3b:出力電圧検出回路、4,4a,4b:誤差増幅器、5,5a:制限電圧設定回路、Io:出力電流、M1:PMOSトランジスタ(出力制御用トランジスタ)、M2〜M6,M22,M23,M26:PMOSトランジスタ、M7〜M11:NMOSトランジスタ、M24,M25:ディプレッション型NMOSトランジスタ、R1〜R6:抵抗、Vdd:入力電圧、Vfb:分圧電圧(帰還電圧)、Vo:出力電圧、Vout:出力端子、Vr:基準電圧、Vs:基準電源、Vss:接地電圧。