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JP5067149B2 - 吸収型多層膜ndフィルター - Google Patents

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本発明は、基板と、この基板上に透過光量を減衰させる光学多層膜層と、その上に形成された保護膜層とを備える吸収型多層膜NDフィルター(Neutral Density Filter)に係り、特に、摺動摩擦によるキズがつきにくく、かつ平坦な透過率分光特性が再現性良く得られ、しかも量産性に優れた吸収型多層膜NDフィルターの改良に関するものである。
NDフィルターとは、光線の可視スペクトル域における各波長をほぼ均等に透過するような非選択性の透過率を有する光学フィルターで、透過光量を減衰させる目的でデジタルカメラ等のレンズに装着して用いられる。例えば、晴天下等の光量が多い条件下において、レンズを絞り込んでも露出過多になってしまうときに、光量を制限してより低速でシャッタを切れるようにする場合や、絞りを開放したいがシャッタ速度を最高にしても露出過多になってしまうときに、光量を制限して絞りを開けられるようにする場合に使用されるのが一般的である。
ところで、安価なNDフィルターには、ガラスに光吸収材料を添加したガラスフィルター等がある。しかし、これ等ガラスフィルターは可視全域にわたって分光特性が均一となっていない等の問題があった。
このような問題を解決するものとして吸収型多層膜のNDフィルターが知られている。例えば、誘電体膜と金属膜とからなる光学多層膜を用い、それぞれの材料の種類に言及した従来技術として、特許文献1には、Nbの金属膜とSiO2の誘電体膜とを交互に積層してなる薄膜型NDフィルターが開示されている。
また、金属膜を用いずに、光吸収性のある誘電体膜のみを用いた従来技術として、特許文献2には、層数を7層程度とし、TiO、Ti23等のチタン酸化物を始めとする光吸収性のある金属酸化物層を用いた多層膜構造の薄膜型NDフィルターが開示されている。
また、本発明者は、特許文献3において、多くの吸収型多層膜NDフィルターの構成材料を検討した結果、基板と、金属膜と誘電体膜が交互に積層された光学多層膜層であり、該金属膜が、ニッケル(Ni)を主成分とした金属膜であり、該誘電体膜が酸化シリコン若しくは酸化アルミニウムからなる誘電体膜であり、透過光量を減衰させる光学多層膜層を用いた吸収型多層膜NDフィルターを提案している。
特開2002−350610号公報 特開平7−63915号公報 特開2006−58854号公報
前記の薄膜型NDフィルターの最外層には、無機硬質膜として知られるSiO2膜やAl23膜が設けられているが、キズや摩耗に対する耐性の点で必ずしも十分ではなかった。すなわち、前記の無機硬質膜を用いても、光量絞り装置において、光量を絞るたびに、NDフィルターと絞り装置の羽根部分および羽根支持板とに繰り返し生じる摺動摩擦によって、表面にキズが発生するという問題が存在した。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、特に、摺動摩擦によるキズがつきにくく、かつ平坦な透過率分光特性が再現性良く得られ、しかも量産性に優れた吸収型多層膜NDフィルターを提供することにある。
このような課題を解決するため、本発明者等が多くの吸収型多層膜NDフィルターの構成材料を検討した結果、基板と、金属膜と誘電体膜が交互に積層された、透過光量を減衰させる光学多層膜層と、該光学多層膜層の上に形成された保護膜層とからなる吸収型多層膜NDフィルターにおいて、光学多層膜層の金属膜が、ニッケル(Ni)を主成分とし、好ましくは、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、シリコン(Si)から選択された1種類以上の元素を添加したニッケル系合金材料からなる金属膜であり、光学多層膜層の誘電体膜が酸化シリコン若しくは酸化アルミニウムからなる誘電体膜であるとともに、ダイヤモンドライクカーボン膜からなる保護膜層を形成することで、前記の摺動摩擦によるキズがつきにくく、かつ平坦な透過率分光特性が再現性良く得られ、しかも量産性に優れた吸収型多層膜NDフィルターが得られることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見に基づき完成されている。
すなわち、本発明の第1の発明は、基板と、金属膜と誘電体膜が交互に積層された、透過光量を減衰させる光学多層膜層と、該光学多層膜層の上に形成された保護膜層とからなる吸収型多層膜NDフィルターにおいて、光学多層膜層の金属膜がニッケル(Ni)を主成分とした金属膜であり、光学多層膜層の誘電体膜が酸化シリコン若しくは酸化アルミニウムからなる誘電体膜であり、前記保護膜層がスパッタリング法により形成された膜厚が1nm以上10nm以下のダイヤモンドライクカーボン膜からなることを特徴とする吸収型多層膜NDフィルターを提供する。
本発明の第2の発明は、ダイヤモンドライクカーボン膜は硬度がHv=2500以上であって、sp 混成軌道とsp 混成軌道の比率sp /sp が0.1以上であることを特徴とする第1の発明に記載の吸収型多層膜NDフィルターを提供する。
本発明の第3の発明は、摩擦係数が0.2以下であることを特徴とする第1または2の発明に記載の吸収型多層膜NDフィルターを提供する。
本発明の第4の発明は、ニッケル(Ni)を主成分とした金属膜が、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、シリコン(Si)から選択された1種類以上の元素を添加したニッケル(Ni)系合金材料からなる金属膜であることを特徴とする第1〜3の発明いずれかに記載の吸収型多層膜NDフィルターを提供する。
本発明の第5の発明は、ニッケル(Ni)を主成分とした金属膜が前記元素のうち1種類を添加する場合、チタン(Ti)元素の添加割合が5〜15重量%、アルミニウム(Al)元素の添加割合が3〜8重量%、バナジウム(V)元素の添加割合が3〜9重量%、タングステン(W)元素の添加割合が18〜32重量%、タンタル(Ta)元素の添加割合が22〜48重量%、シリコン(Si)元素の添加割合が2〜6重量%の範囲にそれぞれ設定されていることを特徴とする第4の発明に記載の吸収型多層膜NDフィルターを提供する。
本発明の第6の発明は、上記基板が樹脂板若しくは樹脂フィルムにより構成されていることを特徴とする第1〜5の発明いずれかに記載の吸収型多層膜NDフィルターを提供する。
本発明の第7の発明は、上記樹脂板若しくは樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)およびノルボルネンの樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルムの単体で構成されるか、あるいは、上記樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルム単体とこの単体の少なくとも片面を覆うアクリル系有機膜との複合体で構成されていることを特徴とする第6の発明に記載の吸収型多層膜NDフィルターを提供する。
本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターは、基板と、金属膜と誘電体膜が交互に積層された、透過光量を減衰させる光学多層膜層と、該光学多層膜層の上に形成された保護膜層とからなる吸収型多層膜NDフィルターにおいて、光学多層膜層の金属膜が、ニッケル(Ni)を主成分とし、好ましくは、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、シリコン(Si)から選択された1種類以上の元素を添加したニッケル系合金材料からなる金属膜であり、光学多層膜層の誘電体膜が酸化シリコン若しくは酸化アルミニウムからなる誘電体膜であるとともに、保護膜層としてダイヤモンドライクカーボン膜からなっており、摺動摩擦によるキズが付きにくくすることが可能である。ダイヤモンドライクカーボン膜は、無機硬質膜として知られるSiO2やAl23膜がHv=1000〜2000程度の硬度であるのに対し、Hv=2500以上もの極めて高い硬度を有し、摺動摩擦に対して優れた耐性を示す。したがって、吸収型多層膜NDフィルターの最外層に用いることで、キズや磨耗に対する耐性を顕著に向上させることができる。
以下、本発明の吸収型多層膜NDフィルターについて図面を用いて詳細に説明する。
まず、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターは、基板上に、金属膜と誘電体膜が交互に積層された、透過光量を減衰させる光学多層膜層と、該光学多層膜層の上に形成された保護膜層とからなる吸収型多層膜NDフィルターにおいて、光学多層膜層の金属膜が、ニッケル(Ni)を主成分とした金属膜であり、光学多層膜層の誘電体膜が酸化シリコン若しくは酸化アルミニウムからなる誘電体膜であり、前記保護膜層がダイヤモンドライクカーボン膜からなることを特徴としている。
ニッケル(Ni)を主成分とした金属膜は、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、シリコン(Si)から選択された1種類以上の元素を添加したニッケル(Ni)系合金材料からなる金属膜であることが好ましい。前記元素のうち1種類の元素を添加する場合、チタン(Ti)元素の添加割合であれば5〜15重量%、アルミニウム(Al)元素の添加割合であれば3〜8重量%、バナジウム(V)元素の添加割合であれば3〜9重量%、タングステン(W)元素の添加割合であれば18〜32重量%、タンタル(Ta)元素の添加割合であれば22〜48重量%、シリコン(Si)元素の添加割合であれば2〜6重量%の範囲にそれぞれ設定されていることが好ましい。
図1に本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの具体例を示す。図1に示す吸収型多層膜NDフィルターは、基板1の上に光学多層膜層10と保護膜層20を設けたものである。
また、図2に、光学多層膜層10の具体例を示す。光学多層膜層10は、基板1の上に透過光量を減衰させるために設けられるもので、例えば、任意の層数の金属膜層11と誘電体膜層12が交互に積層される。この場合、金属膜11としては、前記のニッケル(Ni)を主成分とした金属膜である。金属膜11は、例えばDCマグネトロンスパッタリング法によって形成される。
また、前記誘電体膜12としては、低い屈折率の酸化シリコン若しくは酸化アルミニウム膜が好ましい。上記誘電体膜は、例えばRFマグネトロンスパッタリング法によって形成される。
保護膜層20は、ダイヤモンドライクカーボン膜であることが必要である。該ダイヤモンドライクカーボン膜は、黒鉛からなるターゲットを用いてスパッタリング法により成膜されることが好ましい。
スパッタリング法は、蒸着法など、他の成膜プロセスと比較して、膜と基板または異種膜間の密着性、膜表面の平滑性、膜の緻密性などの面に優れ、保護膜層の形成のみならずNDフィルターの作製全般において非常に有利である。特に、蒸気圧の低い材料を用いて基板上に膜を形成する場合や、精密な膜厚制御が必要とされる際に有効な薄膜形成手法であり、操作が非常に簡便であることから広範に利用されている。
一般には、約10Pa以下のアルゴンガス圧のもとで、基板を陽極とし、膜原料となるターゲットを陰極とし、これらの間にグロー放電を起こさせてアルゴンプラズマを発生させ、かつ、プラズマ中のアルゴン陽イオンを陰極のターゲットに衝突させてターゲット成分の粒子をはじき飛ばし、この粒子を基板上に堆積させて成膜する手法である。
上記スパッタリング法はアルゴンプラズマの発生方法で分類され、高周波プラズマを用いるものは高周波(RF)スパッタリング法、直流プラズマを用いるものは直流(DC)スパッタリング法という。また、ターゲットの裏側にマグネットを配置して、アルゴンプラズマをターゲット直上に集中させ、低ガス圧でもアルゴンイオンの衝突効率を上げて成膜する方法をマグネトロンスパッタリング法という。
そして、本発明に係る保護膜層となるダイヤモンドライクカーボン膜は、例えばAr雰囲気中において黒鉛ターゲットを用いたDCマグネトロンスパッタリング法により形成される。
ダイヤモンドライクカーボン膜の厚みは、1nm以上10nm以下の範囲内とすることが好ましい。1nm未満では、キズや磨耗に対する十分な耐性を得ることができない恐れがあるからである。他方、厚みが10nmを越えると透過率が減少し、可視光領域で平坦な光学的特性が得られなくなる恐れがあるためである。そして、上記のキズや磨耗に対する耐性や光学的特性等を考慮した場合、保護膜層20の厚みは2nm程度であることがより好ましい。
また、ダイヤモンドライクカーボン膜は、摩擦係数が0.2以下であることが好ましい。0.2以下であれば、十分な摺動性を得ることができる。また、膜の硬度は、摺動摩擦によって生じるキズや磨耗に対する十分な耐性を得るために、Hv=2500以上であることが好ましい。ダイヤモンドライクカーボン膜はsp3混成軌道で表されるσ結合成分とsp2混成軌道で表されるπ結合成分によって構成され、膜の硬さは、両者の成分比率sp3/sp2比に依存する。高硬度のダイヤモンドライクカーボン膜を得るためには、sp3/sp2比が0.1以上であることが好ましい。
上記基板1としてその材質は特に限定されないが、透明であるものが好ましく、量産性を考慮する場合、ロールコーティング法による成膜が可能な可撓性を有する基板であることが好ましい。可撓性のある基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価・軽量・変形性に富むといった点においても優れている。特に、このような基板として、樹脂板若しくは樹脂フィルムが好ましい。
上記基板を構成する具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)およびノルボルネンの樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルムの単体が挙げられ、あるいは、上記樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルム単体とこの単体の片面または両面を覆うアクリル系有機膜との複合体が挙げられる。特に、ノルボルネン樹脂材料については、代表的なものとして、日本ゼオン社のゼオノア(登録商標)やJSR社のアートン(登録商標)などが挙げられる。
また、上記基板1は、必要に応じて、ハードコート層がコーティングされて基板強度を向上させたものでもよい。ハードコート層には、例えばアクリル樹脂を用い、基板上に例えば5μmの厚さでコーティングして形成される。
上述したような吸収型多層膜NDフィルターは、フィルム状の基板に巻取り式ロールコータを用いたロールコーティング法によって形成することも可能である。この方法によって、効率的な量産が可能となる。
そして、光学多層膜層に上述したような構成を採用することにより、400〜800nmの可視域全域において反射率が5%以下、かつ、透過率の変動幅が10%以内である吸収型多層膜NDフィルターを提供することが可能となる。
次に、本発明の実施例について具体的に説明する。
(実施例1)
7.5重量%のチタン(Ti)を含むニッケル(Ni)系材料からなる金属層と酸化シリコン層が交互に積層された合計4層からなる光学多層膜層と、ダイヤモンドライクカーボン膜からなる保護膜層が、基板上に形成された表1に示す構造の吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
尚、ニッケル系材料ターゲットには、7.5重量%のチタンを含むニッケル合金ターゲット[住友金属鉱山(株)社製]を用いた。7.5重量%のTiを含むこのニッケルターゲットは、非磁性用カソード上に設置しても安定して放電することが可能であった。ダイヤモンドライクカーボン膜の成膜には、黒鉛ターゲット[高純度化学研究所(株)社製]を用いた。
Figure 0005067149
具体的には、厚さ100μmのPETフィルム[東洋紡社製]上に、スパッタリング装置(ULVAC社製)を用いて表1の膜(2)〜(6)を順に成膜を行い、図1に示す吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
得られた吸収型多層膜NDフィルターの透過率と反射率を自記分光光度計装置[日立製作所製、U−4000]を用いて測定した。測定結果を図3に示す。
そして、図3に示されたデータから、可視域(波長400〜800nm)での透過率は18〜22%であり、波長に対して平坦性に優れた透過率特性を有していることが確認された。また、可視域における反射率は3%以下であり反射防止効果も良好であった。
次に、このNDフィルター表面の強度を確認するため、実際に光量絞り装置に取り付け、絞りの開閉を25万回行い摺動させた。その結果、NDフィルターのダイヤモンドライクカーボン膜からなる保護膜表面にはキズが発生していないことを確認した。
摩擦試験は、マイクロスクラッチテスターMST(CSM Instruments製)を用いて行った。荷重値と摩擦力から摩擦係数を求めた。その結果、得られた摩擦係数は0.15であり、十分に低い摩擦係数を有することが確認された。
なお、ダイヤモンドライクカーボン膜をラマン分光光度計(島津製作所製HoloLab−5000)で測定し、sp3/sp2比を面積比から求めたところ、0.1以上であることを確認した。
(実施例2)
上記の表の(6)ダイヤモンドライクカーボン膜からなる保護膜層の膜厚を5nmに変更した以外は実施例1と同一の条件で表1の膜(2)〜(6)を順に成膜し、図1に示す吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
実施例2に係る吸収型多層膜NDフィルターの透過率と反射率の測定結果を図3に示す。図3に示されたデータから、可視域での透過率は17〜21%であり、波長に対して平坦性に優れた透過率特性を示していることが確認され、また、可視域における反射率が3%以下であり反射防止効果も良好であった。
実施例1と同様に、NDフィルターを光量絞り装置に取り付け、表面の強度を確認した。その結果、NDフィルターの保護膜表面には、摺動によるキズが発生していないことを確認した。
摩擦係数について、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、摩擦係数は0.20であり、十分に低い摩擦係数を有することが確認された。
実施例1同様、ラマン分光光度計による測定によって、ダイヤモンドライクカーボン膜のsp3/sp2比を面積比から求めたところ、0.1以上であることを確認した。
(比較例1)
上記の表1の(6)ダイヤモンドライクカーボン膜からなる保護膜層を形成しない以外は実施例1と同一の条件で表1の膜(2)〜(5)を順に成膜し、図1で保護膜層20を有さない吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
比較例1に係る吸収型多層膜NDフィルターの透過率と反射率の測定結果を図4に示す。図4に示されたデータから、可視域での透過率は18〜22%であり、波長に対して平坦性に優れた透過率特性を示していることが確認され、また、可視域における反射率が3%以下であり反射防止効果も良好であった。
しかしながら、NDフィルターを光量絞り装置に取り付け、実施例1と同様の方法で、表面の強度を確認したところ、絞り羽根とNDフィルターとの接触軌道上に、摺動による大きなキズが発生していることを確認した。
摩擦係数について、実施例1と同様の方法で表1の膜(5)酸化シリコン膜の表面から測定した。その結果、摩擦係数は0.50であった。実施例に比較して大きな摩擦係数を有していることが確認された。
(比較例2)
上記の表の(6)ダイヤモンドライクカーボン膜からなる保護膜層の膜厚を15nmに変更した以外は実施例1と同一の条件で表1の膜(2)〜(6)を順に成膜し、図1に示す吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
比較例2に係る吸収型多層膜NDフィルターの透過率と反射率の測定結果を図4に示す。図4に示されたデータから、可視域での透過率が11〜19%となり、NDフィルターとして必要な透過率特性である波長に対する平坦性が損なわれていることが確認された。また、可視域における反射率も5%以上であり反射防止効果も劣っていた。
摩擦係数について、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、摩擦係数に関しては0.12と十分低い値を示した。
実施例1同様、ラマン分光光度計による測定によって、ダイヤモンドライクカーボン膜のsp3/sp2比を面積比から求めたところ、0.1以上であることを確認した。高硬度の膜と評価できることが確認された。







本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの積層構造を示す概略断面図である。 本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの光学多層膜層10の積層構造を示す概略断面図である。 本発明の実施例1、実施例2の吸収型多層膜NDフィルターの透過率と反射率を、自記分光光度計装置を用いて測定した結果を示す図である。 比較例1の吸収型多層膜NDフィルターの透過率と反射率を、自記分光光度計装置を用いて測定した結果を示す図である。
符号の説明
1 基板
10 光学多層膜層
11 金属層
12 誘電体膜層
20 保護膜層

Claims (7)

  1. 基板と、金属膜と誘電体膜が交互に積層された、透過光量を減衰させる光学多層膜層と、該光学多層膜層の上に形成された保護膜層とからなる吸収型多層膜NDフィルターにおいて、光学多層膜層の金属膜がニッケル(Ni)を主成分とした金属膜であり、光学多層膜層の誘電体膜が酸化シリコン若しくは酸化アルミニウムからなる誘電体膜であり、前記保護膜層がスパッタリング法により形成された膜厚が1nm以上10nm以下のダイヤモンドライクカーボン膜からなることを特徴とする吸収型多層膜NDフィルター。
  2. ダイヤモンドライクカーボン膜は硬度がHv=2500以上であって、sp 混成軌道とsp 混成軌道の比率sp /sp が0.1以上であることを特徴とする請求項1に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  3. 摩擦係数が0.2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  4. ニッケル(Ni)を主成分とした金属膜が、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、シリコン(Si)から選択された1種類以上の元素を添加したニッケル(Ni)系合金材料からなる金属膜であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  5. ニッケル(Ni)を主成分とした金属膜が前記元素のうち1種類を添加する場合、チタン(Ti)元素の添加割合が5〜15重量%、アルミニウム(Al)元素の添加割合が3〜8重量%、バナジウム(V)元素の添加割合が3〜9重量%、タングステン(W)元素の添加割合が18〜32重量%、タンタル(Ta)元素の添加割合が22〜48重量%、シリコン(Si)元素の添加割合が2〜6重量%の範囲にそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項4に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  6. 上記基板が樹脂板若しくは樹脂フィルムにより構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  7. 上記樹脂板若しくは樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)およびノルボルネンの樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルムの単体で構成されるか、あるいは、上記樹脂材料から選択された樹脂板若しくは樹脂フィルム単体とこの単体の少なくとも片面を覆うアクリル系有機膜との複合体で構成されていることを特徴とする請求項6に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
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