JP2014016565A - 吸収型多層膜ndフィルター - Google Patents
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Abstract
【課題】 プラズマを利用した成膜法で効率よく作製することができ、MgF2を用いたNDフィルターと同程度の低反射特性を有する吸収型多層膜NDフィルターを提供する。
【解決手段】 3層の酸化物誘電体膜層D1、D2、D3と2層の吸収膜層A1、A2とが1層ずつ交互に積層され、更に最表面層Eにナノポーラスを含んだSiOx膜層が成膜されてなる6層構造の吸収型多層膜が、樹脂基板Sの両面に各々設けられた吸収型多層膜NDフィルターであって、樹脂基板Sから数えて第5層目の酸化物誘電体膜層D3の屈折率の0.95〜0.98倍の屈折率を最表面層Eが有している。
【選択図】 図1
【解決手段】 3層の酸化物誘電体膜層D1、D2、D3と2層の吸収膜層A1、A2とが1層ずつ交互に積層され、更に最表面層Eにナノポーラスを含んだSiOx膜層が成膜されてなる6層構造の吸収型多層膜が、樹脂基板Sの両面に各々設けられた吸収型多層膜NDフィルターであって、樹脂基板Sから数えて第5層目の酸化物誘電体膜層D3の屈折率の0.95〜0.98倍の屈折率を最表面層Eが有している。
【選択図】 図1
Description
本発明は、可視光領域の透過光を減衰させる吸収型多層膜NDフィルターに関し、特に樹脂フィルム基板の両面に酸化物誘電体膜層と金属層とが交互に積層された、低反射性に優れた吸収型多層膜NDフィルターに関する。
デジタルスチルカメラやビデオカメラ等のカメラシステムにおいては、過大な光の入射によって撮像素子であるCCDやCMOS素子が飽和することを防ぐため、光を減衰させるND(Neutral Density)フィルターが使用されている。特に、カメラシステムにおいてはカメラ内部の反射光が問題視されるため、レンズ光学系に組み込むNDフィルターとして、吸収型NDフィルターが一般的に用いられている。
この吸収型NDフィルターには、基板自体に吸収物質を混ぜたタイプ(色ガラスNDフィルター)や基板に吸収物質を塗布するタイプの他、基板自体に吸収する機能はないが表面に形成された薄膜で吸収するタイプが存在する。後者の薄膜で吸収するタイプの場合、当該薄膜表面での反射を防ぐため、薄膜を多層膜(吸収型多層膜)で構成し、透過光を減衰させる機能と共に反射防止の機能を持たせるものがある。
このような多層膜(吸収型多層膜)で構成した吸収型多層膜NDフィルターとして、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPC(ポリカーボネート)等の透明樹脂フィルム基板上に、真空蒸着法、スパッタリング法等の物理的気相成長法により成膜を行って、吸収膜層とSiO2のような酸化物誘電体膜層とを交互に積層させたNDフィルターが知られている。
上記吸収膜層には、酸素欠損による吸収を有するTiOxやTa2Ox等の金属酸化物で構成される吸収膜層が知られている。この金属酸化物は、意図的に酸素を導入することで成膜できるが、意図的な酸素導入を行わずに成膜した金属で構成される吸収膜層に比べて消衰係数が低いため、後述する基板の反り等の品質上の問題が生ずることがあった。
そこで、特許文献1には、上記金属酸化物に代えてTiやCr等の金属を吸収膜層の材料として使用し、かかる金属膜からなる吸収膜層と酸化物誘電体膜層とを交互に積層させたNDフィルターが提案されている。また、特許文献2や特許文献3には、金属膜としてNiにTiやWを添加した成膜材料を用いた吸収型多層膜NDフィルターが記載されている。これら特許文献1〜3に示すNDフィルターは、前述した金属酸化物からなる吸収膜層に比べて同じ消衰係数を得るための膜厚を薄くすることが可能となる。よって、所望の透過特性と反射特性を有する吸収型多層膜NDフィルターを効率よく作製することが可能となる。
すなわち、吸収型多層膜NDフィルターは、所定の形状やサイズに裁断してNDフィルターチップとした後、上述したデジタルカメラ等に組み込まれるが、当該デジタルカメラ等は小型で薄型であって組込みスペースが狭いため、NDフィルターの基板にはそれ自体薄くてフレキシブル性を有する樹脂フィルムが最適な基板とされている。かかる樹脂フィルム基板に吸収型多層膜を成膜する場合、金属膜は金属酸化物膜に比べて吸収膜層の膜厚を薄くできるので、成膜時間を短くすることができ、よって成膜時間を長くすることにより生じうる樹脂フィルム基板の反りや膜の割れ等の問題を抑えることが可能となる。
ところで、NDフィルターのような平坦面を有する光学素子をカメラ等に組み込む際は、より低い反射特性が要求される。これは、平板状のNDフィルターはカメラ内部で多重反射をおこし、これが映像情報にゴーストを発生させてしまうからである。低反射化するためには、一般に空気との境にある最表面層の屈折率を低くするのが効果的であるため、通常はこの最表面層に屈折率の低い材料であるMgF2が使用されることが多い。
上記MgF2などのフッ素化合物は、蒸着法では成膜が可能であるものの、スパッタ法などのプラズマを用いた成膜法ではフッ素が消失し、良好に膜形成を行うことができなかった。そこで、スパッタ法とロールツゥロール法とを組み合わせた生産性の高い成膜装置で吸収型多層膜を積層させる場合は、従来、最表面層の材料にSiO2を利用している。しかしながら、屈折率に関して、MgF2が1.38なのに対してSiO2は1.45と高く、十分な低反射特性を得ることができなかった。
従って、スパッタ法などのプラズマを利用した成膜法で効率よく作製することができ、MgF2を用いたNDフィルターと同程度の低反射特性を有する吸収型多層膜NDフィルターが強く望まれていた。
本発明者は上記課題を解決すべく、誘電体の材料にMgF2に比べて屈折率の高いSiO2を使用しながら低反射特性を示すNDフィルターを簡便な方法で得るべく鋭意研究を行った。その結果、3層の酸化物誘電体膜層と2層の吸収膜層とが1層ずつ交互に積層された吸収型多層膜が樹脂基板の両面に設けられたNDフィルターにおいて、当該樹脂基板から数えて第5層目のSiOx層の屈折率よりも低い屈折率を有し且つナノポーラスを含んだSiOx層を最表面層としての第6層目に設けることにより、最表面層をMgF2層とする場合と同等の反射特性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターは、3層の酸化物誘電体膜層と2層の吸収膜層とが1層ずつ交互に積層され、更に最表面層にナノポーラスを含んだSiOx膜層が成膜されてなる6層構造の吸収型多層膜が、樹脂基板の両面に各々設けられた吸収型多層膜NDフィルターであって、前記樹脂基板から数えて第5層目の酸化物誘電体膜層の屈折率の0.95〜0.98倍の屈折率を前記最表面層が有していることを特徴としている。
本発明よれば、屈折率を1.38〜1.42の範囲の低屈折率とすることが可能となり、低反射特性を有するNDフィルターを簡便なプロセスで安価に提供することができる。
以下、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの一具体例について、図1を参照しながら説明する。この吸収型多層膜NDフィルターは、3層の酸化物誘電体膜層D1、D2、D3と金属からなる2層の吸収層膜A1、A2とが1層ずつ交互に積層され、更にその外側に最表面層として第6層目のナノポーラスを含んだSiOx層Eが成膜されてなる6層構造の吸収型多層膜が、樹脂基板Sの両面に各々設けられている。
そして、この樹脂基板S側から数えて第5層目の酸化物誘電体膜層D3の屈折率の0.95〜0.98倍の屈折率を該第6層目のSiOx層Eが有している。3層の酸化物誘電体膜層D1、D2、D3はSiOxからなる誘電体膜で構成されており、よって空気側から3層目までが、ナノポーラスを含むSiOx層、SiOx層、金属吸収膜層の順番に構成されている。
このような構成を有する吸収型多層膜NDフィルターは、最表面層の屈折率は1.38〜1.42の範囲の低屈折率を有し、可視光波長領域(400nm〜700nm)における最大反射率が3%以下という優れた特性を有している。以下、かかる本発明の吸収型多層膜NDフィルターを構成する各構成要素についてより詳細に説明する。
(1)最表面層
吸収型多層膜NDフィルターの表面反射を低減させるためには、前述したように最表面側に位置する酸化物誘電体膜層の屈折率は低ければ低いほど好ましい。そして、一般的に誘電体膜材料の中で最も屈折率が低いのはMgF2の1.38であり、次に屈折率が低いのはSiO2の1.45である。そこで、本発明では最表面層としての第6層目にナノポーラスを含むSiOx層が形成されている。
吸収型多層膜NDフィルターの表面反射を低減させるためには、前述したように最表面側に位置する酸化物誘電体膜層の屈折率は低ければ低いほど好ましい。そして、一般的に誘電体膜材料の中で最も屈折率が低いのはMgF2の1.38であり、次に屈折率が低いのはSiO2の1.45である。そこで、本発明では最表面層としての第6層目にナノポーラスを含むSiOx層が形成されている。
なお、SiOx層とは、SiOやSiO2などの種々の酸化ケイ素がアモルファス状に混在してなる層であり、屈折率としては、SiO2から酸素が欠損するにしたがってSiO2より高い値を示すという特徴を有している。このSiOx層は酸素量の少ない雰囲気化でスパッタリングを行うことによって作成される。また、ナノポーラスを含む層とは、ナノメートルオーダーの微細孔を無数に含んだ多孔質体の層のことを意味している。
このナノポーラスを含むSiOx層の最表面層は、SiC及びSiを主成分とするターゲットを原料として、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、又はイオンプレーティング法から選択される物理気相成長法により成膜することができる。
とくにマグネトロンスパッタ法で成膜する場合は、後述するように他の3層の酸化物誘電体膜層D1、D2、D3の成膜時のアルゴンガスのガス圧力の1.5〜5倍程度にアルゴンガスのガス圧力を上げて成膜することにより低い屈折率を有する緻密な膜が得られる。アルゴンガスのガス圧力が1.5倍より少ないと、ナノポーラスの発生が困難となるため本発明の効果が得られず、5倍を越えるとスパッタプラズマの発生が不安定となり成膜が出来なくなるため、成膜時のアルゴンガスのガス圧力条件は重要である。
このように、成膜時のアルゴンガスの圧力を3層の酸化物誘電体膜層D1、D2、D3の成膜時よりも高くすることにより、SiOx膜中にArや酸素ガスがより多く取り込まれる。その結果、屈折率が1の細かい泡が多数形成されて、他の3層の3つの酸化物誘電体膜層D1、D2、D3より低屈折率となり、特に第5層目のSiOx膜層の屈折率の0.95〜0.98倍の屈折率となる。この最表面層としての第6層目のSiOx層は、好適には波長550nmにおける消衰係数が0〜0.01である。
つまり、誘電体層内に空隙部分あると、空隙部分の屈折率は1であるため、層全体としての屈折率は、そのバルクの値より小さくなる。更に、この空隙のサイズを可視光の散乱を生じない数nmサイズのナノポーラスにすることにより、可視光の散乱によるヘイズ低下を防止しつつ、所望の低反射率を実現することができる。
最表面層であるSiOx層の膜厚は、3〜150nmとする。膜厚が3nmより薄いと、光学薄膜としての寄与が少なくばかりか、膜厚制御が困難となるため好ましくない。一方、酸化物誘電体膜層の各膜厚が150nmより厚い膜は400nm〜700nmの波長領域の可視光を対象とした光学薄膜として所望の性能が効果的に発揮されなくなるおそれがある。
なお、第6層のナノポーラスを含むSiOx膜層のさらに上面に、膜厚2〜10nmのフッ素樹脂層を積層してもよい。このフッ素樹脂層は、スプレーコート、ディップコート、スピンコートなどの塗布方法で成膜できるが、10nm以下の膜厚とすることからディップコートが好適に使用できる。具体的には、フッ素樹脂溶液として市販品のフッ素樹脂溶液(株式会社ハーベス製DS−5110Z130)を10秒間ディップし、その後24時間大気乾燥することによりフッ素樹脂層を形成することができる。このフッ素樹脂コートにより、ナノポーラスを含むSiOx膜層の屈折率の経時劣化を防止する効果も期待できる。
(2)酸化物誘電体膜層(SiOx層)
樹脂基板S側から数えて第1層目、第3層目、及び第5層目(最表面層)に位置するSiOxからなる酸化物誘電体膜層D1、D2、D3は、SiC及びSiを主成分とするターゲットを使用し、酸素ガスの導入量を制御しながらイオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、又はイオンプレーティング法 を行うことにより成膜することができる。これにより、各々の酸化物誘電体膜層の波長550nmにおける消衰係数を0.005〜0.05にすることができる。
樹脂基板S側から数えて第1層目、第3層目、及び第5層目(最表面層)に位置するSiOxからなる酸化物誘電体膜層D1、D2、D3は、SiC及びSiを主成分とするターゲットを使用し、酸素ガスの導入量を制御しながらイオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、又はイオンプレーティング法 を行うことにより成膜することができる。これにより、各々の酸化物誘電体膜層の波長550nmにおける消衰係数を0.005〜0.05にすることができる。
SiOx膜の消衰係数が0.05を超えると、成膜が完成した吸収型多層膜NDフィルターの可視光波長領域(波長400〜700nm)における最大透過率と最終透過率の差を平均透過率で割った値で定義される「分光透過性のフラット性」を10%以下まで小さく抑えることが困難となる。特に、平坦な分光透過特性を得るためにはSiOx膜の消衰係数は0.03以下であることが望ましい。このような平坦な分光透過特性を有するSiOx膜を得るためには、波長550nmにおける消衰係数が0.005〜0.03の範囲となるように成膜時の酸素導入量を制御すればよい。
これら第1、第3及び第5層目の酸化物誘電体膜層D1、D2、D3の各膜厚は、各々3〜150nmとすることが望ましい。各膜厚が3nmより薄いと、光学薄膜としての寄与が少ないばかりか、膜厚制御が困難となるため、好ましくない。さらに、高温高湿環境下において吸収膜層の酸化により透過率が増加する現象を抑制することが期待できない。一方、酸化物誘電体膜層の各膜厚が150nmより厚い膜は400nm〜700nmの波長領域の可視光を対象とした光学薄膜として所望の性能が効果的に発揮されなくなるおそれがあり、また生産効率を低下させるだけであるので好ましくない。
(3)吸収膜層(金属層)
樹脂基板S側から数えて第2層目と第4層目に位置する吸収膜層A1、A2は、金属膜で構成されている。この金属膜は、金属を原料とし、酸素ガス導入を停止した物理気相成長法により成膜することができる。物理気相成長法には、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、又はイオンプレーティング法の中から選択することができる。物理気相成法により得られる吸収膜は、波長550nmにおける屈折率が1.5〜3.0であり、消衰係数が1.5〜4.0である。
樹脂基板S側から数えて第2層目と第4層目に位置する吸収膜層A1、A2は、金属膜で構成されている。この金属膜は、金属を原料とし、酸素ガス導入を停止した物理気相成長法により成膜することができる。物理気相成長法には、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、又はイオンプレーティング法の中から選択することができる。物理気相成法により得られる吸収膜は、波長550nmにおける屈折率が1.5〜3.0であり、消衰係数が1.5〜4.0である。
成膜時に意図的に酸素導入を行わずに成膜した金属膜は、前述したように成膜時に意図的に酸素導入を行って成膜した酸素欠損による吸収を有するTiOxやTa2Ox等の金属酸化物膜と比較して、高い消衰係数を有することが知られている。そして、フレキシブル性を有する樹脂フィルム基板に酸化物誘電体膜層と吸収膜層とを交互に積層させて吸収型多層膜を成膜する場合、成膜時間が長くなることによって生じ得る樹脂フィルム基板の反りや膜の割れ等を考慮すると、消衰係数の高い金属膜を採用した方が金属酸化物膜に比べて膜厚を薄くすることができるので望ましい。
但し、金属膜は容易に酸化が進行して消衰係数が低下し、金属吸収膜を用いたNDフィルターでは透過率が経時的に高くなるという問題がある。そこで、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターにおいては、金属吸収膜に隣接する酸化物誘電体膜層をSiOx膜で構成することで金属吸収体膜層の酸化を抑制している。
第2層目及び第4層目の吸収膜層A1、A2の各膜厚は、3nm〜20nmであることが望ましい。各膜厚が3nmより薄いと、金属膜は完全に内部まで酸化が進行してしまう恐れがあり好ましくない。一方、各膜厚が20nmを超えて厚くなると、分光透過率が著しく低下してしまう恐れがあり好ましくない。
吸収膜層A1、A2を構成する金属膜の材質は、比較的酸化し難い金属であるNi単体又はNi系合金であることが好ましい。Ni系合金の場合は、特に、Ti、Al、V、W、Ta、及びSiからなる群から選択される1種類以上の元素を含んだNi系合金であることがより好ましい。更に、Tiを含む場合はその含有率が5〜15質量%の範囲内、Alを含む場合はその含有率が3〜8質量%の範囲内、Vを含む場合はその含有率が3〜9質量%の範囲内、Wを含む場合はその含有率が18〜32質量%の範囲内、Taを含む場合はその含有率が5〜12質量%の範囲内、Siを含む場合はその含有率が2〜6質量%の範囲内にあることが好ましい。
Tiの含有量が5質量%以上であれば、強磁性特性を著しく弱めることができ、磁力の低い通常のマグネットを配置したカソードでも直流マグネトロンスパッタリング成膜を行うことができるからである。一方、Tiの含有量が15質量%を超えると、多量の金属間化合物を形成してしまう恐れがあるため好ましくない。なお、Ti以外の元素であるAl、V、W、Ta、及びSiの含有量をそれぞれ上記の範囲内とする理由も、上記Tiの場合と同様である。
(4)樹脂基板
本発明で使用する樹脂基板は透明であるのが好ましく、更に量産性を考慮して後述するロール・トウ・ロール方式による乾式のロールコーティングが可能な長尺状の樹脂フィルム基板であることが好ましい。樹脂フィルム基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価で、軽量で、フレキシブル性に富むといった優れた特性を有しているからである。
本発明で使用する樹脂基板は透明であるのが好ましく、更に量産性を考慮して後述するロール・トウ・ロール方式による乾式のロールコーティングが可能な長尺状の樹脂フィルム基板であることが好ましい。樹脂フィルム基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価で、軽量で、フレキシブル性に富むといった優れた特性を有しているからである。
このような樹脂フィルム基板の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)、及びノルボルネンからなる群から選択された樹脂を材料とする樹脂フィルムの単体か、あるいは上記樹脂を材料とする樹脂フィルム単体の片面または両面にアクリル系有機膜を被覆させた複合体を挙げることができる。材料にノルボルネンを使用した樹脂フィルムでは、代表的なものとして、日本ゼオン社のゼオノア(商品名)やJSR社のアートン(商品名)などがある。
(5)吸収型多層膜NDフィルターの製造方法
次に、本発明の吸収型多層膜NDフィルターをロール・トウ・ロール方式で作製する方法について説明する。図2はロール・トウ・ロール方式の物理的気相成長装置(スパッタリングロールコーター装置)の概略の構成を示す正面図である。この図2に示す物理的気相成長装置は、図示しない真空ポンプを備えたスパッタリング室10内に設けられており、長尺状の樹脂フィルムFの巻取りや巻出しをする第1ロール11及び第2ロール12と、これら第1ロール11及び第2ロール12のいずれか一方から他方に搬送される樹脂フィルムFが巻き付けられる水冷キャンロール13と、この水冷キャンロール13を経由して記第1ロール11と第2ロール12との間で搬送される樹脂フィルムFの搬送経路を画定する4つのガイドロール14、15、16、及び17を備えている。
次に、本発明の吸収型多層膜NDフィルターをロール・トウ・ロール方式で作製する方法について説明する。図2はロール・トウ・ロール方式の物理的気相成長装置(スパッタリングロールコーター装置)の概略の構成を示す正面図である。この図2に示す物理的気相成長装置は、図示しない真空ポンプを備えたスパッタリング室10内に設けられており、長尺状の樹脂フィルムFの巻取りや巻出しをする第1ロール11及び第2ロール12と、これら第1ロール11及び第2ロール12のいずれか一方から他方に搬送される樹脂フィルムFが巻き付けられる水冷キャンロール13と、この水冷キャンロール13を経由して記第1ロール11と第2ロール12との間で搬送される樹脂フィルムFの搬送経路を画定する4つのガイドロール14、15、16、及び17を備えている。
第1ロール11及び第2ロール12はパウダークラッチを備えており、これにより樹脂フィルムFの張力バランスが保たれている。また、水冷キャンロール13の回転方向により樹脂フィルムFの搬送方向が決められるようになっており、本明細書においては、水冷キャンロール13が図2の紙面上で反時計回りに回転して長尺状の樹脂フィルムFが第1ロール11から引き出されて第2ロール12側に巻き取られる搬送方向を正転方向と定義し、逆に水冷キャンロール13が図2の紙面上で時計回りに回転して長尺状の樹脂フィルムFが第2ロール12から引き出されて第1ロール11側に巻き取られる搬送方向を逆転方向と定義する。
上記スパッタリング室10内には、水冷キャンロール13の外周面に沿ってこれに対向するように、スパッタリングカソード(デュアルマグネトロンスパッタリングカソード)18とスパッタリングカソード19が配置されている。スパッタリングカソード18には酸化物誘電体膜層(例えばSiOx膜層)を形成するためのターゲットが取り付けられている。一方、スパッタリングカソード19には金属吸収膜層(例えばNi合金層)を形成するためのターゲットが取り付けられている。
かかる構成により、酸化物誘電体膜層を成膜する時は水冷キャンロール13を反時計回りに回転させて長尺状の樹脂フィルムFを正転方向に搬送する。これにより、樹脂フィルムFは第1ロール11から引き出され、ガイドロール14、15を経て水冷キャンロール13に導かれ、ここで水冷キャンロール13の外周面に密着して冷却されながらスパッタリングカソード18によって酸化物誘電体膜層(例えばSiOx膜層)が成膜される。酸化物誘電体膜層が成膜された脂フィルムFはガイドロール16、17を経て第2ロール12に巻き取られる。
上記酸化物誘電体膜層の成膜が完了してほぼ全ての樹脂フィルムFが第2ロール12に巻き取られたら、水冷キャンロール13の回転方向を反転させて樹脂フィルムFを逆転方向に搬送する。これにより、樹脂フィルムFは第2ロール12から引き出され、ガイドロール17、16を経て水冷キャンロール13に導かれ、ここで水冷キャンロール13の外周面に密着して冷却されながらスパッタリングカソード19により上記酸化物誘電体膜層の上に吸収膜層(例えばNi合金層)が成膜される。吸収膜層が成膜された樹脂フィルムFはガイドロール15、14を経て第1ロール11に巻き取られる。以下、上記した酸化物誘電体膜層の成膜工程と吸収膜層成膜工程とを繰り返すことにより、長尺状の樹脂フィルムFの一方の面に酸化物誘電体膜層と吸収膜層が交互に積層された吸収型多層膜が得られる。
長尺状の樹脂フィルムFのもう一方の面に上記と同様の吸収型多層膜を積層する場合は、上記片面に吸収型多層膜が積層された樹脂フィルムFのロールをロールコーター装置から一旦取り外し、表裏が逆となるように巻き直してから再度第1ロール11に装置して上記と同様にして積層すればよい。なお、吸収型多層膜の膜厚制御は、長尺状の樹脂フィルムFの搬送速度を制御することで可能となる。
[実施例1]
図2に示すロール・トウ・ロール方式の物理的気相成長装置(スパッタリングロールコーター装置)を用いて、3層の酸化物誘電体膜層と2層の吸収膜層とが1層ずつ交互に積層された5層構造の吸収型多層膜と、その上面に最表面層として成膜した第6層目のナノポーラスを含むSiOx層とをフィルムの両面に有する試料1の吸収型多層膜NDフィルターを作製した。吸収膜層を成膜するためのターゲットにはNi−19質量%W合金ターゲット[住友金属鉱山(株)社製のW添加割合が19質量%であるW−Ni合金ターゲット]を用い、Arガスを導入するDCマグネトロンスパッタリングにより成膜した。
図2に示すロール・トウ・ロール方式の物理的気相成長装置(スパッタリングロールコーター装置)を用いて、3層の酸化物誘電体膜層と2層の吸収膜層とが1層ずつ交互に積層された5層構造の吸収型多層膜と、その上面に最表面層として成膜した第6層目のナノポーラスを含むSiOx層とをフィルムの両面に有する試料1の吸収型多層膜NDフィルターを作製した。吸収膜層を成膜するためのターゲットにはNi−19質量%W合金ターゲット[住友金属鉱山(株)社製のW添加割合が19質量%であるW−Ni合金ターゲット]を用い、Arガスを導入するDCマグネトロンスパッタリングにより成膜した。
一方、酸化物誘電体膜であるSiOxを成膜するためのターゲットにはSiターゲット[住友金属鉱山(株)社製]を用い、Arガスを導入するデュアルマグネトロンスパッタリングにより成膜した。なお、SiからSiOxを成膜するため、インピーダンスモニターにより酸素導入量を制御した。
ここで、デュアルマグネトロンスパッタリングとは、絶縁膜を高速成膜するため、2つのターゲットに中周波(40kHz)パルスを交互に印加してアーキングの発生を抑制し、ターゲット表面の絶縁層の形成を防ぐスパッタリング方法である。また、インピーダンスモニターは、酸素導入量によってターゲット電極間のインピーダンスが変化する現象を応用し、形成する膜が金属モードと酸化物モードの間の遷移領域にある所望のモードの膜となるように酸素導入量を制御かつモニターして、酸化物誘電体膜層を高速成膜するために使用するものである。
上記成膜法で得られる膜の厚みは、樹脂フィルム基板の搬送速度とスパッタリング電力により決定されるため、酸化物誘電体膜層の成膜時はスパッタ電力を7.5kWにセットし、吸収膜層の成膜時はスパッタ電力を1kWにセットした。そして、所望の物理的膜厚になるように樹脂フィルム基板の搬送速度を調整した。樹脂フィルム基板にはPETフィルムを使用し、その片面に先ず下記表1に示す膜構造のうちの片側6層を成膜した。その後、フィルムのロールを取り外して表裏が逆となるように巻き直し、再びロールコーター装置に装着して他方の面にも上記と同様に成膜して表1に示す膜構造のうちの残りの6層を成膜した。
具体的には、以下の成膜工程(1)〜(6)に沿って吸収型多層膜の成膜を行った。
(1)図2に示すスパッタリングロールコーター装置のスパッタリング室10内を1×10−4Pa程度まで排気した後、水冷キャンロール13を反時計回りに回転させて、第1ロール11から第2ロール12に向かう正転方向に樹脂フィルムFを搬送した。樹脂フィルムFの搬送速度は1.58m/minに調節した。更に、Siターゲットが取付けられたスパッタリングカソード18側にArガスを150sccm導入し、Arガス圧0.3Paとしてスパッタ出力を7.5kWに設定して、SiOxからなる第1層目の酸化物誘電体膜層D1を成膜した。成膜の際、酸素導入量をインピーダンスモニターにより制御した。
(1)図2に示すスパッタリングロールコーター装置のスパッタリング室10内を1×10−4Pa程度まで排気した後、水冷キャンロール13を反時計回りに回転させて、第1ロール11から第2ロール12に向かう正転方向に樹脂フィルムFを搬送した。樹脂フィルムFの搬送速度は1.58m/minに調節した。更に、Siターゲットが取付けられたスパッタリングカソード18側にArガスを150sccm導入し、Arガス圧0.3Paとしてスパッタ出力を7.5kWに設定して、SiOxからなる第1層目の酸化物誘電体膜層D1を成膜した。成膜の際、酸素導入量をインピーダンスモニターにより制御した。
(2)第1層目の酸化物誘電体膜層D1の成膜が完了したところで水冷キャンロール13を反転させて、第2ロール12から第1ロール11に向かう逆転方向に樹脂フィルムFを搬送した。樹脂フィルムFの搬送速度は1.38m/minに調節した。更に、Ni合金ターゲット(W−Ni合金ターゲット)が取付けられたスパッタリングカソード19側にArガスを150sccm導入し、スパッタ出力を1kWに設定してNi合金からなる第2層目の吸収膜層A1を成膜した。
(3)第2層目の吸収膜層A1の成膜が完了したところで水冷キャンロール13を反転させて、第1ロール11から第2ロール12に向かう正転方向に樹脂フィルムFを搬送した。樹脂フィルムFの搬送速度は0.44m/minに調節した。更に、Siターゲットが取付けられたスパッタリングカソード18側にArガスを150sccm導入し、Arガス圧0.3Paとしてスパッタ出力を7.5kWに設定して、SiOxからなる第3層目の酸化物誘電体膜層D2を成膜した。成膜の際、酸素導入量をインピーダンスモニターにより制御した。
(4)第3層目の酸化物誘電体膜層D2の成膜が完了したところで水冷キャンロール13を反転させて、第2ロール12から第1ロール11に向かう逆転方向に樹脂フィルムFを搬送した。樹脂フィルムFの搬送速度は1.38m/minに調節した。更に、Ni合金ターゲット((W−Ni合金ターゲット)が取付けられたスパッタリングカソード19側にArガスを150sccm導入し、スパッタ出力を1kWに設定してNi合金からなる第4層目の吸収膜層A2を成膜した。
(5)第4層目の吸収膜層A2の成膜が完了したところで水冷キャンロール13を反転させて、第1ロール11から第2ロール12に向かう正転方向に樹脂フィルムFを搬送した。樹脂フィルムFの搬送速度は1.58m/minに調節した。更に、Siターゲットが取付けられたスパッタリングカソード18側にArガスを150sccm導入し、Arガス圧0.3Paとしてスパッタ出力を7.5kWに設定してSiOxからなる第5層目の酸化物誘電体膜層D3を成膜した。成膜の際、酸素導入量はインピーダンスモニターにより制御した。
(6)第5層目の酸化物誘電体膜層D3の成膜が完了したところで水冷キャンロール13を反転させ、成膜を行わずに樹脂フィルムFを逆転方向に高速で搬送した。そして、水冷キャンロール13を反転させて、第1ロール11から第2ロール12に向かう正転方向に樹脂フィルムFを搬送した。樹脂フィルムFの搬送速度は0.44m/minに調節した。更に、Siターゲットが取付けられたスパッタリングカソード18側にArガスを300sccm導入し、Arガス圧0.6Paとしてスパッタ出力を7.5kWに設定して最表面層としての第6層目にSiOx層Eを成膜した。成膜の際、酸素導入量はインピーダンスモニターにより制御した。
(7)片面(表面)の成膜が完了した長尺状の樹脂フィルムFを取り出すと共に、表裏を反転させて第1ロール11にセットし、上記(1)〜(6)の工程を繰り返して長尺状の樹脂フィルムFの裏面にも吸収型多層膜を形成した。表裏両面に吸収型多層膜が形成された長尺状の樹脂フィルムFをスパッタリング室から取り出した。
このようにして作製した試料1の吸収型多層膜NDフィルター(多層膜の膜構造は表1参照)に対して、樹脂フィルム(フィルム厚さ100μmのPETフィルム)基板の透過特性も含め、分光透過特性を自記分光光度計(日本分光社製 V570)を用いて測定したところ、可視光領域400〜700nmの範囲内における平均透過率は12.5%であった。
また、吸収型多層膜NDフィルターの分光反射率を分光光度計(日本分光社製 V570)を用いて測定したところ、可視光領域400nm〜700nmにおける吸収型多層膜NDフィルターの平均分光反射率は0.75%であった。可視光領域400nm〜700nmにおける試料1の吸収型多層膜NDフィルターの分光透過率及び分光反射率のグラフを図3(a)、(b)に示す。
比較のため、下記表2に示すように、最表面層である第6層目を成膜する代わりに第5層目のSiOx層の厚みを厚く成膜した以外は上記試料1の作製方法と同様にして試料2の吸収型多層膜NDフィルターを作製した。この試料2では第5層目のSiOx層の成膜条件は、ガス流量150sccm、ガス圧力0.3Paとした。
この試料2の吸収型多層膜NDフィルターに対して試料1と同様にして分光透過率及び分光反射率を測定したところ、それぞれ12.48%及び1.21%であった。可視光領域400nm〜700nmにおける試料2の吸収型多層膜NDフィルターの分光透過率及び分光反射率のグラフを図3(a)、(b)に示す。これら試料1と試料2の結果から、最表面層にナノポーラスを含むSiOx層を設けることにより優れた低反射特性が得られることがわかる。
[実施例2]
成膜工程(1)〜(6)の成膜工程において、樹脂フィルムFの搬送速度をそれぞれ1.5m/min、1.94m/min、0.45m/min、1.94m/min、1.4m/min、0.62m/minとし、更に下記の方法で最表面にフッ素樹脂コーティングを行った以外は上記実施例1と同様にして試料3の吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
成膜工程(1)〜(6)の成膜工程において、樹脂フィルムFの搬送速度をそれぞれ1.5m/min、1.94m/min、0.45m/min、1.94m/min、1.4m/min、0.62m/minとし、更に下記の方法で最表面にフッ素樹脂コーティングを行った以外は上記実施例1と同様にして試料3の吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
[フッ素樹脂コーティング]
先ず、両面に吸収型多層膜が形成された長尺状の樹脂フィルム基板Fを303mm×200mmのサイズにカットし、シート状の樹脂フィルム基板を得た。このシート状樹脂フィルム基板をフッ素樹脂溶液(DS−5110Z130:株式会社ハーベス製)に10秒間ディッピングした後、24時間大気乾燥させ、ついで5分間リンス溶剤(DS−ZV:株式会社ハーベス製)中で超音波洗浄を行い過剰のフッ素樹脂成分を除去した上で、風乾した。これにより図5に示すような第7層目のフッ素樹脂コート膜Cを備えた試料3の吸収型多層膜NDフィルターを得た。
先ず、両面に吸収型多層膜が形成された長尺状の樹脂フィルム基板Fを303mm×200mmのサイズにカットし、シート状の樹脂フィルム基板を得た。このシート状樹脂フィルム基板をフッ素樹脂溶液(DS−5110Z130:株式会社ハーベス製)に10秒間ディッピングした後、24時間大気乾燥させ、ついで5分間リンス溶剤(DS−ZV:株式会社ハーベス製)中で超音波洗浄を行い過剰のフッ素樹脂成分を除去した上で、風乾した。これにより図5に示すような第7層目のフッ素樹脂コート膜Cを備えた試料3の吸収型多層膜NDフィルターを得た。
この試料3の吸収型多層膜NDフィルターに対して、実施例1と同様にして分光透過率及び分光反射率を測定したところ、それぞれ24.8%及び1.32%であった。可視光領域400nm〜700nmにおける試料2の吸収型多層膜NDフィルターの分光透過率及び分光反射率のグラフを図6(a)、(b)に示す。
比較のため、上記成膜工程(6)による最表面層の酸化物誘電体膜層Eの成膜を省略し、上記成膜工程(5)における第5層目の酸化物誘電体膜層D3の成膜時の樹脂フィルムFの搬送速度を0.45m/minとして最表面層を他層のSiOx層と同様にナノポーラスを持たないものとし、更にフッ素コーティングを行わなかった以外は上記試料3の作製方法と同様にして試料4の吸収型多層膜NDフィルターを作製した。
この試料4の吸収型多層膜NDフィルターに対して実施例1と同様にして分光透過率及び分光反射率を測定したところ、それぞれ24.1%及び1.94%であった。可視光領域400nm〜700nmにおける試料2の吸収型多層膜NDフィルターの分光透過率及び分光反射率のグラフを図7(a)、(b)に示す。
これら試料3及び試料4の吸収型多層膜NDフィルターに対して、温度80℃、湿度90%の環境で24時間放置する耐湿試験を行い、分光光学特性の変化を調べた。その結果、試料3では初期の平均反射率は1.32%、耐湿試験後は1.36%とほとんど変化が認められなかったが、最表面層にナノポーラスを含んだSiOx層を設けず、フッ素コ―ティングも施さなかった試料4では初期の平均反射率は1.94%で反射率が高く、耐湿試験後は2.01%とさらに上昇した。
D1、D2、D3
酸化物誘電体膜層
A1、A2 吸収膜層
E SiOx層
C フッ素樹脂コート膜
S 樹脂基板
10 スパッタリング室
11 第1ロール
12 第2ロール
13 水冷キャンロール
14、15、16、17 ガイドロール
18、19 スパッタリングカソード
酸化物誘電体膜層
A1、A2 吸収膜層
E SiOx層
C フッ素樹脂コート膜
S 樹脂基板
10 スパッタリング室
11 第1ロール
12 第2ロール
13 水冷キャンロール
14、15、16、17 ガイドロール
18、19 スパッタリングカソード
Claims (5)
- 3層の酸化物誘電体膜層と2層の吸収膜層とが1層ずつ交互に積層され、更に最表面層にナノポーラスを含んだSiOx膜層が成膜されてなる6層構造の吸収型多層膜が、樹脂基板の両面に各々設けられた吸収型多層膜NDフィルターであって、前記樹脂基板から数えて第5層目の酸化物誘電体膜層の屈折率の0.95〜0.98倍の屈折率を前記最表面層が有していることを特徴とする吸収型多層膜NDフィルター。
- 前記SiOx膜層は、SiC及びSiを主成分とするターゲットを原料としてイオンビームスパッタリング法又はマグネトロンスパッタリング法により成膜された、波長550nmにおける消衰係数が0〜0.01の酸化物誘電体膜であり、前記第5層目の誘電体膜は波長550nmにおける消衰係数が0.005〜0.05のSiOx膜層であり、前記吸収膜層は、真空蒸着法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング、又はイオンプレーティング法により成膜され、波長550nmにおける屈折率が1.5〜3.0、消衰係数が1.5〜4.0であることを特徴とする、請求項1に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
- 前記3層の酸化物誘電体膜層の各々が、膜厚3〜150nmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
- 前記2層の吸収膜層が、Ni単体又はNi系合金から成ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の吸収型多層膜NDフィルター。
- 前記Ni系合金が、Ti、Al、V、W、Ta、及びSiからなる群から選択された1種類以上の元素を含んでおり、Tiを含む場合はその含有率が5〜15質量%の範囲内、Alを含む場合はその含有率が3〜8質量%の範囲内、Vを含む場合はその含有率が3〜9質量%の範囲内、Wを含む場合はその含有率が18〜32質量%の範囲内、Taを含む場合はその含有率が5〜12質量%の範囲内、Siを含む場合はその含有率が2〜6質量%の範囲内にあることを特徴とする、請求項4に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
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- 2012-07-11 JP JP2012155379A patent/JP2014016565A/ja active Pending
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