JP5055695B2 - 反射防止積層体 - Google Patents
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Description
また、ディスプレイ表面に用いられる反射防止多層膜では、その表面が比較的柔軟であることから、表面硬度を付与する為に、ディスプレイ表面にアクリル多官能化合物の重合体からなるハードコート層を設け、その上に反射防止層を形成するという手法がなされる。上記のハードコート層は、アクリル樹脂特有の性質である高い表面硬度、光沢性、透明性、耐擦傷性を有するが、絶縁特性が高いので帯電しやすく、ハードコート層を設けた製品表面への埃等の付着による汚れや、精密機械に使用された場合に、帯電してしまうことにより障害が発生するといった問題を抱えていた。
この際、層間に導電層を設ける方式では、積層体において色ムラを防止する目的で、光干渉を制御するために各層の屈折率および膜厚を制御することが必要とされている。
層間に導電層を設ける場合、主としてアクリル系樹脂からなるバインダー(アクリルバインダー)と導電剤とからなる導電層が用いられている(例えば、特許文献2参照。)。
また、層間に導電層を設ける方式では、塗工方式では各層の膜厚を制御することが困難であった。真空蒸着方式であれば屈折率の制御は行えるが、生産性が悪かった。
また、アクリルバインダーを用いて導電層を構成した場合、導電層の膜厚が厚くなると膜強度が低下し、導電層と反射防止層の密着性が不十分となり、積層された膜全体の表面硬度、耐擦傷性等が不良となるという問題があった。一方、基材とハードコート層との間に導電層を設ければ、密着性低下の問題は回避されうるが、充分な導電性が発揮されにくくなるために、導電性を考慮してハードコート層にメッキ、微粒子添加等の特別な処理を行うことが必要であり、製造工程がさらに煩雑となっていた。
前記導電層が一般式(I)RxSi(OR)4−x(但し、式中Rはアルキル基を示し、xは0≦x≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を含むバインダマトリックスと、粒径1〜100nmの導電性微粒子とを含有し、かつ、式(II)nd=λ/2[但し、nは導電層の屈折率、dは導電層の膜厚、λは光の波長(nm)を示し、500≦λ≦600を満たす数である]を満たし、
前記支持体の屈折率と前記ハードコート層の屈折率との差、及び前記ハードコート層の屈折率と前記導電層の屈折率との差がいずれも4%以下であることを特徴とする。
前記イオン導電性微粒子は、五酸化アンチモン微粒子であることが好ましい。
前記バインダマトリックスは、一般式(III)R’ySi(OR)4−y (但し、式中Rはアルキル基を示し、R’は反応性官能基を示し、yは1≦y≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物をさらに含むことが好ましい。
反応性官能基は親水性反応性官能基であることが好ましく、親水性反応性官能基はエポキシ基またはイソシアネート基の少なくとも一方を有することが好ましい。
前記反射防止層は、粒径1〜100nmの低屈折率シリカ粒子を含有することが好ましい。
ここで、反射防止層は、一般式(IV)R''zSi(OR)4−z (但し、式中R''はアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物をさらに含有することが好ましい。
前記反射防止層は、式(V)n’d’=λ/4[但し、n’は反射防止層の屈折率、d’は反射防止層の膜厚、λは光の波長(nm)を示し、500≦λ≦600を満たす数である]を満たすことが好ましい。
本発明のディスプレイは、本発明の偏光板を備えることを特徴とする。
例えば、図1に示すように、透明な支持体1の上にハードコート層2、導電層3、反射防止層4がこれらの順に積層されて、反射防止積層体5を構成する形態をとることができる。
本発明の反射防止積層体は、透明な支持体、導電層、ハードコート層、反射防止層がこれらの順に積層された形態であってもよい。
前記導電層の膜厚が、λが視感度の高い500〜600nmである条件で、式(II)を満たすことにより、反射防止積層体の視感反射領域の分光反射率がフラットに近い反射率曲線を示すようにし、色味のない反射防止積層体を提供することができる。特に、反射率曲線が、可視光の波長のうち広い波長領域に渡ってフラットであるから、製造段階で多少膜厚がばらついても色ムラが発生しにくく、真空蒸着法よりも膜厚の制御が難しい塗工法によっても、色味のない反射防止積層体を安定して提供することが可能となる。すなわち、色味のない(色ムラのない)反射防止積層体を、生産性よく製造することができる。
バインダマトリックスが上記の加水分解物を含むことにより、前記導電層と、ハードコート層あるいは反射防止層との密着性がいずれも優れるので、層間で剥離を生じることなく、支持体と、ハードコート層と、導電層と、反射防止層とがこれらの順に積層された形態をとることができる。
本発明においては、上記のように、支持体と、ハードコート層と、導電層と、反射防止層とがこれらの順に積層されていることが好ましい。
このことにより、本発明の反射防止積層体をディスプレイ等の物品に、支持体を物品側にして設置したり、ディスプレイを構成する基板をもって支持体に代えて用いる場合に、導電層が物品に対してハードコート層よりも外側に位置する形態をとることができ、効率よく帯電防止性を発現することができる。
また、前記導電層が帯電防止に機能するので、ハードコート層に導電剤等を添加する必要がなく、透明性を損なわずにハードコート層の厚みを任意に設定することができ、ハードコート層に由来する基材保護の機能、例えば表面硬度、耐擦傷性を良好に保持させることができる。
このようなケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記加水分解物は、一般式(I)で示されるケイ素アルコキシドを原料として得られるものであればよく、例えば塩酸にて加水分解することで得られるものである。このような加水分解物は、導電層中において導電性微粒子を分散させて保持することができ、導電性微粒子の伝導性を損なわないものであればよい。
なお、バインダマトリックスにおいては、一般式(I)で示されるケイ素アルコキシド、すなわち加水分解物の原料が存在していても構わない。
電子導電性微粒子としては、例えば、酸化アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズ等が挙げられる。
イオン導電性微粒子としては、五酸化アンチモンからなる微粒子(五酸化アンチモン微粒子)、酸化タングステン微粒子等が挙げられる。
前記導電性微粒子の粒径が1〜100nmであることにより、導電層の透明性と帯電防止能を両立することができる。粒径が100nmを越えると、レイリー散乱によって光が著しく反射され、導電層が白くなって透明性の低下が認められる。また1nm未満では導電性が低下することや、微粒子の凝集による導電層の不均一性等の問題が生じる。
このことにより、層間の光干渉に起因する、反射防止積層体の色ムラの発生を防止することができる。
さらにはこれらの有機高分子に公知の添加剤、たとえば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加し、機能を付加させたものも使用できる。
また、前記支持体は、上記の有機高分子の1種からなるものでも、2種以上の混合物あるいは重合体からなるものでもよく、複数の層を積層させたものであってもよい。
また、支持体には、通常、表面保護層が設けられるが、該表面保護層と支持体との密着性を向上させる目的で、支持体の少なくとも一面に表面処理を施すことができる。この表面処理方法としては、例えばサンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などが挙げられる。
紫外線または電子線硬化型樹脂化合物としては、反射防止積層体が設置される基材の表面改質を目的として、スチールウールラビング試験による耐擦傷性、鉛筆ひっかき試験による表面硬度、粘着テープ剥離試験による密着性、最小曲げ試験によるクラック性等の諸特性について、要求されるスペックを満足させるように樹脂を選択して使用することが出来る。この化合物は、光重合性プレポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤等を含有するものである。
また、光重合性モノマーとしては、例えばポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記の光重合性モノマーの屈折率は1.5前後であるが、屈折率が高い光重合性モノマーとして、さらに、フッ素原子以外のハロゲン原子、環状基、硫黄(S)、窒素(N)、リン(P)等の原子のいずれか1種または2種以上を含むものを例示することができる。環状基には芳香族基、複素環基および脂肪族環基が含まれる。屈折率が高い光重合性モノマーとしては、例えば、ビス(4−メタクリロイルチオフェノキシ)スルフィド、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、テトラブロモビスフェノールAジエポキシアクリレートなどが挙げられる。
ハードコート層において屈折率の高い光重合性モノマーを用いることにより、ハードコート層の屈折率と導電層の屈折率との差を容易に制御することができる。
ここで、主成分とするとは、前記ハードコート層を成す重合体を100質量%として、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーが10〜100質量%含まれることを示す。
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体は、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性の光重合性プレポリマー、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性の光重合性モノマーを重合させて得ることができる。このような光重合性プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート系、光重合性モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート等が挙げられる。
また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ− n−ブチルホスフィン等を光重合性プレポリマー、光重合性モノマーに混合して用いることができる。
金属酸化物微粒子を添加することにより、ハードコート層の屈折率を制御することが可能となり、あわせて導電層との密着性およびハードコート層の硬度を向上させることができる。
ハードコート層において金属酸化物微粒子を用いる場合、金属酸化物微粒子の表面に表面処理を施して、バインダである有機化合物との親和性を高めることが好ましい。表面処理は、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理表面処理と、カップリング剤を使用する化学的表面処理に分類できる。化学的表面処理のみ、または物理的/化学的表面処理両方で実施することが好ましい。
カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物であるシランカップリング剤やチタンカップリング剤などが好ましい。カップリング剤による表面処理には、触媒として無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、炭酸など)、有機酸(例、酢酸、ポリアクリル酸、ポリグルタミン酸など)を用いることが好ましい。
イオン導電性微粒子は比較的低い密度の分布状態で導電性を示すことができるため、イオン導電性微粒子を用いることによって、導電層の透明性を非常に良好に維持しつつ、かつ導電層の膜厚を任意に制御して後述の式(II)を満たすようにさせながら、充分な導電性を発現させることができる。また、導電層におけるイオン導電性微粒子の含有量を、導電性が発現される範囲で任意に制御することができるので、導電層の屈折率を容易に制御することができ、導電層の屈折率をハードコート層の屈折率に近づけて、これらの層の間の光干渉を抑えることができる。したがって、色ムラをさらに安定して防止することができる。なお、導電層の屈折率は、例えば、導電層におけるイオン導電性微粒子の含有率が高いほど、導電層の屈折率は高くなることにより制御できる。
五酸化アンチモンはイオン導電性の物質であり、なおかつ結晶水を有するため、酸化アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)等の電子導電性微粒子と比較して少ない配合量で導電性を発現すると共に、湿度環境による影響を受けにくい。したがって、反射防止積層体に永久導電性を発現させることができる。
また、他の金属酸化物よりも比較的屈折率の低い材料である五酸化アンチモン微粒子(屈折率1.64)を用い、その含有量を制御することで、導電層の屈折率制御を広範囲に渡って特に精度よく行うことができ、導電層の屈折率をハードコート層の屈折率に近づけることが可能となる。すなわち、ハードコート層と導電層の間の光干渉を安定して抑制することができ、反射防止積層体において色ムラをさらに容易に防止することができる。
上記一般式(III)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物は、一般式(III)で示されるケイ素アルコキシドを原料として得られるものであればよく、例えば塩酸にて加水分解することで得られるものである。上記一般式(III)で示されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好ましい。
なお、前記バインダマトリックスにおいては、一般式(III)で示されるケイ素アルコキシドが存在していても構わない。
上記一般式(I)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物と、上記一般式(III)で示されるケイ素アルコキシドとの配合比は、一般式(I)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を99〜84mol%に対して、一般式(III)で示されるケイ素アルコキシドが1〜16mol%であることが、導電層の硬度を低減させないために好ましい。
表面処理を施すことにより、各層の表面の表面張力を変化させることができるため、ハードコート層と導電層、導電層と反射防止層の密着性をそれぞれ向上させることができる。したがって、反射防止積層体の表面硬度、耐擦傷性をさらに向上させることができる。
また、各層の表面上の異物を低減させることができるため、外観において欠陥の無い反射防止積層体を提供することができる。
表面処理法としては、例えば、アルカリ処理、プラズマ処理、レーザー処理、コロナ処理等を行うことができる。
例えば、支持体、ハードコート層、導電層、反射防止層がこれらの順に積層されている場合は、反射防止層は、導電層よりも屈折率の低いものであればよい。また、支持体、導電層、ハードコート層、反射防止層がこれらの順に積層されている場合は、反射防止層はハードコート層よりも屈折率の低いものであればよい。
反射防止層としては、例えば、金属酸化物微粒子からなる透明薄膜、フッ素化アクリル樹脂からなる透明薄膜等を用いることができるが、特に、反射防止層が、一般式(I)RxSi(OR)4−x(但し、式中Rはアルキル基を示し、xは0≦x≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を含むバインダマトリックスを含有するものが好ましい。このことにより、積層体の強度をさらに向上させることができる。
また、反射防止層は、粒径1〜100nmの低屈折率シリカ粒子を含有することが好ましい。反射防止層において低屈折率シリカ粒子を用いると、低反射率で、かつ防汚性を備えた反射防止積層体を提供することができる。
反射防止層は、一般式(IV)R''zSi(OR)4−z (但し、式中R''はアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物をさらに含有することが、反射防止積層体の低反射率、および防汚性をさらに向上させるために好ましい。
一般式(IV)で示されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、オクタデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H‐パーフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
低屈折率シリカ粒子が細孔を有することにより、低屈折率シリカ粒子をバインダマトリックスに添加した際に、例えば屈折率1.5のバインダマトリックスが屈折率1.00の低屈折率シリカ粒子の細孔へ浸透することが防止され、粒子の屈折率上昇を防ぐことが出来る。
低屈折率シリカ粒子の粒径を1〜100nmとすることにより、低い反射率とともに、光透過率の低下や層の着色のない反射防止層を構成することができる。粒径が100nmを越えると、レイリー散乱によって光が著しく反射され、反射防止層が白くなって透明性の低下が認められる。また1nm未満では細孔を有する粒子の作製が困難であることや、微粒子の凝集による反射防止層の不均一性等の問題が生じる。
また、低屈折率シリカ粒子のバインダマトリックス中における分散性を向上するために、バインダマトリックス中に分散剤を添加することができる。分散剤としては、特に制限はなく、シリコーン系の分散剤を用いることが好ましい。
まず、前記支持体に第一の塗布液を塗工し、乾燥させてハードコート層を作製する。ついで、該ハードコート層に第二の塗布液を塗工し、乾燥させて導電層を作製する。その後、該導電層に第三の塗布液を塗工し、乾燥させて反射防止層を作製することで、反射防止積層体が得られる。
溶媒としては、特に限定することはないが、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類等を挙げることができる。
また、第一の塗布液には、所望により消泡剤やレベリング剤等の公知の添加剤を配合することができる。
第一の塗布液の固形分濃度については特に制限はなく、塗工性、乾燥性、経済性等の面から10〜70質量%の範囲が好ましく、特に30〜50質量%の範囲が好適である。
ハードコート層の厚さは、第一の塗布液の固形分濃度および硬化後におけるハードコート層の密度を用いて、必要な第一の塗布液の塗工量を算出することにより、制御する事ができる。
また、乾燥後の塗工層に窒素パージした雰囲気下で紫外線および電子線を照射して硬化させ、酸素障害が少なく、表面硬度の高いハードコート層を形成しても良い。
硬化に用いる紫外線照射装置については、特に制限はなく、例えば高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ等を用いた公知の紫外線照射装置を使用することができる。紫外線照射量は、通常100〜800mJ/cm2程度である。電子線照射装置については特に制限はなく、加速電圧は通常50〜300kVである。
このようにして得られたハードコート層は、これを設置する基材との密着性、表面硬度、屈曲性、耐擦傷性、透明性に優れたものとなる。
第二の塗布液において紫外線または電子線硬化型樹脂化合物を用いた場合は、乾燥後に、紫外線または電子線照射を行う。
透明な支持体、ハードコート層、導電層、反射防止層がこれらの順に積層された反射防止積層体を作製し、その性能を下記の方法に従って評価した。
(分光反射率)
自動分光光度計(日立製作所製、U−4000)を用い、入射角5°における分光反射率を測定した。なお、測定の際には透明支持体のうち塗工の施されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置を行った。
(平均視感反射率)
自動分光光度計(日立製作所製 U−4000)を用い、入射角5°における分光反射率よりC光源、2度視野の条件下における平均視感反射率(%)を算出した。
(目視評価)
20W蛍光灯から20cmの距離で反射防止積層体の反射防止層側に蛍光灯の光を入射し、色ムラおよび干渉ムラの目視評価を行った。なお、評価の際には、支持体のうち塗工の施されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置を行った。評価結果は、◎:色味なし、ニュートラルな色相、○:色味が僅かに認められる、×:色味が顕著に認められる、として示した。
(耐擦傷性)
スチールウール(#0000)を用い、250g荷重で反射防止積層体の表面を10往復擦り、傷の有無を目視評価した。
(全光線透過率およびヘイズ値)写像性測定器[日本電色工業(株)製、NDH−2000 ]を使用して測定した。
(鉛筆硬度)
JIS K5400に準拠し、試験機法により500g荷重で評価した。
(表面抵抗値)
JIS K6911に準拠して測定した。
(防汚性)
指紋、油性インキ、ティッシュくずを反射防止積層体の反射防止層の表面に付着させ、拭き取りの可否を判断した。
(密着性の評価)
反射防止積層体の表面を1mm角で100点カットした後、粘着テープ(ニチバン(株)製、工業用24mm巾セロテープ(登録商標))を用いて反射防止層側からの剥離試験を行い、100点カット部の残存率で評価した。100点全てが剥離せずに残存したときを100/100とした。
(ハードコート層の形成)
透明な支持体として厚み80μm、波長550nmにおける屈折率1.49のトリアセチルセルロースフィルム(全光線透過率:93%、ヘイズ値:0.1%)を用いた。また、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびウレタンアクリレートを用いてハードコート層用の塗布液を調整した。
このハードコート層用塗布液を、乾燥膜厚5μmになるように支持体上に塗布し、120Wのメタルハライドランプを20cmの距離から10秒間照射することにより、ハードコート層を形成した。
ハードコート層の屈折率は波長550nmにおいて1.52であり、透明支持体との屈折率差は2%であった。
(表面処理)
上記のハードコート層を形成した支持体を、50℃に加熱した1.5N−NaOH水溶液に2分間浸漬しアルカリ処理を行い、水洗後、0.5質量%−H2SO4水溶液に室温で30秒間浸漬し中和させ、水洗、乾燥処理を行った。
テトラエトキシシランからなるケイ素アルコキシドを原料とし、これを1mol/L塩酸により加水分解して、得られたオリゴマー(加水分解オリゴマー)からなるケイ素アルコキシドの加水分解物を得た。この加水分解物からなるバインダマトリックス5質量部と、五酸化アンチモン微粒子(一次粒径20nm)からなるイオン導電性微粒子5質量部とを90質量部のイソプロパノールで希釈して、導電層用のコーティング液を調整した。上記の表面処理を行ったハードコート層に乾燥膜厚が180nmになるようにこのコーティング液を塗布し、乾燥させて、導電層を形成させた。
導電層の屈折率は波長550nmにおいて1.55であり、導電層とハードコート層との屈折率差は2%であった。
(反射防止層の形成)
テトラエトキシシランからなる、前記一般式(I)で示されるケイ素アルコキシドと、有機官能基としてパーフルオロオクタン基を有するトリメトキシシランからなる、前記一般式(III)で示されるケイ素アルコキシドとを原料とし、1mol/L塩酸により加水分解して得られたオリゴマー5質量部と、低屈折率シリカ粒子5質量部とを、190質量部のイソプロパノールで希釈して反射防止層用のコーティング液を調製した。このコーティング液を、上記で得られた導電層に、乾燥膜厚が100nmになるように塗布し、乾燥させて反射防止層を作製した。
反射防止層の屈折率は、波長550nmにおいて1.35であった。
実施例1(導電層の形成)において、実施例1と同様のケイ素アルコキシドの加水分解物を4.5質量部、五酸化アンチモン微粒子を5.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして積層体を作成した。
導電層の屈折率は波長550nmにおいて1.58であり、導電層とハードコート層との屈折率差は4%であった。
<実施例3>
実施例1(ハードコート層の形成)において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびウレタンアクリレートの混合物8質量部に対し、ハードコート層の屈折率を上昇させる目的で酸化ジルコニウム微粒子2質量部を加えてハードコート層用の塗布液を調整した以外は、実施例1と同様にして積層体を作成した。
ハードコート層の屈折率は波長550nmにおいて1.55であり、ハードコート層と透明支持体との屈折率差は4%であった。
実施例1(導電層の形成)において、加水分解オリゴマーを4質量部、五酸化アンチモン微粒子を6質量部とした以外は実施例1と同様にして反射防止積層体を作成した。
導電層の屈折率は波長550nmにおいて1.60であり、導電層とハードコート層との屈折率差は5%であった。
<比較例2>
実施例1(ハードコート層の形成)において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびウレタンアクリレートの混合物7質量部に対し、ハードコート層の屈折率を上昇させる目的で酸化ジルコニウム微粒子3質量部を加えてハードコート層用の塗布液を調整した以外は実施例1と同様にして反射防止積層体を作成した。
ハードコート層の屈折率は波長550nmにおいて1.57であり、ハードコート層と支持体との屈折率差は5%であった。
<比較例3>
実施例1(導電層の形成)において、バインダマトリックスとして、ペンタエリスリトールトリアクリレートからなるアクリル系樹脂7質量部を用い、五酸化アンチモン微粒子を3質量部とした以外は、実施例1と同様にして積層体を作成した。
導電層の屈折率は波長550nmにおいて1.56であり、ハードコート層との屈折率差は3%であった。
<比較例4>
実施例1(導電層の形成)において、導電層の乾燥膜厚を155nmとし、(反射防止層の形成)において、反射防止層の乾燥膜厚を88nmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を作成した。すなわち、導電層の膜厚が前記式(II)を満たさず、反射防止層の膜厚が前記式(V)を満たさない条件とした。
<比較例5>
実施例1(導電層の形成)において、導電層の乾燥膜厚を200nmとし、(反射防止層の形成)において、反射防止層の乾燥膜厚を88nmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を作成した。すなわち、導電層の膜厚が前記式(II)を満たさず、反射防止層の膜厚が前記式(V)を満たさない条件とした。
<比較例6>
実施例1(導電層の形成)において、導電層の乾燥膜厚を155nmとし、(反射防止層の形成)において、反射防止層の乾燥膜厚を115nmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を作成した。すなわち、導電層の膜厚が前記式(II)を満たさず、反射防止層の膜厚が前記式(V)を満たさない条件とした。
<比較例7>
実施例1(導電層の形成)において、導電層の乾燥膜厚を200nmとし、(反射防止層の形成)において、反射防止層の乾燥膜厚を115nmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を作成した。すなわち、導電層の膜厚が前記式(II)を満たさず、反射防止層の膜厚が前記式(V)を満たさない条件とした。
実施例1〜3、比較例1〜7で得られた積層体について、分光反射率を測定した結果をそれぞれ図2〜11に示す。
また、表面抵抗値が低く充分な導電性を示した。さらに、ヘイズ値が低く全光線透過率が高く、すなわち透明性が良好であり、耐擦傷性、鉛筆硬度、防汚性、密着性の評価結果がいずれも良好であった。
なお、実施例2は、図3に示すように可視領域の波長に小さな極大ピークを示したものの、可視領域における反射率の極大値と極小値の差が小さいので、目視評価では○となっている。
支持体の屈折率とハードコート層の屈折率との差が5%であった比較例2においては、図6に示すように、分光反射率曲線が極大値、極小値を繰り返している。これは、透明支持体とハードコート層の屈折率差が大きいために層間での光干渉をおこしているためである。このため、干渉ムラとしての色ムラが発生し、目視評価において×評価となっている。
導電層をアクリル系樹脂と五酸化アンチモン微粒子の組成とした比較例3においては、密着性及び耐擦傷性の性能低下が認められた。
薄膜化方向に導電層が式(II)、反射防止層が式(V)を満たさない比較例4においては、図8に示すように、実施例1と比較して分光反射率曲線が変化し、高波長領域の赤みが強く出てしまうため、目視評価で×評価となっている。導電層が厚膜化方向に式(II)を満たさず、反射防止層が薄膜化方向に式(V)を満たさない比較例5においても同様に目視評価で×となり、さらに視感反射率が高くなっている。
逆に厚膜化方向に導電層が式(II)、反射防止層が式(V)を満たさない比較例7においては、低波長領域の青みが強く出てしまうため、目視評価で×評価となった。導電層が薄膜化方向に式(II)を満たさず、反射防止層が厚膜化方向に式(V)を満たさない比較例6においても同様に目視評価で×となり、さらに視感反射率が高くなっている。
2 ハードコート層
3 導電層
4 反射防止層
5 反射防止積層体
Claims (11)
- 透明な支持体、ハードコート層、導電層、及び反射防止層を有する反射防止積層体において、
前記支持体、ハードコート層、導電層、及び反射防止層はこれらの順に隣接して積層され、
前記導電層は、一般式(I)RxSi(OR)4−x(但し、式中Rはアルキル基を示し、xは0≦x≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を含むバインダマトリックスと、粒径1〜100nmの導電性微粒子とを含有した塗布液を前記ハードコート層上に塗工して形成され、かつ、式(II)nd=λ/2[但し、nは導電層の屈折率、dは導電層の膜厚、λは光の波長(nm)を示し、500≦λ≦600を満たす数である]を満たし、
前記反射防止層は、一般式(I)RxSi(OR)4−x(但し、式中Rはアルキル基を示し、xは0≦x≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を含むバインダマトリックスと、粒径1〜100nmの低屈折率シリカ粒子とを含有し、
前記支持体の屈折率と前記ハードコート層の屈折率との差、及び前記ハードコート層の屈折率と前記導電層の屈折率との差がいずれも4%以下であることを特徴とする反射防止積層体。 - 前記導電性微粒子は、イオン導電性微粒子であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止積層体。
- 前記イオン導電性微粒子は、五酸化アンチモン微粒子であることを特徴とする請求項2に記載の反射防止積層体。
- 前記導電層のバインダマトリックスは、一般式(III)R’ySi(OR)4−y (但し、式中Rはアルキル基を示し、R’は反応性官能基を示し、yは1≦y≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物をさらに含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の反射防止積層体。
- 前記反応性官能基が親水性反応性官能基であることを特徴とする請求項4に記載の反射防止積層体。
- 前記親水性反応性官能基は、エポキシ基またはイソシアネート基の少なくとも一方を有することを特徴とする請求項5に記載の反射防止積層体。
- 前記反射防止層は、一般式(IV)R''zSi(OR)4−z (但し、式中R''はアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の反射防止積層体。
- 前記反射防止層は、式(V)n’d’=λ/4[但し、n’は反射防止層の屈折率、d’は反射防止層の膜厚、λは光の波長(nm)を示し、500≦λ≦600を満たす数である]を満たすことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の反射防止積層体。
- 前記ハードコート層は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体からなることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の反射防止積層体。
- 請求項1ないし9のいずれかに記載の反射防止積層体を有することを特徴とする偏光板。
- 請求項10に記載の偏光板を備えることを特徴とするディスプレイ。
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