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JP4710269B2 - 反射防止積層フィルムおよびそれを用いた表示媒体 - Google Patents

反射防止積層フィルムおよびそれを用いた表示媒体 Download PDF

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Description

本発明は、生産性、光学特性、帯電防止性および表面硬度や耐擦傷性に優れ、例えば、ディスプレイ(液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等)の表示画面に適用される反射防止積層フィルムに関するものである。
多くのディスプレイは、室内外を問わず外光などが入射するような環境下で使用される。この外光などの入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、反射像が表示光と混合し表示品質を低下させ、表示画像を見にくくしている。このため、反射防止機能を付与するために、金属酸化物の透明薄膜からなる反射防止層を有する多層膜(反射防止膜)が従来用いられている。ここで、金属酸化物の透明薄膜は、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法により形成され、特に物理蒸着法である真空蒸着法により形成されている。このように形成された反射防止膜は優れた光学特性を示すが、蒸着による形成方法は生産性が低く、大量生産に適していないという問題を抱えていた。
また、ディスプレイ表面に用いられる反射防止多層膜では、その表面が比較的柔軟であることから、表面硬度を付与する為に、ディスプレイ表面にアクリル多官能化合物の重合体からなるハードコート層を設け、その上に反射防止層を形成するという手法がなされる。上記のハードコート層は、アクリル樹脂特有の性質である高い表面硬度、光沢性、透明性、耐擦傷性を有するが、絶縁特性が高いので帯電しやすく、ハードコート層を設けた製品表面への埃等の付着による汚れや、精密機械に使用された場合に、帯電してしまうことにより障害が発生するといった問題を抱えていた。
そこで、帯電を防止するために、ハードコート層に導電剤を練りこむハードコート練りこみ方式(例えば、特許文献1参照)か、基材とハードコート層の間やハードコート層と反射防止層の間に、表面硬度を落とさない程度に極めて薄く導電層を設ける手法がなされている(例えば、特許文献2、3参照。)。また、その形成方法としては塗工法が用いられ、生産性の向上がはかられている。
この際、層間に導電層を設ける方式では、積層フィルムにおいて色ムラを防止する目的で、光干渉を制御するために各層の屈折率および膜厚を制御することが必要とされている。
層間に導電層を設ける場合、主としてアクリル系樹脂からなるバインダー(アクリルバインダー)と導電剤とからなる導電層が用いられている(例えば、特許文献2参照。)。
特許文献は以下の通り。
特開平11−92750号公報 特開平11−326602号公報 特開2001−255403号公報
しかしながら、ハードコート層に導電剤を練りこむ方式では、充分に導電性を発現させるために多量の電子導電性微粒子を用いなければならず、その結果ハードコート層の光線透過率が低下してしまう問題が発生した。一方、導電剤の配合量を減らさずに光線透過率を上げるために、導電剤を練り込んだハードコート層の膜厚を薄くすると、このようなハードコート層を有する積層フィルムにおいて、表面硬度、耐擦傷性等の基材保護の機能が低下してしまう問題があった。
また、層間に導電層を設ける方式では、塗工方式では各層の膜厚を制御することが困難であった。真空蒸着方式であれば屈折率の制御は行えるが、生産性が悪かった。
また、アクリルバインダーを用いて導電層を構成した場合、導電層の膜厚が厚くなると膜強度が低下し、導電層と反射防止層の密着性が不十分となり、積層された膜全体の表面硬度、耐擦傷性等が不良となるという問題があった。一方、基材とハードコート層との間に導電層を設ければ、密着性低下の問題は回避されうるが、充分な導電性が発揮されにくくなるために、導電性を考慮してハードコート層にメッキ、微粒子添加等の特別な処理を行うことが必要であり、製造工程がさらに煩雑となっていた。
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、透明性、表面硬度、耐擦傷性、帯電防止性のいずれにも優れ、色ムラの抑えられた反射防止積層フィルムを生産性よく提供することを目的とする。
請求項1に係る本発明は、透明支持体上にハードコート層、導電層、導電層よりも屈折率の低い低屈折率層がこの順に他の層を介さずに積層されており、該ハードコート層が、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを含む塗布液を前記透明基材上に塗布し紫外線または電子線を照射することにより形成され、かつ、前記導電層が、導電性粒子と、(RO)Si−(CH−Si(OR)(但し、式中Rはアルキル基を示し、nは整数(1≦n≦8)である)で示される有機珪素化合物またはその加水分解物を含むコーティング液を前記ハードコート層上に塗布し乾燥することにより形成され、かつ、前記低屈折率層が、RSi(OR)4−y(但し、式中Rはアルキル基を示し、yは0≦y≦を満たす整数である)で示される珪素アルコキシドの加水分解物と、R’’Si(OR)4−z(但し、式中R’’は末端にフルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)で示される珪素アルコキシドの加水分解物を含む塗布液を導電層上に塗布し、乾燥することにより形成されることを特徴とする反射防止積層フィルムを提供するものである。

請求項2に係る本発明は、前記ハードコート層の屈折率と導電層の屈折率との差が4%以内であり、前記ハードコート層の屈折率と透明支持体の屈折率との差が2%であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止積層フィルムを提供するものである。
屈折率調整剤である粒径1〜100nmの無機微粒子は、特に、Al23、TiO2、ATO、ITO、Sb25、SnO2、WO2、ZrO2のうち少なくとも1種類以上を含有するのが好ましい。
また、前記低屈折率層は、RySi(OR)4-y(但し、式中Rはアルキル基を示し、xは0≦y≦4を満たす整数である)(以下、化学式2と称する)で示される珪素アルコキシドの加水分解物を含むマトリックス樹脂を含有することが好ましい。
ここで、低屈折率層は、R’’zSi(OR)4-z(但し、式中R’’は末端にアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)(以下、化学式3と称する)で示される珪素アルコキシドの加水分解物をさらに含有することが好ましい。
前記低屈折率層は、n’d’=λ/4(但し、n’は反射防止層の屈折率、d’は反射防止層の膜厚、λは光の波長(nm)を示し、500≦λ≦600を満たす数である)(以下、式6と称する)を満たすことが好ましい。
また、本発明の表示媒体は、特に偏光板を備えるのが好ましい。
本発明によれば、透明性、表面硬度、耐擦傷性、帯電防止性のいずれにも優れ、色ムラの抑えられた反射防止積層フィルムを生産性よく提供することができる。
本発明の反射防止積層フィルムは、透明支持体、ハードコート層、導電層、及び反射防止層を有する例を用いて以下説明する。
例えば、図1に示すように、透明支持体1の上にハードコート層2、導電層3、反射防止層4がこれらの順に積層されて、反射防止積層フィルム5を構成する形態をとることができる。
本発明の反射防止積層フィルムは、透明支持体、導電層、ハードコート層、反射防止層がこれらの順に積層されていることが好ましい。
更に前記導電層は、化学式1で示される有機珪素化合物を含むマトリックス樹脂からなり、屈折率調整剤として粒径1〜100nmの無機微粒子を含有することも出来る。
マトリックス樹脂が上記の有機珪素化合物を含むことにより、前記導電層と、ハードコート層あるいは反射防止層との密着性がいずれも優れるので、層間で剥離を生じることなく、支持体と、ハードコート層と、導電層と、反射防止層とがこれらの順に積層された形態をとることができる。
本発明においては、上記のように、透明支持体と、ハードコート層と、導電層と、反射防止層とがこれらの順に積層されていることが好ましい。
このことにより、本発明の反射防止積層フィルムをディスプレイ等の物品に、支持体を物品側にして設置したり、ディスプレイを構成する基板をもって支持体に代えて用いる場合に、導電層が物品に対してハードコート層よりも外側に位置する形態をとることができ、効率よく帯電防止性を発現することができる。
また、前記導電層が帯電防止に機能するので、ハードコート層に導電剤等を添加する必要がなく、透明性を損なわずにハードコート層の厚みを任意に設定することができ、ハードコート層に由来する基材保護の機能、例えば表面硬度、耐擦傷性を良好に保持させることができる。
ここで有機珪素化合物は、化学式1で示されるものであればよい。例えば、ビス−トリメトキシシリル−エタン、ビス−トリメトキシシリル−メタン、ビス−トリメトキシシリル−ヘキサンなどが挙げられる。
更に前記マトリックス樹脂においては、化学式2で示される珪素アルコキシドの加水分解物を加えても、導電性、密着性、強度に差し支えはない。
前記無機微粒子は酸化物微粒子、電子導電性微粒子、イオン導電性微粒子などが挙げられる。酸化物微粒子は屈折率を調整するためのもので、例えば、Al23、TiO2、SnO2、ZrO2などである。電子導電性微粒子は、例えば、酸化アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)等が挙げられる。
イオン導電性微粒子は、例えば、五酸化アンチモンからなる微粒子(五酸化アンチモン微粒子)、酸化タングステン微粒子等が挙げられる。
導電層において、前記無機粒子としては、イオン導電性微粒子を用いることが好ましい。
イオン導電性微粒子は比較的低い密度の分布状態で導電性を示すことができるため、イオン導電性微粒子を用いることによって、導電層の透明性を非常に良好に維持しつつ、かつ導電層の膜厚を任意に制御して後述の式2を満たすようにさせながら、充分な導電性を発現させることができる。また、導電層におけるイオン導電性微粒子の含有量を、導電性が発現される範囲で任意に制御することができるので、導電層の屈折率を容易に制御することができ、導電層の屈折率をハードコート層の屈折率に近づけて、これらの層の間の光干渉を抑えることができる。したがって、色ムラをさらに安定して防止することができる。なお、導電層の屈折率は、例えば、導電層におけるイオン導電性微粒子の含有率が高いほど、導電層の屈折率は高くなることにより制御できる。
イオン導電性微粒子としては、五酸化アンチモン微粒子を用いることが好ましい。
五酸化アンチモンはイオン導電性の物質であり、なおかつ結晶水を有するため、酸化アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)等の電子導電性微粒子と比較して少ない配合量で導電性を発現すると共に、湿度環境による影響を受けにくい。したがって、反射防止積層フィルムに永久導電性を発現させることができる。
また、他の金属酸化物よりも比較的屈折率の低い材料である五酸化アンチモン微粒子(屈折率1.64)を用い、その含有量を制御することで、導電層の屈折率制御を広範囲に渡って特に精度よく行うことができ、導電層の屈折率をハードコート層の屈折率に近づけることが可能となる。すなわち、ハードコート層と導電層の間の光干渉を安定して抑制することができ、反射防止積層フィルムにおいて色ムラをさらに容易に防止することができる。
導電性微粒子の含有量は特に制限はないが、導電性の発現と導電層の屈折率調整の面から、導電性微粒子とマトリックス樹脂との合計100質量%に対して20〜80質量%の
範囲が好ましく、30〜70質量%の範囲が導電性と層の強度とのバランスの面でさらに好適である。また、導電性微粒子のマトリックス樹脂中における分散性を向上するために、マトリックス樹脂に分散剤を添加することができる。分散剤としては、特に制限はなく、シリコーン系の分散剤を用いることが好ましい。
本発明の反射防止積層フィルムにおいては、ハードコート層の屈折率と導電層の屈折率との差が4%以下である。
このことにより、層間の光干渉に起因する、反射防止積層フィルムの色ムラの発生を防止することができる。
更に前記導電層は、nd=λ/4(但し、nは導電層の屈折率、dは導電層の膜厚、λは光の波長(nm)を示し、500≦λ≦900を満たす数である)(式2)を満たす。例えば、図1に示す長さdが、d=λ/4n(但し、nは導電層の屈折率、dは導電層の膜厚、λは光の波長(nm)を示し、500≦λ≦900を満たす数である)を満たす。
前記導電層の膜厚が、式2を満たすことにより、反射防止積層フィルムの視感反射領域の分光反射率がフラットに近い反射率曲線を示すようにし、色味のない反射防止積層フィルムを提供することができる。特に、反射率曲線が、可視光の波長のうち広い波長領域に渡ってフラットであるから、製造段階で多少膜厚がばらついても色ムラが発生しにくく、真空蒸着法よりも膜厚の制御が難しい塗工法によっても、色味のない反射防止積層フィルムを安定して提供することが可能となる。すなわち、色味のない(色ムラのない)反射防止積層フィルムを、生産性よく製造することができる。
以上より、本発明によれば、反射防止積層フィルムの表面硬度、耐擦傷性、帯電防止性を良好に保持しつつ、即ち基材保護の機能と帯電防止性を保持しながら、色ムラを抑制することができる。
本発明の反射防止積層フィルムにおいて、前記透明支持体としては、種々の有機高分子からなるフィルムもしくはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナルタレート等)、セルロース系(トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等)、ポルアミド系(ナイロン−6、ナイロン−66等)、アクリル系(ポリメチルメタクリレート等)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。
さらにはこれらの有機高分子に公知の添加剤、たとえば、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加し、機能を付加させたものも使用できる。
また、前記透明支持体は、上記の有機高分子の1種からなるものでも、2種以上の混合物あるいは重合体からなるものでもよく、複数の層を積層させたものであってもよい。
また、透明支持体の厚みは反射防止積層フィルムを用いる用途によって適宜選択することができ、例えば、液晶ディスプレイ用途の場合は25〜300μmが好ましい。しかしこれに限定されるものではない。
また、透明支持体には、通常、表面保護層が設けられるが、該表面保護層と支持体との密着性を向上させる目的で、支持体の少なくとも一面に表面処理を施すことができる。この表面処理方法としては、例えばサンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などが挙げられる。
前記ハードコート層としては、前記透明支持体に積層されるものであって、このハードコート層は紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂、又はこれらの硬化物をバインダとして、これらに金属酸化物微粒子が分散されたものを用いることができる。
紫外線または電子線硬化型樹脂化合物としては、反射防止積層フィルムが設置される基材の表面改質を目的として、スチールウールラビング試験による耐擦傷性、鉛筆ひっかき試験による表面硬度、粘着テープ剥離試験による密着性、最小曲げ試験によるクラック性等の諸特性について、要求されるスペックを満足させるように樹脂を選択して使用することが出来る。この化合物は、光重合性プレポリマー、光重合性モノマー、光重合開始剤等を含有するものである。
前記光重合性プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のプレポリマーが挙げられる。これらの光重合性プレポリマーは1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
また、光重合性モノマーとしては、例えばポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記の光重合性のモノマーの屈折率は1.5前後であるが、屈折率が高い光重合性モノマーとして、さらに、フッ素原子以外のハロゲン原子、環状基、硫黄(S)、窒素(N)、リン(P)等の原子のいずれか1種または2種以上を含むものを例示することができる。環状基には芳香族基、複素環基および脂肪族環基が含まれる。屈折率が高い光重合性モノマーとしては、例えば、ビス(4−メタクリロイルチオフェノキシ)スルフィド、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、テトラブロモビスフェノールAジエポキシアクリレートなどが挙げられる。
ハードコート層において屈折率の高い光重合性モノマーを用いることにより、ハードコート層の屈折率と導電層の屈折率との差を容易に制御することができる。
特に本発明においては、前記ハードコート層は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体からなることが好ましい。(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体は表面硬度に優れるため好ましく、また重合体自体の屈折率が低いので、ハードコート層の屈折率と導電層の屈折率との差を容易に制御することができる。
ここで、主成分とするとは、前記ハードコート層を成す重合体を100質量%として、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーが10〜100質量%含まれることを示す。
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体は、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性の光重合性プレポリマー、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性の光重合性モノマーを重合させて得ることができる。このような光重合性プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート系、光重合性モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート等が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を光重合性プレポリマー、光重合性モノマーに混合して用いることができる。
ハードコート層においては、さらに金属酸化物微粒子を添加することができる。金属酸化物微粒子の種類は特に制限は無いが、例えばSiO2、TiO2、Al23、ZnO、Sb25、ZrO2等を用いることができる。
金属酸化物微粒子を添加することにより、ハードコート層の屈折率を制御することが可能となり、あわせて導電層との密着性およびハードコート層の硬度を向上させることができる。
ハードコート層において金属酸化物微粒子を用いる場合、金属酸化物微粒子の表面に表面処理を施して、バインダである有機化合物との親和性を高めることが好ましい。表面処理は、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理表面処理と、カップリング剤を使用する化学的表面処理に分類できる。化学的表面処理のみ、または物理的/化学的表面処理両方で実施することが好ましい。
カップリング剤としては、オルガノアルコキシメタル化合物であるシランカップリング剤やチタンカップリング剤などが好ましい。カップリング剤による表面処理には、触媒として無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸、クロム酸、次亜塩素酸、炭酸など)、有機酸(例、酢酸、ポリアクリル酸、ポリグルタミン酸など)を用いることが好ましい。
本発明において、ハードコート層および導電層には表面処理が施されていることが好ましい。
表面処理を施すことにより、各層の表面の表面張力を変化させることができるため、ハードコート層と導電層、導電層と反射防止層の密着性をそれぞれ向上させることができる。したがって、反射防止積層フィルムの表面硬度、耐擦傷性をさらに向上させることができる。また、各層の表面上の異物を低減させることができるため、外観において欠陥の無い反射防止積層フィルムを提供することができる。
表面処理法としては、例えば、アルカリ処理、プラズマ処理、レーザー処理、コロナ処理等を行うことができる。
ハードコート層の硬度は、反射防止積層フィルムに必要な耐擦傷性を備えるために、鉛筆硬度でH以上であることが好ましい。
前記反射防止層としては、その屈折率が、反射防止積層フィルムにおいて隣接する層の
屈折率よりも小さいものであればよく、従来の反射防止層において用いられている材料からなるものを用いることができる。
例えば、支持体、ハードコート層、導電層、反射防止層がこれらの順に積層されている場合は、反射防止層は、導電層よりも屈折率の低いものであればよい。また、支持体、導電層、ハードコート層、反射防止層がこれらの順に積層されている場合は、反射防止層はハードコート層よりも屈折率の低いものであればよい。
反射防止層としては、例えば、酸化珪素などの屈折率の低い金属酸化物微粒子を含む透明薄膜、フッ素化アクリル樹脂からなる透明薄膜等を用いることができる。特に、反射防止層が、化学式2で示される珪素アルコキシド、またはその加水分解物を含むマトリックス樹脂を含有するものが好ましい。このことにより、積層フィルムの強度をさらに向上させることができる。
反射防止層は、R’’Si(OR)4−z(但し、式中R’’は末端にフルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)(化学式3)で示される珪素アルコキシド、またはその加水分解物をさらに含有することが、反射防止積層フィルムの低反射率、および防汚性をさらに向上させるために好ましい。
化学式3で示される珪素アルコキシドとしては、例えば、オクタデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
前記反射防止層は、n’d’=λ/4(但し、n’は反射防止層の屈折率、d’は反射防止層の膜厚、λは光の波長(nm)を示し、500≦λ≦600を満たす数である)(式6)を満たすことが、さらに安定して色味のない反射防止積層フィルムを提供するために好ましい。
本発明の反射防止積層フィルムは、例えば、前記ハードコート層、前記導電層、前記反射防止層を成す材料の分散液を各々調製して、それぞれ第一の塗布液、第二の塗布液、第三の塗布液とし、前記支持体上に、第一、第二、第三の塗布液をこれらの順に塗工して製造することができる。
まず、前記支持体に第一の塗布液を塗工し、乾燥させてハードコート層を作製する。ついで、該ハードコート層に第二の塗布液を塗工し、乾燥させて導電層を作製する。その後、該導電層に第三の塗布液を塗工し、乾燥させて反射防止層を作製することで、反射防止積層フィルムが得られる。
ハードコート層形成用である第一の塗布液において、各成分の配合順序については特に制限はなく、各種溶媒中に、例えば金属酸化物微粒子と、紫外線または電子線硬化型樹脂化合物とを加えて混合することにより調製できる。
溶媒としては、特に限定することはないが、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類等を挙げることができる。
また、第一の塗布液には、所望により消泡剤やレベリング剤等の公知の添加剤を配合す
ることができる。
第一の塗布液の固形分濃度については特に制限はなく、塗工性、乾燥性、経済性等の面から10〜70質量%の範囲が好ましく、特に30〜50質量%の範囲が好適である。
第一の塗布液を前記支持体に塗工する塗工方法については、特に制限はなく、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法等を用いることができる。
ハードコート層の厚さは、第一の塗布液の固形分濃度および硬化後におけるハードコート層の密度を用いて、必要な第一の塗布液の塗工量を算出することにより、制御する事ができる。
また、乾燥後の塗工層に窒素パージした雰囲気下で紫外線および電子線を照射して硬化させ、酸素障害が少なく、表面硬度の高いハードコート層を形成しても良い。
硬化に用いる紫外線照射装置については、特に制限はなく、例えば高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、フュージョンランプ等を用いた公知の紫外線照射装置を使用することができる。紫外線照射量は、通常100〜800mJ/cm2程度である。電子線照射装置については特に制限はなく、加速電圧は通常50〜300kVである。
このようにして得られたハードコート層は、これを設置する基材との密着性、表面硬度、屈曲性、耐擦傷性、透明性に優れたものとなる。
導電層の形成方法としては、第二の塗布液を、上記第一の塗布液と同様の各種塗工方法により、硬化膜厚が式2を満たすように塗工し、乾燥処理を行うことができる。このとき、第二の塗布液における導電性微粒子の配合量を制御することによって、導電層の屈折率を容易に制御することができ、導電層とハードコート層の屈折率差を容易に制御することができる。
第二の塗布液において紫外線または電子線硬化型樹脂化合物を用いた場合は、乾燥後に、紫外線または電子線照射を行う。
反射防止層の形成方法としては、第三の塗布液を、上記第一の塗布液と同様の各種塗工方法により塗工し、乾燥処理を行うことができる。第三の塗布液において紫外線または電子線硬化型樹脂化合物を用いた場合は、紫外線または電子線照射を行う。
本発明の反射防止積層フィルムを偏光板に適用することができる。例えば、ディスプレイ用として通常用いられる偏光板に、上記第一、第二、第三の塗布液を塗工することにより、該偏光板をもって透明な支持体とした本発明の反射防止積層フィルム、及びそれを備えた偏光板などの表示媒体を作製することができる。このような偏光板は、透明性、表面硬度、耐擦傷性、帯電防止性のいずれにも優れたものとなる。
さらに、上記の偏光板を備えるディスプレイを構成することができる。このようなディスプレイの画像表示方式としては、特に限定されず、CRTディスプレイ、液晶(LCD)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ、プロジェクションディスプレイ等、いずれの方式のものであってもよい。
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によ
り限定されるものではない。
透明な支持体、ハードコート層、導電層、反射防止層がこれらの順に積層された反射防止積層フィルムを作製し、その性能を下記の方法に従って評価した。
(目視評価)
20W蛍光灯から20cmの距離で反射防止積層フィルムの反射防止層側に蛍光灯の光を入射し、色ムラおよび干渉ムラの目視評価を行った。なお、評価の際には、支持体のうち塗工の施されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置を行った。評価結果は、◎:色味なし、ニュートラルな色相、○:色味が僅かに認められる、×:色味が顕著に認められる、として示した。
(耐擦傷性)
スチールウール(#0000)を用い、250g荷重で反射防止積層フィルムの表面を10往復擦り、傷の有無を目視評価した。
(全光線透過率およびヘイズ値)
写像性測定器[日本電色工業(株)製、NDH−2000]を使用して測定した。
(鉛筆硬度)
JIS K5400に準拠し、試験機法により500g荷重で評価した。
(表面抵抗値)
JIS K6911に準拠して測定した。
(密着性の評価)
反射防止層と導電層との密着性を評価した。
導電層の表面を1mm角で100点カットした後、粘着テープ(ニチバン(株)製、工業用24mm巾セロテープ(登録商標))を用いて反射防止層側からの剥離試験を行い、100点カット部の残存率で評価した。100点全てが剥離せず導電層に残存したときを100/100とした。
(ハードコート層の形成)
透明な支持体として厚み80μm、波長550nmにおける屈折率1.49のトリアセチルセルロースフィルム(全光線透過率:93%、ヘイズ値:0.1%)を用いた。また、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびウレタンアクリレートを用いてハードコート層用の塗布液を調整した。
このハードコート層用塗布液を、乾燥膜厚5μmになるように支持体上に塗布し、120Wのメタルハライドランプを20cmの距離から10秒間照射することにより、ハードコート層を形成した。
ハードコート層の屈折率は波長550nmにおいて1.52であり、透明支持体との屈折率差は2%であった。
(表面処理)
上記のハードコート層を形成した支持体を、50℃に加熱した1.5N−NaOH水溶液に2分間浸漬しアルカリ処理を行い、水洗後、0.5質量%−H2SO4水溶液に室温で30秒間浸漬し中和させ、水洗、乾燥処理を行った。
(導電層の形成)
ビス−トリメトキシシリル−エタンからなる有機珪素化合物を原料とし、これを1mol/L塩酸により加水分解して、得られたオリゴマー(加水分解オリゴマー)からなる有機珪素化合物の加水分解物を得た。この加水分解物からなるマトリックス樹脂10質量部と、を90質量部のイソプロパノールで希釈して、導電層用のコーティング液を調整した。上記の表面処理を行ったハードコート層に乾燥膜厚が100nmになるようにこのコーティング液を塗布し、乾燥させて、導電層を形成させた。導電層の屈折率は波長550nmにおいて1.49であり、導電層とハードコート層との屈折率差は2%であった。
(反射防止層の形成)
テトラエトキシシランからなる、前記化学式4で示される珪素アルコキシドと、有機官能基としてパーフルオロオクタン基を有するトリメトキシシランからなる、前記化学式5で示される珪素アルコキシドとを原料とし、1mol/L塩酸により加水分解して得られたオリゴマー5質量部と、屈折率1.3のシリカ粒子5質量部とを、190質量部のイソプロパノールで希釈して反射防止層用のコーティング液を調製した。このコーティング液を、上記で得られた導電層に、乾燥膜厚が100nmになるように塗布し、乾燥させて反射防止層を作製した。反射防止層の屈折率は、波長550nmにおいて1.35であった。
以上により、透明な支持体、ハードコート層、導電層、及び反射防止層が、これらの順に積層された反射防止積層フィルム(以下、積層フィルムと称する)を得た。
実施例1(導電層の形成)において、実施例1と同様のビス−トリメトキシシリル−エタンの加水分解物からなるマトリックス樹脂を7質量部、酸化ジルコニウム微粒子を3質量部とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。
導電層の屈折率は波長550nmにおいて1.56であり、導電層とハードコート層との屈折率差は2.6%であった。
実施例1(導電層の形成)において、実施例1と同様のビス−トリメトキシシリル−エタンの加水分解物からなるマトリックス樹脂を5質量部、酸化ジルコニウム微粒子を5質量部とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。
導電層の屈折率は波長550nmにおいて1.54であり、導電層とハードコート層との屈折率差は1.3%であった。
<比較例1>
実施例1(導電層の形成)において、マトリックス樹脂として、テトラエトキシシランからなる珪素アルコキシドを10質量部とした以外は実施例1と同様にして反射防止積層フィルムを作成した。
導電層の屈折率は波長550nmにおいて1.44であり、導電層とハードコート層との屈折率差は5.3%であった。
<比較例2>
実施例1(導電層の形成)において、マトリックス樹脂として、ペンタエリスリトールトリアクリレートからなるアクリル系樹脂7質量部を用い、酸化ジルコニウム微粒子を3質量部とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。
導電層の屈折率は波長550nmにおいて1.62であり、ハードコート層との屈折率差は3.9%であった。
実施例1〜3、比較例1、2で得られた積層フィルムについて、目視評価、耐擦傷性、全光線透過率およびヘイズ値、鉛筆硬度、表面抵抗値、反射防止層と導電層との密着性の評価を行った結果を、表1に示す。ここで、屈折率差Aはハードコート層と導電層の屈折率差を示す。
表1から明らかなように、実施例では表面抵抗値が低く充分な導電性を示した。さらに、ヘイズ値が低く全光線透過率が高く、すなわち透明性が良好であり、耐擦傷性、鉛筆硬度、反射防止層と導電層との密着性の評価結果がいずれも良好であった。
導電層をテトラエトキシシランの組成とした比較例1においては、耐擦傷性と表面抵抗の性能低下が認められた。
導電層をアクリル系樹脂と酸化ジルコニウムの組成とした比較例2においては、耐擦傷性と表面抵抗及び目視評価の性能低下が認められた。
以上結果より明らかなように、実施例の積層フィルムでは、耐擦傷性、表面硬度などのハードコート性能は十分な性能を保ちつつも、密着性、導電性、高透明性を同時に発現することができた。さらに、導電層の膜厚が式2の範囲内であれば、全可視光線領域において発色を抑えた反射防止性を付与させることができるため、生産性の高い塗工方式によって、色ムラの容易に抑制された反射防止積層フィルムを提供することができた。
以下、表1を示す。
Figure 0004710269
本発明は、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイ等の各種表示媒体およびこれらに適用される反射防止積層フィルムに関する。
本願発明の実施例を示す断面図である。
符号の説明
1 支持体
2 ハードコート層
3 導電層
4 反射防止層
5 反射防止積層フィルム

Claims (2)

  1. 透明支持体上にハードコート層、導電層、導電層よりも屈折率の低い低屈折率層がこの順に他の層を介さずに積層されており、
    該ハードコート層が、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを含む塗布液を前記透明基材上に塗布し紫外線または電子線を照射することにより形成され、かつ、
    前記導電層が、導電性粒子と、(RO)Si−(CH−Si(OR)(但し、式中Rはアルキル基を示し、nは整数(1≦n≦8)である)で示される有機珪素化合物またはその加水分解物を含むコーティング液を前記ハードコート層上に塗布し乾燥することにより形成され、かつ、
    前記低屈折率層が、RSi(OR)4−y(但し、式中Rはアルキル基を示し、yは0≦y≦を満たす整数である)で示される珪素アルコキシドの加水分解物と、R’’Si(OR)4−z(但し、式中R’’は末端にフルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)で示される珪素アルコキシドの加水分解物を含む塗布液を導電層上に塗布し、乾燥することにより形成される
    ことを特徴とする反射防止積層フィルム。

  2. 前記ハードコート層の屈折率と導電層の屈折率との差が4%以内であり、前記ハードコート層の屈折率と透明支持体の屈折率との差が2%であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止積層フィルム。

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