以下、図面を参照して本発明の形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は自動制動制御装置の概略構成図、図2は自車両と制御対象との相対速及びラップ率とブレーキ介入距離との関係を示す3次元マップ、図3は自車両と制御対象との間に設定される各ブレーキ介入距離を示す説明図、図4は自動制御制動ルーチンを示すフローチャート、図5は第1の禁止判定サブルーチンを示すフローチャート、図6は第2の禁止判定サブルーチンを示すフローチャート、図7は自車速と禁止タイマとの関係を示すマップ、図8は終了判定サブルーチンを示すフローチャート、図9は終了判定サブルーチンにおける第1の終了判定サブルーチンを示すフローチャート、図10は終了判定サブルーチンにおける第2の終了判定サブルーチンを示すフローチャート、図11は終了判定サブルーチンにおける第3の終了判定サブルーチンを示すフローチャート、図12は終了判定サブルーチンにおける第4の終了判定サブルーチンを示すフローチャート、図13は拡大制動領域における減速度演算サブルーチンを示すフローチャート、図14は自車両と制御対象との相対速及び相対距離と目標減速度の基準値との関係を示す3次元マップ、図15(a)は目標減速度の基準値毎に設定される自車速と目標減速度との関係を示すマップであり(b)はアクセルペダル踏み込み量と目標減速度との関係を示すマップ、図16は自車速と減速度変化量との関係を示すマップ、図17は制動領域における減速度演算サブルーチンを示すフローチャート、図18は制動制御終了時における減速度演算サブルーチンを示すフローチャート、図19は制動制御終了時における減速度の推移の一例を示す説明図である。
図1において、符号1は自動車等の車両(自車両)を示し、この車両1には、障害物や先行車等の制御対象に衝突する可能性が高い時、ドライバのブレーキ操作とは独立した自動ブレーキの介入によって制動制御を行うことで、衝突時の被害を小さく抑えるための自動制動制御装置2が搭載されている。
この自動制動制御装置2は、ステレオカメラ3、ステレオ画像認識装置4、制動制御ユニット5等を有して主要部が構成されている。
ステレオカメラ3は、例えば、電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いた左右1組のCCDカメラで構成されている。これら1組のCCDカメラは、ぞれぞれ車室内の天井前方に一定の間隔を持って取り付けられ、車外の対象を異なる視点からステレオ撮像し、撮像した画像情報をステレオ画像認識装置4に出力する。
ステレオ画像認識装置4には、ステレオカメラ3から画像情報が入力されるとともに車速センサ6から自車速V等が入力される。これらの情報に基づき、ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3からの画像情報に基づいて自車両1前方の立体物データや白線データ等の前方情報を認識し、これら認識情報等に基づいて自車走行路を推定する。さらに、ステレオ画像認識装置4は、自車走行路上に障害物や先行車等の立体物が存在するか否かを調べ、存在する場合には、直近のものを制動制御の制御対象として認識する。
ここで、ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3からの画像情報の処理を、例えば以下のように行う。先ず、ステレオカメラ3で自車進行方向を撮像した1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から三角測量の原理によって距離情報を生成する。そして、この距離情報に対して周知のグルーピング処理を行い、グルーピング処理した距離情報を予め設定しておいた三次元的な道路形状データや立体物データ等と比較することにより、白線データ、道路に沿って存在するガードレール、縁石等の側壁データ、車両等の立体物データ等を抽出する。さらに、ステレオ画像認識装置4は、白線データや側壁データ等に基づいて自車走行路を推定し、自車走行路前方に存在する障害物や先行車等の立体物を制動制御の制御対象として抽出(検出)する。そして、制御対象を検出した場合には、その制御対象の情報として、自車両1と制御対象との相対距離d、制御対象の移動速度Vf(=(相対距離dの変化の割合)+自車速V))、制御対象の減速度af(=制御対象の移動速度Vfの微分値)等を演算する。このように、本実施形態において、ステレオ画像認識装置4は、ステレオカメラ3とともに、制御対象認識手段としての機能を実現する。
制動制御ユニット5には、ステレオ画像認識装置4で認識された制御対象等の各種制情報が入力される。また、制動制御ユニット5には、例えば、車速センサ6から自車速Vが入力されるとともに、舵角センサ7から操舵角δ、ヨーレートセンサ8からヨーレートγ、アクセルペダルセンサ9からアクセルペダル踏込み量APO、ブレーキペダルセンサ10からブレーキペダル踏込み量BPO等の各種情報が入力される。さらに、制動制御ユニット5には、図示しないエンジン制御ユニット(ECU)やトランスミッション制御ユニット(TCU)等から各種制御情報が入力される。
制動制御ユニット5は、ステレオ画像認識装置4で制御対象が認識されているとき、当該制御対象と自車両1との相対関係に基づいてブレーキ介入距離を設定する。具体的には、制動制御ユニット5は、ブレーキ介入距離として、例えば、制御対象を基準とする第1,第2のブレーキ介入距離D1,D2を設定する(図3参照)。
ここで、第1のブレーキ介入距離D1は、制御対象との衝突回避が制動によっても操舵によっても困難となる限界距離(衝突回避限界距離)であり、例えば、予め実験やシミュレーション等に基づいて設定されている。本実施形態において、この衝突回避限界距離は、例えば、自車両1と制御対象との相対速Vrelに応じて変化し、さらに、自車両1と制御対象との相対速Vrel及びラップ率Rlによって変化する。制動制御ユニット5には、例えば、図2に示すように、自車両1と制御対象との相対速Vrel及びラップ率Rlと第1のブレーキ介入距離D1との関係を示すマップが予め設定されて格納されており、制動制御ユニット5は、このマップを参照して第1のブレーキ介入距離D1を設定する。
また、第2のブレーキ介入距離D2は、第1のブレーキ介入距離D1よりも所定に長い距離に設定される。具体的には、第2のブレーキ介入距離D2は、例えば、予め実験やシミュレーション等に基づいて設定されるもので、相対速Vrelに応じた所定距離だけ衝突回避限界距離よりも自車両1側に延長された距離が設定されている。制動制御ユニット5には、例えば、図2に示すように、自車両1と制御対象との相対速Vrel及びラップ率Rlと第2のブレーキ介入距離D2との関係を示すマップが予め設定されて格納されており、制動制御ユニット5は、このマップを参照して第2のブレーキ介入距離D2を設定する。
そして、制動制御ユニット5は、相対距離dが第1のブレーキ介入距離D1以下となったとき、自動ブレーキの介入による制動制御(以下、本格制動制御ともいう)を実行する。この本格制動制御において、制動制御ユニット5は、例えば、制動制御により発生すべき減速度(目標減速度Gt)、及び、この目標減速度Gtを発生させる際に許容する減速度の変化量(減速度変化量ΔG1)として予め設定された固定値をそれぞれセットし、これらに基づいて減速度指示値Gを演算する。そして、制動制御ユニット5は、演算した減速度指示値Gを自動ブレーキ制御装置11に出力することにより、自動ブレーキを作動(介入)させる。
また、制動制御ユニット5は、相対距離dが第1のブレーキ介入距離D1よりも大きく且つ第2のブレーキ介入距離D2以下であるとき、本格制動制御に先立ち、自動ブレーキの介入による制動制御(以下、拡大制動制御ともいう)を実行する。この拡大制動制御において、制動制御ユニット5は、例えば、目標減速度Gt及び減速度変化量ΔG1をそれぞれ可変設定し、これらに基づいて減速度指示値Gを演算する。そして、制動制御ユニット5は、演算した減速度指示値Gを自動ブレーキ制御装置11に出力することにより、自動ブレーキを作動(介入)させる。
また、制動制御ユニット5には、実行中の制動制御(本格制動制御及び拡大制動制御)を終了するための複数の判定要件が予め設定されて格納されている。制動制御の実行中において、制動制御ユニット5は、これら各種判定要件に基づく制動制御の終了判定を行い、制動制御の終了を判定すると、制動制御で発生させた減速度を消滅させるべく、減速度指示値Gを「0」まで変化させるための減速度変化量ΔG2を設定する。この減速度変化量ΔG2は、制動制御の終了を判定したときの状況に応じて可変設定される。そして、制動制御ユニット5は、設定した減速度変化量ΔG2に基づいて減速度指示値Gを減少させる演算を行い、演算した減速度指示値Gを自動ブレーキ制御装置11に出力することにより、自動ブレーキの介入を終了させる。
また、制動制御ユニット5には、制動制御の実行を禁止するため、複数の判定要件が予め設定されて格納されている。制動制御の非作動(非実行)中において、制動制御ユニット5は、これらの各種判定要件に基づいて制動制御の禁止判定を行い、制動制御の禁止を判定すると、当該禁止判定が解除されるまでの間の自動ブレーキの作動を禁止する。
このように、本実施形態において、制動制御ユニット5は、ブレーキ介入距離設定手段、制動制御手段(第1,第2の制動制御手段)、終了制御手段、及び、制御禁止手段としての各機能を有する。
次に、制動制御ユニット5において実行される自動制動制御について、図4に示す自動制動制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、設定周期毎に繰り返し実行されるもので、ルーチンがスタートすると、制動制御ユニット5は、先ず、ステップS101において、現在、制動制御による自動ブレーキの介入中であるか否か、すなわち、本格制動制御或いは拡大制動制御における減速度指示値Gが「0」以上であるか否かを調べる。
そして、ステップS101において、自動ブレーキの介入中ではないと判定すると、制動制御ユニット5は、ステップS102に進み、本格制動制御及び拡大制動制御の実行に対する共通の禁止判定(第1の禁止判定)を行った後、ステップS103に進む。
第1の禁止判定は、例えば、図5に示す第1の禁止判定サブルーチンに従って実行され、このサブルーチンがスタートすると、制動制御ユニット5は、先ず、ステップS201において、ステレオカメラ3、ステレオ画像認識装置4、自動ブレーキ制御装置11、ECU、或いは、TCU等からの信号に基づいて、自車両1に何らかの故障が検出されているか否かを調べ、故障が検出されていると判定した場合には、ステップS204に進む。
一方、ステップS201において、故障が検出されていないと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS202に進み、自車両1の走行環境や走行状態等に係る基礎的な禁止要件が成立しているか否かを調べる。ここで、制動制御ユニット5は、基礎的な禁止要件として、例えば、制御対象との相対速Vrelが離れ方向に変化しているか否か、自車両1が坂路や狭路等に差し掛かっているか否か、自車速Vが設定車速以上の高速であるか否か等の各種要件を判定する。
そして、ステップS202において、少なくとも何れか1つの基礎的な禁止要件が成立していると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS204に進む。
一方、ステップS202において、基礎的な禁止要件の何れも成立していないと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS203に進み、ブレーキペダル踏み込み量BPOに基づいて、ドライバによるブレーキ操作が設定時間以上継続して行われているか否かを調べる。
そして、ステップS203において、ドライバによるブレーキ操作が設定時間以上継続して行われていると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS204に進む。
一方、ステップS203において、ドライバによるブレーキ操作が設定時間以上継続して行われていないと判定した場合、制動制御ユニット5は、そのまま、サブルーチンを抜ける。
ステップS201、ステップS202、或いは、ステップS203からステップS204に進むと、制動制御ユニット5は、本格制動制御及び拡大制動制御の実行を禁止するための第1の禁止フラグFb1をセットした後、サブルーチンを抜ける。
このように、本実施形態において、制動制御ユニット5は、ステレオカメラ3やステレオ画像認識装置4等の故障による制御対象の誤検知や、自動ブレーキ制御装置11の故障による異常作動が発生する虞がある場合等には、本格制動制御及び拡大制動制御の実行禁止を判定する。また、制動制御ユニット5は、相対速Vrelが離れ方向に変化している場合のように制御対象との衝突の可能性が極めて低いことが判断可能な場合、或いは、自車両1が坂路や狭路等に差し掛かった場合や設定車速以上での高速走行時等のように制動制御による高い減速度を発生させることが却って自車両1の安定的な走行を妨げる虞がある場合等には、本格制動制御及び拡大制動制御の実行禁止を判定する。さらに、制動制御ユニット5は、ドライバによるブレーキ操作が設定時間以上継続して行われている場合のようにドライバの十分な制動意思を確認でき、自動ブレーキを介入させることが却ってドライバに違和感を与える虞がある場合には、本格制動制御及び拡大制動制御の実行禁止を判定する。
図4のメインルーチンにおいて、ステップS102からステップS103に進むと、制動制御ユニット5は、拡大制動制御の実行のみに対する禁止判定(第2の禁止判定)を行った後、ステップS106に進む。
この第2の禁止判定は、例えば、図6に示す第2の禁止判定サブルーチンに従って実行され、このサブルーチンがスタートすると、制動制御ユニット5は、先ず、ステップS301において、ドライバによる操舵角|δ|が予め設定された閾値δ0以上であるか否かを調べる。ここで、閾値δ0には、ドライバの操舵によって自車両1の挙動を一時的に不安定にさせる虞のある操舵角が設定されている。
そして、ステップS301において、操舵角|δ|≧δ0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS302に進み、拡大制動制御の禁止時間を規定する禁止タイマtδをセットした後、ステップS304に進む。ここで、禁止タイマtδには、仮に、操舵角|δ|≧δ0の操舵によって自車両1の挙動が一時的に不安定となった場合にも、当該挙動を安定化させることが可能な必要時間が設定される。本実施形態において、制動制御ユニット5には、例えば、図7(a)に示すように、自車速Vと禁止タイマtδとの関係を示すマップが予め設定されて格納されており、制動制御ユニット5は、このマップを参照し、自車速Vが高くなるほど高値となるよう禁止タイマtδを可変設定する。
一方、ステップS301において、操舵角|δ|<δ0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS303に進み、禁止タイマtδをデクリメントした後、ステップS304に進む。
ステップS302或いはステップS303からステップS304に進むと、制動制御ユニット5は、ドライバによる操舵角速度|δ’|(=|dδ/dt|)が予め設定された閾値δ’0以上であるか否かを調べる。ここで、閾値δ’0は、ドライバの急操舵によって自車両1の挙動を一時的に不安定にさせることが想定され得る操舵角速度に設定されている。
そして、ステップS304において、操舵角速度|δ’|≧δ’0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS305に進み、拡大制動制御の禁止時間を規定する禁止タイマtδ’をセットした後、ステップS307に進む。ここで、禁止タイマtδ’には、仮に、操舵角速度|δ’|≧δ’0の急操舵によって自車両1の挙動が一時的に不安定となった場合にも、当該挙動を安定化させることが可能な必要時間が設定される。本実施形態において、制動制御ユニット5には、例えば、図7(b)に示すように、自車速Vと禁止タイマtδ’との関係を示すマップが予め設定されて格納されており、制動制御ユニット5は、このマップを参照し、自車速Vが高くなるほど高値となるよう禁止タイマtδ’を可変設定する。
一方、ステップS304において、操舵角速度|δ’|<δ’0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS306に進み、禁止タイマtδ’をデクリメントした後、ステップS307に進む。
ステップS305或いはステップS306からステップS307に進むと、制動制御ユニット5は、自車両1に作用するヨーレート|γ|が予め設定された閾値γ0以上であるか否かを調べる。ここで、閾値γ0は、自車両1の挙動を一時的に不安定にさせることが想定されるヨーレートに設定されている。
そして、ステップS307において、ヨーレート|γ|≧γ0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS308に進み、拡大制動制御の禁止時間を規定する禁止タイマtγをセットした後、ステップS310に進む。ここで、禁止タイマtγには、仮に、ヨーレートの発生によって自車両1の挙動が一時的に不安定となったと仮定した場合にも、当該挙動を安定化させることが可能な必要時間が設定される。本実施形態において、制動制御ユニット5には、例えば、図7(c)に示すように、自車速Vと禁止タイマtγとの関係を示すマップが予め設定されて格納されており。制動制御ユニット5は、このマップを参照し、自車速Vが高くなるほど高値となるよう禁止タイマtγを可変設定する。
一方、ステップS307において、ヨーレート|γ|<γ0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS309に進み、禁止タイマtγをデクリメントした後、ステップS310に進む。
ステップS308或いはステップS309からステップS310に進むと、制動制御ユニット5は、禁止タイマteをデクリメントした後、ステップS311に進む。この禁止タイマteは、前回の制動制御(本格制動制御或いは拡大制動制御)が終了してから再び拡大制動制御を実行するまでの禁止時間を示すタイマであり、例えば、後述するステップS4107において、予め設定された初期値が設定される。
そして、ステップS310からステップS311に進むと、制動制御ユニット5は、禁止タイマtδ、tδ’、tγ、teが正値であるか否かを調べ、禁止タイマのうちの少なくとも何れか1つが正値であると判定した場合、ステップS313に進む。
一方、ステップS311において、全ての禁止タイマが負値であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS312に進み、ブレーキ踏み込み量BPOに基づいて、ドライバによる強ブレーキ操作が行われたか否かを調べる。ここで、ステップS312で判定される強ブレーキとは、例えば、拡大制動制御において許容される最大減速度以上の減速度を発生させるブレーキ操作がドライバにより設定時間以上行われることをいう。このステップS312において、制動制御ユニット5は、強ブレーキ操作が行われていると判定した場合にはステップS313に進み、強ブレーキ操作が行われていないと判定した場合にはそのままサブルーチンを抜ける。
また、ステップS311或いはステップS312からステップS313に進むと、制動制御ユニット5は、第2の禁止フラグFb2をセットした後、サブルーチンを抜ける。
このように、本実施形態において、本格制動制御に対する予備的な制御である拡大制動制御に対しては、ドライバの旋回操作等に伴って自車両1の挙動が不安定となる虞がある場合について、禁止要件が加重される。また、拡大制動制御が繰り返し実行されることにより乗員に違和感を与える虞がある場合についても、禁止要件が加重される。更には、既にドライバが強ブレーキ操作による制動を行っており、拡大制動制御による制動が実効を伴わないにも拘わらず、拡大制動制御の実行に伴う警報が発せられる等してドライバに違和感を与える虞がある場合等についても、禁止要件が加重される。
図4のメインルーチンにおけるステップS101において、自動ブレーキの介入中であると判定すると、制動制御ユニット5は、ステップS104に進み、制動制御の終了判定を行った後、ステップS105に進む。
この終了判定は、例えば、図8に示す終了判定サブルーチンに従って実行され、このサブルーチンがスタートすると、制動制御ユニット5は、ステップS401〜ステップS404において、予め設定された第1〜第4の判定要件に基づく制動制御の終了判定を行う。
ステップS401における判定は、例えば、自車両1と制御対象との相対関係を主な判定要件(第1の判定要件)とする制動制御の終了判定であり、当該判定は、例えば、図9に示す第1の終了判定サブルーチン(サブサブルーチン)に従って実行される。このサブルーチンがスタートすると、制動制御ユニット5は、先ず、ステップS4101において、ステレオ画像認識装置4で制御対象をロストしているか否かを調べる。
そして、ステップS4101において、制御対象をロストしていないと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS4104に進む。
一方、ステップS4101において、制御対象をロストいると判定すると、制動制御ユニット5は、ステップS4102に進み、制御対象をロストしてから予め設定された保持時間以上が経過したか否かを調べる。
そして、ステップS4102において、制御対象をロストしてから保持時間以上が経過していないと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS4103に進み、前回の制御対象情報に基づいて新たな制御対象情報を演算した後、ステップS4104に進む。すなわち、制御対象をロスト後においても、保持時間内は制動制御の継続を可能とすべく、自車両1と制御対象との関係から求まるTTC(Time to collision)等に基づいて、仮想的な制御対象情報を演算する。
一方、ステップS4102において、制御対象をロストしてからの保持時間以上が経過していると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS4106に進む。
ステップS4101或いはステップS4103からステップS4104に進むと、制動制御ユニット5は、自車両1と制御対象との相対速Vrelが離れ方向に変化しているか否かを調べ、離れ方向に変化していると判定した場合には、ステップS4106に進む。
一方、ステップS4104において、相対速Vrelが離れ方向に変化していないと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS4105に進み、自車両1と制御対象との相対距離dが第2のブレーキ介入距離D2よりも大きいか否かを調べる。
そして、ステップS4105において、相対距離dが第2のブレーキ介入距離よりも大きいと判定した場合、制動制御ユニット5は、そのままサブルーチンを抜ける。
一方、ステップS4105において、相対距離dが第2のブレーキ介入距離D2以下であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS4106に進む。
ステップS4102、ステップS4104、或いは、ステップS4105からステップS4106に進むと、制動制御ユニット5は、第1の終了判定フラグFe1をセットし、続く、ステップS4107において、禁止タイマteをセットした後、サブルーチンを抜ける。
このように、ステップS410では、主として、相対速Vrelが離れ方向に変化している場合や、相対距離dが第2のブレーキ介入距離D2よりも大きくなった場合等のように、制御対象との衝突の可能性が回避された場合に、第1の終了判定フラグFe1がセットされる。
ステップS402における判定は、例えば、制御対象等に対するドライバの旋回操作等を主な判定要件(第2の判定要件)とする拡大制動制御の終了判定(キャンセル判定)であり、当該判定は、例えば、図10に示す第2の終了判定サブルーチン(サブサブルーチン)に従って実行される。このサブルーチンがスタートすると、制動制御ユニット5は、先ず、ステップS4201において、ドライバによる操舵角|δ|が予め設定された閾値δ0以上であるか否かを調べる。
そして、ステップS4201において、操舵角|δ|≧δ0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS4202に進み、図7(a)に示すマップを参照し、拡大制動制御の禁止時間を規定する禁止タイマtδをセットした後、ステップS4203に進む。
一方、ステップS4201において、操舵角|δ|<δ0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、そのまま、ステップS4203にジャンプする。
ステップS4201或いはステップS4202からステップS4203に進むと、制動制御ユニット5は、ドライバによる操舵角速度|δ’|が予め設定された閾値δ’0以上であるか否かを調べる。
そして、ステップS4203において、操舵角速度|δ’|≧δ’0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS4204に進み、図7(b)に示すマップを参照し、拡大制動制御の禁止時間を規定する禁止タイマtδ’をセットした後、ステップS4205に進む。
一方、ステップS4203において、操舵角速度|δ’|<δ’0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、そのまま、ステップS4205にジャンプする。
ステップS4203或いはステップS4204からステップS4205に進むと、制動制御ユニット5は、自車両1に作用するヨーレート|γ|が予め設定された閾値γ0以上であるか否かを調べる。
そして、ステップS4205において、ヨーレート|γ|≧γ0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS4206に進み、図7(c)に示すマップを参照し、拡大制動制御の禁止時間を規定する禁止タイマtγをセットした後、ステップS4207に進む。
一方、ステップS4205において、ヨーレート|γ|<γ0であると判定した場合、制動制御ユニット5は、そのまま、ステップS4207にジャンプする。
ステップS4205或いはステップS4206からステップS4207に進むと、制動制御ユニット5は、禁止タイマtδ、tδ’、tγが正値であるか否かを調べ、全ての禁止タイマが負値である場合には、そのままサブルーチンを抜ける。
一方、ステップS4207において、禁止タイマのうちの少なくとも何れか1つが正値である場合、制動制御ユニット5は、ステップS4208に進み、制御対象との相対距離dが第1のブレーキ介入距離D1よりも大きいか否かを調べる。
そして、ステップS4208において、相対距離d≦D1であると判定した場合、制動制御ユニット5は、そのまま、サブルーチンを抜ける。
一方、ステップS4208において、相対距離d>D1であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS4209に進み、第2の終了判定フラグFe2をセットした後、サブルーチンを抜ける。
ステップS403における判定は、例えば、自動制動制御系の故障を主な判定要件(第3の判定要件)とする制動制御に対する終了判定(キャンセル判定)であり、当該判定は、例えば、図11に示す第3の終了判定サブルーチン(サブサブルーチン)に従って実行される。このサブルーチンがスタートすると、制動制御ユニット5は、先ず、ステップS4301において、自動制動制御系の故障が検出されているか否かを調べる。すなわち、ステップS4301において、制動制御ユニット5は、自動制動制御系を構成する、ステレオカメラ3、ステレオ画像認識装置4、或いは、自動ブレーキ制御装置11等から何らかの故障信号が入力されているか否かを調べる。
そして、ステップS4301において、自動制動制御系から何ら故障信号が入力されていないと判定した場合、制動制御ユニット5は、そのままサブルーチンを抜ける。
一方、ステップS4301において、自動制動制御系から何らかの故障信号が入力されていると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS4302に進み、第3の終了判定フラグFe3をセットした後、サブルーチンを抜ける。
ステップS404における判定は、例えば、自動制動制御系以外の故障を主な判定要件(第4の判定要件)とする制御対象に対する終了判定(キャンセル判定)であり、当該判定は、例えば、図12に示す第4の終了判定サブルーチン(サブサブルーチン)に従って実行される。このサブルーチンがスタートすると、制動制御ユニット5は、先ず、ステップS4401において、自動制動制御系以外の故障が検出されているか否かを調べる。すなわち、ステップS4401において、制動制御ユニット5は、ECU、TCU等から何らかの故障信号が入力されているか否かを調べる。
そして、ステップS4401において、自動制動制御系以外の制御ユニット等から何ら故障信号が入力されていないと判定した場合、制動制御ユニット5は、そのままサブルーチンを抜ける。
一方、ステップS4401において、自動制動制御系以外の制御ユニット等から何らかの故障信号が入力されていると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS4402に進み、第4の終了判定フラグFe4をセットした後、サブルーチンを抜ける。
図4のメインルーチンにおいて、ステップS104からステップS105に進むと、制動制御ユニット5は、ステップS401〜S404で行った各終了判定の結果、制動制御の終了条件が成立しているか否か(すなわち、第1〜第4の終了判定フラグFe1〜Fe4の少なくとも何れか1つがセットされているか否か)を調べる。
そして、ステップS105において、終了条件が成立していると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS113に進む。
一方、ステップS105において、終了条件が成立していないと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS106に進む。
ステップS103或いはステップS105からステップS106に進むと、制動制御ユニット5は、本格制動制御及び拡大制動制御に共通の禁止条件である第1の禁止条件が成立しているか否か(すなわち、第1の禁止フラグFb1がセットされているか否か)を調べる。
そして、ステップS106において、第1の禁止条件が成立していると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS114にジャンプする。
一方、ステップS106において、第1の禁止条件が成立していないと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS107に進み、自車両1と制御対象との相対速Vrel及びラップ率Rlをパラメータとし、予め設定されたマップ(図2参照)に基づいて、第1,第2のブレーキ介入距離D1,D2を演算する。
そして、ステップS108に進むと、制動制御ユニット5は、自車両1と制御対象との相対距離dが第2のブレーキ介入距離D2以下であるか否かを調べる。
そして、ステップS108において、相対距離dが第2のブレーキ介入距離D2よりも大きいと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS114にジャンプする。
一方、ステップS108において、相対距離dが第2のブレーキ介入距離D2以下であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS109に進み、相対距離dが第1のブレーキ介入距離D1以下であるか否かを調べる。
そして、ステップS109において、相対距離dが第1のブレーキ介入距離D1以下であると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS112に進む。
一方、ステップS109において、相対距離dが第1のブレーキ介入距離D1よりも大きいと判定した場合、すなわち、相対距離dが第1のブレーキ介入距離D1と第2のブレーキ介入距離D2との間にあると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS110に進み、第2の禁止条件が成立しているか否か(すなわち、第2の禁止フラグFb2がセットされているか否か)を調べる。
そして、ステップS110において、第2の禁止条件が成立していると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS114にジャンプする。
一方、ステップS110において、第2の禁止条件が成立していないと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS111に進み、拡大制動制御における減速度指示値Gを演算した後、ステップS114に進む。
このステップS111における減速度指示値Gの演算は、例えば、図13に示す減速度演算サブルーチンに従って実行され、このサブルーチンがスタートすると、制動制御ユニット5は、先ず、ステップS501において、目標減速度の基準値G0を演算する。本実施形態において、この目標減速度の基準値G0は、自車両1と制御対象との相対速Vrel及び相対距離dに応じて可変設定されるもので、相対速Vrelが高くなるほど高く、且つ、相対距離dが大きくなるほど低くなるよう可変設定される。制動制御ユニット5には、例えば、図14に示すように、自車両1と制御対象との相対速Vrel及び相対距離dと目標減速度の基準値G0との関係を示すマップが予め設定されて格納されており、制動制御ユニット5は、このマップを参照して目標減速度の基準値G0を設定する。ここで、この目標減速度の基準値G0は、相対速Vrelのみ、或いは、相対距離dのみをパラメータとして可変設定することも可能であり、また、予め設定された固定値とすることも可能である。
ステップS501からステップS502に進むと、制動制御ユニット5は、目標減速度の基準値G0を補正することにより、目標減速度Gtを演算する。本実施形態において、制動制御ユニット5は、例えば、目標減速度基準値G0を、自車速V及びドライバによるアクセルペダルの踏み込み量APOに基づいて補正することにより目標減速度Gtを設定する。具体的には、例えば、図15(a),(b)に示すように、制動制御ユニット5には、目標減速度の基準値G0毎の自車速Vと目標減速度Gtとの関係を示す複数のマップが予め設定されて格納されているとともに、目標減速度の基準値G0毎のアクセルペダル踏み込み量APOと目標減速度Gtとの関係を示す複数のマップが予め設定されて格納されている。制動制御ユニット5は、これらの中から該当するマップを参照し、目標減速度の基準値G0を自車速Vで補正した値と、目標減速度の基準値G0をアクセルペダル踏み込み量APOで補正した値と、をそれぞれ演算する。そして、これらのうちの何れか小値を最終的な目標減速度Gtとして設定する。ここで、目標減速度の基準値G0を自車速Vのみ、或いは、アクセルペダル踏み込み量のみを用いて補正することで、最終的な目標減速度Gtを演算することも可能である。
ステップS502からステップS503に進むと、制動制御ユニット5は、減速度変化量ΔG1を演算する。本実施形態において、この減速度変化量ΔG1は自車速Vに応じて可変設定されるもので、自車速Vが高くなるほど小さな値に設定される。制動制御ユニット5には、例えば、図16に示すように、自車速Vと減速度変化量ΔG1との関係を示すマップが予め設定されて格納されており、制動制御ユニット5は、このマップを参照して減速度変化量ΔG1を設定する。
ステップS503からステップS504に進むと、制動制御ユニット5は、減速度指示値の前回値Gn-1に減速度変化量ΔG1を加算した値を新たな減速度指示値Gとして演算する(G=Gn-1+ΔG1)。
そして、ステップS505に進むと、制動制御ユニット5は、演算した減速度指示値Gが目標減速度Gtよりも大きいか否かを調べ、減速度指示値Gが目標減速度Gt以下であると判定した場合には、そのままサブルーチンを抜ける。
一方、ステップS505において、減速度指示値Gが目標減速度Gtよりも大きいと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS506に進み、減速度指示値Gを目標減速度Gtで制限するガード処理を行った後(G=Gt)、サブルーチンを抜ける。
図4のメインルーチンにおいて、ステップS109からステップS112に進むと、制動制御ユニット5は、本格制動制御時おける減速度指示値Gを演算した後、ステップS114に進む。
このステップS112における減速度指示値Gの演算は、例えば、図17に示す減速度演算サブルーチンに従って実行され、このサブルーチンがスタートすると、制動制御ユニット5は、先ず、ステップS601において、本格制動制御用に予め設定されている目標減速度Gt及び減速度変化量ΔG1をセットする。
ステップS601からステップS602に進むと、制動制御ユニット5は、減速度指示値の前回値Gn-1に減速度変化量ΔG1を加算した値を新たな減速度指示値Gとして演算する(G=Gn-1+ΔG1)。
そして、ステップS603に進むと、制動制御ユニット5は、演算した減速度指示値Gが目標減速度Gtよりも大きいか否かを調べ、減速度指示値Gが目標減速度Gt以下であると判定した場合には、そのままサブルーチンを抜ける。
一方、ステップS603において、減速度指示値Gが目標減速度Gtよりも大きいと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS604に進み、減速度指示値Gを目標減速度Gtで制限するガード処理を行った後(G=Gt)、サブルーチンを抜ける。
図4のメインルーチンにおいて、ステップS105からステップS113に進むと、制動制御ユニット5は、制動制御終了時における減速度指示値Gを演算した後、ステップS114に進む。
このステップSS113における減速度指示値Gの演算は、例えば、図18に示す減速度演算サブルーチンに従って実行され、このサブルーチンがスタートすると、制動制御ユニット5は、先ず、ステップS701において、第3の終了判定フラグFe3がセットされているか否かを調べる。
そして、ステップS701において、第3の終了判定フラグFe3がセットされていると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS702に進み、第3の終了判定フラグFe3に対応付けて予め設定された減速度変化量g3を減速度変化量ΔG2として設定した後、ステップS708に進む。
一方、ステップS701において、第3の終了判定フラグFe3がセットされていないと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS703に進み、第2の終了判定フラグFe2がセットされているか否かを調べる。
そして、ステップS703において、第2の終了判定フラグFe2がセットされていると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS704に進み、第2の終了判定フラグFe2に対応付けて予め設定された減速度変化量g2を減速度変化量ΔG2として設定した後、ステップS708に進む。
一方、ステップS703において、第2の終了判定フラグFe2がセットされていないと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS705に進み、第4の終了判定フラグFe4がセットされているか否かを調べる。
そして、ステップS705において、第4の終了判定フラグFe4がセットされていると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS706に進み、第4の終了判定フラグFe4に対応付けて予め設定された減速度変化量g4を減速度変化量ΔG2として設定した後、ステップS708に進む。
一方、ステップS705において、第4の終了判定フラグFe4がセットされていないと判定した場合、すなわち、第1の終了判定フラグFe1がセットされていると判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS707に進み、第1の終了判定フラグFe1に対応付けて予め設定された減速度変化量g1を減速度変化量ΔG2として設定した後、ステップS708に進む。
ここで、減速度変化量g1は、各減速度変化量g1〜g4の中で最も小さな値に設定されるもので、制動制御の終了時に急激な減速度変化の発生を防止して乗員への負担を軽減することが可能な値に設定されている。また、減速度変化量g2は、乗員への負担軽減することよりも、制動制御で発生させた減速度を速やかに消滅させてドライバによる旋回操作等との干渉を防止することを優先すべく、減速度変化量g1よりも所定に大きな値に設定されている。また、減速度変化量g3は、制動制御で発生させた減速度を即座に消滅させて(ステップ的に消滅させて)自動制動制御系の故障により不適切な制動制御が行われることを防止するため、各減速度変化量g1〜g4の中で最も大きな値に設定されるもので、例えば、g3=∞に設定されている。また、自動制動制御系以外の故障時にはドライバによる旋回操作時ほどは急を要さないものの可能な限り早期に減速度を消滅させることが好ましいとの思想のもと、減速度変化量g4は、減速度変化量g1よりは大きく且つ減速度変化量g2よりは小さな所定値に設定されている。なお、上述のステップS701〜ステップS70で示した手順からも明らかなように、第1〜第4の終了判定フラグFe1〜Fe4のうちの何れか2以上が同時にセットされている場合、対応する減速度変化量g1〜g4の中で最も大きな値が、減速度変化量ΔG2として優先適用される。
ステップS702、ステップS704、ステップS706、或いは、ステップS707からステップS708に進むと、制動制御ユニット5は、減速度指示値の前回値Gn-1から減速度変化量ΔG2を減算した値を新たな減速度指示値Gとして演算する(G=Gn-1−ΔG1)。
そして、ステップS709に進むと、制動制御ユニット5は、演算した減速度指示値Gが「0」よりも小さいか否かを調べ、減速度指示値Gが「0」以上であると判定した場合には、そのままサブルーチンを抜ける。
一方、ステップS709において、減速度指示値Gが「0」よりも小さいと判定した場合、制動制御ユニット5は、ステップS710に進み、減速度指示値Gを「0」で制限するガード処理を行った後(G=0)、サブルーチンを抜ける。
そして、図4のメインルーチンにおいて、ステップS106、ステップS108、ステップS110、ステップS111、ステップS112、或いは、ステップS113からステップS114に進むと、制動制御ユニット5は、各フラグがセットされている場合には、当該フラグをクリアした後、ルーチンを抜ける。
このような実施形態によれば、制御対象との相対距離dが第1のブレーキ介入距離D1よりも大きく且つ第2のブレーキ介入距離D2以下の領域で実行する拡大制動制御の目標減速度Gtを、自車速Vが高くなるほど低くなるよう可変設定することにより、ドライバの操舵等による回避操作が行われる可能性が十分に残存する拡大制動制御時に、車両挙動を不安定とさせ得る過剰な減速度を発生させることなく、適切な減速度による自動ブレーキの介入を行うことができる。すなわち、拡大制動制御時には制御対象との衝突を回避できる可能性が十分に残存しているため本格制動制御時ほど厳格に制動制御を実行させる必要がなく、特に、自車速Vが高い場合にはドライバにも操舵によって制御対象を回避する意思が十分にあることを推測できる。しかも、車両挙動を安定的に保つためにも、高速走行時に高い減速度を発生させることは好ましくない。そこで、拡大制動制御時には、自車速Vが高くなるほど目標減速度Gtを低く設定することにより、過剰な減速度を発生させることなく、的確な自動ブレーキの介入を実現することができる。
同様に、拡大制動制御の目標減速度Gtを、アクセルペダルの踏み込み量APOが大きくなるほど低くなるよう可変設定することにより、ドライバの意思を尊重した適切な減速度による自動ブレーキの介入を行うことができる。すなわち、アクセルペダルの踏み込み量APOが大きい場合には、ドライバに加速する意思が十分にあり、ドライバが制御対象に対する回避操作をおこなうことが推測できる。そこで、拡大制動制御時には、アクセルペダル踏み込み量APOが大きくなるほど目標減速度Gtを低く設定することにより、ドライバの意思に反して過剰な減速度を発生させることなく、的確な自動ブレーキの介入を実現することができる。
この場合において、自車速V或いはアクセルペダルの踏み込み量APOに基づいて目標減速度Gtを可変設定する際の基準値G0を、自車両1と制御対象との相対関係(相対距離d、相対速度Vrel)に基づいて可変設定することにより、自車両1及び制御対象の状態に応じたきめ細やかな目標減速度Gtを設定することができる。
また、拡大制動制御時に許容する減速度変化量ΔG1を自車速Vが高くなるほど小さくなるよう可変設定することにより、よりドライバのフィーリングに合致した自動ブレーキの介入を実現することができる。
また、第1,第2のブレーキ介入距離D1,D2を、自車両1と制御対象との相対速Vrelのみならず、ラップ率Rlによっても可変設定することにより、制動制御の実効タイミングを適正化することができる。この場合、ステレオカメラ3及びステレオ画像認識装置4を用いた制御対象の認識は、制御対象の大きさ等を精度よく検出することができるので、第1,第2のブレーキ介入距離D1,D2の設定に際し特に有効である。
また、制動制御の終了を判定した場合において、当該制動制御終了の判定要件に応じて、制動制御の終了処理時の減速度変化量ΔG2を異ならせることにより、制動制御の終了処理を適切に行うことができる。具体的には、制動制御ユニット5は、自車両1と制御対象との相対関係(相対速Vrelが離れ方向に変化しているか否か、相対距離dが第2のブレーキ介入距離D2よりも大きくなったか否か等)に基づいて制動制御の終了を判定する第1の判定要件と、ドライバの旋回操作の有無(操舵角|δ|、操舵角速度|δ’|、ヨーレート|γ|が閾値以上となったか否か等)に基づいて制動制御の終了を判定する第2の判定要件とを有し、第2の判定要件に基づく終了処理時の減速度変化量ΔG2を、第1の判定要件に基づく終了処理時の減速度変化量ΔG2よりも相対的に大きく設定することにより、第1の判定要件に基づく終了処理時には減速度の急激な変化を抑制して乗員等への負担を軽減するとともに、第2の判定要件に基づく終了処理時には制動制御で発生させた減速度を速やかに消滅させてドライバの操舵等による回避操作と制動制御との干渉を的確に防止することができる。
また、制動制御ユニット5は、自動制動制御系の故障の有無に基づいて制動制御の終了を判定する第3の判定要件を有し、第3の判定要件に基づく終了処理時の減速度変化量ΔG2を、第2の判定要件に基づく終了処理時の減速度変化量ΔG2よりも相対的に大きく(具体的には、最も大きな値(ΔG2=∞))に設定し、制動制御で発生させた減速度を即座に消滅させることにより、自動制動制御系の故障により不適切な制動制御が行われることを的確に防止することができる。
さらに、制動制御ユニット5は、自動制動制御系以外の故障の有無に基づいて制動制御の終了を判定する第4の判定要件を有し、第4の判定要件に基づく終了処理時の減速度変化量ΔG2を、第1の判定要件に基づく終了処理時の減速度変化量ΔG2よりも相対的に大きく且つ第2の判定要件に基づく終了処理時の減速度変化量ΔG2よりも相対的に小さく設定することにより、乗員等への負担を軽減しつつ、可能な限り早期に制動制御を終了させることができる。
また、制動制御が一旦終了した後は、設定時間(禁止時間)が経過するまでの間、拡大制動制御の実行を禁止することにより、自動制動制御の実行領域を衝突回避限界距離よりも自車両1側に拡大した場合にも(すなわち、本格制動制御に加えて拡大制動制御を設定した場合にも)、短時間内に不要な自動ブレーキの介入と解除とが繰り返し行われる等してドライバ等に違和感を与えたり車両挙動の不安定化を招く等の不具合を的確に抑制することができる。
この場合、特に、第2の判定要件に基づいて制動制御が終了した後の禁止時間を、自車速Vが高くなるほど長くなるよう可変設定し、ドライバの操舵等が行われることで不安定となった車両挙動が安定するまでの間の拡大制動制御の実行を禁止することにより、車両挙動の不安定化を助長する虞のあるタイミングでの拡大制動制御の実行をより的確に抑制することができる。
なお、上述の実施形態においては、制御対象の認識を、ステレオカメラ3からの画像に基づいて行う一例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、レーザレーダやミリ波レーダ等を用いて制御対象を認識することも可能である。