以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態について、図1~図5を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る車両走行制御システム10の構成図である。
図示のように、車両走行制御システム10は、外部センサ1と、内部センサ2と、ナビゲーションシステム3と、アクチュエータ4と、コントローラ20と、を備える。車両走行制御システム10は、本実施形態の車両走行制御方法を実行すべき対象となる車両(以下では、「自車両α」と称する)に搭載される。
外部センサ1は、自車両αの周辺情報である外部状況Iecを検出する検出機器である。特に、外部センサ1は、車載カメラ1a、及びレーダー1bを含む。
車載カメラ1aは、自車両αの外部状況Iecを撮像する撮像機器である。車載カメラ1aは、例えば、自車両αのフロントガラスの車室内側に設けられる。なお、車載カメラ1aは、単眼カメラ又はステレオカメラにより構成される。車載カメラ1aは、自車両αの外部状況Iecに関する撮像情報を外部状況Iecとしてコントローラ20へ出力する。
レーダー1bは、電波を利用して自車両αの外部の物体を検出する。電波は、例えばミリ波である。より詳細には、レーダー1bは、電波を自車両αの周囲に送信し、物体で反射された電波を受信して物体を検出する。レーダー1bは、例えば物体までの距離又は方向を物体情報として出力することができる。レーダー1bは、検出した物体情報を外部状況Iecとしてコントローラ20へ出力する。なお、レーダー1bに代えて、又はレーダー1bとともに、光を利用して自車両αの外部の物体を検出するライダー(LIDER:Laser Imaging Detection and Ranging)を外部センサ1として搭載しても良い。
内部センサ2は、自車両αの走行状態に応じた各種情報を検出する検出器である。特に、内部センサ2は、車速センサ2a、及び加速度センサ2bを含む。
車速センサ2aは、自車両αの車速(以下では、「自車両車速Vα」とも称する)を検出するセンサである。車速センサ2aは、例えば車輪速を計測するロータリエンコーダ等のパルス発生器で構成される。車速センサ2aは、検出した車輪速情報(自車両車速Vα)をコントローラ20に出力する。
加速度センサ2bは、自車両αの加速度(以下では、「自車両加速度Aα」とも称する)を検出する検出器である。加速度センサ2bは、自車両加速度Aαをコントローラ20へ出力する。
ナビゲーションシステム3は、自車両αのドライバ等の乗員によって地図上に設定された目的地までの案内を自車両αの乗員に対して行う装置である。ナビゲーションシステム3は、GPS(Global Positioning System)によって測定された自車両αの位置情報と図示しない地図データベースの地図情報とに基づいて、自車両αの走行するルートを算出する。ルートは、例えば複数車線の区間において自車両αが走行する走行車線La1を特定したルートでもよい。ナビゲーションシステム3は、例えば、自車両αの位置から目的地に至るまでの目標ルートを演算し、ディスプレイの表示及びスピーカの音声出力により目標ルート情報の報知を乗員に対して行う。ナビゲーションシステム3は、自車両αの位置情報、地図情報、及び目標ルート情報を含むナビゲーション情報Inaをコントローラ20へ出力する。
なお、ナビゲーションシステム3は、自車両αと通信可能な情報処理センターなどの車両外部の施設のコンピュータに記憶された情報を用いてもよい。例えば、ナビゲーションシステム3は、施設のコンピュータから通信を介して道路の混雑を示す渋滞情報を上記ナビゲーション情報Inaとして取得してもよい。また、ナビゲーションシステム3が実行する処理を、自車両αに搭載されるコンピュータと、車両外部のコンピュータと、で分散して実行する構成をとっても良い。
アクチュエータ4は、コントローラ20からの指令に基づいて自車両αの走行制御を実行する装置である。アクチュエータ4は、駆動アクチュエータ4a、ブレーキアクチュエータ4b、及びステアリングアクチュエータ4cを含む。
駆動アクチュエータ4aは、自車両αの駆動力を調節するための装置である。
特に、自車両αが走行駆動源としてのエンジンを搭載している内燃機関自動車である場合には、駆動アクチュエータ4aはエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を調節するスロットルアクチュエータなどで構成される。
一方、自車両αが走行駆動源としてのモータを搭載しているハイブリッド車両又は電気自動車である場合には、駆動アクチュエータ4aはモータに供給する電力を調節可能な回路(インバータ及びコンバータなど)などで構成される。
ブレーキアクチュエータ4bは、コントローラ20からの指令に応じてブレーキシステムを操作し、自車両αの車輪へ付与する制動力を調節する装置である。ブレーキアクチュエータ4bは、油圧ブレーキ又は回生ブレーキなどで構成される。
ステアリングアクチュエータ4cは、電動パワーステアリングシステムのうちステアリングトルクを制御するアシストモータなどで構成される。
コントローラ20は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータで構成される。なお、コントローラ20は、一つのコンピュータで構成しても良いし、複数のコンピュータで構成しても良い。
本実施形態のコントローラ20は、例えば自車両αに搭載されるECU(Engine Control Unit)などの装置により構成される。また、自車両αがいわゆる自動運転機能を搭載する車両である場合には、当該自度運転機能を実現するためのプロセスを実行する自動運転コントローラに、本実施形態のコントローラ20の機能を組み込んでも良い。
コントローラ20は、外部センサ1、内部センサ2、及びナビゲーションシステム3との間で各種信号を通信可能に構成される。特に、コントローラ20は外部センサ1から外部状況Iecを受信(取得)する。また、コントローラ20は内部センサ2から自車両車速Vαの検出値及び自車両加速度Aαの検出値を受信(取得)する。さらに、コントローラ20はナビゲーションシステム3からナビゲーション情報Inaを受信(取得)する。
そして、コントローラ20は、取得したこれら各検出値及び情報に基づいて、適宜アクチュエータ4を操作して本実施形態の車両走行制御方法(特に後述する車線変更制御)を実行するようにプログラムされている。
特に、本実施形態のコントローラ20は、自車両αが走行車線La1を走行している状態で、所定の車線変更の指令及び後述するリルート処理の完了を含む車線変更要求の検出をトリガとして車線変更制御を開始する。ここで、車線変更の指令としては、乗員等による図示しない車線変更の開始を指令する操作(例えば、方向指示器に対する操作)又は上位の自動運転コントローラからの指令などが挙げられる。
車線変更制御は、自車両αの低速走行時又は高速走行時のいずれのシーンであっても実行可能であるが、走行車線La1及び隣接車線La2の渋滞中などの自車両αの低速走行時への適用が特に好適である。以下、車線変更制御について詳細に説明する。
図2は、本実施形態の車線変更制御を示すフローチャートである。
ステップS110において、コントローラ20は、外部センサ1、内部センサ2、及びナビゲーションシステム3から上述の各検出値及び各情報を取得する。
ステップS120において、コントローラ20は、自車両αを並走位置P1に移動させる並走処理を実行する。
図3は、並走処理下における自車両αの走行軌跡の一例を模式的に示す図である。
図示のように、本実施形態の並走処理とは、自車両αを、走行車線La1における元の走行位置(以下、「通常走行位置P0」とも称する)から隣接車線La2により近い並走位置P1に移動させる処理である(一点鎖線参照)。ここで、並走位置P1は、隣接車線La2における前方車両βと後方車両γとの間の車間Xに対して横方向において並ぶ(対向する)走行車線La1上の位置として定められる。以下では並走処理における各ステップについて説明する。
図4は、並走処理を示すフローチャートである。
先ず、ステップS121において、コントローラ20は、車線変更の対象となる後方車両γ及び前方車両βを特定する。具体的に、コントローラ20は、隣接車線La2上において自車両αよりも後方であって且つ前後方向距離が最も小さい車両を車線変更にかかる対象車両(以下、「後方車両γ」とも称する)を特定する。さらに、コントローラ20は、隣接車線La2上において後方車両γに対して前方方向に隣接する車両(一台前の車両)を前方車両βとして特定する。
ステップS122において、コントローラ20は、後方車両γの車長方向の前端から自車両αの略中心位置までの間の距離の目標値(以下、「前後目標位置Lαγ」とも称する)を演算する。
具体的に、コントローラ20は、自車両αを通常走行位置P0から並走位置P1に移動させる観点から好適な前後目標位置Lαγを演算する。より詳細には、コントローラ20は、以下の式(1)に基づいて前後目標位置Lαγを演算する。
なお、式(1)中の「Lαγ_m」は、前後目標位置Lαγに設定される所定の下限値を意味する。また、「Dv/2」は、前方車両βと後方車両γの間の車間距離Dv(車間Xの走行方向長さ)の1/2の値であり、前後目標位置Lαγに設定される基本制御値である。すなわち、前後目標位置Lαγは、車間距離Dvの1/2と下限値Lαγ_mの内の大きい方の値に設定される。
式(1)にしたがい設定される前後目標位置Lαγは、車間距離Dvが小さいと、それに応じて前後目標位置Lαγが小さく設定され、自車両αと後方車両γの間の距離が近くなる。このため、後方車両γの乗員の目視及び後方車両γの前方に搭載されるカメラによって、自車両αによる車線変更のための方向指示器の表示が認識できない事態が生じることが想定される。
このような事態の発生を抑制すべく、前後目標位置Lαγに対して下限値Lαγ_mを設定する。
次に、ステップS123において、コントローラ20は、自車両αの略中心位置から隣接車線La2の間までの横方向における距離の目標値(以下、「目標横方向距離Dαγ」とも称する)を演算する。
具体的に、コントローラ20は、目標横方向距離Dαγを以下の式(2)に基づいて演算する。
なお、式中の「Dαγ_ba」は、適宜定められる目標横方向距離Dαγの基本制御値である。また、「Dαγ_c」は、自車両αと前方車両β又は後方車両γとの間で接触を避ける観点から安全上必要なマージンを考慮して設定される目標横方向距離Dαγの下限値である。すなわち、目標横方向距離Dαγは、基本制御値Dαγ_baと下限値Dαγ_cの内の大きい方の値に設定される。
なお、下限値Dαγ_cは、前方車両β及び後方車両γの位置検出の精度、並びに各車両の車速及び角速度などの運転状態などに基づいて安全上必要なマージンを確保する観点から適宜定めることができる。
そして、ステップS124において、コントローラ20は、設定した前後目標位置Lαγ及び目標横方向距離Dαγに基づいてアクチュエータ4を操作し、自車両αを並走位置P1に移動させて維持させる。
次のコントローラ20は、ステップS124の処理を実行すると、図2のステップS130の処理に移行する。
ステップS130において、コントローラ20はメイン判定モードを実行する。
図5は、メイン判定モードを示すフローチャートである。
先ず、ステップS131において、コントローラ20は、車間距離Dv、後方車両γの加速度(以下、「後方車両加速度Aγ」とも記載する)、及び車間距離増加量ΔDvを演算する。
具体的に、コントローラ20は、外部センサ1からの外部状況Iec(特にレーダー1bによる物体情報)に含まれる前方車両βの位置情報及び後方車両γの位置情報から車間距離Dvを演算する。
また、コントローラ20は、上述の前後目標位置Lαγ及び自車両加速度Aαから以下の式(3)に基づいて後方車両加速度Aγを演算する。
式(3)中の右辺第1項は、前後目標位置Lαγの時間による2階微分を意味する。なお、上記式(3)を基本として後方車両加速度Aγの演算を行いつつ、各センサの検出精度及びサンプリング周期の大きさに応じて生じる誤差を抑制するための補正を適宜行っても良い。
さらに、コントローラ20は、車間距離Dvの現在値から前回値を減算して車間距離増加量ΔDvとして演算する。したがって、車間距離Dvが増加傾向にある場合には車間距離増加量ΔDvは正の値をとる一方で、減少傾向にある場合には負の値をとる。
次に、コントローラ20は、ステップS132~ステップS134の各判定を行う。コントローラ20は、これら各判定の結果が全て肯定的である場合にはそのままメイン判定モードを終了してステップS150の処理に移行する。一方、コントローラ20は、これら各判定の内の何れかが否定的である場合には、ステップS135の処理に移行する。以下、各判定の詳細を説明する。
先ず、ステップS132において、コントローラ20は、演算した車間距離Dvが、所定の車間距離閾値Dv_Th1より大きいか否かを判定する。ここで、車間距離閾値Dv_Th1は、自車両αが進入できる程度に十分に広い車間Xが確保されているか否かという観点から定められる。特に、車間距離閾値Dv_Th1は、自車両αの全長及び安全の観点から設定されるマージンを考慮して適宜定められる。
そして、コントローラ20は、車間距離Dvが車間距離閾値Dv_Th1より大きいと判断すると、ステップS133の処理に移行する。
ステップS133において、コントローラ20は、車間距離増加量ΔDvが所定の車間増加量閾値ΔDv_Th1より大きいか否かを判定する。ここで、車間増加量閾値ΔDv_Th1は、自車両αの車間Xへの進入に支障が無い程度に車間距離Dvが増加する傾向にあるか否かという観点から定められる。
すなわち、車間増加量閾値ΔDv_Th1は、車間距離Dvが十分に大きくとも、前方車両βに対する後方車両γの相対車速が大きい場合などの車間Xが狭まる傾向がある場合には、これを検出して車線変更を中止させることを意図して設定されるものである。車間増加量閾値ΔDv_Th1は例えば0又は負の値に設定することができる。
ステップS134において、コントローラ20は、後方車両加速度Aγが第1後車加速度閾値Aγ_Th1以上であるか否かを判定する。ここで、第1後車加速度閾値Aγ_Th1は、後方車両γのドライバが方向指示器の表示などの自車両αの車線変更の意思表示を把握した上で、自車両αが車間Xに進入することを許容していると判断できる程度に後方車両加速度Aγが低いか否かという観点から設定される。
例えば、第1後車加速度閾値Aγ_Th1を0に設定することができる。これにより、後方車両加速度Aγが0以上と判断される場合(後方車両γが加速されている場合)を、自車両αによる車間Xへの進入を許容しない状態(譲る意思が無い状態)とみなすことができる。逆に、後方車両加速度Aγが0未満である場合(後方車両γが速度維持又は減速されている場合)を、自車両αによる車間Xへの進入を許容している状態(譲る意思がある状態)とみなすことができる。
結果として、本実施形態では、後方車両加速度Aγを参照することによって、後方車両γのドライバが自車両αによる車間Xへの進入を許容する意思があるか否かを速やかに判断することができる。
そして、コントローラ20は、後方車両加速度Aγが第1後車加速度閾値Aγ_Th1より小さいと判断すると(ステップS134のNo)、図2のステップS140の処理に進む。一方、コントローラ20は、後方車両加速度Aγが第1後車加速度閾値Aγ_Th1以上であると判断すると(ステップS134のYes)、ステップS135の処理に進む。
ステップS135において、コントローラ20は、車線変更制御を中止すべきことを示す中止フラグを「1」に設定する。コントローラ20は、ステップS135の処理を完了するとステップS140の処理に移行する。
図2に戻り、ステップS140において、コントローラ20は中止フラグが「0」であるか否かを判定する。コントローラ20は、中止フラグが「0」であると判断すると、ステップS150の処理に移行する。
ステップS150において、コントローラ20は、車線変更動作を実行する。具体的に、コントローラ20は、自車両α、前方車両β、及び後方車両γのそれぞれの位置情報及び車速情報などに基づき、自車両αを前方車両βと後方車両γの車間Xに進入させるための走行軌跡を演算する。そして、コントローラ20は、演算した走行軌跡に基づきアクチュエータ4を操作することで自車両αに対する駆動及び操舵を行う。
なお、コントローラ20により、自車両αを車間Xに進入させるための具体的な制御については、上記並走処理における前後目標位置Lαγ及び目標横方向距離Dαγの値を適宜変更して同様のロジックで実行することが可能である。
一方、コントローラ20は、上記ステップS140において中止フラグが「0」ではないと判断すると(すなわち、中止フラグが「1」に設定されていると判断すると)、ステップS160の処理に移行する。
ステップS160において、コントローラ20は、車線変更を中止する。具体的に、コントローラ20は、自車両αを通常走行位置P0(図3参照)に戻す復帰処理を行う。また、コントローラ20は、当該復帰処理の完了後又はこれと並行して、リルート処理を実行する。ここで、リルート処理とは、次に車線変更制御が可能となる機会を探索する処理である。
リルート処理において、コントローラ20は、ナビゲーション情報Inaなどを参照して、隣接車線La2を走行する上記前方車両β及び後方車両γの組み合わせ以外の2台の車両を対象車両として特定する。すなわち、例えば、コントローラ20は、前方車両βとさらにその前方を走行する車両、後方車両γとさらにその後方を走行する車両、又は他の2台の車両を車線変更の対象車両として特定する。そして、コントローラ20は、特定した2台の車両を新たな前方車両β及び後方車両γとみなして、図2で説明した各工程を同様に実行する。
以上説明した構成を有する本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、走行車線La1を走行する自車両αを隣接車線La2において走行する車両(前方車両β及び後方車両γ)の間に進入させる車線変更制御をコントローラ20が実行する車両走行制御方法が提供される。
この車両走行制御方法において、コントローラ20は、車線変更制御を開始すると、走行車線La1の並走位置P1において自車両αを隣接車線La2の車間Xに並走させる(図2のステップS120及び図4)。そして、コントローラ20は、自車両αの並走中に上記車両の内の後方車両γの加速度である後方車両加速度Aγが所定の第1後車加速度閾値Aγ_Th1以上であると判断すると(図5のステップS134のYes)に、車線変更制御を中止する(図5のステップS135、図2のステップS140のNo、及びステップS160)。
これにより、コントローラ20が、後方車両加速度Aγを参照することによって、後方車両γが自車両αの車線変更動作、すなわち、自車両αによる車間Xへの進入に対する後方車両γの許容の意思の有無を好適に判断することができ、当該判断に応じて自車両αに対する車線変更制御を速やかに中止させることができる(図2のステップS160)。すなわち、後方車両加速度Aγに基づいて、自車両αの車線変更動作に対する後方車両γのドライバ等の拒否の意思を速やかに察知して車線変更制御を中止することができる。
したがって、車線変更のために必要なスペースが空かない状態で自車両αが並走位置P1において待機し続けることに起因する車線変更制御の中止判断の遅れの発生が抑制される。特に、このような速やかな車線変更制御の中止判断が実現されることで、次の適切な車線変更制御のタイミングを探索する機会を好適に確保することができる。結果として、所望の地点(自車両αに対する左折、右折、又は直進などの希望に応じて車線変更動作が完了していることが求められる場所)までに車線変更を完了させることができないという事態の発生も抑制することができる。
なお、本実施形態では、車線変更制御を中止すべきか否かの後方車両加速度Aγの基準である第1後車加速度閾値Aγ_Th1を0に設定している。これにより、その大きさにかかわらず後方車両γの加速を検出された時点で車線変更制御が中止されることとなる。
結果として、後方車両γが加速した結果として生じる自車両αの進入先の車間X(車間距離Dv)の減少、又は車間距離Dvの変化の傾向を示す車間距離増加量ΔDvの低下を監視して実行する車線変更制御の中止判断と比べて、当該中止判断をより迅速に実行することができる。なお、第1後車加速度閾値Aγ_Th1は、後方車両γが自車両αの車線変更動作を許容しているか否かの判断基準として機能を果たす限りにおいて、適宜0以外の値(0を超える値か未満の値)に設定しても良い。
さらに、本実施形態の車両走行制御方法において、コントローラ20は、車線変更制御を中止すると、再度の車線変更制御の実行が可能となる機会を探索する(リルート処理)。
これにより、上述した速やかな車線変更制御の中止に引き続きリルート処理が実行されるので、次に車線変更制御が可能となる状況が発見される可能性をより高めることができる。結果として、自車両αの車線変更動作が完了していることが求められる所望の地点(交差点など)までに、当該車線変更動作が完了しないという状況の発生を好適に抑制することができる。
また、本実施形態によれば、上記車両走行制御方法を実行するための車両走行制御システム10が提供される。
車両走行制御システム10は、走行車線La1を走行する自車両αを隣接車線La2において走行する車両(前方車両β及び後方車両γ)の車間Xに進入させる車線変更制御をコントローラが実行する。
車両走行制御システム10は、上記車両のそれぞれの位置を検出する外部センサ1と、自車両αの車速(自車両車速Vα)及び加速度(自車両加速度Aα)を検出する内部センサ2と、自車両αの駆動及び操舵を行うアクチュエータ4と、内部センサ2及び外部センサ1による各検出値に基づいてアクチュエータ4を操作するコントローラ20と、を有する。
そして、コントローラ20は、車線変更要求を受けると、車線変更制御(図2)を開始し、車線変更制御を開始すると走行車線La1において自車両αを隣接車線La2の車間Xに並走させる(図2及び図3のステップ120)。また、コントローラ20は、自車両αの並走中に、前方車両β及び後方車両γの位置情報並びに自車両車速Vα及び自車両加速度Aαを外部センサ1及び内部センサ2からそれぞれ取得する。さらに、コントローラ20は、前方車両β及び後方車両γの位置情報並びに自車両車速Vα及び自車両加速度Aαに基づいて、後方車両γの加速度である後方車両加速度Aγを演算する(図5のステップS131)。そして、コントローラ20は、後方車両加速度Aγが所定の第1後車加速度閾値Aγ_Th1以上であるか否かを判定し(ステップS134)、該判定の結果が肯定的である場合に、車線変更制御を中止する(図5のステップS135、図2のステップS140のNo、及びステップS160)。
これにより、上記車両走行制御方法を実行するための好適なシステム構成が実現される。
(第2実施形態)
以下、図6を参照して第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、特に、第1実施形態におけるステップS134(図5)の判定で用いる第1後車加速度閾値Aγ_Th1の演算にあたり、前方車両βの加速度(以下、「前方車両加速度Aβ」とも称する)が考慮される点で第1実施形態と異なる。
図6は、本実施形態の車両走行制御方法におけるメイン判定モードを示すフローチャートである。
本実施形態では、コントローラ20は、第1実施形態で説明したステップS131における車間距離Dv、後方車両加速度Aγ、及び車間距離増加量ΔDvの演算を経てステップS131’の処理に移行する。
ステップS131’において、コントローラ20は、前後目標位置Lαγ(上記式(1)を参照)、車間距離Dv、及び自車両加速度Aαから以下の式(4)に基づいて前方車両加速度Aβを演算する。
ステップS131’’において、コントローラ20は、前方車両加速度Aβに基づいて補正後第1後車加速度閾値Aγ_Th1(Aβ)を演算する。具体的に、コントローラ20は、第1実施形態と同様に基本となる第1後車加速度閾値Aγ_Th1を定めつつ、前方車両加速度Aβが大きいほど当該第1後車加速度閾値Aγ_Th1が大きくなるように補正した値を補正後第1後車加速度閾値Aγ_Th1(Aβ)として演算する。
このような補正後第1後車加速度閾値Aγ_Th1(Aβ)を設定する技術的意義は、以下に説明する2つのシーンにおいても、後方車両γが自車両αの車線変更動作を許容しているか否かの判定の精度を好適に発揮させることにある。
第1に、前方車両加速度Aβが正の値である場合には、図5のステップS134における判定で後方車両加速度Aγが上記第1後車加速度閾値Aγ_Th1以上と判断されても、後方車両γが必ずしも自車両αの車線変更動作を拒否する意思であるとは限らないシーンが想定される。
より詳細には、前方車両βが加速している場合、過剰に車間Xを広げないようにする観点から、後方車両γが加速することがある。この場合、実際には後方車両γは自車両αの車線変更動作を許容する意思でありながも、後方車両加速度Aγが第1後車加速度閾値Aγ_Th1以上であると判断されることが想定される。
特に、後方車両γのドライバは、自車両αの車線変更動作の意図(方向指示器の表示など)を認識した場合において、前方車両βの加速に起因して車間Xが当該車間変更動作において要求される以上に広がると判断することが考えられる。そして、このような場合、後方車両γは車間Xが広がり過ぎないようにする観点から一定程度の加速は行うものの、自車両αの車線変更動作のために必要な車間距離Dvは確保するように後方車両加速度Aγを調節することが想定される。
第2に、前方車両加速度Aβが負の値である場合には、図5のステップS134における判定で後方車両加速度Aγが上記第1後車加速度閾値Aγ_Th1より小さいと判断されても、後方車両γが必ずしも自車両αの車線変更動作を許容する意思であるとは限らないシーンが想定される。
より詳細には、前方車両βとそのさらに前方の車両との間隔が狭いなどの理由で前方車両βが減速している場合、後方車両γがこれを認識して車間Xが狭くなりすぎないように、後方車両加速度Aγを維持するか又は減少させるように走行することが考えられる。
この場合、実際には後方車両γは自車両αの車線変更動作に対して拒否する意思を有していながらも、後方車両加速度Aγの低下の検出(すなわち、後方車両加速度Aγが上記第1後車加速度閾値Aγ_Th1より小さいという判断)がなされることが考えられる。
本実施形態の車両走行制御方法では、このようなシーンにおいても、後方車両γが自車両αの車線変更動作を許容しているか否かの判定を好適に実行する観点から、第1後車加速度閾値Aγ_Th1を前方車両加速度Aβに応じた補正した補正後第1後車加速度閾値Aγ_Th1(Aβ)が演算される。
そして、コントローラ20は、第1実施形態と同様にステップS132及びステップS133の判定における肯定的結果を経てステップS134’の判定に移行する。
ステップS134’において、コントローラ20は、第1実施形態の第1後車加速度閾値Aγ_Th1に代え、ステップS131’’で演算した補正後第1後車加速度閾値Aγ_Th1(Aβ)と後方車両加速度Aγの大小関係の判定を行う。
そして、コントローラ20は、後方車両加速度Aγが補正後第1後車加速度閾値Aγ_Th1(Aβ)以上である場合にはステップS135を経由して、そうでない場合には直接図2のステップS140以降の処理を実行する。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両走行制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両走行制御方法では、コントローラ20は、上記車両の内の前方車両βの加速度としての前方車両加速度Aβが大きいほど第1後車加速度閾値Aγ_Th1が大きくなるように補正する(図6のステップS131’’)。
すなわち、自車両αの車線変更に係る進入が後方車両γにより許容されているか否かの判定に用いる第1後車加速度閾値Aγ_Th1を定める要素に、前方車両加速度Aβが含まれることとなる。特に、上述の前方車両βの加速と減速に起因する後方車両加速度Aγの増加と減少(維持も含む)を加味して、第1後車加速度閾値Aγ_Th1を設定することができる。
したがって、後方車両γの自車両αの車線変更動作に対する許容の意思の有無にかかわらず発生し得る後方車両加速度Aγの変化も考慮された、より高精度の判定を実現することができる。結果として、後方車両γの自車両αの車線変更動作に対する許容の意思の有無の判定、及び当該許容の意思が無いと判断された結果に紐付く車線変更制御の中止判断をより高精度に実行することができる。
(第3実施形態)
以下、図7を参照して第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、自車両αの車線変更動作が後方車両γにより許容されているか否かの判定のための要素として、前方車両加速度Aβを用いる車両走行制御方法において、第2実施形態とは異なる態様が採用される。
図7は、本実施形態の車両走行制御方法におけるメイン判定モードを示すフローチャートである。なお、図面の簡略化のため、第2実施形態にかかる図6と重複するステップ(ステップS130、ステップS131、ステップS131’及びステップS131’’)の図示を省略する。
本実施形態においてコントローラ20は、先ず、図示を省略した第2実施形態と同様に、ステップS131、ステップS131’及びステップS131’’の各処理を行う。そして、コントローラ20は、ステップS132及びステップS133の判定における肯定的結果を経て、ステップS1341の判定に移行する。
そして、ステップS1341において、コントローラ20は、前方車両加速度Aβが所定の第1前車加速度閾値Aβ_Th1以上であるか否かを判定する。
ここで、第1前車加速度閾値Aβ_Th1は、車間Xが広がり過ぎないように後方車両γが加速することを促す程度に前方車両加速度Aβの値が大きいか否かを判定する観点から好適な値に設定される。特に、第1前車加速度閾値Aβ_Th1は正の値に設定される。
コントローラ20は、前方車両加速度Aβが第1前車加速度閾値Aβ_Th1以上であると判断すると、第2実施形態において説明したステップS134’の判定に移行する。なお、ステップS134’以降の処理については、第2実施形態と同様である。
一方、コントローラ20は、上記ステップS1341の判定において、前方車両加速度Aβが第1前車加速度閾値Aβ_Th1以上ではないと判断すると、ステップS1342の処理に移行する。
ステップS1342において、コントローラ20は、前方車両加速度Aβが所定の第2前車加速度閾値Aβ_Th2未満であるか否かを判定する。
ここで、第2前車加速度閾値Aβ_Th2は、車間Xが狭まり過ぎないように後方車両γが後方車両加速度Aγを維持又は低下させる程度に前方車両加速度Aβの値が小さいか否かを判定する観点から好適な値に設定される。特に、第2前車加速度閾値Aβ_Th2は負の値に設定される。
コントローラ20は、前方車両加速度Aβが第2前車加速度閾値Aβ_Th2未満であると判断すると、ステップS134’の判定に移行して、以降の処理を実行する。
一方、前方車両加速度Aβが第2前車加速度閾値Aβ_Th未満ではないと判断すると、第1実施形態において説明したステップS134の判定に移行する。なお、ステップS134以降の処理については、第1実施形態と同様である。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両走行制御方法によれば、第2実施形態と同様に、自車両αの車線変更動作が後方車両γにより許容されているか否かの判定の要素として、前方車両加速度Aβを用いることができる。
これにより、第2実施形態と同様に、前方車両βが加速していて、後方車両γが自車両αの車線変更動作を許容するか否かにかかわらず一定程度加速するシーンにおいても、後方車両γが自車両αの進入を許容するか否かをより高精度に判断することができる。
(第4実施形態)
以下、図8を参照して第4実施形態について説明する。なお、第1~第3実施形態のいずれかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施形態は、車線変更制御の中止判断を行うための判定として、第1実施形態における後方車両加速度Aγに基づく自車両αの車線変更動作が後方車両γにより許容されているか否かの判定に加え、前方車両加速度Aβに基づいて車線変更のための車間Xが確保されているか否かという観点からの判定を実行する。
図8は、本実施形態のメイン判定モードを示すフローチャートである。
本実施形態においてコントローラ20は、先ず、第1実施形態と同様に、ステップS131及びステップS131’の各処理を行う。さらに、コントローラ20は、ステップS132及びステップS133の判定における肯定的結果、並びにステップS134の判定における否定的判定結果(後方車両加速度Aγが第1後車加速度閾値Aγ_Th1未満であるという判断)を経て、ステップS1342の判定に移行する。
ステップS1342において、コントローラ20は、前方車両加速度Aβが第2前車加速度閾値Aβ_Th2未満であるか否かを判定する。なお、第2前車加速度閾値Aβ_Th2は、第3実施形態と同様に、車間Xが狭まり過ぎないように後方車両γが後方車両加速度Aγを維持又は低下させる程度に前方車両加速度Aβの値が小さいか否かを判定する観点から設定される値である。
そして、コントローラ20は、前方車両加速度Aβが第2前車加速度閾値Aβ_Th2未満ではないと判断すると、ステップS135に移行して中止フラグを「1」にセットし、第1実施形態と同様にステップS140(図2参照)以降の処理を実行する。すなわち、ステップS160における車線変更制御の中止に至る。
一方、コントローラ20は、前方車両加速度Aβが第2前車加速度閾値Aβ_Th2未満であると判断すると、ステップS1343の処理に移行する。
ステップS1343において、コントローラ20は、前方車両加速度Aβが第2前車加速度閾値Aβ_Th2未満である状態が所定時間Δtの間継続しているか否かを判定する。
コントローラ20は、ステップS1343の判定結果が肯定的であると判断すると、ステップS135に移行して中止フラグを「1」にセットし、第1実施形態と同様にステップS140(図2参照)以降の処理を実行する。すなわち、ステップS160における車線変更制御の中止に至る。
すなわち、本実施形態では、ステップS1343の判定結果が肯定的である場合には、自車両αの車線変更動作を妨げる程度に車間Xが狭まる可能性があると推定し、車線変更制御を中止する。
一方、コントローラ20は、ステップS1343の判定結果が否定的であると判断すると、そのまま、ステップS140の処理に移行する。
すなわち、前方車両加速度Aβが第2前車加速度閾値Aβ_Th2未満である時間が所定時間Δtより短い場合には、当該前方車両加速度Aβの減少は自車両αの車線変更動作に支障を与えるほどに車間Xを狭まるものではないと推定し、車線変更制御を継続する。
なお、ステップS1343の判定結果が否定的であると判断した場合に、再度、車間距離Dv(ステップS132の判定)及び車間距離増加量ΔDvに係る判定(ステップS133の判定)を経て、これら両判定の結果が肯定的である場合に、ステップS140の処理に移行するようにしても良い。これにより、ステップS1343の判定において所定時間Δtが経過する間に、前方車両加速度Aβの変化以外の他の要因によって車間距離Dv又は車間距離増加量ΔDvが変化した場合であっても、これが自車両αの車線変更動作を妨げる程度であるか否かを再度確認することができるので、車線変更制御の安全性をより向上させることができる。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両走行制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両走行制御方法では、コントローラ20は、前方車両加速度Aβが所定の前車加速度閾値である第2前車加速度閾値Aβ_Th2未満であるか否かを判定する(ステップS1342)。
そして、コントローラ20は、前方車両加速度Aβが第2前車加速度閾値Aβ_Th2未満である状態が所定時間Δtの間継続すると(ステップS1342のYes及びステップS1343のYes)、車線変更制御を中止する(ステップS135、図2のステップS140のNo、及びステップS160)。
これにより、前方車両βの減速によって自車両αの車線変更動作を妨げる程度に車間Xが狭まると予測されるシーンにおいて、好適に車線変更制御を中止することができる。結果として、車線変更制御の中止判断の精度をより向上させることができる。
なお、本実施形態におけるステップS1343では、前方車両加速度Aβが第2前車加速度閾値Aβ_Th2未満である状態が所定時間Δtの間継続しているか否かが判定された。しかしながら、この判定の態様に代えて又はこれとともに、自車両αの並走位置P1における走行距離が所定の距離となるまで当該状態が継続しているか否かが判定される態様を採用しても良い。
(第5実施形態)
以下、第5実施形態について図9~図11を参照して説明する。なお、第1~第4実施形態のいずれかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態の車両走行制御方法では、特に、第1実施形態の構成を基本としつつも、上記メイン判定モードにおいて車線変更制御を中止すべき旨の判断がされない場合において、さらにサブ判定モードが実行される。
図9は、本実施形態による車線変更制御の全体を示すフローチャートである。図示のように、本実施形態においても、コントローラ20は、第1実施形態の図2及び図4の例と同様に、ステップS110~ステップS140の処理を実行する。
そして、本実施形態のコントローラ20は、ステップS140の判定結果が肯定的である場合、すなわち、メイン判定モードを経ても中止フラグが「0」に設定される場合に、ステップS170におけるサブ判定モードに移行する。
図10は、サブ判定モードを示すフローチャートである。
図示のように、ステップS171において、コントローラ20は、自車両αを次並走位置P2へ移動させる処理(以下、「次並走位置移動処理」とも称する)を行う。
図11は、次並走位置移動処理下における自車両αの走行軌跡の一例を模式的に示した図である。図示のように、次並走位置移動処理において、コントローラ20は、自車両αを、メイン判定モードが実行される並走位置P1からより隣接車線La2に近い次並走位置P2に移動させる。
なお、次並走位置移動処理における自車両αに対する具体的な駆動制御については、第3実施形態で説明した並走処理における目標横方向距離Dαγよりも小さい目標横方向距離Dαγ´を設定し、当該並走処理と同様に実行することができる。
図10に戻り、コントローラ20は、ステップS171の次並走位置移動処理を実行した後に、ステップS172に移行する。
ステップS172において、コントローラ20は、図5のステップS131における処理と同様に、車間距離Dv、後方車両加速度Aγ、及び車間距離増加量ΔDvを演算する。
次に、コントローラ20は、ステップS173~ステップS175の各判定を行う。そして、コントローラ20は、これら各判定の結果が全て肯定的である場合にはそのままサブ判定モードを終了して図9のステップS180の処理に移行する。
一方、コントローラ20は、上記各判定の内の何れかが否定的である場合には、ステップS176の処理に移行する。以下、各判定の詳細を説明する。
先ず、ステップS173において、コントローラ20は、車間距離Dvが、車間距離閾値Dv_Th2より大きいか否かを判定する。車間距離閾値Dv_Th2は、図5のステップS132の判定に用いた車間距離閾値Dv_Th1以上の値に設定される。ここで、サブ判定モードにおいて用いられる車間距離閾値Dv_Th2が、メイン判定モードで用いられた車間距離閾値Dv_Th1以上に設定される理由について説明する。
本実施形態のサブ判定モードは、メイン判定モードにおいて中止フラグが「1」に設定されていない前提(車間距離Dv≦車間距離閾値Dv_Th1である前提)で実行されるものである。
そして、サブ判定モードが実行される際に自車両αが位置する次並走位置P2は、メイン判定モードが実行される際の並走位置P1よりも隣接車線La2に寄った位置である。そのため、並走位置P1から次並走位置P2へ移動する自車両αを後方車両γが認識した場合、当該後方車両γに自車両αの車線変更動作を許容する意思があるならば、車間Xをより広げるか少なくとも維持するように走行を行うものと考えられる。
本実施形態では、この点を考慮して、上記ステップS173の判定において、車間距離Dvの閾値として、車間距離閾値Dv_Th1よりも大きい車間距離閾値Dv_Th2を設定している。すなわち、自車両αが前方車両βと後方車両γの間の車間Xに進入するにあたり、十分な車間距離Dvが確保されているか否かという判定が、メイン判定モードにおけるステップS132の判定よりも厳しい条件で実行されることとなる。
そして、コントローラ20は、上記ステップS173の判定において車間距離Dvが車間距離閾値Dv_Th1より大きいと判断すると、ステップS174の処理に移行する。
ステップS174において、コントローラ20は、車間距離増加量ΔDvが車間増加量閾値ΔDv_Th2より大きいか否かを判定する。車間増加量閾値ΔDv_Th2は、図5のステップS133の判定に用いた車間増加量閾値ΔDv_Th1以下の値に設定される。
ここで、サブ判定モードにおいて用いられる車間増加量閾値ΔDv_Th2を、メイン判定モードで用いられる車間増加量閾値ΔDv_Th1以下に設定する理由について説明する。
サブ判定モードが実行される際に自車両αは次並走位置P2に位置するため、メイン判定モードが実行される際の並走位置P1よりも車線変更先の車間Xに近づいている状態である。そのため、自車両αが次並走位置P2に位置する状態から車線変更動作を開始する場合は、並走位置P1に位置する状態からこれを開始する場合と比べ、車線変更動作の開始から完了までの時間がより短くなる。したがって、サブ判定モードでは、メイン判定モードと比べて、車間距離増加量ΔDvが低く車間距離Dvが一定程度の減少傾向であったとしても、自車両αの車線変更動作に支障がある程度に車間Xが狭まる前に車線変更動作を完了させやすくなる。このため、本実施形態では、サブ判定モードにおいてメイン判定モードよりも、車間距離増加量ΔDvにかかる判定をより緩い条件で実行している。
そして、本実施形態では、自車両αの車線変更動作の観点から好適な車間距離増加量ΔDvを見積もりつつも、車間距離増加量ΔDvにかかる判定を過度に厳しくすることに起因する中止判断の頻発を抑制する観点から好適な車間増加量閾値ΔDv_Th2を設定している。
次に、ステップS175において、コントローラ20は、後方車両加速度Aγが第2後車加速度閾値Aγ_Th2よりも小さいか否かを判定する。第2後車加速度閾値Aγ_Th2は、図5のステップS134の判定に用いた第1後車加速度閾値Aγ_Th1以下の値に設定される。すなわち、第2後車加速度閾値Aγ_Th2は、第1後車加速度閾値Aγ_Th1と同じ又は第1後車加速度閾値Aγ_Th1より小さく設定される。
ここで、サブ判定モードにおいて用いられる第2後車加速度閾値Aγ_Th2を、メイン判定モードで用いられる第1後車加速度閾値Aγ_Th1以下に設定する理由は、より安全性を高めるべく、自車両αが隣接車線La2により近い次並走位置P2に位置する段階で再度、自車両αの車線変更動作に対する後方車両γの許容の意思の有無をより厳しい条件で確認するためである。
特に、ステップS175の判定は、上記メイン判定モードにおけるステップS134において後方車両加速度Aγが第1後車加速度閾値Aγ_Th1よりも小さいと判断されたものの、実際には後方車両γが自車両αの車線変更動作を許容する意思が無い場合にこれを好適に検出することを意図して実行される。
より詳細には、後方車両γが実際には自車両αの車線変更動作を許容する意思が無い場合に、自車両αが並走位置P1から車間Xにより近い次並走位置P2へ移動したことを認識すると、自車両αの車間Xへの進入を遮るべく後方車両γが加速するシーンが想定される。
本実施形態では、このようなシーンを好適に検出して車線変更中止判断を行うことができるように、後方車両加速度Aγと第2後車加速度閾値Aγ_Th2の大小判定を行っている。特に、ステップS175の判定は、自車両αが並走位置P1よりも後方車両γに近い次並走位置P2に位置で実行されるので、安全性をより確実に担保する観点から、後方車両加速度Aγの閾値を厳しく設定している。
そして、コントローラ20は、後方車両加速度Aγが第2後車加速度閾値Aγ_Th2より小さいと判断(ステップS175のNo)すると、図9のステップS180の処理に進む。一方、コントローラ20は、後方車両加速度Aγが第2後車加速度閾値Aγ_Th2以上であると判断(ステップS175のYes)すると、ステップS176の処理に進む。
ステップS176において、コントローラ20は、車線変更制御を中止すべきことを示す中止フラグを「1」に設定し、図9のステップS180の処理に移行する。
そして、図9に戻り、ステップS180において、コントローラ20は中止フラグが「0」であるか否かを判定する。そして、コントローラ20は、中止フラグが「0」であると判断するとステップS150の処理を実行する一方で、中止フラグが「1」であると判断するとステップS160の処理を実行する。なお、ステップS150及びステップS160の各処理は、第1実施形態と同様である。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両走行制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両走行制御方法では、さらに、後方車両加速度Aγが第1後車加速度閾値Aγ_Th1より小さいと判断した場合(図9のステップS130及び図5のステップS134のYes)に、自車両αを並走位置P1よりも隣接車線La2に寄った次並走位置P2に移動させる(図10のステップS171)。そして、自車両αを次並走位置P2に位置させた状態において、後方車両加速度Aγが所定の第2後車加速度閾値Aγ_Th2以上であると判断した場合(図10のステップS175のNo)に、車線変更制御を中止する(図10のステップS176、図9のステップS180のNo、及びステップS160)。
このように本実施形態では、自車両αが並走位置P1に位置する状態において、車線変更制御を中止判断にかかる後方車両加速度Aγに基づく第1段階目の判定(メイン判定モードにおけるステップS134)が実行されることに加え、自車両αがより隣接車線La2に近い次並走位置P2に位置する状態において、車線変更制御を中止判断にかかる後方車両加速度Aγに基づく第2段階目の判定(サブ判定モードにおけるステップS175)が実行される。
したがって、実際には後方車両γが自車両αの車線変更動作を許容する意思が無いにもかかわらず上記第1段階目の判定において後方車両加速度Aγが第1後車加速度閾値Aγ_Th1より小さい判断された場合であっても、上記第2段階目の判定においてこれを検出することができる。すなわち、後方車両γが自車両αの車線変更動作を許容しているか否かに関する後方車両加速度Aγに基づく判定精度をより向上させることができる。
特に、後方車両γの乗員等は自車両αの車線変更動作にかかる車間Xへの進入を拒否する意向であるにもかかわらず、自車両αが隣接車線La2からある程度離れた並走位置P1に位置する状態では加速操作を行わないことがある。一方で、後方車両γの乗員等は自車両αによる隣接車線La2により近い次並走位置P2への移動を認識することによって、加速操作を開始することが想定される。
本実施形態による車両走行制御方法の構成であれば、このような要因によって、自車両αが並走位置P1から隣接車線La2により近づいてから開始される後方車両γの加速も、車線変更制御の中止判断に係る判定要素とすることができる。
さらに、本実施形態では、第2後車加速度閾値Aγ_Th2を第1後車加速度閾値Aγ_Th1よりも小さい値に設定する。
これにより、上記第2段階目の判定においては、上記第1段階目の判定と比べ、車線変更制御の中止判断にかかる後方車両加速度Aγの基準がより厳しくなる。これにより、自車両αの車線変更動作を実行する際の安全性がより好適に担保される。
(第6実施形態)
以下、第6実施形態について図12及び図13を参照して説明する。なお、第1~第5実施形態のいずれかと同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施形態では、第1~第5実施形態のいずれかの構成を有する車両走行制御方法に加えて、中止位置判定モードを実行する。
中止位置判定モードでは、走行車線La1を走行する自車両αが車線変更禁止区間Aに近づいているか否かを判定し、車線変更禁止区間Aに一定程度近づいていると判断した場合に車線変更制御を中止する。以下、その詳細を説明する。
図12は、中止位置判定モードを示すフローチャートである。なお、本実施形態のコントローラ20は、図2又は図9における車線変更制御と並列に以下の中止位置判定モードを実行する。
図示のように、先ず、ステップS210において、コントローラ20は、走行車線La1上の車線変更禁止区間Aを示す車線変更禁止標識Sが存在するか否かを判定する。
より詳細には、コントローラ20は、外部センサ1の車載カメラ1aで撮像された映像、及びナビゲーションシステム3からのナビゲーション情報Inaの少なくとも一方に基づいて、走行車線La1に車線変更禁止標識Sが存在するか否かを判定する。
なお、コントローラ20は、ナビゲーション情報Inaに基づいて車線変更禁止標識Sが走行車線La1上に存在するか否かを判定する際には、ナビゲーション情報Inaが示す当該車線変更禁止標識Sと自車両αとの間の残り距離Lが車線変更の中止判断を実行する観点から現実的に影響を及ぼす範囲である場合に、車線変更禁止標識Sが存在すると判断する。
一方、コントローラ20は、ナビゲーション情報Inaに示される当該車線変更禁止標識Sと自車両αの間の残り距離Lが、車線変更の中止判断を実行する観点から事実上影響を及ぼさないと考えられる程度に大きい場合(例えば1km以上の場合)には、車線変更禁止標識Sが存在しないと判断する。
そして、コントローラ20は、車線変更禁止標識Sが存在すると判断すると、ステップS220の処理に移行する。
ステップS220において、コントローラ20は、自車両αと車線変更禁止標識Sの間の残り距離Lを演算する。具体的に、コントローラ20は、外部センサ1のレーダー1bにより検出される車線変更禁止標識Sの情報に基づいて、残り距離Lを演算する。
次に、ステップS230において、コントローラ20は、演算した残り距離Lが、所定の閾値距離L_thよりも大きいか否かを判定する。
ここで、閾値距離L_thは、自車両αの車線変更動作が完了する前に、自車両αが車線変更禁止区間Aに進入する程度の残り距離Lであるか否かという観点から定められる。特に、閾値距離L_thは、車線変更動作が完了するまでに自車両αが走行する距離に影響を与える任意のパラメータ(自車両車速Vαなど)に応じて適宜定めることができる。例えば、閾値距離L_thは、自車両αの車長と略同程度~3倍程度に設定することができる。
コントローラ20は、上記ステップS230において残り距離Lが閾値距離L_th以下であると判断すると、ステップS240の処理を実行する。
ステップS240において、コントローラ20は、車線変更中止処理を実行する。なお、車線変更中止処理の具体的内容は、図2のステップS160で説明した処理と同様である。
なお、本実施形態において、コントローラ20は、上記ステップS230において残り距離Lが閾値距離L_th以下であると判断された場合には、上述した図2又は図9における車線変更制御に対して優先して車線変更中止処理を実行する。
次に、上述の中止位置判定モードが実行される具体的なシーンについて説明する。
図13は、中止位置判定モードが実行される具体的なシーンの一例を説明する図である。
特に、図13では、自車両αの走行車線La1上に交差点CPが近づいている状態が示されている。すなわち、本例では、自車両αが走行車線La1上の交差点CPの周辺に設定された車線変更禁止区間Aに近づいた状況が想定されている。
この場合に、自車両αと車線変更禁止区間Aを表す車線変更禁止標識S(走行車線La1と隣接車線La2の間の実線センターライン)との間の残り距離Lが閾値距離L_th以下となる場合には、自車両αの車線変更制御が中止されることとなる。
以上説明した構成を有する本実施形態の車両走行制御方法によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態の車両走行制御方法では、さらに、自車両αと車線変更禁止区間Aまでの残り距離Lが所定の閾値距離L_th以下である場合(図12のステップS230のYes)に、車線変更制御を中止する(図12のステップS240)。
これにより、自車両αが車線変更動作の途中において車線変更禁止区間Aに突入するという事態の発生を抑制することができる。
特に、既に説明したように、本実施形態の前提となる第1実施形態の車両走行制御方法の構成によって、車線変更制御の中止判断を迅速に行うことができるという効果が実現されている。これにより、自車両αの車線変更制御を中止したとしても、既に説明したリルート処理により次に車線変更を実行可能なタイミングを探索する機会が増加する。
このため、本実施形態のように車線変更禁止区間Aまでの残り距離Lが閾値距離L_th以下となったら車線変更制御を中止する構成を採用しても、最終的に車線変更を完了させておく必要がある所望の地点(例えば、上記交差点CP)までに自車両αの車線変更動作を完了させることのできる可能性をより高めることができる。
また、車線変更制御の途中で自車両αが車線変更禁止区間Aに突入してしまう事態をより確実に抑制する観点から、閾値距離L_thを比較的大きく設定することもできる。このように閾値距離L_thを比較的大きく設定した場合であっても、上記リルート処理により次に車線変更を実行可能なタイミングを探索する機会が増加することで、所望の地点までに自車両αの車線変更動作を完了させるという要求を満たす機能を好適に発揮することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記各実施形態及び各変形例は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
上記各実施形態において、コントローラ20が演算する値(車間距離Dv及び後方車両加速度Aγ等)は、設定された演算周期に応じた一周期分の値(瞬時値)でも良いし、所定時間の間に亘る複数の瞬時値の平均値であっても良い。
また、コントローラ20は、自車両αの通常走行位置P0から並走位置P1への移動の動作(図3の並走処理)、並走位置P1から次並走位置P2への移動の動作(次並走位置移動制御)、及び自車両αの前方車両βと後方車両γの間の車間Xへの進入(車線変更動作)の際に、自車両αが減速しながら各動作を行うように駆動操作及び操舵操作を実行しても良い。例えば、並走処理において、前後目標位置Lαγに設定される基本制御値を上記実施形態における「Dv/2」(式(1)参照)より大きく設定することで、自車両αを減速させつつ各動作を実行することが可能である。
また、上記図5~図8で説明したメイン判定モード、及び図10で説明したサブ判定モードにおいて、車線変更の中止判断のための判定に用いた車間距離DV以外の各閾値を、車間距離DVの大きさに応じて補正しても良い。
特に、車間距離DVが十分に大きい場合には、後方車両加速度Aγの判定を実行せずとも、自車両αの車線変更が可能であるシーンが想定される。このようなシーンに対し、車間距離DVが大きくなるほど、後方車両加速度Aγの判定が緩くなるように、上記各実施形態における第1後車加速度閾値Aγ_Th1、補正後第1後車加速度閾値Aγ_Th1(Aβ)、又は第2後車加速度閾値Aγ_Th2を適宜補正することができる。また、車間距離増加量ΔDvの判定で用いる車間距離閾値Dv_Th1又は車間増加量閾値ΔDv_Th2についても同様の趣旨で補正することができる。
さらに、上記各実施形態は、矛盾を生じない範囲の任意の組み合わせで相互に組み合わせることが可能である。特に、第1実施形態~第4実施形態の何れかの構成と第5実施形態又は第6実施形態の構成との組み合わせ、及び第5実施形態の構成と第6実施形態の構成との組み合わせが可能である。
さらに、上記各実施形態で説明した車両走行制御方法をコンピュータであるコントローラ20に実行させるための車両走行制御プログラム、及び当該車両走行制御プログラムを記憶した記憶媒体も、本出願における出願時の明細書等に記載された事項の範囲内に含まれる。
また、上記各実施形態における車両走行制御方法におけるコントローラ20は、一台のコンピュータで構成しても良いし、当該車両走行制御方法の各工程を分散処理する複数台のコンピュータで構成しても良い。さらに、上記各実施形態では、コントローラ20の機能を自車両αに搭載されるECUで実現する例を説明した。しかしながら、コントローラ20は、自車両αに搭載されるECU以外の任意の制御装置で実現することができる。さらに、上記各実施形態における車両走行制御方法の各工程を実行するコントローラ20の機能の少なくとも一部を、自車両α内の制御装置と通信する外部の任意のコンピュータで実行しても良い。