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JP5054020B2 - シールされた補充容器を用いた堆積システム - Google Patents

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Description

本発明は、粒子状材料の物理的な気相蒸着の分野に関する。
OLEDデバイスは、基板と、アノードと、有機化合物からなる正孔輸送層と、適切なドーパントを含む有機発光層と、有機電子輸送層と、カソードを備えている。OLEDデバイスが魅力的なのは、駆動電圧が低く、高輝度で、視野角が広く、フル-カラーのフラット発光ディスプレイが可能だからである。Tangらは、この多層OLEDデバイスをアメリカ合衆国特許第4,769,292号と第4,885,211号に記載している。
真空環境中での物理的気相蒸着は、小分子OLEDデバイスで用いられているような有機材料の薄膜を堆積させる主要な方法である。このような方法はよく知られており、例えばBarrのアメリカ合衆国特許第2,447,789号とTanabeらのヨーロッパ特許第0 982 411号に記載されている。OLEDデバイスの製造に用いられる有機材料は、速度に依存した望ましい気化温度またはそれに近い温度に長時間にわたって維持したとき、分解することがしばしばある。感受性のある有機材料をより高温に曝露すると、分子構造が変化し、それに伴って材料の性質が変化する可能性がある。
このような材料の熱感受性という問題を解決するため、ほんの少量の有機材料を蒸発源に供給し、その少量をできるだけ少なく加熱するということが行なわれてきた。このようにすると、材料は、顕著な分解を引き起こす温度曝露閾値に到達する前に消費される。この方法の欠点は、ヒーターの温度に制約があるために利用できる気化速度が非常に小さいことと、蒸発源の中に存在する材料が少量であるために蒸発源の動作時間が非常に短いことである。従来技術では、蒸着チェンバーに通気し、蒸発源を分解清掃し、蒸発源に材料を再装填し、蒸着チェンバーの中を再び真空にし、導入したばかりの有機材料を数時間にわたって脱ガスした後に操作を再開する必要がある。小さな蒸着速度と、蒸発源への頻繁な材料供給に時間のかかることが、OLED製造設備のスループットに関する実質的な制約となっている。
装填する有機材料全体をほぼ同じ温度に加熱することの二次的な結果として、追加の有機材料(例えばドーパント)をホスト材料と混合できなくなる。ただし例外は、ドーパントが気化するときの挙動および蒸気圧が、ホスト材料が気化するときの挙動および蒸気圧と非常に近い場合である。一般に、気化するときの挙動および蒸気圧が両者で非常に近いことはないため、その結果として、従来の装置は、ホスト材料とドーパント材料を同時に堆積させるのに別々の蒸発源を必要とすることがしばしばある。
単一成分の蒸発源を用いることの1つの帰結は、1種類のホストと複数種類のドーパントを含む膜を形成するのに多数の蒸発源が必要とされることである。これらの蒸発源は隣り合わせに配置されるため、同時蒸着条件をほぼ満たそうとすると外側の蒸発源ほど中心に向けて傾けることになる。実際上は、異なる材料を同時に蒸着するのに用いられる直線配列の蒸発源の数は、3つまでに制限されてきた。この制約があるため、OLEDデバイスの構造が実質的に制限されていた。そのため真空蒸着チェンバーに必要なサイズが大きくなり、真空蒸着チェンバーに必要とされるコストが上昇し、システムの信頼性が低下する。
図1に、従来の気化装置5の断面図を示してある。この気化装置5は、有機材料を気化させるために個別の3つの蒸発源6、7、8(一般に“加熱ボート”と呼ばれる)を備えている。異なる蒸発源からの材料による蒸気の気柱9は均一であることが好ましいが、実際には端から端へと組成が変化するため、基板15のコーティングが不均一になる。
従来の蒸着法で知られている問題として、材料の純度の問題と、連続製造プロセスを維持することの困難さという問題がある。連続製造プロセスが維持されると、クリーニングし、材料を補充または再装填し、予熱するためのコストのかかる停止時間なしに、蒸着装置を長時間にわたって動作させることが可能になる。どちらの問題も、蒸着システムを設計する際の大きな制約となっている。従来の解決法は、連続的な(または、少なくともより長時間の)蒸着プロセスと、高レベルな材料純度の維持の両方を可能にできる適切な解決法はないであろうという仮定を反映したものになっている。
従来は、例えば、材料を高純度に維持するという問題は何らかの間接的な方法で解決している。蒸発源6(図1)としてのるつぼまたは“ボート”に加熱されていない状態の材料を最初に装填する。次に、蒸着チェンバーを加熱していくとき、蒸着を開始できるようになる前の前処理サイクルまたは予熱サイクルにおいて、材料の“焼き出し”が起こる。この焼き出し期間に水分と揮発性不純物が材料から効果的に除去される。その後気化装置5が動作温度になったとき、蒸発源6の中にある材料は比較的純粋である。このタイプの解決法だと堆積させる材料を注意深く取り扱う必要があるが、一般に、例えば輸送中や準備の間に汚染防止のために気密にする必要はない。
この焼き出し期間を短くして全体的な蒸着効率を向上させる目的で、より純粋な形態の材料を供給するための解決法が多数提案されてきた。例えばChowらによる「薄膜蒸着用気化装置」という名称のアメリカ合衆国特許出願公開第2004/0255857号には、蒸着チェンバーの中に気化可能な材料を補充するためある種の“シャトル”として機能する移動容器が開示されている。'5857号のChowらの方法は、補充中に蒸着システム内を適切な真空レベルを維持し、材料が汚染される全体的な可能性を小さくするという問題を解決している。しかし'5857号のChowらの方法で提案されている解決法は、あらゆるタイプの連続的プロセスにとって好ましいわけではない。なぜなら、このバッチ補充プロセスは、蒸着チェンバーの中の材料を蒸着温度まで加熱する予熱期間をやはり必要とするからである。
補充に用いる材料の純度を向上させるために提案された別の解決法が、Yamazakiらによるアメリカ合衆国特許出願公開第2004/0139914号に与えられている。'9914号のYamazakiらの解決法の一部として、補充材料がすでに収容された供給用るつぼその他の供給源を用意することが提案されている。この材料は、堆積用るつぼの中に直接入れるため、汚染されないよう気密にされている。このタイプの解決法によって材料の全体的な純度を向上させうるが、それでも補充できるようにするために堆積プロセスを停止させ、シールされた供給源を所定の位置に配置し、シールを破り、材料を堆積温度に加熱した後に堆積プロセスを再開する必要がある。
したがって、'5857号のChowらと'9914号のYamazakiらの特許で提案されているような解決法は材料の純度をいくらか向上させるのに役立ち、焼き出し前処理の必要性が最少になるとはいえ、これらの解決法によって予熱サイクルが完全に不要になるわけではない。さらに、どちらの解決法も、材料を再装填しながら処理を継続できる連続動作をサポートする材料補充システムとともに使用するには適していないであろう。
前処理または予熱サイクルを必要とするどの方法にも固有の欠点は、複数成分の材料を同時に堆積させる必要があることと関係している。いくつかの用途では、2種類以上の材料を同時に堆積させると有利である。気化させるために同じ容器の中で2種類以上の材料を混合することさえ有用である可能性がある。しかし従来法では予熱時間または焼き出し時間がわずかに必要とされるため、どちらの材料も実質的に同じ昇華温度にせねばならない(約±20℃の違いを超えない範囲の小さな誤差内で)。材料の気化温度の差が数℃を超える場合には、予熱または焼き出しの条件が最適でない可能性がある。
したがって、堆積操作を中断することなく材料を再装填できるとともに、前処理、焼き出し、予熱の必要性が実質的にないくらいに材料を非常に純粋な形態で提供できる補充法が蒸着システムにおいて必要とされていることがわかる。
本発明の1つの目的は、容器から気化ゾーンへ粒子状材料を効率的に移動させる方法を提供することである。
この目的は、粒子状材料を気化させて表面に堆積させることによって層を形成する方法であって、
(a)シールされたインターフェイスフィッティングを有する補充容器の中に粒子状材料を供給するステップと;
(b)その補充容器を、少なくとも1つの供給用開口部を画定する供給ホッパーに取り付け、インターフェイスフィッティングの位置でシールを破るステップと;
(c)補充容器から供給ホッパーに粒子状材料を移動させるステップと;
(d)供給用開口部を通過したその粒子状材料を供給路に沿って気化ゾーンまで移動させ、その気化ゾーンにおいてその粒子状材料の少なくとも1つの成分を気化させた後、表面に供給して層を形成するステップを含む方法によって達成される。
従来の装置が動作している間は材料が連続的に加熱されるが、本発明ではそれがなくなり、粒子状材料の一部だけが、短時間、制御された速度で加熱されるというのが1つの利点である。粒子状材料の塊はある温度に維持されるが、その温度は、速度に依存した望ましい気化温度より300℃も低くすることができる。これは、有機材料を気化させるときに特に有利である可能性がある。
本発明のさらに別の利点は、ヒーターの温度を一定にして連続的に粒子状材料を補充しながら安定な気化速度を維持できることである。したがって本発明の装置により、温度に非常に敏感な有機材料でさえ、分解するリスクを実質的に小さくして蒸発源の動作時間を延ばすことができる。
本発明のさらに別の利点は、気化速度と分解温度閾値が異なる複数の材料を同じ蒸発源の中で同時に昇華させられることである。
本発明のさらに別の利点は、圧縮した粒子状材料の計量供給速度または供給圧力を制御することにより、気化速度を制御して直線的にできることである。
本発明のさらに別の利点は、粒子状材料の計量供給速度を制御することにより、気化を迅速に停止させて再開させることと、安定な蒸着速度を素早く達成できることである。その結果、基板のコーティング中ではないときには、蒸着チェンバーの壁面の汚染が減少し、粒子状材料が節約される。
本発明のさらに別の利点は、この装置により、従来の装置よりも材料の分解を実質的に少なくして実質的に大きな蒸着速度が実現されることである。さらに、蒸発源の材料が消費されるにつれてヒーターの温度を変える必要がない。
本発明のさらに別の利点は、蒸発源を任意の方向に向けられることである。これは、従来の装置では一般に不可能である。
本発明のいくつかの実施態様のさらに別の利点は、従来よりもはるかに少量の粒子状材料が装置の中を運ばれるため、熱と真空を利用して粒子状材料から吸着したガスを除去できることである。
ここで図2を参照すると、有機粒子状材料を気化させて表面上に凝縮させることで膜を形成するための本発明による装置の一実施態様の三次元図が示してある。気化装置10は、マニホールド20と、それに取り付けられた供給装置40を備えている。供給装置40は、供給容器50と供給路60を備えている。供給容器50には、粒子の形態(例えば一実施態様では粉末)になったある量の有機その他の材料が供給される。
マニホールド20は1つ以上の開口部30を備えており、気化した粒子状材料がその開口部を通じて出ていき基板に到達することができる。マニホールド20は鉛直方向を向いた基板上に層を形成できるように図示してあるが、この方向に限定されるわけではない。例えばマニホールド20が水平方向を向いていて、水平な基板上に層を形成することもできる。マニホールド20は、譲受人に譲渡されたLongらによるアメリカ合衆国特許出願第10/784,585号に詳細に記載されている。供給装置40は、マニホールド20の底部、すなわち開口部30とは反対の側に取り付けた状態が図示してあるが、マニホールド20の側部に取り付けることもできる。マニホールド20への供給装置40の取り付け方はあとでより詳しく説明する。
連続動作(すなわちより正確には、長時間にわたる動作)を可能にするため、補充容器72が、供給容器50のための材料供給源として機能する供給ホッパー52に粒子状材料を供給する。補充容器72は交換可能なユニットであり、インターフェイスフィッティング54の位置に配置される。フィッティング54は、あとで説明するように、シールされたフィッティングである。粒子状材料を供給装置40に効率的に再装填するには、多くの場合、補充容器72のほうが供給ホッパー52よりも体積が大きいことが好ましい。
ここで図3を参照すると、本発明に従って粒子状材料を供給する供給装置40の一部の一実施態様の断面図が示してある。この供給装置40によって粒子状材料は効果的に流動化され、供給路60へと移動する。補充装置400では、補充容器72が、供給ホッパー52に供給される有機粒子状材料100を保持しており、そこから供給容器50および供給路60全体へと供給される。シールされたインターフェイスフィッティング54が材料の汚染を防止するとともに、供給装置40に必要とされる真空レベルまたは他の周囲条件を維持する。補充容器72は、残っている粒子状材料100の量を検出するためのセンサー450も備えることができる。交換用の補充容器72を使用する準備をしておけるよう、センサー450は、粒子状材料100が低レベルになったことを報告するため制御論理部品(図示せず)に接続されることになろう。
供給ホッパー52は、粒子状材料100を中間収容構造に(例えば供給容器50に、または他の実施態様では直接に供給路60に)供給するための開口部230を有する。供給容器50は有機粒子状材料100を保持していて、供給路60内のスクリュー構造80またはそれ以外の供給機構にその有機粒子状材料100を供給する。有機粒子状材料100は、細かく分割された粉末の形態であることが好ましく、一様なサイズであることが望ましい。図3の実施態様では、スクリュー構造80は供給容器50の内部を貫通していて、上に説明したマニホールド部品(図を見やすくするため図3には図示せず)への供給を行なう。スクリュー構造80の少なくとも一部はモータ90によって回転し、有機粒子状材料100を制御された体積速度または圧力で供給路60に沿って気化ゾーンまで移動させる。気化ゾーンでは有機材料成分が気化し、その後基板に送られて層を形成する。供給路60、したがって供給路60の中を流れる有機粒子状材料100は、その有機材料成分の望ましい気化温度よりも低温に維持することができる。有機粒子状材料100がスクリュー構造80まで移動しやすくするため、振動装置(例えばピエゾ電気構造130または電気機械式バイブレータ)を用いて有機粒子状材料100を振動させることによって流動化することができる。このように流動化された材料は、重力によってスクリュー構造80へとより容易に移動する。
補充容器72を付加して有機粒子状材料100を連続供給することにはいくつかの利点がある。この部品を用いると、大量の有機粒子状材料100を供給装置40に一度に装填できるため、長期間にわたって装置を連続動作させることができる。補充容器72内の有機粒子状材料100の量を検知することにより(例えば柱状の有機粒子状材料100の高さを測定することにより)、供給容器50へと移される有機粒子状材料100の量を選択的に計量し、供給容器50に実質的に一定体積(例えば±5cm3)の有機粒子状材料100を供給することができよう。実際には、10cm3の有機粒子状材料100が供給容器50に装填される。この明細書に記載したいくつかの実施態様では、粒子状材料100を信頼性よく供給することに関するゆとりが容器内の材料の高さの広い範囲にわたって大きいため、ほぼ完全に追加の有機粒子状材料100を供給路60に失敗なく供給することができる。しかし多成分の混合の一様性は、供給容器50内における粉末の高さが最適にされていてその高さが±10%以内に維持される場合に促進されると考えられる。このようにすると有機粒子状材料100を供給路60に供給する速度の変動が少さくなる。
センサー450に加え、例えば一様な粒子サイズと一様な粒子供給をサポートするための他の内部部品を設けると好ましい可能性がある。1つ以上の内部スクリーンを補充容器72の中で使用することができ、そのスクリーンを適切なメッシュ・サイズにすると供給速度を制御しやすくなる。例えばスクリーンと協働する振動装置(例えば移動するアームまたは振動するピエゾ電気アクチュエータ)も補充容器72の中に組み込むことができよう。
複数の振動装置(例えば図3の供給ホッパー52の壁部に取り付けたピエゾ電気構造140)を補充容器72の中または表面に配置し、供給路にある有機粒子状材料100が供給容器50の中に停滞するのを防止することもできよう。ピエゾ電気構造を複数の振動数で振動させると(例えばサイレン効果)、有機粒子状材料100が振動の節に停滞するのを防止できる。
供給装置40が適切に動作するためには、供給路60内の有機粒子状材料100の供給速度が一定に維持されることが重要である。有機粒子状材料100は一般に粉末化された形態で供給される。自由に流れる有機粒子状材料100を供給するための重要な1つの方法は、架橋状態にならないようにすることである。架橋は、粉末などの粒子状材料の特徴的な挙動であり、粉末化した粒子が自己凝集して開口部の周囲に負荷をかける構造ができることによって粉末が開口部を通過するのを妨げるときに起こる可能性がある。架橋効果は、例えば開口部のサイズが小さすぎて粒子状材料が流れようとするのが妨げられる場合に起こる可能性がある。架橋を引き起こす可能性のある因子として、開口部のサイズに対する粒子のサイズ、湿度、粒子間の静電引力、真空のレベル、摩擦などがある。この問題を解決するには、例えば図3に示したように、供給ホッパー52と供給容器50のインターフェイスにおける開口部230のサイズを、粉末化した材料の架橋特性に打ち勝つのに十分なサイズにする必要がある。サイズに関するこの条件を決めるにあたり、有機粒子状材料100は自由に流れる状態で供給路60に供給されねばならないため、そのための最悪の条件を考慮して経験的に決定するのが最良である。供給容器50内にほぼ一定体積の有機粒子状材料100を維持すると、有機粒子状材料100をスクリュー構造80に一定速度で供給するのが容易になる。開口部230を適切なサイズにし、供給容器50内に十分な体積の有機粒子状材料100があるようにすることで、粉末化した多くのタイプの有機粒子状材料100に関して一定の供給速度を維持し、いかなる新たな形態の振動も必要とすることなく流動化した流れを提供することができる。
開口部230が狭くなければならない場合には、一定の供給速度は、スクリューの供給部分の近くにある有機粒子状材料100が振動装置によって流動状態に維持されるときに保証される。これは、スクリューの直上にある有機粒子状材料100をゆっくりと振動させることによって、または例えばピエゾ電気構造130(図3)によって有機粒子状材料100に振動を誘導することによって実現できる。その結果、粉末化した有機粒子状材料100が液体のような挙動をするようになるが、ガスのような挙動をするようになるほどエネルギーは大きくない。
ここで図4を参照すると、本発明の別の一実施態様における気化装置10の一部に関するさらに詳細な断面図が示してある。ここでは供給装置40は、図2および図3の実施態様におけるような中間の供給容器50なしに供給路60に供給する供給ホッパー52を備えている。スクリュー構造80が粉末化した有機粒子状材料100を供給路60に沿ってマニホールド20内の加熱素子170へと移動させる。加熱素子170は、例えば前に引用したLongらの文献で以前に詳細に説明されているような加熱されたスクリーンにすることができる。マニホールド20は、供給路60のうちで加熱素子170に隣接する領域として定義される気化ゾーンを備えている。粉末化した有機粒子状材料100の薄い断面が、接触と熱伝導により、速度に依存した望ましい温度(加熱素子170の温度)に加熱されて気化し、基板の表面に供給されて層を形成する。スクリュー構造80とその回転速度が、有機粒子状材料100が加熱素子170に供給される速度を規定する。気化速度は制御されて直線的になるため、有機粒子状材料100が蒸気の状態でマニホールドから出ていく速度も直線的になる。したがって有機粒子状材料100をスクリュー構造と気化ゾーンに供給する速度が、気化した有機粒子状材料100を望む表面に堆積させる速度を規定する。
さらに、基部180を備えることができる。基部180は熱散逸構造であり、加熱素子170からの熱の多くが供給路60に沿って移動するのを妨げることで、有機粒子状材料100の塊を、加熱素子170に隣接した気化ゾーンで感じるよりもはるかに冷たい状態に維持する。基部180のための熱散逸手段は、譲受人に譲渡されたLongらによる上記のアメリカ合衆国特許出願第10/784,585号に記載されている。このようにして生み出される急な熱勾配により、供給路60内にあってまだ気化していない材料が高温から保護される。
このような加熱構造にすると、気化した有機材料の蒸気は加熱素子170を素早く通過し、加熱されたマニホールド20に入ることができる。望ましい気化温度になっている有機粒子状材料100の滞在時間は非常に短いため、熱分解が非常に少なくなる。有機粒子状材料100が高温、すなわち速度に依存した気化温度になっている時間は、従来の装置および方法よりも数桁短い。この時間は、従来の数時間から数日に対して数秒である。そのため有機粒子状材料100を従来よりも高温に加熱することができる。したがって本発明の装置と方法により、有機粒子状材料100の成分を大量に分解させることなく、実質的により大きな気化速度を実現することができる。
有機粒子状材料100は、単一の成分でもよく、気化可能な2種類以上の異なった有機材料成分(例えば気化温度がそれぞれ異なる複数の有機材料成分)を含んでいてもよい。気化温度はさまざまな手段で測定することができる。例えば図5は、OLEDデバイスで一般に使用される2種類の有機材料に関して蒸気圧と温度の関係を示したグラフである。気化速度は蒸気圧に比例するため、望ましい気化速度に関し、図5を利用してその望む気化速度に対応する必要な加熱温度を決めることができる。有機粒子状材料100が2種類以上の有機成分を含んでいる場合には、加熱素子170の温度は、気化が供給速度によって制限されるように選択する。すなわち加熱素子の温度での蒸気圧が実質的にマニホールド内のその成分の望ましい部分圧よりも大きくなるように選択する。したがって有機材料成分のそれぞれが同時に気化する。
気化が進むにつれてマニホールド20内の圧力が上昇し、気流がマニホールド20から図2に示した一連の開口部30を通じて出ていく。有機粒子状材料100のほんの一部(気化ゾーンに存在している部分)しか速度に依存した気化温度に加熱されず、材料の大部分は気化温度よりもはるかに低い温度に維持されているため、加熱素子170の位置にある加熱中断手段(例えばスクリュー構造80の運動を停止させる手段)によって気化を中断することが可能である。こうすることにより、基板表面のコーティング中ではないときに有機粒子状材料100を節約し、関連するあらゆる装置(例えば蒸着チェンバーの壁面)の汚染を減らすことが可能になる。これについて以下に説明する。
加熱素子170は、粉末や圧縮された材料が自由に通過することを阻止する細かいメッシュ・スクリーンにできるため、マニホールドは任意の方向を向けて使用することができる。例えば図2のマニホールド20を下に向け、その下に位置する基板のコーティングを行なうことができる。これは、従来の加熱ボートでは見られない1つの利点である。
ここで図6Aを参照すると、本発明において有用なスクリュー構造80の一実施態様の断面図が示してある。スクリュー構造80は、モータ90によって回転するスクリュー85を備えている。このスクリューの螺旋のネジ山の間の距離とネジ山の高さを選択する際には、粉末化した有機粒子状材料100が詰まることも、螺旋とともに回転することもなく、水平方向を向いたスクリュー収容チューブの底部に留まり、スクリュー85とスクリュー収容チューブの相対運動によって直線的に運ばれるように決める。例えばスクリュー85のピッチが2.5mmでネジ山の高さが0.8mmであるスクリューが、粉末化した有機粒子状材料100を水平方向に移動させるとともに一体化するのに効果的であることがわかった。
一定の流速を維持するのにスクリュー構造のサイズが影響を与えることが見いだされた。開口部230のサイズに関して上に指摘した架橋効果と同様、スクリュー構造の適切なサイズとスクリューの適切なピッチは、有機粒子状材料100の具体的な組成に関する最悪の状態を考慮して経験的に決定するのが最も好ましい。
スクリューのネジ山の角度を最適化すると有機粒子状材料100が供給路60に沿って自由に流れやすくできることも見いだされた。スクリューのネジ山の最適な角度は粉末化した有機粒子状材料100の個々の成分によっていくらか異なる可能性があるが、スクリューのネジ山の角度がスクリュー構造80の回転軸に対して約4°〜約15°の範囲だと、堆積されることが最も多いさまざまなタイプの有機粒子状材料100に関して最適な流動状態になることがわかった。
さまざまな材料のスクリューのシャフトやさまざまに表面処理したスクリューのシャフトによってスクリューの操作が容易になり、供給速度を大きくできることがわかった。ステンレス鋼は許容できる性能だが、表面処理(例えば電気研磨)またはコーティング(例えば窒化チタン・コーティング)によってさらなる利点が得られる。
スクリューを一定速度で連続的に回転させることによって許容できるレベルの性能が得られるが、パルス化によってスクリューのシャフトを繰り返して増分方式で回転させることにより、さらなる利点が得られる。パルス作用によってスクリューと粉末化した有機粒子状材料100の間の実質的な摩擦係数が小さくなるため、その粒子状材料がスクリューと一体化して回転する傾向が少なくなる。したがってスクリュー構造80の粉末供給効率が向上する。パルス式の挙動は、例えばある時間の間に供給速度を変化させることが有用な場合にも有利である可能性がある。
有機粒子状材料100は、水平方向にはスクリュー85の底部に沿って転がりながら分散された形態で移動する。スクリュー85の端部では粉末の圧力が1MPaになる可能性があるため、有機粒子状材料100のバルクの密度は蒸気シールとして機能するほどの大きさになる。そのためマニホールド内で気化して周囲の真空レベルよりも大きな圧力になった材料がスクリューに沿って逆流して供給源である供給容器50に到達することが阻止される。図6Bに示してあるように、スクリュー85の端部は、わずかな長さにわたって一定の円形断面を有する山なし部分135となるように構成されていて、粉末が一体化した有機粒子状材料100が狭い環状形状またはチューブ形状を形成する。この狭い環状形状により、温度制御されたスクリュー85と温度制御された供給路60の間の熱接触と有機粒子状材料100全体の温度の一様性が改善される。この構成によりさらに、円形断面と比較して所定の横断面における有機粒子状材料100の温度の一様性が保証され、スクリュー構造80と加熱素子170の間にある有機粒子状材料100内に温度勾配を実現できる可能性が実質的に大きくなる。粉末化した有機粒子状材料100はスクリュー構造からチューブの形状で押し出されて十分に一体化しているため、スクリュー収容チューブの支持体から出たときに押し出されたチューブ状の形状を少なくとも数ミリメートルにわたって維持することができる。この固体形状により、有機材料の気化によって生じる加圧された蒸気がスクリュー構造80に逆流することが阻止され、粉末化した有機粒子状材料100が、温度制御されたスクリュー構造の端部と加熱素子の間の短いギャップに架橋することが可能になる。
この環状構造を有する粉末供給システムの熱モデルにおいて加熱素子がスクリュー構造80の端部から130μm離れているとすると、両者の温度差が270℃である場合に、加熱素子170とスクリュー構造80の端部にまたがる有機粒子状材料100において軸方向の平均温度勾配0.5℃/μmを実現できることがわかる。したがって一体化した粉末化有機粒子状材料100の最初の200μmで100℃の温度低下が可能である。この勾配により、混合成分有機材料の塊からより揮発性のある成分が染み出すという通常起こることが阻止され、単一の供給源から複数の有機材料を同時に堆積させることが可能になる。さらに、この大きな勾配は、気化する前に液化する有機材料を用いる場合でさえ、有機粒子状材料100をスクリュー収容チューブの出口で一体化した粉末形状に維持するのに役立つ。
図6Aに示したスクリュー構造80の構成は、有機粒子状材料100の粉末を水平方向に移動させるのに有効だが、その粉末化した有機粒子状材料100を鉛直方向に移動させるには有効でない。なぜなら、粉末化した有機粒子状材料100はこの構造の長さ方向に沿って進むというよりは、スクリューとともに回転するだけだからである。ここで図6Cを参照すると、スクリュー構造95の別の一実施態様の立体図が示してある。スクリュー構造95は、互いに噛み合った同じ螺旋状のネジ山を持つ2つ以上のスクリュー(例えばスクリュー85a、85b、85c)を備えている。これらスクリュー85a、85b、85cはすべて同じ方向に回転する。1つのスクリュー(例えば85a)のネジ山の間に装填された有機材料は、材料が回転して回転している第2のスクリュー(例えば85b)の噛み合ったネジ山と接触すると除去される。なぜなら隣のスクリューの向かい合っている部分は反対方向に運動するからである。したがってスクリュー構造95では、粉末化した有機粒子状材料100を一体化して固体形状にすることで蒸気シールを形成する能力を保持しつつ、図6Aに示した単一スクリューのスクリュー構造の方向に関する制約が解決される。スクリュー構造95の排出部分は細長い断面にできよう。マニホールドの全長にわたってこの断面にできるため、材料を長さ方向に沿って実質的に一様に注入することが可能になる。
ここで図6Dを参照すると、スクリュー構造105の別の一実施態様の断面図が示してある。スクリュー構造105は、回転する螺旋状のネジ山115と、静止した中心部125と、静止した外側チューブ(ここでは供給路60)を備えている。この実施態様では、スクリュー構造105の一部だけ(螺旋状のネジ山115を含む部分)が回転可能であり、モータ90によって回転させられる。円形断面の螺旋状のネジ山を用いて供給される粉末化した有機粒子状材料100に関して検証を行なった。ネジ山は、直径が0.7mmの鋼鉄ワイヤを外径が5mmでピッチが2.5mmの螺旋にしたものからなる。他の材料(例えばチタンやステンレス鋼)からなる滑らかなワイヤも適している。ワイヤの断面は円形でなくてもよく、長方形の断面が特に好ましい。というのも、粉末化した有機粒子状材料100を押している間にねじり抵抗を受けるとき、螺旋状のネジ山のサイズが変化しないようにするだけの剛性が付加されるからである。静止した中心部125は、供給路60と組み合わさり、粉末化した有機粒子状材料100の薄膜以外がスクリューとともに回転することを実質的に阻止する。スクリュー構造105は、粉末化した有機粒子状材料100を蓄積するのに重力に頼っておらず、任意の方向で動作することが好ましい。スクリュー構造105は、粉末化した有機粒子状材料100を一体化して薄い環状形状にする。そのため、粉末化した有機粒子状材料100と、温度制御された供給路60と、静止した中心部125との間の熱接触が実質的に改善される。これらの特性は、混合成分有機材料の気化と、気化する前に液化する有機材料の気化を制御できるようにする上で重要である。したがってこの実施態様により、粉末化した有機粒子状材料100を一体化して固体形状にすることで蒸気シールを形成する能力を保持しつつ、第1のスクリュー構造における方向に関する制約が解決される。
主に図2の気化装置10をベースとした本発明による上記の実施態様は、大気圧においてと、大気圧の約半分までの圧力において有用である。実験によれば、細かい粉末は、大気圧の半分以下にした減圧下では計量がはるかに難しいことが観察されている。粉末化した有機粒子状材料100は、残留している空気の分子が除去されていくにつれて凝集し、大気圧の条件下では粉末化した有機粒子状材料100を通じて振動エネルギーを伝達するのに有効な粒子間の弾性カップリングが少なくなる。この効果は、スクリュー構造が粉末を一様に供給する性能にマイナスの影響を与える。したがって別の振動装置が必要となる可能性がある。
ここで図7を参照すると、低圧条件下で上記の制約を解決する上で本発明において有用な振動装置の別の一実施態様の一部を除去して内部を示した図が示してある。この実施態様では、振動装置として3つのピエゾ電気構造が用いられている。ピエゾ電気構造150と155は大きく傾いていて、供給容器50の底部において漏斗の対向する壁面を形成している。この2つのピエゾ電気構造の底部190は支持されておらず、スクリュー構造80の供給部に直接通じている。ピエゾ電気構造150と155の支持されていない部分は振動の振幅が大きいため、その部分の表面近くで有機粒子状材料100を流動化するのに有効である。第3のピエゾ電気構造130がスクリュー構造80の下に取り付けられていて、他の2つのピエゾ電気構造150と155の振動とは振幅が実質的に垂直な振動を与える。これらのピエゾ電気構造は、周波数掃引回路によって駆動される。振動数を変化させることは節の形成を阻止する上で重要であり、電力供給効率を大きく改善する。スクリュー構造80としては、上記のスクリュー構造のうちの任意のものが可能である。
図8は、低圧条件下で上記の制約を解決する上で本発明において有用な振動装置の別の一実施態様の一部を除去して内部を示した図である。開口部230は、上記供給ホッパー52の下端部、または供給容器50の基部の開口部である。回転する螺旋式装置210は、共通するシャフトの周囲に左巻き螺旋ワイヤと右巻き螺旋ワイヤを備えている。回転する螺旋式装置210は、スクリュー構造の供給部の上方に位置していて、ワイヤがスクリュー構造80のネジ山に実質的に接している。回転するネジ山は、スクリューのネジ山の邪魔になってはならないが、1mmのクリアランスまで効果的に動作し続けるであろう。回転する螺旋式装置210は、モータ90によってギア・ドライバ220を通じてゆっくりと回転する。モータは、スクリュー構造80も回転させる。実際には、回転する螺旋式装置210の回転速度は、個々の粉末化した有機粒子状材料100の粒径と特性によって異なる可能性があるが、実際的な目安として、回転するネジ山の軸方向回転速度をスクリューのネジ山の軸方向回転速度と一致させる。回転する螺旋式装置210のワイヤは、粉末化した有機粒子状材料100を開口部230の中心へと押しやる傾向があるため、スクリュー構造80への粉末の架橋が防止される。スクリュー構造80としては、上記のスクリュー構造のうちの任意のものが可能である。この振動装置は、粉末化した有機粒子状材料100にほんのわずかなエネルギーしか与えず、したがってサイズまたは密度によって粒子が分離することはないため、混合成分有機材料を供給するのに非常に適している。
ここで図9を参照すると、粉末化した有機粒子状材料を気化させて表面上に凝縮させることで膜を形成するための本発明による気化装置10の別の一実施態様の一部に関する三次元図が示してあり、この装置は、有機粒子状材料100の条件をあらかじめ整えるため吸着されたガスまたは不純物を除去する装置を備えている。本発明のこの装置は、所定量の有機粒子状材料を保持するための上に説明した供給容器50と協働する補充容器72を備えている。この装置は、図3と図4に示した実施態様に関して説明した振動装置も備えることができる。供給容器50からの有機粒子状材料100は、条件をあらかじめ整えるため第1の供給路260に供給される。第1の供給路260は、有機粒子状材料100を供給容器50から第1の供給路260へと移動させるために供給容器50と協働するスクリュー構造を備えている。スクリュー構造の少なくとも一部はモータ90によって回転し、粉末化した有機粒子状材料100を第1の供給路260に沿って供給する。第1の供給路260は、減圧源に通じている真空曝露用開口部270を備えている。有機粒子状材料100が条件をあらかじめ整えられた有機粒子状材料100として第1の供給路260に沿って気化ゾーンに移されるとき、第1の供給路260を加熱することで粉末化した有機粒子状材料100を加熱する一方で、その粉末化した有機粒子状材料100を減圧状態にさらすことで吸着されたガスまたは不純物を除去することもできる。典型的な蒸着速度では、自由状態の粉末化した有機粒子状材料100は、圧縮して気化させる直前に条件をあらかじめ整えるこの段階で、吸着された蒸気とガスの分子を放出するのに数分かかる。次に、条件をあらかじめ整えられた粉末化した有機粒子状材料100は、上に説明したのと同様のスクリュー構造によって範囲が規定されている第2の供給路265に移され、その中で固められ、すなわち圧縮され、そのスクリュー構造の周囲に均等に分配される。粉末化した有機粒子状材料100は、上に説明したようにスクリュー構造により第2の供給路265に沿ってマニホールドと気化ゾーン(図示せず)に供給され、そこで有機材料が気化し、その後OLED基板の表面で凝縮して有機層を形成する。場合によっては存在する第3の容器250が、減圧状態にさらされた粉末化した有機粒子状材料100を第1の供給路260から受け取ることができる。このような場合、第2の供給路265の範囲を規定するスクリュー構造には、減圧状態にさらされた粉末化した有機粒子状材料100を第2の供給路265に供給する第3の容器250も付随しており、このようなスクリュー構造は第3の容器250の内部を貫通している。この装置は、すでに説明したように、粉末化した有機粒子状材料100を流動化する手段も備えている。別の一実施態様では、供給路260は真空曝露用開口部270を備えており、第2の供給路を利用することなくマニホールドに直接供給を行なう。
実際には、この明細書に記載した気化装置は以下のように動作する。OLEDデバイスに層を形成するのに役立つ粉末化した有機粒子状材料100が、補充容器72内の材料から供給される。その有機粒子状材料100は制御された状態で供給容器50に移されるが、そのとき、粉末化した有機粒子状材料の体積が実質的に同じである状態が維持されるようにする。粉末化した有機粒子状材料100は、この明細書に記載した手段によって流動化され、そのことによってスクリュー構造80に移される。このスクリュー構造は、この明細書に記載したようにして粉末化した有機粒子状材料100を気化ゾーンに移す。有機粒子状材料100は気化ゾーンで気化されてマニホールド20に入る。マニホールドは、気化した有機材料をOLEDの基板の表面に送って層を形成する。このことに関して以下に説明する。
すでに指摘したように、真空レベルが、一定量の細かい粉末状有機材料100を計量供給するという問題を複雑にする可能性がある。図2に戻ると、連続した柱状の有機粒子状材料100が供給路60の中に保持されていることがわかる。一実施態様では、この柱状の有機粒子状材料100は、適切に圧縮されているのであれば、有機粒子状材料100の粒子特性によって可能になるある種の真空シールとして利用できる。この構成では、有機粒子状材料100にとって高レベルの真空が、加熱素子170の位置とマニホールド20の中に存在できる。供給容器50にはより低い真空レベルを維持することができる。このより低い真空レベルは大気圧でもよい。部分的なシールでさえ好ましい可能性がある。このシール効果を利用し、供給容器50の中に有機粒子状材料100を保管するための雰囲気ガスを分離すること、および/または補充容器72に有機粒子状材料100を保管するための雰囲気ガスを分離することもできよう。例えばいくつかの材料では、不活性ガス(例えばアルゴンやヘリウム)雰囲気下で材料を保管することが好ましい。
ここで図10を参照すると、補充装置400を使用していて、基板を取り囲む蒸着チェンバーを備える本発明の堆積装置32の一実施態様が示してある。蒸着チェンバー280は、マニホールド20から来た有機材料でOLED基板285を被覆することのできる閉鎖装置である。上に説明したように、マニホールド20には供給路60を通じて有機材料が供給される。蒸着チェンバー280は、制御された状態に維持される(例えば圧力は、真空源300によって1トル以下にされる)。蒸着チェンバー280は、被覆されていないOLED基板285を装着し、被覆されたOLED基板285を外すのに使用できる装着用ロック装置275を備えている。OLED基板285は並進移動装置295によって移動させることができるため、気化した有機材料がOLED基板285の表面全体に均一にコーティングされる。図では気化装置10の一部が蒸着チェンバー280によって囲まれているように描いてあるが、他の構成も可能であることがわかるであろう。例えば、気化装置10の全体(粉末化した有機粒子状材料100を収容するためのあらゆる容器を含む)が蒸着チェンバー280によって取り囲まれている構成がある。
実際には、装着用ロック装置275を用いてOLED基板285を蒸着チェンバー280の中に配置し、並進移動装置295またはそれに付随する装置によってOLED基板285を保持する。気化装置10は上記のように動作し、並進移動装置295は、マニホールド20から有機材料の蒸気が放出される方向に対して垂直にOLED基板285を移動させる。そのため気化した有機材料がOLED基板285の表面に供給されて凝縮し、有機材料の膜がその表面に形成される。
ここで図11を参照すると、一部を本発明に従って製造できる発光OLEDデバイス310の1つの画素の断面が示してある。このOLEDデバイス310は、少なくとも、基板320と、カソード390と、カソード390から離れたアノード330と、発光層350を備えている。このOLEDデバイスは、正孔注入層335と、正孔輸送層340と、電子輸送層355と、電子注入層360も備えることができる。正孔注入層335と、正孔輸送層340と、発光層350と、電子輸送層355と、電子注入層360は、アノード330とカソード390の間に配置された一連の有機層370を含んでいる。有機層370は、本発明の装置と方法によって堆積させることが最も望ましい層である。これらの要素についてさらに詳しく説明する。
基板320は、有機の固体、または無機の固体、または有機の固体と無機の固体の組み合わせにすることができる。基板320は、堅固でも可撓性があってもよく、個別の部材(例えばシートやウエハ)として、または連続したロールとして加工することができる。典型的な基板材料としては、ガラス、プラスチック、金属、セラミック、半導体、金属酸化物、酸化物半導体、窒化物半導体、ならびにこれらの組み合わせがある。基板320は、複数の材料が均一に混合したもの、または複数材料の複合体、または多層材料にすることができる。基板320は、OLEDデバイスを作るのに一般的に使用されているOLED基板(例えばアクティブ-マトリックス用の低温ポリシリコンまたはアモルファス-シリコンからなるTFT基板)にすることができる。基板320は、どの方向に光を出したいかに応じ、透過性または不透明にすることができる。光透過特性は、基板を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は重要でないため、底部支持体は、光透過性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、セラミック、回路板材料などのほか、OLEDデバイス(パッシブ・マトリックス・デバイスでもアクティブ・マトリックス・デバイスでもよい)を形成するのに一般に用いられている他の任意の材料が挙げられる。
1つの電極が基板320の上に形成され、それがアノード330になるのが最も一般的である。EL光を基板320を通して見る場合、アノード330は、興味の対象となる光に対して透明であるか、実質的に透明である必要がある。本発明で有用な透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物とスズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした酸化亜鉛、インジウムをドープした酸化亜鉛、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノード用材料として用いることができる。EL光を上部電極を通して見るような用途では、アノード用材料の透光特性は重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での具体的な導電性材料としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。好ましいアノード用材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させることができる。アノード用材料は、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。
必ずしも必要なわけではないが、有機発光ディスプレイでは、正孔注入層335をアノード330の上に形成すると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、その後に形成する有機層の膜形成特性を改善することと、正孔輸送層に正孔を容易に注入することに役立つ。正孔注入層335で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマー、無機材料(例えばバナジウム酸化物(VOx)、モリブデン酸化物(MoOx)、ニッケル酸化物(NiOx))などがある。有機ELデバイスで有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許0 891 121 A1と1 029 909 A1に記載されている。
必ずしも必要なわけではないが、正孔輸送層340がアノード330の上に形成されて配置されると有用であることがしばしばある。望ましい正孔輸送材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、熱転写、ドナー材料からの熱転写)で堆積させることができる。そのとき、この明細書に記載した装置と方法を利用して堆積させることができる。正孔輸送層340で有用な正孔輸送材料はよく知られており、芳香族第三級アミンなどの化合物がある。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。このような化合物としては、構造式(A)で表わされるものがある。
Figure 0005054020
ただし、
Q1とQ2は、独立に、芳香族第三級アミン部分の中から選択され、
Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基など)である。
一実施態様では、Q1とQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン部分)を含んでいる。Gがアリール基である場合には、Q1とQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレン部分のいずれかであることが好ましい。
構造式(A)に合致するとともに2つのトリアリールアミン部分を含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式(B)で表わされる。
Figure 0005054020
ただし、
R1とR2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール基、アルキル基のいずれかを表わすか、R1とR2は、合わさって、シクロアルキル基を完成させる原子を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立にアリール基を表わ表わし、そのアリール基は、構造式(C)に示したように、ジアリール置換されたアミノ基によって置換されている。
Figure 0005054020
ただし、
R5とR6は、独立に、アリール基の中から選択される。一実施態様では、R5とR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。
芳香族第三級アミンの別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンとして、構造式(C)に示したように、アリーレン基を通じて結合した2つのジアリールアミノ基が挙げられる。有用なテトラアリールジアミンとしては、一般式(D)で表わされるものがある。
Figure 0005054020
ただし、
それぞれのAreは、独立に、アリーレン基(例えばフェニレン部分またはアントラセン部分)の中から選択され;
nは1〜4の整数であり;
Ar、R7、R8、R9は、独立に、アリール基の中から選択される。
典型的な一実施態様では、Ar、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは多環式縮合環構造(例えばナフタレン)である。
上記の構造式(A)、(B)、(C)、(D)のさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜約6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜約10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール部分とアリーレン部分は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
OLEDデバイスの正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物で形成すること、またはそのような化合物の混合物で形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式(B)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式(D)に示したもの)と組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて使用する場合には、後者はトリアリールアミンと電子注入・輸送層に挟まれた層として位置する。この明細書に記載した装置と方法を利用し、単一成分の層または複数成分の層を堆積させたり、多数の層を順番に堆積させたりすることができる。
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1 009 041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。さらに、ポリマー正孔輸送材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
発光層350は、正孔-電子再結合に応答して光を出す。発光層350は、一般に正孔輸送層340の上に堆積される。望ましい有機発光材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、放射線によるドナー材料からの熱転写)で堆積させることができる。そのとき、この明細書に記載した装置と方法を利用して堆積させることができる。有用な有機発光材料は周知である。アメリカ合衆国特許第4,769,292号と第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の発光層は、発光材料または蛍光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、ゲスト化合物(すなわちドーパント)をドープしたホスト材料を含んでいる。後者の場合、光は主としてドーパントから発生する。ドーパントは、特定のスペクトルを持つ色の光が出るように選択する。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の材料にすることができる。ドーパントは、通常は、強い蛍光を出す染料の中から選択されるが、リン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)も有用である。ドーパントは、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。この明細書に記載した装置と方法を利用すると、複数の蒸発源を必要とせずに多成分ゲスト/ホスト層をコーティングすることができる。
有用であることが知られているホスト分子および発光分子としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,294,870号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものなどがある。
8-ヒドロキシキノリンおよび同様の誘導体の金属錯体(一般式E)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が500nmよりも長い光(例えば緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
Figure 0005054020
ただし、
Mは金属を表わし;
nは1〜3の整数であり;
Zは、現われるごとに独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
以上の説明から、金属は、一価、二価、三価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、土類金属(ホウ素、アルミニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の一価、二価、三価の金属を使用することができる。
Zは、縮合した少なくとも2つの芳香族環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
発光層350のホスト材料としては、9位と10位に炭化水素置換基または置換された炭化水素置換基を有するアントラセン誘導体が可能である。例えば9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
ベンズアゾール誘導体は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の別のクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]である。
望ましい蛍光ドーパントとしては、ペリレンまたはその誘導体、アントラセンの誘導体、テトラセンの誘導体、キサンテンの誘導体、ルブレンの誘導体、クマリンの誘導体、ローダミンの誘導体、キナクリドンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、ジスチリルベンゼンの誘導体、ジスチリルビフェニルの誘導体、ビス(アジニル)メタンホウ素錯体化合物、カルボスチリル化合物などがある。
他の有機発光材料としては、Wolkらが、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第6,194,119 B1号とその中で引用している参考文献に記載しているように、ポリマー物質(例えばポリフェニレンビニレン誘導体、ジアルコキシ-ポリフェニレンビニレン、ポリ-パラ-フェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体)が可能である。
必ずしも必要なわけではないが、OLEDデバイス310は、発光層350の上に配置された電子輸送層355を含んでいると好ましい場合がしばしばある。望ましい電子輸送材料は、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段、熱転写、レーザーによるドナー材料からの熱転写)で堆積させることができる。そのとき、この明細書に記載した装置と方法を利用して堆積させることができる。電子輸送層355で用いるのが好ましい電子輸送材料は、金属キレート化オキシノイド系化合物(オキシンそのもの(一般には8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含む)である。このような化合物は、電子の注入と輸送を容易にし、優れた性能を示すのを助け、しかも容易に薄膜の形態にすることができる。考慮するオキシノイド系化合物の例は、すでに説明した一般式(E)を満たす化合物である。
他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。一般式(G)を満たすベンズアゾールも、有用な電子輸送材料である。
他の電子輸送材料としては、ポリマー物質が可能である。それは例えば、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ-パラ-フェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアセチレンや、他の導電性ポリマー有機材料(例えば『導電性分子と導電性ポリマーのハンドブック』、第1〜4巻、H.S. Nalwa編、ジョン・ワイリー&サンズ社、チチェスター、1997年に記載されているもの)である。
電子注入層360がカソードと電子輸送層の間に存在していてもよい。電子注入材料の例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン化アルカリ塩(例えば上記のLiF)や、アルカリ金属またはアルカリ土類金属をドープした有機層がある。
カソード390は、電子輸送層355の上、または発光層350(電子輸送層を使用しない場合)の上に形成される。アノード330を通して光が出る場合には、カソード材料をほぼ任意の導電性材料にすることができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(3.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。好ましい1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMg:Ag合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとして、仕事関数が小さな金属または金属塩からなる薄い層と、その上に被せたより厚い導電性金属層とを含む二層がある。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
カソード390を通して発光を見る場合、カソードは、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第5,776,623号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、蒸着、スパッタリング、化学蒸着によって堆積させることができる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0,732,868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー・アブレーション、選択的化学蒸着などがある。
補充容器の実施態様
図12Aと図12Bを参照すると、補充容器72として瓶422を用いた補充装置400の一実施態様の諸部品と動作を側面図で示してある。この補充装置400では、インターフェイスフィッティング54の位置で真空シールを維持することができる。装填された瓶422が、Oリング・シール423と425を取り付けたアダプタ424の中に嵌め込まれている。補充容器72は、この補充装置の中に導入される前に、材料が装填されて排気される。真空シールは、第1のOリング・シール436とバネ付きヒンジ434によって維持される。さまざまなタイプのアダプタ424を製造することで、サイズと形状が異なる瓶422や、補充容器72として機能する他の部品に合わせることができる。アダプタ424は、瓶422とともに、真空シールによってスライド式ゲート・バルブ装置406に固定された機械式蛇腹部420の中に装着される。装着されると、蛇腹部420は、圧力制御フィッティング432に接続された真空ポンプによって排気される。蛇腹部420の内部を減圧することにより、蛇腹部420と補充容器72の内部の圧力を等しくすることができる。蛇腹部420の中の圧力が補充容器72の内部の圧力以下になると、カバー454を、バネ付きヒンジ434の張力だけによって所定の位置に保持する。この圧力では、真空ゲート・バルブ448が、蒸着材料を移動させる真空チェンバー430の高真空環境に対して開いている。このような一実施態様では、例えば(図3、図4、図6A,図7、図8の実施例に示した)供給路60の供給機構とマニホールド20のために真空レベルを維持することができる。ここでは、堆積プロセス全体を通じて瓶422の中の真空状態が維持されることが重要である。シールを破って瓶の内容物を供給ホッパー52に供給するため、真空ゲート・バルブ448をシール408の一部として用いる。真空ゲート・バルブ448は、図12Aに示されている開口部428の上方にあって最初はOリング404または他のシール部品に接して取り付けられているが、開口部428を通じて瓶422にアクセスできるよう右側(図12Bに矢印で示した方向)に移動させる。真空ゲート・バルブ448が開くと、可撓性のある蛇腹部420を機械式手段(図示せず)で圧縮することによって瓶422を下げることができる。
可撓性のある蛇腹部420を用いてシールを破り、瓶422の内容物を得る。図12Bからわかるように、蛇腹部420が収縮するにつれ、補充容器72として用いる瓶422の口が開口部428の中に引き込まれる。バネ付きヒンジ434はOリング・シール436に押しつけられているが、真空チェンバー430の中にある障害物438にぶつかると開く。この動作によって瓶422のシールが破れ、供給ホッパー52の中に材料が供給される。
ここで図13を参照すると、補充装置400の別の一実施態様が示されている。シール408は、ここでも、一対のOリング404に接するように取り付けたスライド式バルブ402を利用している。この構成では、補充容器72が補給用の粒子状材料100を圧力下で供給する。シール408が破られるとバルブ412が開き、ガス(例えば空気や不活性ガス)が補充容器72の中に強制的に導入される。
あるいは補充容器72には、最初に有機材料と不活性ガスが収容されている。スライド式バルブ402を開く前に、バルブ412を用いて補充容器72を排気する。次にスライド式バルブ402を開くと、材料が、重力その他の手段(例えば機械式供給法)を利用することによって開口部428を通って供給される。
図14を参照すると、バルブ410の別の構成が示されている。ここでは、バルブ410は、開口部414を有する回転可能な円板416の形状である。補充容器72の輪郭を参考として示してある。補充容器72が所定の位置に来ると、何らかの機構を利用してバルブ410を回転させて供給位置にする。
図15を参照すると、粒子状材料100を供給するのにやはり圧力差を利用した別の一実施態様による再供給装置400が示されている。ここでは、バルブ412が、袋部440を膨らませるのに用いるガスの流れを制御し、粒子状材料100に開口部428を通過させる。この組み合わせは、供給ホッパー52の中の真空レベルを維持できるため特に有利である。
図16を参照すると、再供給装置400の一実施態様における回転式振動装置442が示されている。回転式振動装置442を作動させ、粒子状材料100が補充容器72から出ていきやすくする。
図17を参照すると、補充容器72から粒子状材料100を供給するのにピストン444を用いる別の一実施態様による再供給装置400が示されている。図18は、ピストン444の別の構成を示している。
本発明を、いくつかの好ましい実施態様、すなわち気化ゾーンへの有機粒子状材料の供給に関する実施態様を特に参照して詳細に説明してきた。しかし本発明はより広く粒子状材料(その中には有機粒子状材料や他のタイプの粒子状材料が含まれる)に適用される。“粒子状材料”という用語には、広い範囲の粒子形態の物質が含まれる。それは例えば、結晶、ナノチューブ、粉末、ニードル、フレークや、不連続な物質に分類できる他の固体材料などである。さらに、粒子状材料は、材料成分の担体として機能するある量の不活性な材料を含む混合物として供給することができる。不活性な担体としては、他のタイプの固体材料のほか、ペースト、液体(特に粘性率がより大きな液体材料)が可能であろう。選択した不活性な材料はすべて、気化プロセスに合致している必要があるため、その不活性な担体は粒子状材料成分の気化前または気化中に適切に廃棄される。不活性な担体は、例えば、望ましい粒子状材料成分よりも気化温度がはるかに高い材料の中から選択することができる。ほんの一例として、有機粒子状材料100(図3)は、砂と、気化させる粒子状材料成分とを含む混合物にすることができよう。適切な混合法を利用してこのように不活性な担体を使用すると、気化させる粒子状材料成分(例えば有機粒子状材料)の微少量を計量供給することができよう。
本発明の精神と範囲を逸脱することなく、さまざまな変形や修正が可能であることが理解されよう。例えば補充容器72のためのインターフェイスフィッティング54で用いるさまざまなシールが存在しうることが容易に理解されよう。図12A〜図18に示したさざまな構成は、インターフェイスフィッティング54で使用できるシールとフィッティングのさまざまな解決法のほんのいくつかの例に過ぎない。補充容器72は、その中にある粒子状材料100を真空状態で保管すること、または不活性ガス中で保管すること、または他の適切なガス媒体の中で保管することができる。本発明の方法と装置により、粒子状材料100を製造し、非常に純粋な形態かつ非常に少ない含水量で保管することができる。そのため気化前に材料をあぶり出す予熱操作または他の前処理が不要になる。本発明により、複数成分の材料をまとめて粒子状材料100として包装することができる。そのため複数の材料を同時に堆積させることが望ましい堆積装置の設計が単純になる。
補充容器72の中にある補給用の粒子状材料100がなくなったことを検出するには多数の方法がある。重量、導電率、または材料の他の特性を感知するさまざまなタイプの光学的センサーまたは装置をセンサー450(図3)として用いることができよう。
本発明は、再装填可能な補充容器72を設計できるという点で有利である。こうすることにより、コストの点で有利になるとともに、廃棄物が減る。補充容器72は供給ホッパー52よりも体積が大きいため、連続的な堆積プロセスをサポートするための効率的な供給機構が提供される。
したがって、交換可能な補充容器を用いて粒子状材料の物理的気相蒸着を行なうための方法と装置が提供される。
従来の気化装置の断面図である。 有機粒子状材料を気化させて表面上に凝縮させることで膜を形成するための本発明による装置の一実施態様の三次元図である。 本発明に従って粒子状材料を供給するための上記装置の一部に関する一実施態様の断面図であり、本発明において有用な振動装置の一実施態様が含まれている。 本発明に従って有機粒子状材料を供給して気化させるための上記装置の一部に関する一実施態様の断面図である。 2種類の有機粒子状材料に関する蒸気圧と温度の関係を示すグラフである。 本発明において有用なスクリュー構造の一実施態様の断面図である。 図6Aのスクリュー構造の末端部の断面図である。 本発明において有用なスクリュー構造の別の実施態様の立体図である。 本発明において有用なスクリュー構造の別の実施態様の断面図である。 本発明において有用な振動装置の別の実施態様の一部を除去して内部を示した図である。 本発明において有用な振動装置の別の実施態様の一部を除去して内部を示した図である。 有機粒子状材料を気化させて表面上に凝縮させることで膜を形成するための本発明による装置の別の一実施態様の一部に関する三次元図であり、吸着されたガスまたは不純物を除去する装置を備えている。 基板を収容した蒸着チェンバーを備える本発明による装置の断面図である。 本発明によって製造できるOLEDデバイス構造の断面図である。 一実施態様による補充容器の材料補充前の状態を側方から見た断面図である。 材料補充位置にある補充容器の側面図である。 スライド式バルブ機構を利用した補充容器を側方から見た断面図である。 別の一実施態様における代わりとなる回転式バルブ機構の上面図である。 材料の供給に圧力差を利用する補充容器を側方から見た断面図である。 振動機構を有する別の一実施態様による補充容器を側方から見た断面図である。 材料の供給にピストン機構を利用する補充容器を側方から見た断面図である。 材料供給に別のタイプのピストンを用いる補充容器を側方から見た断面図である。
符号の説明
5 気化装置
6 蒸発源
7 蒸発源
8 蒸発源
9 気柱
10 気化装置
15 基板
20 マニホールド
30 開口部
32 蒸着装置
40 供給装置
50 供給容器
52 供給ホッパー
54 インターフェイスフィッティング
60 供給路
72 補充容器
80 スクリュー構造
85 スクリュー
85a スクリュー
85b スクリュー
85c スクリュー
90 モータ
95 スクリュー構造
100 粒子状材料
105 スクリュー構造
110 スクリーン
115 螺旋状のネジ山
120 スクリーン
125 中央部
130 ピエゾ電気構造
135 山なし部分
140 ピエゾ電気構造
150 ピエゾ電気構造
155 ピエゾ電気構造
170 加熱素子
180 基部
190 底部
210 回転する螺旋式装置
220 ギア・ドライバ
230 開口部
240 モータ
250 第3の容器
260 第1の供給路
265 第2の供給路
270 真空曝露用開口部
275 装着用ロック装置
280 蒸着チェンバー
285 OLED基板
295 並進移動装置
300 真空源
310 OLEDデバイス
320 基板
330 アノード
335 正孔注入層
340 正孔輸送層
350 発光層
355 電子輸送層
360 電子注入層
370 有機層
390 カソード
400 補充装置
402 スライド式バルブ
404 Oリング
406 バルブ装置
408 シール
410 バルブ
412 バルブ
414 開口部
416 円板
420 蛇腹部
422 瓶
423、425 シール
424 アダプタ
428 開口部
430 真空チェンバー
432 圧力制御用フィッティング
434 ヒンジ
436 シール
438 障害物
440 袋部
442 振動装置
444 ピストン
448 バルブ
450 センサー
454 カバー

Claims (3)

  1. 粒子状材料を気化させて表面に堆積させることによって層を形成する方法であって、
    (a)シールされたインターフェイスフィッティングを有する補充容器の中に粒子状材料を供給するステップと;
    (b)その補充容器を、少なくとも1つの供給用開口部を画定する供給ホッパーに取り付け、インターフェイスフィッティングの位置でシールを破るステップと;
    (c)上記補充容器から上記供給ホッパーに粒子状材料を移動させるステップと;
    (d)上記供給用開口部を通過したその粒子状材料を供給路に沿って気化ゾーンまで移動させ、その気化ゾーンにおいてその粒子状材料の少なくとも1つの成分を気化させた後、表面に供給して層を形成するステップを含む方法。
  2. 上記補充容器の体積が上記供給ホッパーよりも大きい、請求項1に記載の方法。
  3. 上記供給路がスクリューによって画定される、請求項1に記載の方法。
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